タイトル: | 特許公報(B2)_2−インダノン類の製造方法 |
出願番号: | 1996231762 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 49/67,C07C 45/28 |
横田 圭一 伊藤 育夫 竹内 誠二 JP 3831021 特許公報(B2) 20060721 1996231762 19960902 2−インダノン類の製造方法 エア・ウォーター株式会社 000126115 山口 和 100070493 中嶋 重光 100075524 横田 圭一 伊藤 育夫 竹内 誠二 20061011 C07C 49/67 20060101AFI20060921BHJP C07C 45/28 20060101ALI20060921BHJP JPC07C49/67C07C45/28 C07C 49/67 C07C 45/28 CAplus(STN) CASREACT(STN) Organic Symthesis,米国,1979年 3月29日,col. vol.V,p.647-649 3 1998072397 19980317 11 20030714 藤原 浩子 【産業上の利用分野】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医薬、農薬、樹脂改質等の製造原料として有用な2−インダノン類を工業的規模で製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】2−インダノン類の製造方法としては、例えば、インデンに臭素水を反応させてブロモヒドリン体とし、次いでアルコール中でアルカリと反応させた後、硫酸と加熱する方法(以下ブロモヒドリン法と略す;J.Am.Chem.Soc.,57,2022(1935),J.Chem.Soc.,2,2550(1922)およびJustus Liebigs Ann. Chem.,639,204(1961))や、インデンを原料とし、大過剰のギ酸を溶媒として用い、過酸化水素により過ギ酸として酸化してギ酸エステル体とし、次いで硫酸中で加熱処理する方法(以下ギ酸エステル法と略す;Org.Synth.,41,53(1961))等が知られている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ブロモヒドリン法は、臭素水を使用するために安全衛生および廃棄物・廃水処理の面で問題がある。他方、ギ酸エステル法では、大過剰のギ酸を溶媒として使用するため、インデンと過ギ酸を反応させた後、中間体であるギ酸エステル体を取り出すためにギ酸を留去しなければならず、これは未反応の過酸化物を濃縮することになって爆発等の危険性を伴うという欠点を有している。【0004】これらの問題点を改善するために、溶媒として非水溶性有機溶媒を用いて過酸化水素による酸化反応を行った後、静置して有機層を分離し、得られた有機層を鉱酸処理する方法(特開昭62−185035)や、大過剰の有機酸を用いて有機過酸により酸化した後、非水溶性有機溶媒で抽出し、得られた抽出液を鉱酸処理し、抽出残液の有機酸を繰り返し酸化反応に用いる方法(特開昭63−39833)が提案されている。【0005】しかし、これらの方法は、いずれも非水溶性有機溶媒を用いるため、油水分離および溶媒回収等の工程が必要となり、またいずれの方法も、有機過酸で酸化する際の反応温度が30〜40℃と低いため、工業的規模で実施するには、酸化に伴う発熱を制御するために、低温まで冷却できる特殊な設備が必要で、そのような設備のない場合は過酸化水素の滴下に非常に長時間かかり経済的ではないという欠点を有している。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記欠点を解決すべく鋭意検討を行った結果、酸化反応の際に反応溶媒として水を用いることにより、使用する有機酸量が低減でき、かつ40〜110℃の高温での反応が可能となり、また次いで酸化反応液に直接酸を加えて加熱処理することにより、製造工程簡素化も可能となって、高収率で2−インダノン類が得られ、工業的に非常に有用であることを見出しこの発明を完成したものである。【0007】さらに、本発明は、過酸化水素を滴下して反応系内で有機過酸を生成させながら、この有機過酸でインデン類を酸化し、また酸化反応終了後は反応液を濃縮することがないため、過酸化物濃度が高くなることはなく、安全性の面でも向上され工業的に極めて有用な製造方法である。【0008】すなわち本発明は、インデンまたはそのベンゼン環置換体を、水を溶媒として、有機酸を加え、40〜110℃でこれらの混合物に過酸化水素を滴下して酸化した後、次いでこの反応混合物に酸を加えて加熱処理することを特徴とする2−インダノン類の製造方法である。【0009】【発明の実施の形態】本発明で原料として使用されるものはインデン類、すなわちインデンまたはそのベンゼン環置換体である。インデンのベンゼン環置換体とは、インデン骨格のベンゼン環側、すなわち4位、5位、6位、7位の少なくとも一つに置換基を有する化合物のことである。置換基としては、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基およびハロゲン等が挙げられる。