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タイトル:特許公報(B2)_新規プリンヌクレオシダーゼ
出願番号:1996216421
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09,C07H 21/04,C12C 7/04,C12C 11/00,C12N 1/15,C12N 1/19,C12N 1/21,C12N 5/10,C12N 9/24,C12R 1/01,C12R 1/19


特許情報キャッシュ

畠中 治代 芦刈 俊彦 小川 順 清水 昌 JP 3824353 特許公報(B2) 20060707 1996216421 19960816 新規プリンヌクレオシダーゼ サントリー株式会社 000001904 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 戸田 利雄 100088269 西山 雅也 100082898 畠中 治代 芦刈 俊彦 小川 順 清水 昌 20060920 C12N 15/09 20060101AFI20060831BHJP C07H 21/04 20060101ALI20060831BHJP C12C 7/04 20060101ALI20060831BHJP C12C 11/00 20060101ALI20060831BHJP C12N 1/15 20060101ALI20060831BHJP C12N 1/19 20060101ALI20060831BHJP C12N 1/21 20060101ALI20060831BHJP C12N 5/10 20060101ALI20060831BHJP C12N 9/24 20060101ALI20060831BHJP C12R 1/01 20060101ALN20060831BHJP C12R 1/19 20060101ALN20060831BHJP JPC12N15/00 AC07H21/04 BC12C7/04C12C11/04C12N1/15C12N1/19C12N1/21C12N5/00 AC12N9/24C12N15/00 AC12R1:01C12N1/21C12R1:19C12N9/24C12R1:19 C12N 15/00-15/90 C07H 21/00-21/04 C12C 7/00- 7/18 C12C 9/00- 9/08 C12C 11/00-11/06 C12N 1/00- 1/38 C12N 9/00- 9/99 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/Geneseq PubMed JSTPlus(JDream2) 特開平04−027379(JP,A) Biochemistry., Vol. 35, No. 19, p. 5963-5970,1996年 13 1998057063 19980303 30 20030807 森井 隆信 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、オクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)由来のプリンヌクレオシダーゼ及びその誘導体に関するものであり、更に、当該酵素又は当該誘導体をコードするDNA、当該DNAを有する発現ベクター、当該発現ベクターに形質転換された組換え宿主細胞、当該組換え宿主細胞を用いたプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質の製造方法、プリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質を産生し得るオクロバクトラム(Ochrobactrum)属に属する微生物を用いた当該蛋白質の製造方法、及び当該蛋白質を用いたビール又は麦汁の製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】近年、食生活の欧米化と過栄養化に伴い成人男子の血中尿酸値の上昇が認められ、無症候性高尿酸血症を経た痛風発症の増加が懸念される。食餌中の遊離プリン塩基、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチドおよび高分子核酸は消化器官中で消化・吸収され、肝臓中の尿酸サイクルで尿酸に分解される。高尿酸血症や痛風の原因としてはプリン体高含有食の摂取が原因とする疫学的知見が集約されており、摂取プリン体量を減らすことが最も重要な高尿酸血症あるいは痛風の予防手段である。【0003】プリン体高含有食としては、肉、白子、魚卵、肝などが挙げられているが、アルコール飲料、特にビールのプリン体含量はかなり高い。実際に金子(金子希代子、日本臨床、Vol.49, No.5, 1108-1115, 1991.)は各種アルコール飲料中のプリン体含有量を比較し、ビール、清酒、ワインなどの醸造酒がウイスキー、焼酎などの蒸留酒に比べ高いプリン体を含むこと、さらに醸造酒のなかでもとりわけビールのプリン体含量が高いことを報告している。ビールのプリン体含量は上記の肉、卵、肝などに比べれば1/100〜1/10であるが、摂取量が多いので高尿酸血症や痛風の罹患リスクは大きいと言わざるを得ない。【0004】 Tofler とWoodings ( O. B. Tofler and T. L. Woodings, Med. J. Aust., Vol.2, 479-481, 1981. )は、ビール摂取量別に調査対象集団をグループ分けして13年間の追跡調査を実施し、ビール摂取量と痛風発症頻度との間に正の相関があることを指摘した 。このように疫学研究上では現在、ビールはアルコール飲料の中で高尿酸血症や痛風の罹患リスクの最も高い酒類とみなされている。しかるに、ビールを含め、食品中のプリン体を減少させるような技術は開発されていない。【0005】【発明が解決しようとする課題】プリン化合物と呼ばれるものの中には遊離プリン塩基、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチド、および高分子核酸が含まれる。ビール製造工程中の各プリン化合物の消長を調べると麦汁中にはプリンヌクレオチドおよび高分子核酸は全く含まれず、遊離プリン塩基とプリンヌクレオシドが多く含まれている。発酵中に遊離プリン塩基は酵母によって吸収・代謝されてほぼなくなる。一方、プリンヌクレオシドは麦汁中のプリン化合物の大半を占めるが、発酵中も減少せず、発酵終了後の貯酒工程で温度を0℃に下げることによってさらに増加する。以上の分析結果より、麦汁中のプリンヌクレオシドをリボースと遊離プリン塩基に分解できれば、酵母により遊離プリン塩基が吸収・代謝されるため、ビール中のプリン化合物含量を減らすことが可能である。【0006】また、ビール以外の発酵食品についても利用する微生物がプリンヌクレオシドを資化する事はできないが、遊離プリン塩基であれば栄養源として利用できる場合には、その発酵原料中のプリンヌクレオシドをリボースと遊離プリン塩基に分解する事により同様にその発酵食品中のプリン化合物含量を減らすことが可能である。また、ビール醸造においては、麦汁中のアデニン含量が少ない麦汁では発酵遅延が起こるとの報告(Thompson, C.C., Leedham, P.A., and Lawrence, D.R. Am. Soc. Brew. Chem., Proc. 1973, p.137-141)があり、プリンヌクレオシドをリボースと遊離プリン塩基に分解することにより酵母が資化可能な核酸化合物を増やし、酵母の増殖を良くする効果も期待できる。この効果は他のプリンヌクレオシドを資化する事はできないが、遊離プリン塩基であれば栄養源として利用できる微生物を利用する発酵食品においても期待される。【0007】【課題を解決するための手段】プリンヌクレオシドをリボースと遊離プリン塩基に分解することのできる酵素として、プリンヌクレオシダーゼとプリンヌクレオシドフォスフォリラーゼの2つが考えられる。このうち、プリンヌクレオシドフォスフォリラーゼは分解反応と合成反応の両方、あるいは交換反応を触媒するため、反応液中のプリンヌクレオシドを完全にリボースと遊離プリン塩基に分解することは難しい。