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タイトル:特許公報(B2)_新規発現プラスミドベクター及び該発現プラスミドベクターを保有するバチルス属細菌を用いた異種遺伝子産物の製造法
出願番号:1997121575
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09,C12P 21/02,C12R 1/08


特許情報キャッシュ

八代 好司 恵比須 省吾 高木 広明 JP 3734593 特許公報(B2) 20051028 1997121575 19970425 新規発現プラスミドベクター及び該発現プラスミドベクターを保有するバチルス属細菌を用いた異種遺伝子産物の製造法 ヒゲタ醤油株式会社 000112060 戸田 親男 100075775 八代 好司 恵比須 省吾 高木 広明 20060111 C12N 15/09 20060101AFI20051215BHJP C12P 21/02 20060101ALI20051215BHJP C12R 1/08 20060101ALN20051215BHJP JPC12N15/00 AC12P21/02 CC12P21/02 CC12R1:08 C12N15/00-15/90 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JICSTファイル(JOIS) 特開昭60−058074(JP,A) 2 FERM P-15934 1998295378 19981110 19 20020125 伏見 邦彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、バイオテクノロジーに関するものであり、更に詳細には、本発明は新規発現プラスミドベクター及び異種遺伝子を結合した該発現プラスミドでバチルス属細菌を形質転換し、該形質転換体を培養し、培養物中に異種遺伝子産物を生成蓄積せしめこれを採取することを特徴とする該異種遺伝子産物の製造法に関する。【0002】【従来の技術】現在、食品、薬品、化粧品その他の産業において、遺伝子組換え技術及び組換え体を用いて生産した異種遺伝子産物が広く利用されている。遺伝子組換えの宿主としては、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)などの細菌や酵母、糸状菌または動物細胞などが使用されているが、遺伝子組換え技術は大腸菌の系を中心に発展してきたため、大腸菌が宿主菌として最も頻繁に用いられている。【0003】しかし大腸菌を宿主とする系では、生産される異種遺伝子産物は細胞質中またはペリプラズム空間にとどまり、培地中へ分泌生産させることは困難であった。また、細胞内の異種遺伝子産物の蓄積は量的に限界があり、その上菌体を破砕して回収しなければならず、菌体内成分である核酸などの共存物質から目的とする異種遺伝子産物を分離、精製することが必要であった。さらに、生産されたペプチドやタンパク質が封入体(inclusion body)を形成するものもあり、封入体が形成された場合再生操作を行って活性型にする必要があるなどの欠点があった。【0004】バチルス属細菌には酵素タンパク質を大量に分泌生産するものが多く、この性質を利用した宿主ベクター系の開発が活発に行われている。バチルス属細菌、なかでも枯草菌は、遺伝学的にも生化学的にもよく研究され、異種遺伝子産物の分泌生産に関する研究も数多くなされている。しかし、枯草菌を宿主とする系では菌体内外の強いプロテアーゼにより生産したペプチドやタンパク質などの異種遺伝子産物が分解されてしまうなどの問題があった。【0005】これらの欠点を解消し、異種遺伝子産物を効率的に生産する宿主を求めて鋭意研究を行ったところ、鵜高らは、バチルス・ブレビスには菌体外にプロテアーゼを生産しない菌株が多いことを見いだし、その1菌株バチルス・ブレビス47(S. Udaka and H. Yamagata, Methods in Enzymology、217 23-33(1993))の主要菌体外蛋白質(H. Yamagata et al, J. Bacteriol., 169, 1239(1987);塚越規弘、日本農芸化学会誌、61, 68(1987)にそれぞれ“outer wall protein and middle wall protein”、“主要菌体外蛋白質”として記載されている。)