タイトル: | 特許公報(B2)_インドキシル硫酸誘導体、抗原、抗体及びそれを用いるインドキシル硫酸の検出方法 |
出願番号: | 1997085621 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07D 209/36,A61K 39/00,A61K 39/395,C12N 5/10,C12N 15/02,G01N 33/53,G01N 33/577,C12P 21/08,G01N 33/50 |
吉村 真 新村 浩一 上田 恭子 山崎 徹 JP 4183777 特許公報(B2) 20080912 1997085621 19970319 インドキシル硫酸誘導体、抗原、抗体及びそれを用いるインドキシル硫酸の検出方法 株式会社クレハ 000001100 藤野 清也 100090941 吉村 真 新村 浩一 上田 恭子 山崎 徹 20081119 C07D 209/36 20060101AFI20081030BHJP A61K 39/00 20060101ALI20081030BHJP A61K 39/395 20060101ALI20081030BHJP C12N 5/10 20060101ALI20081030BHJP C12N 15/02 20060101ALI20081030BHJP G01N 33/53 20060101ALI20081030BHJP G01N 33/577 20060101ALI20081030BHJP C12P 21/08 20060101ALN20081030BHJP G01N 33/50 20060101ALN20081030BHJP JPC07D209/36A61K39/00 ZA61K39/395 DA61K39/395 NA61K39/395 VA61K39/395 JC12N5/00 BC12N15/00 CG01N33/53 SG01N33/577 BC12P21/08G01N33/50 T C07D 209/00〜209/96 CA(STN) REGISTRY(STN) 米国特許第05364767(US,A) OHNHAUS, E. E. et al.,"Metabolism of Pindolol in Patients with Renal Failure",European Journal of Clinical Pharmacology,1982年,Vol.22, No.5,pp.423-428 12 1998265457 19981006 18 20030711 福井 悟 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なインドキシル硫酸誘導体(ハプテン)、該ハプテンと蛋白質との複合体である抗原、該抗原で免疫することにより得られ、インドキシル硫酸に特異的に結合する抗体を用いるインドキシル硫酸の検出法及びこの検出に用いる測定キットに関する。【0002】【従来の技術】尿毒症(uremia)は、急性あるいは慢性に腎機能が低下する疾病である。尿毒症発症の原因のひとつとして尿毒症毒素と考えられている物質があり、インドキシル硫酸もその一つである(Seminars in Nephrology,16 (3) 167〜182 (1996)) 。実際に、慢性腎不全患者において、血清中インドキシル硫酸が正常者の約60倍と著明に増加していることが報告されている (日本透析療法学会誌、21 (10)951〜956(1988))。従って、体液中、特に血清中の尿毒症毒素濃度を測定することは疾患の診断や検査にとって、極めて有用であり、さらにその測定方法は、治療効果の判定、予後の推測あるいは食事療法のマーカーなどに適用することが可能である。従来、血清中尿毒症毒素は主に、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いて分析している。それらの方法は、感度や精度の点で優れているものの、分析に熟練を要すること、測定装置や設備に高額な費用を必要とする等の問題点があった。更に、尿毒症毒素、例えばインドキシル硫酸の測定は、臨床との対応で迅速性及び精度を要求され、併せて簡便性や経済性も必要であった。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、尿毒症毒素のこのような現状を考慮して、尿毒症毒素を迅速で、しかも、高い精度でかつ簡便に測定する方法について検討した。その結果、インドキシル硫酸に対する新規な抗体を調製し、これを用いてインドキシル硫酸を免疫学的測定法で測定すると尿毒症の診断及び検査を迅速に、しかも高い精度でかつ簡便に行なうことができることを見出して本発明をなすに至った。すなわち、本発明の課題は、インドキシル硫酸に対する抗原の作製に用いられるインドキシル硫酸誘導体(ハプテン)及びこのハプテンを用いた抗原を提供することにある。次に、本発明は、このような抗原を用いて作製したインドキシル硫酸に対する抗体を提供する。さらに、本発明は、このような抗体を用いてインドキシル硫酸を酵素免疫測定法で測定する方法及びこの方法に用いられる測定キットを提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、体液中のインドシキル硫酸の簡便で迅速な測定法として、インドキシル硫酸に対する特異的抗体を用いる免疫化学的検出の適用を試みた。インドキシル硫酸自身は分子量約 213の低分子化合物であり、分子量からみて抗原性 (免疫原性) がなく、生体に抗体産生をうながさない。また、文献検索でも抗体産生の報告はなかった。しかも、インドキシル硫酸は、反応性が低く、そのままではアルブミン等の他の分子と強く結合しない。これらのことから、インドキシル硫酸に対する特定のリンカーを作製し、リンカー付与インドキシル硫酸とし、これをハプテンとして蛋白質と複合体を形成させ、抗原として用いた。このように本発明者らは、鋭意研究を重ねて、インドキシル硫酸に対する特異的な抗体の産生に用いうるハプテン及び抗原、そしてインドキシル硫酸に対して特異的な抗体を見出し、ついに発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、次の一般式(I) で表される新規なインドキシル硫酸誘導体 (リンカー付与インドキシル硫酸) に関する。