タイトル: | 特許公報(B2)_油性赤色インキ |
出願番号: | 1996357327 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C09D 11/00,C07D 311/84,C09B 67/22 |
西本 智久 JP 4258027 特許公報(B2) 20090220 1996357327 19961226 油性赤色インキ ぺんてる株式会社 000005511 西本 智久 20090430 C09D 11/00 20060101AFI20090409BHJP C07D 311/84 20060101ALI20090409BHJP C09B 67/22 20060101ALI20090409BHJP JPC09D11/00C07D311/84C09B67/22 F C09D 11/00 特開昭63−22875(JP,A) 特許第3785773(JP,B2) 1 1998183042 19980707 8 20020930 木村 敏康 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、筆記具用、記録計用及びジェットプリンタ−用として好適に用いられ、経時安定性に優れた油性赤色インキに関するものである。【0002】【従来の技術】 従来、速乾性マーキングペン等に用いる油性インキは、油溶性染料と油溶性樹脂と溶剤とを主成分としている。油性インキは、水性染料と水とを成分とする水性インキに比べ、紙、布などのインキ吸収面ばかりでなく、ガラス、金属、プラスチック等のイキ非吸収面にも良好な筆記が可能である。油性インキの溶剤としては、油溶性染料に対する溶解力の高いトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素やエチレングリコールモノメチルエール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル等が使用されている。 しかしながら、上記溶剤は臭気や毒性が高いなど人体に対する安全性が問題となり、近年臭気や毒性が低い炭素数4以下の脂肪族アルコ−ル、特に安全性の高いエチルアルコールを油性インキの溶剤として用いることが要求されている。ところが、芳香族炭化水素やグリコールエーテル等を溶剤とした油性インキに使用されてきた油溶性染料は、低級脂肪族アルコ−ルへの溶解性が悪く、実用上で十分な濃度を得ることは困難である。これまでにこの問題を改善する方法としては、低級脂肪族アルコールへの溶解性が比較的良い、塩基性染料と酸性染料および又は、直接染料、アニオン系界面活性剤などとを反応させて得られる造塩タイプの油溶性染料を用いることが提案されている。そのことから、低級脂肪族アルコールを溶剤とする油性インキにおいて、赤色の色調を求める場合は、化1で示される造塩タイプの赤色染料が主要着色剤として使用されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】 しかし、マーキングペン用の油性赤色インキとして、筆跡の濃度や色彩の鮮明さを上げる為に、化1で示される赤色染料を多量に添加した場合や、その補色となる黄色染料を添加した場合において、初期の溶解性は良好であるが、長期間保存すると染料分子の会合が増大し、溶剤への溶解レベルを越えた析出物が形成され蓄積するという問題を有している。析出物の発生は、ペン先の毛細管での目詰まりによる筆跡のカスレやインキの濃度低下、製造工程における生産性の低下(例えば、インキ充填時におけるインキ充填機ノズルの目詰まり)等といった問題の原因となっている。【0004】【課題を解決するための手段】 本発明は、(化1)で示される赤色染料と、(化2)で示される黄色染料と、炭素数4以下の脂肪族アルコールと、前記脂肪族アルコールに可溶な樹脂とを少なくとも含み、前記(化1)で示される赤色染料が(化2)で示される黄色染料に対して重量換算で1.5倍以上4.0倍以下である油性赤色インキを要旨とするものである。【0005】【化1】【0006】【化2】【0007】 以下、詳細に説明する。 化1で示される赤色染料は、主要着色剤として使用するものであり、市販されている油溶性赤色染料の中においては炭素数4以下の脂肪族アルコールに対しての溶解性が良い。この赤色染料は、従来公知の方法により容易に製造することができる。例えば、塩基性染料の水溶液と酸性染料、直接染料またはアニオン系界面活性剤の水溶液とを、温度が室温〜100℃の条件で混合攪拌する。その後、水不溶性となった反応生成物を濾過し、水洗い、乾燥して赤色染料を得ることができる。具体的一例を挙げれば、C.I.ベーシックレット゛1とC.I.アシッドイエロー23との造塩染料として、バリファーストレッド1308(オリエント化学工業(株)製)、ALレッド2308(中央合成化学(株)製)などが、C.I.ベーシックレット゛1とC.I.アシッドイエロー42との造塩染料として、スピリットレッド102(オリエント化学工業(株)製)などが、C.I.ベーシックレット゛1とドデシル(スルホフエノキシ)−ベンゼンスルホン酸との造塩染料として、スピロンレッドC−GH(保土谷化学工業(株)製)などが挙げられる。 赤色染料の使用量は、油性赤色インキ全量に対し、2〜15重量%添加することが好ましい。