プリンヌクレオシダーゼは平衡が分解側に偏っているので、完全にリボースと遊離プリン塩基に分解することができるが、その基質特異性、至適pH、至適温度等は様々である。【0008】ビール製造工程中の麦芽から麦汁を製造する仕込み工程において、抽出されたプリンヌクレオシドを分解するためには、pH5.0 〜5.5 ,50〜80℃、の条件で、アデノシン、イノシン、グアノシンを基質とできるプリンヌクレオシダーゼが必要である。既知のヌクレオシダーゼの中で耐熱性があるものとして、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )のものやバシルス・セレウス(Bacillus cereus )のものや、クリシディア・ファシクラタ(Crithidia fasciculata )のものがあげられる。しかしながら、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )のものは至適pHが 4.0〜4.5 と若干低く、またキサントシンは分解できない。キサントシンはビールの場合ほとんど含まれていないが他の発酵食品に応用する場合にはキサントシンに対する活性も必要となる可能性がある。バシルス・セレウス(Bacillus cereus )のものはその至適pHや基質特異性など詳しく調べられていない。【0009】本発明者が細胞抽出液で調べたところによれば、グアノシンに対する活性は低いようである。クリシディア・ファシクラタ(Crithidia fasciculata )のものは至適pHが8.5 と高い。また、麦汁中にはさまざまな低分子物質や糖、タンパク質などが含まれており、その中で、既知のヌクレオシダーゼが実際に作用できるかどうかについては今まで調べられていない。そこで、pH 5.0〜5.5 ,50〜80℃、の条件で、アデノシン、イノシン、グアノシンを基質とできる微生物起源のプリンヌクレオシダーゼを自然界からスクリーニングした。その結果オクロバクトラム・アンスロピの細胞破砕液に高いプリンヌクレオシダーゼ活性を見いだした。【0010】従って本発明は、以下の酵素学的性質を有するプリンヌクレオシダーゼ:(1)基質特異性;プリン化合物に作用する;(2)至適pH;基質として、アデノシンについてはpH5.0 〜7.5 、グアノシンについてはpH4.0 〜5.5 、そしてイノシンについてはpH5.5 である;(3)pH安定性;50℃にて60分処理した場合及ではpH6.5 〜7.0 において90%以上の残存活性を示し、30℃にて30分処理した場合ではpH6.0 〜7.0 において80%以上の残存活性を示す;(4)至適温度;アデノシン又はイノシンを基質とした場合の至適温度は60℃であり、グアノシンを基質とした場合の至適温度は50℃である;(5)温度安定性;アデノシンを基質とした場合、pH6.0 、30分処理の場合は40℃まで、pH4.5 、60分処理した場合は30℃まで安定である;(6)分子量;172000(ゲル濾過クロマトグラフィーによる測定)、43000(サブユニット、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による測定);を提供する。【0011】本発明はまた、配列番号:1に示すアミノ酸番号1からアミノ酸番号341 までのアミノ酸配列を有するプリンヌクレオシダーゼ、あるいは該アミノ酸配列に対して1個〜複数個のアミノ酸の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換によって修飾されているアミノ酸配列を有するプリンヌクレオシダーゼ活性を維持している蛋白質を提供する。本発明はまた、配列番号:1に示すヌクレオチド配列又はその一部分と40℃〜55℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質を提供する。【0012】本発明はまた、前記の酵素又は蛋白質をコードする遺伝子、該遺伝子を有する発現ベクター、該発現ベクターにより形質転換された組換え宿主細胞を提供する。本発明はさらに、上記の組換え宿主細胞を培養し、当該培養物から、目的の酵素蛋白質を採取することを特徴とするプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質の製造方法を提供する。本発明はまた、プリンヌクレオシダーゼを生産することができるオクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobacterum anthropi) 属に属する微生物を培養し、該培養物から目的とする酵素蛋白質を採取することを特徴とするプリンヌクレオシダーゼの製造方法を提供する。【0013】本発明はまた、前記のプリンヌクレオシダーゼを麦汁に作用させ、麦汁中に含まれるプリンヌクレオシドをプリン塩基に分解することにより得られるヌクレオシド分解汁を用いることを特徴とするビールの製造方法を提供する。本発明はまた、前記プリンヌクレオシダーゼを麦汁に作用させ、麦汁中に含まれるプリンヌクレオシドをプリン塩基に分解することによりヌクレオシド分解麦汁を得ることを特徴とする麦汁の製造方法を提供する。【0014】【発明の実施の形態】本発明の酵素プリンヌクレオシダーゼの生産のため、又はそれをコードする遺伝子を得るための微生物としては、オクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum)属に族し、前記の性質を有するプリンヌクレオシダーゼを生産する能力を有するものであればよく、例えばオクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)種の微生物である。その代表的なものとして、本発明者らにより分離された新規微生物株であるオクトバクトラム・アンスロピが挙げられる。なお、本発明において新しく分離されたこの細菌株オクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)は、次の菌学的性質を有する。【0015】(a)形態的性質(イ)細胞の形態:桿菌(ロ)細胞の多形性の有無:無し(ハ)運動性の有無:有り(ニ)胞子の有無:無し(b)培養的性質(イ)肉汁寒天平板培養(30℃、2日間培養):コロニーの形状は正円で凸状隆起を呈する。表面は平滑で光沢がある。【0016】(c)生理学的性質(イ)グラム染色性:陰性(ロ)硝酸塩の還元:陰性(ハ)脱窒反応:陰性(ニ)インドールの生成:陰性(ホ)グルコースからの酸の生成:陰性(ヘ)ウレアーゼ:陽性(ト)チトクロームオキシダーゼ:陽性(チ)カタラーゼ:陽性(リ)キシロースからの酸の生成:陽性(ヌ)生育最適温度:28−37℃(ル)King's B培地での色素の生成:陰性(ヲ)O−Fテスト(糖:グルコースによる):酸化(ワ)糖の資化性:【0017】(1)グルコース:+(2)アラビノース:+(3)マンノース:+(4)マンニトール:−(5)Nアセチルグルコサミン:+(6)マルトース:+(7)グルコン酸:−(8)カプリン酸:+(9)アジピン酸:−(10)リンゴ酸:+(11)クエン酸:+(12)フェニル酢酸:−【0018】(d)その他の諸性質(イ)エスクリンの加水分解:陰性(ロ)βガラクトシダーゼ:陰性(ハ)ゼラチンの加水分解:陰性(ニ)アルギニン ジハイドロラーゼ:陰性(ホ)MacConkey 培地での生育:陽性(ヘ)ポリミキシン感受性:陰性(ト)アラニンの利用:陽性(チ)グリシンの利用:陰性【0019】生理生化学的性質はAPI20NE (BIO MERIEUX S.A.)を利用して調べた。さらにこれらの結果から、API20NE 用のAnalytical Profile Indexを用いて種名の検索を行ったところ、硝酸塩の還元とグリシンの利用の有無はHolmesらの記載(International Journal of Systematic Bacteriology, Vol.38, No.4, 1988, p.406-416)と異なっていたが、Index に従って、この株は、オクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi )と同定された。この菌株は、Ochrobactrum anthropi SAM2125 と命名され、FERM BP-5377として、工業技術院生命工学工業技術研究所に平成8年(1996年)1月26日にブダペスト条約に基き国際寄託されている。