生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_皮膚外用剤
出願番号:1996355205
年次:2008
IPC分類:A61K 31/232,A61P 37/08,A61P 17/00,A61P 17/06,A61K 8/36,A61Q 19/00


特許情報キャッシュ

今井 由紀枝 土居崎 信滋 清水 延寿 JP 4062639 特許公報(B2) 20080111 1996355205 19961223 皮膚外用剤 日本水産株式会社 000004189 須藤 阿佐子 100102314 今井 由紀枝 土居崎 信滋 清水 延寿 20080319 A61K 31/232 20060101AFI20080228BHJP A61P 37/08 20060101ALI20080228BHJP A61P 17/00 20060101ALI20080228BHJP A61P 17/06 20060101ALI20080228BHJP A61K 8/36 20060101ALI20080228BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20080228BHJP JPA61K31/232A61P37/08A61P17/00A61P17/06A61K8/36A61Q19/00 A61K 31/00-232 A61K 8/00-36 JMEDPlus(JDream2) JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) 医学・薬学予稿集全文データベース 特表平04−501114(JP,A) 特表平04−500972(JP,A) 米国特許第04607052(US,A) 3 1998182452 19980707 9 20030929 齋藤 恵 【0001】【産業の属する技術分野】本発明は皮膚外用剤、特に副作用が少なく、経皮吸収性に優れた不飽和脂肪酸含有薬剤に関する。【0002】【従来の技術】従来より、乾癬やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の治療として、抗アレルギー剤やステロイド剤の投与、アレルゲンとの接触を避けるための食事療法などが行われている。これらの治療法の中ではステロイド剤投与が中心的な役割を果しているが、副作用が強いため常に薬効と副作用のバランスを考慮し、連続投与を避けながら治療が行われているのが現状である。一方、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸をはじめとするいくつかの不飽和脂肪酸にアレルギー疾患に対する治療効果が認められることから、これらの不飽和脂肪酸は副作用の少ない抗炎症剤として期待されている。この抗アレルギー作用は主としてアラキドン酸との拮抗によるプロスタグランジンやロイコトリエンの合成阻害作用によると考えられている。【0003】その一方で、アラキドン酸が欠乏すると皮膚の乾燥、角質化といった症状が現れることも以前から知られている。この場合にはリノール酸やアラキドン酸の補給が有効だと考えられる。また、アトピー性皮膚炎患者では角質細胞間脂質であるセラミドを構成する脂肪酸の組成に異常が見られ、リノール酸の低下、オレイン酸の上昇が認められている(臨皮 46,p117−120,1992)。皮脂を構成する脂肪酸がセラミド構成脂肪酸と置き換わる可能性も指摘されている(J.Invest Dermatol,87,p733,1986)ことから、経済的にリノール酸を供給することによるアトピー治療効果が期待できる。【0004】従来これらの脂肪酸を皮膚外用剤とする際には、グリセリド、脂肪酸またはその塩、低級アルキルエステル、あるいはリン脂質などといった形態を用いてきた。しかしこれらの誘導体は皮膚からの吸収性が低いため治療効果を発現しにくかった。またべたつきやすい、衣服などを汚染する、酸化して不快臭を発生しやすいなど使用感の上でも欠点があった。また、リン脂質の場合は精製が難しく、高純度品は入手しずらかった。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、副作用が少なく、経皮吸収性に優れた不飽和脂肪酸含有薬剤を提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】これらの目的を達成するため本発明者は鋭意研究を行った結果、長鎖不飽和脂肪酸が中鎖脂肪酸と同一分子中に結合したトリグリセリドの形態をとる場合、皮膚からの吸収性に優れていることを発見した。