生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_カルボン酸クロリドの製造方法
出願番号:1997091799
年次:2007
IPC分類:C07C 57/64,C07C 51/60,C07C 55/36


特許情報キャッシュ

益田 丈裕 地道 幸一 山本 秀人 多田 文昭 JP 3959777 特許公報(B2) 20070525 1997091799 19970410 カルボン酸クロリドの製造方法 日本油脂株式会社 000004341 祢▲ぎ▼元 邦夫 100079153 益田 丈裕 地道 幸一 山本 秀人 多田 文昭 20070815 C07C 57/64 20060101AFI20070726BHJP C07C 51/60 20060101ALI20070726BHJP C07C 55/36 20060101ALI20070726BHJP JPC07C57/64C07C51/60C07C55/36 C07C 57/64 C07C 51/60 C07C 55/36 特開昭63−316753(JP,A) 特公昭38−017009(JP,B1) 特開昭63−063636(JP,A) 米国特許第01936739(US,A) 特開昭56−108734(JP,A) 特開昭59−059643(JP,A) 1 1998287611 19981027 9 20040401 中島 庸子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、遊離カルボン酸、酸無水物、リン化合物などの不純物が少なく色相の良好なカルボン酸クロリドを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】カルボン酸クロリドは、多くの化学製品、たとえば、化粧品基剤、有機過酸化物、アルキルケテンダイマ―などを合成する際の工業的に重要な中間体である。このカルボン酸クロリドは、カルボン酸と塩化リンまたはホスゲンを反応させて得られるが、ホスゲンは毒性が高く、安全性の点で塩化リンが好ましい。塩化リンには、五塩化リン、三塩化リンまたはオキシ塩化リンがある。【0003】五塩化リンは、反応性の面で最もすぐれており、低い過剰量でカルボン酸をほぼ完全にカルボン酸クロリドに変換できるが、不揮発性であるため、その過剰分を分離するのが困難であり、また他の塩化リンに比べて高価な上に、有効塩素も20%と低いため、経済的に著しく不利である。また、吸湿性固体であるため、他の塩化リンに比べてハンドリング性が悪い。【0004】三塩化リンは、すべての塩素が有効に働くため、経済的に最も有利であり、また得られる製品の色相が良好なため、工業的に広く用いられている。しかるに、五塩化リンに比べて反応性に劣るので、高純度であることが要求される場合は、反応後に蒸留による精製が必要となり、収率が落ちる。【0005】オキシ塩化リンは、ジメチルホルムアルデヒドなどの触媒を使用すると、反応性にすぐれるが、副生成物が飴状のメタリン酸であり、反応混合物が高粘度スラリ―状になるので、静置分離後のメタリン酸の除去に長時間を要する上、除去時に分層不良によりカルボン酸クロリドが損失し、収率が低下する。【0006】特開昭63−316753号公報には、炭素数7以上のカルボン酸を塩化リンと反応させて得た粗製酸クロリドにカルボン酸アミドの存在下に塩化水素ガスを吹き込むことによる二段階のカルボン酸クロリドの製造方法が記載されている。しかしながら、この方法は、塩化水素ガスを使用しているので、特殊な装置が必要となる上、塩化水素の反応性が低いため、触媒として、大量(カルボン酸仕込み量の10モル%程度)のカルボン酸アミドを必要とし、これがカルボン酸クロリドの色相を著しく損ねる結果となる。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情に照らし、高純度で色相の良好なカルボン酸クロリドを高収率で製造する方法を提供することを目的としている。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的に対して、鋭意検討した結果、カルボン酸と三塩化リンとの反応、これに引き続く少量のオキシ塩化リンとの反応より、高純度で色相の良好なカルボン酸クロリドを高収率で製造できることを見い出し、本発明を完成するに至つた。【0009】すなわち、本発明は、カルボン酸とリン系塩素化剤とからカルボン酸クロリドを製造するにあたり、カルボン酸3モルに対して1.1〜1.3モルの三塩化リンを反応させ、副生する亜リン酸を除去したのち、カルボン酸に対して1.5〜6モル%のオキシ塩化リンをカルボン酸の0.1〜2モル%のカルボン酸アミドの存在下に反応させることを特徴とするカルボン酸クロリドの製造方法に係るものである。