遺伝子のプロモーター及び該主要菌体外蛋白質の1種であるMWタンパク質(middle wall protein:MWP)のシグナルペプチドをコードする領域を用いて分泌ベクターを作製し、本菌株を宿主としてα−アミラーゼ(H. Yamagata et al, J. Bacteriol., 169, 1239(1987))やブタペプシノーゲン(鵜高重三、日本農芸化学会昭和62年度大会講演要旨集、p837−838;塚越規弘、日本農芸化学会誌、61, 68(1987))の分泌生産に成功した。【0006】また、高木らは、プロテアーゼを菌体外に生産しない菌株バチルス・ブレビスHPD31(なお、この菌株はバチルス・ブレビスH102(FERM BP−1087)と同一菌株である)を分離し、そしてこのバチルス・ブレビスHPD31を宿主として耐熱性α−アミラーゼの高分泌生産(H. Takagi et al, Agric, Biol. Chem., 53, 2279-2280(1989))に成功した。さらに、山形らは、ヒト上皮細胞増殖因子(human Epidermal Growth Factor:h-EGF)の高分泌生産(H. Yamagata et al, Proc. Nati. Acad. Sci. USA, 86, 3589-3593(1989))にも成功している。【0007】【発明が解決しようとする課題】このバチルス・ブレビスをはじめ、バチルス属細菌を宿主とする異種遺伝子産物の生産系に用いる発現プラスミドベクターは、バチルス属細菌で複製可能なプラスミドを用い、発現調節領域として適合するプロモーター及びSD配列を組み込み、さらにその下流には翻訳開始コドンから始まる分泌シグナル配列、異種遺伝子、ターミネーターを接続している。この時に使用される発現プラスミドベクターは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のプラスミドpUB110(T. McKenzie, et al., Plasmid. 15, 95-103(1986))をベースに構築されたものが多い。【0008】pNH200、pNH400(Ishihara, T., et al. J. Bacteriol., 177, 745-749(1995))、pNH300は、pUB110をベースに構築された発現プラスミドベクターで、バチルス・ブレビスを宿主菌とする系で頻繁に利用されている。このpNH系の発現プラスミドベクターは前記したMWPのプロモーター(配列番号1)を使用しているが、従来5個タンデムに存在するMWPプロモーターをそのまま用いたものがpNH200であり、5個から3個に減少させたものがpNH400、1個に減少させたものがpNH300である。異種遺伝子の発現においては必ずしも強いプロモーターを有することが高生産性を示すとは限らず、高生産形質転換株を得るためにプロモーター活性の強弱の異なるどのベクターを使用するかを検討することは重要である。【0009】しかし、これらpNH系で代表されるpUB110系の発現プラスミドベクターは、その分子内にpUB110由来のブレオマイシン(Bleomycin)耐性遺伝子を保有しており、このブレオマイシン耐性遺伝子から翻訳された蛋白質の発現量が多く、目的とする異種遺伝子産物の発現の阻害要因の1つになっている可能性があった。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者らはこのような現状に鑑み、バチルス属細菌で安定かつ高発現が可能な発現プラスミドベクターを開発すべく鋭意検討を行った。【0011】本発明者らは、pNH系で代表されるpUB110系の発現プラスミドベクターからブレオマイシン耐性遺伝子を除去した新規発現プラスミドベクターpNYを構築し、バチルス・ブレビスを形質転換して異種遺伝子産物を生産させたところ異種遺伝子産物の生産量がpNH系の発現プラスミドベクターに比べて増加することを確認し本発明を完成した。【0012】すなわち本発明は、バチルス属細菌で安定かつ高発現が可能な新規発現プラスミドベクターに関するものである。また本発明は、この発現プラスミドベクターに目的とするペプチドやタンパク質などの異種遺伝子産物をコードする遺伝子を連結した発現プラスミドでバチルス属細菌を形質転換し、該形質転換体を培養することによる異種遺伝子産物の製造方法に関するものである。以下、本発明について詳しく説明する。【0013】本発明発現プラスミドベクターは、ブレオマイシン耐性遺伝子を除去したpUB110由来のプラスミドに関するものであり、その分子内にはバチルス属細菌の遺伝子より調製した発現調節領域の遺伝子を保有させることができる。