生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_テレフタル酸の精製方法
出願番号:1997007241
年次:2008
IPC分類:C07C 63/26,B01J 23/44,B01J 35/10,C07C 51/487


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向出 正明 本地 章夫 飛田 紘 山下 寿生 JP 4048569 特許公報(B2) 20071207 1997007241 19970120 テレフタル酸の精製方法 株式会社日立プラントテクノロジー 000005452 井上 学 100100310 向出 正明 本地 章夫 飛田 紘 山下 寿生 20080220 C07C 63/26 20060101AFI20080131BHJP B01J 23/44 20060101ALI20080131BHJP B01J 35/10 20060101ALI20080131BHJP C07C 51/487 20060101ALI20080131BHJP JPC07C63/26 LB01J23/44 MB01J35/10 301GC07C51/487 B01J 21/00〜38/74 C07C 63/26 JSTPlus(JDream2) 特公昭52−018155(JP,B1) 特開平06−048982(JP,A) 2 1998202104 19980804 8 20040107 牟田 博一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は有機物の水素添加反応に用いる触媒、特に粗テレフタル酸の精製工程に用いる触媒、その製造法,触媒を用いた精製プロセスに関する。【0002】【従来の技術】テレフタル酸は高分子材料の重要な原料物質の一つであり、ポリエステル系繊維・フィルムやポリエチレンテレフタレート樹脂の原料として広く用いられている。【0003】テレフタル酸の工業的製造には数種の方法があるが、ほとんどがp−キシレンを代表とする1,4−ジアルキルベンゼンの酸化によって行われる。この方法では、酸化の際の副次的な反応により生成物中に多数の不純物が含まれており、そのままでは高分子材料の原料として不適当であるため、通常、精製が行われる。不純物が存在するテレフタル酸を用いて製造した高分子材料は黄色ないし褐色に着色し、繊維や樹脂として商品価値が極めて低くなるが、この着色はテレフタル酸中の不純物、特にp−ホルミル安息香酸(別名4−カルボキシベンズアルデヒド、4−CBAと略すこともある)の存在が最も大きな原因となっている。このため精製工程では、このp−ホルミル安息香酸を除去することが主な目的となっている。【0004】テレフタル酸精製にも幾つかの方法があるが、その中でも粗テレフタル酸を高温,高圧下で水に溶解し、p−ホルミル安息香酸を触媒の存在下で水素添加することによって、再結晶法で容易に分離可能なp−トルイル酸にして除去する方法が多く用いられている。これは以下の化学反応によって示される。【0005】【発明が解決しようとする課題】このようなテレフタル酸の水溶液を用いた水素添加による精製では、一般にパラジウムまたはパラジウムを主成分とする第8族貴金属を担持した活性炭が触媒として用いられ、これによって粗テレフタル酸に含まれるp−ホルミル安息香酸が除去可能である。しかしこれらの触媒を用いた場合にも、高分子原料に適した、p−ホルミル安息香酸濃度が約数十ppm 以下のテレフタル酸を得るには、反応物質量と触媒量の比で決定される空間速度(SV値)を比較的小さい領域で操業することが必要であり、これが精製速度のボトルネックとなっている。一方、近年では高分子材料に、より一層高い品質が求められる場合も多く、迅速にかつ極めて高いp−ホルミル安息香酸除去率でテレフタル酸を精製することが必要となっている。