タイトル: | 特許公報(B2)_ニンニク臭の低減されたニンニク食品とその製造方法 |
出願番号: | 1996199533 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A23L1/212,A23L1/30,A61K35/78,A61P1/04,A61P31/04 |
草野 崇一 櫻又 康秀 岡田 篤典 JP 3660435 特許公報(B2) 20050325 1996199533 19960711 ニンニク臭の低減されたニンニク食品とその製造方法 富士産業株式会社 591046892 久保田 藤郎 100074077 矢野 裕也 100086221 草野 崇一 櫻又 康秀 岡田 篤典 20050615 7 A23L1/212 A23L1/30 A61K35/78 A61P1/04 A61P31/04 JP A23L1/212 C A23L1/30 B A61K35/78 V A61P1/04 A61P31/04 7 A23L 1/212 A61K 35/78 特開昭62−142118(JP,A) 特開平06−256202(JP,A) 特開昭51−015677(JP,A) 特開昭59−196064(JP,A) 特開平07−016072(JP,A) 4 1998028546 19980203 12 20030402 内田 淳子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ニンニク臭の低減されたニンニク食品とその製造方法に関し、詳しくは胃の中においてアリシンを発生させることが可能でありながらも、摂食時及び食後共に、著しくニンニク臭が低減されているニンニク食品とその製造方法に関する。さらに、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、従来知られている薬剤と同程度のヘリコバクター・ピロリ菌に対する除菌(抗菌)効果を有しつつ、しかも長期に亘って摂取しても副作用がなく、安全に摂取し得るものである。【0002】【従来の技術】ニンニクは古来、滋養、強壮、その他さまざまな活性を有することより、広く食されて来た。ニンニクの有効成分の本体はアリシンであると言われているが、このアリシンには独特の不快臭がある。ニンニク中のアリシンは、実際は生ニンニクをすり下ろした際に、ニンニク中に存在するアリインと酵素アリイナーゼとの反応により発生する。また、アリシン自体は不安定であり、その変化したものはさらに不快な臭いとなる。これまでのニンニク健康食品には、このようなアリシンに独特の臭いがあるため、ニンニクの良さは認めるが、その臭いが好きではないという人にとっては、非常に摂取しにくいものであった。【0003】このためもあって、現在では、無臭ニンニクと言われる食品、栄養剤が出回っているが、殆どの場合、このアリシンがなくなっている。【0004】アリシン自体はまた、上記したように、非常に不安定であるため、すり下ろし生ニンニクを用いてアリシンを製剤化するには、安定性の面で困難がある。実際は摂食時に、アリイナーゼとアリインを反応させてアリシンを発生させなければならないが、すり下ろした生ニンニクを毎回摂取するのは煩わしく、臭いの問題もある。【0005】従って、ヨーロッパ等においては、凍結乾燥ニンニクを打錠した製品も見られるが、アリシンの発生に関与しているアリイナーゼが、胃液中のpH(pH1.2前後)では非可逆的に失活してしまうため、胃液中でのアリシンの発生は殆どない。【0006】ところで、従来、抗潰瘍剤として、酸分泌抑制薬の抗コリン薬、ヒスタミンH2拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬及び防御因子賦活薬のプロスタグランジン等が用いられてきた。【0007】しかしながら、最近になって、胃潰瘍の原因としてヘリコバクター・ピロリ菌( Helicobacter pylori )の存在が知られるようになり、胃炎の原因の80%以上がヘリコバクター・ピロリ菌であることが報告されている。【0008】また、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が持続すると、胃粘膜萎縮、腸上皮化生を生じ、消化性潰瘍の発生と同時に、胃ガンの発生にも密接に関わっていることが分かっている。【0009】従って、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌は、消化性潰瘍治療と共に、胃ガン治療に対しても有効である。このような背景から、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療が行われるようになってきた。【0010】このようなヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療の方法としては、第一に3剤併用治療法がある。即ち、ビスマス,メトロニダゾール,テトラサイクリンの組み合わせで治療する方法であって、この方法によれば、除菌率は90%以上に達するものの、副作用の発現率が高いという問題がある。