タイトル: | 特許公報(B2)_プラスミドDNAの単離方法 |
出願番号: | 1996221221 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 15/09,C07H 1/06,C07H 21/04 |
山本 晃 JP 3793287 特許公報(B2) 20060414 1996221221 19960822 プラスミドDNAの単離方法 ペンタックス株式会社 000000527 三浦 邦夫 100083286 山本 晃 20060705 C12N 15/09 20060101AFI20060615BHJP C07H 1/06 20060101ALI20060615BHJP C07H 21/04 20060101ALI20060615BHJP JPC12N15/00 AC07H1/06C07H21/04 B C12N15/00-90 BIOSIS/WPI(DIALOG) JSTPlus(JOIS) PubMed SwissProt/PIR/Geneseq GenBank/EMBL/DDBJ/Geneseq 特開平8−501321(JP,A) Johnson TR, Ilan J.,Large-scale isolation of plasmid DNA and purification of lambda phage DNA using hydroxylapatite chro,Anal Biochem. ,1983年,132(1),pp.20-25 4 1998057056 19980303 7 20030418 田村 明照 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子工学の分野において最も基本的な操作の一つである核酸からプラスミドDNAを単離する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来より、大腸菌プラスミドベクターに目的のDNAを組み込んで培養し、目的のDNAを大量に調製する方法は、遺伝子工学分野において最も頻繁に行われている操作の一つである。現在、大腸菌からのプラスミドベクターの回収は、溶菌操作の後ゲノムDNAと蛋白質等を取り除いてRNAとプラスミドDNAの混合物を得ることによって行われ、その方法としては、アルカリ−SDS法をはじめとしていくつかの方法が知られている。RNAとプラスミドDNAの混合物からさらに精製プラスミドDNAを得るためには、イオン交換樹脂を用いたカラム分離法、塩化セシウム密度勾配超遠心法などが一般的に用いられている。しかしながら、塩化セシウム密度勾配超遠心法では、大がかりな装置で高い回転数で長時間遠心処理を行うため、細心の注意を要し、煩雑であり、また、経済的でなかった。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、RNAとプラスミドDNAを含む溶液から特別な装置を必要とせずに簡単な操作で精製プラスミドDNAを得る方法を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】本発明は、特定濃度で特定pH範囲のリン酸塩緩衝溶液を作用させると、プラスミドDNAはリン酸カルシウム系化合物粒子に吸着されるのに対し、RNAは吸着されないことを見出し、この知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明によるプラスミドDNAの単離方法は、0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸塩緩衝液中にCa/P比が1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物粒子を懸濁させ、この懸濁液中に、溶菌操作の後に得られるRNAとプラスミドDNAを含む溶液を添加することにより該リン酸カルシウム系化合物粒子にプラスミドDNAを吸着させ、このプラスミドDNAを吸着したリン酸カルシウム系化合物粒子を分離し、0.2〜0.4M、pH6以下のリン酸塩緩衝液と接触させてプラスミドDNAを脱着させることを特徴とする。【0005】本発明はまた、プラスミドDNAを液体クロマトグラフィーによって単離する方法に関し、この方法は、Ca/P比が1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物粒子をクロマトグラフィー用カラムに充填し、0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸塩緩衝液で平衡化した後、溶菌操作の後に得られるRNAとプラスミドDNAを含む溶液及び0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸塩緩衝液を順次通水し、該リン酸カルシウム系化合物粒子にプラスミドDNAを吸着させた後、0.2〜0.4M、pH6以下のリン酸塩緩衝液を通水してプラスミドDNAを溶離することを特徴とする。