タイトル: | 特許公報(B2)_ジシクロペンタジエンの異性化方法 |
出願番号: | 1997018443 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 5/25,C07C 13/61,B01J 21/12,C07B 61/00 |
大森 秀樹 及川 知 JP 3929536 特許公報(B2) 20070316 1997018443 19970131 ジシクロペンタジエンの異性化方法 丸善石油化学株式会社 000157603 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 的場 ひろみ 100101317 大森 秀樹 及川 知 20070613 C07C 5/25 20060101AFI20070524BHJP C07C 13/61 20060101ALI20070524BHJP B01J 21/12 20060101ALI20070524BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070524BHJP JPC07C5/25C07C13/61B01J21/12 XC07B61/00 300 C07C 5/22〜5/25 C07C 13/61 C07B 61/00 特公平04−043890(JP,B2) 特開平03−169828(JP,A) 特開平05−097719(JP,A) 特開昭60−019739(JP,A) 特開平04−193838(JP,A) 3 1998212250 19980811 8 20030811 穴吹 智子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、エンド体を含有するジシクロペンタジエン中のエンド体の一部をエキソ体に異性化する方法に関し、これにより、ジシクロペンタジエンの凝固点を低下させる方法に関する。【0002】【従来の技術】ジシクロペンタジエンは、農薬、医薬、合成樹脂などの製造原料として広く使用される有用な物質であり、工業的には一般に、ナフサの熱分解生成物中のいわゆるC5 留分中に多量に含まれるシクロペンタジエンを2量化することにより製造されている。また、このジシクロペンタジエンは、例えば、これにアクリレートを付加させる光学レンズ用モノマーとして用いる場合は97%以上の純度が、あるいはメタセシス重合触媒を用いる架橋重合用の原料モノマーとしては99%以上の純度が要求されるため、このような高純度品も市場に供給されている。【0003】ジシクロペンタジエンは、一般に、凝固点の高いエンド体(凝固点33.6℃)と凝固点の低いエキソ体からなる立体異性体の混合物であるが、上記のように工業的に製造されるものはエンド体がその95〜99%を占めているため、高純度品は常温において固体である。このような固体のジシクロペンタジエンを工業的に移送あるいは貯蔵することは極めて煩雑であり、加熱によって液化して取り扱うことが通例となっている。しかし、そのためには移送パイプ、貯蔵設備等に保温処理が必要であるため、温度維持に多大な経費がかかり不経済である。加えて、ジシクロペンタジエンは反応性に富む化合物であるため、不活性ガスを用いるシーリング等によって酸素との接触による劣化を防止しているが、高温溶融状態におけるシーリングは低温時と比較してより厳密に行わなければならず、非常に手間がかかるという問題があった。【0004】このため、高純度のジシクロペンタジエンを、常温で取り扱いの容易な液体にするための方法が提案されている。例えば、ジシクロペンタジエンに、5−アルキリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、または5−アルケニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを添加する方法(特開昭63−3017号公報、特開昭63−12612号公報)が知られている。しかし、この方法は、ジシクロペンタジエンをメタセシス重合触媒を用いる架橋重合用の原料モノマーとして用いる場合には有効な方法であるが、それ以外の用途では添加物が不純物となり、ジシクロペンタジエンの純度を低下させてしまうという欠点があった。