また驚くべきことに、これらのトリグリセリドは酸化安定性も改善され、不快臭の発生も抑制されることを見いだした。そして実際に患部に塗布し、その吸収性、不快臭の発生の抑制を確認し、ならびに、従来から知られている長鎖不飽和脂肪酸の掻痒感の改善、炎症部位の縮小などのアレルギー疾患に対する治療効果の発現を再確認し、本発明を完成するに至った。【0007】すなわち、本発明は中鎖脂肪酸残基と長鎖不飽和脂肪酸残基とが同一の分子内に結合したトリグリセリドを有効成分として含有することを特徴とするの皮膚外用剤を要旨とするものである。【0008】本発明は、一般式【化2】(式中、R1、R2、R3のうち1つまたは2つは長鎖不飽和脂肪酸残基、残りは中鎖脂肪酸残基)で表されるトリグリセリドを有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤である。【0009】本発明の皮膚外用剤の好ましい態様は、上記式中、R1、R2、R3のうち1つが長鎖不飽和脂肪酸残基、残りが中鎖脂肪酸残基で表されるトリグリセリドを有効成分として含有するものである。その長鎖不飽和脂肪酸は、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、アルファ−リノレン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸およびジホモ−ガンマ−リノレン酸よりなる群より選ばれる。【0010】本発明の皮膚外用剤のさらに好ましい態様は、上記式中、R1がエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、アルファ−リノレン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸またはジホモ−ガンマ−リノレン酸の残基で表されるトリグリセリドを有効成分として含有するもの、あるいは上記式中、R2がエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、アルファ−リノレン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸またはジホモ−ガンマ−リノレン酸の残基で表されるトリグリセリドを有効成分として含有するものである。本発明の皮膚外用剤の最も好ましい態様は、上記式中、R1またはR2が、エイコサペンタエン酸残基またはドコサヘキサエン酸残基で表されるトリグリセリドを有効成分として含有するものである。【0011】上記トリグリセリドは、好ましくは90%以上の純度の、さらに好ましくは95%以上の純度の長鎖不飽和脂肪酸または/およびその誘導体を原料として作られたものである。【0012】【発明の実施の形態】本発明において、中鎖脂肪酸は炭素数6から12の脂肪酸であり、たとえばカプリン酸(デカン酸)、カプリリン酸(オクタン酸)、カプロイン酸(ヘキサン酸)が例示される。また、本発明における長鎖不飽和脂肪酸とは炭素数18以上かつ不飽和結合が2つ以上の脂肪酸であり、たとえばエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アルファ−リノレン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸、ジホモ−ガンマ−リノレン酸が例示される。ただし本発明はこれらの例示によって何ら制限されるものではない。【0013】本発明の皮膚外用剤は、ヒトを含む哺乳動物の、乾癬やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に基づく各種疾患の処置、すなわちこのような疾患の治療、軽減(症状の改善)、維持(悪化防止)または予防を目的とする医薬品として使用することができる。このような疾患としては、乾癬やアトピー性皮膚炎が例示されるが、本発明はアラキドン酸との拮抗によるプロスタグランジンやロイコトリエンの合成を阻害することによって生ずる、あるいはアラキドン酸が欠乏すると皮膚の乾燥、角質化といった症状を呈する全ての疾患を対象とすることができる。【0014】本発明における皮膚外用剤は、有効成分たるトリグリセリドそのものを皮膚外用剤として肌に塗ることもできるが、それ以外にも皮膚表面に有効成分を直接投与できる剤型であればどのような形態でもよく、たとえば軟膏、乳剤、ゲル剤、パップ剤、テープ剤、ローション剤、貼付剤、スプレー剤などが挙げられる。また本発明の皮膚外用剤には、必要に応じて外用剤基材、吸収促進剤、抗酸化剤、乳化剤、保湿剤、防腐剤など製剤の分野で周知されている添加剤、および/または他の薬剤、例えば抗炎症剤、抗アレルギー剤などを加えることができる。