タイトル: | 特許公報(B2)_酸化剤として有用な新規化成二酸化マンガンの製造方法及び該化成二酸化マンガンを用いた基質の酸化方法 |
出願番号: | 1997020730 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C01G 45/02,A01N 43/90,C07D 493/22 |
小島 俊氏 藤田 和明 JP 4101898 特許公報(B2) 20080328 1997020730 19970203 酸化剤として有用な新規化成二酸化マンガンの製造方法及び該化成二酸化マンガンを用いた基質の酸化方法 ノバルティスアニマルヘルス株式会社 507166852 津国 肇 100078662 齋藤 房幸 100116919 中田 ▲やす▼雄 100092716 小島 俊氏 藤田 和明 JP 1996017313 19960202 20080618 C01G 45/02 20060101AFI20080529BHJP A01N 43/90 20060101ALN20080529BHJP C07D 493/22 20060101ALN20080529BHJP JPC01G45/02A01N43/90 101C07D493/22 C01G25/00-47/00,49/10-57/00 B01J8/00-8/46 C07D493/00-497/22 特開平02−145431(JP,A) 特開昭60−221324(JP,A) 特開昭59−156482(JP,A) 特開平07−289906(JP,A) 特開平01−197487(JP,A) 特開昭61−014137(JP,A) 特許第089500(JP,C2) 特開平03−061493(JP,A) 特開平07−075731(JP,A) 9 1997268015 19971014 8 20040123 壺内 信吾 【0001】【発明の属する技術分野】本願発明は、化成二酸化マンガン(以下、CMDと略称する)、その製法及び該CMDを酸化剤として用いる酸化方法に関する。【0002】【従来の技術】最近、乾電池用の二酸化マンガンが酸化剤としても優れた性能を有することが注目され、その用途としても広く使用されている。それらは、電解二酸化マンガン(Electrolic Manganese Dioxide、以下、EMDと略称する)と化成二酸化マンガン(CMD)とに大別される。【0003】EMDは天然の炭酸マンガン鉱石又は天然の二酸化マンガン鉱石を800〜1100℃で焙焼して得られた酸化マンガン(MnO)微粉末を希硫酸に溶解して得た硫酸マンガン溶液を電気分解することにより得られる。現在日本で生産されたEMDのほとんどが乾電池用として用いられ、330メッシュに分画した粒度の小さな製品が市販されている。EMDの結晶は単結晶であり、結晶構造が扁平なγ−タイプであることが特徴である。【0004】CMD(Chemical Manganese Dioxide)は、化学的に合成された二酸化マンガンである。天然の二酸化マンガンを400乃至800℃で低温焙焼して得られた三二酸化マンガン(Mn2 O3 )を400メッシュに微粉砕後、反応容器内で希硫酸水溶液と混合攪拌すると、三二酸化マンガン中の酸化マンガンは硫酸水溶液に溶解して除かれるので二酸化マンガンが不溶解結晶として得られる。この結晶を分画することなく水洗、乾燥することによって得られる。【0005】この硫酸による酸化マンガン(MnO)の溶解=浸出は不均化反応と呼ばれることから、CMDの製造法は不均化法という名称もつけられている。【0006】現在日本で生産されたCMDは殆どが400メッシュに分画され乾電池用として市販されいる。【0007】上述したように、EMD及びCMDは乾電池用のみに用途及び製造が限られているため、他の有用な用途又は製造法の開発が要望されている。【0008】本願発明は、新規なCMD、その製法及び該CMDを酸化剤として用いる酸化方法の開発に関する。