生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ビフィドバクテリウム菌用選択培地
出願番号:1997201060
年次:2007
IPC分類:C12N 1/20,C12Q 1/04


特許情報キャッシュ

園池 耕一郎 柴田 未来 JP 3946313 特許公報(B2) 20070420 1997201060 19970711 ビフィドバクテリウム菌用選択培地 株式会社ヤクルト本社 000006884 花村 太 100101432 佐藤 正年 100092082 佐藤 年哉 100099586 園池 耕一郎 柴田 未来 20070718 C12N 1/20 20060101AFI20070628BHJP C12Q 1/04 20060101ALI20070628BHJP JPC12N1/20 AC12Q1/04 C12N 1/00-1/38 C12Q 1/02-1/08 PubMed JSTPlus(JDream2) JMEDPlus(JDream2) 特開平04−020283(JP,A) 特開昭60−114186(JP,A) 特開平07−099995(JP,A) Journal of Dairy Science. 1994, Vol.77, No.2, p.393-404 園池耕一郎 他,発酵乳製品中のBifidobacterium生菌数測定用選択培地の検討,食品衛生学雑誌,1986年 6月 5日,Vol.27,No.3,p.238−244 2 1999028098 19990202 11 20030811 清水 晋治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ビフィドバクテリウム菌と乳酸菌とを含有する飲食物、医薬品等の中のビフィドバクテリウム菌数を測定するための選択培地に関するものである。【0002】なおこの明細書では、細菌の培養に直ちに使用し得る状態にある培地のほか、水に溶かして滅菌したのち培養に供するための、水以外の培地構成成分の混合物またはセットを含む意味で培地という。【0003】【従来の技術】ビフィドバクテリウム菌は乳児および成人のいずれにとっても健康と深いかかわりを持つ有用腸内細菌の一つである。このため、ビフィドバクテリウム菌を日常的に簡単に摂取できるように、ビフィドバクテリウム菌を含有させた飲食物やビフィドバクテリウム菌製剤が多数商品化されている。【0004】これらビフィドバクテリウム菌含有飲食物等は、ビフィドバクテリウム菌だけを含有するものもあるが、発酵乳の形態をとったものは、乳製品に関する厚生省令との関係から乳酸菌も含有させたものが多い。【0005】これらビフィドバクテリウム菌と乳酸菌の両方を含有する飲食物等の製造および販売を行うに当っては、品質管理上、ビフィドバクテリウム菌を乳酸菌と区別してその正確な生菌数を測定することが必要になる。【0006】ビフィドバクテリウム菌生菌数を測定するには、検体希釈物を通常の培地に接種して培養し、生じたコロニーの色や形態に基づき選別されるビフィドバクテリウム菌のコロニーを計数する方法もあるが、この方法はコロニーの識別に高度の熟練を要するばかりかビフィドバクテリウム菌の菌数が少ないと精度が悪いという問題点がある。【0007】一方、乳酸菌は実質的に増殖させずにビフィドバクテリウム菌を優先的に増殖させることができる培地(いわゆる選択培地)に検体を接種して培養し、総コロニー数からビフィドバクテリウム菌数を知る方法がある。選択培地の例としては、ビフィドバクテリウム菌と乳酸菌が共にコロニーを形成し得る培地に乳酸菌の増殖抑制剤を添加して選択性を付与した培地、たとえば塩化リチウムとペニシリンを添加したMGLP培地(食品衛生学雑誌・第23巻第39〜44頁)、プロピオン酸ナトリウムと塩化リチウムとを添加したRB培地(Journal of Microbiological Methods,vol.27,33■43)等が知られているが、この種の選択培地では乳酸菌だけでなく一部のビフィドバクテリウム菌の増殖も抑制される傾向があって、正確な測定値を得ることができなかった。