タイトル: | 特許公報(B2)_置換芳香族化合物の核水素化方法 |
出願番号: | 1997007468 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07B 35/02,B01J 23/58,C07C 5/10,C07C 13/28,C07C 35/21,C07B 61/00 |
秋山 敬幸 橋本 剛 JP 3955349 特許公報(B2) 20070511 1997007468 19970120 置換芳香族化合物の核水素化方法 大日本インキ化学工業株式会社 000002886 エヌ・イーケムキャット株式会社 000228198 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 高橋 勝利 100088764 秋山 敬幸 橋本 剛 20070808 C07B 35/02 20060101AFI20070723BHJP B01J 23/58 20060101ALI20070723BHJP C07C 5/10 20060101ALI20070723BHJP C07C 13/28 20060101ALI20070723BHJP C07C 35/21 20060101ALI20070723BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070723BHJP JPC07B35/02B01J23/58 ZC07C5/10C07C13/28C07C35/21C07B61/00 300 C07D 303/20 C07B 61/00 C07C 13/28 C07C 43/196 C07C 63/00 CA(STN) 特公昭43−003178(JP,B1) 特開平06−056723(JP,A) 特開昭54−016452(JP,A) 特開平08−048676(JP,A) 特開平08−053370(JP,A) 米国特許第03336241(US,A) 米国特許第04847394(US,A) 化学便覧基礎編改訂4版,丸善,1993年,p.II-631 FACHE F. et. al,Tetrahedron Letters,1995年,36(6),p.885-888 9 1998204002 19980804 9 20031219 品川 陽子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、選択性および経済性に優れる置換芳香族化合物の核水素化方法、特に芳香族エポキシ化合物の核水素化方法に関する。【0002】【従来の技術】 一般に、置換基を有する芳香族化合物において、芳香核のみの水素化、即ち核水素化は極めて難しい。即ち、核水素化以外に置換基の水素化や水素化分解が同時に起こり、選択性が低いという欠点があった。しかも、このため大半の場合、生成物の純度を高めるために、煩雑な精製工程が必要であった。これまで、実用性の高い触媒を用いた芳香族エポキシ化合物の核水素化方法、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルの核水素化については種々検討されており、例えば、米国特許3336241号公報には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を担持ルテニウム触媒を用いて核水素化する方法が挙げられており、また、特開平8−53370号公報には、Mg粉末を用いて還元したルテニウム触媒で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を核水素化する方法等が挙げられている。【0003】【発明が解決しようとする課題】 しかし、米国特許3336241号公報に記載の担持ルテニウム触媒を用いた核水素化する方法は、エポキシ基の水素化分解が同時に起こり、選択性が低いという課題が有り、また、特開平8−53370号公報に記載の、Mg粉末を用いて還元したルテニウム触媒による核水素化方法では、エポキシ基の残存率は改善されるものの、核水素化率が低下するという課題があった。【0004】 本発明が解決しようとする課題は、従来にない優れた核水素化率が達成できると同時に、分子構造内の置換基の水素化や水素化分解を選択的に抑制できる置換芳香族化合物の核水素化方法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ルテニウム原子およびルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子が担体上に担持されており、且つ、ルテニウム原子の担持量が0.1〜20%である触媒が、芳香核のみの水素化、即ち、核水素化に対し極めて高い選択性を示し、しかも、これを低温且つ低圧の条件においても容易に実現できることを見い出し、本発明を完成するに至った。