上記の微生物SAM2125 株により生産される酵素プリンヌクレオシダーゼの性質をまとめると次の通りである。【0020】(1)基質特異性; プリン化合物、例えば、アデノシン、グアノシン、イノシン、キサントシン、2'−アデノシンモノフォスフェイト、3'−アデノシンモノフォスフェイト、5'−アデノシンモノフォスフェイト、5'−グアノシンモノフォスフェイト、β−ニコチンアミドアデニンヂヌクレオチドを基質として作用し、ピリミジンには2'-CMPを除いて作用しない;(2)至適pH; アデノシン、グアノシン、イノシンを基質としたときの至適pHは、アデノシンについてはpH 5.0−7.5 、グアノシンについてはpH 4.0−5.5 、イノシンについてはpH5.5 である;【0021】(3)pH安定性; 50℃にて60分処理した場合ではpH 6.5−7.0 において90%以上の残存活性を示し、30℃にて30分処理した場合ではpH 6.0−7.0 において80%以上の残存活性を示す;(4)至適温度; pH5.5 において、アデノシン又はイノシンを基質とした場合の至適温度は60℃であり、グアノシンを基質とした場合の至適温度は50℃である;(5)温度安定性; アデノシンを基質とした場合、pH6.0 にて30分処理の場合は40℃まで、pH4.5 にて60分処理した場合は30℃まで安定である;【0022】(6)分子量; 172000(ゲル濾過クロマトグラフィー(TSK-G 3000SW) による測定)、43000(サブユニット、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による測定);(7)阻害剤の影響; 金属キレーター、亜セレン酸ナトリウム、5,5'−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸) 、シアン化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ナトリウムアザイドにより阻害される;(8)金属イオンの影響; 顕著に活性化する金属イオンは見いだせない。また、Zn2+,Cu2+,Mn2+,Hg2+,Ag+ によって阻害される;【0023】(9)部分的アミノ酸配列; 以下のアミノ酸配列を有する:Asp-Thr-Glu-Lys-Met-Ile-Ile-Asp-Thr-Asp-Phe-Ser-Thr-Ile-Gly (N末端)(配列番号:2)Glu-Phe-Asp-Lys (配列番号:3)Thr-Ala-Phe-His-Arg-Pro-Glu-(Pro)-Thr-(Xxx)-Lys (配列番号:4)Glu-Thr-Phe-Asp-Arg-Val-Ile-Ala-Gly-Asp-Gly-Pro-Val-Gln-Lys (配列番号:5)Xxx-Ile-Val-Tyr-Met-Ala-Gly-Ala-Val-Asp-Val-Lys (配列番号:6)Asp-Leu-Ile-Ala-Pro-Pro-Asp-Gly-Phe-Ala-Lys (配列番号:7)Glu-Asp-Ala-Val-Asp-Phe-Ile-Val-Asn-Thr-Val-Lys (配列番号:8)Val-Gly-Val-Tyr-Ala-Gly-Ala-Asn-Leu-Pro-Leu-Val-His-Asp-Pro-Arg-Ser-Phe-Glu-(Ser)-Xxx-Arg-Ala-Leu-Phe-Gly-Phe-Gly-Glu-(Ser)-Tyr-Lys (配列番号:9)Leu-Phe-Ala-Asp-Ser-Trp-Met-Ala-Glu-Thr-Phe-Ala-Lys (配列番号:10)【0024】本発明はまた、配列番号:1に示すアミノ酸番号1からアミノ酸番号341 までのアミノ酸配列を有するプリンヌクレオシダーゼ、あるいは該アミノ酸配列に対して1個〜複数個のアミノ酸の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換によって修飾されているアミノ酸配列を有し、プリンヌクレオシダーゼ活性を維持している蛋白質を提供する。上記の修飾の対象となる複数のアミノ酸とは、部位特定変量誘発、PCR 法等、遺伝子操作のための常法に従って修飾可能な程度の数のアミノ酸を意味する。【0025】本発明はまた、配列番号:1に示すヌクレオチド配列又はその一部分と40℃〜55℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、プリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質を提供する。この場合、プリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAとしては、オクロバクトラム属に属する他の菌株、さらには、他の属、例えばセラチア(Serratia) 属、フラボバクテリウム(Flabobacterium) 属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物、例えばセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、フラボバクテリウム・メニンゴセプティクム(Flabobacterium meningosepticum) 、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)等の微生物から得たcDNAライブラリーやジェノミックDNAライブラリー等を使用することができる。【0026】本発明においてはまず、前記の本発明の微生物を常法に従って培養し、細胞破砕液を得る。この細胞破砕液よりイオン交換カラムやゲルろ過カラムなどのクロマトグラフィーを行い、プリンヌクレオシダーゼを単一に精製し、分子量、サブユニット構造、N 末端アミノ酸配列、部分アミノ酸配列等を決定する。また、N末端アミノ酸配列、部分アミノ酸配列に対応する合成DNAプローブを用いてオクロバクトラム・アンスロピのプリンヌクレオシダーゼ遺伝子をスクリーニングし、その全塩基配列を決定する。【0027】これにより、プリンヌクレオシドが遊離プリン塩基に分解された麦汁を製造することが可能になり、オクロバクトラム・アンスロピのプリンヌクレオシダーゼを、例えば培養の容易な原核細胞例えば大腸菌や、真核細胞例えば酵母や動物細胞のような適当な宿主にて大量に生産することや、プリンヌクレオシダーゼを遺伝子工学的手法により改良することなどの手段を講じることが可能になった。即ち、本発明はオクロバクトラム属由来のプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質及びそれをコードする遺伝子を提供するものである。【0028】本願発明において、プリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質には、プリンヌクレオシダーゼ活性を有し、当該酵素蛋白に係るアミノ酸配列が修飾されているものも含む。ここで、修飾されているとは、配列番号:1のアミノ酸配列における1又は複数のアミノ酸残基が置換、付加及び/又は、欠失されていることを意味する。本願発明に係るプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質及びそれをコードする遺伝子を取得するには、オクロバクトラム属細菌を用いることができる。例えば、オクロバクトラム・アンスロピSAM 2125(FERM BP-5377)を用いることができる。【0029】その他、オクロバクトラム属由来のプリンヌクレオシダーゼと生物学的に同等の活性を有するプリンヌクレオシダーゼを生産する微生物も存在する可能性があり、そのような微生物から、本発明で明らかになった遺伝子配列を用いて、プリンヌクレオシダーゼ遺伝子を取得することもできる。上記出発微生物は適当な炭素源、窒素源及び徴量の金属元素を含む培地中で、培養することができる。得られた培養物を回収し、細胞抽出液または培養上清から目的の酵素を、沈殿法、吸着法、分子飾、電気泳動等の公知の方法を組み合わせて精製する。【0030】 例えば、DEAE sephacel カラムクロマトグラフィー、硫安沈澱、Phenyl-Sepharose CL-4B、Sephacryl S-200HR 、Mono Q HR 5/5 クロマトグラフィーなどを用いて、プリンヌクレオシダーゼを精製することができる。