【0005】【化2】ただし、式中の L1, L2 及び L3 は、次の一般式(II)で表される。X−(CH2)n −Y1 −(CH2)m−Y2 − (CH2)p −Z (II)【0006】式(II)中Xは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、カルボキシル基、又は単結合を示す。Y1及びY2はそれぞれ独立に5員もしくは6員の複素環を含む芳香環、単結合、-CHR- を示す。Zはエポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、無置換又は1置換されているアミノ基若しくはハロゲン原子を示す。Rはヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、無置換又は1〜2置換アミノ基、ハロゲン原子、アルコキシル基を示す。n,m及びpはそれぞれ独立に0〜5の整数を示す。この置換基L1〜L3はインドキシル硫酸誘導体一分子中に同時に一つのみ存在し、それ以外の場合L1及びL2は水素分子、L3は水素原子、またはナトリウム、カリウム、アンモニウム等の許容される公知の塩を形成する原子または分子を表す。また、上記5員若しくは6員の複素環を含む芳香環はベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、キノリン環などの化合物を示すが、本発明では、これらのみに限定されるものではない。【0007】本発明のインドキシル硫酸誘導体(I) において、好ましい化合物は、前記式(I) において、置換基L1のみが前記と同様の意味を有し、置換基L2が水素原子であり置換基L3が水素原子、またはナトリウム、カリウム、アンモニウム等の許容される公知の塩であるものである。さらに、本発明において好ましい化合物は、インドキシル硫酸誘導体(I) において、置換基L1が 2, 3-エポキシプロピル基、パラオキシカルボニルベンジル基、3-ベンジルアミノ-2- ヒドロキシプロピル基又は3-アミノ-2- ヒドロキシプロピル基であり、これらがインドール環窒素原子上に存在しており、置換基L2及びL3が前記L2及びL3と同様の意味をもつものである。本発明のこれらのインドキシル硫酸誘導体(I) はハプテンとなる。【0008】また、本発明は、このようなハプテンと蛋白質とが結合した複合体よりなる抗原に関する。本発明の抗原 (免疫原) は、一般式(I) で示されるインドキシル硫酸誘導体よりなるハプテンを、担体である動物由来蛋白質又は植物由来蛋白質に結合させることによって製造される。さらに、本発明は、このような抗原から調製された、インドキシル硫酸に対して特異的な抗体に関する。抗体にはポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体がある。これらの抗体は通常の抗体製造法で製造される。また、さらに本発明はこのような抗体を用いるインドキシル硫酸の免疫学的な検出法及びその検出に用いる測定キットに関する。【0009】【発明の実施の形態】次に、本発明について詳細に説明する。本発明の前記一般式(I) で示されるインドキシル硫酸誘導体は、種々の方法で合成されるが、一般に次の合成スキーム1〜3のいずれかで合成することが好ましい。(1) 合成スキーム1【0010】【化3】【0011】製造法1-1 化合物1-1 (P1 は公知の水酸基保護基を示し、例えば t- ブチルジメチルシリル基(TBS基) 、アセチル基などであり、P2は公知のアミノ基保護基であり、例えば、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基) 、アセチル基などであり、また、X1はハロゲン原子などを示す。) をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの有機溶媒中に溶解して-78 ℃から室温付近でL2X 2(L2は前記クレームと同じ意味で用いられ、X2はハロゲン原子、トシル基などの脱離基を示す) 必要に応じて金属ナトリウム、アルキルリチウムなどの塩基やテトラキストリフェニルフォスフインパラジウム等の触媒と共に反応させることにより反応させて化合物1-2 を得る。【0012】製造法1-2 化合物1-2 を保護基P1を除去する公知の方法、例えばP1が TBS基の場合にはフッ化テトラブチルアンモニウムを用いて、アセチル基の場合には亜硫酸水素ナトリウム水溶液中での反応を用いることにより化合物1-3 を得る。【0013】製造法1-3 化合物1-3 をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中に溶解し、硫酸又はその誘導体、例えばクロル硫酸や硫酸テトラブチルアンモニウム等を用いて、必要に応じてトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジンなどの塩基やジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いて硫酸エステル化することによって化合物1-4 を得る。【0014】製造法1-4 化合物1-4 を保護基 P2 を除去する公知の方法、例えば P2 が Cbz基の場合には水素雰囲気下パラジウム- カーボン触媒によって、アセチル基の場合にはメタノール中水酸化ナトリウム水溶液を用いることにより、さらに置換基L2に保護基が存在する場合には同時、又は別個にそれを除去して化合物1-5 を得る。【0015】(2) 合成スキーム2【化4】【0016】製造法2-1 化合物2-1 をジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中に溶解し、L3-OSO3X3(X3は水素原子、ハロゲン、アルキルアンモニウム塩などを示し、L3は前述のとおりである。)と必要に応じてトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジンなどの塩基やジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いて硫酸エステル化することによって化合物2-2 を得る。