生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_イノシトールの製造法
出願番号:1996234469
年次:2007
IPC分類:C12P 7/18


特許情報キャッシュ

石井 康雅 土井 伸一 田中 誠 阪本 禮一郎 新井 直人 JP 3950185 特許公報(B2) 20070427 1996234469 19960904 イノシトールの製造法 王子コーンスターチ株式会社 000122243 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 石井 康雅 土井 伸一 田中 誠 阪本 禮一郎 新井 直人 20070725 C12P 7/18 20060101AFI20070705BHJP JPC12P7/18 C12P 1/00-41/00 JSTPlus/JMEDPlus(JDream2) CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開平04−365489(JP,A) 特開平06−343500(JP,A) 特開平06−142461(JP,A) 特開平02−188586(JP,A) 特開昭60−84108(JP,A) 4 1998075795 19980324 8 20030829 新留 豊 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、フィチン酸またはその塩類から高純度のイノシトールを製造する方法に関するものである。【0002】【従来の技術】イノシトールはシクロヘキサンの6つの炭素の有する水素がそれぞれ1個の水酸基で置換された化合物であり、9種の立体異性体が存在するが、本明細書における「イノシトール」とは、「ミオイノシトール」と呼ばれる天然型のイノシトールを意味するものとする。イノシトールは、高等動物にとってビタミンの一種として重要な物質であり、脂肪、コレステロールの代謝に重要な役割をつとめ、抗脂肝作用を有し、肝硬変症、過コレステロール血症等に有効とされている。このため、近年では栄養食品、飼料添加物、医薬品などにも利用され、注目を浴びつつある。【0003】イノシトールの製造には、脱脂米糠やコーンスチープリカーなどの原料から無機あるいは有機の酸類を用いてフィチン酸のカルシウム、マグネシウム複合塩であるフィチンを抽出し、次いで抽出液中の蛋白質、炭水化物等を除去するために、一旦フィチンを沈澱させて分別、分離した後に高温高圧下、フィチンを加水分解してイノシトールを得る方法が一般的に用いられている。【0004】しかしながらこの方法では、フィチンと不純物とを十分に分離することは極めて困難である。例えば、米糠から酸抽出した抽出液に、アルカリ剤、例えば水酸化ナトリウム、アンモニア水、水酸化カルシウム等を加えて濾別する方法では、フィチンの沈殿物がコロイダルなペースト状を呈するため、その分別濾過は非常に難しく、また蛋白系の不純物が多量に共沈するため、その除去が極めて困難である。【0005】そのため、フィチン分離工程後におけるフィチンの加水分解では、共存する蛋白質や糖の分解をも生じ、そのまま濃縮、結晶化してもイノシトールが結晶として得られず、精製する場合には、その精製に用いるイオン交換樹脂、活性炭等への負荷は多大なものとなる。また、同時に副産物として発生するリン酸カルシウムの量はイノシトールの数倍にも及び、しかも結晶が細かいためイノシトールとの分別も難しく、イノシトール製造上の大きな障害となっている。さらに、高温高圧下での加水分解は、特殊な装置や大量のエネルギーを必要とするため、経済的に不利である。【0006】ところで、フィターゼ(ミオイノシトールヘキサリン酸ホスホヒドロラーゼ:EC3.1.3.8)は、フィチン酸またはその塩類を加水分解してミオイノシトールと無機リン酸塩を生成するリン酸加水分解酵素である。フィターゼは、1907年に米糠中に存在することが明らかにされており(Suzukiら,Bull.Coll.Agr.Tokio Imp.Univ. 7,495(1907))、そして1911年にはアスペルギルス種から得られている(Dox and Golden,J.Biol.Chem.10,183-186(1911))。さらに、フィターゼは小麦のふすま、植物の種子、動物の腸および微生物にも見出されている。