タイトル: | 特許公報(B2)_核酸融解温度測定法 |
出願番号: | 1997147825 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 33/566,C12Q 1/68,G01N 21/78,G01N 33/50,G01N 33/58 |
石黒 敬彦 斎藤 寿一 JP 3785517 特許公報(B2) 20060331 1997147825 19970605 核酸融解温度測定法 東ソー株式会社 000003300 石黒 敬彦 斎藤 寿一 20060614 G01N 33/566 20060101AFI20060525BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20060525BHJP G01N 21/78 20060101ALI20060525BHJP G01N 33/50 20060101ALI20060525BHJP G01N 33/58 20060101ALI20060525BHJP JPG01N33/566C12Q1/68 AG01N21/78 CG01N33/50 PG01N33/58 A G01N 33/566 C12Q 1/68 G01N 21/78 G01N 33/50 G01N 33/58 特開平08−211050(JP,A) 8 1998332701 19981218 14 20040428 竹中 靖典 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、DNAやRNA等の遺伝子混合中に含まれると予想される特定核酸配列の分析方法に関し、遺伝子診断等の臨床診断分野での利用、並びに未知遺伝子の探索等の分野での利用に有用であり、特に未知遺伝子の対照遺伝子配列に対する相同性を評価する方法、並びに遺伝子の変異を検出する方法として有用である。【0002】【従来の技術】核酸は、特定の塩基間で相補結合を形成し安定化する性質を有し、その安定性は温度に鋭敏に依存することが知られている。そこで、核酸の融解温度(Tm)の測定から、未知遺伝子の対照遺伝子に対する核酸配列上の類似性を評価することが可能となる。例えば、遺伝子の同定を行う必要のある分子進化学や細菌学の領域では、生物試料から得られた長い核酸配列を対象にするが、その核酸配列を決定することは実際上容易ではないことから、未知核酸と既知核酸の混合溶液において形成された相補結合複合体の融解温度を測定することによって既知の核酸配列に対する相同性を明らかにすることが行われる。また、遺伝病には特定の核酸配列の一部に変異が生じたことに起因する場合が知られているが、試料中の核酸のその注目する核酸配列に相補的な配列からなるオリゴマー(核酸プローブ)を用い、これと試料中の標的核酸との複合体の融解温度を測定し、その値を対象とする変異のない核酸の場合のそれと比較することによって標的核酸配列中の変異の有無を判定することも行われてきた。【0003】Tmの測定には、核酸の濃色効果(hyperchromicity)を用いる方法が従来から一般的に行われてきた。核酸は波長260nmに分光学的な吸収を有するが、1本鎖核酸から2本鎖核酸を形成するとその割合に応じて吸光度が顕著に減少することから、試料温度を変化させながら吸光度を測定し、得られた吸光度の温度に対するS字型の曲線からその中点をTmとする。【0004】Tmは、核酸の相補結合を形成する配列の長さ(n)、それに占めるG及びCの割合(%GC)、溶液中の塩(μ)及び変成剤の濃度(%FA)に依存していることが知られ、より一般的には、Tm=81.5+16.6log(μ)+0.41(%GC)−500/n−0.61(%FA)なる経験式が得られている。【0005】しかしながら、吸光度の測定からTmを求める上記の方法は、試料中の比較的微量の核酸に対しては、有効な手段とは言えない。ひとつには、吸光度測定は、Lambert−Berrの法則から一般的に2.0OD以下で測定すべきであるとされ、一方一般的な測定器の性能上の制約から0.1OD付近が感度の限界とされているからである。これは、核酸の濃度にして、およそ3―100μg/mlの範囲に限定されることを意味する。