【0017】製造法2-2 化合物2-1 をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中に溶解し、硫酸又はその誘導体、例えばクロル硫酸や硫酸テトラブチルアンモニウム等を用いて、必要に応じてトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジンなどの塩基やジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いて硫酸エステル化することによって化合物2-3 を得る。【0018】製造法2-3 化合物2-3 をジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中に溶解し、L3X4 (X4は水素原子、ハロゲン原子、p-トルイルスルホニルオキシ基、カルボニルハライドなどを示し、またL3は前述のとおりである。) と必要に応じてジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の塩基を用いて-20 〜120 ℃の間で1〜72時間反応させることによって化合物2-2 を得る。【0019】製造法2-4 化合物2-2 を前述の製造法1-4 と同様の操作によって保護基を除去し化合物2-4 を得る。【0020】(3) 合成スキーム3【化5】【0021】製造法3-1 化合物3-1 (Mは水素原子、又はナトリウム、カリウムなどの原子またはアンモニウムなどの分子を示す) をジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒に溶解し、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどを加えて -78℃〜室温で 5〜120 分間反応させる。次いで前述の L1X2(L1及びX2は前述のとおり) を加えて -78〜120 ℃の間で反応させることによって化合物3-2 を得る。また、L1に反応性の官能基が存在する場合にはそこから任意の試薬によって延長させることができる。例えばエポキシ基が存在する場合には1級アミノ基を持つ化合物によってアミノ基を介して側鎖を延長させることができる。さらにL1中に保護基が存在する場合には公知の方法によって除去し、目的化合物を得る。【0022】本発明のインドキシル硫酸誘導体の具体的製造例は、実施例1に示した。ここに示される化合物はいずれもハプテンとして使用できる。好ましい化合物は、置換基L1が前記と同様の意味を有し、置換基L2が水素原子であり、置換基L3がナトリウム、カリウム、アンモニウム等の公知の原子又は分子である化合物である。さらに好ましい化合物は、置換基L1が2, 3- エポキシプロピル基、パラオキシカルボニルベンジル基、3-ベンジルアミノ-2- ヒドロキシプロピル基又は3-アミノ-2- ヒドロキシプロピル基であり、これらがインドール環窒素原子上に存在しており、置換基L2及びL3が前記L2及びL3と同様の意味を持つ化合物である。【0023】これらの化合物を例示すると次の化合物がある。1-(2', 3'-エポキシプロピル) インドキシル硫酸ナトリウム (以下、エポキシ体インドキシル硫酸という) 、1-(3'-アミノ -2'- ヒドロキシプロピル) インドキシル硫酸ナトリウム (以下、アミノ基導入インドキシル硫酸という) 、1-〔(4'-カルボキシフェニル) メチル〕インドキシル硫酸ビスナトリウム (以下、カルボキシル基導入インドキシル硫酸という) 。また、表1で示されるいずれの化合物もハプテンとして好ましい。【0024】本発明の一般式(I) のリンカー付与インドキシル硫酸 (ハプテン) と蛋白質との複合体よりなる抗原 (免疫原) は一般式(I) のハプテンを、担体である動物あるいは植物由来の蛋白質に結合させることにより製造できる。動物由来蛋白質としては、この分野で常用されるものをいずれも使用できるが、その中ではスカシガイのヘモシアニン、卵白アルブミン、ウシ血清アルブミン、トランスフェリン等が好ましく、特にウシ血清アルブミン、トランスフェリンが好ましい。また、植物由来蛋白質としては、カボチャ種子のグロブリン、大麻種子のグロブリン等が用いられる。ハプテンと蛋白質の結合物は、前記ハプテンと蛋白質とをpH6〜8の緩衝液あるいは水中で混合し、室温で数時間〜20時間程度反応させ、その後、透析を行ない、内液を遠心して不溶物を除去することによって得ることができる。この抗原を含む溶液をほ乳動物に免疫することによりモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が調製される。ほ乳動物としては、モノクローナル抗体の場合には、常用する骨髄腫細胞との適性を考慮して、選択することが好ましく、例えば、マウス、ラット等を挙げることができ、ポリクローナル抗体の場合は、この分野で常用されるものであればいずれも使用でき、例えば、ウサギ、ヤギ等を挙げることができる。【0025】このモノクローナル抗体は、例えば、次のようにして調製することができる。10原を含む生理食塩水を等量のフロイント氏完全アジュバンド又は不完全アジュバント、あるいはその等価物、例えば、Hunter's TiterMaxTM (フナコシCat.No.YT001-00)と乳化混合して、マウスの皮下、腹腔内、筋肉内のいずれかに投与する(初回免疫) 。以後、2〜4週間の間隔で同様の操作を行ない、数回免疫する。最終免疫を抗原液のみで行ない、数日後にマウス脾臓を無菌的に取出し、脾細胞を調製する。この脾細胞を用いて、細胞融合を行なう。細胞融合のもう一方の親細胞である骨髄腫細胞は公知の細胞株、例えば、P3X63-Ag 8(X63)(Nature, 256, 495-497(1975)), P3 X63-Ag 8 U1(P3U1)(Current Topics in Microbiology and Immunology, 81, 1-7(1978))、P3X63 Ag8.653 (ATCC 受託番号 CRL-1580)等を使用できる。細胞融合は、公知の方法に従い、例えば、ミルシュタインらの方法 (Methods in Enzymology,73, 3(1981))等に準じて行なうことができる。得られたハイブリドーマを培養した培養液又はハイブリドーマを移植したマウスの腹水から目的とするモノクローナル抗体を分離精製する。