発現調節領域は、転写開始部位であるプロモーター及びリボソーム結合領域(SD配列)を含むが、本発明プラスミドベクターの発現調節領域のプロモーターとしては、バチルス属細菌の遺伝子より調製し、バチルス属細菌内で機能するプロモーターであればどのプロモーターを使用してもよい。【0014】例えば、バチルス・ブレビスのMWPプロモーター(配列番号1:前述)やHWPプロモーター(配列番号2:特公平8−4511)、バチルス・ズブチリスのSpacプロモーター(Methods in enzymology, 185, 199-228(1990))やレバンスクラーゼプロモーター(Appl. Environ. Microbiol., 55,2739-2744(1989))、バチルス・アミロリキファシエンス(B. amyloliquefaciens)のアルカリプロテアーゼプロモーター(Methods in enzymology, 185, 1992-228(1990))やα−アミラーゼプロモーター(J. Bacteriol., 165, 796-804(1986))または中性プロテアーゼプロモーター(J. Biotechnol., 3, 73-84(1985))、バチルス・sp.KSM-64のエンドヌクレアーゼプロモーター(Biosci. Biotech. Biochem., 59, 2172-2175(1995))そしてバチルス・ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)の耐熱性枝つくり酵素プロモーター(Appl. Environ. Microbiol., 60, 3096-3104(1994))などバチルス属細菌の遺伝子より調製したプロモーターを使用することができる。【0015】これらのプロモーターはこれらのプロモーターを保持する細胞から遺伝子組換え法によって調製してもよいし化学的に合成したものを用いてもよい。遺伝子組換えによって調製する場合には、例えばプロモーターを保有する細胞のゲノムDNAを鋳型とし、プロモーターの塩基配列を基に調製したプライマーDNAを用いポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)法(Molecular Cloning 2nd ed., A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)で調製することができる。【0016】一方、化学合成法としては、例えば、100塩基以下の長鎖のDNAを合成する場合にはホスホアミダイト法(Methods Enzymol., 154, 287-313(1987))によって市販のDNA合成機で合成することができる。100塩基以上のDNAの場合には、塩基配列を100塩基未満の長さに区切り、それぞれのDNA断片を前記のように化学合成した後、T4DNAリガーゼを用いてこれらのDNA断片を連結すればよい。【0017】SD配列もバチルス属細菌の遺伝子より調製したものを使用すればよい。例えばバチルス・ブレビスや枯草菌の16SrRNAの配列に対応して合成した配列を使用すればよく、具体的には図2及び図3に示したSD1やSD2などを用いることが出来る。【0018】このバチルス属細菌由来のプロモーター及びSD配列を含む発現調節領域遺伝子は、ブレオマイシン耐性遺伝子を除去したpUB110由来の分子内のOri領域(複製開始点)、Rep領域(複製開始タンパク質遺伝子)、Nm r領域(ネオマイシン耐性遺伝子)以外のどの部分に組み込んでもよく、その数も特に制限されない。例えば、図1に示すブレオマイシン耐性遺伝子を除去したプラスミドpUB110由来のプラスミドベクターにおいて、A、B、及び/又はCで示した領域に発現調節領域遺伝子を保有させることができる。【0019】また、発現調節領域の下流には各種制限酵素切断部位を設けたマルチクローニングサイトを組み込んでおけば、各種異種遺伝子のクローニングが容易である。マルチクローニングサイトとしては図2及び図3に示した配列などを用いることが出来る。さらにペプチドやタンパク質などの異種遺伝子産物をコードする遺伝子の下流、すなわち3′側に転写終了遺伝子であるターミネーターを連結してもよい。ターミネーターは特に限定されず、例えば、バチルス・ブレビスHPD31株より単離したHS遺伝子(図2、図3)等のターミネーターを用いればよい。【0020】本発明の発現プラスミドベクターの構築にはスタフィロコッカス・アウレウス由来のpUB110系の発現プラスミドベクターを用いることができる。pNH系の発現プラスミドベクターは、pUB110にMWPのプロモーターを組み込んだ発現プラスミドベクターであり、本発明発現プラスミドベクターの構築に利用できる。