【0005】一方、ジシクロペンタジエンのエンド体の一部をエキソ体に異性化することにより、ジシクロペンタジエンそのものの純度を落とすことなく、凝固点降下の作用を利用して凝固点のみを常温で液体となる程度に低下させる方法が検討され、例えば、エンド体を含有するジシクロペンタジエンを、活性白土、酸性白土、ホージャサイト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、オフレタイト/エリオナイト、モルデナイト、フェリエライト、シリカアルミナおよび強酸性イオン交換樹脂の中から選択された1種以上の触媒と接触させ、当該エンド体の少なくとも一部を異性化してジシクロペンタジエンの凝固点を低下する方法(特公平4−43890号公報)が提案されている。【0006】この方法によれば、比較的安価な工業用触媒が利用でき、反応操作、触媒の分離は容易であり、比較的穏和な条件下で反応を行うため副生物が少なく、ジシクロペンタジエンの回収率も高いといった利点がある。また、この方法で製造されたエキソ体リッチな高純度ジシクロペンタジエンは、メタセシス重合触媒を用いる架橋重合樹脂のモノマーに用いることも可能で、通常のエキソ体をほとんど含まない高純度ジシクロペンタジエンを用いた場合と比較しても遜色ない反応結果を与えている。しかしながら、この方法の工業的利用を考えた場合、使用する触媒の劣化が早いため触媒コストおよび廃触媒の処理に係るコストの負担が大きいという問題があり、触媒寿命の点においてさらなる改善が求められていた。【0007】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、簡単な操作でしかも触媒寿命が長く、経済的に有利な方法でジシクロペンタジエンのエンド体の一部をエキソ体に異性化して、ジシクロペンタジエンの凝固点を低下する方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の異性化触媒を特定の溶剤の存在下に使用することにより、ジシクロペンタジエンの異性化を効率的に行い、かつ、触媒寿命を格段に改善できることを見出し、本発明を完成した。【0009】すなわち、本発明は、エンド体を含有する原料ジシクロペンタジエンを、炭化水素溶剤の存在下にシリカアルミナ系触媒と接触させ、エンド体の少なくとも一部をエキソ体に異性化することを特徴とするジシクロペンタジエンの異性化方法を提供するものである。【0010】【発明の実施の形態】本発明で用いる原料ジシクロペンタジエンとしては、エンド体を含有するものであればその製造法、組成等を問わず種々のものを使用することができる。中でも、工業的に生産されているエンド体を95〜99%含有し、常温で固体の高純度ジシクロペンタジエンについて本発明を適用すると、エンド体の少なくとも一部がエキソ体に異性化され、常温で液状を呈する異性化物が得られるので特に好ましい。【0011】本発明で用いる炭化水素溶剤としては、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類および脂環式炭化水素類が好ましく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、これらの中でも特に、蒸留精製時の分離の容易さ等から炭素数6又は7のものが好ましい。これらの炭化水素溶剤は単独で用いてもあるいは2種以上を混合して用いてもよい。溶剤の使用量は特に限定されないが、通常は原料ジシクロペンタジエンに対して0.5〜5重量倍、特に0.5〜2重量倍の範囲が好ましい。【0012】本発明で用いられるシリカアルミナ系触媒としては、化学組成でケイ素/アルミニウムの元素比がアルミニウム数%の低アルミナのものから、高アルミナのものまで広い範囲のものが使用できる。その物理構造は特に限定されず、例えば、モルデナイト、ホージャサイト、モンモリロナイト等の特定の結晶構造を有するゼオライト系触媒、あるいは特定の結晶構造を有しない、いわゆる無定形の合成シリカアルミナ触媒等のいずれのものも使用できる。本発明においては、特に無定形の合成シリカアルミナ触媒がより好ましい。また、シリカゲル担体にアルミニウム化合物を含浸担持させた後、焼成してシリカゲル表面上にアルミナを付着させる含浸法等の方法で合成したシリカアルミナを使用することもできる。