生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_オレフィンをエポキシ化する方法
出願番号:1996215955
年次:2007
IPC分類:C07D 301/12,B01J 29/04,C07D 303/04,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

テ チャン デビット ダブリュー レイション ガイ エル クロッコ JP 3888711 特許公報(B2) 20061208 1996215955 19960730 オレフィンをエポキシ化する方法 アルコ ケミカル テクノロジー エルピー 592037848 秋沢 政光 100057922 佐竹 章 100067242 テ チャン デビット ダブリュー レイション ガイ エル クロッコ US 08/510221 19950802 20070307 C07D 301/12 20060101AFI20070215BHJP B01J 29/04 20060101ALI20070215BHJP C07D 303/04 20060101ALI20070215BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070215BHJP JPC07D301/12B01J29/04 XC07D303/04C07B61/00 300 C07D301/12 B01J 29/04 C07D303/04 C07B 61/00 WPI CAplus(STN) 26 1997118672 19970506 12 20030507 瀬下 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、オレフィンエポキシ化反応の効率を向上させうる方法に関する。より詳しくは、本発明は、過酸化水素の酸素への非選択分解をおさえるためにキレート化剤を使用するエポキシ化法に関する。【0002】【従来の技術】周知のように、過酸化水素によるオレフィン系化合物(olefinic compound)のエポキシ化には、チタン原子を含むある種の合成ゼオライトによって有効に触媒作用を与えることができる(たとえば、米国特許第4,833,260号明細書参照)。所望のエポキシドの選択率は一般に大きいが、米国特許第4,824,976号明細書が提案するところによれば、エポキシ化がプロトン性溶剤たとえば水またはアルコールで実施される場合に起こる非選択開環反応を、反応前または反応中に適当な酸中和剤によって触媒を処理することによっておさえることができる。中和剤は副生物生成を促進する傾向のある触媒表面上の酸根を中和する、とされている。同明細書によれば、中和は、強塩基たとえばNaOHおよびKOH、弱塩基たとえばNH4 OH、Na2 CO3 、NaHCO3 、Na2 HPO4 および類似のカリウムおよびリチウム塩(たとえば、K2 CO3 、Li2 CO3 、KHCO3 、LiHCO3 、およびK2 HPO4 )、1〜10個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩、および1〜10個の炭素原子を有するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属アルコラート、から選択される水溶性の塩基性物質によって達成することができる。【0003】本件と同じ出願人による米国特許出願第08/396,319号明細書に開示されているところによれば、低濃度の非塩基性塩(すなわち、中性または酸性塩)の存在下でチタンシリカライトを触媒とするエポキシ化を行うことにより、生成される開環副生物の量が減少し、エポキシド選択率を著しく向上させることができる、という予想外の結果が得られる。【0004】ここでの発見によれば、適当な発生源のアンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属陽イオン(塩基性、中性、または酸性のどれであっても)の存在下でエポキシ化を行うことにより、エポキシド開環を効率的におさえることができるが、過酸化水素の酸素および水への非選択分解がチタンシリカライト触媒の老化につれて徐々に増大する傾向が見られる。たとえば、陽イオン発生源たとえば水酸化アンモニウムの存在下でチタンシリカライトを用いてプロピレンを固定層連続装置でエポキシ化する場合、所望の酸化プロピレン生成物の選択率は時間経過につれて減少し、酸素の選択率は約8〜15%まで増大する。このエポキシド選択率の低下の原因となる機構は十分にはわかっていない。