【0007】フィチン酸またはその塩類にフィターゼを作用させてイノシトールを生産する方法は既に検討されており、この目的に用いるフィターゼとして、アスペルギルス属、リゾプス属、サッカロミセス属、ムコール属等に属する、各種フィターゼ生産能を有する菌株がスクリーニングされている。さらにこれらの微生物の中でも、特にアスペルギルス・フィクウム(Aspergillus ficuum)が好ましいことが述べられている(Enzyme Microb.Thechnol.,5巻377-379(1983)及びAppl.Microbiol.,16巻 1348-1351(1968))。【0008】フィターゼとともにフィチン酸またはその塩類を加水分解する酵素として、酸性ホスファターゼ(オルトホスフォリック モノエステル ホスホヒドラーゼ E.C.3.1.3.2)が知られている。酸性ホスファターゼは、植物材料、飼料、食品等に含まれるフィチンに対しては活性を示さないが、フィターゼと一緒に加えると、両酵素間の相乗作用により、フィターゼのフィチン分解活性が向上することが知られている(特開平4-365489号公報)。【0009】このように、フィチン酸またはその塩類にリン酸加水分解酵素を作用させることによるイノシトールの製法は、無機・有機酸類を用いてフィチンを抽出し、沈澱・分離した後に加水分解する方法における問題を解決する有効な手段である。しかしながら、加水分解した後、イノシトール含有液からイノシトールを効率良く分離する方法がなく、イノシトールの効率的な分離法が求められていた。【0010】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、フィチン酸またはその塩類をリン酸加水分解酵素で加水分解してイノシトールを生成させた後、イノシトール含有液からイノシトールを効率良く分離して、高純度のイノシトールを経済的に製造する方法を提供することである。【0011】【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、フィチン酸および/またはフィチン酸の塩類をリン酸加水分解酵素で加水分解して得られたイノシトール含有液を低阻止逆浸透膜で処理することにより、イノシトールを高純度で分離できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、フィチン酸および/またはフィチン酸の塩類をリン酸加水分解酵素で加水分解してイノシトールを生成させ、得られたイノシトール含有液を低阻止逆浸透膜で濾過することにより、透過液中にイノシトールを得ることを特徴とするイノシトールの製造法である。【0012】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の方法では、まずフィチン酸もしくはフィチン酸の塩類またはそれらの混合物をリン酸加水分解酵素で加水分解し、イノシトールを生成させる。イノシトールの原科であるフィチン酸またはその塩は、種子や穀類に多く含有されているが、フィチン酸は、遊離状態で種子や穀類に存往することはほとんど無く、多くの場合は、カルシウム・マグネシウム複合塩であるフィチンとして存在する。即ち、フィチン酸の塩類としては、フィチン酸の重金属塩やアルカリ土類金属などが挙げられる。【0013】この加水分解は、フィチン酸および/またはフィチン酸の塩類の溶液に対して直接リン酸加水分解酵素を作用させる他、フィチン酸および/またはフィチン酸の塩類を含有する液を酵素反応の基質としてリン酸加水分解酵素を作用させることによって行うことができる。フィチン酸および/またはフィチン酸の塩類を含有する液としては、例えばコーンスチープリカー、脱脂米糠の酸抽出液等が挙げられ、これらに適宜精製・濃縮その他の処理を施したものを使用してもよいし、コーンスチープリカーと脱脂米糠抽出液とを混合して使用してもよい。【0014】コーンスチープリカーはとうもろこしの亜硫酸浸漬液であり、フィチン酸またはその塩類の酸抽出液であって、イノシトールの工業的製造に常用される原料である。コーンスチープリカーには通常、およそ2%(対固形分)のイノシトールに相当するフィチン酸またはその塩が含まれている。脱脂米糠もイノシトール製造に好適な原料であり、これを、例えば1%硫酸水溶液で抽出して、残渣を除いたものを用いることができる。本発明で用いるリン酸加水分解酵素としては、フィチン酸またはその塩類を加水分解して、ミオイノシトールと無機リン酸塩を生成するものであればいかなる酵素であってもよく、例えば、フィターゼを使用することができる。