【0011】第二に、プロトンポンプ阻害剤と抗菌剤との組み合わせによる方法があるが、除菌率が充分でなく、またプロトンポンプ阻害剤については、現在、視力障害の副作用があることが知られている。【0012】従って、除菌効果が強く、しかも長期に亘って服用しても副作用のない安全な除菌治療薬が望まれているが、現在まだそのような要望に応えるものは提供されていないのが、実情である。【0013】【発明が解決しようとする課題】本発明者は、アリシンを含有しながらも、摂食時及び食後共に、著しくニンニク臭が低減されているニンニク食品を得るべく鋭意研究を重ねた結果、生ニンニクを酵素アリイナーゼが失活する温度で加熱処理することにより得られたニンニクエキス末に酵素アリイナーゼを添加してアリイナーゼ含有ニンニクエキス末を製造し、このアリイナーゼ含有ニンニクエキス末に、アリイナーゼを胃液中において安定的に作用させることのできる物質を含有させることにより、ニンニク本来の有効成分であるアリシンを損なうことなく、著しくニンニク臭の低減されたニンニク食品が得られることを見出した。【0014】また、本発明者は、除菌効果が強く、しかも長期に亘って服用しても副作用のない除菌治療薬の提供の要望に応えるべく、鋭意検討を重ねていた。その過程で、本発明者は、ニンニクの有効成分と言われるアリシンに、従来知られている薬剤に匹敵するような除菌(抗菌)効果があることを見出し、上記無臭ニンニク食品が、ヘリコバクター・ピロリ菌による胃炎を原因とした消化性潰瘍治療に効果があることを知見した。【0015】すなわち、本発明者は、上記ニンニク臭の低減されたニンニク食品が、医薬(除菌治療薬、或いは抗潰瘍薬)としてではないが、従来知られている薬剤と同程度の除菌(抗菌)効果を有しつつ、しかも長期に亘って摂取しても副作用がなく、安全に摂取し得るものであることを知見し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。【0016】本発明は、第1に、胃の中においてアリシンを発生させることが可能でありながらも、摂食時及び食後共に、著しくニンニク臭の低減されたニンニク食品とその製造方法を提供することを目的とするものである。【0017】また、本発明は、第2に、従来知られている薬剤と同程度のヘリコバクター・ピロリ菌に対する除菌(抗菌)効果を有しつつ、しかも長期に亘って摂取しても副作用がなく、安全に摂取し得る食品とその製造方法を提供することを目的とするものである。【0018】【課題を解決するための手段】 即ち、請求項1記載の本発明は、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末と酵素アリイナーゼとからなるアリイナーゼ含有ニンニクエキス末と、カキガラ末とを含有し、胃の中においてアリシンを発生させることができ、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobactor pylori)に対する抗菌作用を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品を提供するものである。【0019】 また、請求項3記載の本発明は、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末に酵素アリイナーゼを添加してアリイナーゼ含有ニンニクエキス末を製造し、このアリイナーゼ含有ニンニクエキス末に、カキガラ末を含有させることを特徴とする、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末と酵素アリイナーゼとからなるアリイナーゼ含有ニンニクエキス末と、カキガラ末とを含有し、胃の中においてアリシンを発生させることができ、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobactor pylori)に対する抗菌作用を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品の製造方法を提供するものである。【0020】ニンニク製剤(ニンニクエキス末など)については、従来より健康食品として種々出回っているが、本発明のようにアリシンを発生させるものや、アリシンを含有したりするものは、全く知られておらず、また、そのようなアリシンを発生させたり、含有していない従来のニンニク製剤では、ヘリコバクター・ピロリ抗菌作用も全くない。なお、ニンニク自体(生ニンニク)については、古来より食されて来たものであり、副作用の問題は全くないが、刺激が強く、しかも食後には不快臭の問題もある。【0021】請求項1記載の本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、生ニンニクに比べると、刺激が非常に弱く、しかも生ニンニクを食べた時のような食後の不快臭も殆どないという特徴を有する。【0022】【発明の実施の形態】 請求項1記載の本発明は、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末と酵素アリイナーゼとからなるアリイナーゼ含有ニンニクエキス末と、カキガラ末とを含有し、胃の中においてアリシンを発生させることができ、ヘリコバクター・ピロリ菌に対する抗菌作用を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品に関するものであり、このようなニンニク臭の低減されたニンニク食品は、請求項3記載の製造方法により得られるものである。 