生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_安定化されたペルオキシダーゼ活性を有する溶液
出願番号:1997074478
年次:2007
IPC分類:C12N 9/96


特許情報キャッシュ

森鼻 祥子 佐々木 克也 小林 高久 JP 3915164 特許公報(B2) 20070216 1997074478 19970311 安定化されたペルオキシダーゼ活性を有する溶液 和光純薬工業株式会社 000252300 森鼻 祥子 佐々木 克也 小林 高久 JP 1996084639 19960313 20070516 C12N 9/96 20060101AFI20070419BHJP JPC12N9/96 C12N 9/00-9/99 特開昭61−239890(JP,A) 特開昭62−122600(JP,A) 特開平05−268950(JP,A) 4 1997299085 19971125 7 20040204 植原 克典 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、安定化されたペルオキシダーゼ活性を有する溶液、及び溶液中のペルオキシダーゼの安定化方法に関する。【0002】【従来の技術】近年、臨床検査、診断分野に於いて、免疫反応、酵素反応を利用した測定法が広く行われてきている。特にペルオキシダーゼ(以下、PODと略す。)は、ヘムタンパク質で、過酸化水素を水素受容体として種々の物質を酸化する反応を触媒する性質を有しているため、酵素免疫測定法や酵素免疫組織化学分野で、標識酵素として広く使用される酵素である。しかしながら、PODはそのままでも或いは他の物質と結合した形(例えばPOD標識抗体等)でも、溶液中での安定性が悪く、特に1μg/ml以下のような低濃度では活性の低下が著しく、その活性を長期間安定に保存することは困難であるとされており、その安定化が強く望まれていた。【0003】POD活性を有する溶液の安定化方法としては、例えば特開昭60-188067号に記載の糖又は糖アルコールを添加する方法、例えば特開昭60-192260号、特開昭61-78385号、特開昭61-212286号等に記載のフェノール誘導体を添加する方法、或いは特開昭61-239890号等に記載のp-ヒドロキシフェニルカルボン酸を添加する方法等が開発されているが、何れの方法も必ずしも十分とはいえず、低濃度のPODを含有する溶液に於けるPODの更なる安定化方法の開発が求められている現状にある。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、安定なPOD活性を有する溶液、及び溶液中のPODの簡便且つ効果的な安定化方法を提供することにある。【0005】 本発明は、「3−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(2,4)−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシケイヒ酸から選択される化合物を共存させて成る、ペルオキシダーゼ活性を有する溶液。」の発明である。また、本発明は「3−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(2,4)−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシケイヒ酸から選択される化合物を共存させルことを特徴とする、溶液中のペルオキシダーゼの安定化方法。」の発明である。【0006】 即ち、本発明者らは、POD濃度が低い溶液に於いて、PODを安定化する方法について鋭意研究の結果、このような溶液に3−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(2,4)−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシケイヒ酸から選択される化合物を添加することにより、従来以上のPOD安定化効果が得られることを見出し、本発明に到った。【0009】 本発明に係る3ーヒドロキシフェニル酢酸、3-(2,4)-ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、2,5-ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4-ジヒドロキシケイヒ酸としては、市販品でも常法により合成されたものでも良い。また、これらの化合物の使用濃度としては、目的の溶液中の最終濃度として通常0.01〜1(W/V)%、好ましくは0.05〜0.5(W/V)%の範囲から適宜選択される。