精製したプリンヌクレオシダーゼからは公知の方法により、N 末端アミノ酸配列、あるいは部分アミノ酸配列などを決定することができる。また、上記出発微生物からの染色体DNAの単離、ジェノミックライブラリーの作成、スクリーニングは公知の方法によって行うことが出来る。そのような方法は、例えばSambrookらのMolecular Cloning 第2 版(Cold Spring Harbor.1989)に記載されている。【0031】例示のために説明すれば、本発明のプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質をコードする遺伝子は、次のようにして得ることが出来る。オクロバクトラム・アンスロピの細胞より染色体DNAを抽出する。これをSau3AIなどの適当な制限酵素で部分分解してクローニング用ファージベクター、例えばEMBL3 に組み込み大腸菌等の宿主を形質転換する。得られたgenomic DNAライブラリーをプリンヌクレオシダーゼの部分アミノ酸配列に対応する合成DNAプローブを用いてスクリーニングすることより、目的のプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA断片を含む陽性クローンを得ることが出来る。【0032】そのようなDNAプローブは、オクロバクトラム属の培養物から目的のプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質を前述のようにして精製し、そのアミノ酸配列の少なくとも一部分を明らかにし、その配列から推定して合成することが出来る。また、ポリメラーゼ鎖反応(PCR;Polymerase chain reaction )の手法を用いることによりさらに長いブロープ断片を調製することも出来る。あるいは、染色体DNAを種々の制限酵素で完全分解し、アガロースゲル電気泳動を行った後、ナイロンメンブレンなどのメンブレンにトランスファーして上述のプローブにてサザンハイブリダイゼーションを行いハイブリダイズするDNA断片を特定する事ができる。【0033】 そしてアガロースゲルよりそのDNA断片を切り出して回収し、pUC等のクローニング用プラスミドに組み込み、大腸菌等の宿主を形質転換する。このようなクローンの中から、やはり上述のようにプリンヌクレオシダーゼの部分アミノ酸配列に対応する合成DNAプローブを用いてスクリーニングすることより目的のプリンヌクレオシダーゼをコードするDNA断片を含む陽性クローンを得ることが出来る。これらのクローンの挿入されたDNAを適当な制限酵素で消化して得られるDNA断片を、適当なベクター、例えばpUC18あるいはpUC19 にサブクローニングして、その挿入DNA断片の塩基配列をダイデオキジシークエンス法等によって決定することが出来る。【0034】ヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAが得られれば、当業者は当該DNAを有する発現ベクター、当該発現ベクターに形質転換された組換え宿主細胞を公知の技術を用いて容易に作製することができる。即ち、発現ベクターについては大腸菌を宿主とした場合、pUC 系、pBR 系、pBluescript II、pTrc99A 、pKK223-3、pPL-Lambda等が挙げられる。プロモーターについては当業者が適宜好適のものを選択し得る。例えば、lac promoter, tac promoter, T7 promoter, T3 promoter, trc promoter, λ PL promoter等が望ましい。【0035】また、GST Gene Fusion Vector (pGEX系など)を用いて、Glutathione S-transferase と融合タンパク質として発現させ、Glutathione Sepharose 4B等で精製後、適当な蛋白質分解酵素にてヌクレオシダーゼを遊離させることもできる。酵母を宿主とした場合は発現ベクターとしてpYE22m (特開平3-97615), YRp7 (Struhl, K.et al.Proc.Natl.Sci.USA 76.1035-1039, 1979;Stinchcomb, D.T.et al., Nature 282, 39-43, 1979), YIp5 (Struhl, K. et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 76, 1035-1039, 1979), YCp19 (Stinchcomb, D.T. et al., J. Mol. Biol. 158, 157-179, 1982)等を用いることができる。プロモーターとしてはGALl promoter, GAL7 promoter, GAL10 promoter, ADH2 promoter, GAP promoter 等を用いることができる。このほかに枯草菌、糸状菌や動物細胞を宿主として、当業者が適宜好適のものを選択し発現させることもできる。【0036】本願発明は、プリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質の製造方法にも関するが、上記組換え宿主細胞が得られれば、培養条件等は当業者が適宜選択し得るものであるので、培養すること自体に特に困難性は伴わない。適当な炭素源、窒素源、及び微量の金属元素等を含む培地中で当該形質転換細胞を培養し、目的の酵素蛋白又は誘導体蛋白が発現された後は、培養物から、即ち、培養上清又は培養後の組換え宿主細胞の細胞内から、公知の方法を用いて適宜採取すればよい。例えば、必要であれば細胞を超音波あるいはダイノミル等で破砕後、沈殿法、吸着法、分子篩、電気泳動等の公知の方法を組み合わせて精製する。【0037】更に、本発明はプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質の用途をも提供する。即ち、当該蛋白質を用いたビールの製造方法にも関する。本発明者らは、ビール中のプリンヌクレオシド、プリンヌクレオチド、プリン塩基及び高分子核酸量を測定し、これらプリン化合物の濃度を低減させたビールの製造法を提供することを目的とし、種々研究した結果、本発明を完成した。プリン塩基とは、プリン(9H−イミダゾ〔4,5−d〕ピリミジン)の種々の部分が置換された誘導体の総称であり、アデニン、グアニン、キサンチンがある。【0038】プリンヌクレオシドとは、プリン塩基と糖の還元基とがN−グリコシド結合した配糖体化合物の総称であり、アデノシン、グアノシン、イノシン等がある。プリンヌクレオチドとは、プリンヌクレオシドの糖部分がリン酸とエステルをつくっている化合物の総称であり、アデニル酸、グアニル酸、イノシン酸等がある。プリン化合物とは、上記プリン塩基、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチド等のプリン骨格を含有する化合物の総称である。本発明者らは、ビール中およびその製造工程中の各プリン化合物量を測定することにより以下の点を明らかにした。【0039】1)各種市販ビール中のプリン化合物は40〜100mg /lと変動するが、プリンヌクレオシドがプリン塩基の2〜25倍存在する。即ち、ビール中のプリン化合物の大半はプリンヌクレオシドとして存在する。2)発酵工程中に、麦汁中のプリン塩基は酵母によって吸収・代謝されてほぼなくなる。以上の分析結果を基に、本発明者らはこの問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プリン化合物含量を低下せしめるビールの製造法を発明するにいたった。【0040】つまり、通常の酵母は、プリンヌクレオシドを吸収することはできないが、プリン塩基を吸収・代謝することはできる。そこで、本発明においては、麦汁に酵素を使用させ、麦汁中に含まれるプリンヌクレオシドをプリン塩基に分解せしめ、ヌクレオシド分解麦汁を製造し、このヌクレオシド分解麦汁を用いることによりビール中のプリン化合物含量を低減することができる。なお、ヌクレオシド分解麦汁は、麦汁中のプリンヌクレオシドの一部または全てが酵素によりプリン塩基に分解されたものであり、このヌクレオシド分解麦汁中のプリンヌクレオシド含量は、添加する酵素の量、反応時間、反応温度等により調節することができるが、好ましくはプリンヌクレオシドの全てがプリン塩基に分解され、プリンヌクレオシドを含有していない麦汁がよい。