筆跡濃度を好適に保つ点で2重量%以上が好ましく、また、析出物の発生がなく、良好な経時安定性を保ち、且つ、筆記具用、記録計用及びジェットプリンター用として用いた場合のインキ吐出に好適な粘度となす点で15重量%以下が好ましい。【0008】 化2で示される黄色染料は、油性赤色インキとしての筆跡の濃度や色彩の鮮明さを上げる為に用いられる。すなわち、従来知られている炭素数4以下の脂肪族アルコールを溶剤とする油性インキに使用している造塩タイプ黄色染料とは異なり、優れた経時安定性を長期間維持することができる。具体的一例を挙げれば、化2で示される黄色染料中のR3 をドデシル基としたものとして、オイルイエローCH(中央合成化学(株)製)、スピロンイエローC−GNH(保土谷化学工業(株)製)などが挙げられる。その添加量は油性赤色インキ全量に対して0.2〜10重量%添加することが好ましい。筆跡の濃度や色彩の鮮明さを上げる為には0.2重量%が好ましく、適度な濃度や、色彩とするためには、10重量%が好ましい。【0009】 炭素数4以下の脂肪族アルコールは、溶剤として用いるものである。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して使用でき、使用量は油性赤色インキ全量に対して40〜90重量%添加することが好ましい。【0010】 炭素数4以下の脂肪族アルコールに可溶な樹脂は、インキ粘度の調整、染料の定着性向上の為に用いるものである。例えば、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。具体的一例を挙げれば、フェノール樹脂として、タマノール100S、同510(以上、荒川化学工業(株)製)、ヒタノール1501、同2501(以上、日立化成工業(株)製)、YSポリスターS145、YP−90L(以上、ヤスハラケミカル(株)製)、ケトン樹脂として、ケトンレジンK−90(荒川化学工業(株)製)、ハロン80、同110H(以上、本州化学(株)製)、シンセティックレジンAP、同SK、同1201(以上、独国ヒュルス社製)などが、ロジン樹脂として、ハーコリンD、ペンタリン255、同261(以上、理化ハーキュレス(株)製)、ハリエスターNL、ネオトールC、ガムロジンX(以上、ハリマ化成(株)製)、ガムロジンWW(中国産)、エステルガムH(荒川化学工業(株)製)などが、ブチラール樹脂として、デンカブチラール#2000−L、同#3000−1、同#3000−2、同#3000−4、同#3000−K(以上、電気化学工業(株)製)、エスレックBL−1、同BL−3、同BL−S、同BX−10(以上、積水化学工業(株)製)などが、ポリアミド樹脂として、AQ−ナイロンA−90、同A−70、同A−50、同P−70、同K−80、同K−14(以上、東レ(株)製)、ニューマイド825、同840(以上、ケーシー有限会社製)、トレジンF30、同MF−30、同EF−30T、同M−20、同TK5036(以上、帝国化学産業(株)製)、バーサミド744、同756、同711(以上、ヘンケル白水(株)製)、トーマイド#90、同#92(以上、富士化成工業(株)製)、サンマイド611DK−1、同615A(以上、三和化学工業(株)製)などが挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して使用でき、その使用量は油性赤色インキ全量に対して1〜20重量%添加することが好ましい。【0011】 また、上記必須成分以外でも必要に応じて、インキの粘度調節剤、金属の腐食防止の為の防蝕剤、インキ塗膜に柔軟性を与え密着性を高める可塑剤などを、適宜選択して使用することができる。例えば、インキの粘度調節剤としては、ベンジルアルコール等の高沸点アルコール系溶剤、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコール低級アルキルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤が挙げられる。金属の防蝕剤としては、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。可塑剤としては、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、マレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、トリメット酸エステル等が挙げられる。【0012】 さらに、染料の可溶化剤やペン先の乾燥防止剤、インキの塗布性向上剤、インキの吐出向上剤として、各種界面活性剤を使用することもできる。具体的には、アルキル硫酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル類、デカグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンパーフルオロエーテル等のフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。【0013】 本願発明の油性赤色インキは、上記必須成分を従来知られている撹拌機を用いて撹拌混合し、均一に溶解することによって得られる。