【0015】上記の肌に塗る態様は、有効成分たるトリグリセリドそのものに、白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどを加え、必要に応じ加温し、混練して得ることができる。パップ剤またはテープ剤は、有効成分たるトリグリセリドそのものを、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と混練し、これを不織布などに展延して得ることができる。吸入剤は、例えば薬学的に許容される不活性ガス(窒素ガス、炭酸ガスなど)などの噴霧剤に、有効成分たるトリグリセリドそのものを溶解または分散し、これを耐圧容器に充填して得ることができる。本発明の皮膚外用剤に含まれる有効成分の含有量は特に制限されない。また、投与量は、対象とする疾患、患者の年齢、体重、健康状態、および症状、薬剤の投与形態などに応じ適宜決定される。【0016】本発明で用いられるトリグリセリドは、既知の方法を用いることにより製造することができる。すなわち、アルカリ触媒を加えたランダムエステル交換、酵素を用いたエステル交換ないし酸分解、あるいはグリセリンと脂肪酸の縮合など、目的の化合物が得られればどのような方法でもとることができる。またトリグリセリドの精製においても油脂の分野で周知されている、脱酸、脱色などの方法を適用することができる。【0017】また本発明中のトリグリセリドの原料となる長鎖不飽和脂肪酸または/およびその誘導体とは、脂肪酸またはそのエステル、グリセリド、塩、酸塩化物、酸無水物など、長鎖不飽和脂肪酸残基を有するものを指す。また本発明において、トリグリセリドに含まれる長鎖不飽和脂肪酸の原料としては、天然から得られた油脂あるいはその加水分解物をそのまま用いても良いし、尿素付加その他の方法によって不飽和脂肪酸を濃縮したもの、あるいはいったん低級アルキルエステルに変換して蒸留などの手段によって高度に精製したものなどが挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。【0018】本発明の皮膚外用剤の有効成分であるトリグリセリドは、後述の実施例に示すように毒性は全く認められなかった。これらの一部はすでに経腸栄養剤として使用されており、薬理活性を示す使用量において、ほとんどもしくは全く細胞毒性を示さない。【0019】【実施例】以下に本発明の皮膚外用剤について具体的な実施例をもって説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。【0020】実施例1本発明に関わる皮膚外用剤の製造精製魚油(EPA28%含有)と中鎖脂肪酸トリグリセリドを約1:2(モル比)で混合し、アルカリ触媒にてランダムエステル交換した。得られたトリグリセリドを常法にて精製し、抗酸化剤としてδ−トコフェロール0.5%(重量比)を添加した。【0021】本発明に関わる皮膚外用剤の安定性を試験した。上記油脂20gを30ml褐色瓶に取り、暗所にて25℃で開放保存した。0、6、10日目にチオシアネート法にて過酸化物価を測定した。結果を表1に示す。【0022】比較例1比較のための皮膚外用剤の製造実施例1の精製魚油、中鎖脂肪酸トリグリセリドおよび抗酸化剤を、実施例1と同様の比率で物理的に混合した。比較のための皮膚外用剤の安定性を試験した。実施例1と同様に、上記油脂20gを30ml褐色瓶に取り、暗所にて25℃で開放保存した。0、6、10日目にチオシアネート法にて過酸化物価を測定した。結果を表1に示す。【0023】【表1】【0024】 実施例2(参考例) 本発明に関わる皮膚外用剤の製造1,3−ジオクタノイン1.0g、エイコサペンタエン酸1.1gをジクロロメタン10mlに溶かし、ジメチルアミノピリジン360mgとジシクロヘキシルカルボジイミド0.6gを加え、−5℃で3時間攪拌した。反応液を濾過し、母液より目的物を抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して1,3−ジオクタノイル−2−エイコサペンタエノイルグリセロールを得た。これに抗酸化剤として、δ−トコフェロール0.5%(重量比)を添加した。【0025】本発明に関わる皮膚外用剤の使用感評価を行った。グリセリン:エタノール:水=1:2:2(容積比)混液900μlに、上記油脂100μlの腕屈部に塗布・展伸し、3分後の保湿感を評価した。さらに塗布1時間後に、塗布した部分の不快臭の強さを評価した。結果を表2に示す。【0026】実施例3本発明に関わる皮膚外用剤の製造実施例2の「1,3−ジオクタノイン」を「1,2−ジオクタノイン」に置き換え、あとは同様の操作を行った。