タイトル: | 特許公報(B2)_コンタクトレンズ用液体洗浄組成物及び洗浄方法 |
出願番号: | 1997209345 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G02C 13/00,C11D 7/32,C11D 7/42,C12S 9/00 |
丹羽 良子 吉原 恭子 中川 昭 JP 3745508 特許公報(B2) 20051202 1997209345 19970804 コンタクトレンズ用液体洗浄組成物及び洗浄方法 株式会社トーメー 000222473 丹羽 良子 吉原 恭子 中川 昭 20060215 G02C 13/00 20060101AFI20060126BHJP C11D 7/32 20060101ALI20060126BHJP C11D 7/42 20060101ALI20060126BHJP C12S 9/00 20060101ALI20060126BHJP JPG02C13/00C11D7/32C11D7/42C12S9/00 G02C 7/04 G02C 13/00 A61L 12/12 C11D 7/32 C11D 7/42 C12S 9/00 特開平06−281894(JP,A) 特開平07−138155(JP,A) 5 1999052308 19990226 15 20040802 竹村 真一郎 【0001】【技術分野】本発明は、コンタクトレンズ用液体洗浄組成物及びそれを用いたコンタクトレンズの洗浄方法に係り、特に、コンタクトレンズの蛋白質汚れを分解、除去するための蛋白分解酵素を含むコンタクトレンズ用液体洗浄組成物における改良、並びにそのような液体洗浄組成物を使用した洗浄方法に関するものである。【0002】【背景技術】近年、コンタクトレンズに沈着した蛋白性の汚れを蛋白分解酵素で分解、除去する方法が広く普及するに至っているが、かかる蛋白分解酵素は、溶液状態では不安定であり、活性が次第に低下してしまうことが認められている。そこで、実用的には、蛋白分解酵素を主成分とした錠剤、顆粒、粉末等の固形の形態で供給し、それを使用者が必要な時に精製水等に溶解して、洗浄液として使用する方法が取られてきているが、このような方法では、固体状態の蛋白分解酵素をその使用の毎に溶解しなければならず、そのため、煩雑な手間を使用者に強いる結果となっている。また、蛋白分解酵素は、一旦溶液になってしまうと、漸次活性を失ってしまうために、コンタクトレンズの保存液中に蛋白分解酵素を配合することは、極めて困難であったのである。【0003】そのため、従来から、蛋白分解酵素を溶液中にて安定化した液体洗浄剤が提案され、市販されるに至っている。例えば、特開平2−168224号公報には、蛋白分解酵素と共に、水に混和性の有機溶媒、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を水に配合してなるコンタクトレンズ用洗浄液が明らかにされており、そして、そのような洗浄液は、水性媒体にて希釈され、その得られた希釈液にコンタクトレンズを浸漬することにより、蛋白質汚れが分解、除去せしめられるようになっている。また、特開平4−93919号公報や特開平4−143718号公報には、特定の蛋白分解酵素と共に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを20重量%以上の割合で含有せしめることが提案され、更に、特開平4−161921号公報には、単糖類や二糖類等の糖類を安定化剤として含有させた洗浄剤も提案されている。【0004】しかしながら、このような従来からの蛋白分解酵素を含む洗浄液にあっては、かかる酵素の安定化が図られているといっても、完全なものではなく、依然として、経時的に蛋白分解酵素の活性の低下が進行しているのであり、従って長期の保存によって、コンタクトレンズに対する洗浄効果が低下する問題を内在しており、このため、蛋白分解酵素を液体状態において保存するための更なる安定化が望まれているのである。また、例え、そのような洗浄液を用いた蛋白質汚れに対する洗浄を定期的に行なっていたとしても、一旦、コンタクトレンズに付着した蛋白質汚れを完全に除去することは難しく、従ってコンタクトレンズを長期に亘って使用するうちに、蛋白質汚れはコンタクトレンズに蓄積されることとなり、そのため、使用期間が長くなるにつれて、コンタクトレンズの装用感が悪化することは、避けられないものであった。更に加えて、コンタクトレンズの洗浄に際して、コンタクトレンズから蛋白分解酵素にて除去された蛋白質汚れ(分解物)が、コンタクトレンズに再付着する問題もあり、これが、また、コンタクトレンズの汚れの原因ともなっているのである。