【0010】本発明に於いて用いられるPODは、その由来は特に限定されず、例えば植物由来、微生物由来等、何れの由来のものでも良いが、具体的には、例えば西洋わさび由来のPOD、牛乳由来のラクトペルオキシダーゼ、多形核白血球由来のミエロペルオキシダーゼ等が挙げられる。本発明に係るPOD活性を有する溶液としては、POD活性を有する物質を含有する溶液であれば何れでも良く、これらの物質としてはPOD自体(未修飾のもの)、PODと他の物質との結合体(以下、POD結合体と略記する。)、或いはこれらの混合物の何れでも良い。【0011】本発明に係るPOD結合体を構成する他の物質の例としては、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、特定の遺伝子配列とハイブリダイズする性質を有するポリ−又はオリゴヌクレオチド、レセプター、レクチン、糖鎖、免疫活性物質等が挙げられる。【0012】DNA,RNA、或いは特定の遺伝子配列とハイブリダイズする性質を有するポリ−又はオリゴヌクレオチドとしては、例えばインフルエンザウイルス等の病原体のDNA又はRNA,或いはこれら核酸を構成する1本鎖ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド類,生体試料中の測定対象物質である1本鎖ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド等が挙げられ、レセプターとしては、例えば甲状腺刺激ホルモン,アセチルコリン等のホルモンに対するレセプター,グルタミン酸等に対するレセプター等のレセプターが挙げられ、レクチンとしては、例えばコンカナバリンA,レンズマメレクチン,インゲンマメレクチン,ダツラレクチン,小麦胚芽レクチン,ヒイロチャワンタケレクチン,ヒママメレクチン,ピーナッツレクチン等のレクチンが挙げられ、糖鎖としては、これらレクチンと結合する性質を有する糖鎖が挙げられる。【0013】更に、免疫活性物質としては、例えば抗原、抗体、ハプテン等が挙げられ、抗原若しくはハプテンとしては、例えば、アルブミン,ヘモグロビン,ミオグロビン,トランスフェリン,プロテインA,β2-ミクログロブリン,フェリチン,C反応性蛋白質(CRP)等のタンパク質、例えば高比重リポタンパク質(HDL),低比重リポタンパク質,超低比重リポタンパク質等の脂質蛋白質、脂質、糖質、例えばアルカリ性ホスファターゼ,酸性ホスファターゼ,乳酸脱水素酵素,リパーゼ,アミラーゼ,γ-グルタミルトランスフェラーゼ,クレアチンキナーゼ,トリプシン,プラスミン,セリンプロテアーゼ,グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT),グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT),レニン,プロテインキナーゼ(PK),チロシンキナーゼ等の酵素、例えばフィブリノーゲン,フィブリン分解産物(FDP),プロトロンビン,トロンビン等の血液凝固関連因子、例えばB型肝炎ウイルス関連抗原(HBs,HBc,HBe),梅毒トリポネーマ(TP)抗原,クラミジア抗原,カンジダ抗原等の微生物関連抗原、例えばトリプシンに対するα1-アンチトリプシン,プラスミンに対するα2-マクログロブリンやα1-アンチキモトリプシン等の特定の酵素に対するインヒビター類、例えばα-フェトプロテイン(AFP),CA-19-9,前立腺特異抗原(PSA),癌胎児性抗原(CEA),α2-マクログロブリン癌細胞の産生する特殊な糖鎖を有する物質等の癌マーカー、例えばエンドセリン,ナトリウム利尿ペプチド等の生理活性ペプチド、例えばインシュリン,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG),ステロイドホルモン,サイロキシン(T4),トリヨードサイロニン(T3)、プロラクチン,甲状腺刺激ホルモン(TSH),黄体形成ホルモン(LH)等のホルモン、例えばジゴキシン,フェニトイン,モルヒネ,ニコチン等の薬物、例えばインターロイキン1,インターロイキン2,インターフェロン,腫瘍壊死因子(TNF)等のサイトカイン、例えばC3,C4の補体等が挙げられる。【0014】また、抗体としては、目的に応じて適宜選択された抗体(例えば上で記載した如き抗原に対する抗体)であればよく、例えば「免疫実験学入門,第2刷,松橋直ら,(株)学会出版センター,1981」等に記載の方法に準じて、例えば馬,牛,羊,兎,山羊,ラット,マウス等の動物に適当な抗原を免疫して作製されるポリクローナル抗体でも、或いはまた常法、即ちケラーとミルスタイン(Nature,256巻,495頁,1975)により確立された細胞融合法に従い、マウスの腫瘍ラインからの細胞と適当な抗原で予め免疫されたマウスの脾細胞とを融合させて得られるハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体でも何れにてもよく、またそのクラスも限定されず、IgG,IgM,IgA,IgD,IgE等が制限なく用いられる。