【0006】即ち、本発明は、ルテニウム原子およびルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子が担体上に担持されており、且つ、ルテニウム原子の担持量が0.1〜20%である触媒の存在下、水素加圧下に、置換芳香族化合物を核水素化することを特徴とし、且つ、該置換芳香族化合物がビスフェノール型エポキシ化合物であることを特徴とする置換芳香族化合物の核水素化方法に関する。【0007】 本発明に用いる、ルテニウム原子およびルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子が担体上に担持されており、且つ、ルテニウム原子の担持量が0.1〜20%である触媒は、特にその調製方法が制限されるものではないが、例えば、(i)ルテニウム原子含有化合物と、ルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子を含有する化合物を含浸、乾固法、沈殿法等により担体上に担持した後、還元処理、例えば、水素による還元や、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、蟻酸等による化学的還元を行うか、又は、還元処理を行わずに調製する方法、あるいは(ii)ルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子を含有するルテニウム原子含有化合物を含浸、乾固法、沈殿法等により担体上に担持した後、還元処理、例えば、水素による還元や、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、蟻酸等による化学的還元を行うか、又は、還元処理を行わずに調製する方法が挙げられる。【0008】 ここで、ルテニウム原子含有化合物としては、例えば塩化ルテニウム水和物、臭化ルテニウム水和物、酸化ルテニウム水和物、塩化ヘキサアミンルテニウム、臭化ヘキサアミンルテニウム、トリニトラトニトロシルジアクアルテニウム、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ドデカカルボニル三ルテニウム等があげられる。(i)の方法におけるルテニウムより電気陰性度の低い金属原子を含有する化合物としては、電気陰性度が2.1以下の金属原子を含有する化合物、例えばカリウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の金属原子を含有する水酸化物、酸化物、無機酸塩、有機酸塩、有機錯体化合物、無機錯体化合物等が挙げられ、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、無機酸塩、有機酸塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、無機酸塩、有機酸塩がより好ましく、特にアルカリ金属の水酸化物、酸化物、無機酸塩、有機酸塩が好ましい。【0009】 (ii)のルテニウムより電気陰性度の低い金属原子を含有するルテニウム原子含有化合物としては、例えばナトリウム、カリウムを含有するルテニウム化合物が挙げられ、特にルテニウム(VI)酸ナトリウム、ルテニウム(VI)酸カリウム、ペンタクロロアクアルテニウム(III)酸カリウム、ペンタクロロニトロシルルテニウム(II)酸カリウム、オキシデカクロロジルテニウム酸カリウム、過ルテニウム酸カリウム等が挙げられる。【0010】 担体は、反応条件下で水素化の原料となる芳香族化合物の置換基に対し不活性なものであれば、有機系又は無機系のいずれでもよく、例えば活性炭、イオン交換樹脂、シリカ、α−アルミナ、γ−アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、および種々の金属酸化物や複合酸化物等を挙げることができるが、特に表面積が大きく得られる触媒が高活性となる点から活性炭が好ましい。【0011】 当該触媒の調製方法を更に詳述すれば、例えば、水または有機溶媒中に担体となる物質を加えて10〜100℃とし、(i)の方法では、上記に挙げたルテニウム原子含有化合物及びルテニウムより電気陰性度の低い金属原子を含有する化合物を、(ii)の方法ではルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子を含有するルテニウム原子含有化合物を、目標とする担持量に見合う量だけ添加して含浸させ担持し、還元処理を行った後、もしくは還元処理を行わずに、乾燥もしくは湿潤させて調製する。担持した後に還元処理を行う場合の方法としては、A.化学的還元、もしくはB.水素還元の2つの方法が挙げられる。前者では、例えば担持した後に還元剤を加えて還元し、ろ過し、水または有機溶媒を用いて洗浄を行う。後者では、例えば担持した後にろ過し、水または有機溶媒を用いて洗浄を行い、乾燥した後に、水素雰囲気下で−20〜550℃の温度で処理を行う。そして、A.もしくはB.