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タイトル:特許公報(B2)_ポリビニルアルコール系含水ゲルの製造方法および酵素・微生物固定化成形物の製造方法
出願番号:1997108333
年次:2007
IPC分類:C08F 8/00,C08F 216/06,C12N 11/08


特許情報キャッシュ

河西 将利 中島 隆 野口 博司 JP 3908327 特許公報(B2) 20070126 1997108333 19970411 ポリビニルアルコール系含水ゲルの製造方法および酵素・微生物固定化成形物の製造方法 日本酢ビ・ポバール株式会社 594146788 岩谷 龍 100077012 河西 将利 中島 隆 野口 博司 20070425 C08F 8/00 20060101AFI20070405BHJP C08F 216/06 20060101ALI20070405BHJP C12N 11/08 20060101ALI20070405BHJP JPC08F8/00C08F216/06C12N11/08 BC12N11/08 C C08F 8/00- 8/50 C12N 11/00- 13/00 特開平08−151412(JP,A) 特開平01−168349(JP,A) 特開昭64−043188(JP,A) 特開平09−324095(JP,A) 3 1998287711 19981027 14 20040405 武貞 亜弓 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、成形性および強度に優れたポリビニルアルコール系含水ゲルおよび酵素・微生物固定化成形物の製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】含水ゲルは生体組織への損傷が少なく、物質透過性に富んでいるなどの理由から、目、皮膚、関節などの生体材料や薬物の徐放性担体などの医用材料、および保水剤、保冷剤として研究され、実用化されている。また、近年、含水ゲルに酵素や微生物を固定化して、生体触媒としての利用が検討されている。【0003】ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)系樹脂を用いた含水ゲルは、含水率が高いこと、成形物の柔軟性が高く機械的強度が高いこと、生体との親和性が高いことなどの点で有用な素材である。【0004】PVA系含水ゲルを製造する方法としては種々の方法が知られている。例えば、PVA水溶液を凍結し、脱水を行う方法(特開昭58−36630号公報)、PVA水溶液の凍結、融解を繰り返す方法(特開昭59−56446号公報)などが提案されているが、これらの方法は、PVA水溶液を凍結させるための設備が必要であったり、操作が複雑で、長時間を必要としたり、また、ゲルの耐水性や強度をコントロ−ルすることが困難であり、工業的に有利な方法ではない。また、従来よりPVA水溶液を飽和ほう酸水溶液と接触させてゲル化する方法、PVA水溶液にアルデヒド化合物を反応させてゲル化する方法などが知られている。前者はpHが8.0以上で反応を行う必要があり、得られたゲルはpHの変化により溶解してしまうという欠点があり、後者はpHを4.0以下にしないと、ゲル化しないことから、使用できる用途が限定され、含水ゲルに酵素や微生物を固定化する際には、適用が困難である。【0005】【発明が解決しようとする課題】上記の方法で得られるゲルを微生物や酵素の生体触媒担体として利用する場合、凍結やpH調整を行うことにより微生物や酵素の活性を低下させてしまうという問題があった。【0006】本発明は、微生物や酵素の活性を低下させることなく、機械的強度、柔軟性に優れた工業的に有利なPVA系樹脂の含水ゲルの製造方法を提供することを目的とするものである。【0007】【課題を解決するための手段】 本発明は、水溶液中でジアセトンアクリルアミド単位を0.1〜15モル%含有するジアセトンアクリルアミド共重合PVA系樹脂に反応せしめる際、前記ジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコール系樹脂水溶液に固体状のヒドラジン化合物もしくはヒドラジン化合物の水溶液を添加し、型に流し込み、型の中でゲル化させることを特徴とするPVA系含水ゲルの製造方法、その含水ゲル中に酵素又は微生物を固定せしめることを特徴とする酵素又は微生物固定化成形物の製造方法、更には、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂と酵素・微生物の他に少なくとも1種類の多価金属イオンとの接触によりゲル化能を有する水溶性高分子多糖類を含有する混合水溶液を多価金属イオンとヒドラジン化合物を含有する水溶液中に滴下せしめることを特徴とする酵素又は微生物固定化成形物の製造方法である。