【0010】【発明の実施の形態】本発明に用いられるカルボン酸は、炭素数が8〜24の飽和または不飽和のカルボン酸であり、たとえば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノ―ル酸、リノレン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、トリメリツト酸などや、それらの混合物であるヤシ油脂肪酸、パ―ム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、豚脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、なたね油脂肪酸、ト―ル油脂肪酸などが挙げられる。炭素数が7以下のカルボン酸を用いると、副生する亜リン酸の分離が困難となり、また、炭素数が25以上のカルボン酸を用いると、融点が85℃を超えるので、反応温度が高くなり、酸無水物が多く副生して、純度が低下する。【0011】本発明においては、まず、上記のカルボン酸に対し三塩化リンを反応させる。ここで、三塩化リンの使用量は、カルボン酸3モルに対して、1.1〜1.3モル、好ましくは1.15〜1.25モルである。1.1モル未満の使用量では、オキシ塩化リンの必要量が増えるので、副生成物のメタリン酸により、反応混合物の撹拌が困難になつたり、収率が低下する。1.3モルを超える量を使用しても、純度、収率、色相の向上はみられない。【0012】カルボン酸と三塩化リンとの反応は、たとえば、カルボン酸中に三塩化リンを50〜75℃で撹拌下に30〜120分かけて滴下して反応させ、さらに同温度で30〜180分間反応を続ければよい。反応温度は上記した50〜75℃が好ましい。50℃未満では反応速度が遅く、75℃を超えると三塩化リンが揮発する。このように反応させたのち、上記温度で10〜300分間静置して、下層の亜リン酸を分離して、引き続く反応に供する。【0013】引き続く反応は、カルボン酸アミドの存在下でのオキシ塩化リンとの反応であり、これにより三塩化リンとの反応に関与しなかつた未反応のカルボン酸をほぼ完全に反応させる。ここで、オキシ塩化リンの使用量は、カルボン酸に対して、1.5〜6モル%、好ましくは2〜4モル%である。1.5モル%未満では、反応率が低下し、純度、収率が落ちる。6モル%を超えると、副生成物のメタリン酸により反応混合物の撹拌が困難になつたり、収率が低下する。【0014】カルボン酸アミドは、カルボン酸とオキシ塩化リンとの反応の触媒として作用するものであり、具体的には、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのN,N−ジアルキルアミドが用いられる。工業的に容易に入手できるジメチルホルムアミドが最も好ましい。また、その使用量は、カルボン酸に対して、0.1〜2モル%、好ましくは0.3〜1モル%である。0.1モル%未満では、反応率の低下により純度、収率が低下する。2モル%を超えると、カルボン酸クロリドの色相を損ねやすい。【0015】カルボン酸とオキシ塩化リンとの反応は、前記のようにカルボン酸と三塩化リンとの反応後下層の亜リン酸を分離したのちの反応混合物に、上記量のカルボン酸アミドとオキシ塩化リンとを加え、反応温度を50〜85℃に設定して、30〜120分間反応させればよい。反応温度が50℃未満では、反応速度が遅く、85℃を超えると、酸無水物の生成量が増え、純度、収率が低下する。【0016】このように反応させたのち、上記温度で10〜180分間静置して、メタリン酸層を分離する。最後に、40〜160℃、0.1〜40mmHgで不活性ガスを吹き込みながらストリツピングを行い、リン化合物を除去する。これにより、目的とする高純度でかつ色相の良好なカルボン酸クロリドが高収率で得られる。また、さらなる高純度化を望むなら、上記のストリツピングに代え、あるいは上記のストリツピング後に、蒸留による精製を施してもよい。【0017】【実施例】つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。【0018】実施例1A撹拌機および200mLの滴下ロ―トを取り付けた2Lの底栓弁付反応器に、硬化牛脂脂肪酸(酸価274、ヨウ素価0.5)822g(3モル)を仕込み、これに三塩化リン171.9g(1.25モル)を65℃で撹拌下に1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持したのち、撹拌を止め、30分間静置した。