の方法で還元処理を行った後、乾燥もしくは湿潤状態とする。一方、担持した後に還元処理を行わなくてもよく、その場合は、担持した後、ろ過、洗浄を行い、乾燥もしくは湿潤させて調製する方法が挙げられる。【0012】 本発明で使用される当該触媒のルテニウム担持量は、0.1〜20重量%の範囲である。0.1重量%未満では、充分な核水素化率を得るために触媒量を多量要し、その工業的利用は困難である。また、20重量%を越える範囲では、細孔内に取り込まれるルテニウムの割合をいたずらに増加させてしまい、拡散の不十分な細孔内で置換基の水素化もしくは水素化分解が起きるため、選択率が低下する。【0013】 担持されたルテニウム原子は、XPS法で測定したときのRu3d5/2軌道のスペクトルピークが、280.0〜281.0eVの範囲となることが高活性となる点から好ましい。【0014】 ルテニウムより電気陰性度の低い金属原子の担持量は、水素化の対象となる置換芳香族化合物により異なるが、通常0.2〜5重量%である。さらに好ましくは0.3〜2重量%である。0.2重量%未満、および5重量%を越える範囲では、芳香核の水素化に対し高活性なものが得られず、核水素化率および選択率を共に満足させることは出来ない。【0015】 本発明の置換芳香族化合物の核水素化方法は、詳述した触媒の存在下、溶媒中で水素加圧下に、置換芳香族化合物を核水素化することを特徴としている。ここで、水素化の対象となる置換芳香族化合物としては、種々の置換基、例えばアルキル基あるいは酸素、窒素、硫黄を含む置換基を有する、単環または多環式の芳香族化合物が何れも使用でき、例えば、芳香族カルボニル、芳香族カルボン酸、芳香族アルコール、芳香族エーテル、芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。なかでも、触媒の有用性を十分に発揮できる点から特に芳香族エポキシ化合物が好ましい。なお、これら化合物の分子量に特に制限はないが、分子量2000以下のものが好ましい。【0016】 好ましく使用できる芳香族エポキシ化合物としては、フェノール類のグリシジルエーテル、例えばフェニルグリシジルエーテル等;ビスフェノール型エポキシ化合物、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルとビスフェノールAとの重合物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルとビスフェノールFとの重合物等;ビフェノール型エポキシ化合物、例えばビフェノールのジグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテルとビフェノールとの重合物、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテルと3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールとの重合物等;ノボラック型エポキシ化合物、例えばフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル、o−クレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、原料として取扱いが容易な点からビスフェノール型エポキシ化合物が好ましく、特に液状である点からビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はビスフェノールFのジグリシジルエーテルが好ましい。【0017】 また、前記した触媒の使用量は、担持量、水素化の対象となる置換芳香族化合物の種類および反応条件等により大きく異なるが、通常、置換芳香族化合物1部に対して、通常0.00005〜0.5部の範囲から適宜選択されるが、工業的見地からは、0.0001〜0.2部の範囲が好ましい。【0018】 本発明の水素化反応は、水素化の対象となる置換芳香族化合物の種類および反応条件によっては無溶媒で行うこともできるが、目的とする反応に対し最適な溶媒を選定することで選択性の向上が図れる点、および反応時間を短縮できる点から溶媒中で行うことが好ましい。【0019】 ここで用いる溶媒は、特に限定されるものではないが、二重結合を持たない、炭化水素、エーテル類およびアルコール類、ハロゲン化炭化水素の中から適宜選択することができる。具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエタンが挙げられ、なかでも、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールが好ましく、さらにはテトラヒドロフランが好ましい。【0020】 これらのなかでも、特に反応速度、選択性に優れる点で、炭素数1〜10の飽和脂肪族のアルコール、鎖状又は環状エーテルと水との混合物が好ましい。