【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説明する。本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAは、脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体を鹸化することにより製造することができる。【0009】上記の共重合に使用する脂肪酸ビニルエステルとして、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に好ましいが、これに限定されるものではない。【0010】上記の脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとの共重合方法は、従来より公知のバルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の重合方法が可能であり、中でもメタノ−ルを溶剤として用いる溶液重合が工業的に好ましい。【0011】脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体の鹸化方法は、従来より公知のアルカリ鹸化および酸鹸化を適用することができ、中でも重合体のメタノ−ル溶液またはメタノ−ルと水、酢酸メチル、ベンゼン等の混合溶液に水酸化アルカリを添加して加アルコ−ル分解する方法が工業的に好ましい。【0012】本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAは、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂肪酸ビニルエステルまたはジアセトンアクリルアミドと共重合可能な、例えば、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸およびそのエステル・塩・無水物・アミド・ニトリル類、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等の不飽和二塩基酸モノアルキルエステル類、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエ−テル類、ビニルピロリドン類とともに共重合したものであっても良い。この他、得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを本発明の効果を阻害でアセタ−ル化、ウレタン化、エ−テル化、グラフト化、リン酸エステル化などの反応によって後変性したものでも良い。【0013】本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAのジアセトンアクリルアミド単位の含有量は0.1〜15モル%の範囲であり、好ましくは0.5〜10モル%である。ジアセトンアクリルアミド単位の含有量が0.1モル%未満であると、含水ゲルの強度は低い。また、上記含有量が15モル%を超えると、水溶性が低下し作業に問題が生じる。【0014】また、本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAの重合度、鹸化度は種々のものとすることができるが、20℃における4%水溶液粘度が3mPa・s以上、鹸化度85モル%以上が好ましい。【0015】本発明で使用される水溶性ヒドラジン化合物としては、各種のものが使用され、例えばヒドラジン、ヒドラジンヒドラ−ト、ヒドラジンの1水和物もしくは塩、フェニルヒドラジン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、n−プロピルヒドラジン、n−ブチルヒドラジン、エチレン−1,2 −ジヒドラジン、プロピレン−1,3 −ジヒドラジン、ブチレン−1,4 −ジヒドラジンなどの芳香族もしくは脂肪族ヒドラジンおよびその塩、安息香酸ヒドラジド、ギ酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、n−酪酸ヒドラジド、イソ酪酸ヒドラジド、n−吉草酸ヒドラジド、イソ吉草酸ヒドラジド、ピバリン酸ヒドラジドなどのモノカルボン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジンおよびN−アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジノ基を有する高分子化合物などが挙げられる。これらのヒドラジン化合物は、単独または併用して使用してもよい。【0016】次に、本発明のPVA系含水ゲルの製造方法について説明する。