【0009】本発明のCMDは種々の工業的な酸化反応に使用され得るが、例えば、ミルベマイシン類の5位の水酸基の酸化反応が挙げられる。【0010】乾電池用のEMDがミルベマイシンの5位の水酸基を酸化して中間体として重要な5−オキソミルベマイシンを得る方法において、酸化剤として優れた活性を有することが特開平1−197487号公報に開示されている。【0011】また、CMDが、いくつかの天然物の合成の際のアリルアルコール等の酸化反応に乾電池用CMDを使用している[テトラヘドロンレターズ 第33巻、4187−4190頁(1992年)。テトラへドロン 第48巻、No.357251−7264頁(1992年)]。【0012】これらの乾電池用の二酸化マンガンによる酸化は、少量の粒度の小さな二酸化マンガンと基質を溶解した溶媒をコルベン等の反応容器中で撹拌することよって行われている。しかし、この方法では、少し反応容器の規模が大きくしたり、工業的な反応釜を使用したりすると、攪拌に伴う攪拌羽根の破損、反応物の取出しや濾過の際の処理の困難等の問題が生じ、別の反応方法の開発が望まれていた。そこで、乾電池用の二酸化マンガンをカラムに詰め、基質を溶解した溶媒を循環する方法が上記問題を解決する方法として考えられたが、カラムに詰める二酸化マンガンの乾電池用のように粒度が小さいと溶媒が良好に循環しないという問題があり、これらの問題を解決する方法が望まれていた。【0013】【発明が解決しようとする課題】上述の状況から、本願発明が解決しようとする課題は、カラムに詰めるための適当な粒度を持ち、強力な酸化作用を有する二酸化マンガン及びその製造法を見いだすことである。【0014】【課題を解決する手段】課題を解決するために種々に二酸化マンガンについて研究した結果、本願発明者等は新規に70乃至36メッシュ又は36乃至16メッシに分画した粒度の大きなCMDがカラムに詰める二酸化マンガンとして適当であり、かつ強力な酸化作用を有することを見いだし、また、それらの製造法を確立し本発明を完成した。【0015】即ち、本願発明は、新規な粒度を有し、かつ強力な酸化作用を有する新規なCMDに及び乾電池用CMD製造法を改良した該CMDの製造法に関する。【0016】以下に詳細に説明する。【0017】ここで、上記の400メッシュに分画された乾電池用のCMDはCMD1 と称する。【0018】本願発明の70乃至36メッシュ又は36乃至16メッシュに分画された大粒の二酸化マンガンのうち、36乃至16メッシュのCMDは天然の二酸化マンガンを上記と同温度で低温焙焼して得られた三二酸化マンガン(Mn2 O3 )を32乃至10メッシュに分画してカラムに充填し、希硫酸水溶液をカラムの上部又は下部から循環すると、酸化マンガンが溶解して除かれ、二酸化マンガンのみが残存する。水洗、乾燥後36乃至16メッシュに分画することによって得られる。70乃至36メッシュに分画されたCMDは62乃至32メッシュに分画された三二酸化マンガンを上記と同条件で処理して得られる。このようにして得られたCMDをCMD2 と称する。【0019】CMD1 とCMD2 の差異は、CMD2 にあっては最終粒度が70乃至36メッシュ又は36乃至16メッシュになるよう、焙焼工程直後に分画操作を挿入し、しかも不均化反応以降の最終段階で再び分画操作を挿入していることである。また、反応容器がCMD1 の場合は回分式機械攪拌式であり、CMD2 はカラム方式であることである。【0020】カラムに適当な粒度の二酸化マンガンを充填し、基質を溶解した溶媒を循環することによる酸化反応において、基質として一般式(I)で表されるマクロライド抗生物質ミルベマイシン類を出発物質とする5−オキソミルベマイシン誘導体を製造する酸化反応を例として用い、二酸化マンガンの好適な粒度の選択及び酸化作用の評価を行った。【0021】【化1】【0022】上記式において、RがメチルのときミルベマイシンA3 、Rがエチル基のときミルベマイシンA4 、イソプロピルのときミルベマイシンDと称される重要なミルベマイシン類である。