【0013】本発明において上記のようなシリカアルミナ系触媒をそのまま使用することもできるが、これに酸処理を施すことにより、触媒活性および触媒寿命をさらに向上させることができる。酸処理の方法としては、例えばシリカアルミナ系触媒の固体を0.1〜1M程度の酸の水溶液に浸し、洗浄後乾燥して、400℃以上で焼成して残存する酸の成分を除去する方法が挙げられる。ここで用いられる酸としては、焼成によって除去できるものであれば特に限定されず、例えば硝酸、塩酸、硫酸等の鉱酸、あるいは蟻酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。【0014】異性化反応は連続式、回分式のいずれの方法によっても行うことができる。連続式の場合、固定床流通式が好ましく採用され、この場合、所定比のジシクロペンタジエンと炭化水素溶剤との混合溶液を、所定の温度条件下でシリカアルミナ系触媒を充填した触媒層に通過させればよい。このときの原料供給速度は特に限定されないが、通常は液空間速度(LHSV)で0.1〜3hr-1、特に0.2〜1hr-1程度が好ましい。回分式の場合、反応器に所定量のジシクロペンタジエン、炭化水素溶剤およびシリカアルミナ系触媒を仕込み、所定の温度条件下に攪拌する方法により実施できる。このときの触媒量は特に限定されないが、通常は原料ジシクロペンタジエンに対して、1〜100重量%、特に5〜50重量%の範囲が好ましい。なお、これらの異性化反応はすべて窒素等の不活性ガス雰囲気下に行うのが好ましい。【0015】反応温度は特に限定されないが、低い場合には異性化速度が遅く、また高すぎる場合には重質物が生成してジシクロペンタジエンの収率低下を招くため、通常は10〜160℃、特に40〜120℃の範囲が好ましい。なお、固定床流通式の場合、低い反応温度から、触媒劣化が進むにつれて徐々に高い反応温度へ上昇させ異性体の量を調節する方法が有効である。反応圧力は特に限定されず、加圧下でも実施できるが通常は常圧で十分である。【0016】本発明者等の知見によれば、純度99%の高純度ジシクロペンタジエンにおいて、エキソ体を10%含有すると凝固点は12℃、15%含有すると凝固点は0℃である。従って、エキソ体を10%以上含有すれば、通常の工場における平均的環境温度下において液体を保持できるものと考えられる。上記のようにして本発明を実施すれば、反応生成物中のエキソ体量は通常は10%以上が得られ、反応条件を選択することにより20%以上に調節することも可能である。【0017】本発明の方法により得られたエキソ体リッチなジシクロペンタジエンは、反応終了後、用いた溶剤および少量副生する重質物を減圧蒸留で分離することにより容易に高純度品とすることができ、この精製による原料からの収率も極めて高い。また、本発明の方法では特に触媒寿命の点において従来法に比較し格段に優れた性能が得られるが、使用後に劣化したシリカアルミナ系触媒は、例えば、不活性ガス中で150〜250℃で乾燥し、次いで、空気中、450〜600℃で1〜7時間、好ましくは3〜5時間焼成することにより再生可能であり、繰り返し使用することができる。【0018】【実施例】以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。【0019】(参考例1)所定量のエキソ体を含有するジシクロペンタジエン(純度99%)の凝固点を測定し、エキソ体含有量と凝固点の関係を調べた。結果を図1に示す。図1から、エキソ体含有量と凝固点はほぼ負の比例関係にあり、室温(10℃とする)でジシクロペンタジエンが液体を保持するためにはエキソ体含有量は約11重量%以上であればよいことがわかる。【0020】(参考例2)合成シリカアルミナ成型触媒(日揮化学(株)製、アルミナ含有量25%)の20gを、0.1M硝酸水溶液100mlに1時間浸し、上澄み液を除去した後、水でpHが5以上になるまで十分に洗浄した。その後、120℃で乾燥し、窒素雰囲気中、450℃で2時間焼成した。得られた酸処理触媒は、乾燥窒素雰囲気中で保存した。