PVA系含水ゲルは、水溶液中でジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂と水溶性ヒドラジン化合物を反応させて得られるが、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAと水溶性ヒドラジン化合物との混合比率はジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましい、更に好ましくは0.5〜20重量部である。ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA水溶液の濃度は、必要なゲル強度、成形方法等によって適当な濃度を選択できる。【0017】ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAと水溶性ヒドラジン化合物を反応させる際、前記PVA系樹脂水溶液に固体状のヒドラジン化合物を添加しても、ヒドラジン化合物の水溶液を添加しても良い。また、従来公知のゲルの作成方法で成形したジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAをヒドラジン化合物の水溶液に浸漬しても良い。【0018】前記水溶液には、必要に応じて本発明で使用する以外のPVAやデンプン、メチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス等のセルロ−ス誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ゼラチン、寒天、カラギ−ナン、アルギン酸ナトリウム、マンナン、キトサンなどの他の高分子や増粘剤、クレ−、カオリン、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤、グリセリン、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ソルビト−ル等の可塑剤、消泡剤、キレ−ト剤、着色剤、さらには活性汚泥、バクテリア、酵母等の微生物、酵素などの1種以上を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。【0019】次に、本発明の酵素・微生物固定化成形物の製造方法について説明する。PVA系含水ゲル中に酵素・微生物を固定せしめる場合、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂とヒドラジン化合物を反応せしめる前に、あらかじめ、PVA系樹脂の水溶液に酵素、微生物の1種以上を添加し、次いでヒドラジン化合物またはその水溶液を添加して反応させ含水ゲルを成形することにより酵素・微生物固定化成形物を得ることができる。【0020】本発明の酵素・微生物固定化成形物の製造方法では、種々の形状の成形物を得ることができるが、酵素・微生物固定化成形物をバイオリアクタ−として利用する際の形状としては、流動性、充填効果、耐久性、取り扱い性の点から球状が有利である。【0021】球状の含水ゲルを製造するには、PVA系樹脂の水溶液、酵素、微生物の1種以上とヒドラジン化合物などを含む混合液を球状の型に流し込み、型の中でゲル化させる方法により製造することができるが、PVA系樹脂と酵素、微生物の1種以上の他に、少なくとも1種類の多価金属イオンとの接触によりゲル化能を有する水溶性高分子多糖類を含有する混合水溶液を多価金属イオンとヒドラジン化合物を含有する水溶液中に滴下し、表面張力により球状になることを利用する方法が工業的に有利である。【0022】本発明に用いる少なくとも1種の多価金属イオンとの接触においてゲル化能を有する水溶性高分子多糖類としては、例えばアルギン酸のナトリウム金属塩、カラギ−ナン、マンナン、キトサン等をあげることができるが、これに限られるものでばない。中でもとりわけアルギン酸ナトリウムが好ましい。【0023】さらに、本発明に用いる微生物としては、各種のものを使用することができ、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、リゾプス(Rhizopus)属等の糸状菌、シュ−ドモナス(Pseudomonas )属、アセトバクタ−(Acetobactor )属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、サッカロマイセス(Saccharomyces )属、キャンデイダ(Candida )属等の細菌をはじめ、1種以上の微生物を含む活性汚泥なども使用することができる。【0024】また、酵素としても各種のものを使用することができ、例えば各種のオキシダ−ゼ、レダクタ−ゼ、トランスフェラ−ゼ、ヒドロラ−ゼ、リア−ゼ、イソメラ−ゼおよびリガ−ゼなどの酵素を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。