【0010】また、本発明で使用する有機酸としては低級脂肪族カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸等が挙げられる。使用する有機酸の使用量は、原料のインデン類に対して0.2〜10当量、好ましくは0.5〜5当量である。使用量が少なすぎると、反応速度が遅くなり反応に長時間かかり好ましくない。逆に多すぎても、効果はなく経済的ではない。【0011】本発明で使用する水としては、工業用水、イオン交換水、純水、蒸留水等いずれでも使用でき、特に限定されない。なお後記のとおり、この後の過酸化水素の添加を通常30〜35重量%の過酸化水素水の滴下によって行うため、滴下開始後は過酸化水素からの水分が付加されるが、本発明においては反応開始時において、すなわち過酸化水素滴下前に、インデン類と有機酸とともに水が存在している状態で過酸酸化を行うことが必要である。【0012】また水の使用量は、反応開始時において、有機酸に対し重量で0.3〜20倍、好ましくは0.5〜10倍である。使用量が多すぎると、反応速度が遅くなり反応に長時間かかり好ましくない。少なすぎると、副反応が増え収率が低下する。【0013】本発明方法においては、上記混合物に、過酸化水素を滴下して酸化反応を行うが、過酸化水素としては3〜90重量%の過酸化水素水を使用できるが、通常は市販の30〜35重量%の過酸化水素水を使用する。この使用量は、原料のインデン類に対し0.5〜5当量、好ましくは0.8〜3当量である。使用量が少なすぎると、原料のインデン類の転化が不十分となる。ただし、過酸化水素量を少なくしてその全量を転化させ、原料のインデン類を残して後で回収することもできるので、そのような方式をとる場合は、この限りではない。また逆に多すぎる場合は未反応の過酸化水素が残るだけで経済的ではない。【0014】過酸化水素の滴下温度および反応温度は40〜110℃の範囲に設定する。これよりも低い温度では、反応速度が遅くなり反応に長時間かかり好ましくない。また温度が高すぎると、過酸化物の分解が激しくなり、また爆発の危険性も増大する。過酸化水素の滴下時間は、特に限定はせず冷却能力に合わせて決定すればよいが、通常0.5〜24時間程度である。酸化反応は、滴下終了後直ぐに反応を終了させてもよいが、好ましくは滴下終了後、撹拌を0.5〜5時間継続して反応を完結させる。【0015】過酸による酸化反応終了後、酸化反応液に酸を直接加えて加熱処理を行うが、その際、必ずしも必要ではないが、酸化反応で多量の過酸化物が残存している時には、酸処理の前に、収率の低下防止、及び安全性向上のためにあらかじめ反応生成物に還元剤を加えて、過剰の過酸化物を分解した後、酸を加えて加熱処理を行うこともできる。還元剤としては例えば亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウム等を使用することができる。その添加量は、未反応の過酸化物に対して0.5〜5当量、好ましくは0.8〜1.5当量である。添加量が少なすぎて過酸化物が多く残っていると、酸処理で収率低下などの悪影響を及ぼす。逆に、多すぎると酸処理には影響しないが、使用する還元剤の種類によっては亜硫酸ガス等が発生し望ましくない。【0016】酸処理に使用する酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素酸等が挙げられるが、好ましくは安価な硫酸もしくは塩酸を使用する。酸の添加量は、原料のインデン類に対し0.1〜5当量程度で、添加して加熱することにより、目的とする2−インダノン類が得られる。この加熱反応は、通常70〜140℃で0.1〜10時間行う。【0017】反応終了後、有機層を分離し、これを精製して2−インダノン類が得られるが、2−インダノン類は熱安定性および保存安定性が悪いため、減圧下で滞留時間の短い連続蒸留や薄膜蒸留、または被蒸留物の温度が高くならないような減圧回分蒸留、水蒸気蒸留や再結晶等の手段を用いて精製する。また、有機層に重合防止剤等の添加物を加えて精製すると効果がある。【0018】【実施例】以下、実施例に基いて、本発明方法を具体的に説明する。[実施例1]撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積200ミリリットルのフラスコに、インデン(98.6%)23.2g(0.2モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水30gを仕込み、70℃で34.5重量%過酸化水素水23.7g(0.24モル)を0.4時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で2.6時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により測定したところ、過酸化水素換算で0.4重量%であった。