生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_新規なグリセロールキナーゼおよびその製造法
出願番号:1996272453
年次:2008
IPC分類:C12N 9/12,C12Q 1/48


特許情報キャッシュ

芳本 忠 西矢 芳昭 川村 良久 JP 4051579 特許公報(B2) 20071214 1996272453 19961015 新規なグリセロールキナーゼおよびその製造法 東洋紡績株式会社 000003160 芳本 忠 西矢 芳昭 川村 良久 20080227 C12N 9/12 20060101AFI20080207BHJP C12Q 1/48 20060101ALN20080207BHJP JPC12N9/12C12Q1/48 Z BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA(STN) 特開平08−214884(JP,A) 特開昭53−026389(JP,A) 日本薬学会九州支部大会講演要旨集、1995年、101頁 J. Chromatography, 1986, Vol.366, p.79-89. 4 1998113173 19980506 11 20030311 冨永 みどり 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は新規なグロセロールキナーゼおよびその製造法に関し、特に試料中の脂質およびグリセロールの定量的測定に好適である安定なグリセロールキナーゼ活性を有する新規な酵素に関する。【0002】【従来の技術】グリセロールキナーゼは、グリセロールをマグネシウムとATPに依存したリン酸化反応によって、グリセロール−3−リン酸に変える反応を触媒する酵素である。このグリセロールキナーゼ(EC 2.7.1.30 )は、1937年にカルクカー(Kalckar) によって肝臓内に見つけられた(H. Kalckar, Enzymologia, 2, 47 (1937) )。以後、ラット肝、ハト肝、カンジダ・ミコデルマ(Candida mycoderma) などから精製され(C. Bublitz et al., J. Biol. Chem., 211, 951 (1954); E. P. Kennedy, Methods Enzymol., 5, 476 (1962); H. U. Bergmeyer et al., Biochem., 333, 471 (1961) )、また、ヒト、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis) 、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などから遺伝子のクローニングもなされている(C. A. Sargent et al., Hum. Mol. Genet., 3, 1317 (1994); C. Holmberg et al., J. Gen. Microbiol., 136, 2367 (1990); P. Pavlik et al., Curr. Genet., 24, 21 (1993) )。特に、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)において、該酵素は詳しく研究がなされており、1967年に林(Hayashi) らによって精製され(S. Hayashi et al., J. Biol. Chem., 242, 1030 (1967))、1988年にクローニングの報告がなされており(D. W. Pettigrew et al., J. Biol. Chem., 263, 135 (1988) )、また、遺伝子調節の研究、アロステリック阻害剤による阻害の研究など、広い範囲において研究されている。【0003】これらの生理学的および酵素化学的な研究の他に、該酵素は臨床検査薬として利用されている。すなわち、試料中の脂肪をリパーゼで加水分解し、生じたグリセロールを該酵素でグリセロール−3−リン酸とし、さらにグリセロール−3−リン酸酸化酵素とペルオキシダーゼをカップリングさせ、過酸化水素を生成し、該過酸化水素を発色させて吸光度測定することによって、血中の脂質及びグリセロールを測定する。このような臨床検査に利用されている酵素に求められる特性の一つに、高い安定性を持つことがあげられる。この高い安定性を持つ酵素を得るために、最近、好熱性細菌が注目されている。好熱性細菌は、1880年に温泉で発見されて以来、その耐熱化機構が研究されてきたが、現在もはっきりとはその機構が解明されてはいない。しかし、その菌の酵素、例えばプロテアーゼは耐熱性であることが知られている。また、これらの酵素は高い熱安定性を持つだけではなく、他の化学変性剤に対しても抵抗性が高いことも知られている。【0004】さらに、最近、熱安定性が優れたグリセロールキナーゼとして、バチルス・ステアロサーモフィラス由来の酵素 (特開昭53-26389号公報) 、フラボバクテリウム属由来の酵素(特開平 8-131165 号公報) などが提供されている。