【0025】前記球状の酵素・微生物固定化成形物の製造方法においては、先ず、PVA系樹脂と水溶性高分子多糖類とのPVA系混合水溶液を調製するが、この混合水溶液中におけるPVA系樹脂の濃度は、PVA系樹脂以外の添加成分の種類や濃度、液温、滴下装置によって適切な濃度を設定することが重要である。前記PVA系混合水溶液を常温で使用する場合は、得られるPVA系ゲルの成形性および強度の点から、PVA系混合水溶液中におけるPVA系樹脂の濃度は2〜40重量%が好ましい。【0026】PVA系混合水溶液中におけるPVA系樹脂の濃度は高いほど、より強固なゲルが生成するが、PVA系樹脂の濃度が高くなりすぎると、溶液粘度も高くなり、取り扱いが困難になるため、必要なゲル強度が得られる範囲で、PVA系樹脂の濃度は低い方が有利である。【0027】次に、PVA系混合水溶液中における水溶性高分子多糖類の濃度は、各種の濃度とすることができるが、水溶性高分子多糖類の種類により異なる。最も好適であるアルギン酸ナトリウムを例にすると、混合水溶液全体に対して0.2〜4重量%が好ましく、0.5〜2重量%が更に好ましい。アルギン酸ナトリウムが0.2重量%未満では、PVA系混合水溶液の球状化性能が低下する傾向があり、また、4重量%より大きい場合は、固い球状成形物が得られるが、溶液粘度が高くなったり、原料コストが高くなるおそれがある。【0028】また、前記PVA系樹脂と水溶性高分子多糖類との混合水溶液に所望の酵素・微生物を混入、攪拌する際、酵素・微生物の添加濃度は各種の濃度を採用することができるが、酵素・微生物を含む菌液の濃度は、混合水溶液全体に対して3〜20重量%の範囲が好ましい。酵素・微生物の添加濃度が高すぎると、ゲル形成の妨げとなり、酵素・微生物の添加濃度が低すぎると、生体触媒としての性能が満足できなくなるため、好ましくない。【0029】次に、以上のPVA系混合水溶液とともに使用する多価金属イオン含有化合物、ヒドラジン化合物を含む水溶液について述べる。【0030】多価金属イオン含有化合物としては、各種のものを使用することができるが、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等のアルカリ土類金属イオンあるいはアルミニウムイオン、セリウムイオン、ニッケルイオン等の多価金属イオンのうち少なくとも一種を含有する化合物が挙げられるが、とりわけ塩化カルシウムが好ましい。また、多価金属イオン含有化合物の濃度は種々の濃度とすることができるが、0.05〜1.0モル/L が好ましい。【0031】また、ヒドラジン化合物については、前記の種々の化合物を使用することができ、種々の濃度とすることができるが、0.1〜20.0重量%にすることが好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましい。濃度が0.1重量%未満では、ゲルの強度が低くなるため、好ましくないが、必要なゲル硬度が得られる範囲で、濃度は低い方がコスト的に有利である。【0032】PVA系混合水溶液と、多価金属イオン含有化合物、ヒドラジン化合物を含む水溶液とは任意の温度、pHで使用することができ、通常は使用する酵素・微生物に最適な温度、pHに調整し、ゲルの作成を行うのが好ましい。【0033】以上のようにして得られるPVA系混合水溶液を多価金属イオン含有化合物、ヒドラジン化合物を含む水溶液に滴下するが、この滴下の手段としては各種の手段が採用される。例えば、PVA系混合水溶液を注射器などに充填し、注射針などの管状の口金から押し出して滴下したり、あるいはPVA系混合水溶液を噴霧口金を有する容器に入れ、噴霧口金から噴霧する手段などをあげることができる。【0034】滴下されたPVA系混合水溶液の液滴は、多価金属イオン含有化合物、ヒドラジン化合物を含む水溶液に接触すると、表面張力によって球体となり、さらに球体の最表面が薄膜状に固化して、PVA系混合水溶液の粘度を調整することによって、直径1〜20mmに任意に変えることができる。多価金属イオン含有化合物、ヒドラジン化合物を含む水溶液は静置でも良いが、スタ−ラ−等で強制攪拌することにより、PVA系混合水溶液の成形物と多価金属イオン含有化合物との反応を促進し、球状成形物同士の融着をほぼ完全に防止することができる。【0035】次いで、球状化したPVA系混合水溶液の成形物は、ヒドラジン化合物を含む水溶液中に放置することによって、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA中のカルボニル基とヒドラジノ基が反応し、PVA系樹脂が架橋し、安定で強固なゲルを形成する。ゲル形成のための放置時間、温度はPVA系樹脂、ヒドラジン化合物の種類、濃度、pH値などにより異なる。