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タイトル:特許公報(B2)_改良されたアデノウイルスおよびその使用法
出願番号:1996514800
年次:2004
IPC分類:7,C12N15/09,A61K35/76,A61K48/00,C12N7/00


特許情報キャッシュ

ウイルソン, ジエイムズ・エム フイシヤー, クリシユナ・ジエイ チエン, シユー−イエン ウエイツマン, マシユー JP 3565859 特許公報(B2) 20040618 1996514800 19951027 改良されたアデノウイルスおよびその使用法 ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア 小田島 平吉 ウイルソン, ジエイムズ・エム フイシヤー, クリシユナ・ジエイ チエン, シユー−イエン ウエイツマン, マシユー US 08/331,381 19941028 20040915 7 C12N15/09 A61K35/76 A61K48/00 C12N7/00 JP C12N15/00 A A61K35/76 A61K48/00 C12N7/00 7 C12N 15/00 C12N 7/00 BIOSIS/WPI(DIALOG) JICSTファイル(JOIS) 国際公開第94/012649(WO,A1) J.Virology, Vol.66,No.2,P.723-731(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA, Vol.89,P.2581-2584(1992) Biochem.J., Vol.299,No.1,P.49-58(April 1994) 27 US1995014017 19951027 WO1996013597 19960509 1998507927 19980804 80 19991029 田村 明照 本発明は、国立衛生研究所受託番号第P30 DK 47757号により援助された。合衆国政府は、本発明に権利を有する。発明の分野本発明は、身体の遺伝子治療に有用なベクターの分野およびその生成に関する。発明の背景ヒト遺伝子治療は、患者の細胞中の遺伝子発現の改質に基づいて、ヒトの疾患を処置するための取り組みである。この10年間で、遺伝的疾患、ガンおよび他の遺伝的機能不全を処置するための方法として、遺伝子治療の成功に対する1つの最も顕著な障壁は、有用な遺伝子転移媒体の開発であることが明らかとなった。真核ウイルスは、身体の遺伝子治療用の媒体として使用されて来た。その中で遺伝子治療に於いて頻繁に言われて来たウイルスベクターは、アデノウイルスである。アデノウイルスは、種々の細胞型に治療用またはレポーター導入遺伝子を効率的に運ぶために改質できる真核DNAウイルスである。ヒトに呼吸疾患を引き起こす組換えアデノウイルス2および5(それぞれAd2およびAd5)は、現在では遺伝子治療用に開発されている。Ad2およびAd5の両方が、ヒトの悪性腫瘍とは関係しないアデノウイルスのサブクラスに属する。組換えアデノウイルスは、分裂状態にかかわらずほとんどすべての細胞型に、極めて高いレベルで導入遺伝子の送達を提供できる。組換えウイルスの高力価(1013プラーク形成単位/ml)を293細胞(レトロウイルスパッケージング細胞株に同等のアデノウイルス)で容易に生成でき、そして明らかな損失無しに長期間、寒冷−保存できる。遺伝的不均衡を相補する治療用導入遺伝子のインビボへの送達において、この系の効力は種々の疾患の動物モデルで証明された[Y.Watanabe,Atherosclerosis,36:261−268(1986);K.Tanzawaら、FEBS Letters,118(1):81−84(1980);J.L.Golastenら、New Engl.J.Med.,309(11983):288−296(1983);S.Ishibashiら、J.Clin.Invest.,92:883−893(1993);およびS.Ishibashiら、J.Clin.Invest.,93:1885−1893(1994)]。実際、嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)のcDNAをコードする組換え複製欠損アデノウイルスは、少なくとも2つのヒトCF臨床試験で使用することが認可された[例えば、J.Wilson、Nature、365:691−692(1993年10月21日)を参照にされたい]。さらに遺伝子治療の組換えアデノウイルスの安全性の裏付には、人の集団における生のアデノウイルスワクチンの徹底的な経験がある。ヒトアデノウイルスは直鎖状の約36kbの二重−鎖DNAゲノムから成り、これは100マップ単位(map unites:m.u.)に分割され、各々は360bp長である。このDNAは、ウイルスDNAの複製に必要な短い逆方向末端反復配列(ITR)をゲノムの各末端に含む。遺伝子産物は、ウイルスDNA合成の開始前または後の発現に基づき、初期(E1からE4)および後期(L1からL5)領域中に組織される[Horwitz、ウイルス学(Virology)、第2版、B.N.Fields編集、ラベン出版社(Raven Press Ltd.),ニューヨーク(1990)を参照にされたい]。遺伝子治療のために開発された第一世代の組換え、複製−欠損アデノウイルスは、E1a全部およびE1bの一部の欠損を含む。この複製−欠損ウイルスは、E1aタンパク質のトランス作用を提供する機能的アデノウイルスE1a遺伝子を含む、アデノウイルス−形質転換、相補性ヒト胚腎臓細胞株、293細胞[ATCC CRL1573]で成長する。E1−欠失ウイルスは293細胞中に感染性ウイルスを複製および生産でき、これはE1aおよびE1b領域遺伝子産物をトランスに提供する。生成するウイルスは多くの細胞型を感染でき、そして導入された遺伝子を発現することができるが(遺伝子がそれ自体のプロモーターを持てば)、細胞が大変高い感染多重度で感染されない限り、E1領域DNAを持たない細胞中では複製できない。しかしインビボの研究により、これらE1欠失ベクターによる導入遺伝子の発現は一時的であり、ベクターが標的とした部位で重篤な炎症の発症と必ず随伴することが明らかになった[S.Ishibashiら、J.Clin.Invest.,93:1885−1893(1994);J.M.Wilsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:4421−4424(1988);J.M.Wilsonら、Clin.Bio.3:21−26(1991);M.Grossmanら、Som.Cell.and Mol.Gen.,17:601−607(1991)]。この知見を解明するために提案された1つの説明では、第一世代の組換えアデノウイルスが、E1遺伝子の欠失にもかかわらず他のウイルスタンパク質を低レベルで発現するというものである。これは非刺激ウイルスプロモーターまたは細胞因子のトランス活性化からの基礎的な発現によるものである。ウイルスタンパク質の発現は、遺伝的に改変〔又は本明細書では、改質とも言う。〕された細胞に対して細胞の免疫反応を導き、細胞の破壊および非導入遺伝子含有細胞との置き換わりを生じる。遺伝子治療のために、さらなるアデノウイルスベクター構築物の開発が当該技術分野で未だに必要とされている。発明の要約1つの観点では、本発明は新規組換えアデノウイルス生産系の成分を提供する。1つの成分はシャトルプラスミド、pAdΔであり、これは複製およびビリオン包被化に必要なアデノウイルス シスエレメント(または本明細書では、シスー要素とも言う。)を含んで成り、そしてすべてのウイルス遺伝子を欠いている。このベクターは選択されたプロモーター制御下に選択された導入遺伝子、および他の通常のベクター/プラスミド調節成分を持つ。他の成分はヘルパーアデノウイルスであり、これは単独またはパッケージング細胞株と一緒に、増殖性〔または本明細書では、生産的とも言う。〕なウイルス感染のために必要な十分な遺伝子配列を供給する。好適な態様では、このヘルパーウイルスは、ヘルパーウイルスのパッケージング機能またはその複製能力を実質的に無能化する、または不能化するように、効率的なパッケージングを支配する天然の遺伝子配列に対する改変を含むように変化されたものである。別の観点では、本発明は上記成分を使用して作成した独特な組換えアデノウイルス、AdΔウイルスを提供する。この組換えウイルスは、複製および包被化に必要なアデノウイルス カプシド、アデノウイルス シス−要素を含んで成るが、すべてのウイルス遺伝子(すなわち、すべてのウイルス読み取り枠)を欠いている。このベクター粒子は、選択したプロモーターの制御下に選択した導入遺伝子、および他の通常のベクター調節成分を持つ。このAdΔ組換えウイルスは、宿主細胞への高力価の導入遺伝子送達、および導入遺伝子を宿主細胞の染色体に安定に組み込む能力に特徴がある。1つの態様では、このウイルスはその導入遺伝子としてレポーター遺伝子を持つ。組換えウイルスの別の態様では、治療用導入遺伝子を含む。別の観点では、本発明はある細胞株(パッケージング細胞株または非パッケージング細胞株のいずれか)を、シャトルベクターまたはプラスミドおよび上記ヘルパーアデノウイルスとコトランスフェクションすることにより、上記のような組換えAdΔウイルスの生産法を提供し、ここでトランスフェクトされた細胞はAdΔウイルスを生産する。このAdΔウイルスを続いて単離し、そしてそれらから精製する。さらに別の観点では、本発明は、遺伝子に関連した異常または疾患を処置または矯正するために、患者に治療用導入遺伝子を含有する組換えAdΔウイルスの有効量を投与することにより、宿主細胞中で発現するために選択された遺伝子を宿主細胞に送達する方法を提供する。本発明の他の観点および利点は、さらに以下のその好適態様の詳細な記載に記載する。【図面の簡単な説明】図1Aは、Ad5由来の5'末端を規定する主な機能要素の組織を概略した図解であり、逆方向末端反復配列(ITR)およびパッケージング/エンハンサードメインを含む。E1プロモーターのTATAボックス(黒いボックス)およびE1A転写開始部位(矢印)も表す。図1B配列、図1Aのパッケージング/エンハンサー領域を拡大した概略図であり、5つのパッケージング(PAC)ドメイン(A−反復)、IからVを示す。矢印は、以下の図9Aおよび9Bで参照にするPCRプライマーの位置を示す。図2Aは、Ad5からの5'ITR、続いてCMVプロモーター/エンハンサー、LacZ遺伝子、Ad5からの3'ITR、およびプラスミドpSP72骨格に由来する残りのプラスミド配列を含有するシャトルベクターpAdΔ.CMVLacZの概略図である。制限エンドヌクレアーゼ酵素は、プラスミド構築物で通常の命名法により表す。図2Bは、改質AdΔゲノムをpSP72プラスミド骨格から放出するために、EcoR Iを用いて消化されたシャトルベクターの概略図である。図2Cは、ベクター系の機能の図解である。ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(hpAP)に関するレポーターミニ遺伝子をコードする、E1−欠失ヘルパーウイルスAd.CBhpApの存在で、AdΔ.CMVLacZゲノムは予め形成されているビリオンカプシド中にパッケージングされ、LacZ遺伝子の存在によりヘルパービリオンから識別できる。図3Aから3F[配列番号1]は、二重鎖プラスミドpAdΔ.CMVLacZの頂点DNA鎖を報告する。相補的配列は、当業者により容易に得られる。配列は以下の成分を含む:3'Ad ITR(配列番号1のヌクレオチド607−28);5'Ad ITR(配列番号1のヌクレオチド5496−5144);CMVプロモーター/エンハンサー(配列番号1のヌクレオチド5117−4524);SD/SA配列(配列番号1のヌクレオチド4507−4376);Lacz遺伝子(配列番号1のヌクレオチド4320−845);およびポリA配列(配列番号1のヌクレオチド837−639)。図4Aは、頭から尾に位置するAd5の5'ITRおよび3'ITR、5'ITRの直後にCMVエンハンサー/プロモーター−LacZミニ遺伝子があり、続いてプラスミドpSP72(プロメガ:Promega)骨格を含有するシャトルベクターpAdΔc.CMVLacZの概略図である。制限エンドヌクレアーゼ酵素は、プラスミド構築物で通常の命名法により表す。図4Bは、図4Aのベクター系の機能の概略図解である。ヘルパーウイルスAd.CBhpAPの存在で、環状のpAdΔc.CMVLacZシャトルベクター配列はビリオン頭部にパッケージングされ、LacZ遺伝子の存在によりヘルパービリオンから識別できる。図5Aから5F[配列番号2]は、二重鎖ベクターpAdΔc.CMVLacZの頂点DNA鎖を報告する。相補的配列は、当業者により容易に得られる。配列は以下の成分を含む:5'Ad ITR(配列番号2のヌクレオチド600−958);CMVプロモーター/エンハンサー(配列番号2のヌクレオチド969−1563);SD/SA配列(ヌクレオチド1579−1711);Lacz遺伝子(配列番号2のヌクレオチド1762−5236);ポリA配列(配列番号2のヌクレオチド5245−5443);および3'Ad ITR(配列番号2のヌクレオチド16−596)。図6は、Ad5からの5'ITR、続いてキメラCMVエンハンサー/βアクチンプロモーターエンハンサー、CFTR遺伝子、ポリ−A配列、Ad5からの3'ITR、およびプラスミドpSL1180(ファルマシア:Pharmaci)骨格に由来する残りのプラスミド配列を含有するシャトルベクターpAdΔ.CBCFTRの概略図である。制限エンドヌクレアーゼ酵素は、プラスミド構築物で通常の命名法により表す。図7Aから7H[配列番号3]は、二重鎖プラスミドpAdΔ.CBCFTRの頂点DNA鎖を報告する。相補的配列は、当業者により容易に得られる。配列は以下の成分を含む:5'Ad ITR(配列番号3のヌクレオチド9611−9254);キメラCMVエンハンサー/βアクチンプロモーター(配列番号3のヌクレオチド9241−8684);CFTR遺伝子(配列番号3のヌクレオチド8622−4065);ポリA配列(配列番号3のヌクレオチド3887−3684)、およびAd ITRからの3'(配列番号3のヌクレオチド3652−3073)。