【0008】特公平4−29359号公報に記載されているビフィドバクテリウム菌用選択培地では、ビフィドバクテリウム菌のみが資化し得る炭素源として一般式 Gal-(Gal)n-Glc (但し式中 Gal はガラクトース残基、Glc はグルコース残基、n は1〜4の整数を、それぞれ表わす)で示されるオリゴ糖またはこれとキシロースとを用い、窒素源として、酵素による蛋白質加水分解物であって分子量が5,000〜10,000のものおよび糖不含のカゼイン加水分解物であってアミノ酸を主要成分とするものを用いることにより、目的とする選択性を実現している。しかしながら、この選択培地でも、多数の乳酸菌菌株の中の一部のものは増殖可能であることが、検査対象乳酸菌菌株を拡大した実験の結果確認された。また、この選択培地では使用する窒素源についてきわめて厳格な要件があり、酵母エキス等、入手容易な窒素源を採用したのでは精度のよい測定値を得ることができない。【0009】【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目的は、乳酸菌とビフィドバクテリウム菌とが混在する検体よりビフィドバクテリウム菌だけを選択的に且つ旺盛に増殖させ、それによりビフィドバクテリウム菌数の正確な測定を可能にする、高度の選択性を備えたビフィドバクテリウム菌用選択培地を提供することにある。【0010】本発明の他の目的は、高度の選択的増殖を可能にする点でに優れているだけでなくその選択性が安定していて、測定結果の信頼性が高いビフィドバクテリウム菌用選択培地を提供することにある。【0011】【課題を解決するための手段】本発明によるビフィドバクテリウム菌用の選択培地は、一般式 Gal-(Gal)n-Glc (但し式中 Gal はガラクトース残基、Glc はグルコース残基、n は1〜4の整数を、それぞれ表わす)で示されるオリゴ糖(以下、ガラクトオリゴ糖という)を必須の炭素源として含有し、乳酸菌の増殖抑制剤としてプロピオン酸またはその塩(好ましくはナトリウム塩)を含有し、上記オリゴ糖以外の炭素源を含有する場合における該炭素源、窒素源およびその他の補助成分はこの培地による嫌気培養において乳酸菌の増殖を実質的に助長しないものより選ばれてなるものである。【0012】なお、この明細書では、添加量の多少にかかわらず乳酸菌の増殖を助長しない成分のほか、添加量が多い場合だけ乳酸菌を増殖させる作用が現れるものを乳酸菌増殖助長作用が実質的に現れない範囲で使用する場合における当該成分を包含する意味で、“乳酸菌の増殖を助長しないもの”という。【0013】【発明の実施の形態】本発明の選択培地において乳酸菌の増殖抑制成分として用いるプロピオン酸またはその塩(以下、プロピオン酸類という)は、前述のように塩化リチウムと組み合わせて選択培地における乳酸菌の増殖抑制に使われたものであるが、それ単独では乳酸菌の増殖抑制は不完全であり、かえって増殖を促進する場合もあることが確認されている。しかるに、ビフィドバクテリウム菌のための炭素源としてガラクトオリゴ糖を用いた培地(以下、TOS培地という)にプロピオン酸類を添加した場合は、両者の協同作用により乳酸菌の増殖はほぼ完全に抑制され、十分満足できる選択性が達成されることがわかった。【0014】本発明は上記新規な知見に基づきTOS培地の選択性を顕著に改善することに成功したものである。以下、本発明の選択培地の組成について詳述する。【0015】ビフィドバクテリウム菌のための必須の炭素源として用いるガラクトオリゴ糖は、アスペルギルス・オリゼの生産したβ-ガラクトシダーゼでラクトースを処理することにより得られる転移オリゴ糖であって、その組成および製造法は特公昭58−20266号公報等に詳しく説明されている。製法に由来する不純物としてグルコースやガラクトースを高率で含むものは乳酸菌の増殖を許すので、純度99.5%以上まで精製したものを用いることが望ましい。【0016】本発明の選択培地にはガラクトオリゴ糖と共にビフィドバクテリウム菌が資化可能な(ただし乳酸菌によっては資化されない)他の糖類たとえばキシロース、アラビノース、ラフィノース等を、必要に応じて含有させることができる。