生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_L−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩及びその製造方法
出願番号:1997153972
年次:2006
IPC分類:C07F 9/655,A61K 8/24,A61K 8/27,A61Q 15/00


特許情報キャッシュ

鈴木 雅博 続木 敏 JP 3772468 特許公報(B2) 20060224 1997153972 19970611 L−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩及びその製造方法 昭和電工株式会社 000002004 柿沼 伸司 100118740 鈴木 雅博 続木 敏 20060510 C07F 9/655 20060101AFI20060413BHJP A61K 8/24 20060101ALI20060413BHJP A61K 8/27 20060101ALI20060413BHJP A61Q 15/00 20060101ALI20060413BHJP JPC07F9/655A61K8/24A61K8/27A61Q15/00 C07F 9/655 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平08−012693(JP,A) 特開平08−269074(JP,A) 8 1999001487 19990106 7 20020425 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は新規なL−アスコルビン酸−2−リン酸塩、その製造方法、及びその使用法等に関する。更に詳しくは、L−アスコルビン酸−2−リン酸塩で溶解性、安定性を向上させ、溶解時のpHがアルカリ性に片寄ることはなく、抗菌性を持ち合わせたたL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩およびその含水塩(以下、特に断りのない限り含水塩を含め「L−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩」と記載する)、それらの製造方法及びそれらの使用法に関する。該塩を用いることにより溶解性、安定性、抗菌性(防腐、防臭、ふけ防止効果等の性質を含む)を向上させた弱酸性でも安定なL−アスコルビン酸−2−リン酸含有製剤(例えば、化粧料、医薬製剤、農薬製剤、動物薬製剤、食品、飼料など)を得ることができる。【0002】【従来の技術】L−アスコルビン酸(ビタミンC)は過酸化脂質抑制、コラーゲン形成促進、メラニン形成遅延、免疫機能増強等数多くの作用があり、従来からそれらの目的で医薬,農薬,動物薬,食品,飼料,化粧料等の分野で使われ、L−アスコルビン酸を含有する製剤が多く市販されている。しかしながら、L−アスコルビン酸は、経時安定性が悪く、必ずしもそれら製剤を使用してもビタミンCの効果を十分得られていない。そこで、安定性を改善するために酸化を受け易い2, 3位のエンジオール部水酸基をグリコシル化した誘導体(例えば特開平5−117290号公報)やリン酸エステル化した誘導体(例えば特公昭52−18191号公報、特開平2−279690号公報等)などが提案されている。しかし、L−アスコルビン酸−2−グリコシド塩類はL−アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩類と比べると生体内( 特にヒト) でのL−アスコルビン酸への変換は遅く、即効性がないと同時に十分なビタミンC効果を得にくいという重大な欠点を有している。【0003】L−アスコルビン酸−2−リン酸塩類は、即効性があり、十分なビタミンC効果を得易いが、従来知られているL−アルコルビン酸−2−リン酸塩はMg塩、Ca塩、Na塩等であり、これらの塩のうち、安定性の優れたL−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩は溶解性が十分高いとは言えず30%以上の濃度の水溶液を調製するのは困難である。カルシウム塩はほとんど水に溶解しない。また、十分に溶解性の改善されたL−アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム塩は容易に30%程度の濃度の水溶液を得ることができるが、同マグネシウム塩ほどの安定性はない。また、それらいずれの塩も溶解時のpHは8〜10前後のアルカリ性を呈し、弱酸性にpHを調製した場合安定性が低下する欠点を有していた。以上の様なL−アスコルビン酸誘導体が提案されているが、溶解性が優れ、弱酸性でも十分に安定なL−アスコルビン酸−2−リン酸塩は未だ得られていない。一般に塩を得る場合、酸,塩基の中和を利用することが多い。しかし、L−アスコルビン酸−2−リン酸溶液は強い酸性を示し不安定であるため、L−アスコルビン酸−2−リン酸塩の工業的規模の製造においてこのような方法は不利である。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、溶解性に優れ、また弱酸性下でも安定性の十分改善されたL−アスコルビン酸−2−リン酸塩であるL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩を提供することである。更に抗菌効果を併せ持つ該塩を提供することでもある。また、L−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩を製造する方法、化粧料、医薬製剤、農薬製剤、動物薬製剤、食品、飼料などに用い、ビタミンCの作用や抗菌、防腐、防臭、または、ふけ防止効果等を高める方法を提供することである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは上述の事情に鑑み鋭意研究した結果、従来知られていなかったL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩は、溶解性および弱酸性下での安定性が十分改善され、更に抗菌( 防腐) 効果を併せ持つ化合物であることを見出した。