【0005】そこで、近年では、このような汚れの蓄積によるコンタクトレンズの装用感の悪化の問題を回避する方法として、定期的にコンタクトレンズを交換するシステム(フリークエント・リプレースメント・システム)が導入されたり、使い捨て(ディスポーザブル)のコンタクトレンズが市販されたりしている。このような方法によれば、コンタクトレンズの使用期間を短くして、コンタクトレンズに蛋白質汚れが蓄積する前に、新しいレンズと取り替えることとなるために、簡単な手入れで、常に良好な装用感を得ることが可能と為されているのである。しかしながら、このような方式においては、従来のコンタクトレンズよりも維持費が割高となることが避けられず、使用者の経済的な負担の増加が免れ得ないという問題を内在している。【0006】【解決課題】ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、液体形態であるにも拘わらず、高い安定性を示し、また非常に手軽に使用することが出来ると共に、コンタクトレンズへの汚れ、特に蛋白質汚れの付着を効果的に低減乃至は防止し得る、洗浄効果の高いコンタクトレンズ用液体洗浄組成物を提供することにあり、また、そのような液体洗浄組成物を用いて、コンタクトレンズを迅速に且つ効果的に洗浄する方法を提供することをも、その課題とするものである。【0007】【解決手段】そして、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、従来より、中和剤や乳化剤等として知られている2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールや2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、或いはそれらの塩類が、特にその高濃度の存在下において、液体洗浄組成物の形態にある蛋白分解酵素の安定化に格別の寄与をもたらし、蛋白分解酵素を長期に亘って安定な状態で供給し得ることを見出したのであり、また、それを適当な水系希釈媒体にて希釈して用いる際に、コンタクトレンズへの汚れ、特に蛋白質汚れの付着を効果的に低減乃至は防止し得ることを見出したのであり、そしてそれらの知見に基づいて、本発明が完成されるに至ったのである。【0008】すなわち、本発明は、上記の課題を解決するために、有効量の蛋白分解酵素と共に、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール並びにそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の安定化成分を、5w/v%以上の割合において水性媒体中に含有せしめてなることを特徴とするコンタクトレンズ用液体洗浄組成物を、その要旨とするものである。【0009】要するに、このような本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物にあっては、蛋白分解酵素の安定化成分として、上記の特定の化合物(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール又は2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール或いはそれらの塩)を含有しているところから、目に対する毒性が低く、安全であることは勿論、従来から知られているグリセリンやプロピレングリコール等の安定化剤に比べて、液体状態下における蛋白分解酵素の安定化効果に優れ、以てより長期の保存を可能ならしめると共に、そのような液体洗浄組成物を用いたコンタクトレンズの洗浄操作に際しては、コンタクトレンズに対する汚れ、特に蛋白質汚れの付着を効果的に阻止せしめ得るのであって、そのために、除去された蛋白質汚れ(分解物)が再びコンタクトレンズに付着して、汚染するのを有利に阻止し得るのであり、また、装用後における涙液や眼脂に由来する蛋白質等の汚れの付着を、効果的に低減乃至は阻止せしめ得るのである。【0010】なお、かかる本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物にあっては、有利には、そのpHが5.5〜7.5の範囲内となるように調整され、これによって、蛋白分解酵素のより一層有効な安定化が図られることとなる。