【0006】【発明の実施の形態】本発明に用いるリン酸カルシウム系化合物は、Ca/P比が1.0〜2.0のものであれば、特に制限はなく、例えば、Ca10(PO4)6 (OH)2、Ca10(PO4)6 F2 、Ca10(PO4)6 Cl2、Ca3(PO4)2 、Ca2 P2 O7 及びCa4 O(PO4)2 のうちから選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。これらのうち安定性や吸着性能の点からCa/P比が1.5〜1.8のものが好ましく、Ca/P比が1.67のハイドロキシアパタイトを主成分とするものが最も好ましい。フッ素アパタイトを用いる場合、全リン酸カルシウム系化合物中のフッ素含有率が5重量%以下であるのが好ましい。フッ素含有率が5重量%を超えると、フッ素の溶出が起こり好ましくない。これらのリン酸カルシウム系化合物は、公知の方法で合成することができる。【0007】本発明においては、リン酸カルシウム系化合物粒子は、その平均粒径が1μm〜1mmの範囲にあり、かつBET法による比表面積が1〜300m2 /g、好ましくは5〜300m2 /gの範囲内にあるものが好ましい。平均粒径が1μmより小さいと、取扱いが困難であり、比表面積が1m2 /gより小さいと、低比表面積のため充分な吸着性能が得られない。一方、平均粒径が1mmより大きく、比表面積が300m2 /gより大きいと、それぞれ充填密度の低下、不均一な凝集体の発生などの理由から性能が劣化する。上記のようなリン酸カルシウム系化合物は、種々のカルシウム化合物及びリン酸化合物を出発原料として合成し、造粒乾燥した後分級することにより製造することができる。上記の条件に適合した粒子を得るには、多孔質顆粒とすることが必要となることもあるが、多孔質顆粒は、常法で製造することができる。【0008】本発明の方法においては、上記のようなリン酸カルシウム系化合物粒子に核酸成分中のプラスミドDNAだけを吸着させるために、0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸塩緩衝液中にCa/P比が1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物粒子を懸濁させ、この懸濁液中に、溶菌操作の後に得られるRNAとプラスミドDNAを含む溶液を添加する。溶菌操作は、アルカリ−SDS法など、任意の公知の方法で行うことができる。溶菌操作により大腸菌中のゲノムDNAや菌体の構成成分としての蛋白質や脂質を除去し、残りのプラスミドDNAとRNAを主として含む溶液を用いる。リン酸塩緩衝液の濃度が0.2M未満であると、試料中のRNAがプラスミドと共にリン酸カルシウム系化合物粒子に吸着される。また、0.4Mを超えると、リン酸塩が析出する恐れがある。。リン酸塩緩衝液が0.3〜0.4MでpH7〜8である場合に、リン酸カルシウム系化合物粒子はプラスミドDNAだけを吸着する能力が高く、好結果が得られる。【0009】また、リン酸塩緩衝液のpHが7〜9の範囲にあるとき、プラスミドDNAだけがリン酸カルシウム系化合物粒子に吸着され、pH7未満、特にpH6以下のリン酸塩緩衝液を作用させると、リン酸カルシウム系化合物粒子に吸着されていたプラスミドDNAが脱着される。これにより、プラスミドDNAを核酸成分から容易に単離することができる。したがって、上記のようなリン酸カルシウム系化合物粒子をクロマトグラフィー用カラムに充填しておき、液体クロマトグラフィーによってプラスミドDNAを核酸成分から容易に単離することもできる。【0010】【実施例】次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。【0011】実施例1〜3(1)試料溶液の調製アンピシリン耐性遺伝子を持った pBulescriptSK(+)ベクターをJM109コンピテントセルに形質転換し、50μg/mlのアンピシリンを含むLB−寒天培地上で37℃で一昼夜培養して単一コロニー株を得た。これを50μg/mlのアンピシリンを含むLB培養液中で37℃で一昼夜振盪培養して菌体を得た。この菌体を遠心分離したのち、アルカリ−SDS法により核酸濃度200μg/mlのプラスミド−RNA混合溶液(以下、試料溶液と称する。)を得た。(2)吸着工程平均粒径20μm、比表面積50m2 /gのハイドロキシアパタイト粒子20mgを表1に示すpH及び濃度のリン酸ナトリウム緩衝液70μl中に懸濁させ、試料溶液を15μl添加し、室温で5分間振盪した。その後、懸濁液の上清を回収し、0.8%アガロースゲル電気泳動を行い、臭化エチジウム染色により核酸成分の分析(未吸着物質の確認)を行い、結果を表1に示す。