【0019】そののち、下層の亜リン酸層を分離し、上層にジメチルホルムアミド1.1g(0.015モル)、オキシ塩化リン9.2g(0.06モル)を加え、65℃で1時間撹拌したのち、30分間静置して、下層のメタリン酸層を分離した。ついで、65℃、3mmHgで窒素ガスバブリング下(流速20ml/分)にストリツピングを行い、リン化合物を除去した。【0020】実施例1B実施例1Aと同様の操作を行い、下層のメタリン酸層を分離したのち、有効伝熱面積が0.03m2であるグラス製の薄膜蒸留機で、200℃、1mmHg、流速5g/分の条件にて、蒸留を行つた。【0021】実施例2A撹拌機および200mLの滴下ロ―トを取り付けた2Lの底栓弁付反応器に、硬化牛脂脂肪酸(酸価274、ヨウ素価0.5)822g(3モル)を仕込み、これに三塩化リン165.0g(1.20モル)を65℃で撹拌下に1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持したのち、撹拌を止め、30分間静置した。【0022】そののち、下層の亜リン酸層を分離し、上層にジメチルホルムアミド0.66g(0.009モル)、オキシ塩化リン13.8g(0.09モル)を加え、65℃で1時間撹拌したのち、30分間静置して、下層のメタリン酸層を分離した。ついで、65℃、3mmHgで窒素ガスバブリング下(流速20ml/分)にストリツピングを行い、リン化合物を除去した。【0023】実施例2B実施例2Aと同様の操作を行い、下層のメタリン酸層を分離したのち、有効伝熱面積が0.03m2であるグラス製の薄膜蒸留機で、200℃、1mmHg、流速5g/分の条件にて、蒸留を行つた。【0024】実施例3A撹拌機および200mLの滴下ロ―トを取り付けた2Lの底栓弁付反応器に、硬化牛脂脂肪酸(酸価274、ヨウ素価0.5)822g(3モル)を仕込み、これに三塩化リン158.1g(1.15モル)を65℃で撹拌下に1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持したのち、撹拌を止め、30分間静置した。【0025】そののち、下層の亜リン酸層を分離し、上層にジメチルホルムアミド2.2g(0.03モル)、オキシ塩化リン18.4g(0.12モル)を加え、65℃で1時間撹拌したのち、30分間静置して、下層のメタリン酸層を分離した。ついで、65℃、3mmHgで窒素ガスバブリング下(流速20ml/分)にストリツピングを行い、リン化合物を除去した。【0026】実施例3B実施例3Aと同様の操作を行い、下層のメタリン酸層を分離したのち、有効伝熱面積が0.03m2であるグラス製の薄膜蒸留機で、200℃、1mmHg、流速5g/分の条件にて、蒸留を行つた。【0027】以上の実施例1A,1B〜3A,3Bに関し、第一段階での塩素化剤の種類と量(カルボン酸3モルに対するモル数)、第二段階での塩素化剤の種類と量(カルボン酸に対するモル%)および触媒の種類と量(カルボン酸に対するモル%)、反応時の撹拌状態、精製方法を、表1にまとめて示した。なお、触媒の種類の欄における「DMF」は、ジメチルホルムアミドを意味している。【0028】【0029】比較例1A撹拌機および200mLの滴下ロ―トを取り付けた2Lの底栓弁付反応器に、硬化牛脂脂肪酸(酸価274、ヨウ素価0.5)822g(3モル)を仕込み、これに三塩化リン192g(1.4モル)を65℃で撹拌下に1時間かけて滴下し、同温度で2時間保持したのち、撹拌を止め、1時間静置後に、下層の亜リン酸層を分離した。ついで、65℃、3mmHgで窒素ガスバブリング下(流速20ml/分)にストリツピングを行い、リン化合物を除去した。【0030】比較例1B比較例1Aと同様の操作を行い、下層の亜リン酸層を分離したのち、有効伝熱面積が0.03m2であるグラス製の薄膜蒸留機で、200℃、1mmHg、流速5g/分の条件にて、蒸留を行つた。【0031】比較例2A撹拌機および200mLの滴下ロ―トを取り付けた2Lの底栓弁付反応器に、硬化牛脂脂肪酸(酸価274、ヨウ素価0.5)822g(3モル)とジメチルホルムアミド2.2g(0.03モル)の混合物を仕込み、これにオキシ塩化リン237.9g(1.55モル)を65℃で撹拌下に1時間かけて滴下し、同温度で2時間保持した。反応中は、メタリン酸による増粘により撹拌が困難であつた。そののち、撹拌を止め、1時間静置後に、メタリン酸層を分離した。ついで、65℃、3mmHgで窒素ガスバブリング下(流速20ml/分)にストリツピングを行い、リン化合物を除去した。