タイトル: | 特許公報(B2)_多官能ビニルエーテル、重合性組成物及びその硬化物 |
出願番号: | 1996201001 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 43/162,C08F 16/32 |
野路 稔 荻原 利恵子 内田 誠 JP 3736817 特許公報(B2) 20051104 1996201001 19960712 多官能ビニルエーテル、重合性組成物及びその硬化物 日本化薬株式会社 000004086 野路 稔 荻原 利恵子 内田 誠 20060118 C07C 43/162 20060101AFI20051221BHJP C08F 16/32 20060101ALI20051221BHJP JPC07C43/162C08F16/32 C07C 43/00 C08F 16/00 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平2−242820(JP,A) 3 1998025262 19980127 6 20021217 前田 憲彦 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は新規な多官能ビニルエーテル、該多官能ビニルエーテルを含む重合性性組成物及びその硬化物に関する。【0002】【従来の技術】現在、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などの重合性組成物は、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材などの多くの分野で用いられている。その主剤としてはアクリル系モノマーや多官能アクリル化合物が用いられている。【0003】【発明が解決しようとする課題】ところが、アクリル系モノマーには皮膚刺激性や臭気性が強く、作業性に問題がある。そこで、最近、低臭気性で皮膚刺激性が少ないビニルエーテル化合物が注目されるようになった。また、ビニルエーテル化合物はカチオン重合性でその硬化速度が速いということなどからアクリル系化合物の欠点を改善できる。しかしながら、市場ではアクリル系化合物に比べてその種類が少なく、価格的にも高価なため十分ニーズに対応できていない。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究の結果本発明を完成した。すなわち本発明は、(1)下記一般式(A)【0005】【化2】【0006】(式中Vは一般式−{R−O−}q −CH=CH2 (式中Rは炭素数1〜10の炭素原子の直鎖また枝分かれ状のアルキレン基を、qは0〜10の整数をそれぞれ表す。)で表されるビニルエーテル基を表す。)で表される多官能ビニルエーテル、(2)重合開始剤、及び上記(1)記載の多官能ビニルエーテルを含む重合性組成物、(3)上記(2)記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物。を提供するものである。【0007】【発明の実施の形態】一般式(A)で表される化合物の一般的な合成法としては、式(B)【0008】【化3】【0009】で表されるトリシクロデカンジメチロールと、アセチレン、または、一般式(C)Z−{R−O}r −CH=CH2 (C)(式中Zはハロゲン原子、Rは炭素数1〜10の直鎖また枝分かれ状のアルキレン基を、rは0〜10の整数をそれぞれ表す。)で表されるハロアルキレンオキシビニル化合物を塩基性化合物の存在下で反応させることによって得られる。【0010】用いうる式(C)の化合物の具体例としては、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、ブロムエチルビニルエーテルなどがある。式(C)の化合物の使用量は、式(B)の化合物のメチロール基1モル当量に対して通常1モル以上、好ましくは、1.5モル以上、特に好ましくは2モルである。【0011】式(B)で表される化合物は例えばシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応物であるジシクロペンタジエンからオキソ合成法で得られる。【0012】式(B)の化合物にアセチレンを付加させる反応は水酸化カリウム、カリウムアルコラート、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコラートなどを触媒にして公知の方法で行われる。反応圧力は通常、常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2 、反応温度は通常30〜250℃、好ましくは60〜200℃、反応時間は通常4〜15時間、好ましくは6〜12時間であるがこれらに限定されるものではない。反応終了後、反応物を蒸留などで精製して目的化合物を得ることができる。【0013】また、式(B)の化合物と式(C)のハロアルキンオキシビニル化合物とを塩基性化合物存在下反応させる場合の用いうる塩基性化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、などのアルカリ金属化合物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラート、及び、金属ナトリウムなどのアルカリ金属などが挙げられ、その使用量は、式(B)の化合物のメチロール基1.0モル当量に対して通常0.5〜10モル、好ましくは1.0〜3.0モルである。またこの時、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウム・クロライド、トリオクチルメチルアンモニウム・クロライド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、ジシクロヘキシルー18ークラウンー6、ジベンゾー18ークラウンー6、18ークラウンー6、ポリエチレングリコール400などの相間移動触媒を併用すれば反応はより促進される。相間移動触媒の使用量は、式(B)の化合物のメチロール基1.0モル当量に対して0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。【0014】前記反応は、不活性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,Nージメチルイミダゾリドンのような非プロトン性極性溶媒のような溶媒中で行ってもよい。反応温度は通常30〜150℃、好ましくは60〜110℃、反応時間は通常5〜12時間、好ましくは7〜10時間である。また反応で生成した水を反応系外に除去しながら反応を進行させることもできる。反応終了後、反応混合液を室温まで冷却し、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどで有機層を抽出し数回水洗することで、未反応の式(B)の化合物、副生した無機塩を除去し、有機層を無水硫酸ナトリウムなどの乾燥剤で乾燥後、減圧下で溶剤を除去することにより目的物を得ることができる。【0015】本発明の多官能ビニルエーテルと重合開始剤、及びその他必要に応じて種々の重合性化合物、染料、顔料、可塑剤、無機充填剤、溶剤などを混合して本発明の重合性組成物を得ることができる。