および残りのプラスミドプラスミド骨格は、pSL1180(ファルマシア)に由来する。図8Aは、PACドメインIおよびIIを含有する5'アデノウイルス末端配列のPCRによる生成を説明する。矢印は図1Bの右手および左手(PAC II)PCRプローブを示す。図8Bは、PACドメインI、II、IIIおよびIVを含有する5'末端配列のPCRによる生成を説明する。矢印は図1Bの右手および左手(PAC IV)PCRプローブを示すことを理解されたい。図8Cは、改質パッケージング(PAC)シグナルを持つ不能化ヘルパーウイルス、Ad.PAC IIおよびAd.PAC IVを生じる、pAd.PAC II(ドメインIおよびII)およびpAd.PAC IV(ドメインI、II、IIIおよびIV)を生成するpAd.Link.1(IHGT ベクター コア)のマルチクローニング部位にサブクローン化した増幅生成物を図解する。図9Aは、前初期CMVエンハンサー/プロモーター(CMV)、ヒト胎盤アルカリホスファターゼcDNA(hpAP)、およびSV40ポリアデニレーションシグナル(pA)を含有するヒト胎盤アルカリホスファターゼレポーターミニ遺伝子を、pAd.PAC II中にサブクローン化して、不能化ヘルパーウイルスベクターpAdΔPAC II CMVhpAPを生成する概略図である。制限エンドヌクレアーゼ酵素は、プラスミド構築物で通常の命名法により表す。図9Bは、図9Aと同じミニ遺伝子をpAd.PAC IV中にサブクローン化して、不能化ヘルパーウイルスベクターpAd.PAC IV.CMV.hpAPを生成する概略図である。図10はアデノウイルス−基本ポリカチオンヘルパーウイルス結合体の合成、およびそれとpAdΔシャトルベクターとを組み合わせて、新規ウイルス粒子複合体の生成を要約する流れ図である。CsClバンド精製ヘルパーアデノウイルスを、ヘテロ二官能性架橋剤スルホ−SMCCと反応させ、そしてカプシドタンパク質ファイバーを求核性マレイミド部分で標識する。遊離のスルフィドリルを、2−イミノチオラン−HClを使用してポリ−L−リシン上に導入し、そして標識したアデノウイルスと混合し、ヘルパーウイルス結合体Ad−pLysを生成する。独特なアデノウイルス−基本粒子は、Ad−pLys接合体をCsCl勾配上で精製することにより、非導入ポリ−L−リシンを除去し、続いて徹底的に透析し、シャトルプラスミドDNAをAd−pLysに加え、そしてAd−pLysの回りに巻き付いたシャトルプラスミドにより形成された複合体が生じるように生成する。図11は、pCCL−DMDの概略図であり、これは以下の実施例9で詳細に記載する。図12A−12PはpAdΔ.CMVmDys[配列番号10]の連続的なDNA配列を提供する。発明の詳細な説明本発明は、導入遺伝子を標的細胞中に送達できる独特な組換えアデノウイルス、ならびにこの独特ウイルスを生産するための成分および種々の遺伝的疾患を処置するためのこのウイルスの使用法を提供する。本発明のAdΔウイルスは、複製およびビリオン包被化に必要なアデノウイルスシス−要素だけを含有するウイルス粒子(すなわち、ITRsおよびパッケージング配列)であるが、他の点ではすべてのアデノウイルス遺伝子を欠失している(すなわち、すべての読み取り枠)。このウイルスは、選択したプロモーターの制御下に選択した導入遺伝子およびポリAシグナルのような他の通常の調節成分を持つ。このAdΔウイルスは、宿主細胞中でのベクターDNAの向上した持続性、減少した抗原性/免疫原性が特徴であり、したがって送達媒体として向上した性能が特徴である。さらに本発明の利点は、デュシェン筋ジストロフィー(Duchenne Muscular Dystrophy:DMD)に特徴的な進行性の筋組織瘠痩の処理のために、完全長ジストルフィンcDNAのような、大変大きな導入遺伝子をAdΔウイルスがパッケージングできることである。この新規組換えウイルスは、2成分:1)複製およびビリオン包被化に必要であるアデノウイルスシス−要素を含んでなり、すべてのウイルス遺伝子が欠失しているシャトルベクター、このベクターはレポーターまたは治療用ミニ遺伝子をもつ、および2)シャトルベクターと共にコトランスフェクトされた時に、単独またはパッケージング細胞株と共に、生産的なウイルス感染に必要なウイルス遺伝子産物のすべてを提供できるヘルパーアデノウイルスを含む、アデノウイルス−基本ベクター生産システムの使用により生産される。好ましくはこのヘルパーウイルスは、それ自体を効率的にパッケージしないように改質されている。このような設定で、アデノウイルス遺伝子を安定に発現するパッケージ細胞株と組み合わせて望ましく使用される。このような成分からこのウイルスベクターを調製する方法には、アデノウイルス/導入遺伝子含有ベクターのウイルス中への新規パッケージング手段、および引き続いてこの新しく形成された組換えウイルスからヘルパーウイルスを分離するための新規方法の両方を含む。I.シャトルベクターpAdΔと呼ばれるこのシャトルベクターは、アデノウイルス配列、およびベクター調節制御配列を含む導入遺伝子配列から成る。A.アデノウイルス配列シャトルベクターのアデノウイルス核酸配列は、ヘルパーウイルスの援助によりウイルス粒子の生産が可能になる最小のアデノウイルス配列を提供する。これらの配列は、生成する組換えウイルスにより、組換え導入遺伝子ゲノムを標的細胞に送達することを援助する。Ad5型[Genbank寄託番号M73260]を含む多数のアデノウイルス型のDNA配列は、Genbankから入手できる。このアデノウイルス配列は、例えば血清型2、3、4、7、12および40のような任意の既知のアデノウイルス血清型、ならびにさらに現在同定されているヒトの任意の41種の型[例えば、Horwitz、上述を参照にされたい]から得られる。同様に、他の動物を感染できると知られている同様なアデノウイルスも、本発明のベクター構築物に使用できる。アデノウイルス型の選択は、以下の発明に限定されることを意図していない。種々のアデノウイルス株は様々な商業的および工業的供給元からの要求に応じて、メリーランド州、ロックビルのアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手できる。以下の実施例の態様では、アデノウイルス、5型(Ad5)を都合よく使用する。しかし、種々のヒトアデノウイルス血清型に基づく種々のpAdΔシャトルベクターを得ることが望ましい。そのようなプラスミドのライブラリー、および生成するAdΔウイルスベクターは、細胞性の、および場合によっては体液性免疫を回避するための治療的投薬に有用であり、そして導入遺伝子の発現期間を伸ばし、ならびに反復的な治療処置の成功を向上させると予想される。さらに種々の血清型の使用は、種々の組織標的特異性を持つ組換えウイルスを生産すると考えられる。アデノウイルス遺伝子がAdΔウイルスベクター中に存在しないことは、通常、E1遺伝子だけが欠失している組換えアデノウイルスの破壊を引き起こす悪いCTL反応を減少または排除すると予想される。具体的には、本発明のpAdΔシャトルベクターに使用するアデノウイルス核酸配列は、すべてのウイルス遺伝子が欠失しているアデノウイルスゲノム配列である。より特別には、使用するアデノウイルスはアデノウイルスのシス−作用5'および3'逆方向末端反復配列(ITR)(これは複製の起源として機能する)、ならびに天然の5'パッケージング/エンハンサードメイン(これは直鎖状AdゲノムのパッケージングおよびE1プロモーター用のエンハンサー要素に必要な配列を含む)である。これらの配列は、複製およびビリオン包被化に必要な配列である。例えばP.Hearingら、J.Virol.,61(8):2555−2558(1987);M.GrableおよびP.Hering、J.Virol.,64(5):2047−2056(1990);およびM.GrableおよびP.Hering、J.Virol.,66(2):723−731(1992)。本発明に従い、5'ITRおよびパッケージング/エンハンサー領域を含む全アデノウイルス5'配列を、pAdΔシャトルベクター中の5'アデノウイルス配列として使用できる。本発明に有用なAd5ゲノムの左末端(5')配列は、通常のアデノウイルスゲノムのbp1から約bp360に広がり、ウイルスゲノムのマップ単位0−1とも呼ばれる。この配列を本明細書では、配列番号1のヌクレオチド5496−5144、配列番号2のヌクレオチド600−958;および配列番号3のヌクレオチド9611−9254として提供し、そして一般的には約353から360ヌクレオチド長である。この配列は5'ITR(アデノウイルスゲノムのbp1−103)、およびパッケージング/エンハンサードメイン(アデノウイルスゲノムのbp194−358)を含む。図1A、3、5および7を参照にされたい。好ましくはこの天然アデノウイルス5'領域を、非改質態でシャトルベクター中に使用する。しかしこの配列に対して、生物学的機能に悪い影響を及ぼさない欠失、置換および付加を含む幾つかの改質は許容できる。例えば1993年12月9日に公開された国際公開第93/24641号明細書を参照にされたい。これらのITR配列を改質する能力は、当業者の能力の範囲内である。例えば、Sambrookら、“モレキュラークローニング。アラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning.A Laboratory Manual.)”、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク(1989)のようなテキストを参照にされたい。シャトルベクターの3'アデノウイルス配列は、約bp35,353−アデノウイルスゲノムの末端に、またはマップ単位〜98.4−100に広がるアデノウイルスゲノムの右末端(3')ITR配列を含む。この配列を本明細書では、配列番号1のヌクレオチド607−28、配列番号2のヌクレオチド16−596;および配列番号3のヌクレオチド3652−3073として提供し、そして一般的には約580ヌクレオチド長からである。この全配列は、pAdΔシャトルベクターの3'配列として望ましく使用される。好ましくは天然のアデノウイルス3'領域を、非改質状態でシャトルベクター中に使用する。しかしこの配列に対して、生物学的機能に悪い影響を及ぼさない幾つかの改質を許容できる。以下に、および図2Aに記載する本発明のpAdΔシャトルベクターの例には、アデノウイルスゲノムDNAを既に形成されたカプシド頭部にパッケージングするために必要なアデノウイルス配列だけを含むものである。このpAdΔベクターは、5'末端および3'末端配列(図3の記載で確認される)をコードするAd5配列、ならびに以下に記載する導入遺伝子配列を含む。前述の情報から、当業者は本発明のAdΔベクターに使用するために他の均等なアデノウイルス配列を使用するかもしれないと予想される。これらの配列には他のアデノウイルス株またはわずかに改質した上述のシス−作用配列を含むことができる。B.導入遺伝子ベクターおよび組換えウイルスの導入遺伝子配列は、核酸配列またはその逆転写物であり、アデノウイルス配列にヘテロロガスであり、これは目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードする。導入遺伝子は、導入遺伝子転写を可能にする様式で調節成分に操作可能に連結される。導入遺伝子配列の組成は、生成するウイルスが持ち込まれる使用に依存するだろう。例えば導入遺伝子の1種類には、発現に際して検出可能な信号を生成するレポーター配列が含まれる。そのようなレポーター配列には、限定するわけではないが、E.coliベータ−ガラクトシダーゼ(LacZ)cDNA、ヒト胎盤アルカリホスファターゼ遺伝子、およびグリーン蛍光タンパク質遺伝子を含む。これらの配列は、その発現を駆動する調節要素と結合した時に、従来の手段(例えば、紫外線吸収、視覚可能な色の変化等)により検出できる信号を提供する。別の種類の導入遺伝子配列には、宿主細胞中で所望の遺伝子産物を発現する治療用遺伝子を含む。これらの治療用核酸配列は、典型的には遺伝的または非遺伝性の遺伝子欠失を置き換える、矯正するために、あるいは後天的な異常または疾患を処置するために、インビボまたはエクスビボで患者に投与し、そして発現させるための生成物をコードする。遺伝子治療の性能に望ましいそのような治療用遺伝子は、限定するわけではないが、正常な嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)遺伝子(図7を参照にされたい)、低密度リポタンパク質(LDL)遺伝子[T.Yamamotoら、Cell,39:27−28(1984年11月)]、DMD cDNA配列[部分配列はGenBankから入手可能、寄託番号M36673、M36671[A.P.Monacoら、Nature,323:646−650(1986)]およびLO6900、[Robertsら、Hum.Mutat.,2:293−299(1993)]](GenBank)、ならびに当業者に容易に選択できる多数の遺伝子を含む。導入遺伝子の選択は、本発明に限定されることはなく、そのような選択は当業者の知識内にあると考えられる。C.調節要素pAdΔシャトルベクターに関して上記で確認した主な要素に加えて、すなわちアデノウイルス配列および導入遺伝子、ベクターはpAdΔベクターでトランスフェクトされた細胞中で導入遺伝子の発現を駆動するために必要な、通常の調節要素も含む。このベクターは導入遺伝子に連結され、そして導入遺伝子と共に、ベクターのアデノウイルス配列の間に位置する選択されたプロモーターを含む。プロモーターの選択は日常的な事柄であり、pAdΔベクター自体の制限は無い。有用なプロモーターは構成的プロモーターまたは調節される(誘導性)プロモーターでよく、これらは発現する導入遺伝子の量を制御できるだろう。例えば、望ましいプロモーターはサイトメガロウイルス前初期プロモーター/エンハンサーである[例えば、Boshartら、Cell,41:521−530(1985)を参照にされたい]。このプロモーターは、配列番号1のヌクレオチド5117−4524:および配列番号2のヌクレオチド969−1563に見いだされる。