【0005】【発明が解決しようとする課題】しかし、非常に望ましいことは、触媒性能におよぼす老化の影響を小さくする手段を見出して、エポキシド開環と過酸化水素分解とを同時におさえて、それぞれの投入触媒の寿命全体にわたって得られるエポキシドの収率が最大限に高められるようにすることである。【0006】【課題を解決するための手段】ここでの予想外の発見によれば、陽イオン発生源とともにオレフィンエポキシ化反応で使用した場合、チタン含有モレキュラーシーブ触媒の性能が徐々に低下する傾向(過酸化水素の酸素への非選択分解によって評価)は、キレート化剤、たとえば、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスホリル、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される二つ以上の基を有する化合物、の存在下で、エポキシ化を実施することにより、改善することができる。本発明の一つの実施態様において、キレート化剤は陰イオン(脱陽子)状態で使用され、生成される塩がアンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属陽イオンの発生源として作用する。【0007】本発明は、オレフィンをエポキシ化する方法であって、反応帯域において、液相で、前記オレフィンを過酸化水素と反応させることからなる方法を提供する。この反応は、チタン含有モレキュラーシーブ触媒、陰イオン種と、アンモニウム陽イオン、アルカリ金属陽イオン、およびアルカリ土類金属陽イオンからなるグループから選択される陽イオンとからなる塩、ならびに前記触媒の老化による過酸化水素の分子酸素への非選択分解を減少させるのに有効な量のキレート化剤、の存在下で、実施される。【0008】【発明の実施の形態】本発明で酸化剤として使用される過酸化水素(H2 O2 )は、任意の適当な発生源、たとえば空気または他の分子酸素供給源による第2アルコールの自動酸化、から得られる。適当な第2アルコールの例としては、脂肪族アルコールたとえばイソプロパノールおよびシクロヘキサノール、ならびに芳香族アルコールたとえばα−メチルベンジルアルコールおよびアントラヒドロキノン(アルキル置換アントラヒドロキノンを含む)がある。生成される反応粗生成物は、本発明のエポキシ化法でそのまま使用することができ、あるいは必要であれば、この使用に先立って、精製、分留、濃縮、イオン交換その他の方法で処理することができる。たとえば、自動酸化同時生成物として生じるケトンは、蒸留(ケトンが割合に揮発性である場合)または水による抽出(ケトンが水に事実上不混和または不溶である場合)によって、過酸化水素から全部または一部を分離することができる。あるいは、たとえば、過酸化水素を、第2アルコールの自動酸化とオレフィンエポキシ化とを同時に達成するのに有効な条件下で、反応帯域において、酸素、第2アルコール、オレフィン、チタン含有モレキュラーシーブ触媒、キレート化剤、および塩を混合することにより、現場で発生させることができる。一般に、反応帯域の液相の初期過酸化水素濃度を約0.5〜20wt%とするのが望ましい。【0009】本発明の方法でエポキシ化するエチレン系不飽和基質は、好ましくは、2〜10個の炭素原子と少なくとも一つのエチレン系不飽和官能基(すなわち、炭素−炭素2重結合)とを有する有機化合物であり、環状、枝分かれ、または直鎖脂肪族オレフィンとすることができる。このオレフィンには二つ以上の炭素−炭素2重結合が存在することができ、たとえばジエン、トリエンその他の多不飽和基質が使用できる。【0010】本発明の方法で使用するのに適当なオレフィンの代表例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、ペンテン、イソプレン、1−ヘキセン、3−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、ジイソブチレン、1−ノネンがあり、またプロピレン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、およびビニルシクロヘキセンのトリマーとテトラマーがある。【0011】オレフィンの混合物をエポキシ化することができ、生成されるエポキシド混合物は混合状態で使用することができ、あるいはそれぞれの成分エポキシドに分離することができる。【0012】本発明の方法は、一般構造、化1、【0013】【化1】【0014】を有するC2 〜C10オレフィンのエポキシ化に特に有効である。ここで、R1 、R2 、R3 、およびR4 は同じかまたは異なるもので、水素およびC1 〜C8 アルキルからなるグループから選択される(オレフィン中の炭素の総数が10を越えないように選択)。【0015】本発明の方法は、脂肪族ヒドロカルビル成分以外の官能基を含むオレフィンのエポキシ化に使用するのも適当である。