分離精製には硫酸アンモニウムによる塩析イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAまたはプロテインG結合多糖類担体や抗マウスイムノグロブリン抗体結合多糖類担体を用いた親和性カラムクロマトグラフィー、透析、凍結乾燥等の公知の方法が用いられる。【0026】一方、ポリクローナル抗体は、例えば、抗原を含む生理食塩水を等量のフロインド氏完全アジュバンド又は不完全アジュバンド、あるいはその等価物、例えば、Hunter's TiterMaxTM (フナコシCat.No.YT001-00)と乳化混合して、ウサギの皮下、腹腔内、筋肉内のいずれかに投与する(初回免疫) 。以後、2〜4週間の間隔で同様の操作を行ない、数回免疫する。最終免疫後、1〜2週間後にウサギの頸動脈または心臓から血液を採取して血清を硫酸アンモニウムによって塩析することで調製する。モノクローナル抗体は、特定の抗体産生細胞を選択増殖させる手法で得られた単一分子の抗体であるが、選択の際に、特定のイムノグロブリンを産生する細胞を得ることが可能であり、IgG が概ね最良の選択と考えられる。ポリクローナル抗体はIgG であるが、そのようなIgG タイプの抗体を用いることで高い精度の測定が可能となると考えられる。【0027】この様にして得られた本発明のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は、インドキシル硫酸に対して特異的に結合するのでこれらを用いることにより試料中のインドキシル硫酸濃度の測定や検出を行なうことができる。本発明の測定法や検出法は、上記のモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体を用いる以外は公知の方法に従って行なうことができる。該公知の方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、ラテックス凝集法、免疫組織染色法、放射免疫測定法(RIA)等の免疫学的手段を挙げることができる。【0028】酵素免疫測定法に従って行なう場合は、例えば、(a) ハプテンと蛋白質との複合体である抗原を担体に固相化し、(b) ブロッキングを行ない、(c) これにインドキシル硫酸を含む試料及びモノクローナル抗体 (及び/又はポリクローナル抗体) を加え、該抗体を抗原及びインドキシル硫酸に競合的に結合させ、抗体- 抗原免疫複合体及び抗体- インドキシル硫酸免疫複合体を生成させ、(d) 抗体- 抗原免疫複合体の量を測定することにより、予め作製した検量線から試料中のインドキシル硫酸の量を決定することができる。【0029】(a) 工程において、抗原を固相化する担体としては、特に制限されず、EIAにおいて常用されるものをいずれも使用できる。例えば、抗原液を含む緩衝液を担体上に載せ、予め、固相化し、ブロッキングした後に抗原液を載せてインキュベーションして抗原を捕捉することも可能である。緩衝液としては、公知のものが使用できる。【0030】(b) 工程のブロッキングは固相化した抗原の担体に結合している部位以外に、担体に後に添加する抗体あるいは試料中成分を吸着しうる部位が存在する場合があり、検出感度が低下するおそれがあるので行なわれる。具体的には2%スキムミルク溶液を適量加え、25℃で1時間インキュベーションした後、緩衝液で洗浄することで行なわれる。緩衝液としては、特に制限はないが、150mM リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2) を挙げることができる。【0031】(c) 工程においては、インドキシル硫酸を含む試料及びモノクローナル抗体( 及び/又はポリクローナル抗体) を加えることで、抗体を担体に固相化された抗原及びインドキシル硫酸に結合させて、抗体- 抗原免疫複合体及び抗体- インドキシル硫酸免疫複合体を生成させる。この際に抗体としては、モノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体を第一抗体、さらにこれらの抗体に、標識酵素を結合した第一抗体に対する抗体( 第二抗体) を順次加えて反応させる。その変法として、第一抗体を酵素で標識して用い、第二抗体を用いない方法、あるいは第一抗体をビオチンで標識して第二抗体の代わりに、アビジン又はストレプトアビジンに酵素を結合したものを用いることもできる。【0032】第一抗体は緩衝液に含ませて添加する。反応は25℃で1時間行ない、反応終了後、緩衝液で担体を洗浄し、未反応の第一抗体を除去する。緩衝液としては、特に制限はないが、150mM リン酸緩衝生理食塩水 (pH7.2)を挙げることができる。第一抗体の濃度は広い範囲から選択できる。次いで、第二抗体を添加する。例えば、第一抗体として、マウスのモノクローナル抗体を用いる場合は、酵素 (例えば、ペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ等) を結合した抗マウスIgG ヤギ (又はウサギ) 抗体画分を用いることが適切である。加える第二抗体としては最終吸光度が 1.0乃至1.5 となる様に希釈することが望ましい。希釈には緩衝液あるいは2 %スキムミルクを含む緩衝液を使用できる。反応は25℃で1時間インキュベーションした後、緩衝液で洗浄することで行なわれる。この反応により、第二抗体が第一抗体に結合する。なお、インドキシル硫酸−抗体免疫複合体は2度の洗浄で抗体上から除去され、抗原−免疫複合体のみが担体上に残り、その免疫複合体に第二抗体が結合している。【0033】次いで、(d) 工程で、担体に結合した第二抗体の酵素と基質との反応によって発色する試薬を加え、吸光度を測定することで検量線からインドキシル硫酸の量を算出することができる。第二抗体に結合する酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてo- フェニレンジアミンを使用することが望ましい。発色溶液を加え25℃で30分反応させた後、2Nの硫酸を加えることにより酵素反応を停止させる。o-フェニレンジアミンを使用する場合は、492nm の吸光度を測定する。アルカリホスファターゼを使用する場合は、p-ニトロフェニル リン酸を基質として発色させ、2NのNaOHを加えて酵素反応を止め、415nm の吸光度を測定する方法が適している。