【0036】このようにして、得られるPVA系ゲルは、長時間にわたって変形、破損しない強度を有し、水や各種薬剤に対しても侵されることなく、連続使用が可能となり、種々の酵素・微生物に最適なpHで製造できるため、活性の高い酵素・微生物固定化成形物としての実用性が高い。【0037】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各物性は、以下に記す方法により測定したものである。【0038】1.ゲルの機械的強度ゲル成形物を平面上に静置し、重力による形状の変化が起こるかどうか、また指でゲルを押さえてゲルが崩壊するかを観察し、次の基準で評価した。評価基準○:重力による形状変化が起こらず、指で押さえてもゲルが崩壊しない。△:重力による形状変化は起こらないが、指で押さえるとゲルが崩壊した。×:重力により、ゲルが変形した。2.耐久性球状ゲル成形物100個に対して水300gを加え、30℃にして攪拌し、7日経過後のゲルの残存率を測定し、次の基準で評価した。評価基準○:95%以上△:95%未満、40%以上×:40%未満【0039】3.浄化性能酵素・微生物を固定化した実施例、比較例の球状ゲル成形物のみについて、直径15cm、高さ70cmの出入口をメッシュで塞いだ円筒状容器に充填して、バイオリアクタ−とした。該バイオリアクタ−に常温でCOD濃度が550mg/Lの廃水を毎時1.0L の速度で流通させた。流通直後と7日経過後の出口側浄化水のCOD濃度を測定し、次の基準で評価した。評価基準○:100mg/L未満△:100mg/L以上、500mg/L未満×:500mg/L以上4.総合評価上記の各評価を総合して次の基準で評価した。評価基準○:ゲル強度、耐久性、浄化性能が優れている。×:ゲル強度、耐久性、浄化性能が実用レベルに達していない。【0040】合成例1攪拌機、温度計、および滴下ロ−ト還流冷却器を取り付けたフラスコ中に、酢酸ビニル672重量部、ジアセトンアクリルアミド10重量部、およびメタノ−ル178重量部を仕込み、系内の窒素置換を行った後、内温を60℃まで昇温した。この系に2,2−アゾビスイソブチリロニトリル1重量部をメタノ−ル50重量部に溶解した溶液を添加し、重合を開始した。重合開始後、5時間かけて、ジアセトンアクリルアミド55重量部をメタノ−ル35重量部に溶解した溶液を一定速度で滴下し、6時間後に重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼンを添加し、重合を停止した。重合収率は78%であった。得られた反応混合物にメタノ−ル蒸気を加えながら残存する酢酸ビニルを留出し、ジアセトンアクリルアミド共重合成分を含有する酢酸ビニル系重合体の50%メタノ−ル水溶液を得た。この混合物500重量部にメタノ−ル50重量部と水酸化ナトリウムの4%メタノ−ル溶液10重量部とを加えてよく混合し、40℃で鹸化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノ−ルでよく洗浄した後に乾燥して、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを得た。また、元素分析測定により、この樹脂中のジアセトンアクリルアミド単位の含有率は5.0モル%であることが判明した。この樹脂の20℃における4%水溶液粘度は26.8mPa・s、鹸化度は98.4モル%であった。なお、この粘度はB型粘度計を用いて60rpmの回転速度で測定した。【0041】合成例2〜5表1に示すように仕込み組成を変えた以外は合成例1と同様にして表1に示す各種のジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコールを得た。【0042】【表1】【0043】実施例1合成例1で得られた変性度5.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA10gを水100gに溶解し、これに1gのN−アミノポリアクリルアミドを添加して、良く攪拌して均一な混合液を作成した後、直径1cmの球形の金型に流し込み、10℃で2時間放置してゲル化させた。【0044】得られたゲルの強度、耐久性を表2に示す。得られたゲルは、指で押さえても優れた弾性と柔軟性を示し、崩壊せず、耐久性も優れていた。なお、本実施例では微生物(菌)を添加しなかったので、微生物の作用に基づく浄化性は期待できなかったため、浄化性能の評価は省略した。【0045】【表2】【0046】実施例2合成例2で得られた変性度1.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA10gを水100gに溶解し、これに1gのN−アミノポリアクリルアミドを添加して、良く攪拌して均一な混合液を作成した後、直径1cmの球形の金型に流し込み、10℃で2時間放置してゲル化させた。【0047】得られたゲルの強度、耐久性を表2に示す。