たとえば、炭素−炭素2重結合を、−CO2 H、−CO2 R、−CN、または−OR(Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはアルアルキル置換基)のような基で置換することができる。前記構造式中の基R1 、R2 、R3 、およびR4 は、アリール、アルアルキル、ハロ、ニトロ、スルホン酸、シアノ、カルボニル(たとえば、ケトン、アルデヒド)、ヒドロキシル、カルボキシル(たとえば、エステル、酸)またはエーテル基を含むことができる。これらの種類のオレフィンの例としては、アリルアルコール、スチレン、塩化アリル、アリルメチルエーテル、アリルフェニルエーテル、メチルメタクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、スチルベン、その他がある。【0016】オレフィンの量に対する過酸化水素の量は臨界的でないが、オレフィンが一つのエチレン系不飽和基を含む場合、オレフィン:過酸化水素のモル比を約100:1〜1:10とするのがもっとも適当である。オレフィン中のエチレン系不飽和基:過酸化水素のモル比は、より好ましくは1:2〜10:1の範囲にある。【0017】本発明のエポキシ化工程で触媒として有効なチタン含有モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの格子骨組のシリコン原子の一部がチタンで置き換えられた種類のゼオライト物質からなる。そのような物質は当業者に周知である。【0018】特に好ましい触媒としては、普通、“TS−1”(ZSM−5アルミノケイ酸塩ゼオライトに似たMFI形態(topology)を有する)、“TS−2”(ZSM−11アルミノケイ酸塩ゼオライトに似たMEL形態を有する)、および“TS−3”(ベルギー特許第1,001,038号明細書に記載)と呼ばれる種類のモレキュラーシーブがある。やはり使用に適するものは、ゼオライトベータに同形の骨組構造を有するチタン含有モレキュラーシーブである。好ましくは、チタン触媒は格子骨組にチタンとシリカを除く非酸素元素を含まないが、少量のホウ素、鉄、アルミニウムその他が存在しても良い。【0019】本発明の方法で使用するのに適したチタン含有モレキュラーシーブ触媒は、一般に、実験式 xTiO2 :(1−x)SiO2 (x=0.0001〜0.500)に対応する組成を有する。より好ましくは、x=0.01〜0.125である。このモレキュラーシーブの格子骨組のSi:Tiのモル比は、9.5:1〜99:1とするのが有効である(より好ましくは、9.5:1〜60:1)。また、これに比べてチタンに含有量の大きな触媒の使用も望ましいと考えられる。【0020】触媒使用量は臨界的でないが、所望のエポキシ化反応を実用的な程度の短い時間で実質的に完了させるのに十分なものとすべきである。触媒の最適量は、いくつかの要因、たとえば、反応温度、オレフィンの反応性と濃度、過酸化水素濃度、有機溶剤の種類と濃度、ならびに触媒活性、および使用反応器または反応装置のタイプ(すなわち、回分か連続か)、に依存する。たとえば、回分タイプまたはスラリー反応の場合、触媒量は一般にオレフィン1モルあたり0.001〜10gとする。固定層または充填層装置の場合、触媒の最適量は固定層を通過する反応物流量によって変わり、一般に、1時間につき、触媒1kgあたり約0.05〜2.0kgの過酸化水素とする。液相反応混合物中のチタンの濃度は一般に約10〜10,000ppmとする。【0021】この触媒は粉末、ペレット、微小球、押出し、モノリシック、または他の任意の適当な物理的形態で利用することができる。チタン含有モレキュラーシーブとともにバインダー(コゲル(co−gel))または担体を使用するのも有効でありうる。担持または結合された触媒は、一般にゼオライト触媒に対して有効であることが当業者に公知の方法によって製造することができる。好ましくは、バインダーまたは担体は事実上非酸性で、また過酸化水素の非選択分解またはエポキシドの開環に触媒作用をおよぼさないものである。【0022】バインダーおよび担体の例としては、チタニア、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−トリア、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−ベリリア、およびシリカと他の耐火性酸化物との3元組成物がある。やはり有効なものはクレー、たとえば、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、およびアナンクサイト(ananxite)である。