インドキシル硫酸を添加しない反応液の吸光度に対して、インドキシル硫酸を添加して抗体と反応させた溶液の吸光度の減少率を競合率として計算する。既知の濃度のインドキシル硫酸を添加した反応液の競合率により予め作成しておいた検量線を用いて試料中のインドキシル硫酸の濃度を算出できる。【0034】酵素免疫測定法(EIA)をキット化する試みとして、EIAに係わる要素(担体、抗原、抗体、酵素標識第二抗体、基質、発色試薬等)を予め保存可能な状態とする事で、日内、日差の変動のデータのとれるキットとすることができる。保存可能な状態とするための、試薬の安定化剤として、アルブミン、オボアルブミン、グロブリン、カゼイン等を溶解した液やスキムミルクなどの蛋白質を含む液を用いることができる。好ましくは、アルブミン液、スキムミルク液を挙げることができる。蛋白質のかわりにトレハロース、グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、α- シクロデキストリンなどを用いて凍結乾燥して保持することもできる。好ましくは、トレハロース、グリセリンを挙げることができる。保存は冷蔵条件(4℃から10℃) や冷凍条件(-10℃から-80 ℃) を用いる。【0035】次に本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。【実施例1】リンカー付与インドキシル硫酸の調製;(1) 1-(2',3'- エポキシプロピル) インドキシル硫酸ナトリウム(1)(表1の化合物番号を示す。以下、同じ)の調製市販のインドキシル硫酸カリウム塩1.00g をジメチルホルムアミド (以下、 DMFという) 20mlに溶解し水素化ナトリウム(60 %、油性物) 222 mgを加え、室温で1 時間攪拌した。混合物にエピクロロヒドリン934 μl を加えて室温で5.5 時間攪拌した。反応終了後、蒸留水を加えて反応を停止した後に溶媒を留去した。残渣にメタノールを加え、不溶分を除去した。濾液の溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Kieselgel 60,40g, クロロホルム/ メタノール=10/1〜10/2) によって精製し、標記の化合物(1) 749mg(64%) を淡黄色泡状物として得た。MS(FAB., negative) m/z= 268[M-23]- 1H-NMR(CDCl3) δ(ppm) : 2.59(dd,1H), 2.77(dd,1H), 3.17(m,1H), 4.11 (dd,1H), 4.43(dd,1H), 6.96(t,1H), 7.08(t,1H), 7.16(s,1H), 7.44(d,1H), 7.50 (d,1H).【0036】(2) [(3'-N- ベンジルアミノ-2'-ヒドロキシ) プロピル] インドキシル硫酸ナトリウム(3) の調製前記実施例1で調製した1-(2',3'- エポキシプロピル) インドキシル硫酸ナトリウム(1) 200 mg(0.687mmol) をメタノール1 mlに溶解しベンジルアミン110 mgを加えた。室温で19時間攪拌した後に溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (Kieselgel 60,10g, クロロホルム/ メタノール=15/1〜10/1.5) によって精製し、標記の化合物(3) 149mg を白色固体として得た。MS(FAB., negative) m/z= 399[M+1] + 1H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) : 2.80(dd,1H), 2.95(dd,1H), 4.0-4.3(m,5H), 5.73 (br,1H), 6.97(t,1H), 7.10(t,1H), 7.17(s,1H), 7.3-7.6(m,7H), 8.46 (br,1H).【0037】(3) 1-(3'-アミノ-2'-ヒドロキシプロピル) インドキシル硫酸ナトリウム塩(4) の調製前記実施例2で調製した[(3'-N- ベンジルアミノ-2'-ヒドロキシ) プロピル] インドキシル硫酸ナトリウム(3) 131 mgをDMF 6.5 mlに溶解し、10%パラジウム- カーボン92mgを加えた後に水素雰囲気下で3時間攪拌した。反応終了後、セライトを通して濾過し、反応液を濃縮した。残渣をメタノール/クロロホルムに溶解し、不溶物を除去した後に濃縮し標記の化合物(4) 66mg (64%) を淡緑色固体として得た。MS(FAB., negative) m/z= 285[M-23]- 1H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) : 2.68(dd,1H), 2.84(dd,1H), 4.01(m,1H), 4.15 (m,2H),5.73(br,1H), 6.97(t,1H), 7.10(t,1H), 7.17(s,1H), 7.43(d,1H), 7.51 (d,1H),7.73(br,2H).【0038】(4) 1- 〔(4'-メトキシカルボニルフェニル) メチル〕インドキシル硫酸ナトリウム塩の調製市販のインドキシル硫酸カリウム塩125mg を DMF2ml に溶解した後、水素化ナトリウム (60%、油性物) 28mgを加え室温で20分間攪拌した。反応液にメチル4-ブロモメチルベンゾエート 120mgを加えて室温で18時間攪拌した。反応終了後、蒸留水を加えた後に溶媒を留去し、残渣にメタノールを加えた。不溶分を除去し、濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (Kieselgel 60, 10g,クロロホルム/ メタノール=50/3〜10/2) によって精製し、標記の化合物(2') 64mg を白色固体として得た。MS(FAB., Positive) m/z=384[M+1]+ 1H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) :3.82(s,3H), 5.44(s,2H), 6.97(t,1H), 7.05(t,1H), 7.26(s,1H), 7.28-7.35(m,3H), 7.52(d,1H), 7.89(d,2H).