また、それらの断片、即ち例えばFab,F(ab)2,Fab'等も使用可能である。【0015】上記した如き物質とPODとを結合させる方法としては、自体公知の方法が何れも挙げられるが、例えばアミノ基を含有する物質の場合は、グルタルアルデヒド法(S.Avrameas et al.,Immunochem.,6,43(1969)),過ヨウ素酸法(P.K.Nakane et al.,J.Histochem.Cytochem.,22,1084(1974)),マレイミド法(E.Ishikawa et al.,J.Immunoassay,4,209(1983))等により行えば良いし、カルボキシル基を含有するかカルボキシル化できる物質の場合には、混合酸無水物法(B.K.Van Weemen et al.,FEBS lett.,24,77(1972)),N−ヒドロキシサクシニミドエステル法(C.Gros et al.,Prot.Biol.Fluids Proc.Coll.,24,763(1976))等によりPODと 結合させることができる。また、上記官能基を持たない物質については、生化学実験法,11巻,「エンザイムイムノアッセイ」,256〜260頁,P,Tissen著,石川栄治監訳,東京化学同人,1989年に記載された方法や、アミノ基導入試薬等を用いてカルボキシル基やアミノ基を導入させた後に、上記の如き方法により、PODと結合させれば良い。【0016】 本発明に係る溶液中のPOD又はPOD結合体の濃度としては特に限定されないが、目的の溶液中の最終濃度として0.01〜10μg/mlの範囲から適宜選択される。本発明の方法により溶液中のPODを安定化するには、POD又は/及びPOD結合体と、3−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(2,4)−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシケイヒ酸から選択される化合物とを上記した如き濃度で溶液中に共存させればよく、調製の際のこれらの添加順序等は特に限定されない。【0017】また、本発明のPOD活性を有する溶液にはPOD活性を阻害しないものであれば、通常この分野でPOD活性を有する溶液中に添加される例えば馬血清,牛血清,羊血清等の動物血清や、例えばアルブミン等の血清成分、例えばゼラチン,カゼイン等のタンパク質、例えばサッカロース等の糖類、例えばチメロサール等の防腐剤、緩衝剤、例えば塩化ナトリウム等の塩類等を含有させても良い。緩衝剤としては、例えば炭酸塩、酢酸塩、グリシン、クエン酸塩、リン酸塩、ベロナール、ホウ酸塩や、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,3-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES),3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)等のグッド緩衝剤等、通常この分野で用いられる緩衝剤は何れも制限なく使用可能である。また、該溶液のpHとしては、通常4〜9の範囲から適宜選択される。尚、本発明の溶液調製における上記した如き各成分の添加順序については特に限定されるものではない。【0018】本発明の方法によれば、POD活性を有する溶液を、極めて安定に、且つ長期間保存することができる。本発明の方法で安定化したPOD活性を有する溶液は、従来用いられているPOD又は/及びPOD結合体溶液と同様に、従来用いられている酵素免疫測定法や、酵素免疫組織化学分野で用いることができる。【0019】POD活性の測定は、例えば石川栄治著,「酵素標識法」,学会出版センター,1991年,5〜15頁等に記載されているような方法、例えば本発明のPOD活性を有する溶液と過酸化水素及び、例えばオルトフェニレンジアミン等の色原体やルミノール等の基質とを反応させ、その結果生じる色素等を比色法、発光法等で測定する常法により行えばよい。以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0020】【実施例】実施例1(1)抗HBsモノクローナル抗体の作製HBs抗原(スクリプス社製)をフロイント完全アジュバントと共にBALB/cマウス(♀)に免疫(2回)後、摘出した脾臓細胞とミエローマ細胞(F0)とをポリエチレングリコールを用いる常法(例えば特開平5-244983号公報に示された方法等)により融合させた。