【0041】この酵素は(1)麦汁製造過程、(2)麦汁製造後発酵工程前、又は(3)発酵過程において働かせることができる。麦汁製造過程で酵素を働かせるためには、麦汁製造(糖化)開始時又は麦汁製造の間の適当な時点で酵素を添加することができる。発酵工程前に酵素を働かすためには、麦汁製造過程の麦汁に酵素を添加し、発酵開始前に所定時間置けばよいが、この中で最も望ましいのは麦汁製造工程途中の煮沸以前の添加である。なぜならば、煮沸により酵素を失活させることが出来るので、ビール製品中に活性のある酵素を持ち込み品質になんらかの影響を与える可能性がないためである。また、発酵の過程で酵素を働かせるためには、発酵開始時又は発酵中に酵素を添加する。但し、酵素の作用によって生成したプリン塩基は酵母により代謝・消滅させる必要があるから、酵素は発酵開始時、又は発酵期間の前半に添加するのが好ましい。【0042】【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。実験の手順は、特に記載しない限り、SambrookらのMolecular Clonilg 第2 版(Cold Spring Harbor,1989 )によった。実施例1.オクロバクトラム・アンスロピのプリンヌクレオシダーゼの培養オクロバクトラム・アンスロピSAM2125 (FERM BP-5377)を下記培地5ml に1 白金耳植菌し、試験管にて28℃、16時間振蕩培養した。これを50mlの培地に移し、500ml のマイヤーにて28℃、25時間振蕩培養した。これをさらに2lの培地に移し、3lの培養器にて28℃、47時間通気撹拌培養した。この培養液から遠心分離にて29g の湿菌体を得た。培地組成トリプトン 0.5 %(w/v)イーストエキストラクト 0.5 %グルコース 0.1 %リン酸2 カリウム 0.1 %イノシン 3mMpH7.0【0043】実施例2.オクロバクトラム・アンスロピのプリンヌクレオシダーゼの精製20g の湿菌体を40mlの10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4 )(以下バッファーと記す)に懸濁した後、ダイノミルにて4 ℃、10分間破砕した。破砕液を濾過した後、遠心分離(10,000rpm, 60min)し、上清を無細胞抽出液として用いた。無細胞抽出液(250ml )を5Lのバッファーに対して、12時間透析したのち、バッファーにて平衡化したDEAE-Sephacel カラム(3 x 30 cm, 200 ml )に供した。吸着した蛋白質を0 から1.0MのNaClの塩濃度勾配にて溶出し、活性画分を回収した。【0044】この時プリンヌクレオシダーゼ活性は2つのピークに分かれた(図1)。第一活性画分として46番から69番まで、第二活性画分として85番から 101番までを集めた。第一活性画分と第二活性画分のアデノシン、イノシン、グアノシンを基質とした時の比活性を表1に示す。2つの活性画分は温度に対する挙動が異なり、異種酵素である可能性がある。【0045】【表1】【0046】DEAE-Sephacel カラム クロマトグラフィー (1st)の活性画分(320ml )を5Lのバッファーに対して、12時間透析したのち、バッファーにて平衡化したDEAE-Sephacel カラム(2 x 30 cm, 100 ml )に供した。吸着した蛋白質を0 から0.35M のNaClの塩濃度勾配にて溶出し、活性画分を回収した。DEAE-Sephacel カラムクロマトグラフィー(2nd) の活性画分(16ml)に硫酸アンモニウムを80%飽和になるように加え充分撹拌したのち、遠心分離(10,000rpm,20min )し上清をえた。【0047】上清に硫酸アンモニウムを100 %飽和になるように加え充分撹拌したのち、遠心分離(10,000rpm, 20min)沈殿を回収した。沈殿を9ml のバッファーに溶解し、活性画分とした。硫安分画活性画分に4.0MになるようにNaClを加え、4.0MNaClを含むバッファーにて平衡化したPhenyl-Spharose CL-4B カラム(1 x 7.5 cm, 6ml )に供した。吸着した蛋白質を4.0 から0MのNaClの塩濃度勾配にて溶出し、活性画分を回収した。Phenyl-Sepharose CL-4Bカラム クロマトグラフィー 活性画分(16.5ml)を分画分子量30,000の限外濾過膜にて4ml へと濃縮したのち、Sephacryl S-200 HRカラム(1.5 x 80 cm, 140ml)に供した。0.2 MNaClを含むバッファーにて蛋白質を溶出し、活性画分を回収した。【0048】 Sephacryl S-200 HRカラム クロマトグラフィー 活性画分(7.5ml )を5 lのバッファーに対して、12時間透析したのち、バッファーにて平衡化したMonoQ HR5/5 カラム(0.5 x 5 cm, 1 ml)に供した。吸着した蛋白質を0 から0.5MのNaClの塩濃度勾配にて溶出し、活性画分を回収した。得られた精製酵素はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて単一なバンドとして検出された。表2にアデノシンを基質として測定した精製表を示す。なお、精製表において無細胞抽出液よりもDEAE-Sephacel カラム クロマトグラフィー後の方が総活性が高くなっており、無細胞抽出液中にヌクレオシダーゼ活性を阻害する物質が含まれている可能性を示唆している。ゲル濾過クロマトグラフィー(TSK-G 3000SW) より分子量172,000 、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動よりサブユニット43,000のホモテトラマーであることが確認された。【0049】【表2】【0050】実施例3.プリンヌクレオシダーゼの活性測定方法反応液(200 μl )は、基質として0.5mM アデノシンもしくはイノシンまたは0.25mMグアノシン、50mM酢酸緩衝液pH4.5 、と適当量の酵素を含む。反応は酵素の添加により開始し、50℃にて5 分間反応させた。反応の停止は20μl の15%過塩素酸の添加により行い、遠心分離(35,000 rpm, 10 min)後、上清を薄層クロマトグラフィー(TLC )にて定性的に、高速液体クロマトグラフィーにて定量的に分析した。分析方法を以下に示す。【0051】(1)薄層クロマトグラフィープレート; Kieselgel 60F254 (Merk)展開液; n- ブタノール / イソプロパノール / H2O / NH4OH = 1 : 7 : 2 : 0.2(v/v/v/v) (基質がアデノシンとグアノシンの場合)、n-ブタノール /酢酸 / H2O = 5 : 1 : 1 (v/v/v) (基質がイノシンの場合)検出: UV 254 nm(2)高速液体クロマトグラフィーカラム : Cosmosil 5C18 (4.6 x 100 mm)溶出液 : 0.1 M 塩素酸ナトリウム4 水和物、0.1 %(v/v) リン酸流速 : 1.0 ml/min検出 : UV 260 nm【0052】実施例4.プリンヌクレオシダーゼの基質特異性薄層クロマトグラフィー(TLC )にてプリンヌクレオシダーゼの基質特異性を調べた。結果を表3に示す。本酵素は概してプリン化合物を基質とし、ピリミジンには2'-CMPを除いて作用しなかった。【0053】【表3】【0054】実施例5.プリンヌクレオシダーゼの至適pHアデノシン、グアノシン及びイノシンを基質としたときの至適pHを高速液体クロマトグラフィーにて調べた。反応液(200 μl )は、基質として0.5mM アデノシンもしくはイノシンまたは0.25mMグアノシン、50mM下記各緩衝液、及び適当量の酵素を含み、50℃にて30分反応させた。結果を図2,3及び4に示した。緩衝液pH1.0-4.0 : 酢酸ナトリウム/ 塩酸pH4.0-5.5 : 酢酸ナトリウム/ 酢酸pH5.5-7.5 : リン酸1 カリウム/ リン酸2 カリウムpH7.5-8.5 : トリス/ 塩酸至適pHはアデノシンについてはpH5.0-7.5 、グアノシンについてはpH4.0-5.5 、イノシンについてはpH5.5 であった。【0055】実施例6.プリンヌクレオシダーゼの至適温度アデノシン、グアノシン及びイノシンを基質としたときの至適温度を高速液体クロマトグラフィーにて調べた。