【0039】(5) 1-〔(4'-カルボキシフェニル) メチル〕インドキシル硫酸ビスナトリウム塩(2) の調製前記(4) で調製した 1- 〔(4'-メトキシカルボニルフェニル) メチル〕インドキシル硫酸ナトリウム塩 103mgに1N-NaOH 水溶液 800μl 及びメタノール 3mlを加え、室温で3日間攪拌した。反応終了後溶媒を留去し、残渣をメタノールに溶解した後に不溶分を除去した。これを濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 60, 3g,クロロホルム/ メタノール=10/1〜2/1)によって精製し、更にこれをメタノール/ クロロホルムから再沈殿して標記の化合物(2) 36mgを白色固体として得た。MS(FAB., Positive) m/z=368[M-23] - 1H-NMR(DMSO-d6: δ(ppm) :5.35(s,2H), 6.53(t,1H), 7.04(t,1H), 7.16(d,2H), 7.26(s,1H), 7.34(d,1H), 7.52(d,1H), 7.84(d,2H).【0040】(6) 1-(3'-カルボキシエチル) カルボニルインドキシル硫酸ビスナトリウム塩(5) の調製市販のインドキシル硫酸カリウム塩100mg を DMF2ml に溶解した後、水素化ナトリウム (60%、油性物) 24mgを加え室温で20分間攪拌した。反応液に昇華精製した無水琥珀酸40mgを加えて室温で 2時間攪拌し、さらに無水琥珀酸40mgを追加して室温で30分間攪拌した。反応終了後、蒸留水を加えた後に溶媒を留去し、残渣にメタノールを加えた。不溶分を除去し、濃縮した後、メタノール中にクロロホルムを加えて再沈殿により精製し、標記の化合物(5) 82mgを白色固体として得た。MS(FAB., negative) m/z= 334[M-23]- ,312 [M-23×2] -1H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) : 2.26(t,2H), 2.97(t,2H), 6.92(t,1H), 7.04 (t, 1H), 7.05(s,1H), 7.48(d,2H), 7.52(d,2H)本発明で得られたリンカー付与インドキシル硫酸の物性値等を表1に示した。これらの化合物は、本発明のハプテンとなる。【0041】【表1】【0042】【実施例2】リンカー付与インドキシル硫酸(ハプテン)と蛋白質とが結合して複合体となった抗原(1) エポキシ体インドキシル硫酸とアルブミン (牛血清由来、Miles Lab Cat.No.82-21981)との結合は両者をモル比50:1(2.2mg-10mg/2.1ml リン酸緩衝液、0.05M, pH7.4) で混合して、4時間室温で行なった。反応後、ダルベッコ リン酸緩衝生理食塩水(Ca++Mg++不含、pH7.4)に対して透析を24時間、4 ℃で行ない、内液を遠心(5000Xg 、10分) して不溶物を除去した。(2) エポキシ体インドキシル硫酸とトランスフェリン (ヒト血清由来、Sigma Cat. T-2252)との結合はあらかじめトランスフェリンに N-succimidyl-3-(2-pyridyldithio) propionate (フナコシ Cat.No.FM-0185-31) を用いてスルフヒドリル基を導入して、両者をモル比90:1(58.5mg-160mg/14mlリン酸緩衝液、0.1M,pH6.0, 2.5mM EDTA)で混合して、96時間4℃で行ない、反応後、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Ca++Mg++不含、pH7.4)に対して透析を24時間、4 ℃で行ない、内液を遠心(5000Xg,10分) して不溶物を除去した。蛋白質への結合量は推定でアルブミンでは2.5 分子、トランスフェリンでは2 分子であった。結合数の推定は蛋白質1mg/ml当りの275nm の吸収増加からの計算で行なった。蛋白質の定量は色素法 (プロテインアッセイキットI 、日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ、Cat.No.500-0001)で行ない、275nm は1mg/mlの値をアルブミンで 0.6、トランスフェリンでは 0.9、エポキシ体インドキシル硫酸では20で計算した。【0043】(3) アミノ基導入インドキシル硫酸とアルブミンとの結合は両者をモル比87:1 (8mg-20mg/12ml蒸留水) で混合して、10mgの1-ethyl-3-(3-dimethyl-aminopropyl)carbodiimide( 和光純薬 Cat.No.348-03631)存在下で18時間、室温、暗所で反応後、蒸留水に対して透析を24時間、4℃で行なった。内液を遠心(5000xg,10分) して不溶物を除去した。アミノ基導入インドキシル硫酸とトランスフェリンとの結合も同様の条件で行なった。モル比は 100:1で行なった。蛋白質への結合量は推定でアルブミンでは4分子、トランスフェリンでは2分子であった。結合数の推定はアミノ基導入インドキシル硫酸の1mg/ml液の 275nmを16.6で行なった。【0044】(4) カルボキシル基導入インドキシル硫酸とアルブミン及びカルボキシル基導入インドキシル硫酸とトランスフェリンとの結合も同様の条件で行なった。モル比はそれぞれ、67:1と77:1で行なった。蛋白質への結合量は推定でアルブミンでは23分子、トランスフェリンでは28分子であった。結合数の推定はカルボキシル基導入インドキシル硫酸1mg/ml液の275nm を12.5で計算して行なった。【0045】【実施例3】インドキシル硫酸に特異的なモノクローナル抗体の調製(1) 脾細胞の調製Hunter's TiterMaxTM (フナコシ Cat.No.YT-001-00)で乳化させたエポキシ体インドキシル硫酸とアルブミンとの結合物をBALB/cマウス (雌、10週齢) の大腿部筋肉内に免疫した。インドキシル硫酸換算でマウス1 匹当り 3μg を用い、更に、3週間後と5週間後に追加免疫をした。初回免疫から10週間後に、結合物のみの免疫を行ない、その4日後にマウスから脾臓を取出し、赤血球を除去した脾細胞懸濁液を調製した。