タイトル: | 特許公報(B2)_芳香族ポリカルボジイミド |
出願番号: | 1997094859 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C08G 18/02,C07C 265/14 |
坂本 亨枝 望月 周 山本 道治 JP 3914294 特許公報(B2) 20070209 1997094859 19970328 芳香族ポリカルボジイミド 日東電工株式会社 000003964 森岡 博 100085202 坂本 亨枝 望月 周 山本 道治 JP 1996110351 19960405 20070516 C08G 18/02 20060101AFI20070419BHJP C07C 265/14 20060101ALN20070419BHJP JPC08G18/02 ZC07C265/14 C08G 18/00- 18/87 C07C265/12-265/14 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平10−251511(JP,A) 牧保夫、犬飼鑑,トリフルオロメチル置換ビフェニルおよびジフェニルエーテルのジイソシアネート類の合成,日本化学会誌,1972年,Vol.3,pp.675-677 Werner Mormann, Martin Brahm and Saria Benadda,Liquid Crystalline Diaromatic Diisocyanates a Route to Liquid Crystalline Polyurethanes?,Integration of Fundamental Polymer Science and Technology,1991年,Vol.5,pp.219-224 5 1998030013 19980203 12 20031113 武貞 亜弓 【0001】【発明の背景】 本発明は新規な芳香族ポリカルボジイミドに関する。本発明の芳香族ポリカルボジイミドは高耐熱性、高寸法安定性など種々の優れた特性を有するフィルムや成形物あるいは接着剤を与える。【0002】芳香族ポリカルボジイミドには、従来ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネートを重合したものなどが知られている。このような芳香族ポリカルボジイミドは、その優れた耐熱性により耐炎化フィルムや耐熱性接着剤として使用されている。【0003】【発明の目的及び概要】芳香族ポリカルボジイミドのフィルムは400℃以上の高温にさらしても揮発性ガスや分解モノマーを生成しないという点では耐熱性を有するが、200℃以上で熱処理すると自己保持性がなく脆くなり実用に耐えず、高温、高圧下の耐湿性も低い。【0004】また、全般に公知の芳香族ジイソシアネートより誘導される従来のポリマーは、高融点であり溶融成形が困難であったり、あるいは良好な成形溶媒がないため溶液成形が難しい。また、一般に高重合度のポリマーを製造することも困難であることが多い。また、フィルムや成形品に適した機械的特性を得るためにはポリマー骨格中の2価の芳香族残基が共軸もしくは並行軸の結合でなければならないが、このようなポリマー骨格は剛直性を有し、柔軟性に乏しい。【0005】 本発明者らは、このような従来の芳香族ポリカルボジイミドの欠点を解消し耐熱性と共に成形性および柔軟性に優れた高性能のフィルムや成形品を与える芳香族ポリマーについて鋭意検討を重ねた結果、2,2´−ジメチル又は2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジイソシアナートビフェニルをモノマーとして、これを重合することにより、前記の条件を満たすポリマーが得られることを見いだし本発明を完成した。【0006】 即ち、本願の発明は下記一般式(I)で表される構成単位を有する芳香族ポリカルボジイミドを提供するものである。【0007】【化3】 (式中、nは2〜400の整数を表し、Xは水素又はフッ素を表す。) また、本願発明のポリマーは下記一般式(II)で表される芳香族ジイソシアネートより製造される。【0008】【化4】(式中、Xは前記に同じ)【0009】【発明の詳細な開示】 本願発明のポリマーは前記式(I)で表され、式中nは2〜400、好ましくは8〜100の整数である。このポリマーから得られるフィルムは非常に高い耐熱性、耐湿性を有すると共に熱処理後も高い可撓性を有する。さらに本発明のポリカルボジイミドは他のポリカルボジイミドに比べて優れた寸法安定性を有する。【0010】本発明のポリカルボジイミドは、前記式(II)の対応するジイソシアネートをモノマーとし、これをリン系触媒の存在下、公知の方法で重合することにより得られる(J.J.Monagle, J.Org.Chem.,27.3851(1962))。【0011】モノマーは単独で用いてもよいし、その性質を失わない範囲で他の有機ジイソシアネート、例えば4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、o-トリレンジイソシアネートなどと共重合してもよい。