タイトル: | 特許公報(B2)_架橋重合体および当該重合体から成る医療用シート |
出願番号: | 1996356321 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C08G63/91,A61K6/10,A61N5/10,C08F299/04,C08J3/28,C08L67:04 |
渡辺 一司 JP 3589335 特許公報(B2) 20040827 1996356321 19961225 架橋重合体および当該重合体から成る医療用シート ダイセル化学工業株式会社 000002901 三浦 良和 100090491 渡辺 一司 JP 1995350961 19951225 20041117 7 C08G63/91 A61K6/10 A61N5/10 C08F299/04 C08J3/28 C08L67:04 JP C08G63/91 A61K6/10 A61N5/10 Z C08F299/04 C08J3/28 C08L67:04 7 C08G 63/00- 63/91 C08J 3/28 C08J 7/28 特開昭60−215018(JP,A) 特開昭59−108059(JP,A) 4 1997235366 19970909 6 20021118 森川 聡 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、活性エネルギー線照射による架橋重合体およびこの架橋重合体から成る医療用シートに関する。より詳しくは、比較的低温で適切な粘弾性を有する活性エネルギー線照射による架橋重合体ならびにこの架橋重合体から成る放射線治療用シートおよび歯の型取り用シートに関する。【0002】【従来の技術】ポリカプロラクトンやポリイソプレン等の融点(軟化点)が40〜80℃の範囲である熱可塑性樹脂は、比較的低い温度で容易に溶融し、外力を加えると容易に変形させることができ、冷却固化すると強靭である性質を生かしてギブスやかつら、歯等の型取りシートに利用されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの樹脂の溶融状態における粘性は低く、弾性は無いことから、「タレ」が発生したり、過剰な外力を加えると破断したり、一旦変形すると元の形には戻らない欠点がある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者は、検討の結果、無水マレイン酸または無水テトラヒドロフタル酸でエステル化した、融点が40〜80℃であるポリカプロラクトン系樹脂に活性エネルギー線を照射して架橋反応を起こすことによって得られる樹脂が溶融状態におけるゴム弾性や形状記憶性を有すること、更にこの樹脂を種々の医療用シートに用いると、「タレ」やシートの破断を発生せず、自由自在にシートを型作ることができることを見い出し、本発明に至った。【0005】すなわち、本発明は無水マレイン酸または無水テトラヒドロフタル酸でエステル化した、融点が40〜80℃であるポリカプロラクトン系樹脂に活性エネルギー線を照射して架橋反応を起こすことにより得られることを特徴とする架橋重合体を提供する。【0006】また、本発明は上記架橋重合体から成ることを特徴とする放射線治療用シートおよび歯の型取り用シートを提供する。【0007】【発明の実施の形態】本発明においては、無水マレイン酸または無水テトラヒドロフタル酸でエステル化した、融点が40〜80℃であるポリカプロラクトン系樹脂が架橋重合体の前駆体として用いられる。【0008】ポリカプロラクトン系樹脂は現在商業的スケールで製造されており、好ましく使用できる。上記ポリカプロラクトン系樹脂とは、各種のアルコールを開始剤としε−カプロラクトンを開環重合した樹脂、ε−カプロラクトンとε−カプロラクトン以外の単量体との共重合体の樹脂、および、これらの樹脂の変性樹脂や樹脂混合物を示す。【0009】本発明におけるポリカプロラクトン系樹脂を合成する方法としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、テトラヒドロベンジルアルコール、エチレンオキサイド変性ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンまたはエチレンオキサイド変性2,2′−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を開始剤として用い、ε−カプロラクトンを開環重合し、場合によっては多官能イソシアネート等でカップリングする方法や、エチレングリコールトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を開始剤として用いε−カプロラクトンを開環重合し、末端水酸基を無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸でエステル化する方法が例示できる。【0010】上記の融点が40〜80℃である無水マレイン酸または無水テトラヒドロフタル酸でエステル化したポリカプロラクトン系樹脂の数平均分子量は、通常、10,000〜300,000、好ましくは40,000〜200,000、更に好ましくは60,000〜150,000の範囲である。上記分子量が10,000未満の場合は、各種成形品を製造することが困難であり、製造されたものの機械的強度は著しく低くなる傾向があり、逆に300,000を上回る場合には溶融粘度が高すぎて、成形加工性が低減する傾向があるため好ましくない。【0011】また融点が40〜80℃である理由としては、40℃未満のものから得られる架橋重合体では夏時期の貯蔵が困難であったり、放射線治療用シートまたは歯の型取り用シートとして使用したとき、室温においても、なかなか固化しないため使用が困難であったりし、逆に80℃を上回るものから得られる架橋重合体の場合には、溶融した樹脂が熱いため、人体に置くことができず適当でない。【0012】本発明の好ましい態様では、無水マレイン酸または無水テトラヒドロフタル酸でエステル化した、融点が40〜80℃であるポリカプロラクトン系樹脂に多官能アクリル単量体および多官能アリル単量体を添加する。これらの単量体としては、特に限定はなく、多官能アクリル単量体の例としては、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレートおよびこれらの混合物が、多官能アリル系単量体の例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネートおよびこれらの混合物等が挙げられる。