従って、以下、請求項3記載の製造方法を説明しつつ、請求項1記載のニンニク臭の低減されたニンニク食品について説明することとする。【0023】 すなわち、請求項1記載のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、請求項3に記載したように、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末に酵素アリイナーゼを添加してアリイナーゼ含有ニンニクエキス末を製造し、このアリイナーゼ含有ニンニクエキス末に、カキガラ末を含有させることにより製造することができる。【0024】請求項3記載の方法で用いられるニンニクエキス末は、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末である。このような酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末は、加熱処理、酸処理、高圧処理など、様々な方法により製造されたニンニクエキス末を用いることができるが、請求項2,4に示すように、生ニンニクを酵素アリイナーゼが失活する温度で加熱処理することにより得られたニンニクエキス末が好ましい。【0025】請求項4に示す好適な製造方法においては、まず生ニンニクを酵素アリイナーゼが失活する温度で加熱処理する。より具体的には、生ニンニクを酵素アリイナーゼが失活する温度の温浴中で加熱処理する。酵素アリイナーゼを失活させるには、通常、60℃〜100℃の温度で、5分間〜4時間、好ましくは65℃〜85℃の温度で、1時間〜3時間加熱処理すればよい。【0026】生ニンニクを加熱処理した後、粉砕し、搾汁、濾過、さらに遠心分離し、得られた上澄み液を噴霧乾燥して、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末を得る。【0027】請求項3記載の方法においては、このようにして酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末に、酵素アリイナーゼを添加する。この場合の酵素アリイナーゼの添加量は、特に制限はないが、5U/g以上、通常、8U/g以上あれば充分である。【0028】上記のようにして、アリイナーゼ含有ニンニクエキス末を製造する。このアリイナーゼ含有ニンニクエキス末は、水分を含んでいないため、アリイナーゼとアリインとの反応が抑えられており、この段階ではアリシンは発生していない。従って、このアリイナーゼ含有ニンニクエキス末は、無臭である。【0029】 さらに、このようにして得られたアリイナーゼ含有ニンニクエキス末に、カキガラ末を含有させることにより、目的とする胃の中においてアリシンを発生させることができ、ヘリコバクター・ピロリ菌に対する抗菌作用を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品を製造することができる。【0030】 ここでカキガラ末は、酵素アリイナーゼを胃液中において安定的に作用させることのできる物質として用いられている。酵素アリイナーゼを胃液中において安定的に作用させることのできる物質とは、pH1.2前後と極めて強い酸性を呈する胃液中において、アリイナーゼ含有ニンニクエキス末に酵素アリイナーゼを安定的に作用させる物質、例えば中和作用を有するような物質を指し、かつ食品として摂取できるものであることが必要である。このような酵素アリイナーゼを胃液中において安定的に作用させることのできる物質としてカキガラが選択され、粉末状のもの、つまりカキガラ末が用いられる。このような物質を含有させることにより、胃の中においてアリシンを発生させ得ることになる。【0031】 このカキガラ末は、上記アリイナーゼ含有ニンニクエキス末に対して、3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上加えることが必要である。これにより、安定的に胃液中においてもアリシンが発生する。添加量の上限は特に制限はないが、20重量%を超えて添加しても、添加量に見合うだけのアリシンの発生が見られないため、通常、20重量%程度を実質的な上限とする。【0032】 以上のようにして、目的とする請求項1記載のニンニク臭の低減されたニンニク食品を製造することができる。 このようにして得られたニンニク臭の低減されたニンニク食品は、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末(例えば、生ニンニクを加熱処理して得られたニンニクエキス末)と酵素アリイナーゼとからなるアリイナーゼ含有ニンニクエキス末、及びカキガラ末を含有することを特徴とするものであり、それぞれの成分の使用量は前記した通りである。 