タイトル: | 特許公報(B2)_バニリンの製造方法およびそのために適切な微生物 |
出願番号: | 1996242522 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N1/20,C11B9/00,C12P7/24 |
ユルゲン・ラーベンホルスト ルドルフ・ホツプ グラハム・エス・ビング JP 3608594 特許公報(B2) 20041022 1996242522 19960827 バニリンの製造方法およびそのために適切な微生物 ハーマン・ウント・ライマー・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング 391007116 小田島 平吉 100060782 ユルゲン・ラーベンホルスト ルドルフ・ホツプ グラハム・エス・ビング DE 19532317.3 19950901 20050112 7 C12N1/20 C11B9/00 C12P7/24 C12N1/20 C12R1:01 C12P7/24 C12R1:01 JP C12N1/20 A C11B9/00 K C12P7/24 C12N1/20 C12R1:01 C12P7/24 C12R1:01 7 C12N 1/20 C12P 7/24 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed 欧州特許出願公開第453368(EP,A1) 特開平7−87987(JP,A) Journal of Biotechnology,1994, Vol.37, No.2, 99.123-132 3 DSM 9991 DSM 9992 1997206068 19970812 6 20010209 七條 里美 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、フェルラ酸からバニリンを製造するための発酵的方法およびこの方法に適切な微生物に関する。【0002】【従来の技術】バニリンは、食品および飲料工業において多量に使用される重要な芳香物質である。今日まで、それは、場合によってはまた、オイゲノールまたはイソオイゲノールの酸化をへる化学的経路によって、主として亜硫酸廃液のリグニンから調製されてきた。しかしながら、この方法で得られるバニリンは、それが、食品法の意味においては天然物ではなく、したがって、また、天然芳香物質として表示してはならないという不利益をもっている。【0003】これまで、天然芳香物質バニリンは、バニラ豆の抽出によってのみ得ることができた;しかしながら、この方法で得られる天然バニリンは、非常に高価である。天然芳香物質は、化学的には、植物または動物起源の出発材料から、適切な物理的処理(蒸留および溶剤抽出を含む)によるか、酵素的または微生物的処理によって得られる芳香性を有する物質として定義され、それだけで使用されるか、または慣用の食品加工法(乾燥、焙焼、発酵を含む)によって人間の消費のために調製される。【0004】種々の微生物および酵素を用いる天然バニリン調製のための種々の他の方法が、その間に公表されているが、今日までは非常に低収量か低濃度であるが故に、市場にはいかなる製品をももたらしていない;欧州特許出願公開第405 197号、同第453 368号および同第542 348号、US−PS5 128 253、特開昭63−267 268号(25.10.1988)および同昭63−267 284号(25.10.1988)、参照。【0005】科学文献では、フェルラ酸の分解におけるバニリンの生成が、非常に様々の生物において中間体として記述されているが、一般に、濃度に関するデータは与えられていない;S.Toms et al., ”The Degradation of trans−Ferulic Acid by Pseudomonas acidovorans” in Biochemistry 9 (1970), 337−343; J.B. Sutherland et al., ”Metabolism of Cinnamic, p−Coumaric and Ferulic Acid by Streptomyces setonii” in Can. J. Microbiol. 29 (1983), 1253−1257; G. Oetuek, ”Degradation of Ferulic Acid by Escherichia coli” in J. Ferment. Technol. 63 (1985), 501−506; S. Nazareth et al., ”Degradation of Ferulic Acid via 4−Vinylguaiacol by Fusarium solani (Mart.) Sacc.” in Can. J. Microbiol. 32 (1986) 494−497; M. Rahouti et al., ”Metabolism of Ferulic Acid by Paecilomyces variotii and Pestalotia palmarum” in Appl. Environm. Microbiology 55 (1989), 2391−2398 、参照。【0006】また、報告された菌株のあるものは、菌株収集機関に寄託されてなく、それ故、他の研究者には評価できない。