別のプロモーターはCMVエンハンサー/ニワトリ β−アクチンプロモーター(配列番号3のヌクレオチド9241−8684)である。別の望ましいプロモーターには、限定するわけではないが、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター/エンハンサーを含む。さらに別のプロモーター/エンハンサー配列は、当業者により選択され得る。またシャトルベクターは、望ましくはアデノウイルス配列にヘテロロガスな核酸配列も含み、その配列には転写物の効率的なポリアデニレーションに必要な信号を、および機能的なスプライスドナーおよびアクセプター部位(SD/SA)を持つイントロンを提供する配列を含む。本発明の例示的ベクターに使用する共通のポリ−A配列は、パピローマウイルスSV−40に由来する[例えば、配列番号1のヌクレオチド837−639;配列番号2の5245−5443;および配列番号3の3887−3684を参照にされたい。]このポリ−A配列は、一般的にベクター中の導入遺伝子配列の後、そして3'アデノウイルス配列の前に挿入される。共通のイントロン配列も、SV−40に由来し、そしてSV−40 Tイントロン配列と呼ばれる[例えば配列番号1のヌクレオチド4507−4376;および配列番号2の1579−1711を参照にされたい]。本発明のpAdΔシャトルベクターはまた、プロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子との間に望ましく位置するようなイントロンも含むことができる。これらのおよび他の共通なベクター要素の選択は、常法であり、そしてそのような多くの配列が入手可能である[例えば、Sambrookら、およびそこに引用された文献を参照にされたい]。そのような上記の調節配列の例は、図3、5および7のプラスミド配列中に与えられている。導入遺伝子、プロモーター/エンハンサー、他の調節ベクター要素の組み合わせは、本明細書では容易に参照するために“ミニ遺伝子(minigene)”と呼ぶ。このミニ遺伝子は、好ましくは上記の5'および3'シス−作用アデノウイルス配列と側面を接している。そのようなミニ遺伝子は、ベクター中にアデノウイルスの初期および後期遺伝子配列が不在であることから、数百塩基対から最高約30kbまでの範囲の大きさを持つことができる。したがって、このAdΔベクター系は、大きさに関して種々のミニ遺伝子の成分の、特に選択される導入遺伝子について、広い選択の範囲が可能となる。本発明の技術が提供されれば、そのようなミニ遺伝子の設計は常法により作成できる。II.ヘルパーウイルスAdΔシャトルベクター中に存在するアデノウイルス配列の量は限定されているので、本発明のヘルパーアデノウイルスは、単独またはパッケージング細胞株と組み合わせて、生産的なウイルス感染のために必要な十分量のアデノウイルス遺伝子配列を提供しなければならない。本発明に有用なヘルパーウイルスは、したがって選択されたアデノウイルス遺伝子配列を含み、そして場合によっては第二のレポーターミニ遺伝子を含む。通常は、完全なアデノウイルス遺伝子の相補を含有するヘルパーアデノウイルスを利用する組換えアデノウイルスの生産は、ヘルパーウイルスの過剰生産が混入する組換えウイルスを生じる。したがって、混入ヘルパーウイルスからウイルスベクターを完全に精製することが必要である。しかし本発明は、ヘルパーウイルスを不能化することにより、精製を容易にし、そして混入を減らす方法を提供する。したがって本発明のヘルパーウイルスの好適な1態様は、3つの成分(A)実質的にヘルパーウイルスのパッケージング機能またはその複製能力を無能化または“不能化”するように、効率的なパッケージングを支配する天然のアデノウイルス遺伝子配列の改質または欠失、(B)選択したアデノウイルス遺伝子および(C)随意にレポーターミニ遺伝子、を含む。これらの“不能化”ヘルパーウイルスは、以下に記載するようにポリ−カチオン結合体中に形成してもよい。ヘルパーウイルスを形成するアデノウイルス配列は、シャトルベクターに関する考察で上記に確認した供給源から得ることができる。ヘルパーウイルスとして種々のAd血清型の使用により、別の血清型アデノウイルスにより形成されたカプシド中に、ΔAd(血清型5)シャトルベクター配列を含有する組換えウイルスの生産が可能になる。これらの組換えウイルスは、種々の組織を標的するために、または血清型5カプシドを有するΔAd配列に対する免疫反応を回避するために望ましい。またこれらの種々のAd血清型ヘルパーウイルスの使用で、組換えウイルス生産、安定性およびより良いパッケージングにも利点が実証される。A.不能化改質本発明のアデノウイルスベクターの生産に使用する望ましいヘルパーウイルスは、上記に確認したその5'ITRパッケージング/エンハンサードメインが改質(または不能化)される。上述のように、このパッケージング/エンハンサー領域は、直鎖状のアデノウイルスゲノム(“PAC"配列)をパッケージングするために必要な配列を含む。さらに特別にはこの配列は、複製したウイルスDNAの効率的な包被化に必要な少なくとも7つの、明らかではあるが機能的に重複するドメインを含む。Ad5ゲノムのbp194−358からのヌクレオチド配列の広がりの中に、5つのこれらの所謂A−反復配列またはPAC配列が位置している(図1Bを参照にされたい)。PAC Iは、アデノウイルスゲノムのbp241−248に位置する(配列番号1のヌクレオチド5259−5246に相補的な鎖上)。PAC IIは、アデノウイルスゲノムのbp262−269に位置する(配列番号1のヌクレオチド5238−5225に相補的な鎖上)。PAC IIIは、アデノウイルスゲノムのbp304−311に位置する(配列番号1のヌクレオチド5196−5183に相補的な鎖上)。PAC IVは、アデノウイルスのbp314−321に位置する(配列番号1のヌクレオチド5186−5172に相補的な鎖上)。PAC Vは、アデノウイルスのbp339−346に位置する(配列番号1のヌクレオチド5171−5147に相補的な鎖上)。対応する配列は配列番号2および3から得られる。PAC Iは配列番号2のヌクレオチド837−851に;そして配列番号3のヌクレオチド9374−9360に相補的な鎖上に位置する。PAC IIは配列番号2のヌクレオチド859−863に;そして配列番号3のヌクレオチド9353−9340に相補的な鎖上に位置する。PAC IIIは配列番号2のヌクレオチド901−916に;そして配列番号3のヌクレオチド9311−9298に相補的な鎖上に位置する。PAC IVは配列番号2のヌクレオチド911−924に;そして配列番号3のヌクレオチド9301−9288に相補的な鎖上に位置する。PAC Vは配列番号2のヌクレオチド936−949に;そして配列番号3のヌクレオチド9276−9263に相補的な鎖上に位置する。以上の表1は、5つの天然のAd5配列および配列内の8つの核酸の広がりの間の類似性に基づく共通PAC配列を掲げる。この共通配列は、核酸がAまたはT(A/T)であることができる2つの位置を含む。当該技術分野で周知の、通常の1文字命名法を核酸に使用する。本発明に従い、突然変異または欠失を1つ以上のこれらPAC配列に作成して、所望の不能化ヘルパーウイルスを作成できる。パッケージングドメインの欠失分析では、包被化効率とゲノムの5'末端に存在するA−反復のパッケージング数との間の陽性の相関が明らかになった。このドメインの改質には、表1のすべてのPAC配列の5つ未満の5'アデノウイルス配列を含んでよい。例えば、2つのみのPAC配列、例えばPAC IおよびPAC II、PAC IIIおよびPAC IV等が不能化ウイルス中に存在できる。選択したPAC配列の欠失には、連続的または非連続的配列の欠失を含んでもよい。例えば、PAC IIおよびPAC IVを欠失させることができ、PAC I、IIIおよびIVを5'配列に残す。さらに場合によっては改質は、1つ以上の天然PAC配列を表1の共通配列の1つ以上の反復に置換してもよい。あるいはこのアデノウイルス領域は、1つ以上の天然のPAC配列を破壊する故意に挿入した突然変異により改質できる。同様に当業者は、所望のレベルにヘルパーウイルスのパッケージング効率を減少させる効果を達成するように、さらにPAC配列を操作できる。上記のPAC配列の操作が関与するヘルパーウイルスの例を、以下の実施例7に開示する。簡単に説明すると、実施例に記載するように、1つのヘルパーウイルスは天然の5'ITR領域(アデノウイルスゲノムbp1−360)の代わりに、アデノウイルスゲノムbp1−269に広がる5'アデノウイルス配列を含み、これは5'ITRおよびPAC IおよびPAC IIだけを含み、そしてアデノウイルス領域bp270−360が欠けている。別のPAC配列改質ヘルパーウイルスは、ITRの5'Ad5配列およびPAC IからPAC IV(Ad bp1−321)のみを含み、PAC VおよびAd領域bp322−360の他の配列を欠いている。これらの改質されたヘルパーウイルスは、ヘルパーウイルス包被化の効率が減少していることが特徴である。パッケージング効率に関連する配列に特別な改質を持つこれらのヘルパーウイルスは、沢山のヘルパーウイルス生産を生じるのに十分高いパッケージング効率を提供するが、それでも本発明のウイルス粒子を形質導入するAdΔの高収率を達成できるほどに十分低い。B.選択されたアデノウイルス遺伝子本発明に有用なヘルパーウイルスは、上記の“不能化”改質を含んでも、または含まなくても、ヘルパーウイルスおよびシャトルベクターによりトランスフェクトされる細胞株に依存して、選択されたアデノウイルス遺伝子配列を含む。好適なヘルパーウイルスは、上記の改質配列に加えて、種々のアデノウイルス遺伝子を含む。1例として、もし組換えウイルスを生成するために使用する細胞が、パッケージング細胞株でないならば、ヘルパーウイルスは野生型のAdウイルスであってよい。すなわち、ヘルパーウイルスは必要な初期遺伝子E1、E2、、E4およびアデノウイルスゲノムのすべての残りの後期、中期、構造的および非−構造的遺伝子を供給する。このヘルパーウイルスは、その天然の5'パッケージング/エンハンサードメインに改質を取り込むことにより、ヘルパーウイルスを不能化できる。望ましいヘルパーウイルスは、複製が欠損し、そしてアデノウイルスの初期の前初期遺伝子E1a(これはmu1.3−4.5に広がる)、および後初期遺伝子E1b(これはmu4.6−11.2に広がる)のすべて、もしくは十分な部分がそれらの通常の生物的機能を排除するために欠けている。そのような複製欠損ウイルスはまた、パッケージング/エンハンサードメイン中に不能化改質を有することもできる。CsCl浮遊密度遠心により濃縮されたAdΔ調製物からアデノウイルスを完全に除去することにまつわる難しさのために、複製欠損アデノウイルスヘルパーの使用は、インビボの動物実験に関して感染性のアデノウイルスの導入を妨げる。このヘルパーウイルスを、293細胞株のような欠失E1タンパク質を供給するパッケージング細胞株と共に使用する。さらに、アデノウイルス後初期遺伝子E3(これはmu76.6−86.2に広がる)のすべて、もしくは部分は、この遺伝子産物が、機能するウイルス形成に必要では無いので、ヘルパーウイルスの機能に悪い影響を及ぼすことなく、本発明に有用なヘルパーウイルスの一部を形成するアデノウイルス配列から排除することができる。したがってE1に加えて、アデノウイルスタンパク質を供給できる他のパッケージング細胞株の存在で、ヘルパーウイルスにはこれらのアデノウイルスタンパク質をコードする遺伝子を欠失させることができる。そのようなさらに欠失したヘルパーウイルスも、上記のような不能化改質を望ましくは含む。C.レポーターミニ遺伝子ヘルパーウイルスが、レポーターミニ遺伝子(中のレポーター遺伝子は、望ましくはシャトルベクターに含有されるレポーター導入遺伝子とは異なる)を含むことも望ましい。上記を参照して、そのような多数のレポーター遺伝子は知られている。pAdΔ上のレポーター遺伝子とは異なるヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子の存在は、組換えAdΔウイルスおよびヘルパーウイルスの両方を独立して監視することを可能にする。例えば、pAdΔシャトルベクターまたはAdΔウイルスにより発現される組換えLacZとは別に、組換えアルカリホスファターゼの発現は、混入アデノウイルスの残存量の監視を可能にする。D.ヘルパーウイルスポリカチオン結合体ヘルパーウイルスの混入を減らすためのさらに別の方法には、ポリ−カチオンヘルパーウイルス結合体の形成が関与し、これはヘルパーウイルス中に存在しない他のアデノウイルス遺伝子を含有するプラスミドと結合する。上記ヘルパーウイルスは、さらにアデノウイルス−ポリリシン結合技術により、さらに改質することができる。例えばWuら、J.Biol.Chem.,264:16985−16987(1989);およびK.J.FisherおよびJ.M.Wilson,Biochem.J.,299:49(1994年4月1日)(引用により本明細書に編入する)を参照にされたい。この技法を使用して、好ましくは後期アデノウイルス遺伝子を含有するヘルパーウイルスは、ヘルパーウイルスのカプシドの回りに分布するポリ−カチオン配列の付加により改質される。好ましくはポリ−カチオンはポリ−リシンであり、これは負に荷電したベクターのまわり付いて外部に正電荷を形成する。次にプラスミドは、ヘルパーウイルス中には存在しないそのようなアデノウイルス遺伝子(例えばE1、E2および/またはE4遺伝子)を発現するように設計される。このプラスミドはポリ−リシン配列上の電荷を介してヘルパーウイルス−結合体と会合する。この改質も望ましくは、本発明の不能化ヘルパーウイルスを作成するように成される。この結合体(またはトランス−感染粒子とも言う)は、さらなるアデノウイルス遺伝子がヘルパーウイルスから除去されることを可能とし、そして組換えウイルスベクターの生産中にウイルス中に取り込まれるようにならないプラスミド上で存在できるようにする。すなわち、混入の影響はかなり少くなくなる。III.シャトルベクター、ヘルパーウイルスの集成および組換えウイルスの生産本発明のpAdΔシャトルベクターおよびヘルパーウイルスに使用する配列が由来する材料、ならびにシャトルベクター、ヘルパーウイルスおよびAdΔウイルスベクターの構築に使用する種々のベクター成分および配列は、市販のものから、またはこれまでに報告され、そして記載された材料に基づき、学術的な供給源から得られる。