本発明の化合物の製造方法は、例えば可溶性L−アスコルビン酸−2−リン酸塩を原料としてイオン交換等を用いる製造方法、また、必要に応じてそれらと他の精製法とを組み合わせた製造方法等があるが、これらに限定されるものではない。【0006】【発明の実施の形態】L−アスコルビン酸−2−リン酸をApと表すと本発明の亜鉛塩はAp2 Zn3 である。その構造は下記の式(1)の通りである。【化1】Ap2 Zn3 は白色の粉末であり、無水物または含水塩として得ることができる。含水塩はAp2 Zn3 の水和物Ap2 Zn3 ・nH2 Oと考えられる。【0007】本発明のL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩及びその含水塩は、好ましくは陽イオンの全電荷の95%以上が亜鉛由来であり、かつ陰イオンの全電荷の95%以上がL−アスコルビン酸−2−リン酸由来である。従って全量として上記の陽イオン及び陰イオンが含まれていればよく、それにはAp2 Zn3 が95%以上存在する場合の他、例えば1部Ap2 Zn2 Mg等が存在するが、全体の亜鉛イオンとして95%以上になる場合が挙げられる。本発明のL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩の製造方法は、例えば可溶性L−アスコルビン酸−2−リン酸の亜鉛以外の塩(Ap2 Mg3 等)を原料としてMg等の元素を化学反応あるいはイオン交換等により亜鉛元素に置換する方法が挙げられる。またこれらと精製法とを組み合わせることもできる。化学反応としては、例えばAp2 Mg3 +3ZnCl2 → Ap2 Zn3 +3MgCl2などがある。イオン交換を用いる製造方法では、原料の可溶性L−アスコルビン酸−2−リン酸塩は必ずしも精製されたものでなくてもよく、例えばL−アスコルビン酸とオキシ塩化リンとを反応させて得られるL−アスコルビン酸−2−リン酸塩含有溶液を用いることもできる。イオン交換は、例えば陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー等を用いることができる。【0008】陽イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いる場合、亜鉛型にした陽イオン交換樹脂(好ましくは強陽イオン交換樹脂)塔にL−アスコルビン酸−2−リン酸塩溶液を通液し、L−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩水溶液を溶離させることができる。陰イオン交換クロマトグラフィーを用いる場合、陰イオン交換樹脂塔にL−アスコルビン酸−2−リン酸塩を含む溶液を通液しL−アスコルビン酸−2−リン酸イオンを樹脂に吸着させる。これに亜鉛塩溶液を通液し、L−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩分を分取する。なお、カラムに添加するL−アスコルビン酸−2−リン酸塩溶液に溶解性の低い亜鉛塩を形成する物質が含まれる場合、あらかじめそれらを除去する等の処置(例えばリン酸イオンの場合、亜鉛塩、マグネシウム塩などを添加し、沈殿除去する)をするとカラムクロマトグラフィーをより有利に行うことができる。クロマトグラフィー条件(温度、流速、添加液組成,濃度,液量など)はカラムクロマトグラフィーにおける一般的事項(カラムの規模、樹脂の物理的特性、交換容量、分離能、添加液の粘度,溶解度等)を考慮して設定すればよい。得られたL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛を含む溶液より、そのままあるいは有機溶媒沈殿等を経て、噴霧乾燥,減圧乾燥,凍結乾燥等で溶媒を除去することによりL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩の粉末が得られる。有機溶媒沈殿を用いL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩の粉末を得る場合、陰イオン交換法でカラムに添加する亜鉛塩は有機溶媒への溶解性の高い塩(例えば、有機溶媒としてアセトンを用いる場合、塩化亜鉛、プロピオン酸亜鉛など)を用いると純度的により有利となる。【0009】このようにして得られたL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩は溶解性が優れ50%以上の水溶液を調製することは容易である。また、本発明のL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩は弱酸性下でも安定性に優れ、このようなpH領域でも安定性の十分改善されたL−アスコルビン酸−2−リン酸塩含有組成物を得ることができる。更に抗菌効果(防腐、防臭、ふけ防止効果等を含む)を併せ持つ組成物も得られる。また組成物を人や動物に投与することによりビタミンCを有効に供給することができる。このような組成物としては例えば、化粧料、医薬製剤、農薬製剤、動物薬製剤、食品、飼料等がある。これらの組成物の成分、それに添加するL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩の添加量は従来のL−アスコルビン酸−2−リン酸塩を使用する場合と同様でよい。【0010】【実施例】以下、本発明の実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。以下の実施例、試験例では、L−アスコルビン酸−2−リン酸またはそのイオンの分析は、濃度既知のApを含む溶液(L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩で調製)をスタンダードとしShodex IEC DEAE−825によるHPLC法(酢酸アンモニウム 10mM→1M グラジエント、A265nmで検出)で行い、元素分析はICP発光法,炎光光度法,イオンクロマトグラフィー法で行った。また、試薬類は特に指定のない限り市販試薬を用いた。【0011】(実施例1)窒素雰囲気下で、L−アスコルビン酸10gを水135mlとピリジン15gとの混合溶媒に溶解し、0℃に冷却し、12%(重量%、以下同じ)水酸化カリウム溶液でpH11.5にした。