タイトル: | 特許公報(B2)_α−1,3−多分岐デキストラン水解酵素、その製造法及び環状イソマルトオリゴ糖の製造法 |
出願番号: | 1997037691 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N9/24,C12P19/00 |
小林 幹彦 小熊 哲哉 JP 3607789 特許公報(B2) 20041015 1997037691 19970221 α−1,3−多分岐デキストラン水解酵素、その製造法及び環状イソマルトオリゴ糖の製造法 独立行政法人食品総合研究所 501145295 財団法人野田産業科学研究所 000173935 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 小林 幹彦 小熊 哲哉 20050105 7 C12N9/24 C12P19/00 C12N9/24 C12R1:01 C12P19/00 C12R1:01 JP C12N9/24 C12P19/00 C12N9/24 C12R1:01 C12P19/00 C12R1:01 7 C12N 9/14-9/46 JSTPlus(JOIS) BIOSIS/WPI(DIALOG) 特開平10−070981(JP,A) 3 FERM P-16086 1998229876 19980902 10 20010725 鈴木 恵理子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素、その製造法及び環状イソマルトオリゴ糖の製造法に関する。【0002】【従来の技術】環状イソマルトオリゴ糖は、本発明者らが土壌より単離した微生物をデキストラン含有培地で培養して始めて得た新規な環状オリゴ糖である。この環状イソマルトオリゴ糖はサイクロデキストリンと同様に低分子化合物と包接化合物を形成するものであるから、医薬品、食品等への利用が期待されている有用な糖である(特開平6−197783号公報)。また、この環状イソマルトオリゴ糖は、虫歯の原因菌として知られているストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物の生産するグルカン合成酵素を特異的に阻害する作用を有するものであることから、抗う蝕剤への応用も期待されている(特開平8−59484号公報)。この環状イソマルトオリゴ糖の製法としては、デキストランから環状イソマルトオリゴ糖を合成する酵素である環状イソマルトオリゴ糖合成酵素を用いて効率よく該オリゴ糖の製造する方法が開発されている(特開平7−8276号公報) 。【0003】一方、この環状イソマルトオリゴ糖の精製法として、粗環状イソマルトオリゴ糖に不純物として混入している直鎖イソマルトオリゴ糖をグルコデキストラナーゼを用いて特異的に除去する方法が開発されており、これらの方法と該酵素遺伝子並びに該酵素の製造法に関して特許出願がなされている(特願平8−230128号公報)。しかし、該環状イソマルトオリゴ糖の分離精製時には、直鎖イソマルトオリゴ糖以外に僅かではあるが分岐オリゴ糖や分岐環状オリゴ糖も混入しているためこれらのオリゴ糖の除去が重要な問題となっている。これらのオリゴ糖は、上記グルコデキストラナーゼでは殆ど水解されない難分解性のオリゴ糖であり、このオリゴ糖の分岐鎖を特異的に水解できれば、該環状オリゴ糖の精製がさらに簡略化され且つ環状イソマルトオリゴ糖の純度の向上が可能となる。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、環状オリゴ糖には作用せずに分岐オリゴ糖の分岐鎖を特異的に水解する作用を有する新規な酵素を見出し、該酵素の製法及び該酵素を用いて、環状イソマルトオリゴ糖の精製をさらに簡略化しそして前記環状イソマルトオリゴ糖の純度を向上させることにある。【0005】【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、上記の環状オリゴ糖には作用せずに分岐オリゴ糖の分岐鎖を特異的に水解する作用を有する新規な酵素を得るために、鋭意検討した結果、α−1,3−多分岐デキストランの資化菌であるスフィンゴバクテリウム・エスピー.(Sphingobacterium sp.)V−54株の培養液中に上記性質を有する酵素が存在していることを見出し、該酵素を培養液より分離精製し、その性質を明らかにするとともに、本酵素を用いると分岐環状オリゴ糖の分岐鎖が効率的に水解されることを確認し、本発明を完成した。