バチルス・ステアロサーモフィラス由来のグリセロールキナーゼは、熱安定性において、55℃で1時間以上の半減期を有するが、70℃での半減期は約18分間となる。また、フラボバクテリウム属由来のグルセロールキナーゼは、70℃、10分間の熱処理で80%以上の活性を保持するが、80℃、10分間処理では活性を失うという性質を有する。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明では、さらに高い熱安定性を有する新規なグリセロールキナーゼの単離および該酵素の製造法を確立し、該酵素の脂質及びグリセロールの定量への利用を可能とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、サーマス(Thermus )属に属する細菌より新規なグリセロールキナーゼを見いだし、本発明を完成するに至った。【0007】すなわち本発明は、下記理化学的性質を有するグリセロールキナーゼである。作用:ATPの存在下にグリセロールに作用して、グリセロール−3−リン酸とADPを生成する。熱安定性:70℃、20分間処理で90%以上の活性を保持する。【0008】また、本発明はサーマス(Thermus)属に属し、下記理化学的性質を有するグリセロールキナーゼ生産能を有する菌株を栄養培地にて培養し、該培養物からグリセロールキナーゼを採取することを特徴とするグリセロールキナーゼの製造法である。作用:ATPの存在下にグリセロールに作用して、グリセロール−3−リン酸とADPを生成する。熱安定性:70℃、20分間処理で90%以上の活性を保持する。【0009】【発明の実施態様】本発明の一実施態様は、下記理化学的性質を有するグリセロールキナーゼである。【0010】また、本発明の一実施態様は、下記理化学的性質を有するグリセロールキナーゼである。【0011】本発明の一実施態様は、サーマス(Thermus)属に属し、下記理化学的性質を有するグリセロールキナーゼ生産能を有する菌株を栄養培地にて培養し、該培養物からグリセロールキナーゼを採取することを特徴とするグリセロールキナーゼの製造法である。【0012】本発明の一実施態様は、サーマス(Thermus)属に属し、下記理化学的性質を有するグリセロールキナーゼ生産能を有する菌株を栄養培地にて培養し、該培養物からグリセロールキナーゼを採取することを特徴とするグリセロールキナーゼの製造法である。【0013】本発明の酵素の起源は、上記性質を有するグリセロールキナーゼを産生しうるものであれば、動物、植物、微生物など如何なる起源のものを用いてもよい。好ましくは上記性質を有するグリセロールキナーゼを産生しうるサーマス(Thermus )属細菌であって、さらに好適な例としてサーマス・フラバス(Thermus flavus)TE3420(DSM674)などがあげられる。なお、本発明において使用したサーマス・フラバス(Thermus flavus)TE3420(DSM674)は、公的機関、DSM (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen, Maschroder Weg 1b, D-3300, Braunschweig, FRG )より入手できる。【0014】本発明の酵素を製造するにあたっては、上記性質を有するグリセロールキナーゼの生産菌を栄養培地にて培養し、該培養物からグリセロールキナーゼを採取する。グリセロールキナーゼ生産菌の培養に当たっては、栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、通常多くの場合は液体培養で行うが、工業的には通気撹拌培養を行うのが有利である。培地の栄養源としては微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えばグルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、フラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。【0015】また、グリセロールキナーゼの生産誘導物質として、グリセロールを培地に添加しておくことが望ましい。培養温度は菌が発育し、グリセロールキナーゼを生産する範囲で適宜変更し得るが、サーマス・フラバス(Thermus flavus)TE3420(DSM674)の場合、好ましくは50℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、グリセロールキナーゼが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を終了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地pHは菌が発育しグリセロールキナーゼを生産する範囲で適宜変更し得るが、特に好ましくは、pH6.0〜9.0程度である。