アミノ基導入インドキシル硫酸とアルブミンとの結合物やカルボキシル基導入インドキシル硫酸とアルブミンとの結合物、インドキシル硫酸換算でそれぞれ、マウス1 匹当り 4μg 、18μg を免疫し、それぞれ脾細胞懸濁液を調製した。【0046】(2) 細胞融合上記調製の脾細胞懸濁液とマウス骨髄腫細胞 P3X63 Ag8.653 (ATCC 受託番号 CRL-1580)をケーラーとミルスタインの細胞融合技術(文献)により融合した。脾細胞 1×107 個とマウス骨髄腫細胞 2×106 個を混合した後、遠心して細胞をペレットとした。そのペレットに50% PEG-1500 を含む HEPES緩衝液(75 mmol/L,pH8.0)を1 ml、攪拌しながら徐々に加えた。RPMI 1640 培地を加えて希釈した後、遠心で細胞を集め、HAT培地に懸濁させて、48穴マイクロプレートに 1×106cells 0.5ml/ ウエルで分注した。7日間培養した後、HT培地を0.25ml添加し、更に3 日後、7 日後にもHT培地を0.25ml添加した。【0047】(3) スクリーニング上記細胞融合により得られたハイブリドーマ培養上清の抗インドキシル硫酸抗体活性を酵素免疫測定法(EIA)で調べた。トランスフェリンにインドキシル硫酸を結合した上記の結合物を抗原として固相化し、上清と反応させた後にペルオキシダーゼ標識抗マウス IgG抗体で抗原- 抗体複合体を検出してオルソフェニルジアミンを基質として発色反応させ、492nm の吸光度を測定した。エポキシ体インドキシル硫酸を用いた実験では793 ウエルのうち399 ウエルが抗体活性を示し、更に再現性のある活性を示した2 ウエルを選択した。アミノ基導入インドキシル硫酸を用いた実験では 151ウエルのうち11ウエルが抗体活性を示し、さらに1 ウエルを選択した。カルボキシル基導入インドキシル硫酸を用いた実験では 384ウエルのうち148 ウエルが抗体活性を示し、さらに1 ウエルを選択した。【0048】(4) クローニング選択した6ウエル中のハイブリドーマを限界希釈法でクローン化し、ハイブリドーマ 12-46-B9, 22-40-B5, 24-40-B7, 33-47-3を得た。【0049】(5) モノクローナル抗体の精製ハイブリドーマ培養上清から抗インドキシル硫酸モノクローナル抗体を以下の操作で得た。ハイブリドーマ 12-46-B9 の培養上清をヤギ抗マウスIgG 抗体結合アガロースによるアフィニティカラムにアプライした。吸着画分を溶出させて精製した。又、マウスにハイブリドーマ12-46-B9 1×107 個を注射して腹水を採取した。33%硫酸アンモニウム塩析法で粗精製した後に上記カラムで精製した。他の5種類の抗体も同様の操作で精製した。【0050】【実施例4】モノクローナル抗体の理化学的性質及び免疫学的性質実施例3で得られたモノクローナル抗体の理化学的性質及び免疫学的性質を検討した。(1)免疫グロブリンクラスの同定マウス イムノグロブリン アイソタイピング キット(生化学工業、Code No. 230005)を用いて免疫グロブリンのタイプを決定した。ハイブリドーマ12-46-B9, 22-40-B5, 24-40-B7, 33-47-3 の産生する抗体は、IgG2a,IgG2a, IgG1, IgG1 で、軽鎖はいずれもκであった。(2)分子量抗インドキシル硫酸モノクローナル抗体分子量はSDS−PAGEによる評価で15万から17万ダルトンであった。(3)特異性抗インドキシル硫酸モノクローナル抗体の特異性を検討する為に競合EIAを行った。スクリーングに使用したEIAと同様の方法であるが、抗体含有培養上清を反応させるステップで競合物を共存させた。エポキシ体インドキシル硫酸を用いた実験、アミノ基導入インドキシル硫酸を用いた実験、カルボキシル基導入インドキシル硫酸を用いた実験の結果を表2に示す。492nm の吸光度が共存させた競合物で50%に低下する競合物濃度を計算すると、インドキシル硫酸以外は 500μg/ml以上であり、一方、インドキシル硫酸は0.17μg/mlから 3.7μg/mlであったことよりインドキシル硫酸に対して特異的に結合する事がわかった。2.5 %トレハロース液を添加して凍結乾燥した後、分析用サンプルを調製した。このサンプルについても同様の結果を得た。【0051】【表2】【0052】【実施例5】モノクロール抗体の応用例定量測定系への応用ヒト血清中にインドキシル硫酸を既知量添加して検量線を作成した。その結果を図1に示した。図1に示すように、インドキシル硫酸0.1 μg/mlから100 μg/mlの測定範囲で検量線が作成できた。定量法は特異性検討に用いた競合法を適用した。ラット血清でも同様の検量線であった。2.5 %トレハロース液を添加して凍結乾燥した後、分析用サンプルを調製した。このサンプルについても同様の結果を得た。【0053】【実施例6】ポリクローナル抗体の作製(1)動物の感作完全フロイントアジュバンドに乳化させたカルボキシル基導入インドキシル硫酸とアルブミンの結合物を、New Zealand White(雌、3kg)に皮下投与した。インドキシル硫酸換算で100 μg をウサギ1羽に投与して、更に1週間後、2週間後、7週間後、10週間後に追加免疫した。12週間後に全採血した。(2)ポリクローナル抗体精製ウサギ血清35mlより硫安塩析法で抗体を粗精製した後、プロテインA結合アガロースによるアフィニティカラムにアプライした。吸着画分を溶出させて精製した。約50mgの抗体を回収した。【0054】【実施例7】ポリクローナル抗体の理化学的性質及び免疫学的性質(1)免疫グロブリンクラスの同定オクタローニー法を用いて免疫グロブリンのタイプを決定したが、IgG であった。(2)分子量分子量はSDS−PAGEによる評価で15万−17万ダルトンであった。(3)特異性結果を表3に示す。492nm の吸光度が共存させた競合物で50%に低下する競合物濃度を計算すると、インドキシル硫酸以外は 500μg/ml以上であり、一方、インドキシル硫酸は6.9 μg/mlであったことよりインドキシル硫酸に対して特異的に結合することがわかった。【0055】【表3】【0056】【実施例8】ポリクロール抗体の応用例ヒト血清中にインドキシル硫酸を既知量添加して検量線を作成した。