【0006】近年、ポリメレースチェインリアクション(PCR)法が開発されたことにより、試験管内条件下で試料中の特定核酸の特定領域を増幅することが可能となった。そこで、PCR法を用いて試料中の特定核酸の特定領域を増幅した後、その反応液を試料として用いることが可能であるが、その場合でも数10コピーの核酸からはng程度の増幅産物で吸光度を用いた上記の方法を適用するには十分とはいえない。【0007】さらに詳細な熱力学的な検討からは、Tmが核酸の濃度自身にも依存していることも明らかにされている(Breslauer et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 83, 3746-50, 1986 )。Breslauer らの研究成果によれば、例えば配列atgcatgcatgcatgcatgcの場合、塩濃度50mMの条件下で、核酸濃度が50nM、5nM、0.5nM及び0.05nMのそれぞれに対して融解温度67.5、63.5度C、59.5度C及び55.6度Cを与える。【0008】そこで、より感度の良好なTmの測定方式が求められる。【0009】例えば従来より、インターカレーター性蛍光色素が2本鎖核酸に配位して蛍光を増感する性質を用いて試料中に低濃度で存在する標的核酸に対しても高感度にTmを求める方法が知られている。この方法では、試料溶液にプローブとともにインターカレーター性色素を加え、溶液の温度を変化させながら蛍光強度を測定する。高温では核酸は相互に遊離しているが、溶液の温度を下げるに従い標的核酸とプローブとの複合体が形成され、これに伴い蛍光強度が増大が観測される。しかしながら、この方式では、たとえば試料溶液を降温させながら蛍光を測定する場合、試料中には標的核酸以外の核酸が含まれていること、また本来室温では2本鎖として存在する相補鎖どうしが再会合することや、標的核酸が1本鎖の場合であっても内部に2次構造を形成して安定化することから、それらの相補結合領域にもインターカレーターが配位し、これらに由来するバックグラウウンド蛍光が対象とする核酸とプローブとの複合体の融解温度の正確な決定を阻害することとなる。【0010】そこで、核酸吸着膜を用いたドットハイブリダイゼーション法による融解温度の測定も試みられている。すなわち、核酸を容易に吸着固定することが可能な膜が商業的に流通しているが、この表面に予め蛍光色素やアイソトープを標識したプローブと標的核酸との複合体を含む溶液をスポットし、乾燥した後、膜を所定の塩濃度のバッファーに浸し、温度を変化させては膜を取り出し膜表面に残った標識の蛍光強度あるいは放射活性を測定する。【0011】しかしながら、前記の方法は、操作が煩雑で信頼できる結果を得るには熟練を要する。例えば、より信頼性の高い結果を得る目的では、複合体をスポットした複数の膜を用意し所定温度に恒温したバッファーに所定時間膜を浸した後膜を取り出し蛍光強度あるいは放射活性の測定を行うことが行われるが、これによって操作がさらに煩雑となり労力も伴うことから、特に多数の検体を処理する必要のある臨床検査の現場では新たな課題を生じる。【0012】また、プローブと標的核酸との相補結合を形成させるには、反応液へプローブを添加後、二本鎖DNAを一旦融解し一本鎖とするための加温操作(デネーチャーリング/denaturing)と、その後冷却してプローブDNAに標的DNAとの二本鎖DNAを形成させるための操作( アニーリング/annealing )も、実際上は不可欠である。さらに、条件の決定や結果の解析において、膜のインキュベーションの過程で複合体そのものの膜からの剥離の可能性にも十分留意する必要もある。【0013】一方、発明者らによって、標的核酸の特定配列に相補的な核酸配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドにインターカレーター性蛍光色素を標識し、特定核酸と相補結合すると形成された二本鎖オリゴヌクレオチドにインターカレーションしその蛍光特性を変化するように設計した、特定の核酸配列の認識機能を具備するインターカレーター性蛍光色素標識プローブが開発された(特願平7−185599号公報/EP公開第714986号公報/Nucleic Acids Research、24(24)、4992−4997(1996))参照)。