具体的にはプロモーターの数が1個のpNH300シリーズ(後述)やプロモーターの数が3個のpNH400シリーズ(Ishihara, T., et al. J. Bacteriol., 177, 745-749(1995))やプロモーターの数が5個のpNH200シリーズを用いることができる。【0021】このpNH系の発現プラスミドベクターの中のpUB110由来のブレオマイシン耐性遺伝子以外の部分をプライマーDNAを用いてPCR法によって増幅、回収した後ライゲーションを行えば、ブレオマイシン耐性遺伝子が除去された新規発現プラスミドベクターpNYを得ることができる。例えば、pNH300シリーズの発現プラスミドベクターを鋳型にPCRを行えばMWPプロモーターが1個の発現プラスミドベクターpNY300シリーズを得ることが出来、pNH400シリーズの発現プラスミドベクターを鋳型にPCRを行えばプロモーターが3個の発現プラスミドベクターpNY400シリーズを、pNH200シリーズの発現プラスミドベクターを鋳型にPCRを行えばプロモーターが5個の発現プラスミドベクターpNY200シリーズを得ることが出来る。【0022】こうして調製した本発明の発現プラスミドベクターに連結する有用なペプチドやタンパク質などの異種遺伝子産物をコードする遺伝子は、バチルス属細菌で発現可能な遺伝子であれば何れの生物由来の遺伝子でもよく、ヒト、動物、鳥類、魚類、微生物、ウイルスその他各種生物由来の遺伝子産物(酵素、ホルモン、サイトカイン、免疫グロブリンその他生理活性ペプチド、抗原蛋白質など)の生産に適用できる。【0023】これらの異種遺伝子産物をコードする遺伝子は、公知の方法に従って本発明発現プラスミドベクターのプロモーター、SD配列、シグナルペプチドをコードする遺伝子の下流のクローニング用制限酵素サイトに組み込めばよく、例えば、モレキュラー・クローニング・ア・ラボラトリーマニュアル第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning 2nd ed., A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に記載の方法で行えばよい。【0024】遺伝子の発現に用いる宿主としては、バチルスに属する細菌であればよく、例えば、バチルス・ブレビス、バチルス・チョーシネンシス(B. choshinensis)などが好適に使用できる。【0025】宿主菌を形質転換する方法は公知の方法でよく、例えば、バチルス・ブレビス、バチルス・チョーシネンシスではTakahashiらの方法(J. Bacteriol., 158, 1130(1983))またはTakagiらの方法(Agric. Biol. Chem., 53, 3099-3100(1989))などが例示される。【0026】得られた形質転換体の培養に用いる培地は、形質転換体が生育して目的とする異種遺伝子産物を生産しうるものであれば如何なるものでもよい。該培地に含有させる炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロース、グリセロール、澱粉、デキストリン、糖蜜、有機酸などが用いられる。また窒素源としては、カゼイン、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カザミノ酸、尿素、グリシンなどの有機窒素源、硫酸アンモニウムなどの無機窒素源などが用いられる。その他、塩化カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩が必要に応じて培地に加えられる。栄養要求性を示す菌は、その生育に必要な栄養物質を培地に添加すればよい。該栄養物質としては、アミノ酸類、ビタミン類、核酸などが挙げられる。【0027】また、培養に際して必要があれば、培地に抗生物質例えばペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、バシトラシン、D−サイクロセリン、アンピシリン、ネオマイシンなどを加える。更に必要により、消泡剤、例えば大豆油、ラード油、各種界面活性剤などを培地に加えてもよい。【0028】培地の初発pHは、5.0〜9.0、さらに好ましくは6.5〜7.5である。培養温度は、通常、15℃〜42℃、さらに好ましくは24℃〜37℃であり、培養時間は、通常、16〜166時間、さらに好ましくは24〜96時間である。【0029】本発明で、形質転換体を前記の条件で培養することによって、培養物中に異種遺伝子産物が生成、蓄積される。このようにして得られた異種遺伝子産物は、公知の方法により、例えば膜処理、硫安分画法、クロマトグラフィーなど(蛋白質・核酸の基礎実験法、南江堂、(1985))で精製することができる。