【0006】すなわち、本発明は、以下の理化学的性質を有するα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素であり、▲1▼作用α−1,3−結合の分岐を有する多分岐デキストランに作用し、グルコースを生成する。▲2▼至適pH及び安定pH範囲至適pHは、7.0付近であり、安定pH範囲は、5.5〜8.0である。【0007】▲3▼基質特異性グルコ2糖を基質とした場合には、α−1,2>α−1,4>α−1,3>α−1,6 結合の順に良く作用する。多糖の場合には、デキストランに最も良く作用し、次いでα−1,3−多分岐デキストランに良く作用するが、α−1,3−グルカンであるムタンには殆ど作用しない。【0008】▲4▼阻害及び活性化Hg2+、Cu2+、Ni2+及びFe2+等で90%以上阻害され、Ca2+で約30%活性化される。▲5▼分子量ゲル濾過法では約9万であり、SDS PAGE法では約8万である。【0009】▲6▼作用適温の範囲45℃付近に適温を有する。▲7▼温度等による失活の条件45℃、15分間の処理で約30%、50℃、15分間の処理でほぼ失活する。【0010】更に、本発明はスフィンゴバクテリウム属に属し、α−1,3−多分岐デキストラン水解酵素生産能を有する微生物を、デキストランを含有する培地で培養し、培養物より該酵素を採取することを特徴とするα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素の製造法である。【0011】更に、本発明は、分岐環状イソマルトオリゴ糖に、α−1,3−多分岐デキストラン水解酵素を作用させて環状イソマルトオリゴ糖を製造することを特徴とする環状イソマルトオリゴ糖の製造法である。【0012】なお、該環状イソマルトオリゴ糖の製造で使用するα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素は、精製された該酵素、粗酵素の他、該酵素を産生するスフィンゴバクテリウム属に属する微生物の培養液、菌体或いは菌体処理物のいずれでもよい。【0013】【発明の実施の形態】先ず、以下に、本酵素の理化学的性質について述べる。▲1▼作用α−1,3−結合の分岐を有する多分岐デキストランに作用し、グルコースを生成する。▲2▼至適pH及び安定pH範囲至適pHは、7.0付近であり、安定pH範囲は、5.5〜8.0である。【0014】▲3▼基質特異性グルコ2糖を基質とした場合には、α−1,2>α−1,4>α−1,3>α−1,6 結合の順に良く作用する。多糖の場合には、デキストランに最も良く作用し、次いでα−1,3−多分岐デキストランに良く作用するが、α−1,3−グルカンであるムタンには殆ど作用しない。【0015】▲4▼阻害及び活性化Hg2+、Cu2+、Ni2+及びFe2+等で90%以上阻害され、Ca2+で約30%活性化される。▲5▼分子量ゲル濾過法では約9万であり、SDS PAGE法では約8万である。【0016】▲6▼作用適温の範囲45℃付近に適温を有する。▲7▼温度等による失活の条件45℃、15分間の処理で約30%、50℃、15分間の処理でほぼ失活する。【0017】以上詳述した如く、本酵素は、公知の多糖水解酵素であるαーアミラーゼ(EC 3.2.1.1)、グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)、デキストラナーゼ(EC 3.2.1.11)、グルコデキストラナーゼ(EC 3.2.1.70)、エンドα−1,3−グルカナーゼ(ムタナーゼ)(EC 3.2.1.59)とはその性質を異にし、これらの酵素が殆ど作用できないα−1,3−多分岐デキストランから著量のグルコースを生成する点で全く新しい酵素である。【0018】このα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素を、分岐環状イソマルトオリゴ糖、例えば、グルコースが1分子α−1,3−結合で分岐した環状イソマルトオリゴ糖、3−O−α−D−グルコシルサイクロイソマルトヘプタオース、3−O−α−D−グルコシルサイクロイソマルトオクタオース、3−O−α−D−グルコシルサイクロイソマルトノナオース等に、例えば、温度10〜50℃、好ましくは、40℃、pH5.5〜8.5、好ましくは、pH7.0で30分間〜48時間、好ましくは、24時間そのまま若しくは撹拌しつつ作用させて、前記分岐環状イソマルトオリゴ糖から環状イソマルトオリゴ糖、例えば、サイクロイソマルトヘプタオース、サイクロイソマルトオクタオース、サイクロイソマルトノナオース等を製造することができる。