【0023】【発明の実施の形態】本願発明の実施方法は、70乃至36メッシュ、36乃至16メッシュに分画したCMDを詰めたカラムに基質を溶解した溶媒を循環させることにより実施される。基質として使用されるミルベマイシン類は、精製したミルベマイシン類の単一物又は混合物が用いられる。例えば、特開平1−197487号公報に開示された方法で精製して得られたミルベマイシンA3 +A4 混合物又は醗酵ブロスから抽出した粗ミルベマイシンA3 +A4 混合物を再結晶やシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したミルベマイシンA3 +A4 混合物が用いられる。【0024】反応温度は、一般に−10乃至50℃の範囲で行われるが、好適には、0乃至10℃であり、特に好適には0乃至5℃である。【0025】溶媒は、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル類;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;酢酸エチルのようなエステル類が用いられ、好適には、ハロゲン化炭化水素であり、更に好適には、塩化メチレンである。【0026】二酸化マンガンの使用量は、基質の2乃至20倍重量であり得、好適には、5乃至10倍重量である。【0027】二酸化マンガンの粒度は、70乃至36メッシュ、36乃至16メッシュであり、好適には、36乃至16メッシュである。【0028】【実施例】【0029】【実施例1】36乃至16メッシュに分画したCMD2 の製造内径(φ)30cm×高さ160cmのカラム反応槽に32乃至10メッシュに分画した三二酸化マンガン(Mn2 O3 )65kg及び水110kgを入れ、別途、水90kgを入れた貯水槽より水をカラム反応槽の下部より供給しながら循環させる。カラム反応槽を80乃至90℃に加温し30分循環後、80乃至90℃加温下に硫酸を加え2規定硫酸水溶液に調整し、3時間循環後、更に硫酸を加え4規定硫酸水溶液に調整後3時間循環し、反応を終了する。生成した硫酸マンガン水溶液を除去後、水洗し、水洗液を除去する。次いでアンモニア水を循環させ、pH=5〜6に中和後、アンモニア水を除去する。残留二酸化マンガン(CMD2 )をカラム反応槽より取り出し乾燥すると31kgの36−16メッシュに分画したCMD2 が得られる。【0030】【実施例2】70乃至36メッシュに分画したCMD2 の製造実施例1と同一反応条件下で反応を行い、62乃至32ッシュに分画した三二酸化マンガン(Mn2 O3 )65kgから31kgの70乃至36メッシュに分画したCMD2 が得られる。【0031】【実施例3】カラムに詰める二酸化マンガン粒度の決定カラムに詰める二酸化マンガン粒度の決定は、一定粒度の二酸化マンガンを積めたカラムに基質を溶解すべき溶媒を通過させて得られる、以下の1)及び2)を求め、それらの数値より決定した。【0032】1)U;カラム内の溶媒の平均流速。1秒間当たりのカラム内の流量をカラムの断面積で除した値。2)1時間当たりカラムを通過する溶媒の容積が二酸化マンガンの容積量の10倍であることを目安としている。そのとき必要な二酸化マンガンの圧力損失(そのときのカラムにかかる圧力)。△p(SV=10)数値が小さい程好適である。【0033】その結果を表1に示す。【0034】粒度の小さな400又は330メッシュのCMD又はEMDでは△p(SV=10)が大きな圧力(6.3及び7.9)かかっていることが判る。従って、反応に用いるには不適であると判断した。また、70乃至36又は36乃至20メッシュのCMDでは△p(SV=10)が小さな圧力(約0.6又は0.1)しかかかっていないことが判る。【0035】【表1】【0036】【実施例4】[最適な5−オキソミルベマイシンの製造に置ける二酸化マンガンの粒度の選択]内径2cmφ、長さ25cmのカラムに50gの二酸化マンガンを詰め、ミルベマイシンA3 及びミルベマイシンA4 混合物(含量比=2:8)10gを塩化メチレン100mlに溶解し分液ロートに入れる。