モレキュラーシーブとバインダーまたは担体との比は、99:1〜1:99とすることができるが、5:95〜80:20とするのが好ましい。【0023】本発明の方法の臨界的特徴は、塩の存在である。この方法の改良が実現される機構の詳細は不明であるが、塩が好ましい形でチタン含有モレキュラーシーブ触媒と相互作用して望ましくない副反応たとえばエポキシド開環および溶剤酸化をおさえるのであると考えられる。一つの実施態様においては、触媒が塩によって前処理(すなわち、エポキシ化に先立って処理)される。一つの適当な前処理法は、塩に対して適当な溶剤たとえば水および/またはアルコールを用いた塩の希薄溶液により触媒のスラリーを生成させ、このスラリーを、20〜100℃の温度で、十分な塩がモレキュラーシーブの細孔にとり込まれるのに有効な時間にわたって攪拌すること、を含む。そのあと、適当な手段、たとえばろ過、遠心分離、またはデカンテーションによって、触媒をスラリーから分離し、必要であれば洗浄してから、随意に、残留溶媒を乾燥除去する。もう一つの前処理法においては、合成されたままの触媒に塩の溶液を含浸させてから、か焼する。しかし、好ましい実施態様においては、エポキシ化時に触媒とは別に塩を反応帯域に導入する。たとえば、塩を過酸化水素供給原料に溶解させることができて、好都合である(この過酸化水素供給原料は一般に溶剤たとえば水、アルコール、および/またはケトンをも含む)。連続法の場合、反応帯域に流入する供給原料中の塩の濃度は、達成されるエポキシ化の結果を最適化するために、望みに応じてあるいは必要に応じて定期的に調節することができる。たとえば、一定塩濃度の使用、間欠的な塩の投入、または時間経過とともに塩濃度を増大もしくは減少させること、が有効でありうる。【0024】塩は、酸のプロトンが金属陽イオンまたは等価物(たとえば、NH4 + )で置換されたときに形成される化合物である。本発明の目的に適した塩としては、一つの陰イオンと一つの陽イオンとからなる物質で、好ましくは陽イオンがアンモニウム(NH4 )、アルカリ金属(特にLi、Na、K)、およびアルカリ土類金属から選択されるものがある。この塩は、酸性、中性、または塩基性とすることができる。好ましい陰イオンとしては、ハロゲン化物(特に、ClおよびBr)、硝酸塩(NO3 )、および硫酸塩(SO4 )があるが、これらのみには限定されない。その他の陰イオンたとえばカルボン酸塩(たとえば、ギ酸塩、酢酸塩)、炭酸塩(たとえば、炭酸塩、重炭酸塩)、水酸化物、アルコキシド、その他も使用することができる。使用に適した非塩基性塩の代表例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ならびに酢酸アンモニウム(およびカルボン酸特にC1 〜C10カルボン酸のその他の非塩基性塩)、リン酸2水素アンモニウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、およびピロリン酸2水素2ナトリウムがある。塩基性塩の代表例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、第2リン酸ナトリウム、第3リン酸ナトリウム、ならびに類似のカリウムおよびリチウム塩があるが、これらのみには限定されない。塩の混合物または併用物も有効に使用することができる。好ましくは、この塩は液相のエポキシ化反応混合物(一般に、過酸化水素、溶剤、およびオレフィンからなる)に可溶なものである。【0025】本発明の方法では、単一の金属原子と配位結合によって化合してキレート化錯体(キレート)と呼ばれる環状構造を形成しうる複数のドナー原子(たとえば、O、N、S)を含むキレート化剤も必要である。このキレート化剤は有機性または無機性のものとすることができ、好ましくは1分子あたり少なくとも二つの酸素含有官能基を有する。これらの官能基は、好ましくは、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスホリル、またはこれらの組み合わせからなるグループから選択する。したがって、このキレート化剤は2座配位子、3座配位子、4座配位子、またはそれ以上の多座配位子となりうる。官能基は陽子付加または脱陽子状態で存在することができる。たとえば“カルボキシル”は、化学式化2および化3の基を含み、【0026】【化2】【0027】【化3】【0028】“ヒドロキシル”は−OHおよび、化学式化4の基を含み、【0029】【化4】【0030】“ホスホリル”は、化学式化5、化6、および化7の基を含む。【0031】【化5】【0032】【化6】【0033】【化7】【0034】好ましくは、少なくとも一つのカルボキシル基またはホスホリル基が存在する。