これらの材料は、個々の患者から得ることもでき、または当該技術分野で周知かつ実施されている標準的な組換え分子クローニング法を使用して生成そして選択できる。配列欠失、挿入および他の突然変異を含む、ベクターおよびウイルスを形成する存在する核酸配列の任意の改質も、標準的技法を使用して生成される。通常の技法を使用して、アデノウイルスの選択されたDNA配列、およびレポーター遺伝子または治療用遺伝子、および他のベクター要素をpAdΔシャトルベクター中へ集成することは、以下の実施例1に記載する。そのような技法には、テキスト[Sambrookら、上述]中に記載されたような通常のcDNAのクローニング法、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応および望まれるヌクレオチド配列を提供する任意の適当な方法を含む。標準的なトランスフェクションおよびコトランスフェクション法は、例えばHEK293細胞株を使用するCaPO4トランスフェクション法を使用する。本発明に使用する他の常法は、ウイルスゲノムの相同的組換え、寒天重層中でのウイルスのプラーク形成、信号生成の測定等を含む。本発明のAdΔベクターまたはヘルパーウイルスの集成は、本発明の技法に基づき、当該技術分野の範囲内である。A.シャトルベクター以下の実施例1、ならびに図2Aおよび図3に報告するプラスミドのDNA配列で詳細に記載するように、本発明の独特なpAdΔシャトルベクターpAdΔ.CMVLacが生成される。pAdΔ.CMVLacZは5'末端をコードするAd5配列、続いてCMVプロモーター/エンハンサー、スプライスドナー/スプライスアクセプター配列、細菌ベータガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)、SV−40 ポリ−配列(pA)、Ad5由来の3'ITRおよびプラスミドpSP72(プロメガ)骨格からの残りのプラスミド配列を含む。ベクター中に組み込まれるAdΔゲノムを生成するために、プラスミドpAdΔ.CMVLacZはEcoR Iを用いて消化されて、AdΔ.CMVLacZゲノムを放出し、アデノウイルスITRを遊離し、そして複製のために利用できる標的にしなければならない。このようなベクターの生成は“制限−依存的”、すなわち複製鋳型の制限エンドヌクレアーゼの援助が必要である。図2Bを参照にされたい。5'末端配列に関して、頭−から−尾への配列中に3'末端配列を置く、第二型のpAdΔプラスミドを設計した。実施例1および図4Aに記載するように、そして図5に報告されたプラスミドのDNA配列により、本発明の第二の独特なAdΔベクター配列、AdΔc.CMVLacZをシャトルプラスミド、pAdΔc.CMVLacZ(これは頭−から−尾にAd5 5'ITR配列および3'ITR配列が配置され、続いてCMVエンハンサー/プロモーター、SD/SA配列、LacZ遺伝子およびpA配列を、プラスミドpSP72(プロメガ)骨格中に含む)から生成した。実施例1Bに記載するように、この“制限−非依存的”プラスミドは、AdΔゲノムが複製されることを可能とし、そしてエンドヌクレアーゼ処理を含まずにプラスミド骨格から取り出す(rescued)ことを可能にする(図4Bを参照にされたい)。B.ヘルパーウイルス実施例2に詳細に記載するように、通常のE1欠失アデノウイルスヘルパーウイルスの例はAd.CBhpAPであり、これはmu0−1から5'アデノウイルス配列、ニワトリ β−アクチンプロモーターの転写制御下にヒト胎盤アルカリホスファターゼ(hpAP)を含むレポーターミニ遺伝子、続いてSV−40からのポリ−A配列、続いて9.2−78.4および86−100からのアデノウイルス配列を含む。このヘルパーはmu1.0−9.2および78.4−86からの欠失を含み、これは実質的にウイルスのE1領域およびE3領域を排除する。このウイルスは、望ましくはそのパッケージングエンハンサードメインへの改質により、本発明に従い不能化され得る。本発明の不能化ヘルパーウイルスの例は、実施例7に記載する技術を使用して説明され、そして改質5'PAC配列、すなわちアデノウイルスゲノムbp1−269;m.u.0−0.75またはアデノウイルスゲノムbp1−321;m.u.0−0.89を含む。簡単に述べると、5'配列はPCRにより改質され、そして常法により通常のアデノウイルス基本プラスミド中にクローン化される。hpAPミニ遺伝子は、このプラスミド中に組み込まれ、これは次にE3欠失アデノウイルスdl7001を用いた相同的組換えにより変化させられて、レポーターミニ遺伝子がその3'末端でにアデノウイルス配列m.u.9.6−78.3および87−100に続くように改質ベクターを生じる。ポリ−L−リシン結合体ヘルパーウイルスの生成は、本質的に以下の実施例5および図10に詳細に記載されるように、ポリ−L−リシンをAd.CBhpAPビリオンカプシドにカップリングすることにより表される。あるいは同じ手法を、本発明のPAC配列改質ヘルパーウイルスで使用できる。C.組換えAdΔウイルス上述のように、ヘルパーウイルスおよび/またはパッケージング細胞株の存在下でのpAdΔシャトルベクターは、シャトルベクター中のアデノウイルス−導入遺伝子配列が複製され、そしてビリオンカプシド中にパッケージングされ、組換えAdΔウイルスを生成することを可能とする。そのようなAdΔウイルスの生成するための現在の方法は、トランスフェクションを基本とし、実施例3に詳細に記載されている。簡単に述べると、ヘルパーウイルスは、パッケージング細胞株ヒトHEK293のような細胞を感染さるために使用し、これは続いて選択した導入遺伝子を含むpAdΔシャトルベクターで常法によりトランスフェクトされる。トランスフェクションの約30時間以上後に、細胞を収穫し、そして抽出物を調製する。このAdΔウイルスゲノムは、セシウム勾配中でヘルパーウイルスよりも低い密度で沈降するビリオン中にパッケージングされる。すなわち選択した導入遺伝子を含む組換えAdΔウイルスは、CsCl勾配中の浮遊密度超遠心を介して精製することにより、ほとんどのヘルパーウイルスから分離される。AdΔ形質導入ウイルの収率は、大部分がpAdΔシャトルプラスミドでトランスフェクトされた細胞数に依存し、高収率でトランスフェクション手順を使用するために望ましくなる。そのような1つの方法には、上記のポリ−L−リシン化ヘルパーアデノウイルスの使用が関与する。上記のような適当なプロモーターの制御下に所望する導入遺伝子を含むpAdΔシャトルプラスミドを、次に正に荷電したヘルパーウイルスカプシドと直接複合体化し、1つのpAdΔシャトルベクターおよびヘルパーウイルスのヘルパー機能を含むトランスフェクション粒子を形成する。強調される原理は、プラスミドpAdΔ DNAで被覆されたヘルパーアデノウイルスが、付加された核酸を細胞膜を通し、そして通常の細胞に入るメカニズムに従い細胞質中に共輸送する。したがってポリ−L−リシン改質ヘルパーアデノウイルスは、AdΔ−基本複合体の内容中に多くの役割が予想される。第一は、これはそこにプラスミドDNAが結合できる構造的土台であり、効果的濃度を増加させる。第二に、レセプターが媒介するウイルスの飲食作用は、細胞がプラスミドDNAを取り込む媒体を提供する。第三に、アデノウイルス感染と関連するエンドソーム活性は、内面化プラスミドの細胞質への放出を容易にする。そしてアデノウイルスは、形質導入ウイルス粒子の複製およびパッケージングに関して、組換えAdΔウイルスが依存するトランスヘルパー機能に貢献する。このpAdシャトルベクターおよびポリカチオンヘルパー結合体を使用するAd−基本トランスフェクション法は、実施例6に詳細に記載する。さらにすでに記載したように、ヘルパーウイルス−プラスミド結合物は、pAdΔベクター中に存在しない削除されたアデノウイルス遺伝子の別のヘルパーウイルス輸送形態でもあり得る。そのような構造は必要なアデノウイルス遺伝子の残りを、プラスミドとヘルパーウイルスとの間に分割することができ、ヘルパーウイルスの自律−複製効率を下げる。本発明の組換えAdΔウイルスを生成するための現在好適な方法は、上記記載の不能化ヘルパーウイルスまたは不能化ヘルパーウイルス結合体を用いて、上記記載のようにトランスフェクションすることが関与する。本発明の”不能化”ヘルパーウイルスはそれ自体を効率的にパッケージングできず、したがって以下の実施例に記載するように、CsCl勾配中の浮遊密度超遠心により、本発明の新しくパッケージされたAdΔベクターからヘルパーウイルスの容易な分離を可能にする。IV.組換えAdΔウイルスの機能シャトルベクターおよびヘルパーウイルスの共同作業により、いったん本発明のAdΔウイルスが生成されると、このAdΔウイルスは選択した標的細胞を標的とし、そして取り込まれることができる。標的細胞の選択もまた、導入遺伝子が患者に再送達されるために望ましい細胞型中で生産されるためにインビトロまたはエクスビボで、または特別な細胞型または組織へ送達されるためにインビボで複製されようとされまいと、組換えウイルスの使用に依存する。標的細胞は、任意の哺乳類細胞でよい(好ましくはヒト細胞)。例えばインビボ使用では、組換えウイルスは、投与の経路に依存して、通常アデノウイルスに感染する任意の細胞型、すなわち限定するわけではないがニューロン、肝細胞、上皮細胞等を標的とすることができる。ヘルパーアデノウイルス配列は、AdΔによるウイルスの取り込みを可能にするために必要な配列を供給する。いったん組換えウイルスが細胞に取り込まれると、導入遺伝子と両側が接するアデノウイルスは他の組換えアデノウイルスと同様に、元のアデノウイルス骨格から感染細胞の機構により取り出される(rescued)。いったんAdΔウイルスのゲノムから外されると(取り出される:rescued)と、この組換えミニ遺伝子は宿主クロマチン中に組み込み部位を見つけ、そしてその中に一時的または安定して組み込まれるようになり、宿主細胞中に付随する導入遺伝子の発現を提供する。V.遺伝子治療におけるAdΔウイルスの使用本発明の新規組換えウイルスおよびウイルス結合体は、身体の遺伝子治療のために効率的な遺伝子転移媒体を提供する。これらのウイルスは、例示ウイルスおよびベクター中で説明するLacZレポーター導入遺伝子の代わりに治療用遺伝子を含むように調製される。治療用導入遺伝子を含むAdΔウイルスの使用により、これらの導入遺伝子はインビボまたはエクスビボで患者に送達されて、標的細胞中に所望する遺伝子の組み込みを提供する。すなわち、これらのウイルスは遺伝的欠損症または欠陥を矯正するために使用できる。嚢胞性繊維症の処置のためのAdΔ遺伝子転移媒体の生成例を、以下の実施例4に記載する。当業者は他の疾患の処置のために選択した遺伝子を含むことにより、任意の多数の他の遺伝子転移媒体を生成できる。本発明の組換えウイルスは、好ましくは生物的に適合性のある溶液または薬学的に許容できる送達媒体の状態で患者に投与できる。適当な媒体には滅菌塩水を含む。薬学的に許容できるキャリアーであると知られ、そして当業者には周知の他の水性または非−水性の等張滅菌注射用溶液、ならびに水性および非−水性の滅菌懸濁液を、この目的に使用できる。医学分野の当業者によって決定できる悪影響が無く、または医学的に許容できる生理学的効果を持つ治療上の利益を提供するために、本発明の組換えウイルスを、所望の細胞をトランスフェクトし、そして選択した導入遺伝子の十分なレベルの組み込み、および発現を提供するように、十分量で投与することができる。通常の、そして薬学的に許容できる投与の非経口経路には、標的器官、組織または部位への直接的送達、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮的投与を含み、そして経口投与を含む。投与経路は所望により組み合わせることができる。組換えウイルスの投与量は、主に処置する症状、選択する遺伝子、患者の年齢、体重および健康状態のような因子に依存し、そしてこのように患者によって変動するだろう。本発明のウイルスの治療的に有効なヒトへの投与量は、約1×107−約1×1010pfu/mlの本発明のウイルス濃度を含む約20−約50ml範囲の塩溶液であると考えられる。好適なヒト投与量は、上記濃度の約20mlの塩溶液である。投与量は任意の副作用に対して、治療上の利益のバランスを取るために調整される。投与量の選択、調整または頻度を決定するために、選択した遺伝子の発現レベルを監視することができる。以下の実施例は、本発明のpAdΔシャトルベクター、ヘルパーウイルスおよび組換えAdΔウイルスのの構築、ならびにそれらの遺伝子治療における使用を説明する。これらの実施例は説明を意図するだけで、本発明の範囲を限定するものではない。実施例1−pAdΔ.CMVLacZおよびpAdΔc.CMVLacZシャトルベクターの生成A.pAdΔ.CMVLacZヒトアデノウイルスAd5配列を、E1a領域に欠損を含むように改質し[マップ単位1−9.2]、これはAd5'領域(bp1−360)の直後に続く(図1Aに説明)。すなわちプラスミドは5'ITR配列(bp1−103)、天然のパッケージング/エンハンサー配列およびE1a領域にTATAボックスを含む(bp104−360)。CMV前初期エンハンサー/プロモーター、SD/SA配列、細胞質lacZ遺伝子およびSV40ポリA(pA)を含むミニ遺伝子を、E1a欠損部位に挿入した。この構築物をさらに、ミニ遺伝子の後に3'ITR配列(bp35,353−末端)が続くように改質した。これらの成分のこのDNA配列を、図3および配列番号1に提供する。(この図面の簡単な説明も参照にされたい)。次にこの構築物を、常法によりpSP72ベクター(プロメガ)骨格中にクローン化し、環状のシャトルベクターpAdΔCMVLacZを作成した。図2Aの概略図を参照にされたい。この構築物は、5'および3'Ad5 ITR配列と両端を接するEcoR I部位で工作した。次にpAdΔ.CMVLacZをEcoR Iによる酵素消化に供し、プラスミド骨格からの3'ITR配列の末端を通ってAd 5'ITR配列の末端に広がるベクターの直鎖状断片を放出した。図2Bを参照にされたい。