【0011】ところで、本発明は、有効量の蛋白分解酵素と共に、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール並びにそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の安定化成分を、5w/v%以上の割合において水性媒体中に含有せしめてなる液体洗浄組成物を用い、それを水系希釈媒体にて希釈した後、得られた希釈液に、装用後のコンタクトレンズを浸漬せしめることを特徴とするコンタクトレンズの洗浄方法をも、その要旨とするものである。【0012】そして、このような本発明に従うコンタクトレンズの洗浄方法によれば、前記コンタクトレンズ用液体洗浄組成物を用いて、その希釈液を調製した後、その得られた希釈液にコンタクトレンズを浸漬して、所定時間接触せしめるだけで、かかるコンタクトレンズの汚れ、特に蛋白質汚れが効果的に分解、除去せしめられ得るのであり、また、その際に取り除かれた蛋白質汚れが、再度コンタクトレンズに付着するのを効果的に阻止せしめ、更にはその後の装用においても、蛋白質汚れを付着し難くするのである。【0013】なお、この本発明に従うコンタクトレンズの洗浄方法の好ましい態様の一つによれば、前記コンタクトレンズを前記希釈液に浸漬せしめた後、少なくとも5分間の煮沸処理を行なうことにより、蛋白質汚れの除去と共に、消毒処理も同時に施されることとなる。【0014】また、本発明に従うコンタクトレンズの洗浄方法の別の好ましい態様の一つによれば、前記希釈液が更に有効量の殺菌剤を含有していると共に、該希釈液に対する前記コンタクトレンズの浸漬を、常温下において行なうことにより、コンタクトレンズの消毒処理を、蛋白質汚れの除去操作と同時に行なう手法が、採用されるのである。【0015】【発明の実施の形態】ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物における必須の成分の一つである蛋白分解酵素は、コンタクトレンズに付着した蛋白質による汚れを除去するために用いられるものであって、その使用量は、洗浄効果等を調べた上で、酵素の種類に応じて適宜に決定されることとなるが、一般に、0.005〜10w/v%程度の割合で、好ましくは0.05〜5w/v%程度が有効量とされて、用いられることとなる。また、蛋白分解酵素は、一般に、その活性部位における残基の種類によって、セリンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、カルボキシルプロテアーゼに分類されるが、中でも、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物に含有せしめられる蛋白分解酵素としては、セリンプロテアーゼが好んで用いられることとなる。何故なら、セリンプロテアーゼは、補因子を必要とせず、取扱いが容易であるのに対して、チオールプロテアーゼやカルボキシルプロテアーゼ等は、酵素を活性化する必要があるために、取扱いが面倒となる等の問題を内在しているからである。【0016】このように、本発明において、蛋白分解酵素として好適に用いられるセリンプロテアーゼは、その活性部位にセリン残基を有しており、具体的には、動物由来のトリプシン、キモトリプシン、細菌、放線菌、或いは糸状菌由来のプロテアーゼ等を挙げることが出来る。そして、それらの中でも、細菌のバチルス属由来のプロテアーゼは、種々のものが市販されており、例えば「ビオプラーゼ」(ナガセ生化学工業株式会社製)、「クリアレンズプロ」、「エスペラーゼ」、「デュラザイム」(ノボ・ノルディスク・バイオインダストリー株式会社製)、「アルカリプロテアーゼ GL−440」(協和エンザイム株式会社製)等を購入して、使用することが出来る。【0017】そして、このセリンプロテアーゼの中でも、細菌のバチルス属由来のセリンプロテアーゼは、分子内にカルシウムイオンと結合する部位を有しており、そこにカルシウムイオンを結合した状態で、酵素が安定な分子構造を取るものであるところから、蛋白分解酵素として、かかるバチルス属由来のセリンプロテアーゼが用いられる場合には、酵素と共に、カルシウムイオンを添加することにより、蛋白分解酵素の安定性を更に高めることが出来るのであり、以て、本発明にて用いられる液体洗浄組成物の蛋白質汚れに対する洗浄力の向上を、効果的に図り得るのである。【0018】なお、かかるカルシウムイオンは、一般に、水に対する溶解性が良好なカルシウム塩の形態で供給されるものであり、具体的には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム等として添加される。