前記した溶媒のうち、水は触媒の活性を高める効果がある。従って、有機溶媒を必要とする場合においても、上記の通り水との混合液として用いることが好ましく、水とエーテル類、水とアルコール類の組み合わせが好ましい。【0021】 溶媒を用いる場合、溶媒の使用割合は特に制限はないが、好ましくは重量基準で、置換芳香族化合物1部に対して0.05〜100部、より好ましくは0.1〜50部の範囲である。【0022】 当該反応に用いる水素は、通常工業的に用いられているものであればいずれのものでもよいが、不純物の一酸化炭素が少ない方が触媒活性が優れたものとなる。従って、水素中の一酸化炭素の含有量は2%以下であることが好ましい。反応時の水素圧は特に制限はないが、低圧では反応に必要以上の長い時間を要し、また高圧では水素原単位が高くなるため、1〜100kg/cm2の範囲が好ましく、さらには2〜70kg/cm2の範囲とすることが好ましい。【0023】 当該反応における反応温度は、水素化の対象となる置換芳香族化合物の種類、反応条件および反応時間により大きく異なり、−40〜200℃の範囲で適宜選定すればよいが、選択性および経済性の点から、−20〜100℃の範囲が好ましく、特に反応性の高い置換基を有する置換芳香族化合物に対しては−20〜80℃の範囲が選択性が一層向上し好ましい。【0024】 当該反応の反応時間は、水素化の対象となる置換芳香族化合物の種類、触媒量および他の反応条件に依存し、一概には言えないが、通常0.5〜30時間である。【0025】 以上のごとく、当該置換芳香族化合物の核水素化反応を行うことにより、容易に目的とする核水素化物を高い選択率で得ることができる。当該ルテニウム触媒を用いる製法の優れる点は核水素化に極めて高い選択性を示す点であるが、さらに優れる点として、芳香核水素化を2〜70kg/cm2の水素圧力、且つ−20〜100℃の反応温度といった極めて穏和な条件下でも行える点が挙げられる。一般に知られるルテニウム触媒は、芳香核水素化の条件として、100kg/cm2を越える水素圧力とするか、100℃を越える反応温度とするか、何れかの条件が必要である。これに対し、当該触媒は、核水素化に対し極めて活性が高いため、先の条件を可能とし、極めて安価な製造コストおよび設備コストとすることができる。【0026】 加えて、当該ルテニウム触媒は、非常に安価に得ることができる。更に、繰り返し使用することも可能であるため、当該核水素化方法は触媒コストを抑えることができる点でも有利な方法である。【0027】 なお、反応設備としては、必要とされる水素圧に耐えるものであれば制限はなく、回分式、連続式のいずれの方法でもよい。本発明によって得られる核水素化物は、触媒をろ過等で除去した後、単に溶媒のみ除去したものでも、純度の高い目的物とすることができるが、必要であれば、さらに蒸留、晶析等の従来公知の方法を用いて精製することもできる。【0028】 当該触媒を用いる核水素化方法によれば、置換芳香族化合物、例えば芳香族エポキシ化合物等の核水素化を、高選択的に行うことができ、かつ経済的に行うことができる。【0029】【実施例】 以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において特記しない限り、核水素化率は紫外スペクトルの分析より求め、エポキシ基残存率はエポキシ当量の測定結果より求めた。【0030】 参考例1(触媒調製方法) 200mlのビーカーに活性炭10.0g、水100gを加え、室温にてルテニウム原子を0.5g含有するルテニウム(VI)酸ナトリウム水溶液を添加した後、攪拌しながら含浸させ、これを、ろ過し、イオン交換水で洗浄した後に脱水した。得られた触媒は含水率50重量%で、ルテニウム原子の担持量、ナトリウム原子の担持量が各々乾燥重量当たり5重量%、1重量%であった。また、担持されたルテニウム原子はXPS法で測定したときのRu3d5/2軌道のスペクトルピークが、280.7eVのものであった。【0031】 実施例1 1リットルのオートクレーブ反応器に、参考例1にて調製したルテニウム触媒(50重量%含水)2g、フェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量150)30g、テトラヒドロフラン80gを仕込み、反応器内のガスを窒素ガスにて置換し、80℃に設定した後、水素を反応器内の圧力が40kg/cm2となるように加え密閉し、水素の圧力減少が終了するまでの1時間反応させた。反応終了後、触媒をろ過し、得られたろ液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、核水素化率100%が確認され、シクロヘキシルグリシジルエーテルの選択率は98%であった。次いで、エバポレーターにより溶媒を除去した。得られたもののエポキシ当量は159であった。