このインターカレーター性蛍光色素標識を既知配列のプローブとして用いれば、プローブが特定核酸と相補結合を形成すると標識されているインターカレーター性蛍光色素の蛍光特性が変化することから、相補結合を形成していないプローブを分離することなく、その相補結合の形成の有無及び形成された相補結合体の定量が可能となる。そこで、該プローブを試料中の特定核酸配列の分析を目的とする融解温度の測定に対して用いる方法が考案されることとなる。【0014】本発明は、以上の観点からなされたものであり、その目的はDNAやRNA等の遺伝子混合中に含まれる特定核酸配列の分析方法に関し、核酸の融解温度(Tm)を簡便かつ高精度に決定することを可能とする均一系での一段階の方法であって、遺伝子診断等の臨床診断分野での利用、並びに未知遺伝子の探索等の分野での利用に有用で、未知遺伝子の対照遺伝子配列に対する相同性を評価する方法、並びに遺伝子の変異を検出する方法を提供するところにある。【0015】【課題を解決するための手段】而して、かかる目的の実現のためになされた本発明よりなる核酸の融解温度測定法の特徴は、試料中の特定核酸の配列に相補的な配列を含むインターカレーター性蛍光色素で標識されたプローブを試料に添加し、該標識インターカレーター性蛍光色素が標的核酸と相補結合を形成するとその二本鎖オリゴヌクレオチドにインターカレーションし、その蛍光特性が変化することから、その反応液の蛍光強度を温度を変化させながら測定することによって融解温度を決定するところにある。【0016】本発明によれば、プローブが標的核酸と相補結合を形成するとプローブに標識されているインターカレーター性蛍光色素の蛍光強度が増加することから、相補結合に寄与しなかった余剰プローブを分離する工程を必要とせずに、その相補結合の形成の有無の検出及び形成された相補結合体の定量が可能となり、反応液の温度を変えながらその蛍光強度を測定することによって特定の核酸の融解温度を決定することを可能とする均一系での簡便な一段階の分析方法が提供される。【0017】従って、本発明によれば、試料中の標的核酸以外の2本鎖核酸や、本来室温では2本鎖として存在する相補鎖どうしの再会合、ならびに標的核酸が1本鎖の場合でもみられる内部が2次構造が形成される場合においても、インターカレーター標識プローブが標的核酸を配列特異的に識別し標的核酸と複合体を形成することによって蛍光強度を増大することから、試料溶液にプローブとともに単にインターカレーター性色素を添加して溶液の蛍光強度の温度変化を測定する融解温度測定方式におけるバックグラウウンド蛍光に由来する課題を回避することが可能となる。【0018】そこで、試料中の核酸のその注目する核酸配列に相補的な配列からなるインターカレーター標識プローブを用いて試料中の標的核酸との複合体の融解温度を測定すれば、その値を変異のない核酸との複合体の融解温度と比較することによって標的核酸配列中の変異の有無を判定することが可能となる。また、このようにして融解温度が得られれば、これとは逆に、インターカレーター標識プローブを含む試料溶液の蛍光を融解温度近傍で測定しその値を変異のない核酸試料の測定値と比較することによる変異の検出を目的とする簡便な一段階の分析方法も提供される。例えば、C型肝炎ウイルスにはそのRNAの配列によって複数のタイプがあり、インターフェロンの治療効果がそれらのタイプに依存していることが知られている。このような場合には、特に、その治療計画を立案する上で臨床的に有効な手段を提供することとなる。【0019】また、本発明によれば、複合体の存在を蛍光で検出することから、一般的に、吸光度の測定からTmを求める方法に比べて、試料中の比較的微量の核酸に対しても有効な手段を提供することになり、PCR法によっても数ng程度の増幅産物しか期待できない標的核酸を数10コピーしか含まない臨床試料も分析の対象とすることが可能である。