【0030】以下本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これは例示的なものであり、本発明はこれに限定されるものではない。【0031】【実施例1】プラスミドベクターpNY301の構築【0032】(1)pNH301の構築MWP遺伝子のP5プロモーター、シグナル配列を得るために、pNU210(S. Udaka, et al. Methods in Enzymology, 217, 23-33(1993))を鋳型に、配列番号3のプライマーと配列番号4のプライマーを用いてPCRを行った。【0033】PCRは、配列番号3のプライマーと配列番号4のプライマーを各々100pmol、Taqポリメラーゼ 2.5単位、dNTP 200μM、pNU210鋳型DNA 1ng、100μl Taq緩衝液(10mM トリス−塩酸(pH8.5)、2.5mM Mg++、50mM 塩化カリウム、100μg/mlウシ血清アルブミン)を混合し、96℃で30秒保持した後、DNAの熱変性(94℃、60秒)、プライマーのアニーリング(54℃、60秒)、プライマーの伸長(70℃、60秒)を25サイクルさせることによって行った。【0034】PCRで増幅した約260bpの遺伝子を制限酵素AatIIとXbaIで切断し、プラスミドpGEM−7Zf(プロメガ社製)のAatII,XbaIサイトにT4リガーゼを用いて連結後、E.coli JM109に形質転換し、プラスミドpGEM−P5を得た。【0035】バチルス・ブレビスHPD31の染色体より得た約150bpのステムループ構造を有するHS遺伝子(ターミネーター遺伝子:特願平8−123970)の両端がHindIIIとNsiIサイトになるように前記と同じ条件にてPCRで増幅し、pGEM−P5のHindIIIとNsiIサイトに挿入し、pGEM−P5HSを得た。【0036】pGEM−P5HSをAatIIとNsiIで切断しDNAポリメラーゼを用いて平滑化したDNA断片454bpを、pUB110(T. McKenzie, et al, Plasmid, 15. 95-103(1986))をPvuIIとAccIで切断後DNAポリメラーゼで平滑化した3447bpのDNA断片に連結し、これをバチルス・ブレビスHPD31にエレクトロポレーション法(Agric. Biol. Chem., 53, 3099-3100(1989))で導入しプラスミドベクターpNH301を得た。pNH301の制限酵素地図及びプロモーターを含む一部の塩基配列を図2に示した。【0037】(2)pNY301の構築pNH301を鋳型に、配列番号5のプライマーと配列番号6のプライマーを用いてPCRを行った。【0038】PCRは、配列番号5のプライマーと配列番号6のプライマーを各々100pmol、Taqポリメラーゼ2.5単位、dNTP 200μM、pNH301鋳型DNA 1ng、100μl Taq緩衝液(10mM トリス−塩酸(pH8.5)、2.5mM Mg++、50mM 塩化カリウム、100μg/mlウシ血清アルブミン)を混合し、96℃で30秒保持した後、DNAの熱変性(94℃、60秒)、プライマーのアニーリング(54℃、120秒)、プライマーの伸長(70℃、180秒)を25サイクルさせることによって行った。PCRで増幅した約3.4kbの遺伝子をSse8387Iで切断、T4リガーゼを用いて連結しバチルス・プレビスHPD31にエレクトロポレーション法で導入し、プラスミドベクターpNY301を得た。【0039】pNY301の制限酵素地図及びプロモーターを含む一部の塩基配列を図3に示した。プラスミドベクターpNY301を保持するバチルス・ブレビスHPD31/pNY301は、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−15934として寄託されている。【0040】【実施例2】プラスミドベクターpNY301の形質転換効率実施例1で得たプラスミドベクターpNY301及びpNH301各々1ngをバチルス・ブレビスHPD31にエレクトロポレーション法で導入した。反応終了後、各々の反応液1μlをTMN平板培地(ネオマイシン50μg/mlを含む)に塗抹し、生じたコロニーを計数し、各々のプラスミドベクターの形質転換効率を求めた。表7に結果を示した。プラスミドベクターpNY301はpNH301に比べ5倍以上の形質転換率を示し、より効率的に宿主に形質転換出来ることが分かった。