これらの官能基は、単一の金属イオンに配位結合しうる原子が3〜7個の原子によって分離されるようにキレート化剤中に配置されるのが有効であり、これらの介在原子はリン、炭素、その他とすることができる。金属イオンと配位結合しうる窒素含有官能基たとえば第3アミン基もキレート化剤中に存在することができる。【0035】多官能価キレート化剤の特定例としては、ポリホスホン酸(たとえば、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸)、ポリリン酸(Nn+z Pn O3n+1、ここでn>1で、たとえば、ピロリン酸、3リン酸、およびメタリン酸、ならびに有機リン酸(organophosphoric acid)たとえばフィチン酸(phytic acid))、ヒドロキシカルボン酸(たとえば、リンゴ酸、グルコン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、酒石酸、クエン酸)、アミノカルボン酸(たとえば、エチレンジアミン4酢酸、エチレンジアミン−ジ−o−ヒドロキシフェニル酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン4酢酸、ニトリロ3酢酸)、ポリアミン(たとえば、トリエチレンテトラアミン、トリアミノトリエチルアミン、エチレンジアミン)、ポリカルボン酸(たとえば、ジグリコール酸)、アルノアルコール(たとえば、トリエタノールアミン)、ならびにこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム塩がある。【0036】キレート化剤を脱陽子状態で使用する場合、このキレート化剤を、同時に塩の陰イオン種としても作用させることができて便利である。すなわち、塩を、前述のキレート化剤のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム塩とすることができる。そのような種は、直接反応帯域に導入することができ、あるいは、陽子付加状態のキレート化剤と塩基たとえばアルカリ金属またはアンモニウムの水酸化物との併用によって現場で生成させることができる。そのような実施態様におけるキレート化剤は完全または部分的に脱陽子化することができる。【0037】過酸化水素の転換率の望ましくない低下を防ぐために、反応帯域内の液相の塩濃度は一般に0.02M以下とすべきである。0.00001Mよりも小さい場合には、一般に、エポキシド選択率の向上はほとんどあるいはまったく観察されない。塩の最適濃度は、いくつかの要因、たとえば、塩の化学的特性、温度、溶剤、空間速度、その他によって変化するが、型通りの実験によって容易に決定することができる。一般に、液相のエポキシ化反応混合物中の塩の濃度は約1〜1000ppmとするのが望ましい。【0038】反応帯域の液相中に存在するキレート化剤の量は、チタン含有モレキュラーシーブ触媒の老化による過酸化水素の分子酸素への非選択分解を、キレート化剤が存在しない場合に生じると考えられるO2 生成のレベルに比して、有効に低下させるように選択する。キレート化剤の最適量は各種パラメータたとえば使用のために選択した塩と薬剤の化学的特性、およびエポキシ化条件によって変わるが、型通りの実験によって容易に決定することができる。一般に、キレート化剤は、液相の反応混合物中の濃度約1〜1000ppmで使用する。【0039】エポキシ化反応温度は好ましくは0〜100℃(より好ましくは20〜80℃)である。この温度範囲は、妥当な短さの時間内に、過酸化水素の最小限の非選択分解で、オレフィンのエポキシドへの選択分解を達成するのに十分なものであることがわかっている。一般に、できるだけ大きな過酸化水素転換率好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%、もっとも好ましくは少なくとも99%が、妥当な選択率に対応して達成されるように、この反応を実施するのが有利である。最適反応温度は、触媒濃度と活性、基質反応性、反応物濃度、および使用溶剤の種類によって特に大きな影響を受ける。これらの変数によるが、一般に反応時間または滞留時間は約10分〜48時間とするのが適当である。好ましくは、この反応は大気圧または高圧(一般に、1〜100気圧)で実施する。一般に、反応成分を液体混合物として保つのが望ましい。たとえば、大気圧でエポキシ化温度よりも低い沸点を有するオレフィンたとえばプロピレンを使用する場合、液相中に所望濃度のプロピレンを保つのに十分な過圧を使用するのが好ましい。【0040】本発明のエポキシ化法は、任意の適当なタイプの反応器または反応装置たとえば固定層、移動層、攪拌スラリー、またはCSTR反応器を用いて、回分、連続、または半連続法で実施することができる。