【0020】一方、本発明によれば、均一系での分析が可能で相補結合に寄与しなかった余剰プローブを分離する工程を必要としないことから、核酸吸着膜を用いたドットハイブリダイゼーション法による融解温度の測定における、複合体を保持した膜の調製、バッファー中でのインキュベーション、またその後の膜の洗浄等の操作が不要で、操作がより簡便で労力も軽減され、特に短時間に多数の検体の処理が要求される臨床検査の現場での適応も可能となる。【0021】以下、本発明を詳細に説明する。【0022】本発明で使用するプローブは、標的核酸に相補的な核酸配列を含むオリゴヌクレオチドに、二本鎖DNAにインターカレーションすることによって蛍光特性が変化するインターカレーター性蛍光色素で標識したものである(特願平7−185599号公報/EP公開第714986号公報/Nucleic AcidResearch、24(24)、4992−4997(1996)参照)。ここで、インターカレーター性蛍光色素としては、二本鎖DNAにインターカレーションし蛍光特性が変化するものであれば特に制限はないが、インターカレーションにより蛍光強度が増加する性質を有するものが測定の容易性等の点から好ましく、特に蛍光強度の変化の著しいチアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー又はそれらの誘導体が好ましい。【0023】インターカレーター性蛍光色素は、共有結合等によってオリゴヌクレオチドへ標識されるが、適当な分子長のリンカーを介して標識されてもよい。リンカーとしては、インターカレーター性蛍光色素が二本鎖DNAにインターカレーションすることを妨げない分子であれば特に制限はないが、両末端に官能基を有する二官能性炭化水素から選択されるリンカー分子は、オリゴヌクレオチドへの修飾を行う上で簡便で好ましい。また例えば、市販の試薬セット(C6−Thiolmodifier、Clontech製)を使用することもできる。インターカレーター性蛍光色素のオリゴヌクレオチドへの標識部位は、オリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端又は中央部分等、インターカレーター性蛍光色素の二本鎖DNAへのインターカレーションが妨げられず、かつ、オリゴヌクレオチドの標的核酸との相補結合を阻害しない限り、いずれの部位であっても良い。なお、プローブの標的核酸に相補的な塩基配列部分の長さは、標的核酸に対する特異性を担保するため、6―100ヌクレオチド、特に10―30ヌクレオチドとすることが好ましい。【0024】本発明における反応液の蛍光測定には、市販の蛍光分光光度計を用いればよく、反応液にインターカレーターの吸収波長で励起光を照射しその蛍光波長で蛍光強度の測定が可能であれば特に制限はない。反応液の温度を連続的に変えながら蛍光を測定するには、例えば、一旦反応液を完全融解温度に維持した後、反応液を室温に維持された蛍光分光高度計に移し、反応液が室温に向かって徐冷されていく過程にてその温度と蛍光強度を同時に測定すればよい。反応液の温度のモニターには、蛍光測定装置内部に保持された反応液の温度の測定が可能な手段であれば特に制限はない。この目的に、微少な感温端子を有し温度変化を電気信号として遠隔にて記録することが可能な例えば熱伝対等の手段が利用できる。当然のことながら、反応液の温度を希望の温度に維持可能な恒温そうを具備した蛍光光度計を用いることも可能である。【0025】前記した試料は、目的とする特定核酸を含むと予想される試料を意味するが、本発明の実施に先立ち、試料について特定核酸の増幅等を実施することができる。かかる増幅は、特定核酸をとする増幅であれば特に制限はないが、例えば、ポリメレースチェインリアクション(PCR)法やNASBA法(例えばJournal of Virological Methods, 43, 177-188 頁、1993年参照)、特願平9−10996号に示した増幅が特に好ましい。NASBA法による増幅を簡単に述べれば、図7に概略を示した通り、試料に2本の標的核酸特異的なプライマーとAMV逆転写酵素、RNaseH、RNAポリメレースからなる3種の酵素を含む溶液を添加し、一定温度でインキュベーションを行うことで、それらの酵素の協奏的な作用によって標的核酸配列に相補的な配列からなるRNAを指数関数的に増幅するのである。