【0015】 フィターゼは、いかなるものを由来としてもよいが、例えば米糠、小麦のふすま、植物の種子、動物の腸、微生物等から得ることができる。微生物としては、フィターゼ生産能を有するアスペルギルス属、リゾプス属、サッカロミセス属、ムコール属等に属する菌を例示することができる。フィターゼは単独で使用することもできるが、フィターゼとともに酸性ホスファターゼを使用すると、フィターゼのフィチン分解活性を向上させることができるため、フィターゼと酸性ホスファターゼとを組み合わせて使用するのが好ましい。この場合、両者を共存させて加水分解を行ってもよいし、先にフィターゼを作用させた後、次いで酸性ホスファターゼを作用させてもよい。【0016】植物や微生物のなかにはフィターゼと酸性ホスファターゼの両方を備えるものがあり、例えばアスペルギルス・フィクウム(Aspergillus ficuum)(T.R.Shiehら :J.Bacteriology,vol.100, p.1161-1165(1969))やマング・ビーン(N.C.Mandelら :Phytochemistry,vol.11, p.495-502(1972))などが挙げられる。なお、これらの酵素は必ずしも精製されたものでなくてもよく、例えば微生物由来の酵素の場合は、部分精製酵素、培養液、微生物菌体などを用いることも可能である。【0017】加水分解は、フィチン酸および/またはフィチン酸の塩類をpH3〜6に調整してリン酸加水分解酵素を添加し、温度を40〜60℃に保持することにより好ましく行うことができる。圧力は特に限定されず、常圧で行うことができる。pHの調整には、アルカリとしては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属溶液を用いることができ、酸としては塩酸、硫酸、フィチン酸などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。なお、コーンスチープリカーは、通常pHが3〜6の範囲にあるため、そのまま加水分解に供することができる。【0018】フィチン酸および/またはフィチン酸塩の溶液、あるいはフィチン酸および/またはフィチン酸の塩類を含有する液をリン酸加水分解酵素で加水分解すると、イノシトールを含有する液(イノシトール含有液)が得られる。このイノシトール含有液には、イノシトールの他、未分解のフィチン酸およびその塩類、加水分解により生じたリン酸塩などが含まれる。特に、酵素基質としてコーンスチープリカーや米糠の酸抽出液を使用した場合には、更に蛋白質、炭水化物などが不純物として混在する。【0019】従って、イノシトール含有液をそのまま濃縮、結晶化してもイノシトールを結晶として得ることはできない。イオン交換樹脂、活性炭等でイノシトール含有液を精製するとしても、それらに対する負荷は多大なものとなる。また、同時に副産物として発生するリン酸カルシウムの量はイノシトールの数倍にも及び、しかも結晶が細かいためイノシトールとの分別も難しい。【0020】これらの問題を解決するために、本発明では、イノシトール含有液を低阻止逆浸透膜で処理する。即ち、フィチン酸および/またはフィチン酸塩の溶液、あるいはフィチン酸および/またはフィチン酸の塩類を含有する液をリン酸加水分解酵素で加水分解し、得られたイノシトール含有液を低阻止逆浸透膜で濾過することにより、イノシトール含有液に含まれる未分解のフィチン酸およびその塩類や、加水分解によって生じたリン酸塩等の不純物とイノシトールとを分離して、透過液中にイノシトールを得る。【0021】コーンスチープリカーや米糠の酸抽出液を加水分解して得られたイノシトール含有液には、上記不純物の他に蛋白質、炭水化物などが含まれ、低阻止逆浸透膜で濾過することにより、これらの不純物とイノシトールとを分離して透過液中にイノシトールを得ることができる。低阻止逆浸透膜とは、一般に限外濾過膜と逆浸透膜の中間的領域の性質を有する膜であり、本発明では、分子量数百程度の物質の一部を通過させるポアサイズを有する、食塩阻止率が10〜60%の低阻止逆浸透膜を使用するのが好ましい。ポアサイズが大き過ぎるとフィチン酸およびその塩類、リン酸塩、蛋白質、糖類等が膜に阻止されずに通過し、他方、ポアサイズがあまりに小さいとイノシトールの通過量が少なく、実用的でない。