| タイトル: | 特許公報(B2)_通気攪拌培養によるバクテリアセルロースの高酸素移動容量係数下での製造方法 |
| 出願番号: | 1996214980 |
| 年次: | 2006 |
| IPC分類: | C12P 19/04,C08B 37/00,C12M 1/00 |
山本 尚司 幸田 徹 矢野 壽人 吉永 文弘 JP 3785686 特許公報(B2) 20060331 1996214980 19960729 通気攪拌培養によるバクテリアセルロースの高酸素移動容量係数下での製造方法 味の素株式会社 000000066 阿部 正博 100100181 山本 尚司 幸田 徹 矢野 壽人 吉永 文弘 20060614 C12P 19/04 20060101AFI20060525BHJP C08B 37/00 20060101ALN20060525BHJP C12M 1/00 20060101ALN20060525BHJP JPC12P19/04 CC08B37/00C12M1/00 C12P 19/04 C08B 37/00 C12M 1/00 BIOSIS/WPIDS(STN) JICSTファイル(JOIS) 特開平5−284990(JP,A) 1 1998042890 19980217 8 20030210 森井 隆信 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、高い酸素移動容量係数(KLa)を達成し得る培養条件下で、セルロース性物質を生産する能力を有する微生物(以下、「セルロース生産菌」という。)に属する菌体を用いるセルロース性物質(以下、「バクテリアセルロース」又は「BC」という。)を製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】BC(バクテリアセルロース)は可食性であり食品分野で利用されるほか水系分散性に優れているので食品、化粧品又は塗料等の粘度の保持、食品原料生地の強化、水分の保持、食品安定性向上、低カロリー添加物又は乳化安定化助剤としての産業上利用価値がある。BCは木材パルプ等から製造されるセルロースに較べ、フィブリルの断片幅が2ケタ程度も小さいことを特徴とする。従って、BCの離解物はミクロフィブリルのかかる構造的物理的特徴に基づき高分子、特に水系高分子用補強剤として各種の産業用用途がある。このようなセルロース性離解物を紙状または固型状に固化した物質は高い引張弾性率を示すのでミクロフィブリルの構造的特徴に基づくすぐれた機械特性が期待され、各種産業用素材としての応用がある。【0003】BCの製造方法に関しては、特開昭62−265990号、特開昭63−202394号及び特公平6−43443号等にBCの製造方法に関する記載がある。セルロース生産菌の培養を行なう際に適当とされている栄養培地としては、炭素源、ペプトン、酵母エキス、燐酸ナトリウム及びクエン酸からなる Schramm/Hestrin 培地(Schramm ら、J. General Biology, ll, pp.123〜129, l954 )が知られている。また、このような栄養培地に、培地中の特定栄養素によるセルロース生成促進因子である、イノシトール、フィチン酸及びピロロキノリンキノン(PQQ)(特公平5−1718号公報;高井光男,紙パ技協誌,第42巻,第3号,第237〜244頁)等を添加したり、更には、カルボン酸又はその塩(特願平5−191467号)、インベルターゼ(特願平5−331491号)及びメチオニン(特願平5−335764号)を添加することによって、セルロース性物質の生産性が向上することが見い出されている。また、従来より、微生物を培養する培養形式としては、静置、振盪もしくは通気攪拌培養等が用いられてきた。また、培養操作法としては、いわゆる回分発酵法、流加回分発酵法、反復回分発酵法及び連続発酵法等が使用されてきた。尚、攪拌手段としては、例えばインペラー(攪拌羽根)、エアーリフト発酵槽、発酵ブロスのポンプ駆動循環、及びこれら手段の組合せ等が使用されている。インペラーの種類としては、門型羽根、タービン羽根、ヘリカルリボン羽根及びスクリュー羽根等が知られている。【0004】ところで、工業的な発酵プロセス一般に於いては、培養の酸素要求量を通気と攪拌で充足させている。しかし、多くの発酵プロセスでは発酵槽の酸素供給能で生産性が律速されており、従って、微生物の培養に際して酸素供給に影響を与える要因を検討することは重要であると考えられる。培養系で空気中の酸素が菌体に移動するに際して、気泡から液相への酸素移動は次式によって代表される。