生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ポリ乳酸樹脂を分解する放線菌およびポリ乳酸樹脂の微生物分解方法
出願番号:1997210829
年次:2007
IPC分類:C12N 1/20,C12N 1/00,B09B 3/00,C08J 11/10,C12R 1/03


特許情報キャッシュ

常盤 豊 長井 直子 軸屋 博之 JP 3897261 特許公報(B2) 20070105 1997210829 19970805 ポリ乳酸樹脂を分解する放線菌およびポリ乳酸樹脂の微生物分解方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 トヨタ自動車株式会社 000003207 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 常盤 豊 長井 直子 軸屋 博之 20070322 C12N 1/20 20060101AFI20070301BHJP C12N 1/00 20060101ALI20070301BHJP B09B 3/00 20060101ALI20070301BHJP C08J 11/10 20060101ALI20070301BHJP C12R 1/03 20060101ALN20070301BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 DC12N1/20 FC12N1/00 PB09B3/00 AC08J11/10C12N1/20 AC12R1:03 C12N 1/20 JMEDPlus(JDream2) JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CA(STN) 特許第3734118(JP,B2) 特許第3697639(JP,B2) Appl.Environ.Microbiol.,Apr.1997,Vol.63,No.4,p.1637-1640 4 FERM P-16247 1999046755 19990223 7 20040614 六笠 紀子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規な生物学的処理法によるポリ乳酸樹脂の分解方法および分解能を有する耐熱性放線菌に関する。【0002】【従来の技術】最近、プラスチック廃棄物の処理が問題になっている。処理法としては焼却や埋め立てが主であるが、焼却は地球温暖化の促進、埋め立ては埋め立て地の減少等の問題を抱え、生物学的分解処理法が注目されている。また、ポリ乳酸樹脂は次世代のプラスチックとして種々の用途開発が進められており、近い将来、現在使用されているプラスチック同様、廃棄物問題がクローズアップされることが十分に予想される。【0003】ポリ乳酸樹脂は水系の中で加水分解する高分子であり、現在医療や医薬用材料として応用されているが、澱粉等の再生可能な資源から乳酸醗酵を通して合成できることから、環境分解が困難である汎用プラスチックに代わる生分解性プラスチックの素材として注目されている。ポリ乳酸樹脂は、その構成モノマーの種類によりポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリDL−乳酸あるいは、他の高分子との共重合体が存在している。【0004】【発明が解決しようとする課題】ポリ乳酸樹脂は酵素によって加水分解が促進されると知られている。しかしながら、これまでポリ乳酸樹脂およびその廃棄物を直接生物学的に分解処理するための微生物およびその微生物による分解法技術は、ほとんど知られていなかった。 そこで本発明は、ポリ乳酸樹脂およびそれらを含むプラスチックを、直接生物学的に分解処理する放線菌およびその方法を提供する事を目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、微生物学的手段により優れたポリ乳酸分解活性を有する放線菌を見出し、本発明を完成するに至った。【0006】即ち、本発明によれば、ポリ乳酸を放線菌で分解する事を特徴とするポリ乳酸樹脂の分解方法が提供され、また無機塩類を含む培地にポリ乳酸樹脂とActinomadura属に属する放線菌を添加し分解する事を特徴とするポリ乳酸樹脂の分解方法が提供され、特に前記Actinomadura属に属する放線菌が Actinomadura viridis (FERM P−16247)である事を特徴とする前記ポリ乳酸樹脂の分解方法が提供される。更に、培養条件がpH4.0〜10.0、温度10〜75℃である事を特徴とする前記ポリ乳酸樹脂の分解方法が提供される。【0007】なお、本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸を主要成分とする重合体を指し、ポリL−乳酸やポリD−乳酸等のポリ乳酸ホモポリマー、ポリL/D−乳酸共重合体、およびこれらに他のポリマーを共重合させたポリ乳酸共重合体、そして上記ポリマー間、および他の成分ポリマーとのブレンド体を含み、重合体中の乳酸成分の重量比率が10%以上のものを言う。【0008】本発明は、ポリ乳酸樹脂の分解を、その分解能を有する放線菌に行わせる事で、好気条件下でのポリ乳酸樹脂の分解処理を可能にするものである。【0009】ポリ乳酸分解活性を有する微生物は放線菌である。その中で特にActinomadura属に属する放線菌が好ましく、その分離獲得は以下に示す方法により行った。本発明者らは、茨城県つくば市の土壌およびコンポストを採用し、以下に詳述する操作を経て、ポリ乳酸樹脂を分解する好気性微生物を分離獲得した。