【0041】【表7】【0042】【実施例3】プラスミドベクターpNY301の宿主中での保持率組換え体を用いて大型培養槽にて異種遺伝子産物の大量生産を行う場合、小スケールから段階的にスケールアップする必要があり、大量培養では植継ぎでの安定性が必要とされる。【0043】実施例2で得たバチルス・ブレビスHPD31/pNY301、バチルス・ブレビスHPD31/pNH301各々をTM液体培地を3ml分注した試験管に植菌し、30℃で培養した。24時間培養後、培養液4μlをとり、うち3μlをTM液体培地に植継ぎ同じ条件で培養した。残りの培養液1μlをTM平板培地に塗抹し、一晩30℃で培養し、生じたコロニーを計数した。さらにこのプレートをTMN平板培地にレプリカし30℃で一晩培養を行い、生じたコロニーを計数し、下記式にて各々のプラスミドベクターの保持率を求めた。プラスミドベクター保持率(%)=(TMN平板培地で生じたコロニー数/TM平板培地で生じたコロニー数)×100【0044】更に上記操作を繰り返し、各植継ぎ回数によるプラスミドベクターの保持率を調べた。植継ぎ後のプラスミドベクターの保持率を図4に示した。【0045】上記結果から明らかなように、プラスミドベクターpNY301は、5回植継ぎ後も安定に宿主に保持されたが、対照であるプラスミドベクターpNH301は植継ぎを重ねるに従って宿主での保持率は低下した。【0046】【実施例4】プラスミドベクターpNH301BLA及びpNY301BLAの構築実施例1で構築したプラスミドベクターpNH301及びpNY301を制限酵素ApaLI、BamHIで消化し、各々3.9、3.4kbの断片を得た。一方、プラスミドベクターpHT110BLA(特開平6−133782)をApaLI、BclIで消化して、MWPのシグナルペプチドの一部とバチルス・リケニホルミス(B. licheniformis)のα−アミラーゼ(BLA)遺伝子を含む約1.5kbの断片を得、先に得た各々の3.9kbと3.4kb断片とT4リガーゼで連結し、プラスミドベクターpNH301BLA及びpNY301BLAを得た(図5)。【0047】【実施例5】 プラスミドベクターpNH301BLA及びpNY301BLAを用いてのBLAの分泌生産 実施例4で得たプラスミドベクターpNH301BLA及びpNY301BLA各々でバチルス・ブレビスHPD31をエレクトロポレーション法で形質転換し、pNH301BLA、pNY301BLA各々を保持する形質転換体、バチルス・ブレビスHPD31/pNH301BLA、バチルス・ブレビスHPD31/pNY301BLAを得た。各々3株の形質転換体を、500ml容三角フラスコにTMN培地100mlを分注し、121℃、15分間オートクレーブ滅菌した後、冷却した培地に接種し、30℃で3日間振とう培養した。この培養液を遠心分離し、その培養上清のアミラーゼ活性を可溶性澱粉を基質として斎藤の方法(Arch. Biochem. Biophys., 155, 290(1973)を用いて測定した(図6)。 バチルス・ブレビスHPD31/pNY301BLAは、バチルス・ブレビスHPD31/pNH301BLAの2倍以上のBLAを生産し、各々の形質転換体の生産量のバラツキも少なく安定していた。【0048】【実施例6】プラスミドベクターpNY301/BLAの安定性実施例5で調製したバチルス・ブレビスHPD31/pNY301BLA、バチルス・ブレビスHPD31/pNH301BLAを、TMN液体培地3mlを分注した試験管に植菌し2日間培養した。105倍希釈した培養液0.1mlを、デンプンを3%含んだTMN寒天培地に塗末し一晩培養した。生じたコロニー周辺のハローの有無を肉眼で観察した(表8)。【0049】【表8】【0050】バチルス・ブレビスHPD31/pNH301BLAを塗末したプレートに生じたコロニーの5%程が周辺にハローを形成しなくなっていたが、バチルス・ブレビスHPD31/pNY301BLAを塗末したプレートでは、全てのコロニーが周辺にハローを形成していた。バチルス・ブレビスHPD31/pNH301BLAを塗末したプレートのハローを形成しない形質転換体を液体培養し、プラスミドベクターをアルカリ抽出法(Birnboim H. C, and Doly J. Nucleic Acid Res., 7. 1513(1979))によって抽出した。抽出したプラスミドベクターをアガロースゲル電気泳動に供し、その泳動パターンを調べた(図7)。【0051】ハローを形成しなかったpNH301BLAは、そのほとんどが小さなサイズになっており、プラスミドの一部欠失が起っているものと思われた。この結果から、pNY301BLAは、pNH301BLAより安定であり、プラスミドベクターとしての有用性がより高いことが確認された。