タイトル: | 特許公報(B2)_キノキサリンジチオカーボネートまたはその誘導体の製造法 |
出願番号: | 1997128446 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07D 495/04 |
古川 喜朗 三上 雅史 JP 4161386 特許公報(B2) 20080801 1997128446 19970519 キノキサリンジチオカーボネートまたはその誘導体の製造法 ダイソー株式会社 000108993 古川 喜朗 三上 雅史 20081008 C07D 495/04 20060101AFI20080918BHJP JPC07D495/04 105Z C07D 495/04 CAplus(STN) REGISTRY(STN) 米国特許第03150134(US,A) 米国特許第03091613(US,A) 米国特許第03141886(US,A) 3 1998316682 19981202 7 20040415 井上 明子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、農薬あるいはエポキシ系ポリマーの架橋剤として有用であるキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートまたはその誘導体の製造法に関する。【0002】【従来の技術】従来キノキサリン-2,3-ジチオカーボネートまたはその誘導体の製造方法としては、一般にホスゲンガスが用いられている。実際、米国特許3141886号においてホスゲンガスを用いて一連のキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート誘導体を製造する方法が述べられている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ホスゲンガスは許容濃度0.1 ppmと毒性が強く取り扱いにはことのほか注意を要する。そのため、ホスゲンガスを用いる反応を行う施設はガス漏れの対策を施さねばならず、また、万一漏れた際の安全措置に関わる設備も設けなければならない。また、上記の米国特許3141886号においてホスゲンガスを用いる方法では、収率が33〜69%と満足のいく値が得られていない。一方原料としてはホスゲンの代替品として、2量体のジホスゲンや3量体のトリホスゲンを使用できることが知られているが、例えば4−クロロ−2−メチルアニリンとトリホスゲンを反応させて4−クロロ−2−メチルフェニルイシシアナートを得る場合の反応収率は68%(Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,1987,26,894.)、4,5−ジメトキシ−1,2−ビス(N−メチルアミノ)ベンゼンとトリホスゲンを反応させて対応する環状尿素体を得る場合の反応収率は34%(J.Am.Chem.Soc.,1992,114,774 )、等と収率的に十分なものではなかった。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題点を解決するため鋭意検討した結果、農薬あるいはエポキシ系ポリマーの架橋剤として極めて有用な化合物であるキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートまたはその誘導体をキノキサリン-2,3- ジチオールまたはその誘導体からを得る場合には、カルボニル化剤としてホスゲンガスの替わりに特にジホスゲンまたはトリホスゲンを使用することにより容易、安全かつ高収率で製造できることを見出し、本発明を完成したものである。【0005】 すなわち本発明は、下記式(1)で表されるキノキサリン-2,3- ジチオールをトリホスゲン及びジホスゲンから選ばれるカルボニル化剤と反応させることを特徴とする下記式(2)で表されるキノキサリン-2,3- ジチオカーボネートの製造法である。【化3】【化4】(Rは炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、カルバモイル基、カルボキシル基、アミノスルホニル基、ハロゲノ基から選ばれる基を表し、nは0〜4の整数を表す。)【0006】本発明によると、化学量論量のトリホスゲンまたはジホスゲンを用いることで、目的のキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートまたはその誘導体が副生成物も無く、ほぼ定量的に得られてくる。従って、容易に精製することができ、工業的にも優れた方法であると言える。米国特許3141886号において開示された従来法による最高収率は69%であり、しかもその合成法において使用されるホスゲンガスの量はかなり過剰と思われる。これらのことから、本発明の有用性が示唆される。【0007】また、ジホスゲン、トリホスゲン、はそれぞれホスゲンの2量体、3量体であり、クロロ蟻酸トリクロロメチル、およびビス(トリクロロメチル)カーボネートである。これらの化合物の毒性はホスゲンガスとそれほど変わらないが、水分に触れさせなければ非常に安定な化合物であり、蒸気圧も低く、取り扱いが非常に容易であるため原料として適している。特に、トリホスゲンは融点が81〜83℃の固体であり、あらゆる有機溶媒に可溶である。また、130℃以下で分解したというデータは報告されておらず、原料としてはホスゲンより好ましい。【0008】【発明の実施の形態】 本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。 原料である式(1)のキノキサリン-2,3-ジチオールは公知の方法により、ジアミノベンゼン類から好収率で容易に製造することができる。 置換基のRは、炭素数1〜4のアルキル基例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等、アルコキシ基例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等、ニトロ基、カルバモイル基例えばジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基等、カルボキシル基、アミノスルホニル基例えばジメチルアミノスルホニル基、ジエチルアミノスルホニル基等、ハロゲノ基例えばクロロ基、ブロモ基等から選ばれた基である。 置換基Rの数はn=0の無置換体からn=4の4置換体まで可能で、Rの付く位置に関しては特に指定されない。【0009】次に、反応に用いられるトリホスゲンまたはジホスゲンの量について述べる。トリホスゲンの場合、原料のキノキサリン-2,3-ジチオールまたはその誘導体に対して0.3倍モル以上が好ましく、特に好ましくは0.34〜5倍モルである。ジホスゲンの場合、原料のキノキサリン-2,3-ジチオールまたはその誘導体に対して0.5倍モル以上が好ましく、特に好ましくは0.5〜5倍モルである。何れも下限以下では原料のキノキサリン-2,3-ジチオールまたはその誘導体が残存し、上限以上では過剰のトリホスゲンあるいはジホスゲンを除去しなければならない等工程が繁雑になり、ひいては経済性の面からも好ましくない。【0010】キノキサリン-2,3-ジチオールまたはその誘導体とトリホスゲンあるいはジホスゲンを反応させる際、副生する塩酸を補足するために塩基性条件下で行う方が好ましい。この時用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ジアザビシクロウンデセン等のアミン系化合物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩が挙げられる。このとき用いられる塩基の量は、トリホスゲンを使用した場合、トリホスゲンに対して3倍モル以上が好ましい。ジホスゲンの場合、用いられる塩基の量はジホスゲンに対して2倍モル以上が好ましい。塩基の量が下限より少ないと毒性の強いトリホスゲンあるいはジホスゲンが残存し、場合によっては原料のキノキサリン-2,3-ジチオールまたはその誘導体も残存する。【0011】本発明の反応に際して用いられる溶媒は特に制限されず、水、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族系炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の塩素系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の3級アミン、およびそれらの混合溶媒を用いることができる。【0012】反応の際、原料のキノキサリン-2,3-ジチオールまたはその誘導体の濃度は特に指定されない。 反応温度は低温である方が好ましいが、−78〜50℃で反応は問題なく進行、完結する。80℃以上ではキノキサリン-2,3-ジチオールまたはその誘導体の2量体の生成により収量が減少するため注意が必要である。【0013】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0014】実施例16-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオール 10 g (0.048 mol) を5%KOH 水溶液 100 ml に溶解し、氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 5.6 g (0.019 mol) のジオキサン溶液を滴下した。