反応液(200 μl )は、基質としての0.5mM アデノシンもしくはイノシンまたは0.25mMグアノシン、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5 )、または50mMリン酸カリウム緩衝液(pH5.5 )、及び適当量の酵素を含み、各温度で、20分反応させた。結果を図5及び6に示す。pH4.5 での至適温度はアデノシン、イノシン、グアノシンともに50℃であった。pH5.5 での至適温度はアデノシン、イノシンは60℃、グアノシンは50℃であった。【0056】実施例7.プリンヌクレオシダーゼのpH安定性酵素を各pHにて50℃で60分処理した場合と、30℃で30分処理した場合の残存活性をイノシンを基質として調べた。各pHの緩衝液は上記と同じものを用いた。その結果を図7及び8に示した。50℃、60分処理した場合はpH 6.5−7.0 で90%以上の残存活性があった。30℃、30分処理した場合はpH 6.0−7.0 で80%以上の残存活性があった。【0057】実施例8.プリンヌクレオシダーゼの温度安定性酵素を各温度にてpH6.0 にて30分処理した場合と、pH4.5 にて60分処理した場合の残存活性をアデノシンを基質として調べた。各pHの緩衝液は上記と同じものを用いた。その結果を図9及び10に示した。pH6.0 にて30分処理の場合は40℃まで、pH4.5 にて60分処理した場合は30℃まで安定であった。【0058】実施例9.プリンヌクレオシダーゼに対する阻害剤の影響活性測定液に各々阻害剤1mM を加えて活性を測定した。反応はpH4.5 、30℃、20分で行った。その結果を表4に示す。【表4】金属キレーター、亜セレン酸ナトリウム、5,5'- ジチオビス(2- ニトロ安息香酸) 、シアン化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ナトリウムアザイドなどにより阻害される。【0059】実施例10.プリンヌクレオシダーゼに対する金属イオンの影響活性測定液に各々金属イオンを1mM を加えて活性を測定した。反応はpH4.5 、30℃、40分で行った。その結果を表5に示す。【表5】顕著に活性化する金属イオンは見られなかった。Zn2+,Cu2+ Mn2+,Hg2+ Ag+ によって阻害される。【0060】実施例11.プリンヌクレオシダーゼのN 末端アミノ酸配列の決定プリンヌクレオシダーゼ蛋白質のアミノ末端からのアミノ酸配列を調べるため、プリンヌクレオシダーゼ蛋白質を還元カルボキシメチル化したのち逆相HPLCによる精製を行った。即ち、プリンヌクレオシダーゼ108 mg(2 .5 μmole)を3 .0ml の変性バッファー(6M Gdn‐HCl .10mM EDTA ‐2Na を含むTris‐HCl (pH8 .5 ))に溶解し、50℃で1 時間インキュベートした。143 μmole(10μl )の2 一メルカプトエタノールを加え、反応系を窒素置換したのち、37℃で1 時間インキュベートした。次いで、1Mヨード酢酸ナトリウム(変性バッファーに溶解、0 .207g/ml)150 μl を加え、Na0H溶液にてpHを8.0-8.5 に調整した。反応系を窒素置換し、遮光して37℃で1 時間インキュベートした。【0061】この間反応系のpHを8.0-8.5 に維持した。反応後、反応液をH20 に対して充分透析した。透析内液を以下の条件の逆相HPLCにかけ、蛋白質画分を分取し、濃縮後凍結乾燥した(逆相HPLC条件、カラム:Zolbax Pro10 PROTEIN PLUS20 φ;流速:4 .0ml /min ;移動相:A =0 .05%TFA in H20、B =CH3CN :A=8:2 (v /v );検出:A280)。蛋白質の回収率は16%であった。なお、SDS 一PAGEにより、分子量約4Kの蛋白を蛋白質画分に確認した。上記のようにして調製した5nmol の還元カルボキシメチル化プリンヌクレオシダーゼ蛋白質のN 末端のアミノ酸配列を気相プロテインシークエンサー(島津製作所製)により分析したところ、以下に示す配列が確認された。Asp-Thr-Glu-Lys-Met-Ile-Ile-Asp-Thr-Asp-Phe-Ser-Thr-Ile-Gly (配列番号:2)【0062】 実施例12.プリンヌクレオシダーゼの部分アミノ酸配列の決定 還元カルボキシメチル化プリンヌクレオシダーゼ48 nmole(2.0mg )を100 μl の0.01Mトリス/塩酸緩衝液pH9.0 に懸濁した。ここにリシルエンドペプチダーゼのl %溶液(0.1Mトリス/塩酸緩衝液pH9.0 中)2 μl を添加し、35℃で6 時問インキュベートした。液体中の白濁物は酵素添加後ただちに消え、溶液は透明になった。反応後、反応液を凍結。乾燥することにより反応を停止した。凍結乾燥後、残査を70%蟻酸に溶解しHPLCに供した。【0063】得られたリシルエンドペプチダーゼ消化物を逆相HPLCにかけ、ペブチドフラグメントを分離した(逆相HPLC条件、カラム:Bakerbold Widepore C4(350 オングストローム)6 φ×250 ;流速:l .0 ml/min ;圧力:80 Kg /cm2 ;温度:Ambient ;移動相:A =0 .05%TF Ain H20.B =CH3CN :A =8 :2 (v /v );検出:A220)。得られた各ピークを、逆相HPLCによりさらに精製した。精製ペプチドのアミノ酸配列を決定した。それらの中で、つぎの6 つのペプチドの配列を気相プロテインシークエンサー(島津製作所製)により、以下のように決定した。【0064】ペプチド1 :Glu-Phe-Asp-Lys (配列番号:3)ペプチド2 :Thr-Ala-Phe-His-Arg-Pro-Glu-(Pro)-Thr-Xxx-Lys (配列番号:4)ペプチド3 :Glu-Thr-Phe-Asp-Arg-Val-Ile-Ala-Gly-Asp-Gly-Pro-Val-Gln-Lys (配列番号:5)ペプチド4 :Xxx-Ile-Val-Tyr-Met-Ala-Gly-Ala-Val-Asp-Val-Lys (配列番号:6)ペプチド5 :Asp-Leu-Ile-Ala-Pro-Pro-Asp-Gly-Phe-Ala-Lys (配列番号:7)【0065】ペプチド6 :Glu-Asp-Ala-Val-Asp-Phe-Ile-Val-Asn-Thr-Val-Lys (配列番号:8)ペプチド7 :Val-Gly-Val-Tyr-Ala-Gly-Ala-Asn-Leu-Pro-Leu-Val-His-Asp-Pro-Arg-Ser-Phe-Glu-(Ser)-Xxx-Arg-Ala-Leu-Phe-Gly-Phe-Gly-Glu-(Ser)-Tyr-Lys (配列番号:9)ペプチド8 :Leu-Phe-Ala-Asp-Ser-Trp-Met-Ala-Glu-Thr-Phe-Ala-Lys (配列番号:10)*()内は不確かなもの* Xxxは解読不可のもの【0066】実施例13.オクロバクトラム・アンスロピのプリンヌクレオシダーゼ遺伝子のクローニング以下に示した実験は特別に記載のない限り、Sambrook らのMolecular Cloning 第2 版(Cold Spring Harbor,1989) に従って行った。(1)ジェノミックDNAの取得ジェノミックDNAの調製はMethods in Molecular Biology vol 2,(Humana Press Inc.1984)に準じて行った。即ち、オクロバクトラム アンスロピ菌体約10g を20mlのTES バッファー(10mM Tris-HCl (pH8.0 ); 10mM NaCl;1mM EDTA) に懸濁する。【0067】200mg のSDS 、1ml の2 %リゾチーム溶液、1ml の0.5M EDTA を加え、室温で溶菌するまでゆっくりと撹拌する。等量のフェノール/ クロロホルムを加え、ゆっくりと完全に混合する。20,000g 、15分室温で遠心し、上層を回収する。これを3 回以上繰り返し、上層と下層の間のタンパク質がほとんどなくなるまで行う。回収した水層に1/10量の3M 酢酸ナトリウム溶液を加えて混合し、さらに2 倍量のエタノールをゆっくりと加えて重層し、界面に現れたDNAをガラス棒に巻きとる。