そして、その際、それらのカルシウム塩は、カルシウムイオンとして、通常、30mM程度以下、好ましくは3〜20mM程度の濃度となるように添加される。このカルシウムイオンの濃度が高くなっても、それに見合う、より大きな安定化効果を期待し得るものではないからである。【0019】そして、そのような蛋白分解酵素は、水性媒体中では、一般に不安定であるために、それを液体形態で供給する場合には、所定の安定化成分(溶媒)が配合せしめられることとなるが、そのような安定化成分としては、生体組織に対する安全性が高く、且つコンタクトレンズの素材に影響を及ぼさないものであることは勿論、蛋白分解酵素の安定化効果に優れたものを選ぶ必要があり、そのために、本発明にあっては、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール並びにそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を、安定化成分として添加せしめるようにしたのである。即ち、本発明では、コンタクトレンズ用液体洗浄組成物を構成する安定化成分として、上記化合物の少なくとも1種が添加せしめられ、以て蛋白分解酵素の有効な安定化が図られ、それにより、蛋白質の汚れに対する洗浄効果が向上せしめられているのである。【0020】また、かかる本発明に従う上記せる特定の化合物からなる安定化成分は、少なくとも5w/v%以上の割合において、水性媒体中に含有せしめられ、これによって、蛋白分解酵素の安定化に寄与せしめられるものであるが、望ましくは10w/v%以上の割合において含有せしめられることとなる。特に、かかる安定化成分による酵素の安定化は、そのような安定化成分の高濃度の存在下において、有利に発現せしめられ、液体状態下における蛋白分解酵素の安定性を有利に高め得るものであって、そのためには、有利には、20〜70w/v%、より好ましくは30〜70w/v%、更に好ましくは45〜65w/v%の割合において、含有せしめることが望ましい。また、このような安定化成分に対して、必要に応じて、グリセンやプロピレングリコール等のような水溶性有機溶媒と組み合わせて、使用することも可能である。【0021】なお、上記の安定化成分たる2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールは、遊離形態において或いはそれらの塩酸塩等の塩形態において供給され、用いられることとなるが、遊離形態の場合においては、それを水に溶解したときにアルカリ性を示し、また、塩酸塩等の塩形態の場合においては酸性を示すようになるところから、液体洗浄組成物が安定化に最も適したpH、即ち、5.5〜7.5の範囲内となるように、酸若しくはアルカリの少なくとも1つが適宜に添加されることとなる。この添加される酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、有機酸、硼酸、アミノ酸等が挙げられ、特に塩酸又は硼酸が、好適に用いられることとなる。また、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硼砂が挙げられ、特に水酸化ナトリウム又は硼砂が、好適に用いられることとなる。【0022】また、上記せる如き蛋白分解酵素と共に、特定の安定化成分が含有せしめられてなる、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物にあっては、コンタクトレンズに付着した眼脂等の脂質汚れの除去効果を更に向上させるために、更に必要に応じて、所定の界面活性剤が添加、含有せしめられることとなる。この界面活性剤としては、生体への安全性が高く、またコンタクトレンズの素材への影響がないものであれば、アニオン性、両性、非イオン性界面活性剤の何れをも、そして従来から公知の如何なるものも選択され得るものであるが、特に、含水性コンタクトレンズに対して用いられる場合には、コンタクトレンズへの吸着を避けるために、非イオン性界面活性剤を採用することが好ましい。また、そのような非イオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、エチレンジアミンのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン縮合物、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖アルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等を挙げることが出来るが、中でも、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが適している。