【数1】ここで、CLは培養液中の溶存酸素濃度(mmol/l)、tは時間(hr)、【数2】は一定時間における溶存酸素濃度の変化、すなわち酸素移動速度(mmol/l・hr)、KLは液境膜の酸素移動速度係数(cm/hr)、aは単位体積当たりの気液界面積(cm2 /cm3)、C* は気泡の酸素分圧と平衡な溶存酸素濃度(mmol/l)である。KLは酸素の気相から液相への移動の抵抗の逆数であり、(C* −CL)は酸素が抵抗に逆らって移動するための推進力(driving force)であるとみなすことができる。発酵系のKLとaを測定することは大変困難なことであるから、この2項を掛け合わせたKLaを酸素移動容量係数と呼んで用いている。KLaのディメンジョンは時間の逆数で、通常hr-1で表す。酸素移動容量係数は発酵槽の酸素移動能を表す目安となるもので、同じ条件ではKLaの大きいもののほうが酸素移動の能力が大きいことを示す。【0005】【発明が解決しようとする課題】従来の、特に通気攪拌培養における回分及び流加発酵法にあっては、セルロース生産菌の培養によって培養液中にBCが蓄積されてくるのに伴い、培養期間の後半には培養液の粘度が増加し、その結果、培養系全体を均一かつ充分に攪拌混合することが著しく困難になる為、酸素の供給(通気)が不充分となって菌によるBCの生産速度が低下していたのである。そこで、本発明者等は、BCを含む培養液において、酸素供給能力の指標であるKLaが高い値を示すような培養条件下でBCを製造する方法を開発し、本発明を完成するに至った。即ち、これまで消泡剤の存在は、一般にKLaを低下させるものと報告されているが、横型培養装置を使用することで、BCの培養系に於いて、消泡剤の存在により逆にKLaの値が増大しBCの生産速度を向上し得ることが判明したのである。これは、BCを生産する為のセルロース生産菌の通常の培養液中では、微細な気泡が液中に長く残存するために培養液の流動性が大きく変化し、通気により発生する新しい気泡の液中への分散が阻害されKLaが低下するが、消泡剤を従来使用されてきた濃度(気液界面より気相側へ発泡現象により泡が上昇し、最後には通気とともに装置外へ液の一部が出る現象を制止できる濃度)以上に添加することにより、液相中の微細な気泡の界面更新が促進され、その結果、KLaが増加するものと考えられる。【0006】【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、攪拌羽根を槽内水平軸上に備えて成る横型培養装置を使用し、2重量%のバクテリアセルロースを含み、かつ塑性粘度が15〜20ポイズであるような模擬液を用いて測定した酸素移動容量係数(KLa)が約50〜100/hrである培養条件下で少なくとも一定期間セルロース生産菌を培養してセルロース性物質を製造する方法に係わるものである。本発明の具体的態様の一つとして、攪拌羽根を槽内水平軸上に備えて成る横型培養装置を使用し、消泡剤の存在下に培養する方法がある。消泡剤としては従来公知の消泡剤、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG) 、シリコン、エステル、アルコール類及び脂肪酸とその誘導体等を使用することができ、その培養液中の濃度は消泡剤の種類にも依るが、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上である。又、その他の具体的態様として攪拌羽根を槽内水平軸上に備えて成る横型培養装置を使用し、気泡比率が10%以下となる条件下で培養する方法がある。尚、気泡比率は以下の方法で算出することができる。気泡比率の算出方法:気泡を含む状態の模擬液の見掛け比重をA、模擬液の真比重をBとすると【数3】【0007】該横型培養装置に備える門型羽根又はタービン羽根等それ自体は従来公知の種々の形態のものを使用することができる。例えばタービン羽根としては、一般的なラシュトンタービンの他に、ディスクのないパドル型やパドル型の直上にディスクを備えたもの、湾曲パドル型、スカバー型及びマリンインペラー型等を使用することができる。本発明の培養装置に於いて、門型羽根、タービン羽根等の同種及び別種の羽根を、同一槽内に於いて同一軸又は別個の軸に備えることができる。水平軸は約80°まで傾けて使用することができる。KLaは培養において重要で一般的な装置性能の指標であるが、対照となる液の性質や攪拌羽根の形状、回転数により変化する。本発明者等は目的とするバクテリア・セルロースの液性(セルロース生産菌の培養液)に近い模擬液を設定し、そこでKLaで評価することにより、生産性の向上に直接関係した因子として評価することができる。この評価系で測定すれば、攪拌羽根の形状と回転数は任意の条件を選ぶことができる。