【0012】重合時の反応温度は40〜100℃が望ましく、50〜90℃とするのがより好ましい。反応温度が40℃より低いと反応時間が長くなりすぎ実用的でない。また100℃を越える反応温度は溶媒の選択が困難である。【0013】ポリカルボジイミド合成におけるイソシアネートモノマー濃度は2〜50重量%(以下、単に%という)、好ましくは5〜45%、最も好ましくは15〜40%である。濃度が2%より低いとカルボジイミド化が進行しない場合がある。また50%を越えると反応の制御が困難になる可能性がある。【0014】ポリカルボジイミドの合成時及びポリカルボジイミド溶液に用いられる有機溶媒は、従来公知のものであってよい。具体的にはテトラクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。【0015】カルボジイミド化に用いる触媒としては1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニルホスホレン−1−オキシド、あるいはこれらの3−ホスホレン異性体などのホスホレンオキシドを使用することができる。【0016】また重合反応の末期、中期、初期のいずれか、もしくは全般にわたり、モノイソシアネートを加えて末端封鎖処理をしてもよい。かかるモノイソシアネートとしては、フェニルイソシアネート、p−ニトロフェニルイソシアネート、p−またはm−トリルイソシアネート、p−ホルミルフェニルイソシアネートなどを用いることができる。このようにして得られたポリカルボジイミド溶液は、溶液の保存安定性に優れている。【0017】また、反応終了後にメタノール、エタノール、ヘキサンなどの貧溶媒に反応液を投入し、ポリカルボジイミドを沈殿として析出させ、未反応のモノマーや触媒を取り除いてもよい。このような操作を行うことにより、ポリカルボジイミドの溶液安定性を向上させることができる。【0018】本発明のポリカルボジイミドの分子量は、数平均分子量にして1,000〜100,000、好ましくは4,000〜20,000である。分子量が高すぎると、常温での放置においても数分から数時間で容易にゲル化するため、実用上好ましくない。また、分子量が低すぎると、皮膜の信頼性に欠けるので好ましくない。【0019】沈殿として析出させた後は、所定の操作により洗浄、乾燥を行い、ポリカルボジイミドを再度有機溶媒に溶解することによりポリカルボジイミド溶液が得られる。【0020】(フィルムの製造)重合反応により得られたポリカルボジイミド樹脂は、常法により適当な厚みのフィルムに成形することができる。フィルムの塗工温度は20〜150℃、好ましくは50〜120℃、最も好ましくは70〜100℃である。塗工温度が20℃より低いと溶剤がフィルム中に残存することがある。また150℃を越えるとフィルムの熱硬化が進むことがある。また、必要によりアフターキュアを行ってもよい。【0021】これらフィルムの形成にあたっては、導電性の付与や伝熱性の向上、弾性率の調節、特に高弾性率化などのため、たとえばアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、亜鉛、鉛、スズ、パラジウム、半田などの金属ないし合金、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化ケイ素などのセラミック、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末を必要に応じ1種又は2種以上配合してもよい。【0022】また、本発明樹脂のペースト組成物を用いて、常法によりフィルム状に形成し、接着シートとすることもできる。シート厚は1〜2000μmが一般的であるが、これに限定されず接着目的に応じて適宜変更してよい。シートの形状や大きさについても、リードフレームや半導体チップ等の被着体に応じて適宜決定することができる。具体的にはスクリーン印刷などによりパターン状に印刷することも可能である。【0023】接着シートの形成にあたっては、離型性を有するガラス、ステンレス鋼板、耐薬品性を有するフィルム等の支持体あるいは接着目的の支持体に、ペースト組成物を塗工して溶媒を除去して成膜した後、支持体から離型するか、或いは支持体と一体の接着シートとして用いることができる。ペースト組成物の塗工温度は20〜300℃、好ましくは50〜250℃、より好ましくは70〜200℃である。塗工温度が20℃より低いと溶剤がフィルム中に残存することがある。また300℃を越える高温では接着シートの熱硬化が進むことがある。【0024】また支持体と一体の接着シートは、支持体から離型して得られた接着シートを別の支持体にプレスなどによりラミネートして作製してもよい。【0025】接着目的の支持体としては金属箔、絶縁性フィルムなどを用いることができる。