【0019】環状イソマルトオリゴ糖製造時にこのα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素を用いることにより、環状イソマルトオリゴ糖以外に混入している難分解性の分岐オリゴ糖や分岐環状イソマルトオリゴ糖、特に分岐環状イソマルトオリゴ糖の分岐鎖を特異的に水解でき、該環状イソマルトオリゴ糖の精製が更に簡略化でき且つその純度の向上が可能である。【0020】生成する環状イソマルトオリゴ糖は、サイクロデキストリンと同様、包接作用を有しており、サイクロデキストリンでは包接できなかったような大きさの物質の安定化、可溶化等に有用である。更に、環状イソマルトオリゴ糖はグルコース残基間の結合がα−1,6−結合で構成されており、生体内中に多量に存在するα−アミラーゼ等の糖質分解酵素による水解作用を受けにくい。したがって、この環状イソマルトオリゴ糖はサイクロデキストリンよりもはるかに安定であり、該環状オリゴ糖を用いた場合、従来のサイクロデキストリンに比べて、より安定性の高い包接化合物を形成することができるので、該環状オリゴ糖は、きわめて有用性の高い物質であると言える。【0021】次に、このα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素の製造法について述べる。この酵素の製造法において使用される微生物としては、例えば本発明者らが土壌中から取得した野性株のV−54菌株が挙げられる。以下に、このV−54菌株の菌学的性質を示す。【0022】【0023】【0024】【0025】スフィンゴバクテリウム・エスピー.V−54菌株は、上記の諸性質さらに、菌体内の脂質としてスフィンゴリピドを持つこと、主要なキノンがグラム陰性菌にもかかわらずメナキノンであることよりスフィンゴバクテリウム属に属する細菌であると同定した。更に、種の同定のために、バージェイズ・マニュアル・オブ・システィマティック・バクテリオロジーに基づき、種々検討したが、種の確定までには至らなかったため、スフィンゴバクテリウム属に属する1菌株として分類同定した。【0026】なお、スフィンゴバクテリウム・エスピー.V−54は、平成9年2月18日、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−16086として寄託されている。この酵素の製造法において使用される微生物としては、上記菌株のほかスフィンゴバクテリウム(Sphingobacterium)属に属し、α−1,3−の多分岐デキストランから著量のグルコースを生成するものであれば、如何なるものでもよい。【0027】本発明方法における菌株の培養は、原則的には一般微生物の好気的培養で採用される方法と同じであるが、通常は、液体培地による振盪培養法または通気撹拌培養法等が用いられる。【0028】培地としては、適当な窒素源(例えば、ペプトン、ポリペプトン、バクトトリプトン等のカゼイン分解物あるいはソイトン等の大豆蛋白質分解物等)、炭素源(例えばグルコース、グリセリン等の糖質類)、そして必要により、酵母エキス、リボフラビン等のビタミン類及びリン酸塩、マグネシウム塩、塩化ナトリウム、微量金属等のミネラル類、そして本酵素の誘導基質となるデキストラン等を含有したものが用いられる。pHは、本菌が成育するpH域ならばいずれでもよく、通常は、6〜8の範囲が好ましい。【0029】培養条件は、例えば、通常20〜40℃で、16時間〜4日間振盪培養または通気撹拌培養を行なう。以上の如くして得た培養物を用いて例えば、以下に示す酵素精製工程により該多分岐デキストラン水解酵素を得る。【0030】上記培養物から該酵素を得るには、遠心分離、膜濃縮等により集菌した菌体を更に超音波処理あるいは界面活性剤処理して溶菌し、遠心分離して細胞残渣を除去する。さらに、必要により、通常用いられる酵素の精製法により上記粗酵素液から精製標品を得る。