【0008】KLaの測定方法:2重量%のバクテリアセルロースを含み、かつ塑性粘度が15〜20ポイズであるような模擬液を全量2Lのガラス製ジャーファーメンター(横型培養装置)の 1/3 容量に張り込み、これに適宜消泡剤を添加した状態で測定する。攪拌羽根を回転させながら窒素を通気することにより溶存酸素濃度を0〜10%飽和状態とした模擬液に、次に酸素分圧20〜21%の空気を通気し、これによって上昇する溶存酸素濃度を溶存酸素電極を用いて測定する。KLaは前記(数1)式より求められるが、簡便には、5〜30秒毎に溶存酸素濃度を測定し、時間t1での溶存酸素濃度DO1と時間t2での溶存酸素濃度DO2から以下の式でKLaを求める。((DO2−DO1)/(t2−t1))/(C* −(DO1+DO2)/2)、単位(/hr) (但し、式中C* は気泡の酸素分圧と平衡な溶存酸素濃度)【0009】本明細書中、「KLaが約50〜100/hrである培養条件」とは、本明細書中で定義した前述の測定系で得られるところの数値である。培養に際してどの時期にどの程度の期間をかかる特定の装置条件下に制御するかは菌体の種類、培地の組成及び培養装置の種類等に応じて等業者が適宜選択しうる。菌体の増殖と共に培地の粘度が増加してくるため、通常は少なくとも、培養液中のセルロース濃度が5g/L以上となる時期、又は生産速度が0.2g/L/hrとなる時期に一定期間上記特定の範囲のKLaを達成して培養系に充分な酸素の供給を行なうようにすることが好ましい。この特定の装置条件を培養期間中、断続的に設けることも可能である。本発明の方法によって、極めて高いバイオセルロースの生産速度が得られるのである。【0010】【発明の実施の形態】本発明方法を実施するに際しては、前述の培養形式・培養操作法に加えて、特願平6−192287号に記載されている「培養装置と浮上分離装置及びエッジフィルター等の分離装置の間で菌体を含む培養液を循環させるセルロース性物質の製造方法であって、該分離装置に於いて、生産物であるセルロース性物質を菌体及び培養液から分離することを特徴とする、前記方法」及び特願平6−192288号に記載されている「セルロース生産菌を培養してセルロース性物質を製造する方法であって、培養期間中、培養系からの培養液の引き抜き及び該引き抜き量とほぼ等容量の新たな培養液の供給を連続的に行なうことによって、培養中の培養液に於けるセルロース性物質の濃度を例えば10g/L以下、又は酸素消費速度が15μmol /L/hr以上に保つことができるように低く維持することを特徴とする前記製造方法」を採ることもできる。【0011】本発明において使用されるセルロース生産菌は、例えば、BPR2001株に代表されるアセトバクター・キシリナム・サブスピーシーズ・シュクロファーメンタンス(Acetobacter xylinum subsp. sucrofermentans)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum )ATCC23768、アセトバクター・キシリナムATCC23769、アセトバクター・パスツリアヌス(A. pasteurianus )ATCC10245、アセトバクター・キシリナムATCC14851、アセトバクター・キシリナムATCC11142及びアセトバクター・キシリナムATCC10821等の酢酸菌、その他に、アグロバクテリウム属、リゾビウム属、サルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属、アゾトバクター属及びズーグレア属並びにそれらをNTG(ニトロソグアニジン)等を用いる公知の方法によって変異処理することにより創製される各種変異株である。尚、BPR2001株は、平成5年2月24日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに寄託され(受託番号FERM P−13466)、その後1994年2月7日付で特許手続上の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づく寄託(受託番号FERM BP−4545)に移管されている。【0012】NTG等の変異剤を用いての化学的変異処理方法には、例えば、Bio Factors, Vol. l, p.297−302 (1988)及び J. Gen. Microbiol, Vol. 135, p.2917−2929 (1989) 等に記載されているものがある。従って、当業者であればこれら公知の方法に基づき本発明で用いる変異株を得ることができる。また、本発明で用いる変異株は他の変異方法、例えば放射線照射等によっても得ることができる。