反応終了後、水 100 ml に反応液を加え、析出した結晶を水で洗浄し、黄色固体 10.8 g を得た。収率 96%。融点 170〜172℃。【0015】実施例25-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造5-メチルキノキサリン-2,3-ジチオール 10 g (0.048 mol) をジオキサン 100 mlに溶解し、トリエチルアミン 10.7 g (0.106 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 5.6 g (0.019 mol) を添加した。反応終了後、析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾去後濃縮した。酢酸エチルを加えて水で洗浄後、濃縮して黄色固体 10.6 g を得た。収率 94%。融点 136〜137℃。【0016】実施例35,7-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造5,7-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.022 mol) を DMF 50 ml に溶解し、トリエチルアミン 4.8 g (0.047 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらジホスゲン 2.5 g (12.8 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 4.9 g を得た。収率 90%。融点 177〜180℃。【0017】実施例46,7-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6,7-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.022 mol) を DMF 50 ml に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン 6.1 g (0.047 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2.5 g (8.5 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 5.0 g を得た。収率 92%。融点 206〜208℃。【0018】実施例5キノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造キノキサリン-2,3-ジチオール 10 g (0.053 mol) をジオキサン 100 ml に溶解し、トリエチルアミン 11.8 g (0.117 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 6.5 g (0.021 mol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 11.1 g を得た。収率 95%。融点 183〜185℃。【0019】実施例66-ブチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6-ブチルキノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.019 mol) をジオキサン 50 mlに溶解し、トリエチルアミン 4.2 g (0.042 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2.2 g (7.5 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 5.0 g を得た。収率 92%。融点 165〜168℃。【0020】実施例76-メトキシキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6-メトキシキノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.022 mol) をピリジン 50 mlに溶解し、氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2.5 g (8.5 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 5.1 g を得た。収率 93%。融点 166〜168℃。【0021】実施例85,7-ジクロロキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造5,7-ジクロロキノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.020 mol) を DMF 50 ml に溶解し、トリエチルアミン 4.4 g (0.043 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2.3 g (7.8 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 5.0 g を得た。収率 90%。融点 191〜192℃。【0022】実施例96-ニトロキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6-ニトロキノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.021 mol) を DMF 50 ml に溶解し、トリエチルアミン 4.6 g (0.045 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2.4 g (8.2 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 5.0 g を得た。収率 89%。融点 188〜189℃。【0023】実施例106-(N,N-ジメチルアミノスルホニル)キノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6-(N,N-ジメチルアミノスルホニル)キノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.017 mol) を DMF 50 ml に溶解し、トリエチルアミン 3.8 g (0.038 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2 g (6.8 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 4.6 g を得た。収率 82%。融点 183〜184℃。【0024】実施例116-(N,N-ジメチルカルバモイル)キノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6-(N,N-ジメチルカルバモイル)キノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.019 mol) を DMF 50 ml に溶解し、トリエチルアミン 4.2 g (0.042 mol) を加えた。氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2.2 g (7.5 mmol) を添加した。実施例2と同様の操作により、黄色固体 4.7 g を得た。収率 85%。融点 173〜175℃。【0025】実施例126-カルボキシキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造6-カルボキシキノキサリン-2,3-ジチオール 5 g (0.021 mol) を5%KOH 水溶液 100 ml に溶解し、氷冷下、撹拌しながらトリホスゲン 2.4 g (8.2 mmol) のジオキサン溶液を滴下した。実施例1と同様の操作により、黄色固体 4.5 g を得た。収率 81%。融点 300℃以上。【0026】【発明の効果】本発明によれば容易な方法で、ホスゲンガスを発生することなく、安全かつ高収率にキノキサリン-2,3- ジチオカーボネートまたはその誘導体を製造することができる。 下記式(1)で表されるキノキサリン-2,3-ジチオールをトリホスゲン及びジホスゲンから選ばれるカルボニル化剤と反応させることを特徴とする下記式(2)で表されるキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造法。(Rは炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、カルバモイル基、カルボキシル基、アミノスルホニル基、ハロゲノ基から選ばれる基を表し、nは0〜4の整数を表す。) カルボニル化剤がトリホスゲンである請求項1記載のキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造法。 式1においてRが6位のメチル基である請求項1または2に記載のキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートの製造法。