【0006】【課題を解決するための手段】このように、p−ホルミル安息香酸を高い割合で除去するために比較的長時間を要する課題は、活性炭を担体としパラジウムを主たる活性成分とする水素添加用触媒で、細孔径2nmまでの累積細孔容積が0.40cm3/g以上0.55cm3/g以下の活性炭、さらに限定すれば細孔径2nmまでの累積細孔容積が0.40 cm3/g 以上0.55cm3/g以下で、かつ細孔径20nmまでの累積細孔容積が0.45cm3/g以上0.65cm3/g以下である活性炭を担体に用いることで解決可能である。この場合の活性炭は粒径が4ないし32メッシュ、さらに好ましくは4ないし8メッシュの間に含まれる破砕炭とし、パラジウムを主成分とする活性成分量は0.1〜5 重量%とすることが望ましい。【0007】この触媒は湿式による還元、すなわち溶液中でパラジウム塩を活性炭に吸着させ、還元剤を加えて還元することが好ましい。還元剤にはに炭素数1ないし3個の飽和アルコール、特にメタノールを用いることが望ましい。パラジウム塩には塩化パラジウム,硝酸パラジウム,酢酸パラジウムの中から選んだ1種類以上の物質,混合物が使用可能である。また還元の条件は、50℃以上、還元剤を加えた溶液の沸点未満の温度で、0.5 ないし10時間加熱することが望ましい。【0008】図1は本発明による触媒の累積細孔容積1の一例と従来の触媒の累積細孔容積2の一例とを細孔径との関係で表したグラフである。【0009】テレフタル酸精製における触媒反応の速度は種々の要因で決定されるが、その中でも反応点の数の多少が大きな影響を及ぼす。一般に活性炭のように非常に多数の細孔を有する担体では、活性成分の吸着により多くの反応点が細孔表面に形成され反応速度も大きい。活性炭は賦活条件を変えることにより、細孔容積を変えることが可能で、単位重量あたりの細孔容積が大きな活性炭ほど、担体として用いた場合テレフタル酸精製の触媒反応速度は大きくなる。【0010】細孔容積が小さい場合、触媒製造の際に限られた表面に活性成分が吸着するために、活性成分の分散性が悪く金属粒子径が比較的大きくなることで活性が低くなった。したがって細孔容積が大きい担体を用いることが望ましい。【0011】ただし、反応にはそれに適した細孔径が存在し、反応に関わる不純物分子、例えばp−ホルミル安息香酸が幾何学的に侵入不可能な細孔中に反応点が多数あっても、その反応点は触媒反応に活かされず反応点が少ないのと同じことになる。p−ホルミル安息香酸の分子の大きさは0.8nm 程度であり、これらの分子が反応点に到達し、また離脱してゆくには少なくともこれ以上の細孔径が必要である。一方、大きな細孔径の孔だけで細孔容積を大きくしようとした場合、必然的に迷宮度が上がり、反応物質の反応点への到達、生成物の離脱が遅くなって反応速度は小さくなる。そこで特定範囲の細孔径の細孔を多くするよう賦活した活性炭を担体として用いた場合、テレフタル酸精製の触媒反応速度を大きくすることが可能である。【0012】しかし、実際に触媒を用いる場合、細孔が多すぎると担体の強度が低下し粉化が生じやすく、触媒寿命を短くしたり、装置の配管詰まりを起こしたりして悪影響をおよぼす。したがって担体の細孔量には適切な範囲が存在する。【0013】なお、細孔容積と類似の概念として比表面積があり、一般に比表面積が大きいほど細かな細孔が多いと言われるが、上記のように反応には特定範囲の径の細孔が重要であり、マクロな物性値である比表面積の大小と触媒活性の良否とは必ずしも関連性があるわけではない。実際に発明者らは、同等の比表面積を有する担体で、活性成分の粒径や分散度が同等であっても触媒活性が良好なものもあれば、非常に悪いものもあることを経験してきた。その場合、分析の結果それらの担体では互いに異なる細孔径分布を有していることが明らかになった。