B.pAdΔc.CMVLacZシャトルベクターpAdΔc.CMVLacZ(図4Aおよび5)は、pSP72(プロメガ)骨格を使用して、Ad 5'ITRおよび3'ITRが頭−から−尾に位置するように構築した。Ad5 ITRsの組織は、頭−から−尾に一緒に融合している末端を有する環状Adゲノムが、直鎖状のAdゲノムに匹敵する感染レベルであると提案する報告に基づいた。CMVエンハンサー、SD/SA配列、LacZ遺伝子およびポリA配列をコードするミニ遺伝子を、5'ITRの直後に挿入した。生成したプラスミドのDNA配列および個々の成分の配列は、図5および配列番号2に報告する(図5の図面の簡単な説明も参照にされたい)。このプラスミドはウイルス粒子を生成するために、使用前に酵素消化を必要としない(実施例3を参照にされたい)。このベクターは、制限−非依存的なLacZ AdΔベクターの生産が可能となるように設計された。実施例2−ヘルパーウイルスの構築Ad.CBhpAPヘルパーウイルス[K.Kozarskyら、Som.Cell.Mol.Genet.,19(5):449−458(1993)]は、アルカリホスファターゼミニ遺伝子を含む複製欠損アデノウイルスである。この構築には、常法のクローニングおよび相同的組換え法が関与した。アデノウイルスDNA物質をCsCl精製d17001ビリオン、非本質的E3領域中のmu78.4から86の間に3kbの欠失を持つAd5(血清型サブグループC)変異体(ミズーリ州、セントルイスのワシントン大学のWilliam Wold博士により提供された)から抽出した。ウイルスDNAは、コトランスフェクションのためにCla I(アデノウイルスゲノムのbp917位)で消化することにより調製し、これはアデノウイルスマップ単位0−2.5を包含するゲノムの左腕を除去する。下図の図1Bの参照にされたい。親のクローニングベクター、pAd.Bgl IIを消化した。これはヘテロロガス配列を挿入するために、独特なBgl IIクローニング部位により分けられた2つの野生型Ad5ゲノムセグメントを含む(すなわち、マップ単位0−1および9−16.1)。2つのドメイン間で失ったAd5配列(アデノウイルスゲノムbp361−3327)により、ウイルスDNAとの組換え後、E1aおよびほとんどのE1bの欠失を生じる。組換えhpAPミニ遺伝子を設計し、そしてpAd.Bgl IIのBgl II部位に挿入して、相補的プラスミド、pAdCBhpAPを生成した。このミニ遺伝子の直鎖状の配列には:(a)ニワトリ 細胞質β−アクチンプロモーター[T.A.Kostら、Nucl.Acids Res.,11(23):8287(1983)に記載されているヌクレオチド+1−+275;図7のヌクレオチド9241−8684];(b)SV40イントロン(例えば、配列番号2のヌクレオチド1579−1711)、(c)ヒト胎盤アルカリホスファターゼの配列(Genbankから入手可能)および(d)SV40ポリアデニレーションシグナル(初期および後期転写単位の両方からの開裂/ポリ−Aシグナルを含む237 BamH I−Bcl I制限断片;例えば配列番号1のヌクレオチド837−639)を含む。生成した相補化プラスミド、pAdCBhpAPは一端がアデノウイルス座の0−1、および他の一端が9.2−16.1に両端を接する組換えhpAPミニ遺伝子の1コピーを含んだ。プラスミドDNAを、アデノウイルスマップ単位ゼロ(0)に隣接する5'の独特のNhe I部位を使用して直鎖状とし、そして上記に確認したアデノウイルス物質および相補化プラスミドDNAを、293細胞[ATCC CRL1573]に、標準的なリン酸カルシウムトランスフェクション法を使用してトランスフェクトした[例えば、Sambrookら、上述を参照にされたい]。アデノウイルスマップ単位9−16.1にマップされる配列が関与する相同組換えの最終結果は、アデノウイルスマップ単位0−1を含むハイブリッドAd.CBhpAPヘルパーウイルスであり、そしてd17001アデノウイルス物質のE1aおよびE1bコーディング領域の代わりは、プラスミドからのhpAPミニ遺伝子であり、E3(78.4−86mu)領域に欠失を持つAd配列9−100が続いた。実施例3−組換えAdΔウイルスの生産本発明の組換えAdΔウイルスを、ヘルパーウイルスと共にシャトルベクターのコトランスフェクションにより、選択したパッケージングまたは非パッケージング細胞株中で生成する。以下に詳細に記載するように、実施例1Aで提供された直鎖状断片または実施例1BのLacZを持つ環状AdΔゲノムを、常法を使用してAd.CBhpAPヘルパーウイルス(実施例2)中にパッケージングし、これは図2Cに説明するように空のカプシド頭部を提供する。成功裏にpAdシャトルゲノムをカプシド頭部に取り込んだこのようなウイルス粒子は、LacZおよびhpAPのディファレンシャル(differential)発現によりhpAP遺伝子を含むものから識別できる。さらに詳細には、293細胞(4×107pfu 293 細胞/150mm皿)をまき、そしてヘルパーウイルスAd.CBhpAP(実施例2に記載のように生成)を、20mlのDMEM/2%ウシ胎児血清(FBS)中の5MOIで感染させた。このヘルパー特異的マーカーは、精製前および後にAdΔ調製物中のヘルパーウイルス混入レベルを監視するために大変重要である。このヘルパーウイルスは、AdΔCMVLacZゲノムの合成およびパッケージングに必要なヘルパー機能をトランスで提供する。感染2時間後、制限−依存的シャトルベクターまたは制限−非依存的シャトルベクターのいずれかを使用して、各々LacZミニ遺伝子を持つプラスミドpAdΔ.CMVLAcZ(EcoR Iで消化)またはpAdΔc.CMVLAcZ DNAを、リン酸カルシウム沈殿により細胞に加えた(50μgのプラスミドDNAを含有する2.5mlのリン酸カルシウムトランスフェクションカクテル)。トランスフェクションの30−40時間後、細胞を収穫し、10mM Tris−Cl(pH8.0)(0.5ml/150mmプレート)に懸濁し、そして−80℃で凍結した。凍結細胞懸濁物を3回の凍結(エタノール−ドライアイス)−解凍(37℃)サイクルに供して、ビリオンカプシドを放出させた。細胞屑を遠心により除去し(5,000×g、10分間)、そして清澄化上清をCsCl勾配に適用して組換えウイルスをヘルパーウイルスから以下のように分離した。不連続CsCl勾配(1.2g/ml、1.36g/mlおよび1.45g/ml 10mM Tris−Cl(pH8.0)の等容量のCsClから成る)に乗せた上清(10ml)を、8時間、72,128×gで遠心し、不完全に形成したビリオンから感染性のヘルパーウイルスを分離した。画分はヘルパーと最上成分との間の境界面から回収し、そしてサザンブロットハイブリダイゼーションにより、またはLacZ形質導入粒子の存在について分析した。機能的分析には、同画分からのアリコート(各試料から2.0ml)を293細胞の単層に加え(35mmウェル中)、そして組換えβ−カラクトシダーゼの発現を24時間後に測定した。より特別には、単層を回収し、0.3mlの10mM Tris−Cl(pH8.0)緩衝液に懸濁し、そして3回の凍結−解凍サイクルにより抽出物を調製した。細胞屑を遠心により除去し、そして上清をβ−ガラクトシダーゼ(LacZ)活性について、J.Priceら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84:156−160(1987)に記載の手法に従い試験した。比活性(ミリ単位β−ガラクトシダーゼ/mgタンパク質またはレポーター酵素は、指示細胞から測定した。組換えウイルスに関しては、比活性は116であった。不連続勾配からβ−ガラクトシダーゼ活性を持つ画分を、平衡セシウム勾配を通して沈降させて、さらにAdΔウイルスの調製物を濃縮した。直線的勾配は、密度1.29−1.34gm/mlに広がる組換えウイルスの領域中に形成された。感染した293細胞中でβ−gal活性の出現時に検出される組換えウイルスの鋭いピークが、1.31と1.33gm/dlとの間で溶出した。この組換えウイルスのピークは、2つの主要なA260nm吸収ピークの間に位置し、そしてヘルパーウイルスがある勾配の領域中を沈殿するように落とした。平衡沈降勾配では、別にヘルパーウイルスから組換えウイルスの102−103倍の精製度が達成された。2の沈降後に50プレート調製物から回収された組換えAdΔ.CMVLacZウイルスの収率は、107−108形質導入粒子の範囲であった。組換えベクターでトランスフェクトし、そしてヘルパーで感染させた細胞の溶解物分析では、ベクター中に含まれる組換えミニ遺伝子を形質導入できるビリオンが明らかになった。画分のアリコートを、組換えウイルスまたはヘルパーウイルスに特異的なプローブを使用して、サザン分析に供すると、配列に由来するベクターの多数の分子形のパッケージングが明らかになった。欠失ウイルスゲノムの主な形は、対応する二重鎖DNAモノマー(AdΔ.CMVLacZ)の大きさ(〜5.5kb)であり、多くはないが、明らかな高分子量種(〜10kbおよび〜15kb)も存在した。完全長のヘルパーウイルスは35kbである。重要なことには、ベクター形質導入活性のピークが、欠失ウイルスの最高の分子量に対応する。これらの結果は、ITRおよび連続的パッケージング配列のみが、ビリオン中への取り込みに必要な要素であるという仮定を確実にする。組換えAdモノマーゲノムの明らかな順序または好適な再配列は、より生物学的に活性な分子を導く。欠失ゲノムがより大きい分子種は、モノマー欠失ウイルスゲノムよりも2×および3×倍大きいという事実は、再配列には元のゲノムの連続的な二量化が関与することを示唆している。これらと同じ手法を、前述のように不能化ヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス結合体を使用して、組換えAdΔウイルスの生産に適合できる。実施例4−治療用ミニ遺伝子を含む組換えAdΔウイルス組換えAdΔウイルス系の用途の広さを試験するための、pAdΔCMVLacZから得たレポーターLacZミニ遺伝子は、CFTRをコードする治療用ミニ遺伝子で置き換えたカセットであった。ミニ遺伝子は、キメラCMVエンハンサー/ニワトリβ−アクチンプロモーター要素(T.A.Kostら、Nucl Acids Res.,11(23):8287(1983)に記載のヌクレオチド+1−+275;図7、配列番号3のヌクレオチド9241−8684)の転写制御下に、ヒトCFTR cDNA[Riordanら、Science,245:1066−1073(1989);配列番号3のヌクレオチド8622−4065]、続いてSV−40ポリ−A配列(図7、配列番号3のヌクレオチド3887−3684)を含んだ。CFTRミニ遺伝子を、E1aにmu1−9.2からの欠失を、そしてE3にmu78.4−86からの欠失を含むAd5ウイルス(pAd.E1Δと呼ぶ)のE1欠失部位に挿入した。生成したpAdΔ.CBCFTRと呼ぶシャトルベクター(図6および図7[配列番号3]のDNA配列を参照にされたい)は、pAdΔCMVLacZの同じAd ITRを使用したが、Ad5配列はEcoR Iの代わりにNhe I部位で末端化された。したがってプラスミドからのミニ遺伝子の放出は、Nhe Iでの消化により行われた。実施例3に記載したベクター生成系を、ヘルパーウイルスAd.CBhpAP(実施例2)を使用して採用した。150mm培養皿中で80−90%の集密度に成長した293細胞の単層を、5のMOIでヘルパーウイルスを用いて感染させた。感染は、2%FBSを補充したDMEM中で20ml培地/150mmプレートで行った。感染の2時間後、50μgのプラスミドDNA(2.5mlのトランスフェクションカクテル中)を各プレートに加え、そして均等に分散させた。293細胞中へのpAdΔ.CBCFTRプラスミドの送達は、リン酸カルシウム沈殿の形成およびCsCl浮遊密度超遠心によりAd.CBhpAPヘルパーウイルスから分離したAdΔ.CBCFTRウイルスにより以下のように媒介された:細胞をこの条件中に10−14時間置き、その後、感染/トランスフェクション培地を20mlの新しいDMEM/2%FBSと交換した。トランスフェクションの約30時間後、細胞を回収し、10mM Tris−Cl(pH8.0)緩衝液(0.5ml/150mmプレート)に懸濁し、そして−80℃で保存した。凍結した細胞懸濁物を3回の連続した凍結(エタノール−ドライアイス)−解凍(37℃)サイクルにより溶解した。細胞屑を遠心により除去し(5,000×g、10分間)、そして10mlの清澄化抽出物を、10mM Tris−Cl(pH8.0)緩衝液中に密度、1.45g/ml、1.36g/mlおよび1.20g/ml CsClを持つ3つの9.0mlの層から成るCsCl段階勾配に重層した。遠心は4℃にて8時間、ベックマン(Beckman)SW−28ローター中で、20,000rpmで行った。画分(1.0ml)は、遠心管の底から回収し、そしてrΔAd形質導入化ベクターについて分析した。ピーク画分を合わせ、そして平衡のバンドにした。形質導入化ビリオンを含む画分を、20mM HEPES(pH7.8)/150mM NaCl(HBS)に対して透析し、そして10%グリセロールの存在下で−80℃にて保存するか、または−20℃にて液体(HBS+40%グリセロール)で保存した。超遠心後に回収した画分を、導入遺伝子発現およびベクターDNAについて分析した。LacZ ΔrAdベクターについて、2μlのアリコートを35mm培養ウェル中にまかれた293細胞単層に加えた。24時間後、細胞を回収し、0.3mlの10mM Tris−Cl(pH8.0)緩衝液に懸濁し、そして3回の凍結−解凍により溶解した。細胞屑を遠心により除去し(15,000×g、10分間)、そして全タンパク質[Bradford,(1976)]およびβ−ガラクトシダーゼ活性[Sambrookら、(1989)]についてONPG(o−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド)を基質として使用してアッセイした。AdΔ.CBCFTRベクターからのCFTRタンパク質の発現を、免疫蛍光の局在化により測定した。