なお、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク製品においては、アリシンを10〜17mg/gの割合で発生させるように、各原料を使用すると良い。【0033】本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、通常は、粉末状のまま製品としても良く、このような粉末状の製品でも、すり下ろし生ニンニクに比べれば、非常に刺激は弱く、また臭い(メルカプタン類の生成)も抑えられているが、カプセル剤,軟カプセル剤,錠剤等、種々の形態とすることにより、より臭気等を抑え、摂食時及び食後共に無臭であり、かつアリシンの作用(例えば、末梢血液循環改善作用等)を発揮させることができる。また、これらの形態に適当な賦形剤(例えば、デキストラン,オリゴ糖,乳糖など)等を加えたものであっても良い。【0034】すなわち、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、粉末のまま摂取すれば、口腔内においてアリシンを勿論発生するが、錠剤或いはカプセル等の形態とした無臭のものを摂取しても、胃液中においてアリシンを安定的に発生する。このことにより、効果的にヘリコバクター・ピロリの除菌を行う。【0035】さらに、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、必要に応じて、生薬成分、ビタミン剤、安定剤、防腐剤、抗酸化剤、甘味剤、着色料、香料、果汁等を配合したものであっても良い。【0036】このようにして得られる本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、水分との接触によりアリシンを発生させ、この結果、ヘリコバクター・ピロリ菌に対する除菌(抗菌)効果を有する。本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、ヘリコバクター・ピロリ菌に対して、25〜100μg/mlの最小阻止濃度(MIC)を示す。従って、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品の服用量としては、通常の場合、0.05〜0.5g程度を一回に摂取すればよい。【0037】ヘリコバクター・ピロリ菌は、強力なウレアーゼ活性を有することで特徴づけられており、発生したアンモニアにより、自分自身を酸から守り、胃壁に増殖する。また、これにより、胃壁の細胞に対して、毒性を示し、胃炎を起こす。本発明の作用機構は、酵素アリイナーゼとアリインとの反応により発生するアリシンが、ヘリコバクター・ピロリ菌のウレアーゼ活性中心に存在するSH基に対して交換反応を起こし、ジスルフィルド結合を形成することにより、ウレアーゼ活性が失活するためと考えられる。【0038】【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により制限されるものではない。【0039】製造例1(ニンニク臭の低減されたニンニク食品の製造)生ニンニクを65℃の温度にて180分間加熱処理した後、粉砕し、搾汁、濾過、さらに遠心分離し、得られた上澄液を噴霧乾燥して得たニンニクエキス末に、酵素アリイナーゼ9.2U/gを添加することにより、アリイナーゼ含有ニンニクエキス末を調製した。このようにして得られたアリイナーゼ含有ニンニクエキス末に、アリイナーゼを胃液中において安定的に作用させることのできる物質として、カキガラ末を0〜100重量%の割合で含有させることにより、各種カキガラ添加量を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品を製造した。【0040】試験例1(人工胃液中でのアリシン発生量に対するカキガラ添加効果の検討)製造例1で得られたニンニク臭の低減されたニンニク食品について、人工胃液中でのアリシン発生量を測定し、人工胃液中でのアリシン発生量に対するカキガラ添加効果を調べた。すなわち、製造例1で得られた各種カキガラ添加量を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品0.5gに、人工胃液10mlを添加して、アリシン発生量をHPLCにて分析した。結果を図1に示す。【0041】図1から、カキガラの添加量に応じて、人工胃液中でのアリシン発生量は増大し、カキガラ添加量20重量%以上でほぼ平衡に達することが分かった。【0042】試験例2(サーモグラフィーを用いた冷水負荷後の皮膚温度上昇度測定)本発明によるニンニク臭の低減されたニンニク食品を錠剤化したものについて、アリシンの特徴である末梢血液循環改善作用をサーモグラフィーにより確認した。すなわち、製造例1で得られたニンニク臭の低減されたニンニク食品(カキガラ含有量20重量%のもの)について、これを常法により錠剤化した(一錠中、ニンニク含有量120mg)。この錠剤4粒を服用して35分後に冷水負荷を行い、その後の皮膚温度上昇を測定した。結果を図2に示す。なお、コントロールとして、アリシンを含まないニンニク末についての結果も併せて図2に示した。図2Aは、足先の皮膚温度上昇度の測定結果を示すグラフであり、図2Bは、手のひらの皮膚温度上昇度の測定結果を示すグラフである。