得られたゲルは、指で押さえても優れた弾性と柔軟性を示し、崩壊せず、耐久性も優れていた。なお、本実施例では微生物(菌)を添加しなかったので、微生物の作用に基づく浄化性は期待できなかったため、浄化性能の評価は省略した。【0048】実施例3合成例3で得られた変性度8.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA10gを水100gに溶解し、これに1gのN−アミノポリアクリルアミドを添加して、良く攪拌して均一な混合液を作成した後、直径1cmの球形の金型に流し込み、10℃で2時間放置してゲル化させた。【0049】得られたゲルの強度、耐久性を表2に示す。得られたゲルは、指で押さえても優れた弾性と柔軟性を示し、崩壊せず、耐久性も優れていた。なお、本実施例では微生物(菌)を添加しなかったので、微生物の作用に基づく浄化性は期待できなかったため、浄化性能の評価は省略した。【0050】実施例4合成例1で得られた変性度5.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA樹脂に濃度が10重量%になるように水を加え全量400gにし、95℃で120分間処理し、PVAを溶解した後、室温まで放冷した。これに、4重量%アルギン酸ナトリウム水溶液200gを加えて充分に混合し、PVA系混合水溶液を調製した。一方、11.1gの塩化カルシウムと50gのN−アミノポリアクリルアミドを1L の水で溶解し、多価金属化合物とヒドラジン化合物との水溶液を調製した。【0051】上記のPVA系混合水溶液を、先端に内径1mmの注射針で取り付けた内径2mmφのビニル管1本を使用したロ−ラ−ポンプで1mL/分で送液し、スタ−ラ−で攪拌した上記の多価金属化合物とヒドラジン化合物との水溶液に水表面から15cmの高さより滴下した。滴下した液は直ちに球状化して沈降した。【0052】更に、球状化した成形物を多価金属化合物とヒドラジン化合物との水溶液中に40℃で1時間浸漬することによって、球状のPVA系ゲルを得ることができた。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度および耐久性について評価した結果を表2に示す。【0053】表2から明らかなように、強度および耐久性は良好であった。なお、本実施例では微生物(菌)を添加しなかったので、微生物の作用に基づく浄化性は期待できなかったため、浄化性能の評価は省略した。【0054】実施例5合成例2の変性度1.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを使用した以外は実施例4と同様にして球状ゲルを作製し、ゲル強度および耐久性の評価を行った。その結果を表2に示す。表2から明らかなように、強度および耐久性は良好であった。なお、本実施例では微生物(菌)を添加しなかったので、微生物の作用に基づく浄化性は期待できなかったため、浄化性能の評価は省略した。【0055】実施例6合成例1で得られた変性度5.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA樹脂に濃度が10重量%になるように水を加え全量400gにし、95℃で120分間処理し、PVAを溶解した後、室温まで放冷した。これに、4重量%アルギン酸ナトリウム水溶液200gを加えて充分に混合し、さらにサッカロマイセス属の菌体を0.5g-wet cells/mLを含む活性汚泥を60g加え、充分に攪拌し、PVA系混合水溶液を作製し、水酸化ナトリウムでpH6.0に調製した。一方、11.1gの塩化カルシウムと50gのN−アミノポリアクリルアミドを1L の水で溶解し、さらに塩酸を添加し、pH6.0の多価金属化合物およびヒドラジン化合物水溶液を調製した。【0056】PVA系混合水溶液を、先端に内径1mmの注射針を取り付けた内径2mmφのビニル管1本を使用したロ−ラ−ポンプで1mL/分で送液し、スタ−ラ−で攪拌した上記の多価金属化合物とヒドラジン化合物との水溶液に水表面から15cmの高さより滴下した。滴下した液は直ちに球状化して沈降した。【0057】更に、球状化した成形物を多価金属化合物とヒドラジンとの化合物水溶液中に40℃で1時間浸漬することによって、球状のPVA系ゲルを得ることができた。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能について評価した結果を表3に示す。【0058】【表3】【0059】表3より明らかなように、強度、耐久性および浄化性能のすべてにおいて良好であった。【0060】実施例7合成例2で得られた変性度1.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを使用した以外は実施例6と同様にして球状ゲルを作製した。