そして、この界面活性剤の使用濃度は、所望される洗浄効果に応じて適宜に選択されるものであるが、一般に0〜10w/v%程度、好ましくは0.01〜5w/v%程度の範囲内で含有せしめられることとなる。【0023】また、涙液からの汚れで、蛋白質及び脂質以外に、カルシウムがコンタクトレンズに沈着する可能性があり、そのために、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物には、金属キレート化剤も、有利に添加、含有せしめられることとなる。この金属キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸、またはそれらのナトリウム塩等の塩類等を挙げることが出来る。そして、それは、濃度的には、コンタクトレンズの洗浄のために希釈して得られた希釈液中のキレート化剤の濃度が0.001〜1w/v%、好ましくは0.01〜0.2w/v%となるように、コンタクトレンズ用液体洗浄組成物中に添加、含有せしめられるのである。【0024】さらに、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物の品質を向上せしめて、保管中及び使用中における菌の増殖を抑制し、更には殺菌する等の目的をもって、かかる液体洗浄組成物には、防腐剤乃至は殺菌剤を、所望の効果から適宜に決定されることとなる濃度において、添加、含有せしめることが出来る。そのような防腐剤乃至は殺菌剤としては、ソルビン酸や安息香酸、若しくはそれらの塩類、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)等のビグアニド類、クロルヘキシジン、4級アンモニウム塩(例えば、塩化ベルザルコニウム、ポリクアテリウム1等)等の遊離化合物又はそれらの塩等の公知のものの中より、適宜に選択されることとなる。【0025】なお、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物には、必要に応じて添加せしめられる上記例示の添加成分の他にも、生体に対して安全であり、且つコンタクトレンズの素材に対して悪影響を及ぼさない限りにおいて、従来からコンタクトレンズの処理剤として用いられている公知の各種の添加成分の何れもが、適宜に用いられ得るものであることは言うまでもないところであり、そしてそれら添加成分は、必要に応じて組み合わされ、液体洗浄組成物の洗浄効果や安定化効果を阻害しない量的範囲において、添加されるものである。【0026】そして、本発明にあっては、上述の如き蛋白分解酵素と共に、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール並びにそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の安定化成分、更には必要に応じて他の添加成分が、所定の水性媒体に添加されて、目的とするコンタクトレンズ用液体洗浄組成物とされるのであるが、その際の水性媒体としては、精製水や蒸留水等の水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、コンタクトレンズ用として用いられている公知の洗浄液、保存液、消毒液等の液剤を利用することも可能である。【0027】ところで、かくの如き本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物を用いて、ハードコンタクトレンズやソフトコンタクトレンズ或いは含水性コンタクトレンズや非含水性コンタクトレンズ等に分類されるコンタクトレンズを洗浄するに際しては、先ず、本発明に従う前記した液体洗浄組成物が、所定の水系希釈媒体にて、生理的に使用可能な範囲まで希釈せしめられることとなる。この使用に際しての希釈により、希釈液中における前記安定化成分の割合が、安定な配合比率から外れ、以て液体洗浄組成物中に含有されていた蛋白分解酵素が活性化されて、コンタクトレンズに対する洗浄作用が著しく増大するのである。【0028】なお、この液体洗浄組成物の水系希釈媒体による希釈に際しては、一般に、かかる洗浄組成物は、水系希釈媒体の100容量部に対して、0.1〜100容量部程度の割合において、好ましくは0.5〜5容量部程度の割合において添加され、均一に混合溶解せしめられる。