その後常法により抗HBsモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを選別し、これを培養して抗HBsモノクローナル抗体を得た。得られた抗HBsモノクローナル抗体を、常法(石川栄治著,「酵素標識法」,学会出版センター,1991年,p.62 の方法)によりPOD標識し、標識抗体を作製した。(2)POD標識抗体溶液の作製上で得た標識抗体を2%BSA、150mM NaClを含む50mM MES緩衝液(pH6.5)に溶解後、所定の安定化剤を0.1%(w/v)の濃度になるように溶解してPOD標識抗体溶液を調製した。尚、比較として安定化剤を加えないもの、及び安定化剤として公知のPOD安定化剤であるp-ヒドロキシフェニル酢酸を上記安定化剤の代わりに溶解したものも同時に調製した。これらのPOD標識抗体溶液を、40℃で所定日数保存した後、以下に示す方法でPOD活性残存率を調べ、安定化効果の評価を行った。(3)安定化効果の検討ポリスチレンボール(イムノケミカル社製)を、上で得た抗HBsモノクローナル抗体(POD未標識) 20μg/mlを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.5)中に浸漬し、4℃で一晩静置後、1%BSA、150mM NaClを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.5)に浸漬して、更に4℃で一晩静置し、抗HBsモノクローナル抗体固定化ボールを作製した。標準HBs抗原(スクリプス社製)10ng/ml、1%BSA及び150mM NaClを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.5)200μl中に、上記のようにして調製した抗HBsモノクローナル抗体固定化ボール1個を加え、37℃で10分間反応させた。次いで該ボールを生理食塩液で3回洗浄後、所定のPOD標識抗体溶液200μlを加え、10分間反応させた。該ボールを生理食塩水で3回洗浄後、5mMルミノール及び0.02%過酸化水素を含む50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.5)200μlを加え、化学発光計(ベルトールド社製、LB953)にて化学発光値を測定した(cpm)。尚、POD活性残存率(%)は、測定日に新たに調製したPOD標識抗体溶液の化学発光値に対する40℃で所定日数保存後のPOD標識抗体溶液の発光値を百分率で表した。結果を表1に示す。【0021】【表1】【0022】表1の結果から、本発明に係る安定化剤を添加すると、無添加の場合に比較して、POD活性をより安定化し得ることが判る。また、3-ヒドロキシフェニル酢酸並びにヒドロキシ基を2個有する本発明に係る化合物は、公知の安定化剤であるp-ヒドロキシフェニル酢酸よりも高いPOD安定化効果を有していることが判る。更にまた、ヒドロキシ基を一個有する化合物よりも、二個有する化合物を用いた場合の方が、より一層優れたPOD安定化効果が得られることが判った。また、本発明に係る安定化剤を添加すると、40℃で長期間保存してもPOD安定化効果に優れ、熱安定性にも効果があることが判った。【0023】【発明の効果】本発明は、安定化されたPOD活性を有する溶液、並びに溶液中でのPODの安定化方法を提供するものであり、本発明によれば溶液中のPODを、極めて安定に、且つ長期間保存することが出来るという効果を奏するので、斯業に貢献するところ極めて大なる発明である。 3−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(2,4)−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシケイヒ酸から選択される化合物を共存させて成る、ペルオキシダーゼ活性を有する溶液。 化合物の濃度が、溶液中の最終濃度として0.01〜1(W/V)%である、請求項1に記載の溶液。 3−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(2,4)−ジヒドロキシフェニルプロピオン酸、2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4−ジヒドロキシケイヒ酸から選択される化合物を共存させることを特徴とする、溶液中のペルオキシダーゼの安定化方法。 化合物の濃度が、溶液中の最終濃度として0.01〜1(W/V)%である、請求項3に記載の安定化方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る