【0043】その結果、手のひら、足先共に、冷水負荷後の皮膚温度上昇は、アリシンを含まないニンニク末(コントロール)に比べて、明らかに早く、末梢血液循環改善作用が認められた。【0044】試験例3(メルカプタン生成率の測定)ニンニクを摂取した後の不快臭の原因は、悪臭物質であるメルカプタンが生成してくるためであると言われている。そこで、本発明によるニンニク臭の低減されたニンニク食品について、生ニンニクとメルカプタンの生成について比較を行った。すなわち、製造例1で得られたニンニク臭の低減されたニンニク食品(カキガラ含有量20重量%のもの)0.3gを密栓容器に取り、水1mlを添加して1時間保温した後、ヘッドスペースのガスクロマトグラフィー分析を、凍結乾燥生ニンニクを対照として行った。結果を第1表に示す。【0045】第1表によれば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタンのいずれをも、本発明によるニンニク臭の低減されたニンニク食品は、凍結乾燥生ニンニクに比べて抑制し、メルカプタン合計では8割程度抑え得ることが分かる。【0046】【表1】【0047】試験例4(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品を錠剤化したものについての長期間摂取による、呼気ガスクロマトグラフィー分析)本発明によるニンニク臭の低減されたニンニク食品を錠剤化したものについて、長期間摂取による、呼気ガスクロマトグラフィー分析を行った。すなわち、製造例1で得られたニンニク臭の低減されたニンニク食品(カキガラ含有量20重量%のもの)について、これを常法により錠剤化した(一錠中、ニンニク含有量120mg)。この錠剤5粒を毎日服用して5週間後に、呼気を採取してメルカプタン分析を行った。服用した3人について、いずれの者からもメルカプタンは検出されなかった。なお、検出限界は、メチルメルカプタン0.1ppb、エチルメルカプタンとプロピルメルカプタンがそれぞれ0.1ppmであった。【0048】製造例2(ニンニク臭の低減されたニンニク食品の製造)生ニンニクを湯浴中で65℃の温度にて180分間加熱処理した後、そのエキスを搾り取り、分画分子量5万ダルトンの排除限界を持つセラミックフィルターで膜濾過を行った。得られた濾液をスプレードライ法にて乾燥させ、その粉末について酵素アリイナーゼ9.2U/gを添加して、アリイナーゼ含有ニンニクエキス末を調製した。このようにして得られたアリイナーゼ含有ニンニクエキス末に、アリイナーゼを胃液中において安定的に作用させることのできる物質として、カキガラ末を10重量%の割合で添加して、カキガラ末10重量%含有無臭ニンニク食品を製造した。【0049】試験例5製造例2で得られたカキガラ末10重量%を含有するニンニク臭の低減されたニンニク食品について、人工胃液中でのアリシン発生量を調べ、凍結乾燥生ニンニクと比較した。すなわち、製造例2で得られたカキガラ末10重量%を含有するニンニク臭の低減されたニンニク食品(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品)と、凍結乾燥生ニンニクの各々0.25gに、蒸留水及び人工胃液5mlを別々に添加して溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより、それぞれのアリシン量を測定した。結果を第2表に示す。【0050】【表2】【0051】第2表によれば、凍結乾燥生ニンニクについては、人工胃液中でのアリシン量は蒸留水に溶解させた場合に比べて、4.3%であったが、製造例2で得られたカキガラ末10重量%を含有するニンニク臭の低減されたニンニク食品(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品)においては、蒸留水中と比べて大差はなかった。なお、この場合、蒸留水中でのアリシン含量は、両者共に15mg/gであった。【0052】試験例6(ウレアーゼ活性阻害測定試験)製造例2により製造したカキガラ末10重量%を含有するニンニク臭の低減されたニンニク食品(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品)の存在下、尿素を基質として、0.1Mリン酸緩衝液pH7.0溶液中でウレアーゼ活性阻害の測定を行った。対照として、アリシンを含まないニンニクエキス末を用いて同様にウレアーゼ活性阻害の測定を行った。これらの結果を図3に示す。【0053】図3によれば、製造例2により製造したカキガラ末10重量%を含有するニンニク臭の低減されたニンニク食品(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品)によるウレアーゼ活性阻害のIC50は、0.03%であった。一方、アリシンを含まないニンニクエキス末(対照)では、ウレアーゼ活性阻害作用は全くなかった。【0054】また、同様にアリイン及び活性型ビタミンB1 誘導体であるチアミンアリルジスルフィド,チアミンテトラフルフリルジスルフィドについても、ウレアーゼ活性阻害作用を調べてみたが、いずれもウレアーゼ活性阻害作用はなかった。