この希釈操作によって、生理的に使用可能な範囲、具体的には浸透圧が200〜600mOsm、好ましくは250〜400mOsm、またpHが5.5〜8.0、好ましくは6.5〜7.5となるような希釈液とされるのであり、また安定化成分は、一般に3w/v%以下の濃度となるように希釈せしめられるのであり、更には蛋白分解酵素は、0.00001〜1.0w/v%程度の濃度とされることとなる。【0029】また、かかる液体洗浄組成物を希釈せしめる水系希釈媒体としては、公知の各種のものが用いられ得、例えば水道水、精製水、蒸留水、生理食塩水、界面活性剤含有水溶液である通常のコンタクトレンズ用洗浄液、塩化ナトリウム含有水溶液である通常のコンタクトレンズ用保存液等があり、それらの中から適宜に選定されることとなる。なお、水道水が洗浄組成物中の蛋白分解酵素の効果を低下させるような不純物を含有する場合には、それを水系希釈媒体として用いることは適当でない。それ故、本発明における水系希釈媒体としては、不純物を含有しない精製水、生理食塩水、界面活性剤含有水溶液、塩化ナトリウム含有水溶液等が好ましく、この中でも、特に界面活性剤を含有する水溶液である市販の通常のコンタクトレンズ用洗浄液を用いるのが望ましい。また、水系希釈媒体としては、殺菌剤を含む水溶液である通常のコンタクトレンズ用消毒液も有利に用いられ、これによって蛋白質汚れの除去やそのような汚れの付着防止と共に、消毒をも同時に行なうことが出来る。【0030】本発明に従う洗浄方法によれば、かくの如くして、適当な水系希釈媒体にて前記したコンタクトレンズ用液体洗浄組成物を希釈して得られる希釈液に対して、装用後の汚れたコンタクトレンズを浸漬せしめ、そのレンズ表面に付着する汚染物質を除去(遊離乃至は分解、脱離)させるのであるが、この希釈液中へのコンタクトレンズの浸漬は、一般に常温下においては2時間〜1晩程度放置することにより行なわれ、そしてそのような放置の後、コンタクトレンズを希釈液から取り出して、通常のコンタクトレンズ用洗浄液乃至は保存液等によって、手指洗浄し、更にその後、水道水で濯ぐようにすれば良い。特に、このような常温下における洗浄操作は、非含水性コンタクトレンズに対して、好適に実施され、その際、希釈液中には、液体洗浄組成物或いは水系希釈媒体から持ち込まれる殺菌剤が存在せしめられ、そのような殺菌剤の存在下において、コンタクトレンズの洗浄操作が施されることにより、同時に消毒処理も行なわれることとなる。【0031】また、含水性コンタクトレンズにあっては、前記希釈して得られる希釈液に対するコンタクトレンズの浸漬による洗浄処理に加えて、高温下における加熱消毒処理をも、同時に実施することが望ましく、一般に60℃以上の温度で5分間以上、好ましくは80℃以上の温度で5分間以上、特に好ましくは、煮沸による熱消毒をも同時に実施した後、前記と同様にして希釈液から取り出し、手指洗浄、更には濯ぎを行なって、洗浄及び消毒処理の施されたコンタクトレンズとすることが出来るのである。【0032】より具体的には、本発明に従う液体洗浄組成物を、通常の市販のレンズケース中に一滴滴下し、そして、生理食塩水でレンズケースを満たした後、このレンズケース内の液中に、予め軽く生理食塩水で濯いだ装用レンズを浸漬し、次いで、このレンズケースを市販のコンタクトレンズ用煮沸器(2つの温度帯域に加温して、洗浄及び煮沸消毒を行なうようになっている)にセットした後、かかる煮沸器において煮沸処理を行ない、更にその後レンズを取り出し、生理食塩水で濯いで、装用に供するようにするようにするのである。【0033】このように、本発明に従って、特定の安定化成分を含有せしめてなるコンタクトレンズ用液体洗浄組成物を用い、それを希釈してなる希釈液に、装用後のコンタクトレンズを浸漬して洗浄処理を行なうことにより、かかるコンタクトレンズに付着せる蛋白質汚れ等の汚れは、効果的に除去せしめられることとなるのであり、加えて、従来の酵素含有処理液による処理において認められていた、蛋白質汚れの分解物がレンズに再付着するのを、効果的に抑制乃至は阻止せしめ得、また、その後の装用中におけるコンタクトレンズの汚れ、特に蛋白質汚れの付着を効果的に低減乃至は防止し得るのである。【0034】なお、以上においては、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物を希釈して得られる希釈液は、コンタクトレンズの洗浄操作に用いられているが、そのような洗浄操作に加えて、かかる希釈液を保存液として用いることも可能である。