金属箔としてはアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、インジウム、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、鉄等がいずれでも好適に用いられ、単独で用いてもよく、複数の金属の合金であってもよい。また、絶縁性フィルムとしてはポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど耐熱性や耐薬品性を有するフィルムであれば種々のフィルムが用いられる。【0026】また上記金属箔と絶縁性フィルムはそれぞれ単独で用いても良く、両者の2層構成、即ち金属箔/絶縁性フィルムなどの2層基材を用いても良い。2層基材としては、例えば銅/ポリイミド2層基材などが挙げられる。【0027】ポリカルボジイミドの延伸フィルムは、上記の製法により作成されたポリカルボジイミド樹脂を用いて、例えば次のようにして製造される。即ち上記ポリカルボジイミド樹脂溶液を所定の形状に、例えばキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの公知の方法によりフィルム状に成形する。このフィルムは通常、溶媒の除去に必要な温度で乾燥すればよく、例えば50〜200℃で乾燥することができる。特に、ポリカルボジイミド樹脂の硬化反応をあまり進行させずに乾燥するため、60〜150℃が望ましい。乾燥温度が低すぎると、フィルムの信頼性が乏しくなり好ましくない。また、乾燥温度が高すぎると、ポリカルボジイミド樹脂の架橋が進行し、フィルムの延伸工程においてフィルムの破断や延伸不良などの不都合が生じやすく好ましくない。【0028】ポリカルボジイミドの延伸フィルムの形状は、チューブ状など他の種々の形状であってよい。【0029】ポリカルボジイミド延伸フィルム、例えばフィルム状に成形されたものは、所定の条件下において、一方向(主軸方向)に1.2〜10倍、好ましくは2〜6倍に延伸される。さらに、所望により、上記延伸方向(主軸方向)と直交する方向に1〜5倍、好ましくは1.1〜1.6倍の範囲に延伸することができる。上記延伸の順序はいずれの方向からさきに延伸を行ってもよい。このように主軸方向と直交する方向に延伸することにより、得られた延伸フィルムは耐衝撃性が向上し、かつ一方向に引き裂かれやすいという性質が緩和される。上記延伸方向(主軸方向)と直交する方向への延伸倍率が5倍を越えると、主軸方向と直交する方向への熱収縮性が大きくなりすぎ、熱収縮処理を施したときの仕上りが波打ち不均一となる。【0030】延伸温度は、ポリカルボジイミド樹脂の硬化反応があまり進行しないで乾燥が行われるよう40〜200℃とするのが好ましい。延伸温度が40℃未満では充分な延伸倍率が得られず、フィルムが破断しやすい。また200℃を越えるとポリカルボジイミド樹脂の硬化反応が一部進行するため、熱回復性能が低下する傾向が見られる。【0031】なお、延伸方法は特に限定されるものではなく、例えば、ロール延伸法、長間隙延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法など公知の方法がいずれも採用されてよい。【0032】(用途)このようにして作成されたポリカルボジイミド延伸フィルムは、例えば、種々の物品の耐熱被覆材料として用いられる。延伸フィルムを用いて物品の被覆を行うには、例えばポリカルボジイミド樹脂を主成分とする成形材料からなる熱収縮性フィルムにより保護すべき被着体(物品)を被覆した後、熱処理してフィルムの硬化を行う。この熱処理によって、ポリカルボジイミドの硬化反応が進行し、被着体表面の凹凸部分にポリカルボジイミド樹脂が流れ込みアンカー(投錨)効果が生じるとともに、被着体表面の極性基とポリカルボジイミド樹脂の累積多重結合との化学反応などの作用が生じ、化学的、物理的な接着がなされる。【0033】本発明のシート状接着剤は、かかる加熱処理により熱硬化して強固な接着力を発現すると共に、低吸湿性の硬化物となる。かかる加熱処理は、例えばヒーター、超音波、紫外線などの適宜な方法で行って良い。従って本発明の接着シートは、種々の材料の接着処理に好ましく用いることができ、特に信頼性の高い固着処理が必要で、このために低吸湿性が要求される半導体チップやリードフレームなどで代表される電気・電子部品の固着処理に好ましく用いられる。【0034】本発明の接着シートは低吸湿性であること、可撓性に富み取り扱いやすいこと、半導体素子に対して接着性がよいこと、保存安定性がよいことなどの点で優れている。【0035】上記被着体は特に限定されるものではなく、例えばガラス、金属、樹脂、セラミック製のシートや板状物、環状物などが挙げられる。具体的な製品としては電力用ケーブルなどの電線、ガラス製ボトル、電子部品などが挙げられる。このような延伸フィルムの熱回復応力は例えば2倍延伸からの熱回復応力で約70kg/cm2であり、線膨張係数は3.0〜5.0×10-5K-1であった。【0036】 (モノマー) 本願発明ポリカルボジイミドの原料となり得る下式(II)の芳香族ジイソシアネート、すなわち、2,2´−ジメチル又は2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジイソシアナートビフェニルについて述べる。【0037】【化5】(式中、Xは前記に同じ)【0038】このジイソシアネート化合物を製造するには、当該ジイソシアネート化合物のアミノ前駆体をそれ自体は公知の方法によりイソシアネート化して合成することができる。このような前駆体としては、例えば2,2´−ジメチル又は2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルを用いることができる。【0039】かかるジアミン化合物をイソシアネート化する方法としては、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、又はカルボニルジイミダゾールを作用させる方法が挙げられる。また、別法としてジアミン化合物をハロゲン化アルキルホーメート又はハロゲン化アリールホーメートを用いて一旦ウレタンとし、これをクロロシラン、カテコールボラン等の触媒存在下にイソシアネート化してもよい。さらに、他の方法ではジイソシアネートの前駆体として、2,2´−ジメチル又は2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジカルボキシビフェニルなどのジカルボン酸を用い、これをクルチウス分解によりイソシアネート化する方法などを用いてもよい。【0040】これらの製造方法のうち、ジアミン化合物をハロゲン化アルキルホーメートまたはハロゲン化アリールホーメートを用いて一旦ウレタンとし、これに触媒としてクロロシランを用いてイソシアネート化する方法(G.Greber.et.al.,Angew.Chem.Int.Ed.,Vo.l7,No.12,941(1968))や、あるいはカテコールボランを用いてイソシアネート化する方法(V.L.K.Valli.et.al.,J.Org.Chem.,Vol.60,257(1995))が収率及び安全性の点から好ましく、この方法について詳しく述べる。【0041】(ウレタン合成)まず対応するジアミン化合物にメチルクロロホルメート、エチルクロロホルメート、フェニルクロロホルメート、p−ニトロフェニルクロロホルメートなどを作用させてウレタンを合成する。これらのうち、つぎのイソシアネート化を円滑に進行させるためには、フェニルクロロホーメートまたはp−ニトロフェニルクロロホルメートが好ましいが、p−ニトロフェニルクロロホルメートは活性が高く副反応が起こる可能性が高いのでフェニルクロロホルメートが最も好ましい。【0042】これら反応に用いられる溶媒はジアミンを溶解させるものであればよい。例えばTHF、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチルなどのエステル系化合物、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系化合物などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。【0043】反応温度は−40〜70℃、好ましくは−20〜50℃、最も好ましくは0〜30℃である。反応温度が−40℃より低いと反応が進行しにくく、一方、70℃を越えると縮合などの副反応が起こる可能性がある。【0044】反応により生成する塩化水素をトラップする塩基としては、用いた溶媒に溶解し反応を阻害しないものであればよく、例えばトリエチルアミン、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。かかる塩基の使用量は用いたジアミンのモル数の2.0〜3.4倍が好ましい。【0045】得られたウレタンの精製方法には再結晶、カラムなど従来公知の方法を用いることができる。また、必要に応じて蒸留を行ってもよい。【0046】(a)クロロシランを用いたイソシアネート化前記ウレタンをクロロシランを用いてイソシアネート化するには、ウレタンのモル量の2.0〜4.6倍のクロロシランを触媒とし熱分解を行う。このようなクロロシラン類としては、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメトキシシラン、テトラクロロシランなどが挙げられるが、取り扱いの容易性および価格の点からトリメチルクロロシランが好ましい。【0047】用いられる溶媒はウレタンを溶解または懸濁するものであればよく、前記のエーテル系化合物、芳香族炭化水素の他にジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン系化合物;酢酸エチルなどのエステル系化合物が挙げられる。【0048】これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、場合によっては反応途中でその一部ないし全部を置換することにより反応温度を変化させてもよい。【0049】反応温度は0℃から使用する溶媒の沸点まで、好ましくは室温から沸点までである。