【0022】低阻止逆浸透膜の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、その他公知の重合体、またはそれらの混合物のいずれであってもよい。また、低阻止逆浸透膜の形状は、平膜、中空糸状、スパイラル状、管状などのいずれであってもよい。本発明に適合する市販の低阻止逆浸透膜としては、例えば、日東電工(株)製NTR−7410(食塩阻止率10%)、NTR−7430(食塩阻止率30%)、NTR−7450(食塩阻止率50%)、東レ(株)製SU−220S(食塩阻止率60%)、SU−620(食塩阻止率55%)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0023】低阻止逆浸透膜による処理は、加水分解により一旦イノシトールを生成させた後、得られたイノシトール含有液に対して行ってもよいし、リン酸加水分解酵素を作用させるのと並行且つ同時に行ってもよい。加水分解と低阻止逆浸透膜による処理を並行且つ同時に行うには、例えば低阻止逆浸透膜を備えた膜濾過装置を使用する。即ち、pH、温度を調整したフィチン酸および/またはフィチン酸の塩類の水溶液、あるいはフィチン酸および/またはフィチン酸の塩類を含有する液に、リン酸加水分解酵素を加えて加水分解反応を行いながら、加水分解反応液を低阻止逆浸透膜に供給、循環させつつ、濾過圧力を徐々に加圧、具体的には、0〜30Kg/cm2・hで加圧する。このような処理を行うことにより、加水分解反応で生成したイノシトールが低阻止逆浸透膜により反応系から逐次除去され、リン酸加水分解酵素によるイノシトールの生成を促進することができる。【0024】以上のようにしてイノシトール含有液を低阻止逆浸透膜で処理することより、イノシトールを効率良く高純度で分離することができる。即ち、未分解のフィチン酸またはその塩や、リン酸塩、蛋白質、炭水化物の大部分は低阻止逆浸透膜を透過しないため、透過液として得られるイノシトール液にはリン酸塩や蛋白質、炭水化物等の不純物はほとんど含まれない。【0025】また、従来大量に生成し、イノシトール製造上の障害となっていたリン酸塩は低阻止逆浸透膜に阻止されるため、イノシトール液中のリン酸塩含量は極めて少なくなる。なお、低阻止逆浸透膜に阻止されたリン酸塩は、コーンスチープリカー、脱脂米糠濃縮液などに含まれることとなり、従来よりも吸収性、分解性の高いリンを含む飼料または肥料として有用なものとなる。このようにして得られたイノシトール液は、そのままで、あるいはイオン交換樹脂で処理した後、濃縮、結晶化の工程を経て、製品としてのイノシトールとすることができる。イオン交換樹脂による処理や、濃縮、結晶化は常法によって行えばよい。【0026】【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。〔実施例1〕フィチン酸カルシウム(イノシトール含有量:4.05g,和光純薬工業(株)製)20gに蒸留水を加え、次いでフィチン酸溶液(50%フィチン酸溶液,和光純薬工業(株)製)でpHを5に調整した後、さらに蒸留水で全量を1000gとした(総イノシトール含有量:4.32g)。これに、フィターゼ(アスペルギルス・フィクウム由来,1500単位/g,シグマ社製)2000単位を加えて50℃で一晩加水分解した。得られたイノシトール含有液を、低阻止逆浸透膜(日東電工(株)製NTR−7450,食塩阻止率50%)によって処理した。処理条件としては、濾過圧力30Kg/cm2、液温40℃、濃縮倍率4倍であった。透過液を濃縮、結晶化してイノシトールの結晶1.83gを得た。得られたイノシトールの純度は98%以上、収率は42%であった。【0027】〔実施例2〕フィチン酸カルシウム(イノシトール含有量:4.05g,和光純薬工業(株)製)20gに蒸留水を加え、次いでフィチン酸溶液(50%フィチン酸溶液,和光純薬工業(株)製)でpHを5に調整した後、さらに蒸留水で全量を1000gとした(総イノシトール含有量:4.32g)。これに、フィターゼ(アスペルギルス・フィクウム由来,1500単位/g,シグマ社製)2000単位および酸性ホスファターゼ(小麦胚芽由来,400単位/g,シグマ社製)400 単位を加えて50℃で一晩加水分解した。得られたイノシトール含有液を、低阻止逆浸透膜(日東電工(株)製NTR−7450,食塩阻止率50%)によって処理した。処理条件としては、濾過圧力30Kg/cm2、液温40℃、濃縮倍率4倍であった。透過液を濃縮、結晶化してイノシトールの結晶2.47gを得た。