本発明の製造方法に用いる培地の組成物中、炭素源としてはシュクロース、グルコース、フラクトース、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、マルトース、エリスリット、グリセリン、エチレングリコール、エタノール等を単独或いは併用して使用することができる。更にはこれらのものを含有する澱粉水解物、シトラスモラセス、ビートモラセス、ビート搾汁、サトウキビ搾汁、柑橘類を始めとする果汁等をシュクロースに加えて使用することもできる。 また、窒素源としては硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸塩、尿素等有機或いは無機の窒素源を使用することができ、或いはBact−Peptone、Bact−Soytone、Yeast−Extract、豆濃などの含窒素天然栄養源を使用してもよい。有機微量栄養素としてアミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、2,7,9−トリカルボキシ−1Hピロロ〔2,3,5〕−キノリン−4,5−ジオン、亜硫酸パルプ廃液、リグニンスルホン酸等を添加してもよい。【0013】生育にアミノ酸等を要求する栄養要求性変異株を使用する場合には、要求される栄養素を補添することが必要である。無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、モリブデン酸塩、赤血塩、キレート金属類等が使用される。更に、前述のセルロース生成促進因子を適宜培地中に添加することもできる。例えば、酢酸菌を生産菌として用いる場合には、培養のpHは3ないし7に、好ましくは5付近に制御する。培養温度は10〜40℃、好ましくは25〜35℃の範囲で行う。培養装置に供給する酸素濃度は1〜100%、望ましくは21〜80%であれば良い。これら培地中の各成分の組成割合及び培地に対する菌体の接種等は培養方法に応じて当業者が適宜選択し得るものである。【0014】本発明の方法によって製造されるBCは菌体はそのまま回収してもよく、さらに本物質中に含まれる菌体を含むセルロース性物質以外の不純物を取り除く処理を施すことが出来る。不純物を取り除くためには、水洗、加圧脱水、希酸洗浄、アルカリ洗浄、次亜塩素酸ソーダ及び過酸化水素などの漂白剤による処理、リゾチームなどの菌体溶解酵素による処理、ラウリル硫酸ソーダ、デオキシコール酸などの界面活性剤による処理、常温から200℃の範囲の加熱洗浄などを単独及び併用して行い、セルロース性物質から不純物をほぼ完全に除去することができる。このようにして得られた本発明でいうセルロース性物質とは、セルロース及び、セルロースを主鎖としたヘテロ多糖を含むもの及びβ−1,3、β−1,2等のグルカンを含むものである。ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分はマンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の六炭糖、五炭糖及び有機酸等である。尚、これ等の多糖が単一物質である場合もあるし2種以上の多糖が水素結合等により混在してもよい。【0015】【実施例】以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。実施例1図1に示した横型培養装置を使用して、前述のKLa測定系を用いて、所要動力を約40〜170kg・cm/sec・L の範囲で変化させて、それに伴いKLaの値が消泡剤の有無でどのように変化するかを測定した。その結果を図2に示す。所要動力が比較的高い場合に、特に消泡剤の添加による効果が顕著になることが判る。又、同様な系で、消泡剤の濃度がKLaの値に与える影響を測定した。その結果を図3に示す。回転数の比較的高い場合に、特に消泡剤の添加による効果が顕著になることが判る。更に、同様な系(回転数:200rpm )で、消泡剤の濃度が気泡比率に与える影響を測定した。その結果を図4に示す。【図面の簡単な説明】【図1】 KLa測定系に用いた横型培養装置を示す。【図2】 所要動力の変化に伴うKLaの値の変化を示す。【図3】 消泡剤の濃度がKLaの値に与える影響を示す。【図4】 消泡剤の濃度が気泡比率及びKLaの値に与える影響を示す。 攪拌羽根を槽内水平軸に備えて成る横型培養装置を使用し、2重量%のバクテリアセルロースを含み、かつ塑性粘度が15〜20ポイズであるような模擬液を用いて測定した酸素移動容量係数(KLa)が約50〜100/hrである培養条件下で、少なくとも一定期間、0.001重量%以上の濃度の消泡剤の存在下にセルロース生産菌を培養して、セルロース性物質を製造する方法。