【0014】発明者らが種々の活性炭について検討した結果、細孔径2nmまでの累積細孔容積が0.40cm3/g以上0.55cm3/g以下の破砕活性炭、さらに限定するならば細孔径2nmまでの累積細孔容積が0.40cm3/g以上0.55cm3/g以下で、かつ細孔径20nmまでの累積細孔容積が0.45cm3/g以上0.65cm3/g以下である破砕活性炭を触媒担体とすることにより、p−ホルミル安息香酸水素添加速度が非常に大きく、また充分な強度を有する触媒を得られることが明らかになった。【0015】この場合、空間速度を大きくとるためには、担体粒径を4ないし32メッシュの範囲、より好ましくは4ないし8メッシュの範囲にすることが必要である。これより細かい担体の場合には空間速度を大きくとるのに大きな差圧が必要であり、余分な運転ユーティリティが必要になる他、触媒床に力がかかって触媒の機械的劣化を促進する。またこれより粗い破砕炭は製造自体が困難であり、現在のところ実際的ではない。【0016】こうした触媒の活性成分にはパラジウムまたはパラジウムを主とする8族貴金属元素が有効であり、これ以外の元素では活性が不足であったり、副反応が生じて使用が困難である。活性成分量を0.1〜5 重量%とする理由は、これより少ない場合には触媒活性がほとんどないためで、これより多い場合は製造に要するコストが多大となり工業的に用いることが困難になるためである。【0017】さらにこの触媒を製造する場合には、活性成分の粒成長を防止するため還元に際して穏和な条件を用いることが必須である。それには活性成分前駆体の塩の溶液中で担体にそれを吸着させた後、液相で比較的低温で還元を行うことが望ましい。活性成分前駆体の塩には、塩化パラジウム,硝酸パラジウム,酢酸パラジウム、それらの混合物が使用可能である。それ以外の物質は高価で工業用途に不適であったり、反応を阻害する元素が残留するためである。還元剤としては炭素数が1ないし3個の飽和アルコール、すなわちメタノール,エタノール,1−プロパノール,2−プロパノールが好ましいが、その中でも特にメタノールが有効である。また還元条件は50℃以上、還元剤を加えた溶液の沸点未満が望ましく、それより低い時は還元反応が遅すぎ、それ以上では活性成分の粒成長が生じる。【0018】【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。【0019】(実施例1)賦活度が異なる活性炭6種につき、窒素吸着法により細孔容積を求めた。2nmまで、および20nmまでの累積細孔容積の値を表1に示す。【0020】【表1】【0021】これらの活性炭に塩化パラジウム溶液をパラジウム量に換算して0.5 重量%加えて、充分吸着させた後メタノールを2.5 リットル/g−Pdの割合で加え、恒温槽中70℃で3時間加熱して還元し、触媒を得た。触媒5.0g を、それぞれp−ホルミル安息香酸3000ppm を含有する粗テレフタル酸50gおよび水500mlと混合し、内容量1リットルの撹拌機付きオートクレーブに入れてバッチ試験を行った。気相を7.5 気圧の水素で置換し、260℃で15分加熱保持した後、溶液を冷却してテレフタル酸を析出させた。得られたテレフタル酸中のp−ホルミル安息香酸の濃度は、カラムにシリカODS、溶離液にリン酸−アセトニトリルを用いた液体クロマトグラフィによって測定した。結果を表1に示す。【0022】No.1は担体活性炭の累積細孔容積が小さいために触媒上における反応速度が十分ではなく、p−ホルミル安息香酸の残存量が多い。また、No.6は細孔容積が充分大きく、反応速度は速いが、担体の強度が弱いために試験中の撹拌によって触媒が粉々に粉砕されており、いずれも触媒に用いることは不適当である。【0023】一方、本発明の請求範囲に入るNo.2〜5の活性炭を担体として用いた場合には、触媒反応が良好でp−ホルミル安息香酸の残存量が比較的少なく、かつ、強度も高く触媒として用いるのに適している。【0024】(実施例2)実施例1の触媒No.3の活性炭を用い、ただし塩化パラジウム添加量をパラジウム量に換算して0.005重量%,0.2重量%,1.0重量%,3.0重量%の触媒を製造し、実施例1と同様にバッチ試験および試料分析を行った。