ここで、用いる2本の標的核酸特異的なプライマーの一方は、その上流側にRNAポリメレースのプロモーター配列を、下流側には前記特定核酸に相補的な配列を隣接して有する。このようにして生成されたRNAについて本発明の測定を実施することが例示できる。なお、ポリメレースチェインリアクション(PCR)法によって特定核酸を増幅する際に使用するDNAポリメレース等の試薬も、一般に使用される試薬で良い。【0026】【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。【0027】実施例1本発明の分析法により、標的核酸がDNA とRNA の場合のそれぞれについて融解温度Tmを求めた。【0028】1)(1) インターカレーター性蛍光色素標識プローブ(YO-271)のみ、(2)YO-27 1 および標的DNA (TEMP271 )、(3)YO-271 および標的RNA (TEMP271-RNA )を含む反応液140μlを蛍光測定用セルに分注した。ここで、用いた物質及び試薬組成は以下の通りである。【0029】(インターカレーター性蛍光色素標識プローブ)YO-271:5'-CTCGC*GGGGGCTG-3' ;*はオキサゾールイエロー(YO)の標識位置(標的DNA )TEMP271 :5'-GTGCCCCCGCGAG-3' ;HCV cDNA塩基配列番号221〜233(塩基番号は加藤ら(Kato, N., Hiji kata, M., Ootsuyama, Y., et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 8 7, 9524-9528)による)を含む。YO-271と3〜13番目が相補的である。【0030】(標的RNA )TEMP271-RNA :5'-GUGCCCCCGCGAG-3'(反応液組成)×1 SSC1mM EDTA50nM YO-27150nM TEMP271あるいはTEMP271-RNA2)反応液にミネラルオイル150μlを添加した。【0031】3)蛍光測定用セル内の反応液温度をモニターしながら、約84℃から約26℃まで序冷した。同時に励起波長490nm, 蛍光波長510nmで蛍光強度を測定した。【0032】(1)(2)(3) のそれぞれの場合において、80℃における蛍光強度を1としたときの相対蛍光強度の変化を図1に示した。特定の温度における相対蛍光強度からYO-271のみの相対蛍光強度を差し引いた結果を図2に示した。図2からTm値を読みとった結果( 蛍光によるTm測定結果) を表1に示した。【0033】【表1】【0034】以上の通り、DNA-DNA 2本鎖よりDNA-RNA 2本鎖の方がTm値が高くなるという報告と一致する結果が得られた。50nMという低濃度(260nmにおける吸光度測定の場合の1/30程度)のプローブ・標的核酸を用いて、Tm値を測定することが可能となった。【0035】以上から、本発明によって特定核酸を配列特異的に高感度に検出できることが確認できた。【0036】実施例2本発明の分析法により、インターカレーター性蛍光色素標識プローブを用いた蛍光測定により、点変異の存在する標的RNA のTm値を調べた。【0037】1)(1) プローブ(YO-271)のみ、(2)YO-271 及び標的核酸RNA (TypeII-RNA)、(3)YO-271 および標的核酸RNA ( Type III -RNA)を含む反応液140μlを蛍光測定用セルに分注した。ここで、用いた物質及び試薬組成は以下の通りである。 (標的核酸DNA )TypeII-RNA:5'-GUGCCCCCGCGAG-3' 、HCV 塩基配列番号221〜233(加藤ら)を含む。YO-271と3〜13番目が相補的(標的核酸RNA )TypeIII -RNA:5'-GUGCCCCCGCAAG-3' 、 Type II-RNAの配列の11番目のG が A に変異(反応液組成)40mM Tris ・HCl,pH8.025mM KCl4mM MgCl250nM YO-27150nM Type II-RNAあるいはTypeIII -RNA2)蛍光測定用セルにミネラルオイル150μlを添加した。【0038】3)蛍光測定用セル内の反応液温度をモニターしながら、約85℃から約26℃まで徐冷した。