上記皮膚外用剤についても、実施例2と同一の使用感評価を行った。結果を表2に示す。【0027】比較例2比較のための皮膚外用剤の製造エイコサペンタエン酸エチルとトリオクタノインを1:2(モル比)で混合した。これに抗酸化剤として、δ−トコフェロール0.5%(重量比)を添加した。上記比較のための皮膚外用剤についても、実施例2と同一の使用感評価を行った。結果を表2に示す。【0028】比較例3比較のための皮膚外用剤の製造エイコサペンタエン酸とトリオクタノインを1:2(モル比)で混合した。これに抗酸化剤として、δ−トコフェロール0.5%(重量比)を添加した。上記比較のための皮膚外用剤についても、実施例2と同一の使用感評価を行った。結果を表2に示す。【0029】比較例4比較のための皮膚外用剤の製造エイコサペンタエン酸ナトリウムとトリオクタノインを1:2(モル比)で混合し、懸濁液を得た。これに抗酸化剤として、δ−トコフェロール0.5%(重量比)を添加した。上記比較のための皮膚外用剤についても、実施例2と同一の使用感評価を行った。結果を表2に示す。【0030】【表2】────────────────────────────────保湿感 かさかさ しっとり べたつく 油が残る────────────────────────────────実施例1 0名 4名 1名 0名比較例1 0 0 1 4実施例2 0 5 0 0実施例3 0 4 1 0比較例2 0 0 0 5比較例3 0 0 2 3比較例4 0 1 4 0━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━不快臭 強い 弱い わずか 無臭────────────────────────────────実施例1 0 0 1 4比較例1 0 1 3 1実施例2 0 0 0 5実施例3 0 0 1 4比較例2 0 2 3 0比較例3 0 1 4 0比較例4 0 0 5 0────────────────────────────────【0031】実施例4実施例1〜3の皮膚外用剤および比較例1〜3の比較のための皮膚外用剤について、1週間の投与後、掻痒感ならびに炎症部の範囲を評価した。アトピー患者3名(成人男性1名、成人女性1名、幼児1名)に対して毎日入浴後、患部に実施例1から3あるいは比較例1から3で製造した油脂それぞれ適量を塗布した。1週間の投与後、掻痒感ならびに炎症部の範囲を評価した。なお投与期間中、従来から使用していた薬剤についても投与は継続した。また掻痒感を言葉で表現できない幼児1名については、患部を掻く行為の有無にて評価した。結果を表3に示す。【0032】【表3】【0033】実施例5クリームへの配合表4に示す配合でクリームを製造した。まず精製水にプロピレングリコールを加え、加熱して70℃とし、水相部とした。一方、油性成分を混合し、加熱融解・攪拌して70℃とし、油相とした。水相に油相を加えて乳化した後、攪拌しながら冷却してクリームを調製した。得られたクリームを暗所にて25℃で開放保存し、不快臭の発生を官能的に評価した。結果を下表5に示す。【0034】【表4】【0035】 比較例4 クリームへの配合 実施例5の、「実施例1の油脂」を「比較例1の油脂」に置き換え、他は同様の配合と製法でクリームを調製した。このクリームについても、実施例5と同様に暗所にて25℃で開放保存し、不快臭の発生を官能的に評価した。結果を下表5に示す。【0036】【表5】【0037】【発明の効果】上記実施例に示したように、本発明の皮膚外用剤はきわめて酸化安定性が高く、経皮吸収性に優れ、不快臭の発生が抑制された上に、従来から知られている長鎖不飽和脂肪酸の掻痒感の改善、炎症部位の縮小などのアレルギー疾患に対する治療効果が同様に発現されることが確認された。したがって、本発明の皮膚外用剤は、例えばアトピー性皮膚炎、乾癬などのアレルギー性疾患に対して優れた治療薬となることが期待される。 一般式(式中、R1、R2、R3のうちR1が長鎖不飽和脂肪酸残基、残りが中鎖脂肪酸残基)で表されるトリグリセリドを有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤。 上記長鎖不飽和脂肪酸残基がエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、アルファ−リノレン酸、ガンマ−リノレン酸、リノール酸またはジホモ−ガンマ−リノレン酸の残基である請求項1の皮膚外用剤。 上記長鎖不飽和脂肪酸残基がエイコサペンタエン酸残基またはドコサヘキサエン酸残基である請求項2の皮膚外用剤。


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