【0032】 参考例2(触媒調製方法) 200mlのビーカーに活性炭10.0g、水100gを加え、室温にてルテニウムを0.5g含有するルテニウム(VI)酸ナトリウム水溶液を添加した後、攪拌しながら含浸させ、ろ過し、イオン交換水で洗浄した後に脱水した後、水素雰囲気下で80℃で2時間加熱し還元させた。得られた触媒は、ルテニウム原子の担持量、ナトリウム原子の担持量が各々乾燥重量当たり5重量%、1重量%であった。また、担持されたルテニウム原子はXPS法で測定したときのRu3d5/2軌道のスペクトルピークが、280.4eVのものであった。【0033】 実施例2 1リットルのオートクレーブ反応器に、参考例2にて調製したルテニウム触媒(乾燥品)1g、フェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量150)30g、テトラヒドロフラン80gを仕込み、反応器内のガスを窒素ガスにて置換し、80℃に設定した後、水素を反応器内の圧力が40kg/cm2となるように加え密閉し、水素の圧力減少が終了するまでの1時間反応させた。反応終了後、触媒をろ過し、得られたろ液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、核水素化率100%が確認され、シクロヘキシルグリシジルエーテルの選択率は97%であった。次いで、エバポレーターにより溶媒を除去した。得られたもののエポキシ当量は161であった。【0034】 実施例3 1リットルのオートクレーブ反応器に、参考例1にて調製したルテニウム触媒(50重量%含水)4g、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるEPICLON850CRP(エポキシ当量173、大日本インキ化学工業社製)30g、水10gおよびテトラヒドロフラン80gを仕込み、反応器内のガスを窒素ガスにて置換し、40℃に設定した後、水素を反応器内の圧力が40kg/cm2となるように加え密閉し、水素の圧力減少が終了するまでの7時間反応させた。反応終了後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は100%であり、また、得られたもののエポキシ当量は189であり、エポキシ基残存率は96%であった。【0035】 比較例1 触媒として市販の5%活性炭担持ルテニウム(50重量%含水)4gを用い、反応時間9時間とした以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。反応終了後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は67%であり、また、得られたもののエポキシ当量は228であり、エポキシ基残存率は77%であった。【0036】 比較例2 触媒として市販の5%活性炭担持ルテニウム(乾燥品)6gを用い、溶媒としてジオキサン240gを用い、反応温度50℃、水素の導入圧力を100kg/cm2とし、反応時間24時間とした以外は実施例3と同様の条件で反応を行った。反応後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は81%であり、また、得られたもののエポキシ当量は29であり、エポキシ基残存率は67%であった。【0037】 比較例3 反応温度80℃、反応時間6時間とした以外は、比較例1と同様の条件で反応を行った。触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は82%であり、また、得られたもののエポキシ当量は254であり、エポキシ基残存率は69%であった。【0038】 比較例4 市販の5%活性炭担持ロジウム(50重量%含水)2gを触媒とし、反応時間5時間とした以外は比較例1と同様の条件で反応を行った。反応終了後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は100%であり、また、得られたもののエポキシ当量は242であり、エポキシ基残存率は81%であった。【0039】 実施例4 原料としてビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるEPICLON850(エポキシ当量189、大日本インキ化学工業社製)30gを用いた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。反応終了後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は100%であり、また、得られたもののエポキシ当量は206であり、エポキシ基残存率は95%であった。【0040】 実施例5 原料としてビスフェノールFのジグリシジルエーテルであるEPICLON830(エポキシ当量180、大日本インキ化学工業社製)30gを用いた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。