【0031】本酵素の精製法は、通常の酵素分離方法であれば如何なる方法でもよいが、本製造法の場合、菌体を超音波処理あるいは界面活性剤処理して溶菌し、遠心分離して細胞残渣を除去した上清液を実施例に示した精製方法に従って処理することにより、高純度の多分岐デキストラン水解酵素標品を得ることが出来る。尚、本製造法は、これらの精製法に限定されるものではない。さらに、本酵素を環状イソマルトオリゴ糖生成反応液に作用させ、反応液中に存在する、分岐オリゴ糖特に分岐環状オリゴ糖をグルコースと環状イソマルトオリゴ糖に水解した後に環状オリゴ糖を分離精製する。尚、本製造法の場合、精製酵素を用いずに、先に述べた細胞残渣を除去した上清液を用いても精製酵素と同等の効率で分岐環状イソマルトオリゴ糖を水解することができる。反応液より該オリゴ糖を分離精製する手段としては、オリゴ糖精製法であれば如何なる方法でもよい。例えば、冷却処理、有機溶媒添加処理、活性炭処理、あるいは特異的に環状オリゴ糖を吸着するカラムクロマトグラフィー、活性炭カラムクロマトグラフィー等の公知方法を単独もしくは適宜組合わせて分離精製することができる。【0032】【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。【0033】〔実施例1〕1%デキストラン40(名糖産業社製)、1%ペプトン(極東製薬工業社製)、0.5% NaCl及び0.1%イーストエキス(ディフコ社製)からなる液体培地(水道水使用、pH 7.0)100mlを500ml容坂口フラスコに入れ、120℃で20分間、殺菌処理を行なった。これに、スフィンゴバクテリウム・エスピー.V−54菌株(FERM P− 16086)保存スラントより1白金耳接種し、30℃で1日間振盪培養した。本培養液を10mlずつ上記と同様の培地組成と殺滅菌条件により調製した2Lの培地を含有する3L容ミニジャーファーメンター8基に接種し、30℃、0.5vvm、300rpmの条件で3日間通気撹拌培養を行ない、培養終了後、培養液16Lを遠心分離処理により集菌し、得られた約600mlの菌体懸濁液を200mlずつ超音波処理により破砕し、遠心分離して細胞残渣を除去した。得られた上清液約600mlを粗酵素液として用いて、多分岐デキストラン水解酵素の精製を行なった。【0034】先ず、本酵素液に対して、終濃度1.0Mになるように硫安を加え、遠心分離により不溶物を除去した。上澄液を以下の操作による分取用HPLCで精製した。上澄液を100mlずつ1.0M硫安含有の100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したTSKgel Phenyl5PWカラムにアプライし、同緩衝液で洗浄後、1.0〜0Mの硫安濃度勾配により吸着蛋白質を溶出した。6回の操作により集めた活性画分約500mlを限外濾過で約20mlに濃縮した後、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)約500mlを加えて塩濃度を稀釈した。再度同希釈液を、限外濾過で約100mlに濃縮した。濃縮液を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したTSKgel DEAE5PWカラムにアプライし、同緩衝液で非吸着蛋白質を洗浄した。本条件で、該酵素は全て非吸着画分に溶出していたので、非吸着画分約200mlを約20mlにまで濃縮後、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)を180ml加えることにより、pHを7.0から7.5に変更した。【0035】本酵素液を再度、約100mlにまで限外濃縮した後、濃縮液を10mMリン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したTSKgel DEAE5PWカラムに再度アプライした。同緩衝液で非吸着蛋白質を洗浄した後、0〜0.5MのNaCl濃度勾配により吸着蛋白質を溶出した。【0036】活性は吸着溶出画分に認められたので、活性画分40mlを集め、更に本酵素液を1.5mlまで限外濃縮した。200mM NaCl含有の100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したTSKgel G3000SWカラムに、0.3mlずつ酵素溶液をアプライし、同緩衝液により溶出した。本操作を残り1.2mlについて同様に行なった(0.3mlずつ4回)。