【0052】【実施例7】プラスミドベクターpNH301hEGF及びpNY301hEGFの構築プラスミドベクターpNH301及びpNY301を制限酵素ApaLI、PstIで消化し、各々3.9kbおよび3.4kbのDNA断片を得た。一方、プラスミドベクターpHT110EGF(特開平6−133782)をApaLI、PstIで消化してMWPのシグナルペプチドの一部とh−EGF遺伝子を含む約200bpのDNA断片を得た。このDNA断片と先に得た各々3.9kbおよび3.4kbのDNA断片とをT4リガーゼで連結し、プラスミドベクターpNH301hEGF及びpNY301hEGFを得た(図8)。【0053】【実施例8】 プラスミドベクターpNH301hEGF及びpNY301hEGFを用いてのh−EGFの分泌生産 実施例7で得たプラスミドベクターpNH301hEGF及びpNY301hEGF各々でバチルス・ブレビスHPD31をエレクトロポレーシヨン法で形質転換し、バチルス・ブレビスHPD31/pNH301hEGF、バチルス・ブレビスHPD31/pNY301hEGFを得た。各々の形質転換体を500ml容三角フラスコに2SLN培地(ペプトン 4%、酵母エキス 0.5%、グルコース 2%、FeSO4・7H2O 0.001%、MnSO4・4H2O 0.001%、ZnSO4・7H2O 0.0001%、ネオマイシン 50μg/ml、pH 7.2)100mlを分注し、121℃、15分間オートクレーブ滅菌した後、冷却した培地に植菌し、30℃で3日間振とう培養した。この培養液を遠心分離しその培養上清中のh−EGF量をHPLC(カラム:C18−100A、径4mm×長さ250mm、バッファー:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)/H2O、0.1%TFA/50%アセトニトリル、リニアグラジエント、検出:UV276nm)分析し、市販n−EGF(フナコシ(株)社製)を標準品として同条件でHPLCを行った時のピーク面積と比較して生産量を求めた(n=3:図9)。【0054】バチルス・ブレビスHPD31/pNY301hEGFは、バチルス・ブレビスHPD31/pNH301hEGFの2倍以上のh−EGFを生産した。【0055】【発明の効果】本発明によって新規発現プラスミドベクターpNYが開発された。本プラスミドベクターに異種遺伝子を結合してなる発現プラスミドでバチルス属細菌を形質転換し、該形質転換体を培養することにより、該異種遺伝子産物を効率よく製造することができる。【0056】【配列表】バチルス・ブレビスのMWPプロモーター及びHWPプロモーターの塩基配列を配列番号1、2に示す。配列番号3〜6は、PCR用プライマーを示す。下記表1〜6に、配列番号1〜6で示される各配列を示す。【0057】【表1】【0058】【表2】【0059】【表3】【0060】【表4】【0061】【表5】【0062】【表6】【図面の簡単な説明】【図1】pUB110由来のプラスミドベクターの制限酵素地図を示す。【図2】プラスミドベクターpNH301の制限酵素地図及びプロモーターを含む一部の塩基配列を示す。【図3】プラスミドベクターpNY301の制限酵素地図及びプロモーターを含む一部の塩基配列を示す。【図4】プラスミドベクターpNH301、pNY301の宿主での保持率を示す。【図5】プラスミドベクターpNH301BLA、pNY301BLAの構築図である。【図6】BLAの生産性を示す。【図7】プラスミドベクターpNH301BLA、pNY301BLAのアガロース電気泳動図である。【図8】プラスミドベクターpNH301hEGF、pNY301hEGFの構築図である。【図9】hEGFの生産性を示す。 プラスミドpUB110に由来する複製開始点、複製開始タンパク質遺伝子Rep、ネオマイシン耐性遺伝子Nmrを有し、かつ、MWPプロモーター領域に由来するP5プロモーター、SD配列、分泌シグナルペプチドをコードする配列、マルチクローニングサイト及びHS遺伝子を含む領域の塩基配列が下図に示すものであり、かつ、その制限酵素地図が下図に示すものであるプラスミドベクターpNY301。 請求項1に記載のプラスミドベクターに異種遺伝子を結合してなる発現プラスミドでバチルス属細菌を形質転換し、該形質転換体を培養することにより異種遺伝子産物を培養物中に生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする異種遺伝子産物の製造法。


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