反応温度が低すぎると反応が全く進行しない場合がある。逆に反応温度を高くし過ぎたり長く加熱し過ぎたりすると、生成物が分解する場合があるので、IRなどで反応をトレースしながら徐々に温度を上昇させて反応を進めるのがよい。【0050】反応の際に生成する塩化水素のトラップにはトリエチルアミンなどの塩基を同様にして用いてよい。【0051】(b)ハロゲン化カテコールボランを用いたイソシアネート化ウレタンのイソシアネート化には、前記クロロシランの替わりにハロゲン化カテコールボランを触媒として用いた方法を採用してもよい。ハロゲン化カテコールボランとしては、クロロカテコールボラン、ブロモカテコールボランなどが挙げられるが、価格、取扱性からクロロカテコールボランが好ましい。なお、カテコールボラン類はクロロシラン類よりもウレタンの熱分解に対してより高い活性を有するので、用いるウレタンはフェニルウレタン以外のウレタンも用いることができる。【0052】かかる反応に用いられる溶媒は前記クロロシランを用いたイソシアネート化の場合と同様のものが用いられてよい。【0053】反応温度は、フェニルウレタンを用いた場合、一般に−50℃から80℃、好ましくは−20〜60℃、さらに好ましくは0〜40℃であり、用いるウレタンの種類によって変更するのがよい。反応温度がこれらの範囲をはずれたり加熱し過ぎたりすると、前記と同様に反応が進行しなかったり、生成物が分解する場合があるので、IRなどで反応をトレースしながら徐々に温度を上昇させて反応を進めるのがよい。【0054】反応の際に生成する塩化水素をトラップする塩基も前記と同様のものが用いられてよい。【0055】このようにして得られたイソシアネートモノマーは、反応後、溶媒を除去し、フラッシュカラムもしくは再結晶または減圧蒸留など公知の方法を用いて精製することができる。得られた化合物はマススペクトル及びIRスペクトル分析により前記式(II)の化合物であることが同定できる。【0056】このようにして得られた式(II)の化合物を前記のごとくリン系触媒の存在下、公知の方法で重合すると高性能のポリカルボジイミドが得られる。【0057】また、式(II)の化合物を重合して得られたポリウレタンやポリカルボジイミドなどのポリマーは耐熱性が高く、一般の溶媒に対する溶解性及び溶液安定性に優れる。【0058】なお、本願発明の芳香族ジイソシアネートは、芳香族ポリカルボジイミド、芳香族ポリウレタンの他、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリウレア等、多くの有用なポリマーの原料となる。【0059】【実施例】つぎに本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明する。【0060】なお、得られたポリカルボジイミドの熱硬化温度は、DSC−200((株)セイコー製)を用いて測定し、三量体化の発熱ピークを熱硬化温度とした。線膨張係数はSEIKOSSC/560Mを用いて室温から400℃まで昇温して測定した。マススペクトルは日立M80A((株)日立製作所製)を用い、IRスペクトルはIR−810(日本分光工業(株)製)を用いた。接着強度は島津オートグラフAGS−100Dを用い、180度ピール強度を測定した。【0061】 [製造例1](2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジイソシアナートビフェニルの製造) 冷却管と滴下漏斗を取り付けた500mLの三口フラスコに2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル(BTFB)20g、酢酸エチル200mL、トリエチルアミン19.2mLを仕込んだ。ついで滴下漏斗にフェニルクロロギ酸16.6mLを入れ、反応容器を氷浴で0℃に冷却した。フェニルクロロギ酸を20分かけて滴下し、室温に戻しながら1時間撹拌した。生成した塩を100mLの水で加水分解し、クロロホルムで抽出した。有機層を集め無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。溶媒を留去すると淡褐色固体がほぼ定量的に得られた。【0062】前記ウレタン1.0g、塩化メチレン10mL及びトリエチルアミン1.0mLを、冷却管及び滴下漏斗を取り付けた二口フラスコ(50mL)に仕込んだ。滴下漏斗よりトリメチルクロロシラン1.4mLを室温にて滴下し15分間撹拌した。溶媒をトルエンで置換して徐々に100℃まで昇温しながら2時間撹拌した。生成した塩を濾過により取り除き、溶液をエバポレーターで濃縮した。反応混合物をフラッシュカラムにより精製し白色固体0.08g(収率12%)を得た。【0063】得られた化合物はマススペクトルでM+=372の分子イオンピークが観測され、IRスペクトルで2250cm-1にイソシアネートのカルボニル基の吸収が観測された。したがって2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジイソシアナートビフェニルであることが確認された。【0064】 [製造例2](2,2´−ジメチル−4,4´−ジイソシアナートビフェニルの製造) 製造例1と同様にして製造したm−TB−ウレタン8.0g、塩化メチレン80mL、トリエチルアミン7.4mLを三口フラスコ(200mL)に仕込んだ。ついで滴下漏斗よりトリメチルクロロシラン7.5mLを室温にて5分かけて滴下した。溶媒をトルエンに置換して徐々に120℃まで昇温しながら6時間撹拌した。生成した塩を濾過により取り除いた。濾液を濃縮し塩化メチレンを展開溶媒としてフラッシュカラムにより精製し白色オイル状物質3.4g(収率72%)を得た。【0065】得られた化合物はマススペクトルでM+=264の分子イオンピークが観測され、IRスペクトルで2250cm-1にイソシアネートのカルボニル基の吸収が観測された。したがって2,2´−ジメチル−4,4´−ジイソシアナートビフェニルであることが確認された。【0066】 [実施例1](ポリカルボジイミドの製造) 100mLのナスフラスコに、製造例2で得られた2,2´−ジメチル−4,4´−ジイソシアナートビフェニル(m-TB-NCO)3.4gとTHF20mL、カルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニルホスホレン−1−オキシド)0.020gを仕込んだ。60℃で13時間撹拌し、Mn=3,000の重合体が得られた。得られたワニスをガラス板上にキャスティングし、90℃で30分間乾燥してフィルムを得た。このフィルムの熱硬化温度は400℃であった。また、200℃にて1時間の熱処理を行っても可撓性を有し線膨張係数は4.6×10−5K−1であった。【0067】 [実施例2](フィルムの延伸) 実施例1で作成したフィルムを80℃に加熱して一軸に2倍に延伸した。この延伸フィルムの熱回復応力は55kg/cm2であり、熱回復率は100%であった。【0068】 [実施例3](ポリカルボジイミドの製造) 製造例1にて得られた2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジイソシアナートビフェニルを用いた以外は実施例1と同様に重合を行い、Mn=4,000の重合体を得た。得られたワニスをガラス板上にキャスティングし、90℃で30分間乾燥してフィルムを得た。このフィルムの熱硬化温度は330℃であった。また、200℃にて1時間の熱処理を行っても可撓性を有しており、線膨張係数は5.2×10−5K−1であった。【0069】 [実施例4] 実施例1で得られたポリカルボジイミドワニスを圧延銅箔にキャストし、銅/ポリカルボジイミド2層構成の接着シートを作成した。これを200℃・50kg/cm2の圧力で2分間プレスして42アロイと貼り合わせ、接着力を測定したところ、950g/cm の接着力を示した。これを80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入した後の接着力は800g/cm であった。【0070】 [比較例1] モノマーとしてMDIを用いて実施例1と同様の方法で重合を行い、フィルムを作成した。このフィルムの熱硬化温度は350℃であった。また200℃にて1時間の熱処理を行うと変色して可撓性が無くなり、自己保存性を失った。また、フィルムを150℃で熱処理したところ線膨張係数は7.5×10−5K−1であった。【0071】 [比較例2] 比較例1で作成したワニスを圧延銅箔上に塗工し、90℃で30分乾燥して接着シートを作成した。これを用いて実施例4と同様の手順で接着力を測定したところ、初期は800g/cm の接着力を示したが、80℃/90%RHの恒温恒湿機に168時間投入すると剥離した。【0072】【発明の効果】本発明の芳香族ポリカルボジイミドは優れた耐熱性及び耐湿性を有しており、電子部品製造時のハンダ付け工程における耐熱性被覆材料などとして有用である。また優れた寸法安定性を示し精密電子工業などの分野で有用である。また、このポリカルボジイミドの溶液は溶液安定性に優れている。【図面の簡単な説明】【図1】 製造例1にて得られた化合物の赤外吸収スペクトルである。【図2】 製造例2にて得られた化合物の赤外吸収スペクトルである。【図3】 実施例1にて得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。【図4】 実施例3にて得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。 下記一般式(I)で表される構成単位を有する芳香族ポリカルボジイミド。 (式中、nは2〜400の整数を表し、Xは水素又はフッ素を表す。) 請求項1の芳香族ポリカルボジイミドを有機溶媒に溶解してなるポリカルボジイミド溶液。 請求項1の芳香族ポリカルボジイミドを成膜してなるポリカルボジイミドフィルム。 請求項2のポリカルボジイミド溶液を成膜してなる接着シート。 少なくとも一軸方向に延伸してなる請求項3のポリカルボジイミドフィルム。