反応終了後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は100%であり、また、得られたもののエポキシ当量は198であり、エポキシ基残存率は95%であった。【0041】 比較例5 2リットルの四つ口フラスコに、塩化ルテニウム水和物24.4g、テトラヒドロフラン1000gを仕込み、窒素雰囲気とし、マグネシウム粉末75gを加え5時間攪拌しながら加熱し、次いでろ別した。【0042】 1リットルのオートクレーブ反応器に、得られた触媒の溶液12.9g、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルであるEPICLON830(エポキシ当量180、大日本インキ化学工業社製)30g、テトラヒドロフラン20gを仕込み、反応器内のガスを窒素ガスにて置換し、50〜70℃に設定した後、水素を反応器内の圧力が100kg/cm2となるように加え密閉し、水素の圧力減少が終了するまでの12時間反応させた。反応終了後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は90%であり、また、得られたもののエポキシ当量は200であり、エポキシ基残存率は93%であった。実施例5に比べ高い圧力をとし、反応時間を長くしたにも関わらず、核水素化率が低い結果となった。【0043】 実施例6 1リットルのオートクレーブに、参考例1にて調製したルテニウム触媒(50重量%含水)6g、原料としてビスフェノールAのジグリシジルエーテルの重縮合物であるEPICLON1055(エポキシ当量498、大日本インキ化学工業社製)30g、水20gおよびテトラヒドロフラン120gを仕込み、反応容器内のガスを窒素ガスにて置換し、50℃に設定した後、水素圧力が40kg/cm2となるように加え密閉し、水素の圧力減少が終了するまでの12時間反応させた。反応終了後、触媒をろ過し、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は96%であり、また、得られたもののエポキシ当量は568であり、エポキシ基残存率は91%であった。【0044】 実施例7 原料としてビスフェノールAのジグリシジルエーテルの重縮合物であるEPICLON4055(エポキシ当量917、大日本インキ化学工業社製)30gを用い、反応時間16時間とした以外は、実施例6と同様の条件で反応を行った。反応終了後、150℃で150mmHgにて溶媒を除去した。核水素化率は92%であり、また、得られたもののエポキシ当量は1070であり、エポキシ基残存率は89%であった。【0045】 実施例8 原料としてビスフェノールA30g、溶媒としてt−ブタノール80gを用い、反応時間3時間とした以外は、実施例2と同様の条件で反応を行った。反応終了後、触媒をろ過し、得られたろ液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、核水素化率100%が確認され、3種の異性体からなるビス(4−ヒドロシクロヘキシル)プロパンの選択率は99%であった。【0046】【発明の効果】 本発明によれば、従来にない優れた核水素化率が達成できると同時に、分子構造内の置換基の水素化や水素化分解を選択的に抑制できる置換芳香族化合物の核水素化方法を提供できる。【0047】 また、核水素化反応を低温、低圧力な条件下で行うことができる為、生産性も向上する。 ルテニウム原子およびルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子が担体上に担持されており、且つ、ルテニウム原子の担持量が0.1〜20%である触媒の存在下、水素加圧下に、置換芳香族化合物を核水素化することを特徴とし、且つ、該置換芳香族化合物がビスフェノール型エポキシ化合物であることを特徴とする置換芳香族化合物の核水素化方法。 ルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子の担持量が0.2〜5%である請求項1記載の核水素化方法。 ルテニウム原子が、XPS法で測定したときのRu3d5/2軌道のスペクトルピークが、280.0〜281.0eVの範囲のものである請求項1又は2記載の核水素化方法。 ルテニウム原子より電気陰性度の低い金属原子が、アルカリ金属である請求項1、2又は3記載の核水素化方法。 担体が活性炭である請求項1、2、3又は4記載の核水素化方法。 核水素化を溶媒の存在下に行う請求項1〜5の何れか1つに記載の核水素化方法。 溶媒が、炭素数1〜10の飽和脂肪族のアルコール、鎖状若しくは環状エーテル、水またはそれらの混合物である請求項1〜6の何れか1つに記載の核水素化方法。 溶媒が、テトラヒドロフランと水との混合液である請求項7記載の核水素化方法。 水素圧が2〜70kg/cm2であり、且つ反応温度が−20〜100℃である請求項1〜8の何れか1つに記載の核水素化方法。