因みに、コンタクトレンズは、一般に、適当な液体に浸漬せしめられて保存されるものであるが、非含水性コンタクトレンズに対して使用する場合には、通常、室温付近で保存されるため、上述の如く希釈して得られた希釈液を保存液として、そのまま、使用することが出来るのである。また、含水性コンタクトレンズに対して使用する場合には、細菌等の微生物が繁殖し易いものであるところから、防腐効果も併せ持つ、適当な殺菌剤を添加せしめれば、保存液として使用することも可能となるのである。【0035】【実施例】以下に、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の幾つかの実施例を示すこととするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。【0036】−液体洗浄組成物の調製−2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)又は2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩酸塩(AMP・HCl)と蛋白分解酵素(エスペラーゼ:ノボ・ノルディスク・バイオインダストリー株式会社製、バチルス属由来のセリンプロテアーゼ)とを、下記表1、2に示される割合において配合すると共に、精製水にて100mlに定容する一方、液のpHが約7.0となるように塩酸又は水酸化ナトリウムを加えてpH調整することにより、各種処方例の液体洗浄組成物を調製した。【0037】次いで、かくして得られた各種処方例の液体洗浄組成物について、それぞれの酵素活性を、下記の手法に従って測定する一方、25℃で14日間保管した後、又は40℃で7日間保管した後にも、同様にして、それぞれの酵素活性を測定し、下式に従って、対応する液体洗浄組成物の残存酵素活性を算出した。そして、その結果を、下記1、2に併せて示した。【0038】−蛋白分解酵素の活性測定−精製水で所定の希釈倍率:Dとなるように希釈した各々の液体洗浄組成物1mlの希釈液に、37℃に加温した0.6%カゼイン溶液(pH7.0、0.05Mリン酸一水素ナトリウム水溶液)の5mlを添加し、これを37℃の温度に10分間保持した後、沈殿試液(0.11Mトリクロル酢酸、0.22M酢酸ナトリウム、及び0.33M酢酸の混合液)5mlを加えて、未分解の蛋白を沈殿せしめ、更に、濾過して得られた濾液中の275nmにおける吸収Aを求めた。また、別に精製水で希釈した(希釈倍率:D)各々の洗浄組成物1mlの希釈液に、前記沈殿試液5mlを加えた後、更に、前記カゼイン溶液を添加し、生じた沈殿を濾過して得られる濾液について、その275nmにおける吸収A0 を求めた。【0039】なお、1分間にチロシン1×10-6g相当量の275nm吸収を示す非蛋白性物質を生成する酵素活性を1uとした。また、下式におけるAs は、275nmにおけるチロシン50mg/mlの吸収であって、ここでは、391なる数値を採用している。【0040】【表1】【0041】【表2】【0042】これらの表の結果から明らかなように、蛋白分解酵素(エスペラーゼ)に対して、AMPDやAMP・HClを所定量配合せしめることによって、蛋白分解酵素の安定化が良好に図られ得ることとなったのであり、特に、20〜70w/v%程度のAMPDやAMP・HClの添加により、酵素が著しく安定化された状態で、供給され得ることは明らかであり、中でも、蛋白分解酵素をより安定化させるためには、好ましくは30〜70w/v%程度、より好ましくは45〜65w/v%程度添加するのが望ましいのである。【0043】また、公知の安定化方法との比較を行なうために、蛋白分解酵素(クリアレンズプロ 2.5MG:ノボ・ノルディスク・バイオインダストリー株式会社製、バチルス属由来のセリンプロテアーゼ)に、本発明に従うAMPD若しくはAMP・HCl、または公知のトロメタモール、グリセリン若しくはプロピレングリコールを、それぞれ、2.5M添加し、前記と同様に精製水ににて100mlに定容する一方、塩酸又は水酸化ナトリウムにより、それぞれpH7.0に調整して、それぞれ、液体洗浄組成物を得た。次いで、この得られた液体洗浄組成物について、60℃で1日間保存した後、又は50℃で1週間保存した後の残存酵素活性を、前記と同様にして求め、その結果を、下記表3に示した。この表3の結果から明らかなように、本発明に従う安定化成分として、AMPDやAMP・HClを用いた液体洗浄組成物(処方例24や処方例25)にあっては、公知の安定化成分たるトロメタモールやグリセリン、プロピレングリコールで安定化された処方例26〜28の液体洗浄組成物に比較して、安定性において勝っているのである。