AdΔ.CBCFTRのアリコート(2回の超遠心により濃縮され、そしてHBS保存緩衝液と交換した)を、CF移植受容者の肺から得た気道上皮細胞の初代培養物に加えた。ベクターの添加24時間後、細胞を回収し、そしてガラススライドに遠心力を使用して固定し(Cytospin3、シャンドンサイエンティフィック社:Shandon Scientific Limited)。細胞を新しく調製した3%パラホルムアルデヒド(PBS中、1.4mM KH2PO4、4.3mM Na2HPO4、2.7mM KClおよび137mM NaCl)で15分間、室温(RT)で固定し、PBS中で2回洗浄し、そして室温で10分間、0.05% NP−40を用いて透過した。免疫蛍光法は、10%ヤギ血清(PBS/GS)中で1時間、室温のブロッキング工程から始まり、続いて第一モノクローナルマウス抗−ヒトCFTR(R−ドメイン特異的)抗体(ジェンザイム:Genzyme)(PBS/GS中で1:500に希釈)に2時間、室温で結合させた。細胞をPBS/GSで徹底的に洗浄し、そして室温で1時間、ロバ抗−マウスIgG(H+L)FITC結合抗体(ジャクソン イムノリサーチ ラボラトリーズ:Jackson ImmunoResearch Laboratories)(PBS/GS中で1:100に希釈)と一緒にインキューベーションした。ベクターDNAのサザン分析に、5μlのアリコートをCsCl画分から直接取り、そして20μlのカプシド消化緩衝液(50mM Tris−Cl、pH8.0;1.0mM EDTA、pH8.0;0.5% SDS、および1.0mg/mlプロティナーゼK)と50℃で1時間インキューベーションした。反応はRTに冷却し、添加色素を加え、そして1.2%アガロースゲルを通して電気泳動した。分解したDNAをナイロン膜(Hybond−N)上に電気ブロットし、そして32−P標識制限断片とハイブリダイズした。ブロットをオートラジオグラフィーで分析するか、またPhosphorimager 445SI(モレキュラーダイナミックス:Molecular Dynamics)でスキャンした。勾配画分のサザンブロット分析から得た結果は、ヘルパーAd.CBhpAp DNAよりも早く移動する明らかなウイルスバンドを示した。最高のウイルス力価が、画分3および4にマップされた。画分4中のバンドの定量では、Ad.CBhpAPの力価はAdΔCBCFTRの約1.5×大きいことを示した。しかし、もし2つのウイルス間の大きさの差異を計算に入れると(Ad.CBhpAp=35kb;AdΔCBCFTR=6.2kb)、AdΔCB.CFTRのウイルス力価(1粒子=1DNA分子の場合)は、Ad.CBhpApのウイルス力価より少なくとも4−倍より大きい。勾配画分のサザンブロット分析はAdΔウイルス粒子の生成を示すために有用であったが、これはAdΔウイルスの精製に超遠心の利用性も示していた。この後者を考慮すると、LacZおよびCFTR形質導入化ウイルスの両方が、CsCl中で感染性アデノウイルスヘルパービリオン(1.34g/ml)と不完全に形成されたカプシド(1.31g/ml)との間の中間密度にバンドを形成した。ヘルパーウイルスに比べて、より軽い密度はAdΔウイルスが持つより小さいゲノムの結果らしい。これはさらに、ウイルスの大きさの変化がAdΔウイルスの密度および精製に影響を及ぼすことを示唆している。これにもかかわらず、ヘルパーウイルスからAdΔウイルスを分離する能力は重要な観察であり、そしてさらなる精製がCsClを介する連続的バンド化により達成できることを示唆している。この組換えウイルスは遺伝子治療だけに有用であり、または好ましくは本明細書に記載のように調製される結合体の状態で有用である。実施例5−CF気道上皮細胞中の遺伝的欠損のAdΔCB.CFTRを用いた矯正上記に提供された組換えウイルスを利用する、嚢胞性繊維症の治療は特にインビボで、肺に向けられた遺伝子治療に適する。CFの肺合併症は通常、CFの最も病的で、かつ生命を制限するものであるため、気道上皮細胞は、遺伝子転移のための最も望ましい標的である。組換えAdΔCB.CFTRウイルスを、連続的なCsCl勾配で分画し、そしてCFTR配列を含む画分(上記のアデノウイルスと最上成分画分との間に移動する)を、CF患者の肺に由来するヒト気道上皮細胞の初代培養物を感染するために使用した。培養物を免疫細胞化学により、続いてCFTRタンパク質の発現について分析した。マウス抗−ヒトCFTR(Rドメイン特異的)抗体を用いた免疫蛍光検出を、組換えウイルスの添加24時間後に行った。mock感染CF細胞の分析は、Rドメイン特異的CFTR抗体への有意な結合を表さなかった。組換えウイルスに暴露された初代気道上皮培養物は、10−20%の細胞に高レベルのCFTRタンパク質を示した。このようにCFTR遺伝子を含む本発明の組換えウイルスは、例えば上記のウイルスを吸入され得る調製物中に配合することにより、気道に直接運ばれることができる。例えば、CFTR遺伝子を含む本発明の組換えウイルスまたは結合体を、0.25モルの塩化ナトリウムに懸濁する。このウイルスまたは結合体は、呼吸気道細胞により取り込まれ、そして遺伝子が発現される。あるいは本発明のウイルスまたは結合体を、CFTR遺伝子を持つウイルスの部位−特異的注入を含む他の適当な手段により送達できる。CFTR遺伝子送達の場合では、気管支点滴注入に好適な溶液は、本発明のウイルスを約1×107−1×1010pfu/mlの範囲で、より好ましくは約1×108−1×109pfu/mlの範囲で含む滅菌生理塩溶液である。本発明の遺伝子治療組換えウイルスの使用による、他の適当な嚢胞性繊維症の処置法は、CFに関する他の種類の遺伝子治療ベクターの技術考察から得られる。例えば、米国特許第5,240,846号明細書を参照にされたい(これは引用により本明細書に編入される)。実施例6−ポリカチオンヘルパーウイルス結合体の合成本発明のヘルパーウイルスの別の形態は、pAdΔシャトルプラスミドが直接ヘルパーウイルスカプシドと複合体を形成できる、ポリリシン結合体である。この結合体はヘルパーウイルスと一列に並んだシャトルプラスミドpAdΔシャトルベクターの効率的送達を可能とし、これにより別個のトランスフェクション工程の必要性を除く。この構築物の概略図は図10を参照にされたい。あるいは、幾つかのAd遺伝子を供給するプラスミドおよびAdΔウイルスベクターの生産のために必要な残りの遺伝子を供給するヘルパーとのそのような結合体は、上記のようにヘルパーウイルスの混入を減らすために新規方法を提供する。Ad.CBhpAPの大規模なエクスパンジョンの精製ストックは、ポリ−L−リシンをビリオンカプシドに、K.J.FisherおよびJ.M.Wilson,Biochem.J.,299:49−58(1994)に記載のように本質的にカップリングすることにより改質し、Ad.CBhpAP−(Lys)n結合体を生成した。この手順は3工程を含む。第一に、CsClバンド精製ヘルパーウイルスAd.CBhpAPを、ヘテロ二官能性架橋剤スルホ−SMCC[スルホ−(N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート](ピアス:Pierce)と反応させた。0.5mgの(375nmol)のスルホ−SMCCおよび6×1012A260ヘルパーウイルス粒子(3.0mlのHBS中)を含む結合体反応は、30℃で45分間、一定の穏やかな震盪でインキューベーションした。この工程には、スルホ−SMCCの活性化N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルと、ベクター中のアデノウイルスタンパク質配列(カプシドタンパク質)が寄与する遊離アミン(例えばリシン)の間に、ペプチド結合の形成が関与し、マレイミド−活性化ウイルス粒子を生じた。この活性化アデノウイルスを図10に示し、求核性のマレイミド部分で標識したカプシドタンパク質ファイバーを有する。実際、ヘキソンおよびペントン基本を含む他のカプシドポリペプチドも、標的とされる。未導入で、未反応の架橋剤を、50mM Tris/HCl緩衝液、pH7.0、および150mM NaClで平衡化した1cm×15cmのBio−Gel P−6DG(バイオラッドラボラトリーズ、BioRad Raboratories)カラムでゲル濾過により除去した。マレイミド−活性化ヘルパーウイルスを含むピークのA260画分を合わせ、そして氷上に置いた。第二に、50mM トリエタノールアミン緩衝液(pH8.0)、150mM NaClおよび1mM EDTA中に、58kDaの分子量を有するポリ−L−リシンを10mg/mlで、2−イミノチオラン/HCl(Traut試薬;ピアス)を用いてN2下で、2モルの−SH/1モルのポリリシンのモル比にチオール化し;この環状チオイミデートは、ポリ(L−リシン)一級アミンと反応し、チオール化ポリカチオンを生成した。室温で45分間インキューベーションした後、取り込まれたTraut試薬を除去するために、反応物を50mM Tris/HCl緩衝液(pH7.0)、150mM NaClおよび2mMEDTAで平衡化した1cm×15cmのBio−Gel P−6DGカラムに乗せた。遊離チオール基の定量は、エルマン試薬[5,5'−ジチオ−ビス−(2−ニトロ安息香酸)]を用いて行い、約3−4モルの−SH/モルのポリ(L−リシン)が明らかとなった。カップリング反応は、1×1012A260のマレイミド−活性化ヘルパーウイルス/mgチオール化ポリ(L−リシン)粒子を加えることにより開始し、そして混合物を氷上で4℃にて15時間、アルゴン下でインキューベーションした。2−メルカプトエチルアミンを反応の完了時に加え、そしてインキューベーションを室温で20分間行い、未反応マレイミド部位をブロックした。ウイルス−ポリリシン結合体、Ad.CPAP−p(Lys)nを、未結合ポリ(L−リシン)から、CsCl段階勾配(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)中に等しい容量の1.45g/ml(底階)および1.2g/ml(最上階)のCsClの初期組成を有する)を通した超遠心により精製した。遠心は、5℃にて90,000gで2時間行った。最終生成物を、150mMのNaClを含む20mM Hepes緩衝液(pH7.8)(HBS)に対して透析した。実施例7−AdΔ/ヘルパー−pLysウイルス粒子の形成Ad.CBhpAP−pLys/pAdΔ.CMVLacZ粒子の形成は、20μgのプラスミドpAdΔ.CMVLacZ DNAを、1.2×1012A260の粒子Ad.CBhpAP−pLys(最終容量0.2mlのDMEM中)に加え、そして複合体を室温で10−15分間で生成させることにより開始する。この比率は、標準的な多さのアデノウイルス−pLys結合体のプラスミドDNA結合能力を典型的に表し、最高のプラスミド導入遺伝子発現を与える。生成したトランス−感染粒子を、293細胞(150mm皿にまかれた4×107細胞)にトランスフェクトする。トランスフェクションの30時間後、粒子を回収し、そして凍結/解凍法に供して抽出物を得る。抽出物は、1.20g/ml、1.36g/mlおよび1.45g/mlの勾配のCsCl段階勾配で精製する。90,000×gで8時間遠心した後、AdΔベクターをLacZの存在により確認されるように最上成分の下の画分から得、そしてヘルパーウイルスをより小さく稠密な画分(hpAPの存在により確認されるように)から得た。実施例8−不能化パッケージング(PAC)配列を用いた改質ヘルパーウイルスの構築この実施例は、本発明の改質ヘルパーウイルスの設計において、図9Aから9C、10Aおよび10Bを参照にする。PACドメインIおよびII(図8A)またはPACドメインI、II、IIIおよびIV(図8B)を含むAd5 5'末端配列を、PCRにより野生型Ad5 5'ゲノム(図1Bに表す)から、図1Bの矢印により示したPCRクローンを使用して生成した。生成した増幅生成物(図8Aおよび8B)配列は、野生型Ad5ゲノムとは左(5')末端により保持されるA−反復数が異なった。図8Cに描いたように、これらの増幅生成物をpAd.Link.1(IHGTベクター コア)のマルチクローニング部位中にサブクローン化した。pAd.Link.1は、アデノウイルスm.u.9.6から16.1を含むアデノウイルスに基づくプラスミドである。改質PAC領域のpAd.Link.1への挿入で、2つのベクターpAd.PAC II(PACドメインIおよびIIを含む)およびpAd.PAC IV(PACドメインI、II、IIIおよびIVを含む)を生成した。その後、各々のこれらプラスミドに関して図10Aおよび10Bに表すように、前初期CMVエンハンサー/プロモーター(CMV)、ヒト胎盤アルカリホスファターゼcDNA(hpAP)、およびSV40ポリアデニレーションシグナル(pA)を含むヒト胎盤アルカリホスファターゼレポーターミニ遺伝子を、各PACベクターにサブクローン化し、それぞれpAd.PAC II.CMVhpAPおよびpAd.PAC IV.CMVhpAPを生成した。これらのプラスミドを次に、上記のように293細胞中へのコトランスフェクションにより、d17001ウイルスとの相同的組換えに基質として使用した。相同的組換えは、プラスミドのアデノウイルスマップ単位9−16と不能化Ad5ウイルスとの間で起こった。相同的組換えの結果は、PACドメインIおよびIIまたはPACドメインI、II、IIIおよびIV、続いてミニ遺伝子、およびAd5 3'配列9.6−78.3および87−100を含むAd5 5'末端配列を含むヘルパーウイルスであった。したがって、これらの不能化ウイルスはE1およびE3遺伝子が欠失している。PACヘルパーウイルスのプラーク形成特性は、PAC改質が成長の速度および程度を減少させる即座の指示を与えた。特に、PACヘルパーウイルスプラークは、トランスフェクション後14−21日まで発生せず、そして成長は小さなままだった。これまでの経験から、完全な左末端配列を持つ標準的な第一世代のAd.CBhpAPヘルパーウイルスは、7日までに発生し始め、そして10日までに成熟するだろう。ウイルスプラークを取り出し、そして0.5mlのDMEM培地に懸濁した。ウイルスストックの小さいアリコートを使用して、293細胞の新しい単層を感染させ、そして感染24時間後、組換えアルカリホスファターゼ活性に関して組織化学的に染色した。