該分液ロートをカラムに接続し、溶液を一定速度でカラムを通過させ、酸化反応を行った。収率は、反応液の経時的なサンプリングを行い高速液体クロマトグラフィーにより求めた。標品は特開昭63−22541号公報に開示されたものを使用した。収率がそれ以上に上昇しない時点を反応の終点とし、終点における収率及び途中の反応収率も求め表2に表した。 反応開始より反応の終点までの時間が短いほど酸化力(酸化活性)が強く、時間が長いほど弱いことを示す。反応開始より反応の終点までの時間の長短により酸化力を評価した。この結果より、【0037】【表2】【0038】結果:400メッシュに分画されたCMD及びEMDは溶媒が通過しにくいため、反応が進まず有意な収率が得られなかった。また、70乃至36マッシュ、又は36乃至16メッシュに分画されたCMDはEMDに比較して優れた酸化作用を有することが判明した。【0039】【実施例5】5−オキソミルベマイシンの製造36乃至20メッシュに調製したCMD2 、30kgを内径22cm高さ150cmのカラム反応槽に詰め、ミルベマイシンA3 及びミルベマイシンA4 混合物(含量比=2:8)6kgを塩化メチレン65kgに溶解した溶液を、0〜10℃に冷却下に、上部より注入し循環させた。経時的収率を液体クロマトグラフィーにより求め、99.7%を示した時点(4.5時間後)で反応を止めると、5−オキソミルベマイシン誘導体5.65kg(収率94%)が得られた。【0040】【発明の効果】カラムに酸化剤として二酸化マンガンを充填し、基質を溶解した溶媒を循環することによる酸化反応において、本願発明の新規な方法で製造した70乃至36メッシュ又は36乃至16メッシュに分画したCMDは優れた酸化作用を示し、カラム充填用として適当であり、工業的規模で使用可能であることを確認した。 天然の二酸化マンガン(MnO2)鉱石を400℃乃至800℃の範囲で、焙焼した後、62乃至10メッシュの任意の粒度に分画した三二酸化マンガン(Mn2O3)をカラムに充填し、希硫酸水溶液をカラムの上部又は下部から循環することによって酸化マンガン(MnO)を溶解して除いた後、生成した残存二酸化マンガンを70乃至16メッシュの任意の粒度に分画することを特徴とする、6kg以上の基質を溶媒に溶解した溶液を循環させることによる、工業的規模の基質の酸化反応に酸化剤として用いられる化成二酸化マンガンの製造方法。 天然の二酸化マンガン(MnO2)鉱石を焙焼した後、62乃至32メッシュの粒度に分画した三二酸化マンガン(Mn2O3)をカラムに充填し、希硫酸水溶液によって酸化マンガン(MnO)を溶解して除いた後、生成した残存二酸化マンガンを70乃至36メッシュの粒度に分画する、請求項1記載の化成二酸化マンガンの製造方法。 天然の二酸化マンガン(MnO2)鉱石を焙焼した後、32乃至10メッシュ粒度に分画した三二酸化マンガン(Mn2O3)をカラムに充填し、希硫酸水溶液によって酸化マンガン(MnO)を溶解して除いた後、生成した残存二酸化マンガンの粒度を36乃至16メッシュの粒度に分画する、請求項1記載の化成二酸化マンガンの製造方法。 請求項1記載の化成二酸化マンガンをカラムに充填することを特徴とする、6kg以上の基質を溶媒に溶解した溶液を循環させることによる、工業的規模の基質の酸化方法。 化成二酸化マンガンが70乃至36メッシュの粒度に分画された化成二酸化マンガンである、請求項4記載の酸化方法。 化成二酸化マンガンが36乃至16メッシュの粒度に分画された化成二酸化マンガンである、請求項4記載の酸化方法。 基質がミルベマイシン類である、請求項4乃至6のいずれか一項記載の酸化方法。 ミルベマイシン類がミルベマイシンA3及びA4混合物である、請求項7記載の酸化方法。 請求項7又は8記載の酸化方法を製造工程に含むことを特徴とする、5−オキソミルベマイシン誘導体の製造方法。