【0044】【表3】【0045】さらに、上記の処方例24、25及び27、28に係る液体洗浄組成物を用いて、汚れ付着防止効果試験を行ない、コンタクトレンズに対する汚れ付着の防止効果を評価した。即ち、先ず、前記表3における処方例24、25又は27、28の液体洗浄組成物を用い、それら液体洗浄組成物をレンズケースにそれぞれ2滴滴下し、市販の保存液(クリーンボトルソーク:株式会社メニコン)1.8mlにて希釈した。次いで、そこに、蛋白質汚れ成分として、1%リゾチーム溶液を0.2ml添加した後、更に含水性コンタクトレンズ(メニコンソフトMA:株式会社メニコン)の1枚を浸漬し、そしてコンタクトレンズ用煮沸消毒器(サーモライザー:株式会社メニコン)を用いて、2段階の加熱(50℃×1時間、100℃×10分)にて、煮沸消毒した後、コンタクトレンズをレンズケースから取り出し、生理的食塩水を用いて、常法に従って擦り濯ぎした。【0046】そして、このような含水性コンタクトレンズに対する処理を3回繰り返した後、得られた含水性コンタクトレンズについて、蛍光光度計を用いて、蛋白質の付着量を測定し、その結果を、下記表4に示した。この表4の結果から、公知の安定化成分たるグリセリンやプロピレングリコールで安定化された液体洗浄組成物を用いた場合にあっては、レンズに対する汚れの付着が著しいことが認められる。このグリセリンやプロピレングリコールを用いた結果と比較すると、本発明に従ってAMPDやAMP・HClを安定化成分とする液体洗浄組成物にあっては、含水性コンタクトレンズへの蛋白の付着量は、約1/2〜1/10の汚れの付着量となっているのである。【0047】【表4】【0048】【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物にあっては、蛋白分解酵素の安定化成分として、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール又は2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール或いはそれらの塩が用いられていることによって、かかる蛋白分解酵素の著しい安定化が図られ得、以て長期間保存された場合にあっても、優れた酵素活性が保持され得ることとなったのであり、また洗浄に際して、更には装用中においても、汚れ、特に蛋白質汚れの付着防止効果が、効果的に発揮され得るものとなったのである。要するに、本発明に従うコンタクトレンズ用液体洗浄組成物は、酵素の安定性及び汚れ付着防止効果の両方の効果を兼ね備えたものであって、そこに、格別の技術的意義を有しているのである。【0049】また、本発明に従うコンタクトレンズの洗浄方法によれば、上述の如き優れた特性を備えた液体洗浄組成物を用いて、それを、単に、所定の水系希釈媒体にて希釈して、レンズを浸漬するだけで、高い洗浄効果と汚れ付着防止効果が得られることとなるのである。 有効量の蛋白分解酵素と共に、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール並びにそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の酵素安定化のための成分を、5w/v%以上の割合において水性媒体中に含有せしめてなることを特徴とするコンタクトレンズ用液体洗浄組成物。 pHが5.5〜7.5の範囲内に調整されている請求項1記載のコンタクトレンズ用液体洗浄組成物。 有効量の蛋白分解酵素と共に、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール並びにそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の酵素安定化のための成分を、5w/v%以上の割合において水性媒体中に含有せしめてなる液体洗浄組成物を用い、それを水系希釈媒体にて希釈した後、得られた希釈液に、装用後のコンタクトレンズを浸漬せしめることを特徴とするコンタクトレンズの洗浄方法。 前記コンタクトレンズを前記希釈液に浸漬せしめた後、少なくとも5分間の煮沸処理を行なうことにより、同時に消毒処理をも行なう請求項3記載のコンタクトレンズの洗浄方法。 前記希釈液が更に有効量の殺菌剤を含有していると共に、該希釈液に対する前記コンタクトレンズの浸漬を、常温下において行なうことにより、同時に消毒処理をも行なう請求項3記載のコンタクトレンズの洗浄方法。