たとえば、きわめてまれにではあるが炭素源としてガラクトオリゴ糖のみを含有する培地中では増殖しにくいビフィドバクテリウム菌があるので、そのようなビフィドバクテリウム菌の存在を無視できない場合はキシロースなどすべてのビフィドバクテリウム菌に資化され易い単糖類を併用してビフィドバクテリウム菌数の測定精度を向上させることができる。【0017】乳酸菌増殖抑制剤として添加するプロピオン酸類の必要濃度は、TOS培地の基本組成によっても異なるが、おおむね4.5〜20g/lの範囲にある。TOS培地におけるビフィドバクテリウム菌の増殖に対してもプロピオン酸類の阻害作用が現れるのは濃度約30g/l以上であるから、本発明の選択培地には、乳酸菌の増殖抑制を確実なものにするため上記必要量の約2倍量までのプロピオン酸類を含有させることができる。【0018】培地に含有させるプロピオン酸類としてはアルカリ金属塩が使い易く、中でもナトリウム塩は入手容易なので好ましい。【0019】乳酸菌の増殖を抑制するためにガラクトオリゴ糖とプロピオン酸類を用いることは、本発明において必要条件であるが十分条件ではない。上記2成分を用いても、ガラクトオリゴ糖以外の炭素源、窒素源その他の補助成分のいずれかが乳酸菌の増殖を助長するものであるときは一部の乳酸菌が有意な水準まで増殖するのを抑えることができない。たとえば、ビフィドバクテリウム菌用培地に慣用されているソルビタン高級脂肪酸エステル系の非イオン界面活性剤・Tweenは、ガラクトオリゴ糖とプロピオン酸類を併用する本発明の培地においてもかなりの数の乳酸菌を増殖可能にする。したがって、ガラクトオリゴ糖とプロピオン酸類以外の培地成分を選定するに当たっては、疑わしいものについては乳酸菌の増殖を可能にする作用が無いことを確認してから使用する必要がある。【0020】この種の培地のための窒素源としてしばしば用いられる酵母エキス、各種蛋白質加水分解物、アミノ酸混合物等は、品質が安定せず、しかもその中の少量成分が乳酸菌の増殖を助長することが多いので、多量に用いると乳酸菌の増殖を助長することが多い。したがって、これらの窒素源を用いる場合においては良質のものを乳酸菌の増殖に影響のない範囲で、必要最小限度使用することが望ましい。【0021】硫酸アンモニウムは、特にビフィドバクテリウム・ビフィダムのための窒素源として有効な窒素化合物である。【0022】このほか、システイン塩酸塩のような含硫アミノ酸、硫酸マグネシウムのようなマグネシウム塩は、本発明の選択培地のための補助成分としてきわめて有効なものである。【0023】培地のpHは培養の末期まで6.7〜7.0に維持されることが望ましいので、培地にはそのために有効な緩衝剤たとえばリン酸カリウムを十分に加えることが望ましい。【0024】本発明による選択培地の標準的な組成 (水を含む培地当りの重量%) は次のとおりである。【0025】ガラクトオリゴ糖 0.5〜3.0キシロース 0〜3.0プロピオン酸類 0.5〜3.0トリプチケースペプトン(米国BBL社製品) 1.0〜2.0酵母エキス 0.05〜0.1硫酸アンモニウム 0.005〜0.5システイン塩酸塩1水和物 0.03〜0.1硫酸マグネシウム7水和物 0.01〜0.04リン酸1カリウム/リン酸2カリウム 0.1/0.16〜0.4/0.64寒天 1.0〜1.5【0026】本発明による選択培地を調製しビフィドバクテリウム菌数の測定に使用する方法に特殊なものは必要なく、常法によりガスパック法やスティールウール法等の嫌気培養を行えばよい。【0027】以下、実験例を示して本発明を説明するが、各実験に用いたガラクトオリゴ糖は前記特公昭58-20266号公報記載の実施例1に準じて製造したものであって、99.7%が3〜6糖類からなり、残りはラクトース、ガラクトースおよびグルコースである。【0028】比較例1下記組成のRB培地、TOS培地およびBL培地を用い、ビフィドバクテリウム菌5種25株、乳酸菌12種19株を下記条件で培養した。【0029】培養条件:37℃で72時間、嫌気的に培養する。菌株は表面塗抹する。【0030】RB培地:ラフィノースを唯一の糖として含有し、ほかに乳酸菌増殖抑制剤としてプロピオン酸ナトリウムおよび塩化リチウムを含有する公知のビフィドバクテリウム菌用選択培地。