【0007】【発明が解決しようとする課題】容易に利用できる出発材料からの天然バニリンの新規な実用的製造方法に関する研究において、驚くべきことに、これが、放線菌群からのある種の細菌を用いて、天然フェルラ酸の転化により、良好な収量および濃度において経済的に得られることがここに発見された。【0008】【課題を解決するための手段】したがって、本発明は、ドイッチェ・ザムルング・フュール・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルツレンGmbH・イン・ブルンスウィック(Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH in Brunswick)に、番号DSM9991およびDMS9992の下に寄託された菌株を含むシュードノカルヂア(Pseudonocardia)属の新規なアミコラトプシス エスピー.(Amycolatopsis sp.)に関する。【0009】化学分類学的研究の結果を基に、両分離株は、アミコラトプシス属(シュードノカルヂアシー(Pseudonocardiaceae)科)に指定された。同定は、次の5つの特性に基づいた:1.ペプチドグリカンの特徴的なアミノ酸:メソ−ジアミノピメリン酸;2.全細胞加水分解物からの特徴的な糖:アラビノースおよびガラクトース;3.ミコール酸:なし;4.メナキノン:MK−9(H4);5.脂肪酸パターン:イソ/アンテイソ− + 10−メチル−分枝飽和および不飽和脂肪酸、プラス2−ヒドロキシ脂肪酸。この脂肪酸パターンは,アミコラトプシス属を代表する特徴である。【0010】また、DSM9991およびDSM9992は、アミコラトプシス属を代表する典型的外観−ベージュないし黄色の基底菌糸、そしてまたある種の培地では、細かい白色気菌糸−を示すので、アミコラトプシス属へのDSM9991およびDSM9992の指定は、形態学によってもさらに支持される。【0011】主成分分析による登録されたDSM脂肪酸データベースとこの2菌株の脂肪酸パターンの比較は、2菌株についてアミコラトプシス・メヂテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)への指定をもたらした。しかしながら、類似指数は、両者の場合非常に低い(0.037および0.006)ので、特定の種の指定はできない。【0012】さらに、16SrRNAの分析、および特徴的な部分配列とアミコラトプシス種菌株の登録された16SrRNAデータベースとの比較は、脂肪酸分析の結果を支持した。また16SrRNA配列の場合には、既知のアミコラトプシス種菌株との高い相同性は、立証できなかった。2つの分離株のパターンに差異が見られなかった脂肪酸の結果とは反対に、16SrRNA配列を用いることによって、DSM9991およびDSM9992を区別することは可能であった。16SrRNA配列における大きな差異(類似度99.6%)を基に、DSM9991およびDSM9992は、互いに独立したこれまで記述されてないアミコラトプシス種の菌株であると推定できる。【0013】さらに、本発明は、新規なアミコラトプシス種またはそれらの酵素、あるいは前記アミコラトプシス種由来の遺伝物質(遺伝物質は、この反応に活性をもつ酵素の構造遺伝子および調節遺伝子をコードしている)をもつ微生物の存在下で、フェルラ酸からのバニリンの製造方法に関する。【0014】さらに、本発明は、このように調製されたバニリンの芳香剤調製のための使用に関する。【0015】出発材料として好適な天然フェルラ酸は、なかんずく、天然オイゲノールからシュードモナス エスピー.DSM7062またはDSM7063を用いる転化によって得ることができる(ドイツ特許出願第4 227 076号)。【0016】微生物は、微生物培養の常用法で常用の培養基において培養できる。基質は、培養の開始時、増殖の間または増殖完了後に、すべて一度でも、または比較的長期にわたって分散されても添加できる。フェルラ酸の量は、有利には、培養液中の化合物濃度が、80g/l、好ましくは15g/lを超えないような量である。反応経過は、培養液中の出発材料および生産物を、高圧液体クロマトグラフィーにより定量することによって追跡できる。最適量のバニリンが生成された後、これが、抽出、蒸留またはクロマトグラフィーのような既知の物理的方法によって、培養液から単離される。かくして得られる粗生産物は、さらなる段階によって精製できる。【0017】本発明の微生物は、合成、半合成または複合培養基において培養できる。これらの培養基は、炭素源、窒素源、無機塩、および場合により微量元素とビタミンを含む。【0018】使用できる炭素源は、例えば、グルコースのような糖類、グリセロールまたはマニトールのような糖アルコール類、クエン酸のような有機酸、あるいは麦芽エキス、酵母エキスまたはカゼイン加水分解物のような複合混合物である。【0019】適切な窒素源の例は、硝酸塩およびアンモニウム塩のような無機窒素源、そして酵母エキス、大豆粉、綿実粉、カゼイン、カゼイン加水分解物、コムギグルテンおよびコーンスチープリカーのような有機窒素源である。【0020】使用できる無機塩は、例えば、中でもナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛および鉄の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、炭酸塩およびリン酸塩である。