導入遺伝子発現について調査した8つのAd.PAC IV.CMVhpAP(A−反復配列I−IVをコードする)クローンのうちの6つが、陽性である一方、選択したすべての3つのAd.PAC II.CMVhpAPクローンが陽性と評価された。クローンを2回のプラーク精製を通し、そして現在では増やして作業用ストックを生成している。これらの不能化ヘルパーウイルスは、実施例3に記載の手法に従い、AdΔウイルス粒子の生産に有用である。それらはシャトルベクターゲノムのパッケージングを可能とするために、十分なアデノウイルス遺伝子を含有することが特徴であるが、それらの不能化PAC配列は自己−包被化に関する効率を減少させる。したがって、より多いAdΔ組換えウイルスのために、より少ないヘルパーウイルスが生成される。AdΔウイルス粒子をヘルパーウイルスから精製することは、CsCl勾配中で容易に行われ、これは各々のウイルス粒子の重量に基づく。この精製における容易さは、E1のみ、またはより小さい欠失を有するアデノウイルスベクターと比較して、本発明のAdΔベクターの利点であると定められる。最高約15kbのミニ遺伝子を持つAdΔベクターでさえ、野生型または多くのアデノウイルス遺伝子を含む他のアデノウイルスヘルパーとは、重量の点で有意に異なる。実施例9−完全長ジストロフィン導入遺伝子を含むAdΔベクターデュシェン筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン、14キロベース転写物によりコードされる427Kタンパク質の不在により引き起こされる、共通のx−関連遺伝疾患(commom x−linked genetic disease)である。この重要な筋鞘タンパク質の欠如は、進行性の筋肉消耗、衰弱および死を引き起こす。この致命的な疾患を処置するために、1つの現在の取り組みは、ジストロフィン遺伝子の機能的コピーを影響を受けた筋肉に転移することである。骨格筋に関しては、複製−欠損アデノウイルスが、効果的な送達系を表す。本発明により、Ad5シス−要素(すなわち、ITRsおよび連続的なパッケージング配列)のみを含み、そしてCMVプロモーターにより駆動する完全長のネズミジストロフィン遺伝子を宿す、組換えプラスミドpAdΔ.CMVmdysが作成された。このプラスミドを以下のように生成した。pSL1180[ファルマシア バイオテック:Pharmacia Biotech]を、Not Iで消化し、クレノーで満たし、そしてこの切断しているNot I部位を再度、プラスミド中に連結した。生成したプラスミドをpSL1180NNと命名し、そして細菌のoriおよびAmp耐性遺伝子を持つ。実施例1のpAdΔ.CMVLacZをEcoR Iで切断し、クレノーで満たし、そしてApa I−切断pSL1180NNと連結してpAdΔ.CMVLacZ(Apa I)を生成した。14kbマウスジストロフィンcDNA[配列はC.C.Leeら、Nature,349:334−336(1991)に提供されている]を、ラムダZAPクローニングベクター(ストラタジーン:Stratagene)を使用して2つの大きな断片中にクローン化し、そして続いてbluescriptベクターpSK-中にクローン化し、プラスミドpCCL−DMDを生成した。このベクターの概略図を図11に提供し、これは制限酵素部位を説明する。pAdΔ.CMVLacZ(Apa I)をNot Iで切断し、そして大きな断片をlacZ cDNAからゲル単離した。pCCL−DMDもNot Iで切断し、そしてゲル単離し、そして続いてNot I消化pAdΔ.CMVLacZ(Apa I)の大きなNot I断片に連結した。生成したベクター、pAdΔ.CMVmdysの配列を、図12A−12P[配列番号10]に提供する。このプラスミドがbp1−360(5'ITR)を包含するAd5の左末端由来の配列、CMVプロモーターの制御下のマウスジストロフィンミニ遺伝子、およびbp35353からゲノム(3'ITR)の末端に広がるAd5の右末端由来の配列を含む。このミニ遺伝子に、上記のプラスミドに関して記載したものに類似のSV−40ポリ−A配列が続く。本明細書に記載のベクター生成系を使用する。10枚の150mm293プレートを、約90%の集密度で、レポーター組換えE1−欠損ウイルスAd.CBhpAPを5のMOIで用いて、37℃で60分間感染させる。これらの細胞はpAdΔ.CMVmDysを用いてリン酸カルシウム共−沈殿により、50μgの直鎖状DNA/皿を使用して、37℃で約12−16時間トランスフェクトされる。培地をDMEM+10%ウシ胎児血清と交換する。完全に細胞病理学上の効果が観察され、そして細胞溶解物は細胞ペレットを凍結−解凍サイクルに3回供することにより作成する。細胞をSW41の3層CsCl勾配に2時間供し、そしてヘルパーアデノウイルスと不完全ウイルスとの間に移動するバンドが検出される。画分は、5λで感染した293細胞を含む6ウェルプレートで16−20時間、DMEM+2%FBS中でアッセイする。細胞を回収し、リン酸緩衝塩溶液で洗浄し、そして2mlPBSに再懸濁する。200λの2ml細胞画分をスライド上でサイトスパン(cytospun)する。細胞をジストロフィン用に以下のように免疫蛍光に供した。細胞を10N MeOHを用いて−20℃で固定した。細胞は、ヒトジストロフィンのカルボキシ末端に特異的なモノクローナル抗体[NCL−DYS2;ノボカストララボラトリーズ社(Novocastra Laboratories Ltd.)、英国]に暴露した。次に細胞を3回洗浄し、そして第二抗体、すなわち1:2000ヤギ抗−マウスIgG(FITC中)に暴露した。免疫蛍光染色で明らかになった7つの画分に関する力価/画分を、以下の式に従い計算し、そして以下の表2に報告した。DFU/場=(DFU/200λ細胞)×10=DFU/106細胞=(DFU/5λウイルス画分)×20=DFU/100λ画分。ジストロフィンミニ遺伝子を形質導入できるウイルスは、“陽性”(すなわち緑色の蛍光)細胞として検出する。IFの結果は、熱−処理画分が陽性の免疫蛍光を示さないことを説明している。サザンブロットデータは、インプットDNAと同じ大きさの1つの種で、ヘルパーウイルスの混入を示唆している。組換えウイルスは続いて、セシウム勾配を通す沈降により大部分のヘルパーウイルスから分離できる。最初の研究では、機能的AdCMVΔmDysビリオンが生成されるが、ヘルパーウイルスが混入していることを示している。成功裏の精製では、AdΔビリオンがウイルスタンパク質をコードできないが、ネズミ骨格筋を形質導入できるようになる。実施例10−偽タイピング以下の実験では、トランスフェクション/感染手順のpAdΔとは異なる血清型に由来するヘルパーウイルスを使用して、本発明の組換えAdΔの調製法を提供する。Ad5のITRおよびパッケージング配列が、別の血清型のビリオンに取り込まれ得るとは予想されない。A.手順基本的な方法は、AdΔ.CMVlacZ組換えウイルス(Ad5)を293細胞にトランスフェクトし、そして続いて細胞を様々なAd血清型(2、3、4、5、7、8、12および40)に由来するヘルパーウイルスで感染させることである。CPEが達成された時、溶解物を回収し、そして2回のセシウム勾配を通してバンドととする。より詳細には、実施例1のAd5−基本プラスミドpAdΔ.CMVlacZをEcoR Iで直鎖状にした。この直鎖状プラスミドを、次にリン酸カルシウム共−沈殿を使用して10枚の150mm皿の293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの10−15時間後、野生型アデノウイルス(以下の2、3、4、5、7、12、40のうちの1つ)を細胞を感染させるために5のMOIで使用した。次に細胞を完全なCPEで収穫し、そして3回の凍結−解凍を通して溶解した。ペレットを4mL Tris−HClに再懸濁する。細胞屑を遠心により除去し、そしてヘルパーウイルスからAd5Δ.CMVlacZの部分精製を、2回のCsCl勾配遠心を用いて行った(SW41カラム、35,000rpm、2時間)。画分を試験管の底から集め(画分#1)、そして293標的細胞へのlacZ形質導入ウイルスについて、組織化学的染色により分析した(20時間 PI)。混入しているヘルパーウイルスを、プラークアッセイにより定量した。アデノウイルス3型を除き、Ad血清型2、4、5、7、12および40の感染でlacZ形質導入ウイルスを生成できた。β−ガラクトシダーゼ活性のピークは、ほとんどのヘルパーウイルスがバンドとなった2つの主なA260吸収ピークの間に検出された(データは示さず)。10枚のプレートから回収したlacZウイルスの量は、ヘルパーの血清型に依存して104−108形質導入粒子の範囲であった。予想どおり、Ad2およびAd5は最高力価のlacZ形質導入ウイルス(表3)を生成した。この場合Ad40を除いて、野生型の混入は、対応するlacZ力価よりも一般的に102−103log高かった。B.結果表3は、293細胞の成長に対する評価として、野生型アデノウイルスの成長特性を要約する。ここではこれらのヘルパーウイルスを、すでにAd5欠失ウイルスでトランスフェクトされた細胞株を感染させるために使用することの可能性を示している。表4は、最終精製画分の結果を要約する。中央のカラム、LFU/μlと示したものは、lacZ形成単位の生産を定量し、これは偽型組換えAdΔウイルスのパッケージングおよび増殖の直接的な測定である。pfu/μl力価は、混入している野生型ウイルスの予想である。すべてのアデノウイルス株を用いて偽型とされたAdΔウイルスは、Ad3を除いて生成された。この力価範囲は107−104の間である。表5A−5Dは、表4に要約した実験の各々について、第二精製に由来する画分のより詳細な分析を表す。ここでも、LFU/μlはAdΔウイルスの回収量であり、一方pfu/μlはヘルパーウイルスの回収量を表す。C.パッケージされたウイルス構造の特性決定連続画分のアリコートを、lacZをプローブとして使用してサザンブロットにより分析した。Ad2および5の場合、直鎖状のモノマーのみがパッケージされたただけでなく、組換えウイルスに明らかな大きさの多種類の形態も見いだされた。これらの形態はダイマー、トリマーおよび他のより高い分子量のコンカテマーの大きさとよく一致した。直鎖状モノマーは、他の形態よりも試験管の頂点付近にピークを形成した(欠損アデノウイルスバンド)。これらの形態がlacZ活性と相関するとき、よりよい相関がモノマー間よりもよりも高分子量形態間で見いだされた。偽型Ad4およびAd7を用いては、直鎖状モノマーはパッケージされず、そしてより高い分子量形態のみが見いだされた。これらのデータは、Δウイルスおよび種々の偽型の生産および特性決定を明らかに示している。この実施例は、大変簡単な偽型ウイルスの生成法を説明している。実施例11−FH遺伝子を含むAdΔベクター家族性高コレステロール血症(FH)は、LDLレセプターの機能または発現における異常(欠陥)により引き起こされる常染色体の優性疾患である[M.S.BrownおよびJ.L.Goldstein,Science,232(4746):34−37(1986);J.L.GoldsteinおよびM.S.Brown,“遺伝的疾患の代謝的基礎(Metabolic Basis of Inherited Disease)”中の“家族性高コレステロール血症",C.R.Scriverら、編集、マグローヒル(McGraw Hill)、ニューヨーク、第1215−1250(1989)]。1つの異常な対立遺伝子を遺伝した患者は、血漿LDLのゆるやかな上昇を有し、そして早発の生命を脅かす冠状動脈疾患(CAD)にかかる。ホモ接合体の患者は、重篤な高コレステロール血症を有し、そして幼少から生命を脅かすCADにかかってしまう。既知の方法および前述の実施例中のジストロフィン遺伝子およびCFTRについて記載した類似法を使用して、pAdΔc.CMVlacZベクター中のlacZミニ遺伝子を、LDLレセプター遺伝子を含むミニ遺伝子と交換することにより、本発明のFH−含有ベクターを構築する[T.Yamamotoら、Cell,39:27−38(1984)]。LDLレセプターを持つベクターは、本発明に従い容易に構築できる。生成するプラスミドをpAdΔc.CMV−LDLと命名する。このプラスミドはFH単独で、または好ましくはこの遺伝子について異常な対立遺伝子を正常なLDL遺伝子と置換するために、本明細書に記載したように調製した結合体の状態で遺伝子治療に有用である。A.エクス ビボ遺伝子治療エクス ビボの遺伝子治療は、患者に由来する肝細胞の初代培養の回収および樹立により行うことができる。肝細胞を単離し、そしてLDLレセプター遺伝子(1つまたは複数)を持つ上記ベクター(1つまたは複数)を用いて形質導入するために、既知の手法を使用できる。例えば、ウサギ肝臓用に開発されたコラゲナーゼ潅流法は、ヒト組織にも適合でき、そして形質導入に使用できる。形質導入後、肝細胞を組織培養プレートから取り出し、そして既知の技術、例えば下位の腸間膜静脈に位置するカテーテルを介して、患者に再度注入する。B.イン ビボ遺伝子治療望ましくは、例えば肝臓を対象とした遺伝子治療のイン ビボ法には、上記のベクターおよびベクター結合体が関与する。好適な処置には、本発明のベクターLDL結合体を患者の末梢循環系への注入が関与する。次に患者を、血清脂質および肝臓組織の変化について評価する。ウイルスまたは結合体は、抹消または肝門部静脈に直接注射することにより(107−108pfu/kg)、または胆汁管に戻すことにより(同じ投与量)、インビボで肝細胞を感染させるために使用できる。この結果、遺伝子はほとんどの肝細胞に転移する。処置は必要に応じて、例えば週毎に繰り返される。約20のMOIに等しいウイルスの投与量(すなわち20pfu/肝細胞)は、ほとんどの肝細胞に高いレベルの遺伝子発現を導くと予想される。上記に引用したすべての文献は、参照により本明細書に編入される。本発明の多数の修飾および変更態様が、上記に確認した明細書中に含まれ、そして当業者には明らかである。例えばPAC配列またはシャトルベクター、あるいはベクターの他の配列、ヘルパーウイルスおよびミニ遺伝子成分のような、本発明の構成および方法に対するそのような修飾および変更は、これから添付する請求の範囲の範囲内に包含されると考える。