【0019】次に反応液に30重量%重亜硫酸ソーダ水を過酸化物量と当量(3.9g)添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を40.6g(0.4モル)添加し、100℃で0.5時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層26.4gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、2−インダノン濃度は70.1重量%で、収率は71.1モル%であった。結果を表1に示す。【0020】[実施例2]実施例1で用いたと同じ200ミリリットルのフラスコを用い、インデン(98.6%)11.6g(0.1モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水45gを仕込み、70℃で34.5重量%過酸化水素水12.8g(0.13モル)を1時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により測定したところ、過酸化水素換算で0.6重量%であった。【0021】次に反応液に30重量%重亜硫酸ソーダ水を過酸化物量と当量(5.4g)添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を20.3g(0.2モル)添加し、100℃で0.5時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層13.5gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、2−インダノン濃度は77.6重量%で収率は80.5モル%であった。結果を表1に示す。【0022】[実施例3〜5]実施例2において、過酸酸化反応におけるインデン、ギ酸、水、過酸化水素水の添加量、反応温度及び塩酸処理工程における塩酸量を表1記載のとおりとした以外は実施例2と同様にして2−インダノンの合成を行った。結果を表1に示す。【0023】【表1】【0024】[実施例6〜8]過酸酸化反応は実施例2と同条件で行ったが、酸処理における塩酸量、反応温度および反応時間を表2の条件で、実施例2と同様にして2−インダノンの製造を行った。結果を表2に示す。【0025】【表2】【0026】[実施例9]過酸化水素酸化反応は実施例2と同条件で行ったが、酸処理は98重量%硫酸により行った。結果を表2に示す。【0027】[実施例10]撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積2リットルのフラスコに、インデン(98.6%)474g(4モル)、98重量%ギ酸282g(6モル)、水682.5gを仕込み、70℃で32重量%過酸化水素水552.5g(5.2モル)を2.4時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により測定したところ、過酸化水素換算で0.4重量%であった。【0028】次に反応液に30重量%重亜硫酸ソーダ水88.1g添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を202.6g(2モル)添加し、100℃で2.3時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層538.4gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、2−インダノン濃度は55.9重量%で、収率は56.6モル%であった。結果を表3に示す。【0029】[実施例11]インデン(98.6%)237g(2モル)、98重量%ギ酸282g(6モル)、水625.2gを仕込み、70℃で33.7重量%過酸化水素水262.2g(2.6モル)を1.2時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で0.8時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により測定したところ、過酸化水素換算で0.7重量%であった。【0030】次に反応液に30重量%重亜硫酸ソーダ水を96g添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を144.7g(1.4モル)添加し、100℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層265gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、2−インダノン濃度は66.5重量%で収率は66.3モル%であった。結果を表3に示す。【0031】[実施例12]インデン(98.6%)474g(4モル)、98重量%ギ酸282g(6モル)、水626.4gを仕込み、50℃で34.5重量%過酸化水素水433.5g(4.4モル)を4時間かけて滴下し、滴下終了後50℃で5時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により判定したところ、過酸化水素換算で0.8重量%であった。