【0010】以下の表1に示す基本培地1Lに1000mgのポリ乳酸樹脂を乳化させ、1.5%の寒天を含む寒天平板培地を調製した。各サンプル1g を5mlの滅菌水に懸濁させ、10〜102 倍に希釈した後、0.2mlを調製した培地に塗布した。培養は、50℃の孵卵機中で行った。培地上に生育したコロニーの中で、コロニーの周囲に透明領域を形成したものを、ポリ乳酸 樹脂の分解菌とし、白金耳でコロニーを釣り上げる事により単離操作を行った。【0011】【表1】培地中生育したコロニーの中から、周囲に透明領域を確認したサンプルのコロニーを白金耳で釣り上げ、同様な培地を用い純粋分離し、ポリ乳酸樹脂分解菌(FERM P−16247)を得る事が出来た。【0012】分解菌株を、NUTRIENT BROTHに接種しコロニーを形成させ、得られた菌体の性状について顕微鏡で観察した。結果は以下の表2に示す。【0013】【表2】表2に示す結果を Bergey's Manual of Determinative Bacteriology 9版等に参照し、また脂肪酸分析の結果から、上記の菌株は Actinomadura 属の菌と性状が類似している事から、FERM P−16247はActinomadura viridis である事が示された。【0014】本発明で使用される菌株は Actinomadura 属とし、ポリ乳酸樹脂を処理するために本菌株(FERM P−16247)を含んだ微生物群を用いる事が望ましい。【0015】本菌株または、本菌株を含む微生物群は必要に応じて、凍結乾燥した粉末、その粉末と各種ビタミンやミネラルと必要な栄養源を配合した後に打錠した錠剤、先に記した基本培地中で生育培養させた培養液等の形で、ポリ乳酸樹脂の処理に提供される。【0016】本発明における培養に於いて使用される基本培地は、窒素源として例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等が使用され、その他無機塩としてリン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、モリブテン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウムおよび硫酸マンガン等の、通常利用される培養源が使用され、そのpHは4.0〜10.0であり、好ましくはpH5.0〜8.0である。また、培養温度は10〜75℃であり、好ましくは30〜70℃である。【0017】本発明のポリ乳酸の生物学的分解処理は、培養槽に先に示した基本培地、処理されるべきポリ乳酸樹脂、上記菌株および菌群を配合した粉末、錠剤、培養液を添加する事で行われる事が望ましいが、上記菌株を活性汚泥およびコンポストに組み込んでも良い。なお、基本培地に対するポリ乳酸樹脂の投入量は、0.01重量%〜10. 0重量%が望ましい。添加する微生物量は極少量であっても構わないが、投入量が処理時間に影響を及ぼさないためにポリ乳酸樹脂に対して、0.01重量%以上が好ましい。【0018】【実施例1】表1の基本培地1Lに1000mgのポリ乳酸樹脂(Mw : 1.89 ×105 )を乳化させた1.5%の寒天を含む寒天平板培地を用意し、FERM P−16247菌株を接種し、50℃で2週間培養した。その結果は図1に示したように、乳化白濁した寒天平板培地上での、FERM P−16247菌株のコロニー形成に伴い、コロニー周囲に透明領域が確認された。【0019】【実施例2】表1の基本培地100mlに対し、粉末加工したポリ乳酸樹脂(Mw : 1.89 × 105 )を炭素源として100mg添加したものを用意し、FERM P−16247菌株を接種し、50℃で、粉末加工したポリ乳酸樹脂を4週間、180rpm回転型振とう機で培養した。添加した粉末加工ポリ乳酸樹脂の分解に伴う、ポリ乳酸樹脂の回収重量(クロロホルム抽出)の変化を測定した。その結果は表3に示したように、菌株を植菌しないコントロールが培養前後で重量が変化しなかったのに比べ、ポリ乳酸樹脂の回収重量が約25%減少した。【0020】以上の事から、分離菌株は高分子のポリ乳酸樹脂を分解出来る事が明らかとなった。なお、図1はFERM P−16247による寒天平板培地中のポリ乳酸樹脂を分解しているコロニーの培養2週間後の状態を示すものである。【0021】【表3】【0022】【発明の効果】本発明のポリ乳酸樹脂の分解方法は、ポリ乳酸樹脂廃棄物の処理方法であり、これまで既存の焼却のように排ガスも生じず、埋立処理に比べて極めて省時間な技術であり、廃棄物処理上で極めて価値の高い方法である。【0023】また、コンポスト化施設で本発明の処理方法を用いる事により、ポリ乳酸樹脂を有機酸等の有用物質や堆肥に転換する事も可能である。【図面の簡単な説明】【図1】FERM P−16247による寒天平板培地中のポリ乳酸樹脂を分解しているコロニーの、培養2週間後の状態を表わす顕微鏡写真。 ポリ乳酸樹脂の分解能を有する Actinomadura viridis (FERM P−16247)。 ポリ乳酸樹脂をActinomadura 属に属する菌で分解する事を特徴とするポリ乳酸樹脂の分解方法。 請求項2の放線菌が Actinomadura viridis である請求項2記載のポリ乳酸樹脂の分解方法。 請求項3の放線菌が耐熱性の Actinomadura viridis である請求項3記載のポリ乳酸樹脂の分解方法。


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