配列表(1)一般情報:(i)出願人:ペンシルバニア大学役員ウィルソン、ジェイムス エム.フィッシャー、クリシュナ ジェイ.チェン、シューヤンワイツマン、マッソー(ii)発明の名称:改良されたアデノウイルスおよびその使用法(iii)配列の数:10(iv)連絡先:(A)住所:ホウソン アンド ホウソン(B)通り:スプリング ハウス コーポレート センター、私書箱457(C)市:スプリング ハウス(D)州:ペンシルバニア(E)国:アメリカ合衆国(F)郵便番号:19477(v)コンピューター読み取り先:(A)媒体の型:フロッピーディスク(B)コンピューター:IBM PC 互換型(C)操作システム:PC−DOS/MS−DOS(D)ソフトウェア:パテントイン リリース#1.0、バージョン#1.30(vi)現在の出願データ(A)出願番号:(B)出願日:(C)分類:(vii)先願データ:(A)出願番号:US 08/331,381(B)出願日:1994年10月28日(viii)弁理士/代理人情報.(A)名前:バク、メリー イー.(B)登録番号:31,215(C)参照/処理番号:GNVPN.008PCT(ix)通信情報:(A)電話番号:215−540−9200(B)ファックス:215−540−5818(2)配列番号1の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:7897塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:cDNA(xi)配列の記載:配列番号1(2)配列番号2の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:7852塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:cDNA(xi)配列の記載:配列番号2(2)配列番号3の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:9972塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:cDNA(xi)配列の記載:配列番号3(2)配列番号4の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:14塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:DNA(ゲノム)(xi)配列の記載:配列番号4(2)配列番号5の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:14塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:DNA(ゲノム)(xi)配列の記載:配列番号5(2)配列番号6の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:14塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:DNA(ゲノム)(xi)配列の記載:配列番号6(2)配列番号7の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:14塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:DNA(ゲノム)(xi)配列の記載:配列番号7(2)配列番号8の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:14塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:DNA(ゲノム)(xi)配列の記載:配列番号8(2)配列番号9の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:8塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:DNA(ゲノム)(xi)配列の記載:配列番号9(2)配列番号10の情報:(i)配列の特徴:(A)長さ:19307塩基対(B)種類:核酸(C)鎖の数:二本鎖(D)トポロジー:未知(ii)分子の型:cDNA(xi)配列の記載:配列番号10 (a)複製およびビリオンの包皮化に必要なアデノウイルスの5'および3'シスエレメントを含むアデノウイルス配列;(b)宿主細胞において選択された遺伝子の発現を支配する調節配列に操作可能に連結した該選択された遺伝子を含むミニジーン;を含んで成り、ここで、該アデノウイルスのシスエレメントは、第一の血清型が該ミニジーンに側面で接しており、そしてさらに、(c)該第一の血清型とは異なり、かつ、該アデノウイルス配列およびミニジーンを包皮化する第二のアデノウイルス血清型のキャプシドを含んで成るシュードタイプのアデノウイルス。 第一の血清型および第二の血清型が、アデノウイルス血清型2,4,5,7,12及び40からなる群から個々に選択される請求項1記載のシュードタイプのアデノウイルス。 該アデノウイルスの5'シスエレメントが、天然のアデノウイルスの5'逆方向末端反復配列(ITRs)およびパッケージング配列を含んで成る請求項1または2記載のシュードタイプのアデノウイルス。 該アデノウイルスの3'シスエレメントが、天然のアデノウイルス3'逆方向末端反復配列(ITRs)を含んで成る、請求項1〜3のいずれかに記載のシュードタイプのアデノウイルス。 該選択された遺伝子がレポーター遺伝子である、請求項1〜4のいずれかに記載のシュードタイプのアデノウイルス。 該レポーター遺伝子が、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびグリーン蛍光タンパク質をコードする遺伝子から成る群から選択される、請求項5記載のシュードタイプのアデノウイルス。 該選択された遺伝子が治療用遺伝子である、請求項1〜4のいずれかに記載のシュードタイプのアデノウイルス。 該治療用遺伝子が、正常CFTR遺伝子、DMDベッカー対立遺伝子および正常LDL遺伝子から成る群から選択される、請求項7記載のシュードタイプのアデノウイルス。 (a) 選択された宿主細胞を、(i)アデノウイルス配列およびミニジーン(ここで、該アデノウイルス配列が第一の血清型であって、かつ、複製およびビリオン包被化に必要なアデノウイルス5'および3'シスエレメントから成り、そして該シスエレメントは該ミニジーンと側面を接しており、そしてここで、該ミニジーンが選択された遺伝子の標的細胞中での発現を支配する調節配列に操作可能に連結されている選択された遺伝子を含んで成るものである。);および(ii) 増殖性ウイルス感染のために必要な十分なアデノウイルス遺伝子配列を含む不能化ヘルパーアデノウイルス(ここで、該不能化ヘルパーアデノウイルスが、天然のアデノウイルス配列のマップ単位0〜1に代わる改変アデノウイルス配列を含み、改変が該ヘルパーウイルスのパッケイジング効率を低下させるものである。)を用いてトランスフェクトする工程(ここで、該トランスフェクトされた宿主細胞は、該第一の血清型とは異なる第二の血液型のアデノウイルスカプシド中に該アデノウイルス配列およびミニジーンを含むシュードタイプのアデノウイルスの形成を可能にするものである。);ならびに(b) 該細胞から該シュードタイプのアデノウイルスを単離および精製する工程を含んで成る請求項1記載のシュードタイプのアデノウイルスの生産方法。 該不能化ヘルパーアデノウイルスが、(i) アデノウイルスマップ単位0〜1内のパッケイジングおよび複製のための天然のアデノウイルス配列における欠失;(ii) 少なくとも1つの天然のアデノウイルスA−反復配列の代わりに、少なくとも1つのPAC共通配列(配列番号9)を含むアデノウイルスマップ単位0〜1の改変断片;および(iii) 該天然のPAC配列が天然のアデノウイルスA−反復配列の1つ以上配列を崩壊させる挿入配列を含むように変異されたアデノウイルスマップ単位0〜1の改変断片、から成る群から選択される改変配列を含んで成る請求項9記載の方法。 該不能化ヘルパーウイルスの該アデノウイルスマップ単位0〜1の断片が、5'逆方向末端反復配列および1から4つの選択されたA−反復配列パッケージング配列から成る請求項9記載の方法。 該不能化ヘルパーウイルスの改変配列が、Ad5の塩基対1〜269から成る、請求項9または10記載の方法。 該不能化ヘルパーウイルスの改変配列が、Ad5塩基対1〜321から成る請求項9または10記載の方法。 該ヘルパーアデノウイルスが、ポリカチオン配列を介して該シャトルベクターと会合している、請求項9〜13のいずれかに記載の方法。 該ヘルパーウイルスが、E1遺伝子中に機能的欠失を含むアデノウイルス配列である、請求項9〜13のいずれかに記載の方法。 該ヘルパーウイルスが、E3遺伝子中に機能的欠失を含むアデノウイルス配列である、請求項9〜13のいずれかに記載の方法。 請求項1記載のシュードタイプのAdΔの生産に有用なポリカチオン結合体であって、組換えシャトルベクターにポリカチオン配列を介して結合した不能化ヘルパーウイルスを含んで成り;ここで、組換えシャトルベクターが増殖性ウイルス感染のために必要な十分なアデノウイルス遺伝子配列を含んで成り、該不能化ヘルパーアデノウイルスが、天然のアデノウイルス配列のマップ単位0〜1に代わる改変アデノウイルス配列をさらに含み、該改変は該ヘルパーウイルスのパッケイジング効率を低下させるものであり、そして該組換えシャトルベクターが、アデノウイルス配列およびミニジーンを含んで成り、ここで、アデノウイルス配列が第一の血清型であって、かつ、複製およびビリオンの包皮化に必要な5'および3'シスエレメントからなり、そして該シスエレメントは該ミニジーンに側面を接しており、かつ、該ミニジーンが標的細胞における選択された遺伝子の発現を支配する調節配列に操作可能に連結した選択された遺伝子を含むものであり、そして該ヘルパーウイルスと宿主細胞が増殖性ウイルス感染のために必要なアデノウイルス遺伝子を提供し、該第一の血清型と異なる第二の血清型のアデノウイルスカプシド中に該アデノウイルス配列および該ミニジーンを含むシュードタイプのAdΔウイルスの形成を可能にするものであることを特徴とする結合体。 医薬的に許容できるキャリアー中に、請求項1〜4,7および8のいずれかに記載のシュードタイプのアデノウイルスを含んで成る医薬組成物。 (a) 選択された宿主細胞に(i) アデノウイルスの核酸配列とミニジーンを含む組換えシャトルベクターであって、該アデノウイルス配列が第一の血清型であって、かつ、複製およびビリオンの包被化に必要なアデノウイルス5'および3'シスエレメントからなり、該シスエレメントが該ミニジーンに側面を接している組換えシャトルベクター、ならびに(ii) 増殖性ウイルス感染に必要なアデノウイルス遺伝子配列を含むヘルパーウイルス、を導入する工程、(b) 前記第一の血清型と異なる第二の血清型のアデノウイルスカプシド内に(i)のアデノウイルス配列およびミニジーンを含むシュードタイプのAd△ウイルスの形成を可能にするように該シャトルベクターおよび該ヘルパーウイルスを含む該宿主細胞を培養する工程、を含んで成る請求項1記載のシュードタイプのAd△ウイルスの生産方法。 第一の血清型および第二の血清型が、独立して、2、4、5、7、12および40からなる群のアデノウイルス血清型から選択される請求項19記載の方法。 該宿主細胞または細胞培養物からAd△ウイルスを分離、精製する工程をさらに含んで成る請求項20記載の方法。 (a) 選択された宿主細胞に(i) アデノウイルスの核酸配列とミニジーンを含む組換えシャトルベクターであって、該アデノウイルス配列が第一の血清型であって、かつ、複製およびビリオン包被化に必要なアデノウイルス5'および3'−シスエレメントからなり、そして該ミニジーンが調節配列に操作可能に連結されている選択された遺伝子の標的細胞における発現を支配するものであり、該アデノウイルスのシスエレメントが該ミニジーンに側面で接している、組換えシャトルベクター、および(ii) (i)のアデノウイルスの血清型と異なる血清型のアデノウイルス遺伝子配列を含むヘルパーウイルスを導入する工程、ならびに(b)該シャトルベクターおよび該ヘルパーウイルスを含有する宿主細胞であって、ヘルパーウイルスおよび宿主細胞が増殖性ウイルス感染に必要なアデノウイルス遺伝子を提供し、そして該第一の血清型と異なる第二の血清型のアデノウイルスカプシド内に(i)のアデノウイルスおよびミニジーンを含むAd△ウイルスを形成することを可能にするものである、宿主細胞を培養する工程、を含んでなる請求項1記載のAd△ウイルスの生産方法。 第一の血清型および第二の血清型が、独立して、2、4、5、7、12および40からなる群のアデノウイルス血清型から選択される請求項22記載の方法。 該宿主細胞または細胞培養物からAd△ウイルスを分離、精製する工程をさらに含んでなる請求項22または23記載の方法。 (a)請求項1〜4,7および8のいずれかに記載のシュードタイプのアデノウイルスであって、複製およびビリオン包被化に必要なアデノウイルス5'および3'シスエレメントと宿主細胞において選択された遺伝子の発現を支配する調節配列に操作可能に連結されており、かつ5'および3'シスエレメント間に位置するミニジーンを含んでなるシュードタイプのアデノウイルスを含有する宿主細胞の懸濁物を提供する工程、(b)3回の凍結および融解に懸濁物を供して宿主細胞を溶解する工程、(c)懸濁物を遠心することにより組換えアデノウイルスを含有する澄明な抽出物を取得する工程、(d)澄明な抽出物をCsClの段階的濃度勾配の遠心に供する工程、および(e)精製された組換えアデノウイルスを含有するCsCl濃度勾配に由来する画分を集める工程を含んでなる生産された宿主細胞からの請求項1記載のシュードタイプのアデノウイルスの精製法。 CsClの段階的濃度勾配が3段から構成される請求項25記載の方法。 細胞が凍結前にトリス−塩酸緩衝液中で懸濁される請求項25記載の方法。


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