同時に励起波長490nm, 蛍光波長510nmで蛍光強度を測定した。【0039】(1)(2)(3) のそれぞれの場合において、80℃における蛍光強度を差し引いた蛍光強度の変化を図3に示した。特定の温度における蛍光強度からYO-271のみの蛍光強度を差し引いた結果を図4に示した。図4からTm値を読みとった結果( 蛍光によるTm測定結果) を表2に示した。【0040】【表2】【0041】以上の通り、TypeII-RNAとTypeIII -RNAでTm値に10℃の差が認められた。以上から、本発明によって、特定核酸配列の一塩基の変異をホモジニアス系で高感度に検出できることが確認できた。【0042】実施例3本発明のの分析法により、一塩基の変異の有無の判定を行った。【0043】1)(1) プローブ(YO-271)のみ(2) YO-271と標的DNA (TEMP271 及び標的DNA 3〜13のそれぞれ)を含む反応液140μlを蛍光測定用キュベットに分注した。ここで、用いた物質及び試薬組成は以下の通りである。【0044】(標的DNA )HCV cDNA塩基配列番号221〜233(加藤ら)を含み、YO-271と3〜13番目が相補的である。TEMP271 :5'-GTGCCCCCGCGAG-3'DNA 3:5'-GTACCCCCGCGAG-3'DNA 4:5'-GTGACCCCGCGAG-3'DNA 5:5'-GTGCACCCGCGAG-3'DNA 6:5'-GTGCCACCGCGAG-3'DNA 7:5'-GTGCCCACGCGAG-3'DNA 8:5'-GTGCCCCAGCGAG-3'DNA 9:5'-GTGCCCCCACGAG-3'DNA 10:5'-GTGCCCCCGAGAG-3'DNA 11:5'-GTGCCCCCGCAAG-3'DNA 12:5'-GTGCCCCCGCGTG-3'DNA 13:5'-GTGCCCCCGCGAA-3'(反応液組成)10mM Tris ・HCl ,pH8.350mM KCl50nM YO-27150nM TEMP271あるいは標的核酸DNA 3〜132)セル温度37℃および51℃において、励起波長490nm, 蛍光波長510nmの蛍光強度を測定した。【0045】37℃および51℃で(1)(2)のそれぞれの場合について蛍光強度を測定し、YO-271のみの蛍光強度を差し引いた値を図5に示した。37℃での蛍光強度は、変異の位置によって差がみられ、DNA 11では最も低い値を示した。一方、51℃では、相補的なTEMP271 の場合を除き、蛍光の増加は認められなかった。【0046】本発明によって、位置特異的に一塩基の変異の有無のみならずその位置に関する情報も得られることが確認された。【0047】実施例4試料中の核酸のその注目する核酸配列に相補的な配列からなるインターカレーター標識プローブを用いて試料中の標的核酸との複合体の融解温度を測定すれば、その値を変異のない核酸との複合体の融解温度と比較することによって標的核酸配列中の変異の有無を判定することが可能となる。また、このようにして融解温度が得られれば、これとは逆に、インターカレーター標識プローブを含む試料溶液の蛍光を融解温度近傍で測定しその値を変異のない核酸試料の測定値と比較することによる変異の検出を目的とする簡便な一段階の分析方法も提供される。【0048】そこで、本願請求項7の分析法を用いて、慢性C 型肝炎患者血清でTypeIII (岡本ら)血清5 検体、TypeII・TypeIII 重感染血清3検体およびTypeII血清3検体について、 Type IIに相補的な配列を含むプローブを用いて融解温度近傍での蛍光強度の測定からHCV RNA の点変異のホモジニアス検出が可能か調べた。【0049】1)有機溶媒及び蛋白質変性剤を用いる市販の核酸抽出キット(東ソー(株)製)を用いて、血清検体のそれぞれ200μl より核酸抽出を行った。【0050】2)抽出したRNA 沈殿をサンプル希釈液40μl に溶解し、このうち10μl をサンプルとして測定に用いた。【0051】(サンプル希釈液の組成)10mM Tris ・HCl(pH8.0)0.1mM EDTA100 μg/ml酵母RNA1mM DTT2U/ μl RNase Inhibitor3)RTカクテル、5 μl をPCR 用チューブに分注し、調製したサンプルおよび陰性コントロールとして注射用蒸留水10μl を添加した。