【0014】【作用】 通常、染料分子は溶液中に数個から数十個単位の会合状態で存在しているが、高濃度ではさらに会合しやすい性質をもっている。また、比較的イオン解離度が大きい溶剤である炭素数4以下の脂肪族アルコール中において、造塩タイプ油溶性染料の溶解状態は、イオン対の状態で安定に存在しているが、経時環境の変化によりイオン対会合体、フリーイオンに変化すると思われる。これらの影響により、低級脂肪族アルコールを溶剤とする油性赤色インキの着色剤として、化1で示される赤色染料を用いた場合、筆跡の濃度を上げる為に染料使用量を多くすると、長期間の経時では染料イオン対の会合量が増大し、溶剤への溶解レベルを越えて析出物が形成されると考えられる。化2で示される黄色染料は、カチオン成分として複素環アンモニウム基がシッフ塩基と共役しているアゾメチン構造を有しており、アニオン成分としてカチオン成分と安定したイオン対を形成し易い界面活性剤を有している、造塩タイプの油溶性染料である。その為、色相が鮮明でかつ優れた経時安定性を長期間維持することができる。そこで、油性赤色インキの組成中に化2で示される黄色染料を使用すると、化1で示される赤色染料に悪影響を与えることなく相互溶解性を向上し、筆跡の濃度や色彩の鮮明さを上げることが可能だと推察される。【0015】【実施例】 以下、実施例により更に詳細に説明する。 実施例1 バリファーストレッド1308(化1で示される赤色染料、オリエント化学工業(株)製) 8重量部 オイルイエローCH(化2で示される黄色染料、中央合成化学(株)製) 5重量部 エチルアルコ−ル 67重量部 ノルマルプロピルアルコ−ル 10重量部 ガムロジンWW(ロジン樹脂、中国産) 10重量部 上記成分を撹拌機にて4時間撹拌して油性赤色インキを得た。【0016】 実施例2 スピリットレッド102(化1で示される赤色染料、オリエント工業(株)製) 4重量部 スピロンイエローC−GNH(化2で示される黄色染料、保土谷化学工業(株)製) 1重量部 イソプロピルアルコ−ル 65重量部 ノルマルブチルアルコ−ル 17重量部 シンセティックレジンSK(ケトン樹脂、独国ヒュルス社製) 8重量部 トーマイド#92(ポリアミド樹脂、富士化成工業(株)製) 5重量部 上記成分を実施例1と同様になして油性赤色インキを得た。【0017】 実施例3 ALレッド2308(化1で示される赤色染料、中央合成化学(株)製) 10重量部 オイルイエローCH(前述) 6重量部 メチルアルコ−ル 12重量部 エチルアルコ−ル 60重量部 タマノール1OOS(フェノール樹脂、荒川化学工業(株)製)7重量部 エチレングリコールモノフェニルエーテル(粘度調節剤) 5重量部 上記成分を実施例1と同様になして油性赤色インキを得た。【0018】 実施例4 スピロンレッドC−GH(化1で示される赤色染料、保土谷化学工業(株)製) 12重量部 スピロンイエローC−GNH(前述) 8重量部 エチルアルコ−ル 70重量部 ヒタノール1501(フェノール樹脂、日立化成工業(株)製)3重量部 ベンジルアルコール(粘度調節剤) 7重量部 上記成分を実施例1と同様になして油性赤色インキを得た。【0019】 実施例5 バリファーストレッド1308(前述) 4重量部 スピロンレッドC−GH(前述) 3重量部 オイルイエローCH(前述) 2重量部 エチルアルコ−ル 66重量部 YP−90L(フェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)製)15重量部 プロピレングリコールモノメチルエーテル(粘度調節剤) 10重量部 上記成分を実施例1と同様になして油性赤色インキを得た。【0020】 比較例1 実施例1においてオイルイエローCHを除き、その量だけC.I.ベーシックイエロー2とドデシル(スルホフエノキシ)−ベンゼンスルホン酸との造塩染料を加えた他は、実施例1と同様になして油性赤色インキを得た。【0021】 比較例2 実施例2においてスピロンイエローC−GNHを除き、その量だけC.I.ソルベントイエロー82(金属錯塩酸性染料とカチオン系活性剤との造塩染料)を加えた他は、実施例1と同様になして油性赤色インキを得た。【0022】 比較例3 実施例3においてオイルイエローCHを除き、その量だけALレッド2308を加えた他は、実施例1と同様になして油性赤色インキを得た。【0023】 上記、実施例1〜5、比較例1〜3で得た油性赤色インキに関して、インキ低温経時試験を行なった。【0024】【表1】【0025】 インキ低温経時試験 上記の油性赤色インキを蓋付きビンに密封し、−20℃恒温室に1ヶ月保管した後、インキを濾紙(アドバンテック東洋(株)製)で濾過し、濾紙上の残留物の状態を確認した。 評価 ○:析出物なし △:少し析出物あり ×:析出物あり【0026】 以上、詳細に説明したように、本発明に係る油性赤色インキは、染料が析出しやすい低温経時試験においても析出しないので、筆跡のカスレが発生することなく、濃度が濃い筆跡が得られる。 (化1)で示される赤色染料と、(化2)で示される黄色染料と、炭素数4以下の脂肪族アルコールと、前記脂肪族アルコールに可溶な樹脂とを少なくとも含み、前記(化1)で示される赤色染料が(化2)で示される黄色染料に対して重量換算で1.5倍以上4.0倍以下である油性赤色インキ。