図2に示すように、いずれの液中でも 0.1μg/mlから 100μg/mlの測定範囲で検量線が作成できた。定量は特異性検討に用いた競合法を適用した。【0057】【実施例9】疾患動物血清の分析7/8腎結紮ラット(Sprague-Dawley 系雌ラット、実験開始時210-250g、各群n=10) の血清中のインドキシル硫酸濃度(モデル作成後9週)を抗体22-40-B5を用いて測定した。腎疾患モデルラットでは平均値±標準偏差は10±2.1 μg/mlであり、sham-operationの対照ラットでは0.5 ±0.1 μg/mlであった。この値は、日本腎臓学会誌 28(6), 695-701(1990)に記載される腎疾患モデルラットの血清中のインドキシル硫酸濃度のHPLCによる測定値約10μg/ml、 sham-operation の対照ラットのそれの測定値約 0.5μg/mlとほぼ一致した。【0058】【実施例10】(1) 測定系キット次のパーツよりなる血清中のインドキシル硫酸測定用キットを作製した。(A) 抗原結合プレート: 96穴プレート(EIA用) に抗原を固相化し、ブロッキング後、下記の安定化剤を加えて、凍結乾燥したもの。(B) 標準抗原液: 既知濃度のインドキシル硫酸液(C) 酵素標識抗体: 抗体22-40-B5を酵素 (ペルオキシダーゼ) 標識して、下記の安定化剤を加えて凍結乾燥したもの。ベルオキシダーゼ標識は Nakane らの方法に準じて行なった(J.Histochem. Cytochem., 14, 929, 1966) 。(D) 発色用試薬: 基質 (オルソフェニレンジアミン) 、緩衝液 (クエン酸- リン酸緩衝液、0.1M, pH5.0)、H2O2(A)-(D) は冷蔵して保存した。安定化剤として、2 %スキムミルクをリン酸緩衝液生理食塩水に懸濁した液を用いた。【0059】(2) キットの使用方法酵素免疫測定法(EIA)をキット化する試みとして、保存24時間後に、トランスフェリンにインドキシル硫酸を結合した上記の結合物を抗原として固相化した96穴プレート(A) に蒸留水を添加して、再構成した後に液を捨て、インドキシル硫酸(B) と同じく蒸留水で再構成した酵素標識抗体22-40-B5(C) とを共存させた条件で、固相化抗原と反応させた後に、標識抗体と固相化抗原の複合体を緩衝液にオルソフェニルジアミンを溶解し、H2O2を添加した基質液(D) を用いた発色反応で検出し、492nm の吸光度を測定した。なお、オルソフェニルジアミンとH2O2は市販品を使用した。【0060】【実施例11】実施例10の測定系キットのパーツ (A)−(D) の安定化剤として2%スキムミルクの代りに 2.5%トレハロースを用いてインドキシル硫酸測定系キットとした。【0061】【発明の効果】本発明によって、哺乳類(ヒト、ラット、マウス等)の体液(血清、血漿、尿、リンパ液など)や組織等に含まれるインドキシル硫酸の量を簡便、且つ迅速に精度よく測定することができ尿毒症等の腎疾患の検査をきわめて容易に行なうことができる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例5のモノクローナル抗体によるインドキシル硫酸の検量線を示す。【図2】実施例8のポリクローナル抗体によるインドキシル硫酸の検量線を示す。 次の一般式(I) で表されるインドキシル硫酸誘導体ただし、式中の置換基 L1, L2 及びL3は、次の一般式(II)で表される。X−(CH2)n −Y1 −(CH2)m−Y2 − (CH2)p −Z (II)(一般式(II)中のXは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、又は単結合を示す。Y1は、フェニレン基、単結合、-CHOH- を示し、Y2は、単結合を示す。Zはエポキシ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、若しくは無置換又はベンジル基で1置換されているアミノ基を示す。n,m及びpはそれぞれ独立に0、1または2を示す。この置換基L1〜 L3 は、いずれか1つのみが一般式(II)で表され、一般式(II)で表されない場合、L1及びL2は水素原子、L3は水素原子、またはナトリウム、カリウム、アンモニウムを示す) 。 置換基L1が請求項1の一般式(II)で表され、置換基L2が水素原子であり、置換基L3が水素原子、またはナトリウム、カリウム、アンモニウムである請求項1記載のインドキシル硫酸誘導体。 置換基L1が、2,3 - エポキシプロピル基、パラカルボキシベンジル基、3-ベンジルアミノ-2- ヒドロキシプロピル基又は3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル基であり、これらがインドール環窒素原子上に存在しており、置換基L2が水素原子、L3が水素原子、またはナトリウム、カリウム、アンモニウムである請求項2記載のインドキシル硫酸誘導体。 請求項1〜3のいずれかのインドキシル硫酸誘導体と蛋白質との複合体であるインドキシル硫酸を抗原決定基とする抗原。 蛋白質がアルブミン又はトランスフェリンである請求項4記載の抗原。 請求項4又は5の抗原から調製される、インドキシル硫酸に対して特異的に結合する抗体。 次の性質をもつポリクローナル抗体である請求項6記載の抗体。1) 免疫グロブリンクラス IgG2) 分子量 15〜17万ダルトン(SDS-PAGE による) 次の性質をもつモノクローナル抗体である請求項6記載の抗体。1) 免疫グロブリンクラス IgG2) 分子量 15〜17万ダルトン(SDS-PAGE による) 請求項6〜8のいずれかに記載のインドキシル硫酸に対して特異的に結合する抗体を用い、インドキシル硫酸含有試料中のインドキシル硫酸を免疫学的に検出するインドキシル硫酸の検出法。 試料が血清、血漿又は尿である請求項9記載の検出法。 請求項6〜8のいずれかに記載のインドキシル硫酸に対して特異的に結合する抗体及び検出試薬よりなるインドキシル硫酸検出のための測定キット。 請求項4に記載の抗原を用いて動物の免疫を行ない、抗体産生細胞を動物より分離して、継代可能な細胞株との融合を行なう事で作出される、インドキシル硫酸に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからなる継代可能な細胞株。