【0021】培養温度は、好ましくは、範囲10〜55℃、特に好ましくは、範囲35〜45℃である。培地のpHは、好ましくは、3〜9、特に、4〜8である。微生物は、適切な振盪装置でも、撹拌機を備えた発酵槽でも培養できる。培養中の管理は、十分な通気を確保しなければならない。微生物は、バッチ法、半連続または連続法でも培養できる。生産物が最大量に到達するまでの培養時間は、培養接種後4〜120時間である。使用されるか生成される物質の毒性から微生物を保護するために、培養基に吸着剤、例えば活性炭か、またはRAmberliteXAD−2、RAmberliteXAD−7、XAD−16、RLewatitOC1062か1064のような吸着樹脂を添加することのが得策である。【0022】以下の実施例におけるパーセンテージは、各場合、重量である。【0023】【実施例】実施例1前培養の調製バッフル付きの500ml三角フラスコに、麦芽エキス1g、グルコース0.4gおよび酵母エキス0.4gを含み、そして水で100mlにした培地100mlを満たし、次いで、121℃で20分間殺菌した。冷却後、フラスコに、アミコラトプシス エスピー.DSM9991またはDSM9992の凍結グリセロール培養物200μlを接種した。培養は、ロータリー振盪機上で、45℃、100rpmで実施した。24時間後、この培養物を、生産培地へ接種するために使用した。【0024】実施例2振盪フラスコにおける生産側面バッフル付き500ml三角フラスコ8個に、各々培地(グルコース4g/l、麦芽エキス10g/lおよび酵母エキス4g/l)100mlを満たし、次いで、121℃で20分間蒸気殺菌した。【0025】冷却後、フラスコに、各々、実施例1からのアミコラトプシス種DSM9992の培養物2mlを接種した。培養は、ロータリー振盪機上で、37℃、100rpmで実施した。【0026】滅菌濾過したフェルラ酸3.3%溶液20mlを、各フラスコに、接種後16時間に添加し、24時間後40ml、そして44時間後さらに10mlを添加した。47時間後、そのフラスコ培養液を一緒にし、そしてバニリンおよび未反応フェルラ酸の含量を測定した。【0027】HPLC分析によれば、培養液中のバニリン含量は、7317ppmであった。フェルラ酸の1526ppmは、まだ未反応であった。8個のフラスコの培養液の最終重量は、1420gであった。これは、転化されたフェルラ酸を基に、転化率が理論量の約72%であることを示す。【0028】実施例310 l発酵槽におけるバニリンの生産培養基(グルコース4g/l、麦芽エキス10g/lおよび酵母エキス6g/l)5 lを、発酵槽中で殺菌し、そして冷却後、実施例1によるDSM9992の種母培養100mlを接種した。【0029】培養条件は、37℃、500rpm、通気量5 l/分であった。接種後12.5時間に、フェルラ酸約3.7%溶液1.634kg(フェルラ酸60.2g)を添加した。17.5時間後、さらなるフェルラ酸約3.7%溶液4.397kg(フェルラ酸164.72g)を、10時間かけてポンプで添加した。【0030】32時間後、発酵を終了した。バニリン濃度は、11.5g/lであり、未反応のフェルラ酸1g/lが、なお存在した。最終容量は、11.29 lであった。これは、転化されたフェルラ酸を基に、転化率が理論量の77.8%であることを示す。【0031】本発明の特徴および態様は以下のとおりである。【0032】1. ドイッチェ・ザムルング・フュール・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルツレンGmbH・イン・ブルンスウィック(Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH in Brunswick)に、番号DSM9991およびDMS9992の下に寄託された菌株を含むシュードノカルヂア(Pseudonocardia)属のアミコラトプシス エスピー.(Amycolatopsis sp.)。【0033】2. アミコラトプシス エスピー.DSM9991もしくはDMS9992、またはそれらの酵素、あるいはこの反応に活性をもつ酵素の構造および調節遺伝子をコードしている、アミコラトプシス エスピー.DSM9991もしくはDMS9992由来の遺伝物質を含む微生物の存在下で、フェルラ酸からバニリンを調製する方法。【0034】3. 使用される出発成分が天然フェルラ酸である、第2項記載の方法。【0035】4. 芳香剤調製のための、第2および3項記載の方法により調製されたバニリンの使用。 ドイッチェ・ザムルング・フュール・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルツレンGmbH・イン・ブルンスウィック(Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH in Brunswick)に、番号DSM9991およびDMS9992の下に寄託された菌株を含むシュードノカルヂア(Pseudonocardia)属のアミコラトプシス エスピー.(Amycolatopsis sp.)の一菌株。 アミコラトプシス エスピー.DSM9991もしくはDMS9992の微生物の存在下で、フェルラ酸からバニリンを製造する方法。 (a)請求項2記載の方法によりフェルラ酸からバニリンを製造する工程、そして(b)工程(a)で製造されたバニリンを芳香剤調製のために使用する工程を含むことを特徴とする芳香剤の調製方法。