【0068】DNAを15mlのTES バッファーに溶解し、RNase を50μg/mlになるように加え、37℃で1 時間インキュベートする。さらにProteinase Kを50μg/mlになるように加え、37℃で1 時間インキュベートする。等量のフェノールを加え、上記と同様に抽出、エタノール沈殿を行う。回収したDNAは70%エタノール、続いてエタノールでリンスした後、真空デシケーターにて乾燥し、TEバッファー(10mM Tris-HCl (pH8.0 ); 0.1mM EDTA) に溶解し、DNAを得た。【0069】(2)ジェノミックDNAのサザンハイブリダイゼーション得られたジェノミックDNAをEcoRI,EcoRV,HindIII,PstI,HincII,XbaIなどの制限酵素で消化し0.8 %のアガロースゲルにて電気泳動を行った。アガロースゲルを0.25N 塩酸で20分、1.5M NaCl,0.5M NaOH で30分処理した後、アガロースゲルからDNAをナイロンメンブレン(アマシャム)にトランスファーした。トランスファーはReedとMann(Nucleic Acids Research ,vol3,7207-7221,1985) の方法に従った。メンブレンは風乾後、Jeffrey とFlavell (Cell l2 :439 −439,1977)の方法に従いDNA‐DNAハイブリダイゼーションを行った。【0070】即ち、DNAを固定したメンブレンフィルターを65℃のハイブリダイゼーション溶液(6 ×SSC 、5 ×デンハルト溶液、0 .5 %SDS 、10μg /mlサケ精子DNA)に30分間浸した。メンブレンを厚手のナイロン袋に移し、32P で標識したl06 〜l08cpm/μg のプローブDNAを加えてハイブリダイゼーション溶液中で48℃、16〜20時間反応させた。ハイブリダイゼーション溶液を取り除いた後、メンブランフィルターを洗浄用緩衝液〔2 ×SSC 、0 .l %SDS (W /V )〕中48℃で15分間の洗浄を4 回行なった。【0071】このメンブレンフィルターを乾燥した後、X 線フィルムと増感紙を用いて‐80℃でオートラジオグラフィーを行なった。なお、プローブDNAはN 末端アミノ酸配列に対応する塩基配列からなる合成DNA 5'-GAPyACIGAPuAAPuATGATIATIGAPyACIGAPyTT-3'(Pyはチミン又はシトシンを表わし、Puはアデニン又はグアニンを表わす)を用いた。その結果それぞれの制限酵素で消化したDNAについて異なる長さのポジティブバンドを検出した。また、この時強くハイブリダイズするバンドのほかに、弱くハイブリダイズするバンドも確認された。【0072】(3)合成DNAを用いたスクリーニングEcoRI 、EcoRV 、HindIII 、PstI、HincII、XbaIなどの制限酵素で消化したDNAを0.8 %のアガロースゲルにて電気泳動を行い、上記サザンハイブリダイゼーションで検出したバンドに対応する長さのDNA断片をアガロースゲルから回収し、抽出した。この断片をそれぞれ適当な制限酵素で消化したpUC19 とライゲーションして、大腸菌JM109 株を形質転換した。37℃で培養しコロニーの直径が1-2mm になったところでプレートを4 ℃に移した。プレートにナイロンメンブレン(アマシャム社製)をおいて注射針で数カ所穴を開けプレートとメンブレンの相互の位置を決めておく。その後メンブレンをはがし、ブラーク側を上にして変性溶液(l .5MNaCl.0 .5MNa0H)に浸した濾紙上において、15分間放置した。【0073】次に、中和溶液(1.5M NaCl ,0 .5M Tris ‐HCl (pH7 .2 )、1mM EDTA)を含む濾紙上におき15分間放置した。もう一度中和溶液を含む濾紙上におき15分間放置した後風乾した。コロニー側を上にしてUVトランスイルミネーター上に置き2 −5 分間照射してDNAを固定した。その後2 ×SSC でメンブレンを洗い細胞残渣を取り除いた。DNA‐DNAハイブリダイゼーションは、Jeffrey とFlavell (Cell l2 :439 −4391977 )の方法に従い上記と全く同様に行った。【0074】 ハイブリダイゼーション溶液を取り除いた後、メンブレンフィルターを洗浄用緩衝液〔2 ×SSC 、0 .l %SDS (W /V )〕中48℃で15分間の洗浄を4 回行なった。このメンブレンフィルターを乾燥した後、X 線フィルムと増感紙を用いて‐80℃でオートラジオグラフィーを行なった。その結果、EcoRI 断片を挿入したものとHindIII 断片を挿入したものから各々数個の陽性クローンが得られた。 これらの陽性クローン(E1,E2,E3:EcoRI 断片を挿入、H1,H2,H3:HindIII 断片を挿入)からプラスミドDNAを調製しEcoRI,HindIII,EcoRV などの制限酵素で消化して0.8 %のアガロースゲルにて電気泳動を行ったところ、E1,E2及びE3とH1,H2及びH3はそれぞれ同じ制限酵素パターンを示した。また、そのアガロースゲルからナイロンメンブレンにDNAをトランスファーしてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、E1,E2及びE3とH1,H2及びH3はそれぞれ同じ断片にハイブリダイズした。【0075】(4)シークエンス得られた陽性クローン(H1)から調製したプラスミドDNAをさまざまな制限酵素で切断し、アガロースゲル電気泳動を行い、挿入断片の制限酵素地図を作製した。さらにそのアガロースゲルより各DNA断片を回収、抽出してpUC19 にサブクローニングした。これをDNAシークエンサー(パーキンエルマーアプライド)を用いてシークエンスしたところ、N 末端アミノ酸配列と部分アミノ酸配列に相当する塩基配列が見つかった。【0076】(5)塩基配列とアミノ酸配列の比較ヌクレオシダーゼ染色体DNAの塩基配列中、ヌクレオシダーゼをコードしている領域は配列表において開始コドンATG から始まり、終止コドンTGA で終了する 363残基のアミノ酸配列からなる。実施例11で明らかにしたヌクレオシダーゼのアミノ末端からのアミノ酸配列は配列表中1番目のAsp から始まっており、これ以降15残基目のGly までの合計15残基のアミノ酸配列はDNAの配列から推定したアミノ酸配列と完全に一致した。【0077】また、その他の決定した部分アミノ酸配列(ペプチド1:317 残基目のGln から320 残基目のLys まで;ペプチド2:99残基目のThr から109 残基目のLys まで;ペプチド3:226 残基目のGlu から240 残基目のLys まで;ペプチド4:171 残基目のXxx から182 残基目のLys まで;ペプチド5:110 残基目のAsp から120 残基目のLys まで;ペプチド6:127 残基目のGlu から138 残基目のLys まで;ペプチド7:67残基目のVal から98残基目のLys まで;ペプチド8:241 残基目のLeu から253 残基目のLys まで)に対応する塩基配列もみとめられた。【0078】以上の結果から、クローン化された染色体DNAは、ヌクレオシダーゼ遺伝子であると決定した。塩基配列から明らかとなった開始コドンATG でコードされるMet から22残基目までのペプチド部分は成熟型ヌクレオシダーゼには存在しない配列であり、この部分はシグナルペプチドであるかあるいはpro 配列であるものと思われる。【0079】実施例14.他のプリンヌクレオシダーゼのクローニング取得した全長のプリンヌクレオシダーゼ遺伝子をプローブとして、オクロバクトラム・アンスロピのgenomic DNAのサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、実施例13(2)に記載したように弱くハイブリダイズする当該プリンヌクレオシダーゼ遺伝子以外の断片が確認された。この断片から実施例13(3)に示したのと同様な手法を用いれば、他のプリンヌクレオシダーゼをクローニングする事ができる。【0080】また、オクロバクトラム・アンスロピ以外の生物のプリンヌクレオシダーゼ遺伝子についても同様の手法で、クローニングすることが可能である。