【0032】次に反応液に30重量%重亜硫酸ソーダ水を170.1g添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を202.6g(2モル)添加し、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層538.4gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、2−インダノン濃度は57重量%で収率は57.7モル%であった。結果を表3に示す。【0033】【表3】【0034】[実施例13]5−メチルインデン13.0g(0.1モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水45gを仕込み、70℃で34.5重量%過酸化水素水12.8g(0.13モル)を1時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により測定したところ、過酸化水素換算で0.5重量%であった。【0035】次に反応液に30重量%重亜硫酸ソーダ水を過酸化物量と当量(4.4g)添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を20.3g(0.2モル)添加し、100℃で0.5時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層15.5gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、5−メチル−2−インダノン濃度は70.7重量%で収率は75.1モル%であった。【0036】[比較例1]撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積100ミリリットルのフラスコに、インデン(98.6%)23.2g(0.2モル)、90重量%ギ酸30.7g(0.6モル)を仕込み、水を添加せず、70℃で32重量%過酸化水素水25.5g(0.24モル)を1.7時間かけて滴下し、滴下終了後70℃で1時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により測定したところ、過酸化水素換算で0.2重量%であった。【0037】次に反応液に30重量%重亜硫酸ソーダ水を過酸化物量と当量(1.6g)添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を10.1g(0.1モル)添加し、100℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層25.9gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、2−インダノン濃度は21.2重量%で、収率は20.8モル%であった。結果を表4に示す。【0038】【比較例2】撹拌機、温度計、還流冷却器を備えた内容積200ミリリットルのフラスコに、インデン(98.6%)23.2g(0.2モル)、90重量%ギ酸15.3g(0.3モル)、水30gを仕込み、30℃で34.5重量%過酸化水素水23.7g(0.24モル)を1時間かけて滴下し、滴下終了後30℃で24時間撹拌を継続した。反応終了後、過酸化物量をよう素滴定法により測定したところ、過酸化水素換算で1重量%であった。【0039】次に反応液に40重量%重亜硫酸ソーダ水を過酸化物量と当量(6.8g)添加し0.5時間撹拌した後、90℃まで昇温して36重量%塩酸を10.1g(0.1モル)添加し、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を60℃まで冷却して静置し、分離して有機層27.6gを回収した。この有機層を液体クロマトグラフにより分析したところ、2−インダノン濃度は49.6重量%で、収率は51.9モル%であった。結果を表4に示す。【0040】【表4】【0041】【発明の効果】本発明の製造方法によれば、酸化反応の際に過酸化水素を滴下する温度が従来の方法に比べて高いため、反応温度の制御が容易であり、特殊な冷却設備を必要としない。また、酸化反応終了後は、反応混合物に直接加えて加熱処理するため、濃縮や抽出および溶媒回収といった繁雑な操作は必要でなく、製造工程も従来法に比べ簡素化できる。しかも、有機酸の使用量も少なく、溶媒等も使用しないため、製造コストの面でも極めて有利である。さらに、有機過酸を反応系内で発生させながら酸化反応を行い、また酸化反応終了後は反応液を濃縮することがないため、過酸化物濃度が高くなることはなく、安全性の面でも向上され工業的に極めて有用な製造方法である。 インデンまたはそのベンゼン環置換体を、水を溶媒として、有機酸を加え、40〜110℃でこれらの混合物に過酸化水素を滴下して酸化した後、次いでこの反応混合物に酸を加えて加熱処理することを特徴とする2−インダノン類の製造方法。 反応開始時における水の量が有機酸に対し、重量で0.5〜10倍であることを特徴とする請求項1記載の2−インダノン類の製造方法。 過酸化水素による酸化反応終了後、還元剤を添加し、過剰の過酸化物を分解した後、酸を加えて加熱処理することを特徴とする請求項1記載の2−インダノン類の製造方法。