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。結果を表2に示す。表2から明らかなように、強度、耐久性および浄化性能は良好であった。【0061】実施例8多価金属化合物とヒドラジン化合物との水溶液の作製の際に、50gのN−アミノアクリルアミドの代わりに50gのアジピン酸ジヒドラジドを使用した以外は実施例6と同様にして球状ゲルを作製した。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。表3から明らかなように、強度、耐久性および浄化性能は良好であった。【0062】実施例9PVA系樹脂の水溶液濃度を5重量%にした以外は実施例6と同様にして球状ゲルを作製した。このゲルは粘着性もなく、直径は1〜2mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。表3から明らかなように、強度、耐久性および浄化性能は良好であった。【0063】実施例10多価金属化合物とヒドラジン化合物との水溶液の作製の際に、N−アミノアクリルアミドの使用量を10gにした以外は実施例6と同様にして球状ゲルを作製した。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。表3から明らかなように、強度、耐久性および浄化性能は良好であった。【0064】比較例1合成例4で得られた変性度0.05モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA10gを水100gに溶解し、これに1gのN−アミノポリアクリルアミドを添加して、良く攪拌して均一な混合液を作成した後、直径1cmの球形の金型に流し込み、10℃で2時間放置したが、ゲル化しなかった。【0065】比較例2合成例5で得られた変性度18.0モル%のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAは水に溶解しなかったため、含水ゲルを作成することができなかった。【0066】比較例3合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂の代わりに鹸化度98.5モル%、20℃における4%水溶液粘度が28.6mPa・sの未変性PVAを使用した以外は、実施例6と同様にして球状ゲルを作製した。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。表3から明らかなように、ゲル強度は弱く、また耐久性も問題があることがわかった。【0067】比較例4合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂の代わりに合成例4で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂を使用した以外は、実施例6と同様にして球状ゲルを作製した。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。表3から明らかなように、ゲル強度は弱く、また耐久性も問題があることがわかった。【0068】比較例5PVA系樹脂を使用しない以外は、実施例6と同様にして球状ゲルを作製しようとしたが、ゲルは得られなかった。【0069】比較例6N−アミノアクリルアミドを使用しない以外は実施例6と同様にして球状ゲルを作製した。このゲルは粘着性もなく、直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能の評価を行った。結果を表3に示す。表3から明らかなように、ゲル強度は弱く、また耐久性も問題があることがわかった。【0070】比較例7鹸化度98.5モル%、20℃における4%水溶液粘度が28.6mPa・sの未変性PVAを使用した以外は、濃度10重量%になるように水を加え全量400gにし、95℃で120分間処理し、PVAを溶解した後、室温まで放冷した。これに、4重量%アルギン酸ナトリウム水溶液200gを加えて充分に混合し、さらにサッカロマイセス属の菌体を0.5g-wet clls/mL を含む活性汚泥を60g加え、充分に攪拌し、PVA系混合水溶液を作製し、水酸化ナトリウムでpH6.0に調製した。一方、飽和ほう酸水溶液1L に11.1gの塩化カルシウムを加え溶解し、さらに塩酸でpHを調製し、pH6.0のほう酸および多価金属化合物の水溶液を調製した。【0071】PVA系混合水溶液を、先端に内径1mmの注射針を取り付け内径2mmφのビニル管1本を使用したロ−ラ−ポンプで1mL/分で送液し、スタ−ラ−で攪拌した上記のほう酸および多価金属化合物の水溶液に水表面から15cmの高さより滴下した。滴下した液はただちに球状化して沈降した。更に、球状化した成形物をほう酸および多価金属化合物の水溶液中に40℃で3時間浸漬することによって、球状のPVA系ゲルを得ることができた。