(3)脱着工程上記懸濁液から分離したハイドロキシアパタイト粒子に、濃度が400mMでpHが6のリン酸ナトリウム緩衝液を加え、室温で5分間振盪し、上清を回収し、0.8%アガロースゲル電気泳動を行い、臭化エチジウム染色により核酸成分の分析(ハイドロキシアパタイト粒子から脱着された物質の確認)を行い、結果を表1に示す。【0012】比較例1平均粒径20μm、比表面積50m2 /gのハイドロキシアパタイト粒子20mgをpH6の400mMリン酸ナトリウム緩衝液70μl中に懸濁させ、実施例1(1)で調製した試料溶液を15μl添加し、室温で5分間振盪した。その後、懸濁液の上清を回収し、0.8%アガロースゲル電気泳動を行い、臭化エチジウム染色により核酸成分の分析を行ったところ、プラスミドDNA及びRNAの両方が上清に含まれており、ハイドロキシアパタイト粒子に吸着されなかったことが分かった。結果を表1に示す。【0013】実施例4〜6吸着工程において、表1に示す濃度及びpHのリン酸ナトリウム緩衝液を用い、脱着工程ではpH6の300mMリン酸ナトリウム緩衝液を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、結果を表1に示す。【0014】比較例2pH6の300mMリン酸ナトリウム緩衝液を用いた以外は、比較例1と同様に操作したところ、表1に示したように、プラスミドDNA及びRNAもハイドロキシアパタイト粒子に吸着されなかった。【0015】実施例7〜9吸着工程において、表1に示す濃度及びpHのリン酸ナトリウム緩衝液を用い、脱着工程ではpH6の200mMリン酸ナトリウム緩衝液を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、結果を表1に示す。【0016】比較例3pH6の200mMリン酸ナトリウム緩衝液を用いた以外は、比較例1と同様に操作したところ、表1に示したように、プラスミドDNA及びRNAもハイドロキシアパタイト粒子に吸着されなかった。【0017】【表1】【0018】表1に示した結果から明らかなとおり、0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸ナトリウム緩衝液を用いて高純度で精製プラスミドDNAを得ることができたが、0.3〜0.4M、pH7〜8のリン酸ナトリウム緩衝液を用いた場合に、特に純度の高い精製プラスミドDNAが得られた。【0019】実施例10平均粒径20μm、比表面積50m2 /gのハイドロキシアパタイト粒子をクロマトグラフィー用カラムに充填し、300mM、pH8のリン酸ナトリウム緩衝液でカラム内を洗い、実施例1(1)で調製した試料溶液を入れ、300mM、pH8のリン酸ナトリウム緩衝液をカラム容積の3倍量通水した後、200mM、pH6のリン酸ナトリウム緩衝液をカラム容積の2倍量通水し、これを溶離液とした。溶離液を回収し、0.8%アガロースゲル電気泳動を行い、臭化エチジウム染色により核酸成分の分析を行ったところ、プラスミドDNAの存在を確認することができた。【0020】【発明の効果】本発明の方法によれば、溶菌操作によって得られる、RNAとプラスミドDNAを含む溶液から特別な装置を必要とせずに簡単な操作で精製プラスミドDNAを効率よく得ることができる。 0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸塩緩衝液中にCa/P比が1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物粒子を懸濁させ、この懸濁液中に、溶菌操作の後に得られるRNAとプラスミドDNAを含む溶液を添加することにより該リン酸カルシウム系化合物粒子にプラスミドDNAを吸着させ、このプラスミドDNAを吸着したリン酸カルシウム系化合物粒子を分離し、0.2〜0.4M、pH6以下のリン酸塩緩衝液と接触させてプラスミドDNAを脱着させることを特徴とするプラスミドDNAの単離方法。 リン酸カルシウム系化合物粒子が1μm〜1mmの平均粒径及び1〜300m2 /gのBET法による比表面積を有する粒子である請求項1記載のプラスミドDNAの単離方法。 Ca/P比が1.0〜2.0のリン酸カルシウム系化合物粒子をクロマトグラフィー用カラムに充填し、0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸塩緩衝液で平衡化した後、溶菌操作の後に得られるRNAとプラスミドDNAを含む溶液及び0.2〜0.4M、pH7〜9のリン酸塩緩衝液を順次通水し、該リン酸カルシウム系化合物粒子にプラスミドDNAを吸着させた後、0.2〜0.4M、pH6以下のリン酸塩緩衝液を通水してプラスミドDNAを溶離することを特徴とするプラスミドDNAの単離方法。 リン酸カルシウム系化合物粒子が1μm〜1mmの平均粒径及び1〜300m2 /gのBET法による比表面積を有する粒子である請求項3記載のプラスミドDNAの単離方法。