得られた活性画分を集めてSDS PAGEに供したところ、シングルバンドを示したことから、他の夾雑蛋白質は除去されたと判断し精製を終了した。本精製酵素をα−1,3−多分岐デキストランとインキュベーションしたところ、多分岐デキストランから著量のグルコースの生成が確認された。【0037】〔実施例2〕バチルス・エスピー(Bacillus sp.)T−3040株(FERM BP−4132)の培養液300Lをマイクローザを用いた膜処理により除菌し、得られた除菌液を更に分子量6000カットのフォロファイバーにより6.3Lにまで濃縮した後、濃縮液を900mlずつ−20℃に凍結保存した。濃縮液の一部を、デキストラン(名糖産業社製)100gを10mMリン酸緩衝液(pH6.5)10Lに溶解した水溶液と混合し、40℃で48時間インキュベーションを行なった。活性炭を加えて煮沸することにより反応を停止させ、かつ未反応のデキストランを吸着させた。活性炭を除去した上清液を脱イオン水で平衡化した活性炭カラムにアプライし、脱イオン水で洗浄後、エタノール濃度勾配により吸着したオリゴ糖を溶出した。環状オリゴ糖画分を集め、濃縮した後、脱イオン水で平衡化したODSカラムにアプライした。脱イオン水で洗浄後、エタノール濃度勾配によりオリゴ糖を溶出し、各環状イソマルトオリゴ糖画分を集め、凍結乾燥した。サイクロイソマルトノナオースの画分に、分岐環状イソマルトオリゴ糖が約5%程度混入していた。【0038】〔実施例3〕実施例2で得られた分岐環状オリゴ糖の混入したサイクロイソマルトノナオース標品の4%水溶液を調製し、この水溶液0.5mlを、実施例1の菌体の超音波処理破砕液より調製した粗酵素液0.1ml、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.4mlと混和し、40℃で24時間インキュベーションを行なった。本処理により、通常のエキソ型酵素であるグルコアミラーゼ、グルコデキストラナーゼでは殆ど水解できなかった分岐環状オリゴ糖をグルコースと環状オリゴ糖に水解できた。【0039】【発明の効果】本発明により、新規なα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素、その製造法及び環状イソマルトオリゴ糖の製造法を提供した。本酵素は、環状イソマルトオリゴ糖の分離精製時に混入している既存のエキソ型グルコアミラーゼ、グルコデキストラナーゼ等では殆ど水解されない分岐環状イソマルトオリゴ糖の分岐鎖を特異的に水解でき、該環状オリゴ糖の精製を更に簡略化でき且つ環状イソマルトオリゴ糖の純度の向上に寄与することができた。従って、本発明は、産業上極めて有意義である。 以下の理化学的性質を有するα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素。(1)作用α−1,3−結合の分岐を有する多分岐デキストランに作用し、グルコースを生成する。(2)至適pH及び安定pH範囲至適pHは、7.0であり、安定pH範囲は、5.5〜8.0である。(3)基質特異性グルコ2糖を基質とした場合には、α−1,2>α−1,4>α−1,3>α−1,6 結合の順に良く作用する。多糖の場合には、デキストランに最も良く作用し、次いでα−1,3−多分岐デキストランに良く作用するが、α−1,3−グルカンであるムタンには殆ど作用しない。(4)阻害及び活性化Hg2+、Cu2+、Ni2+及びFe2+で90%以上阻害され、Ca2+で30%活性化される。(5)分子量ゲル濾過法では9万であり、SDS PAGE法では8万である。(6)作用適温の範囲45℃に適温を有する。(7)温度による失活の条件45℃、15分間の処理で30%、50℃、15分間の処理でほぼ失活する。 スフィンゴバクテリウム属に属し、請求項1に記載のα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素生産能を有する微生物を、デキストランを含有する培地で培養し、培養物より該酵素を採取することを特徴とする請求項1に記載のα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素の製造法。 分岐環状イソマルトオリゴ糖に、請求項1に記載のα−1,3−多分岐デキストラン水解酵素を作用させて環状イソマルトオリゴ糖を製造することを特徴とする環状イソマルトオリゴ糖の製造法。