【0021】(比較例1)参考例2で使用したものと同じ合成シリカアルミナ成型触媒の20mlを触媒床に充填した固定床流通式反応装置を使用し、40℃に加温して溶融したジシクロペンタジエン(純度99%、エンド/エキソ異性体比=99.5/0.5)を流通し、異性化反応を行った。原料供給速度(LHSV)は0.2hr-1、反応圧力は常圧、反応温度は40〜100℃の範囲でエキソ体比が11重量%以上となる温度に調節し、反応温度100℃においてもエキソ体比が11重量%に満たなくなった時点で反応を終了した。得られた反応液をガスクロマトグラフにより分析し、反応結果の評価を以下のように行った。結果を表1に示す。【0022】【数1】【0023】(実施例1〜3)ジシクロペンタジエンを、ジシクロペンタジエンに対し100重量%のトルエン、n−ヘプタン又はメチルシクロヘキサン(MCH)のそれぞれの溶剤に溶解した溶液を供給液とし、原料供給速度(LHSV)を0.3hr-1とした以外は比較例1と同様にして、異性化反応を行った。反応結果を表1に示す。その結果、炭化水素溶剤を使用した場合は、使用しない場合(比較例1)に比較して、重質物量が減少し、触媒寿命および処理可能量が大幅に向上した。【0024】(実施例4)触媒として参考例2で得た酸処理シリカアルミナ触媒を使用し、原料供給速度(LHSV)を0.5hr-1とした以外は実施例1と同様にして、異性化反応を行った。反応結果を表1に示す。酸処理を施した触媒を使用した場合には、重質物量がさらに少なく、また触媒寿命および処理可能量がさらに向上することが認められた。【0025】【表1】【0026】(実施例5〜10)シリカゲル(富士デヴィゾン(株)製、CARIACT-10)に硝酸アルミニウムの水溶液を含浸させ、乾燥後、空気中450℃で焼成し、アルミナの担持量が5%および13%のシリカアルミナ触媒を調製した。なお、これらの触媒の酸処理は参考例2と同様にして行った。異性化反応は、なす型フラスコにジシクロペンタジエンとトルエンの重量比1/1の混合液、およびジシクロペンタジエンに対して32重量%の触媒を入れ、反応温度40℃、窒素雰囲気下、常圧で4時間攪拌することにより行った。参考例2で得た触媒、および上記含浸法で得た触媒ならびにそれぞれを酸処理した触媒を使用した結果を表2に示す。【0027】【表2】【0028】表2の結果から、本発明の方法によれば回分式の反応形式でも高いエキソ体収率が得られ、また触媒を酸処理することにより、さらに高いエキソ体収率が得られることがわかる。【0029】(実施例11)実施例4で使用して劣化した触媒を、窒素中、200℃で5時間乾燥後、空気中、昇温速度10℃/hで500℃まで昇温して焼成した。この再生触媒を使用して、実施例5と同様の反応条件下に異性化反応を行った結果、エキソ体収率は24重量%、重質物量は7重量%であった。この結果は劣化前の触媒を使用した場合とほぼ同等であり、従って、劣化した触媒であっても上記のような処理を施すことにより再生できることが確認された。【0030】(参考例3)実施例4で得た反応液を30段オルダーショウ型蒸留装置を用いて、塔頂圧15mmHg、還流比(R/D)4の条件で蒸留精製した。その結果、原料ジシクロペンタジエンからの収率95%で、純度99%、エンド/エキソ異性体比=87/13、凝固点4℃の高純度ジシクロペンタジエンが得られた。【0031】【発明の効果】本発明によれば、エンド体を含有する原料ジシクロペンタジエンのエンド体の一部を簡便な方法で効率よくエキソ体に異性化することができるため、通常は常温で固体のジシクロペンタジエンの凝固点を低下させ、取り扱いの容易な液体にすることができる。また、本発明の条件下では触媒寿命が長く、しかも劣化した触媒の再生使用が可能であるため、従来法に比較して触媒コストを大幅に低減できる。【図面の簡単な説明】【図1】参考例1において測定したエキソ体含有量とジシクロペンタジエンの凝固点の関係を示す図である。 エンド体を含有する原料ジシクロペンタジエンを、炭化水素溶剤の存在下にシリカアルミナ系触媒と接触させ、エンド体の少なくとも一部をエキソ体に異性化することを特徴とするジシクロペンタジエンの異性化方法。 シリカアルミナ系触媒が、鉱酸による酸処理を施したものである請求項1記載の異性化方法。 シリカアルミナ系触媒が、無定形の合成シリカアルミナである請求項1または2記載の異性化方法。