このゲルの直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能について評価した結果を表3に示す。表3により明らかなように、ゲル強度は弱く、また耐久性も問題があり、これは微生物の最適pHではほう酸によるPVAのゲル化が起こっていないからであると考えられる。【0072】比較例8PVA系混合水溶液およびほう酸、多価金属化合物の水溶液のpHを9.0に調製した以外は、比較例7と同様にして球状のPVA系ゲルを作製した。このゲルの直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能について評価した結果を表3に示す。表3により明らかなように、ゲル強度、耐久性もやや劣り、浄化性能についても、COD濃度が520mg/Lと、ほとんど廃水中の有機物類が浄化されていないことがわかった。これは、PVA系ゲルの製造中にpHの変化により菌体の分解活性が低下したためと考えられる。【0073】比較例9鹸化度98.5モル%、20℃における4%水溶液粘度が28.6mPa・sの未変性PVAに濃度10重量%になるように水を加え全量400gにし、95℃で120分間処理し、PVAを溶解した後、室温まで放冷した。これに、4重量%アルギン酸ナトリウム水溶液200gを加えて充分に混合し、さらにサッカロマイセス属の菌体を0.5g-wet cells/mL を含む活性汚泥を60g加え、充分に攪拌し、PVA系混合水溶液を作製し、水酸化ナトリウムでpH6.0に調製した。一方、11.1gの塩化カルシウムと25%グルタルアルデヒド水溶液50gを1L の水で溶解し、さらに塩酸でpH6.0の多価金属化合物およびグルタルアルデヒドの水溶液を調製した。【0074】PVA系混合水溶液を、先端に内径1mmの注射針を取り付けた内径2mmφのビニル管1本を使用したロ−ラ−ポンプで1mL/分で送液し、スタ−ラ−で攪拌した上記の多価金属化合物およびグルタルアルデヒドの水溶液に水表面から15cmの高さより滴下した。滴下した液は直ちに球状化して沈降した。更に、球状化した成形物を多価金属化合物およびグルタルアルデヒドの水溶液中に40℃で3時間浸漬することによって、球状のPVA系ゲルを得ることができた。このゲルの直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能について評価した結果を表3に示す。【0075】表3により明らかなように、ゲル強度は弱く、また耐久性も問題があり、これは微生物の最適pHではグルタルアルデヒドによるPVAのゲル化が起こっていないからであると考えられる。【0076】比較例10PVA系混合水溶液および多価金属化合物とグルタルアルデヒドの水溶液のpHを3.0に調製した以外は、比較例9と同様にして球状のPVA系ゲルを作製した。このゲルの直径は3〜4mmであった。ゲル強度、耐久性および浄化性能について評価した結果を表3に示す。表3により明らかなように、ゲル強度、耐久性は良好であったが、浄化性能については、COD濃度が510mg/Lと、ほとんど廃水中の有機物類が浄化されていないことがわかった。これは、PVA系ゲルの製造中にpHの変化により菌体の分解活性が低下したためと考えられる。【0077】【発明の効果】本発明によると、工業的に有利な強度の高いPVA系含水ゲルを製造することができ、得られる含水ゲルを微生物や酵素の固定化担体として使用する際、製造時に微生物や酵素の活性を低下させず、所望の活性を長期間にわたって維持することができる。 水溶液中でジアセトンアクリルアミド単位を0.1〜15モル%含有するジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコール系樹脂と水溶性ヒドラジン化合物を反応せしめる際、前記ジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコール系樹脂水溶液に固体状のヒドラジン化合物もしくはヒドラジン化合物の水溶液を添加し、型に流し込み、型の中でゲル化させることを特徴とするポリビニルアルコール系含水ゲルの製造方法。 請求項1記載のポリビニルアルコール系含水ゲル中に酵素又は微生物を固定せしめることを特徴とする酵素又は微生物固定化成形物の製造方法。 ジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコール系樹脂と酵素又は微生物の他に少なくとも1種類の多価金属イオンとの接触によりゲル化能を有する水溶性高分子多糖類を含有する混合水溶液を多価金属イオンとヒドラジン化合物を含有する水溶液中に滴下せしめることを特徴とする酵素又は微生物固定化成形物の製造方法。


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