例えば、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、フラボバクテリウム・メニンゴセプティクム(Flabobacterium meningosepticum) 、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)及びアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)について、取得したプリンヌクレオシダーゼ遺伝子の一部分をプローブとしてハイブリダイゼーション(40℃)を行い、ハイブリダイズするバンドがあることを確認した。【0081】実施例15.ヌクレオシド分解麦汁の製造図11に麦汁製造工程における仕込釜および仕込槽の時間−温度曲線を示す。また、仕込釜及び仕込槽の原料配合の割合を表6に示す。この製造工程において、仕込槽に熱処理、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等で部分精製したオクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi) のヌクレオシダーゼ、約20,000u(基質:イノシン、反応温度:60℃)(1Uは1分間に1μmol のイノシンを分解する酵素量)を破砕麦芽と共に加えて麦汁製造を行った。酵素を添加して製造した麦汁と酵素を加えずに製造した麦汁中のプリン体分析結果を図12に示す。酵素を添加した麦汁からはプリンヌクレオシドが検出されず、プリン塩基が増加していた。以下この麦汁をヌクレオシド分解麦汁と呼ぶ。【0082】【表6】【0083】実施例16.ヌクレオシド分解麦汁を用いたビール醸造実施例15で製造したヌクレオシド分解麦汁と通常の麦汁を用いてビール醸造を行った。麦汁2リットルにビール酵母を湿重量で10.5g懸濁し、12℃で8日発酵した。その後4℃で5日間貯酒した。その発酵中のプリン体の消長を図13に示す。アデニンは発酵時間内に全て資化された。発酵液中のグアニンの量は時間と共に減少し、発酵終了時には検出されなくなる。【0084】差し引き約90μMに相当するグアニンが酵母により資化された。従って、麦汁中の計 260μMに相当するプリン体が発酵過程で消失する。酵素で処理せずに製造した麦汁を用いて醸造したビールのプリン体は計 500μMで、酵素処理した麦汁を用いて醸造したビールのプリン体は計 180μMであるので、計 320μMプリン体を低減したビールを醸造することが出来た。発酵は酵母増殖、エキスの消費共に通常の麦汁を用いたものとほぼ変わらず、味覚の面でも大きな差は見られなかった。【0085】【発明の効果】本発明によりオクロバクトラム アンスロピ由来のヌクレオシダーゼが精製され、その特徴が明らかにされた。本酵素はpH5.5 の酸性下、60℃においてアデノシン、イノシン、グアノシン、キサントシンなどのプリンヌクレオシドを分解することが可能であり、この酵素を用いて麦汁製造中にプリンヌクレオシドをプリン塩基に分解する事ができる。その結果、製品ビール中のプリン含有量を低減させることができる。またヌクレオシダーゼ遺伝子が取得され、その塩基配列及び、アミノ酸配列が明らかにされた。本発明により、オクロバクトラム アンスロピ属のヌクレオシダーゼを遺伝子工学的技術を利用して大量に発現させることや、ヌクレオシダーゼを蛋白工学的手法により改良することなどが可能になった。【0086】【配列表】【0087】【0088】【0089】【0090】【0091】【0092】【0093】【0094】【0095】【0096】【0097】【図面の簡単な説明】【図1】図1は、DEAE Sephacel カラムクロマトグラフィー(1st)の溶出パターンを示す図である。【図2】図2は、アデノシンを基質とした時の至適pHを示す図である。【図3】図3は、グアノシンを基質とした時の至適pHを示す図である。【図4】図4は、イノシンを基質とした時の至適pHを示す図である。【図5】図5は、pH4.5 における至適温度を示す図である。【図6】図6は、pH5.5 における至適温度を示す図である。【図7】図7は、50℃で60分熱処理したときのpH安定性を示す図である。【図8】図8は、30℃で30分熱処理したときのpH安定性を示す図である。【図9】図9は、pH6.0 で30分熱処理したときの温度安定性を示す図である。【図10】図10は、pH4.5 で60分熱処理したときの温度安定性を示す図である。【図11】図11は、麦汁製造工程における仕込釜及び仕込槽の時間温度曲線を示す図である。【図12】図12は、酵素を添加して製造した麦汁と酵素を加えずに製造した麦汁中のプリン体分析結果を示すグラフである。【図13】図13は、実施例16で製造したヌクレオシド分解麦汁と通常の麦汁を用いた発酵中のプリン体の消長を示す図である。【図14】図14は、実施例16で製造したヌクレオシド分解麦汁と通常の麦汁を用いた発酵中のプリン体の消長を示す図である。 オクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)から得られる以下の酵素学的性質を有するプリンヌクレオシダーゼ: (1)基質特異性;プリン化合物に作用する; (2)至適pH;基質として、アデノシンについてはpH5.0 〜7.5 、グアノシンについてはpH4.0 〜5.5 、そしてイノシンについてはpH5.5 である; (3)pH安定性;50℃、60分処理した場合ではpH6.5 〜7.0 において90%以上の残存活性を示し、30℃、30分処理した場合ではpH6.0 〜7.0 において80%以上の残存活性を示す; (4)至適温度;アデノシン又はイノシンを基質とした場合の至適温度は60℃であり、グアノシンを基質とした場合の至適温度は50℃である; (5)温度安定性;アデノシンを基質とした場合、pH6.0 、30分処理の場合は40℃まで、pH4.5 、60分処理した場合は30℃まで安定である; (6)分子量;172000(ゲル濾過クロマトグラフィーによる測定)、43000(サブユニット、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による測定)。 配列番号:1に示すアミノ酸番号1からアミノ酸番号341 までのアミノ酸配列からなるプリンヌクレオシダーゼ蛋白質、あるいは該アミノ酸配列に対して1個〜数個のアミノ酸の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換によって修飾されているアミノ酸配列からなり、プリンヌクレオシダーゼ活性を維持している蛋白質。 配列番号:1に示すヌクレオチド配列とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができるDNAによりコードされており、且つプリンヌクレオシダーゼ活性を有する蛋白質。 請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素、又は蛋白質をコードする遺伝子。 請求項4記載の遺伝子を有する発現ベクター。 請求項5記載の発現ベクターに形質転換された組換え宿主細胞。 プリンヌクレオシダーゼの製造方法において、請求項6記載の組換え宿主細胞を培養し、当該培養物から、目的の酵素蛋白を採取することを特徴とする当該製造方法。 請求項1に記載のプリンヌクレオシダーゼの製造方法において、当該酵素を産生し得るオクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi )種に属する微生物を培養し、該培養物から目的の酵素蛋白質を採取することを特徴とする製造方法。 請求項1〜3のいずれか1項記載の酵素又は蛋白質を麦汁に作用させ、麦汁中に含まれるプリンヌクレオシドをプリン塩基に分解することにより得られたヌクレオシド分解麦汁を用いることを特徴とするビールの製造方法。 発酵前又は発酵中に、麦汁に請求項1〜3のいずれか1項記載の酵素又は蛋白質を添加することを特徴とする請求項9記載の製造方法。 麦汁製造工程中に、麦汁に請求項1〜3のいずれか1項記載の酵素又は蛋白質を添加することを特徴とする請求項9記載の製造方法。 請求項1〜3のいずれか1項記載の酵素又は蛋白質を麦汁に作用させ、麦汁中に含まれるプリンヌクレオシドをプリン塩基に分解することによりヌクレオシド分解麦汁を得ることを特徴とする麦汁の製造方法。 麦汁製造工程中に、麦汁に請求項1〜3のいずれか1項記載の酵素又は蛋白質を添加することを特徴とする請求項12記載の製造方法。


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