オキシ塩化リン15gを液温を0〜5℃に保ちながら定量ポンプにて添加した。添加の間、pHは12%水酸化カリウム溶液で11.45〜11.55に保った。添加終了後、そのままの温度で、10分間攪拌後、これに1.5M塩化マグネシウム溶液70mlを徐々に添加し、さらに30分間攪拌した後、沈殿物を吸引ろ過で除去した。【0012】この溶液を、OH型にした陰イオン交換樹脂ダイヤイオン SA 10A(三菱化成、商品名)カラム2.5cmφ×50cmに添加し、水1Lで洗浄した。通液方向を反転し、3M塩化亜鉛溶液250mlを10ml/minで添加し、溶離液250mlを集めた。これにアセトン1Lを徐々に加え、30分間攪拌後、沈殿物を吸引ろ過で集め、200mlのアセトンで3回洗浄し、真空乾燥し粉末4.3gを得た。この粉末を100ppmとなるように精製水に溶解し、前記HPLC法で分析したところ、この溶液はApを含み、濃度は56.7ppmであった。これより得られた粉末はAp56.7%を含む。またこの粉末の元素分析を行ったところ、C:16.2%,H:3.6%,O:50.2%,P:7.0%,Zn:22.3%,Mg:0.1%,Cl:0.4%,K:<0.1%であった。これらより、この粉末はAp2 Zn3 ・10H2 Oとして純度95%以上である。【0013】(実施例2)陽イオン交換樹脂ダイヤイオン SK 1B(三菱化成、商品名)カラム5cmφ×25cmに1M硫酸1.5L、水0.5L、1M硫酸亜鉛1L、水2Lを20ml/minで順次添加し、樹脂を亜鉛型にした。これにL−アスコルビン酸PM(L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩、昭和電工(株)、商品名)の10%水溶液0.5L、水0.5Lを10ml/minで順次添加し、溶離液1Lを集めた。集めた溶離液を凍結乾燥し、粉末52gを得た。この粉末を100ppmとなるように精製水に溶解し、前記HPLC法で分析したところ、この溶液はApを含み、濃度は58.6ppmであった。これより得られた粉末はAp58.6%を含む。またこの粉末の元素分析を行ったところ、C:16.7%,H:3.5%,O:50.1%,P:7.2%,Zn:22.5%,Mg:<0.1%であった。これらより、この粉末はAp2 Zn3 ・9H2 Oとして純度99%以上である。なお特に断りのない限り、以下の試験例1,2、実施例3では本実施例で得られたL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩を用いた。【0014】(試験例1)安定性L−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩とL−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩とで安定性の比較をした。各塩を約0.1%となるように緩衝液(50mM 酢酸−NaOH、pH5または50mM Tris−HCl pH8)に溶解し、50℃,476時間保存した。保存前後のL−アスコルビン酸−2−リン酸濃度をHPLC法で分析した。【0015】【表1】本発明のL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩は弱酸性下でもほとんど安定性が低下しない。【0016】(試験例2)抗菌性NUTRIENT BROTH(DIFCO社製)にL−アスコルビン酸−2−リン酸塩類0.1%を添加し塩酸または水酸化ナトリウムでpHを6.8に調製した培地5mlを用い、試験菌を約107 個/mlとなるように接種し37℃24時間試験管培養した。培養後、濁度の上昇が認められたものに+、そうでないものに−とし、結果を表2に示した。なお、コントロールとしてL−アスコルビン酸−2−リン酸塩類を添加しない培地を用いて同様な試験も行った。【0017】【表2】本発明のL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩は抗菌性を有している。【0018】(実施例3)化粧料化粧料としての組成物の1例を下記に示す。【表3】上記(A)成分および(B)成分をそれぞれ80℃に加熱した後、混合し、攪拌する。50℃まで冷却後(C)成分を加えて更に攪拌混合し、均一なクリームを調製した。【0019】【発明の効果】本発明のL−アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩は、溶解性および弱酸性下での安定性が高く、抗菌性を併せ持つ。これを、化粧料、医薬製剤、農薬製剤、動物薬製剤、食品、飼料に用いることにより、溶解性、安定性が改善され、抗菌性を持つビタミンC含有製剤が得られる。 L-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩。 L-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩の含水塩。 陽イオンの全電荷の95%以上が亜鉛由来であり、かつ陰イオンの全電荷の95%以上がL-アスコルビン酸−2−リン酸由来である請求項1または2記載のL-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩。 L-アスコルビン酸−2−リン酸の亜鉛以外の塩を亜鉛塩に置換することにより請求項1または請求項3記載のL-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩を製造する方法。 イオン交換を用いることを特徴とする請求項4記載のL-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩の製造方法。 請求項1〜3記載のL-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩を有効成分として含有する組成物。 請求項1〜3記載のL-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩を有効成分として含有する化粧料。 請求項1〜3記載のL-アスコルビン酸−2−リン酸亜鉛塩を有効成分として含有するビタミンC剤。


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