タイトル: | 特許公報(B2)_遅延型アレルギー抑制剤 |
出願番号: | 1996319993 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,A61K31/195,A61P37/08 |
笹野 稔 小谷 敬子 JP 3569793 特許公報(B2) 20040702 1996319993 19961129 遅延型アレルギー抑制剤 参天製薬株式会社 000177634 岸本 瑛之助 100060874 岸本 守一 100024418 渡邊 彰 100079038 日比 紀彦 100083149 笹野 稔 小谷 敬子 20040929 7 A61K31/195 A61P37/08 JP A61K31/195 A61P37/08 7 A61K 31/195 CA(STN) REGISTRY(STN) BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN) Prog. Med.,1994年,Vol.14, No.2,p.255-261 2 1998158160 19980616 5 20000113 川口 裕美子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はブシラミンまたはその塩類を有効成分とする遅延型アレルギー抑制剤に関するものである。【0002】【従来の技術】生体に抗原刺激が加わると生体は、その抗原に特異的に反応する抗体を作り、再び同一抗原が生体内に導入されると、抗原抗体反応を起こし、抗原の破壊または排除を目的とした防御反応が起こる。この反応が過度にあるいは不適当な形で起こり、組織障害を引き起こす場合がある。これがアレルギーである。【0003】アレルギーは、その発現機序、症状の違い等によって以下の4種類に大別されている。I型、つまり即時型アレルギーは、組織の肥満細胞および血中の好塩基球と結合した免疫グロブリンE抗体が特異抗原と反応し、細胞内で脱顆粒が起こり、ヒスタミン等の化学伝達物質が遊離される。この遊離した化学伝達物質が種々の臓器に作用して急性炎症を生じるものである。II型、つまり抗体依存性細胞障害型アレルギーは、抗体が自己細胞表面の抗原または外来細胞表面の抗原に結合し、その細胞が貪食されたり、キラー細胞を活性化したり、補体の関与した細胞溶解を生じるものである。III型、つまり免疫複合体関与型アレルギーは、抗 原導入によって生体内で形成された抗原抗体結合物に補体が結合した免疫複合体が組織に沈着し、補体が活性化され、多形核白血球がその沈着部位に集まり、局所の障害が生じるものである。IV型、つまり遅延型アレルギーは、抗原と特異的に反応しうる能力を備えたT細胞が直接抗原と反応することで、リンホカイン等の生物学的活性を有する化学物質が遊離放出され、局所の組織に細胞が集合して炎症が生じるものであり、過敏症および接触性皮膚炎で認められる。【0004】一方、ブシラミンは下記式[I]で表される構造を有しており、抗リウマチ剤、喀痰溶解剤、肝障害抑制剤、白内障治療剤、糖尿病治療剤、抗骨粗鬆症剤、腎疾患治療剤、シスチン尿症治療剤として有用であることはすでに報告されており(特公昭60−11888号公報、特公昭56−5388号公報、特公昭62−13922号公報、特公昭63−13964号公報、特開平4−154721号公報、特開平4−154722号公報、特開平4−342524号公報、特開平5−186341号公報)、安全性の高い優れた薬物であることは知られている。また、即時型、抗体依存性細胞障害型および免疫複合体関与型アレルギー反応に対してはこれを抑制するが、遅延型アレルギー反応に対しては効果が認められなかったことが報告されている(Japan J. Pharmacol., 37, 85−90 (1985))。【0005】【化1】【0006】また、ブシラミンを始めとして、アクタリット、D−ペニシラミン、オーラノフィン等の抗リウマチ剤において、遅延型アレルギー反応に対しては共通の効果が認められなかったことが報告されている(Prog. Med., 14, 255−261 (1994))。【0007】【発明が解決しようとする課題】この医薬として有用なブシラミンについて、さらに新たな薬理作用を見いだすことは非常に興味ある課題であった。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者等はブシラミンの新たな薬理作用を見いだすために、遅延型アレルギー反応に対する作用を検討した。その結果、ブシラミンまたはその塩類(以下、本化合物とする)が遅延型アレルギー反応に対して優れた抑制作用を有しており、遅延型アレルギー反応によって生じる過敏症や接触性皮膚炎の治療剤としても有用であることを見いだした。【0009】【発明の実施の形態】本化合物における塩類とは医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。【0010】本化合物の遅延型アレルギー反応に対する作用に関して、詳細については実施例の項で述べるが、本化合物はニワトリ卵白リゾチーム誘発の遅延型アレルギー反応を抑制することを認めた。【0011】本化合物の投与は経口、非経口のどちらでもよく、剤型としては市販の錠剤や特公昭56−5388号公報、特公昭60−11888号公報に記載されている錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、注射剤等が挙げられる。【0012】本化合物の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、1日当り10〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。【0013】以下に薬理試験の結果を示すが、これは本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。【0014】【実施例】[薬理試験]抗リウマチ剤の遅延型アレルギー反応への作用を検討した例として、マウスにおけるメチル化ヒト血清アルブミン誘発遅延型アレルギー反応に対するアクタリットの作用についての報告がある(Int. J. Immunotherapy, 4, 141−148 (1990))。そこで、遅延型アレルギー反応を誘発する抗原として汎用されているニワトリ卵白リゾチームを用い、上記文献に記載された方法に準じてブシラミンの遅延型アレルギー反応への作用を検討した。【0015】(実験方法)ニワトリ卵白リゾチームのリン酸緩衝食塩水溶液(10mg/ml)を等容量のフロインド完全アジュバントと混合してエマルジョンを作成し、その0.1mlずつをC57BL/6系雄性マウスの背中皮膚4ヶ所に皮内注射することで感作を行った。ブシラミンは感作当日を含めて4日間、所定量で経口投与した。最終投与1時間後、ニワトリ卵白リゾチーム水溶液(2mg/ml)25μlをマウスの右足蹠皮下に注射し、遅延型アレルギー反応を惹起した。なお、ブシラミンの作用は、遅延型アレルギー反応惹起24時間後の右足(惹起足)の厚みと左足(非惹起足)の厚みの差で算出した足の腫脹で評価した。【0016】上記実験は9匹のマウスを用いて行い、足の腫脹の評価はこれらマウスについて得られた値の平均値をとった。【0017】(結果)表1に実験結果の一例として、ブシラミンの用量が10、30および100mg/kg/dayのときの、足の腫脹を示す。なお、参考に、ブシラミン投与を行わなかった点を除いて上記と同じ方法で、ブシラミン非投与群の足の腫脹の値を求めた。この結果も併せて示す。【0018】【表1】【0019】表1に示したように、ブシラミン投与によって足の腫脹は減少しており、ブシラミンが遅延型アレルギー反応を抑制していた。また、その程度はブシラミンの濃度に依存し、30mg/kg/day投与でプラトーに達した。【0020】このことから、ブシラミンは遅延型アレルギー反応を顕著に抑制することが明らかとなった。【0021】【発明の効果】上記の薬理試験の結果から、本化合物は遅延型アレルギー抑制剤として有用であり、遅延型アレルギー反応によって生じる過敏症や接触性皮膚炎の治療剤としても有用であることが見いだされた。 ブシラミンまたはその塩類を有効成分とする遅延型アレルギー抑制剤。 ブシラミンまたはその塩類を有効成分とする接触性皮膚炎治療剤。