これらのうち、重合開始剤を用いて、熱または光のエネルギーを重合系に与える方法が好ましい。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光ラジカルまたは光カチオン重合開始剤などのラジカル重合やイオン(カチオン)重合を起こしうるものであれば特に制限はない。用いうる熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスー2ー4ージメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、光ラジカル重合開始剤としては、2,4ージエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、4ージメチルアミノイソアミルベンゾエート、4ージメチルアミノエチルベンゾエート等が挙げられる。用いうる光カチオン重合開始剤の具体例としては、特公昭53ー32831号、特公昭52ー14277号、特公昭52ー14278号、特公昭52ー14279号、特公昭52ー25686号、特公昭61ー34752号、特開昭54ー53181号、特開昭54ー95686号、特公昭61ー36530号、特公昭59ー19581号、特公昭63ー65688号、特開昭55ー164204号、特公昭60ー30690号、特公昭63ー36332号、特公平1ー39423号、特公平2ー10171号、特公平5ー15721号、特公平4ー62310号、特公昭62ー57653号、特公平3ー12081号、特公平3ー12082号、特公平3ー16361号、特公昭63ー12092号、特公昭63ー12093号、特公昭63ー12095号、特公昭63ー12094号、特公平2ー37924号、特公平2ー35764号、特公平4ー13374号、特公平4ー75908号、特公平4ー73428号、特公昭53ー32831号、特開平2ー150848号、特開平2ー296514号、米国特許第4,069,055号、米国特許第4,069,056号、米国特許第3,703,296号等に記載されているスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、アルソニウム塩、鉄・アレーン錯体などが挙げられる。これらの重合開始剤は式(A)の化合物に対して、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%使用され、本発明の硬化物を得る際に式(A)の化合物と混合してもよいし、重合性組成物中に混合してもよい。【0016】本発明の硬化物は、本発明の多官能ビニルエーテルをそのまま、好ましくは本発明の重合性組成物として、電子線または放射線の照射或いは加熱して得ることができる。【0017】【発明の効果】本発明で得られた多官能ビニルエーテル化合物は低皮膚刺激性の重合性化合物としてコーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材などの種々の分野で用途がある。特に光カチオン重合開始剤との重合性組成物は硬化速度が速く、酸素による重合阻害がほとんど無いという特徴を示す。【0018】【実施例】以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0019】実施例1温度計、環流冷却器、滴下ロート、窒素導入装置、攪拌装置のついた反応器にジシクロペンタジエンジメチロール体39.2g、ジメチルスルホキシド70mlを仕込み溶解させた後、粉末状水酸化カリウム23gを加え、60℃で30分攪拌する。次いで2ークロルエチルビニルエーテル84.8gを反応器内温度を70℃に保ちながら撹拌下に60〜90分間かけて滴下する。さらに75〜80℃で5時間撹拌を続けて反応を完結させる。反応液を室温に冷却し、メチルエチルケトン200g、水300gを加え、有機層へ目的化合物を抽出し、水層へ無機塩、未反応原料を溶解する。分液ロートで水層を分別し、有機層の水洗を5回繰り返し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて一夜放置する。濾過後、メチルエチルケトン、過剰のクロルエチルビニルエーテルを減圧留去して生成物54gを得た。この生成物の赤外線吸収スペクトルには1610cm-1、975cm-1にビニル基による吸収、1200cm-1にエーテル結合による吸収が認められ、3400cm-1付近の水酸基による吸収が完全に消失していることより目的とする本発明の多官能ビニルエーテルであることを確認した。(化合物A)【0020】実施例2温度計、冷却器、ガス導入管を備えた反応器に式(B)の化合物を39.2gと水酸化カリウム1.12gを仕込み、180℃に加熱した。ついで反応器内を窒素で置換する。この温度でアセチレンを1L/分で吹き込みながら6時間反応させた。得られた反応物は少量の原料とモノ、及びジ付加体の混合物であった。これを吸着カラムでnーヘキサンで溶出してジ付加体のみを分離精製した。次いで溶出液のn−ヘキサンを蒸発させて28gの生成物を得た。この生成物の赤外線吸収スペクトルにはから1610cm-1、975cm-1にビニル基による吸収、1200cm-1にエーテル結合による吸収が認められ、3400cm-1付近の水酸基による吸収が完全に消失していることより目的とする本発明の多官能ビニルエーテルであることを確認した。(化合物B)【0021】試験例実施例1〜2で得られた本発明の多官能ビニルエーテルをそれぞれ下記の組成の重合性組成物とし硬化試験を行った。重合性組成物の組成化合物A〜B 10部重合開始剤(種類は表1に示す) 0.1部溶剤(メチルエチルケトン) 3部硬化方法光硬化;RIテスターでPETフィルムに重合性組成物を塗布(膜厚10μm)し、乾燥後高圧水銀灯80W/cm 1灯、ランプ下10cm、コンベアスピード10、20、50m/min.での照射をそれぞれ数回繰り返し下記硬化判定試験に供した。硬化判定試験;MEK(メチルエチルケトン)ラビングテスト50回で硬化樹脂が剥離しなかったパス回数(照射の繰り返し数)所を硬化と判定した。結果を表1に示す。【0022】【表1】【0023】表1においてSP−170;アデカオプトマー(光カチオン重合開始剤、旭電化(株)製)DETXーS;カヤキュア(光重合開始剤、日本化薬(株)製)比較例A;セロキサイド2021(脂環式エポキシ樹脂、(株)ダイセル製)比較例B;エピコート828(芳香族系エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製)【0045】表1より明らかなとおり、本発明のビニルエーテルを含む重合性組成物は、硬化速度に優れるため、照射回数が少ない。 下記一般式(A)(式中Vは一般式−{R−O−}q −CH=CH2 (式中Rは炭素数1〜10の炭素原子の直鎖また枝分かれ状のアルキレン基を、qは0〜10の整数をそれぞれ表す。)で表されるビニルエーテル基を表す。)で表される多官能ビニルエーテル。 重合開始剤、及び請求項1記載の多官能ビニルエーテルを含む重合性組成物。 請求項2記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物。