結果を表2に示す。【0025】【表2】【0026】細孔容積が充分であっても、活性成分の少ない触媒No.7では試験後の不純物濃度が高すぎ触媒として用いられない。また、活性成分量が多いNo.9,10では、活性成分量を多くしても不純物除去量が頭打ちであり、製造コストが増すだけで得策ではない。工業的には5wt%程度が上限である。【0027】(比較例1)実施例1の触媒No.3同様に、ただし還元剤を水素5体積%含有窒素気流中として320℃3時間加熱還元して製造した触媒を、実施例1と同様にバッチ試験を行って評価した。分析の結果、試験後のテレフタル酸中のp−ホルミル安息香酸濃度は653ppm であった。X線回折および透過型電子顕微鏡観察によって解析したところ、この試料のパラジウム平均粒径は約19nmであった。この位のパラジウム径では活性が不足であり、触媒として不適である。【0028】(実施例3)実施例1のNo.1とNo.5の二つの触媒について、触媒約100gを固定床に設置し、粗テレフタル酸(p−ホルミル安息香酸3000ppm 含有)20重量%水溶液を送液しながら反応させるフロー試験を行った。反応温度は270℃、反応槽の水素分圧は10kgf/cm2 とし、それぞれの触媒につき送液速度を変え、重量空間速度(WHSV)を変化させることにより、反応速度とp−ホルミル安息香酸残存量との関係を調べた。実験条件と結果を表3に示す。【0029】【表3】【0030】本発明によらない触媒No.1では、比較的空間速度の小さな3.2h~1 であっても試験後のテレフタル酸中p−ホルミル安息香酸濃度が434ppm であり、触媒活性が不足している。これよりも空間速度の大きい領域ではさらに不純物濃度は高くなり、触媒として用いるのは不適当である。一方、本発明による触媒No.5では比較的大きい空間速度11.1h~1 でもp−ホルミル安息香酸濃度は16ppm と低く抑えられており、これより小さな空間速度でも不純物除去の活性は良好である。このように本発明を用いることにより、広範囲の空間速度で良好な触媒活性が得られる。【0031】【発明の効果】 本発明により、比較的大きい空間速度でも良好な活性を有する触媒を得られ、大きな反応速度のテレフタル酸の精製方法を得ることができる。また工業プロセスの上からは運転条件に多少のばらつきが生じても安定した品質の製品を得ることが可能となる。【0032】なお本発明では担体として活性炭のみを挙げているが、将来的に活性炭と同じ性質、すなわち固体酸点がなく、担体表面で副次的反応が生じないもので、かつ、本発明と同程度の細孔分布を有する材料が得られた場合、本発明と同様の効果が期待できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明による水素添加触媒担体の細孔径と累積細孔容積の関係の特性図。【図2】テレフタル酸精製プロセスにおける、p−ホルミル安息香酸を水素添加してp−トルイル酸に転化させる反応を示した説明図。【符号の説明】1…本発明による水素添加触媒の累積細孔容積曲線、2…従来触媒担体の累積細孔容積曲線。 粗テレフタル酸に含まれるp−ホルミル酸安息香酸を、活性炭を担体とし、パラジウムを主たる活性成分とする水素添加用触媒の存在下でp−トルイル酸に変換した後、晶析、固液分離によって高純度テレフタル酸を得るテレフタル酸の精製方法において、前記水素添加用触媒の担体として用いる前記活性炭の細孔径2nmまでの累積細孔容積が0.40cm3/g以上0.55cm3/g以下であって、前記パラジウムの量が0.2重量%以上5重量%以下であるテレフタル酸の精製方法。 請求項1において、前記触媒は、パラジウム塩の溶液中に前記活性炭を含浸し、パラジウム塩を活性炭に吸着させた後、還元剤を添加してパラジウム塩を還元することによりパラジウムを活性炭に坦持させたものであるテレフタル酸の精製方法。


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