過酸化水素を用いる金属触媒エポキシ化を実施する公知の方法も一般に使用に適している。たとえば、反応物はすべて一度に混合するかまたは順次に混合することができる。たとえば、過酸化水素および/またはオレフィンは反応帯域に増分的に添加することができる。【0041】エポキシ化は、反応物を溶解または分散させ、かつ温度制御を容易にするのに適当な溶剤の存在下で実施することができる。適当な溶剤の例としては、水、アルコール(特に、C1 〜C10脂肪族アルコールたとえばメタノールおよびイソプロパノール)、ケトン(特に、C3 〜C10ケトンたとえばアセトン)、およびこれらの溶剤の混合物があるが、これらのみには限定されない。【0042】エポキシ化が所望の転換度となるまで進行したら、エポキシド生成物を、任意の適当な方法たとえば分留、抽出蒸留、液−液抽出、晶出、その他を用いて、反応混合物から分離・採取することができる。任意の適当な方法たとえばろ過(たとえば、スラリー反応器を使用する場合)によるエポキシ化反応混合物からの分離後、採取されたチタン含有モレキュラーシーブ触媒は、後続のエポキシ化で経済的に再使用することができる。触媒が固定層の形で使用される場合、エポキシ化帯域から流れとしてとり出されるエポキシ化生成物は事実上触媒を含まず、触媒はエポキシ化帯域内に残留する。また、すべての未反応オレフィンまたは過酸化水素を分離して、再使用するかまたは廃棄することができる。エポキシドが連続的に製造されるような、本発明の方法の実施態様の場合、使用触媒の全部または一部を定期的または不断に再生して、最適の活性と選択率とを保つようにするのが望ましいであろう。適当な再生方法は周知であり、たとえばか焼および溶剤処理がある。再生には塩による再処理または再含浸も考えられる。【0043】以上の説明から、当業者は本発明の本質的特徴を容易に確認することができ、また、本発明の意図と範囲から逸脱することなく、いろいろな用途、条件、および実施態様に合わせて本発明のいろいろな変形と変更とを行うことができる。【0044】【実施例】例本発明の方法の利点と効果を示すために、スピニングバスケットCSTRを用いて、一連の連続プロピレンエポキシ化実験を実施した。触媒は50%のTS−1チタンシリカライトを含む押出物からなる。それぞれのエポキシ化の実験条件は、60℃(140°F)、14kg/cm2 ゲージ圧(200psig)、および重量空間速度0.2kgH2 O2 /kg触媒/hr(0.2 lb/H2 O2 /lb触媒/hr)である。供給原料は、2.5wt%H2 O2 、73wt%イソプロパノール、24wt%水、0.2wt%メタノール、0.29wt%酢酸、および0.1wt%ギ酸を含む。この供給原料に、いろいろな量の水酸化アンモニウムを加え、また本発明を説明する実験では、さらに“Dequest2000”ATMP(アミノトリメチレンホスホン酸)を加えた。得られた結果を表1に示す。【0045】【表1】【0046】【発明の効果】エポキシ化供給原料中に水酸化アンモニウムは存在するが、ATMPが存在しない比較例1と3が示すように、水酸化アンモニウムの濃度が増大すると、生成される望ましくない開環生成物の量が減少する(米国特許第4,824,976号明細書に示されているように)が、触媒は老化につれて割合に高濃度のO2 を生成する(非選択H2 O2 分解から)傾向を有する。しかし、例2におけるように水酸化アンモニウムとともに120ppmのATMPキレート化剤を供給すると、触媒が例1におけるよりもずっと長い時間(455時間対350時間)使用した場合でも、O2 選択率が著しく減少する。同様に、供給原料に水酸化アンモニウムとともにキレート化剤を使用した例4〜6においては、長時間の連続反応条件下で酸素生成が効果的におさえられる。意外なことに、キレート化剤は酸性であるが、酸化プロピレン副反応におよぼす水酸化アンモニウム(塩基性物質)の有利な効果をそこなうことがない。 オレフィンをエポキシ化する方法であって、反応帯域において、液相で、前記オレフィンを過酸化水素と反応させることからなり、チタン含有モレキュラーシーブ触媒、陰イオン種と、アンモニウム陽イオン、アルカリ金属陽イオン、およびアルカリ土類金属陽イオンからなるグループから選択される陽イオンとからなる塩、前記チタン含有モレキュラーシーブ触媒の老化による、過酸化水素の分子酸素への非選択分解を減少させるのに有効な量のキレート化剤、の存在下で、前記反応を実施することを特徴とする方法。 キレート化剤が1分子あたり少なくとも二つの官能基を有し、前記官能基がアミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスホリル、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1に記載の方法。 