タイトル: | 特許公報(B2)_アセトンと塩化メチレンを含有する混合液から各成分を分 離回収する方法 |
出願番号: | 1996328087 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C45/82,C07C17/386,C07C19/03,C07C49/08 |
岸本 昭 飯田 茂雄 浜田 昭宏 JP 3563217 特許公報(B2) 20040611 1996328087 19961209 アセトンと塩化メチレンを含有する混合液から各成分を分 離回収する方法 三和油化工業株式会社 591089855 中島 三千雄 100078190 長谷川 好道 100101535 岸本 昭 飯田 茂雄 浜田 昭宏 20040908 7 C07C45/82 C07C17/386 C07C19/03 C07C49/08 JP C07C45/82 C07C17/386 C07C19/03 C07C49/08 J 7 C07C 19/03 C07C 17/386 C07C 45/82 C07C 49/08 特公昭47−007774(JP,B1) 特開平08−048920(JP,A) 1 1998167998 19980623 7 20001120 吉良 優子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アセトンと塩化メチレンを含有する混合液(以下本混合液という)より、アセトンと塩化メチレンを分離回収し、回収した溶剤を再利用するための回収方法に関するものである。【0002】【従来の技術及びその問題点】数種類の溶剤を含有する混合液から、その溶剤成分を分離して回収する方法として、一般的に蒸留が用いられる。【0003】しかし、共沸混合物を形成する溶剤系の場合では、通常の蒸留では分離が不可能となる。アセトンと塩化メチレンの場合においては、質量比でアセトン30、塩化メチレン70、共沸点57.6℃の共沸混合物を形成するため、通常の蒸留では分離が困難で、アセトンと塩化メチレンを含有する廃溶剤をリサイクルすることなく、焼却処分されていた。然るに省資源、省コスト、環境保護の面から、これらの成分を分離回収して再利用することが着目されている。【0004】そこで、本発明は、本混合液に第三成分を加えて、アセトンと塩化メチレンを分離回収する方法を提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】一般的に、共沸混合物を形成する溶剤系に第三成分を加えて蒸留することにより、各成分を分離することは、古くから行われているが、共沸混合物を形成する有機溶剤同士の混合系においてはこのような例は少ない。【0006】本発明者らは、先に酢酸エチルとアセトニトリル、イソプロパノールとアセトニトリルに第三成分としてノルマルヘキサンを加えて蒸留することにより、各成分を分離回収できることを見出し、特許を出願した(特願平7−333118号)が、この度、アセトンと塩化メチレン混合液では、第三成分として水を用いることにより、各成分を分離回収できることを見出した。【0007】すなわち、本発明の特徴の一つとするところは、アセトンと塩化メチレンを含有する混合液に水を加えて蒸留することにより、アセトンと塩化メチレンを分離回収することからなる、アセトンと塩化メチレンを含有する混合液から各成分を分離回収する方法にある。【0008】また、本発明の特徴の他の一つとするところは、質量比でアセトン100に対し、5ないし400の塩化メチレンを含有する混合液に水を加えて蒸留することにより、アセトンと塩化メチレンを分離して回収することからなる、アセトンと塩化メチレンを含有する混合液から各成分を分離回収する方法にある。【0009】ここに用いる水は、通常の水道水で充分目的を達成できる。また、質量比でアセトン100に対し、100〜300、望ましくは230前後の塩化メチレンを含有する溶剤混合液に適用すると、経済的に最も有利である。【0010】なお、塩化メチレンの割合が増加して、質量比がアセトン100に対し塩化メチレン400以上になると、通常の蒸留でも塩化メチレンの1部が高純度で、例えば、質量比が100:450の場合、450の塩化メチレンの内、約100が分離回収できるが、塩化メチレンが400以下の場合は分離が不可能になる。これに対し、本発明によれば、上記の質量比がいかなる場合においても高純度に分離できる。【0011】また、本発明は、上記通常の蒸留では分離回収できない範囲に着目して数値限定したものである。上記の質量比において、本発明においては、塩化メチレンの混合下限は特にないが、強いて言えば、実用上問題のない5〜10、好ましくは5を混合下限としてもよく、本発明では、この数値を限定したものである。【0012】ところで、本発明において、加える水の量は、混合液中に存在する塩化メチレンの質量100に対して、5ないし10が望ましい。