【0032】比較例2B比較例2Aと同様の操作を行い、下層のメタリン酸層を分離したのち、有効伝熱面積が0.03m2であるグラス製の薄膜蒸留機で、200℃、1mmHg、流速5g/分の条件にて、蒸留を行つた。【0033】比較例3A撹拌機および200mLの滴下ロ―トを取り付けた2Lの底栓弁付反応器に、硬化牛脂脂肪酸(酸価274、ヨウ素価0.5)822g(3モル)を仕込み、これに三塩化リン192g(1.4モル)を65℃で撹拌下に1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持したのち、撹拌を止め、同温度で30分間静置した。【0034】そののち、下層の亜リン酸層を分離し、上層にジメチルホルムアミド22.0g(0.3モル)を加え、塩化水素ガス11.0g(0.3モル)を撹拌下に1時間かけて吹き込んだのち、30分間静置して、下層のジメチルホルムアミド塩酸塩層を分離した。ついで、65℃、3mmHgで窒素ガスバブリング下(流速20ml/分)にストリツピングを行い、リン化合物を除去した。【0035】比較例3B比較例3Aと同様の操作を行い、下層のジメチルホルムアミド塩酸塩層を分離したのち、有効伝熱面積が0.03m2であるグラス製の薄膜蒸留機で、200℃、1mmHg、流速5g/分の条件にて、蒸留を行つた。【0036】以上の実施例1A,1B〜3A,3Bおよび比較例1A,1B〜3A,3Bにより得られた製品(カルボン酸クロリド)について、収率、不純物(遊離カルボン酸、酸無水物、リン分)含量、塩素含量、製品純度および色相(ガ―ドナ―)を調べた。結果は、下記の表2に示されるとおりであつた。【0037】なお、不純物の測定は、以下の方法で行つた。遊離カルボン酸は2重量%四塩化炭素溶液のIR吸収(1,710nm)により求めた。酸無水物は、試料をアニリンと反応させて生じたカルボン酸量を滴定で求め、この値から遊離カルボン酸量を差し引いて2倍した。リン分は、ケルダ―ル酸化法により、P(III )をP(V)に酸化し、モリブデン(V)青色錯体としてUV吸収により求めた。さらに、製品純度(クロリド純度)は、[100−(遊離カルボン酸+酸無水物+リン分×82/31)](重量%)として、求めた。【0038】【0039】上記の表2の結果から、本発明の実施例1A,1B〜3A,3Bの方法によれば、遊離カルボン酸、酸無水物、リン分などの不純物が少なく、高純度で、色相の良好なカルボン酸クロリドを高収率で製造できることがわかる。【0040】これに対し、比較例1A,1Bの方法は、一段階の反応だけ(塩素化剤としてPCl3 をカルボン酸3モルに対して1.4モル使用)を行つたものであるが、この場合、反応率が低くて、不純物含量が多く、製品純度が低くなつており、これを蒸留により精製すると、収率が大きく低下する。【0041】また、比較例2A,2Bの方法は、同じく一段階の反応だけ(塩素化剤としてPOCl3 をカルボン酸2モルに対して1.03モル用い、かつ触媒としてジメチルホルムアミドをカルボン酸に対して1モル%使用)を行つたものであるが、この場合、反応中にメタリン酸による増粘で撹拌が困難になつたり、反応後のメタリン酸の除去に手間がかかるなどの不都合があり、色相および収率の面でも、好結果が得られにくい。【0042】さらに、比較例3A,3Bは、第一段階において、塩素化剤としてPCl3 をカルボン酸3モルに対して1.4モル用いて反応させたのち、第二段階において、塩素化剤として塩化水素ガスを用いて反応させ、その際、触媒としてジメチルホルムアミドをカルボン酸に対して10モル%用いるようにしたものであるが、この場合、塩化水素ガスを使用するため、特殊な装置が必要となるなどの不都合があり、また製品の色相が著しく低下するのを免れない。【0043】【発明の効果】以上のように、本発明は、カルボン酸と三塩化リンとの反応、これに引き続く少量のオキシ塩化リンとの反応からなる特定の二段階反応により、遊離カルボン酸、酸無水物、リン化合物などの不純物が少なく、高純度で色相の良好なカルボン酸クロリドを高収率で製造することができる。 カルボン酸とリン系塩素化剤とからカルボン酸クロリドを製造するにあたり、カルボン酸3モルに対して1.1〜1.3モルの三塩化リンを反応させ、副生する亜リン酸を除去したのち、カルボン酸に対して1.5〜6モル%のオキシ塩化リンをカルボン酸の0.1〜2モル%のカルボン酸アミドの存在下に反応させることを特徴とするカルボン酸クロリドの製造方法。


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