【0016】培養物中のグリセロールキナーゼを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し利用することもできるが、一般には常法に従ってグリセロールキナーゼが培養液中に存在する場合は濾過,遠心分離などにより、グリセロールキナーゼ含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。グリセロールキナーゼが菌体内に存在する場合には、得られた培養物から濾過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いでこの菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また必要に応じてEDTA等のキレート剤及びまたは界面活性剤を添加してグリセロールキナーゼを可溶化し、水溶液として分離採取する。【0017】このようにして得られたグリセロールキナーゼ含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、更に硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、或いは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈澱法により沈澱せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤或いはゲル濾過剤などによるゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを行うことにより、精製されたグリセロールキナーゼを得ることができる。例えば、セファデックス(Sephadex) G-25(ファルマシア バイオテク)などによるゲルろ過、DEAE- トヨパール(Toyopearl) 、トヨパール(Toyopearl)-HW65C (トーソー)カラムクロマトグラフィーにより分離・精製し精製酵素標品を得ることができる。この精製酵素標品は、電気泳動(SDS-PAGE)的に、ほぼ単一のバンドを示す程度に純化されている。【0018】本発明のグリセロールキナーゼを製造する方法としては、上記方法に限られず、菌株を栄養培地にて培養し、該培養物からグリセロールキナーゼを採取する方法であれば、いかなる方法も採用することができる。【0019】本発明のグリセロールキナーゼの一例は、下記理化学的性質を有する。【0020】本発明のグリセロールキナーゼを用いた脂質およびグリセロールの定量法および試薬とは、グリセロールキナーゼの作用により生成するグリセロール−3−リン酸あるいはADPを定量する方法および試薬である。特に本発明のグリセロールキナーゼを液状試薬に使用することにより大幅な安定性の向上が見込まれる。【0021】本発明のグリセロールキナーゼと公知のグリセロールキナーゼとの性質の比較を表1に示す。本発明のグリセロールキナーゼは、同一反応を触媒する公知の酵素とは性質の異なる新規な酵素であり、特に公知の酵素よりも高い安定性を有する。【0022】【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。実施例中、グリセロールキナーゼ活性の測定は以下の方法で行った。グリセロール、ジヒドロキシアセトン、ピルビン酸キナーゼ、乳酸脱水素酵素、NADH、フォスフォエノールピルビン酸は和光純薬工業、4-アミノアンチピリンはナカライテスク、ATPはベーリンガー・マンハイムより購入した。その他の酵素は東洋紡績製のものを使用した。【0023】測定法1:グリセロール−3−リン酸を測定する方法酵素の基質特異性を見る場合以外は、この方法を用いて活性測定を行った。グリセロールを基質とし、グリセロール−3−リン酸の生成量によって酵素活性を測定した。0.5%4−アミノアンチピリン水溶液 0.2ml、1.5%フェノール水溶液 0.2ml、グリセロール−3−リン酸酸化酵素 200U 、ペルオキシダーゼ 80U、ATP 48.4mg に0.1M HEPES緩衝液(pH7.9) を加え、総量 21ml とし、これを以下の測定のための原液とした。各反応は、この測定原液を 1.5ml取り、0.3Mグリセロール水溶液 25 μl 、試料溶液 50 μl を添加し、混和後、37℃に制御された分光光度計で 500nmの吸光度を3分間記録し、その初期直線部分から1分間当たりの吸光度変化を求めた(△OD/min)。【0024】測定法2:ADPを測定する方法酵素の基質特異性を見るためにこの方法を用いた。グリセロールを基質とし、ADPの生成量によって酵素活性を測定した。フォスフォエノールピルビン酸 4.33mg 、NADH 2.98mg 、MgCl2.6H2O 42.7mg 、ATP 48.4mg 、ピルビン酸キナーゼ 80U、乳酸脱水素酵素 80Uに 20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5) を加え、総量 21ml とし、これを以下の測定のための原液とした。