【0031】TOS培地:ガラクトオリゴ糖を唯一の糖として含有するビフィドバクテリウム菌用選択培地。【0032】BL培地:ビフィドバクテリウム菌と乳酸菌の両方が増殖可能な標準培地。【0033】培地組成の詳細を表1〜表3に示す。【0034】【表1】RB培地組成(数値はいずれも培地1000ml中の量)カゼインナトリウム 5.0g酵母エキス 5.0gチオグリコール酸ナトリウム 0.5g1%ブロムクレゾールパープル 15.0ml塩酸 0.5gラフィノース 7.5gL-システイン塩酸塩 0.5g塩化リチウム 3.0gプロピオン酸ナトリウム 15.0g寒天 18.0g塩溶液 40.0mlpH 6.7±0.1(注)塩溶液組成:MgSO4 0.2g/l,CaCl2 0.2g/l,K2PO4 1.0g/l,KH2PO4 1.0g/l,NaHCO3 10.0g/l,NaCl 2.0g/l【0035】【表2】TOS培地(単位:重量%)トリプチケースペプトン(米国BBL社) 5.0酵母エキス 0.1リン酸1カリウム 0.3リン酸2カリウム 0.48硫酸アンモニウム 0.3システイン塩酸塩1水和物 0.05硫酸マグネシウム7水和物 0.02ガラクトオリゴ糖 1.0寒天 1.5【0036】【表3】BL培地牛肉エキス 3gプロテオースペプトン 10gトリプチケースペプトン(米国BBL社) 5gフィトン(米国BBL社) 3g酵母エキス 5g肝臓抽出液 150mlブドウ糖 10g可溶性デンプン 0.5g溶液A 10ml溶液B 5mlTween80 1g寒天 15gL-システイン塩酸塩1水和物(5%溶液)10mlウマ血液 50ml精製水 765ml【0037】(注) 溶液A:KH2PO4 25gとK2HPO4 25gを精製水250mlに溶解したもの。溶液B:MgSO4・7H2O 10g,FeSO4・7H2O 0.5g,NaCl 0.5g,MnSO40.337gを精製水250mlに溶解したもの。【0038】培養終了後、培地上のコロニー数を数えた。各菌株について、BL培地上の菌数を100としたときの各種培地上の菌数を表4に示す。【0039】RB培地ではラクトバチルス・サリバリウスのコロニーが形成され、また、ビフィドバクテリウム・ビフィダム等、一部のビフィドバクテリウム菌の増殖が抑制された。TOS培地では、ビフィドバクテリウム菌のコロニー形成は良好であったが、ラクトバチルス・カゼイ等いくつかの乳酸菌もコロニーを形成した。【0040】【表4】各種培地におけるビフィドバクテリウム菌および乳酸菌の増殖【0041】(注) B:ビフィドバクテリウム L:ラクトバチルスE:エンテロコッカス S:ストレプトコッカス(表5においても同じ)【0042】実施例1比較例1で用いたTOS培地およびBL培地、ならびにTOS培地にプロピオン酸ナトリウム(1.5%)を含有させた本発明の選択培地により、ビフィドバクテリウム菌5種26株、および乳酸菌5株(比較例1においてTOS培地上にコロニーを形成したもの)の培養を行なった。培養条件は、培養を混釈培養により行なったほかは比較例1の場合と同様にした。【0043】その結果は表5のとおりで、プロピオン酸ナトリウムを添加したTOS培地では乳酸菌の増殖がほぼ完全に抑制され、しかもビフィドバクテリウム菌はBL培地とほとんど同等の水準で増殖することが確認された。【0044】【表5】各種培地におけるビフィドバクテリウム菌および乳酸菌の増殖 一般式 Gal-(Gal)n-Glc(但し式中 Gal はガラクトース残基、Glc はグルコース残基、n は1〜4の整数を、それぞれ表わす)で示されるオリゴ糖を必須の炭素源として1.0重量%含有し、 乳酸菌の増殖抑制剤としてプロピオン酸ナトリウムを1.5重量%含有し、 補助成分として硫酸アンモニウム、システイン塩酸塩および硫酸マグネシウムを含有することを特徴とする、ビフィドバクテリウム菌と乳酸菌とを含有する物の中のビフィドバクテリウム菌数を測定するための選択培地。 オリゴ糖以外の炭素源を含有する場合における該炭素源としてキシロースを含有することを特徴とする請求項1に記載の選択培地。


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