【0052】(RTカクテルの組成)30mM Tris ・HCl(pH8.3)150mM KCl13.6mM MgCl24.3mM dNTPs3mM DTT3U/ μl RNase inhibitor6U/ μl MMLV逆転写酵素3.6 μM プライマーR: 5'-GCACTCGCAAGCACCCTATCA-3'4)サーマルサイクラーにて逆転写反応を行った。【0053】(逆転写反応条件)42℃、10分間99℃、6 分間5)PCR カクテル、60μl を添加した。【0054】(PCR カクテルの組成)10mM Tris ・HCl(pH8.3)50mM KCl1.6mM MgCl20.025 %ノニデットP-4037.5U/mlホット・スタート専用Taq DNA ポリメラーゼ0.3 μM プロモーター・プライマー: 5'-ATTTAGGTGACACTATAGAATACAACACTCCACCATAGATCACTCCCCTG-3'6)サーマルサイクラーにてPCR を行った。【0055】(PCR 条件)1) 95 ℃、9 分間引き続き、以下の2)〜4)より成るサイクルを40サイクル行った。2) 95 ℃、30秒間3) 67 ℃、30秒間4) 72 ℃、1 分間7)PCR 反応液70μl と転写反応液65.3μl を混合した。【0056】(転写反応液の組成)75.3mM Tris ・HCl(pH8.0)15.1mM MgCl210.7mM DTT0.86mM NTPs4.3mM スペルミジン2.2U/ μl RNase Inhibitor53.6nM YO-2718)30U /μlのSP6 RNA ポリメラーゼを4.7μl添加する。【0057】9)37℃にて、30分間反応させた。【0058】10) 転写反応液に2.8μlの0.5M EDTAを添加した。【0059】11) 転写反応液を蛍光分光光度計内で65℃に保温した蛍光測定用セルにうつし、励起波長490nm 、蛍光波長510nm において蛍光強度を測定した。【0060】65℃で測定した蛍光強度から陰性コントロールの蛍光強度を差し引いた結果を図6に示した。 Type III に比べ、TypeIIは有意に高い蛍光強度を示した。 Type II・TypeIII 重感染についても、血清中のTypeIIHCV RNA 量が微量であると考えられる1検体を除き高い蛍光強度を示した。【0061】以上の通り、TypeIIに相補的な配列からなる発蛍光プローブによって、TypeIIのHCV RNA のみをホモジニアスに検出することが可能であると結論できた。【0062】インターカレーター標識プローブを含む試料溶液の蛍光を融解温度近傍で測定し、その値を変異のない核酸試料の測定値と比較することによって変異の検出が可能であることが確認できた。【0063】【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、プローブが標的核酸と相補結合を形成するとプローブに標識されているインターカレーター性蛍光色素の蛍光強度が増加することから、相補結合に寄与しなかった余剰プローブを分離する工程を必要とせずに、その相補結合の形成の有無の検出及び形成された相補結合体の定量が可能となり、反応液の温度を変えながらその蛍光強度を測定することによって特定の核酸の融解温度を決定することを可能とする均一系での簡便な一段階の分析方法が提供される。【0064】従って、本発明によれば、インターカレーター標識プローブが標的核酸を配列特異的に識別し標的核酸と複合体を形成することによってその蛍光強度が変化することから、試料中に標的核酸以外の2本鎖核酸や、2次構造を内部に持つ1本鎖の標的核酸が共存する場合においても、これらに由来するバックグラウウンド蛍光に妨害されることなく標的核酸とプローブとの複合体の融解温度の測定が可能となる。【0065】また、試料中の核酸のその注目する核酸配列に相補的な配列からなるインターカレーター標識プローブを用いて試料中の標的核酸との複合体の融解温度を測定すれば、その値を変異のない核酸との複合体の測定結果と比較することによって標的核酸配列中の変異の有無の判定が可能となる。