前記塩が塩基性である請求項1に記載の方法。 前記塩が中性である請求項1に記載の方法。 前記塩が酸性である請求項1に記載の方法。 キレート化剤が、ポリホスホン酸、ポリリン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ポリアミド、ならびにこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。 陰イオン種が、ハロゲン化物、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、および硝酸塩からなるグループから選択される請求項1に記載の方法。 前記反応が0〜100℃の温度で実施される請求項1に記載の方法。 前記過酸化水素がイソプロパノールの酸化によって得られる請求項1に記載の方法。 液相が、水、C1 〜C10アルコール、C3 〜10ケトン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される溶剤からなる請求項1に記載の方法。 チタン含有モレキュラーシーブ触媒がMFI、MEL、またはゼオライトベータ形態を有する請求項1に記載の方法。 オレフィンがC2 〜C10脂肪族オレフィンである請求項1に記載の方法。 チタン含有モレキュラーシーブ触媒が、化学式xTiO2 :(1−x)SiO2 (x=0.01〜0.125)に対応する組成を有する請求項1に記載の方法。 前記反応が連続的に実施される請求項1に記載の方法。 チタン含有モレキュラーシーブ触媒が反応帯域に固定層の形で配置される請求項1に記載の方法。 チタン含有モレキュラーシーブ触媒が反応帯域に液相中のスラリーの形で配置される請求項1に記載の方法。 塩が液相中に濃度0.00001〜0.02Mで存在する請求項1に記載の方法。 多官能価キレート化剤が液相中に濃度1〜1000ppmで存在する請求項1に記載の方法。 オレフィンをエポキシ化する方法であって、反応帯域において、液相で、前記オレフィンを過酸化水素と反応させることからなり、チタン含有モレキュラーシーブ触媒、脱陽子状態のキレート化剤と、アンモニウム陽イオン、アルカリ金属陽イオン、およびアルカリ土類金属陽イオンからなるグループから選択される陽イオンとからなる塩、の存在下で、前記反応を実施することを特徴とする方法。 キレート化剤が1分子あたり少なくとも二つの官能基を有し、前記官能基が、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスホリル、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項19に記載の方法。 キレート化剤が、ポリホスホン酸、ポリリン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ポリカルボン酸、ポリアミン、およびアミノアルコールからなるグループから選択される請求項19に記載の方法。 前記塩が液相中に濃度1〜1000ppm存在する請求項19に記載の方法。 C2 〜C10脂肪族オレフィンをエポキシ化する方法であって、反応帯域において、液相で、20〜80℃の温度において、前記C2 〜C10脂肪族オレフィンを過酸化水素と反応させることからなり、溶剤、チタン含有モレキュラーシーブ触媒、ハロゲン化物、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、アルコキシド、および硝酸塩からなるグループから選択される陰イオン種と、アンモニウム、リチウム、ナトリウム、およびカリウムから選択される陽イオンと、からなる塩、少なくとも二つの官能基を有するキレート化剤であって、前記官能基が同じであるかまたは異なっていて、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、ホスホリル、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択され、前記官能基のうち少なくとも二つがカルボキシルまたはホスホリルであるキレート化剤、の存在下で、前記反応を実施し、前記塩が前記液相中に濃度0.00001〜0.02Mで存在し、前記多官能価キレート化剤が前記液相中に濃度1〜1000ppmで存在することを特徴とする方法。 陰イオン種が水酸化物である請求項23に記載の方法。 キレート化剤がアミノトリメチレンホスホン酸である請求項23に記載の方法。 C2 〜C10脂肪族オレフィンがプロピレンである請求項23に記載の方法。


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