各反応は、この測定原液を 1.5ml取り、0.3Mグリセロール水溶液 25 μl 、試料溶液 50 μl を添加し、混和後、25℃、340nm の吸光度を3分間記録し、その初期直線部分から 1分間当たりの吸光度変化を求めた(△OD/min)。酵素活性の定義は、上記各条件で1分間に1マイクロモルのグリセロールを分解する酵素量を1単位(U)とする。【0025】実施例1サーマス・フラバス(Thermus flavus)TE3420(DSM674)を、3ml のグリセロールキナーゼ生産培地(2%グリセロール、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%肉エキス(pH7.1))で 50 ℃一晩培養後、 400mlの培地で培養し、12L の培地に移し、50℃、16時間培養した。その培養液を 8000rpm、20分間の遠心分離によって集菌した。菌体を 20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5) で洗浄後、同じ緩衝液に懸濁した。ダイノミル(Dyno-Mill) で破砕後、40〜80% の硫安分画処理を行い、その沈殿を 40%飽和硫安を含む 20mM リン酸カリウム緩衝液に溶かした。この試料を 40%飽和硫安を含む同じ緩衝液で平衡化したトヨパール(Toyopearl)-HW65C カラム(6x15cm)にかけ、40〜0%の硫安濃度勾配によって溶出を行った。活性画分をセファデックス(Sephadex) G-25 によるゲルろ過により脱塩し、20mMリン酸カリウム緩衝液で平衡化した DEAE-トヨパール(Toyopearl) カラム(5x25cm)にアプライし、 0〜0.5M NaCl の濃度勾配によって溶出を行うことにより分離・精製し、精製酵素表品を得た。該方法により得られたグリセロールキナーゼ標品は、電気泳動(SDS-PAGE)的にほぼ単一なバンドを示し、これより求められる分子量は約58,000であった。また、この時の比活性は約 57U/mg-protein であった。【0026】上記方法により得られたグリセロールキナーゼは下記特性を有していた。【0027】【表1】【0028】【発明の効果】本発明により、公知のグリセロールキナーゼよりも高い熱安定性を有する新規なグリセロールキナーゼが単離され、該酵素の製造法が確立され、グリセロールの定量への利用が可能となった。【図面の簡単な説明】【図1】本発明グリセロールキナーゼの種々のpHにおける相対活性(作用pH)および残存活性(安定pH)を示す図である。【図2】本発明のグリセロールキナーゼの種々の温度における相対活性(作用温度)および残存活性(30分間、pH7.5 、熱安定性) を示す図である。【図3】本発明グリセロールキナーゼおよびバチルス・ステアロサーモフィラス由来のグリセロールキナーゼの種々の処理時間における残存活性(65℃または70℃、pH7.5 、熱安定性)を示す図である。 下記理化学的性質を有するサーマス(Thermus)属に属する細菌が産生するグリセロールキナーゼ。作用:ATPの存在下にグリセロールに作用して、グリセロール−3−リン酸 とADPを生成する。熱安定性:70℃、20分間処理で90%以上の活性を保持する。至適pH:10.0(Britton and Robinson buffer)至適温度:65℃(pH7.9)pH安定性:6.5〜11.0(37℃で6時間後も90%以上の残存活性を示す範囲)等電点:4.3分子量:58,000(SDS−PAGE) 220,000(ゲル濾過)Km値:0.038mM(グリセロール) 0.16mM(ATP) 0.36mM(ジヒドロキシアセトン)比活性:50U/mg以上 サーマス・フラバス(Thermus flavus)TE3420(DSM674)が産生する酵素である請求項1記載のグリセロールキナーゼ。 サーマス(Thermus)属に属し、下記理化学的性質を有するグリセロールキナーゼ生産能を有する菌株を栄養培地にて培養し、該培養物からグリセロールキナーゼを採取することを特徴とするグリセロールキナーゼの製造法。作用:ATPの存在下にグリセロールに作用して、グリセロール−3−リン酸 とADPを生成する。熱安定性:70℃、20分間処理で90%以上の活性を保持する。至適pH:10.0(Britton and Robinson buffer)至適温度:65℃(pH7.9)pH安定性:6.5〜11.0(37℃で6時間後も90%以上の残存活性を示す範囲)等電点:4.3分子量:58,000(SDS−PAGE) 220,000(ゲル濾過)Km値:0.038mM(グリセロール) 0.16mM(ATP) 0.36mM(ジヒドロキシアセトン)比活性:50U/mg以上 グリセロールキナーゼ生産能を有する菌株が、サーマス・フラバス(Thermus flavus)TE3420(DSM674)である請求項3記載のグリセロールキナーゼの製造法。


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