このようにして融解温度が得られれば、これとは逆に、インターカレーター標識プローブを含む試料溶液の蛍光を融解温度近傍で測定しその値を変異のない核酸試料の測定値と比較することによる変異の検出を目的とする簡便な一段階の分析方法も提供される。例えば、C型肝炎ウイルスにはそのRNAの配列によって複数のタイプがあり、インターフェロンの治療効果がそれらのタイプに依存していることが知られている。このような場合には、特に、その治療計画を立案する上で臨床的に有効な手段を提供することとなる。【0066】また、本発明によれば、複合体の存在を蛍光で検出することから、一般的に、吸光度の測定からTmを求める方法に比べて、試料中の比較的微量の核酸に対しても有効な手段を提供することになり、特にPCR法によっても数ng程度の増幅産物しか期待できない微量の標的核酸しか含まない臨床試料も分析対象とすることが可能である。【0067】一方、本発明によれば、均一系での分析が可能で相補結合に寄与しなかった余剰プローブを分離する工程を必要としないことから、操作がより簡便で労力も軽減され、特に短時間に多数の検体の処理が要求される臨床検査の現場での適応も可能で、さらに自動化も容易である。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、プローブのみ及びプローブと標的核酸の混合液の温度変化に対する蛍光の変化を示す図である。【図2】図2は、図1に示したプローブと標的核酸の複合体の融解曲線からプローブのみの結果を差し引いた複合体の融解曲線を示す図である。【図3】図3は、プローブのみ及びプローブと標的核酸の混合液の温度変化に対する蛍光の変化を示す図である。【図4】図4は、図3に示したプローブと標的核酸の複合体の融解曲線からプローブのみの結果を差し引いた複合体の融解曲線を示す図である。【図5】図5は、37℃及び51℃に蛍光強度と変異の位置との関係を示す図である。【図6】図6は、臨床サンプルでの65℃での蛍光強度の測定結果を示す図である。【図7】図7は、NASBA法による核酸増幅を行う場合についてその概略を示すものである。 試料中の特定核酸の配列に相補的な配列を含むインターカレーター性蛍光色素で標識されたプローブを用い、該プローブを試料に添加しその反応液の蛍光強度を温度を変化させながら測定する工程、標的核酸を含まない反応液の蛍光強度を温度を変化させながら測定する工程、及び標的核酸を含む反応液の蛍光強度から標的核酸を含まない反応液の、各温度における蛍光強度を差し引く工程からなることを特徴とする核酸融解温度測定法。 前記インターカレーター性蛍光色素で標識されたプローブが、試料中の標的核酸と結合し複合体を形成し、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化することを特徴とする請求項1に記載の分析方法。 前記インターカレーター性蛍光色素が、試料中の標的核酸と結合し複合体を形成した場合、該インターカレーター性蛍光色素が生成した該複合体にインターカレーションする性質を有することを特徴とする請求項1に記載の分析方法。 前記複合体が、試料中の標的核酸と前記プローブとの相補結合によって形成されたものであることを特徴とする請求項2及び3に記載の分析方法。 前記試料の特定核酸を測定行程に先立ってポリメレースチェインリアクション(PCR)法によって増幅する工程を含む請求項1に記載の分析方法。 前記試料の特定核酸を測定行程に先立ってNASBA法によって増幅する工程を含む請求項1に記載の分析方法。 前記測定工程に先立って、前記試料の特定核酸を鋳型として、RNAポリメレースのプロモーター配列及びその下流域に前記特定核酸の核酸配列(特定核酸配列)を有する二本鎖DNAを生成するDNA生成工程を含む請求項1に記載の分析方法。 前記DNA生成工程に引き続き、該反応液に少なくともRNAポリメレース、リボヌクレオシド三燐酸及び生成されるRNAに相補的な配列を含むインターカレーター性蛍光色素で標識されたプローブを添加し、一定温度において特定核酸配列を有する一本鎖RNAを生成するRNA生成工程を含む請求項5、6又は7に記載の分析方法。