得られたイノシトールの純度は98%以上、収率は56%であった。【0028】〔実施例3〕コーンスチープリカー(pH3.8 ,固形分11%,イノシトール含有量:2.62g)1リットルに、フィターゼ(アスペルギルス・フィクウム由来,1500単位/g,シグマ社製)1000単位を添加して50℃で一晩加水分解した。得られたイノシトール含有液を、低阻止逆浸透膜(日東電工(株)製NTR−7410,食塩阻止率10%)によって処理した。処理条件としては、濾過圧力30Kg/cm2、液温40℃、濃縮倍率4倍であった。透過液をイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂 SK-1B,アニオン交換樹脂PA-408,三菱化学(株))で処理した後、活性炭で脱色し、濃縮、結晶化してイノシトールの結晶0.82gを得た。得られたイノシトールの純度は98%以上、収率は31%であった。【0029】〔実施例4〕コーンスチープリカー(pH3.8 ,固形分11%,イノシトール含有量:52.4g)20リットルを低阻止逆浸透膜(日東電工(株)製NTR−7410HG,高温用,食塩阻止率10%)を備えた膜濾過装置の供給槽に入れ、温度を50℃に調整した。これにフィターゼ(アスペルギルス・フィクウム由来,1500単位/g,シグマ社製)20000 単位および酸性ホスファターゼ(小麦胚芽由来,400単位/g,シグマ社製)4000単位を加えた。酵素による加水分解を開始すると同時に、膜濾過供給槽から酵素反応液を低阻止逆浸透膜に供給して濾過を開始し、酵素反応液を循環させながら、低阻止逆浸透膜の濾過圧力を0から30Kg/cm2まで8時間かけて徐々に上げ、4倍濃縮まで処理した。透過液をイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂 SK-1B,アニオン交換樹脂PA-408,三菱化学(株))で処理した後、濃縮、結晶化してイノシトールの結晶18.2gを得た。得られたイノシトールの純度は98%以上、収率は34%であった。【0030】〔比較例1〕フィチン酸カルシウム(イノシトール含有量:4.05g,和光純薬工業(株)製)20gに蒸留水を加え、次いでフィチン酸溶液(50%フィチン酸溶液,和光純薬工業(株)製)でpHを5に調整した後、さらに蒸留水で全量を1000gとした(総イノシトール含有量:4.32g)。これに、フィターゼ(アスペルギルス・フィクウム由来,1500単位/g,シグマ社製)2000単位を加えて50℃で一晩加水分解した。得られたイノシトール含有液を濃縮、結晶化したが、イノシトールの結晶は得られなかった。【0031】〔比較例2〕コーンスチープリカー(pH3.8 ,固形分11%,イノシトール含有量:2.62g)1リットルに、フィターゼ(アスペルギルス・フィクウム由来,1500単位/g,シグマ社製)1000単位を添加して50℃で一晩加水分解した。得られたイノシトール含有液をイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂 SK-1B,アニオン交換樹脂PA-408,三菱化学(株))で処理した後、活性炭で脱色し、濃縮、結晶化してイノシトールの結晶0.29gを得た。得られたイノシトールの純度は84%、収率は9.2 %であった。【0032】【発明の効果】本発明によれば、高純度のイノシトールを経済的に有利に製造することができる。 コーンスチープリカーまたは脱脂米糠酸抽出液に含まれるフィチン酸および/またはフィチン酸の塩類をリン酸加水分解酵素で加水分解してイノシトールを生成させ、得られたイノシトール含有液を、食塩阻止率10〜60%の低阻止逆浸透膜で濾過することにより、透過液中にイノシトールを得ることを特徴とするイノシトールの製造法。 前記リン酸加水分解酵素として、フィターゼまたはフィターゼおよび酸性ホスファターゼを用いることを特徴とする請求項1記載のイノシトール製造法。 前記リン酸加水分解酵素による加水分解と、前記低阻止逆浸透膜による濾過とを、並行且つ同時に行うことを特徴とする請求項1または2に記載のイノシトールの製造法。 前記透過液を、イオン交換樹脂でさらに処理することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイノシトールの製造法。


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