この水の量が5以下になると、塩化メチレンと水の共沸混合物の生成が不十分となるため、アセトン中に塩化メチレンが残留し、アセトンの純度が低下する。【0013】なお、水の量が10を越えると、過剰の水がアセトン中に残留するため、アセトンの脱水の際、不利となるからである。以下に、本発明の詳細を図を用いて説明する。【0014】図1は本発明において用いた蒸留装置である。ただし、本発明が本装置を用いるものに限定されるものではない。図1において、Aは1000mlの蒸留缶であって本混合液が加えられる。水は最初からAに加えておいても良く、又精留途中に精留塔上部の注入口Kから加えても良い。蒸発缶Aはマントルヒーターにより内容物が沸騰するように加熱され、内容物は蒸気となる。Bは内径10mmの精留塔であって、6mm角のマクマホン充填物が充填されている。Aで発生した蒸気は精留塔Bの効果により気液熱交換が繰り返され、共沸点の低い塩化メチレン−水共沸混合物が次第に精留塔Bを上昇し、冷却器Dにより液化し、還流比タイマーによって作動するボール弁Eが開放となる間に、枝管F、冷却管Gを経由して受器Hに貯えられる。【0015】その時、塩化メチレンと水の比率は、質量で95対5であり、相互の溶解性が小さいため受器H内で二層に分離する。上層は塩化メチレン数%を含有する水で、第三成分として再利用することができる。注入口Kはこの目的のため使用される。工業的に実施する場合には、この上層はデカンターで分離され、直ちに精留塔に還流され、循環使用される。下層は水約0.1%を含有する塩化メチレンで、脱水剤を用いて脱水することにより、純粋な塩化メチレンを得ることができる。【0016】一方、アセトンは次第に精留塔Bを下降し、受器Cに貯えられる。この時若干量の塩化メチレン及び水を伴うが、受器Cをマントルヒーターで加熱することにより、塩化メチレンは再び蒸気となって、精留塔Bに戻るため、受器C中のアセトンは工業的に再利用可能なまでに純度が高められる。ただし、アセトン中に混入する水は、用途に応じて別途蒸留して分離する必要がある。【0017】このようにして得られた、アセトン及び塩化メチレンの純度はガスクロマトグラフにより測定された。ガスクロマトグラフの条件は、下記の通りであった。【0018】また、水分はカールフィッシャー水分測定装置(三菱化学製CA−06型)により測定された。【0019】【実施例】〔実施例1〕アセトン150g、塩化メチレン350g、水35gを蒸発缶Aに入れ、還流比5で精留を行った。受器Hに留出した液の下層部は、無水硫酸ナトリウムを用いて脱水回収した。また、受器Cに蓄えられた水を含有するアセトンを別の精留塔を用いて水分を除去した。本実施例で使用したアセトンは日本石油化学製、塩化メチレンは株式会社トクヤマ製(商品名メタクレン)、水は刈谷市の水道水であった。【0020】〔実施例2〕アセトン150g、塩化メチレン350g、水25gを蒸発缶Aに入れ、実施例1と同一の方法で精留を行った。但し、受器Hに留出した液の上層部は2ml毎に注入口Kから精留塔に戻された。【0021】〔実施例3〕アセトン150g、塩化メチレン350gを蒸発缶Aに入れ、水25gを注入口Kから精留塔に滴加しながら、実施例2と同一の方法で精留を行った。【0022】〔実施例4〕アセトン250g、塩化メチレン250g、水25gを蒸発缶Aに入れ、実施例1と同一の方法で精留を行った。【0023】〔比較例5〕アセトン150g、塩化メチレン350gを蒸発缶Aに入れ、還流比5で精留を行った。【0024】〔比較例6〕アセトン250g、塩化メチレン250gを蒸発缶Aに入れ、還流比5で精留を行った。【0025】評価方法として、受器Cに採取され、別途精留により脱水されたアセトン及び受器Hに採取され、無水硫酸ナトリウムにより脱水された塩化メチレンの量、回収率、純度を用いた。【0026】実施例、比較例について、評価結果を表1にまとめた。【0027】【表1】【0028】【発明の効果】実施例1−4で見られるとおり、本発明の分離回収方法を用いることによりアセトン、塩化メチレンを高収率且つ高純度で回収可能である。従って従来焼却処分されていた溶剤のリサイクルが可能となり、省資源、コスト、環境保護の効果が達成できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の分離回収に用いた蒸留装置を示す図。【符号の説明】A…蒸発缶 B…精留塔 C…受器D…冷却器 E…ボール弁 F…枝管G…冷却管 H…受器 アセトンと塩化メチレンを含有する混合液に水を加えて蒸留することにより、アセトンと塩化メチレンを分離回収する方法にして、質量比でアセトン100に対し、5ないし400の塩化メチレンを含有する混合液に、かかる塩化メチレンの質量100に対して5〜10の割合の水を加えて蒸留することにより、アセトンと塩化メチレンを分離して回収することを特徴とするアセトンと塩化メチレンを含有する混合液から各成分を分離回収する方法。