【0013】これらの多官能アクリル単量体または多官能アリル単量体は、ポリカプロラクトン系樹脂100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.3〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部の範囲で混合される。上記量が0.1重量部未満の場合は、架橋重合体の形状記憶性等が満足できるレベルではなく、逆に30重量部を上回る場合には、架橋重合体が剛直になりすぎて、靭性が低下する傾向があるため好ましくない。【0014】活性エネルギー線としては、その波長や、エネルギー量に特に限定はないが、電子線(EB)が一般的である。これらの活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射できる。照射線量は、熱可塑性樹脂に架橋を生じさせるのに十分な量が適宜選択される。例えば、電子線(EB)の場合の加速電圧としては100〜300KV、吸収線量としては、0.1〜30Mradの範囲が適当である。【0015】これらの活性エネルギー線を照射する場合、融点が40〜80℃である熱可塑性樹脂の形態については、特に限定はないが、厚さ10μm〜5mmの範囲内のフィルムまたはシートが照射効率が高いため使用し易い。特に厚さ0.5mm〜3mm程度のシートは放射線治療用シートまたは歯の型取り用シート等の医療用シートとして使用できるため好ましく用いられる。【0016】また本発明の架橋重合体に対しては、使用用途によって任意の物質を適当な時期に混合または塗布することができる。【0017】上記物質としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉末、タルク、マイカ、シリカ等の無機充填剤、顔料、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤、可塑剤、粘性付与剤等の添加剤、熱可塑性樹脂および硬化性オリゴマー等が例示できる。【0018】上記のようにして得られる架橋重合体の復元率は、通常80%以上である。【0019】<実施例>以下実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに制限されるものではない。【0020】[製造例1]撹拌機、コンデンサーおよび温度調節装置を備えた20リットルの反応器に、開始剤としてトリメチロールプロパン13.4g(0.1mol)、ε−カプロラクトン13.68kg(120mol)および重合触媒としてモノブチルスズトリス(2−エチルヘキサネート)0.7gを仕込み、少量の窒素を流しながら180℃で8時間撹拌した。【0021】この時点で系中に残存するε−カプロラクトンは0.2%であった。系の温度を120℃まで冷却し、無水マレイン酸29.4g(0.3mol)を仕込み、120℃で2時間撹拌して、ポリカプロラクトンの末端水酸基と無水マレイン酸との反応によるエステル化を行った。その後、撹拌を停止させ、反応器に2kg/cm2の圧力をかけ下部の穴からポリカプロラクトン系樹脂のストランドを引き、水槽で冷却しペレタイザーを用いカッティングした。得られたペレットを40℃で真空乾燥し、実施例において使用した。【0022】また、このもののGPC測定における標準ポリスチレン換算数平均分子量は137,000で、酸価は1.4KOHmg/gであった。【0023】[実施例1および2]製造例1で得られた分子内に二重結合を有するポリカプロラクトン系樹脂を用いプレス成形により20cm×30cm×2mmのシートを作製した。このシートに2つの条件下で電子線(EB)照射を行った。一つは加速電圧200kV、吸収線量5Mradによる両面照射(実施例1)、もう一つは加速電圧5,000kV、吸収線量5Mradによる片面のみの照射(実施例2)である。これらのシートの23℃および60℃における引張試験を行い、更に、シートの均一性、複元率を評価した。結果を表−1に示す。なお、各物性の測定方法は下記のとおりである。【0024】1.破断強度、500%伸び時強度および破断伸度:JIS K7113に準じる。23℃で引張強度を測定し、60℃では溶融時でのゴム強度を測定する。2.シートの均一性:目視評価による。3.復元率:10cm×1cm×2mmの短冊状シートを80℃の湯浴に浸し、20cmまで伸張させ、一度冷却固化させる。再び80℃の湯浴に浸し、収縮させ、復元率を算出する。4.シートの透明性:厚さ2mmのシートを目視評価した。○:完全に透明,△:若干白濁する,×:スリガラス状に白濁する。【0025】[比較例1]比較のため、製造例1で得られたポリカプロラクトン系樹脂シートの電子線(EB)照射をまったく実施しないものについて実施例1と同様な評価を行い、結果を表−1に併せて記載した。【0026】[実施例3および4]製造例1で得られたポリカプロラクトン系樹脂100重量部に対して、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリアクリレート(ダイセル−UCB製TMPEOTA)を1重量部(実施例3)および3重量部(実施例4)の割合で添加し、それぞれ東洋精機製ラボプラストミルミキサーを用い120℃で2分間溶融混練した。【0027】得られた混合樹脂を用い、プレス成形により20cm×20cm×2mmのシートを作製した。これらのシートに加速電圧200kV、吸収線量5Mradの条件でシートの両面に電子線(EB)照射を行った。これらのシートについて、実施例1と同様な評価を行った。結果を表−1に示す。【0028】【表1】【0029】【発明の効果】本発明の架橋重合体は、比較的低温で溶融し、溶融時および固化時においてそれぞれ適切な粘弾性を有しているので、放射線治療用シートまたは歯の型取り用シートなどの材料として有用である。 無水マレイン酸または無水テトラヒドロフタル酸でエステル化した、融点が40〜80℃であるポリカプロラクトン系樹脂に活性エネルギー線を照射して架橋反応を起こすことにより得られることを特徴とする架橋重合体。 ポリカプロラクトン系樹脂がそれを構成する樹脂100重量部に対して多官能アクリル単量体または多官能アリル単量体を0.1〜30重量部混合した樹脂であることを特徴とする請求項1記載の架橋重合体。 請求項1または2に記載の架橋重合体から成ることを特徴とする放射線治療用シート。 請求項1または2に記載の架橋重合体から成ることを特徴とする歯の型取り用シート。