アリインからアリシンへの生体内での変換はないため、アリシンとして摂取しなければ、ウレアーゼ活性阻害作用は得られないことが理解される。【0055】試験例7(ウレアーゼ活性阻害の作用機構の検討)試験例5の反応系に、SH基保護剤であるグルタチオン(400μM)、或いはβ−メルカプトエタノール(100μM)を予め保温して添加し、ウレアーゼ活性阻害作用の作用機構を検討した。なお、対照として、これらを添加しなかったもの〔製造例2で得られたカキガラ末10重量%を含有するニンニク臭の低減されたニンニク食品(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品)〕についてのウレアーゼ活性阻害作用を示した。これらの結果を図4に示す。【0056】図4によれば、グルタチオン(図中、GSHと略記)、或いはβ−メルカプトエタノール(図中、β−MEと略記)添加時には、ウレアーゼ活性阻害作用が大きく抑制されたことが分かった。従って、アリシンのSH基反応性によるウレアーゼ酵素内ジスルフィド結合生成が、ウレアーゼ活性阻害の機構ではないかと考えられた。【0057】試験例8(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品のヘリコバクター・ピロリ菌へのMICの検討)ヘリコバクター・ピロリ菌として、異なる8種類の菌株を用いて、製造例2により製造したカキガラ末10重量%含有無臭ニンニク食品(本発明の無臭ニンニク食品)のヘリコバクター・ピロリ菌への最小阻止濃度(MIC)を調べた。なお、菌濃度106 及び107 について、各々のMICを検討した。また、併せてヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療に一般に使用されている4種類の抗生物質についても、同様にMICを調べた。これらの結果を第3表に示す。【0058】【表3】【0059】第3表から明らかなように、製造例2により製造したカキガラ末10重量%を含有するニンニク臭の低減されたニンニク食品(本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品)のアリシン含量は約15mg/gであるため、アリシン含量に換算したMICは、ヘリコバクター・ピロリの異なる8種類の菌株に対して、25〜100μg/mlであった。これは、一般に使用されている抗生物質のMICと比べると、やや低いものの、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品自体では、1.67〜6.7mg/mlで効果があり、充分に作用は強いものと認められる。【0060】【発明の効果】本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、粉末状のものであっても、従来のニンニク健康食品と全く異なり、ニンニクの有効成分であるアリシンを含有し、そのアリシンの効果が発揮される形態でありながら、ニンニク特有の不快臭を殆どなくしており、錠剤,カプセル剤等の形態とした場合には、より臭気等が抑えられており、ほぼ無臭のニンニク食品となる。【0061】すなわち、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、胃の中においてアリシンを発生させることが可能でありながらも、摂食時及び食後共にニンニク特有の不快臭を殆どなくしており、特に錠剤,カプセル剤等の形態とした場合には、ほぼ無臭のものとなっている。従って、ニンニクの良さは認めるが、その臭いが好きではないという人であっても、容易に摂取し得るものとなっている。さらに、ニンニク特有の不快臭がないため、その臭いに基づく、いわゆる食わず嫌いを防止することができる。【0062】また、本発明のニンニク臭の低減されたニンニク食品は、食品として摂取が可能でありながら、ヘリコバクター・ピロリ菌に対して、非常に強い除菌(抗菌)作用を持っており、しかも従来のヘリコバクター・ピロリ菌除菌剤として用いられている薬剤と異なり、長期に亘って服用しても副作用がなく、安全に摂取することができるという特質がある。【0063】しかも、この場合、ニンニクの臭いが好みでない場合であっても、殆どニンニク臭がなく、無臭であるため、摂取を控えさせるおそれがない。従って、消化性抗潰瘍薬(消化性潰瘍治療剤)或いは抗ガン剤としての利用も期待される。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、試験例1における人工胃液中でのアリシン発生量に対するカキガラ添加効果を示すグラフである。【図2】図2は、試験例2におけるサーモグラフィーを用いた冷水負荷後の皮膚温度上昇度の測定結果を示すグラフであって、図2Aは、足先の皮膚温度上昇度の測定結果を示すグラフであり、図2Bは、手のひらの皮膚温度上昇度の測定結果を示すグラフである。【図3】図3は、試験例6におけるウレアーゼ活性阻害測定試験の結果を示すグラフである。【図4】図4は、試験例7におけるウレアーゼ活性阻害の作用機構の検討結果を示すグラフである。 酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末と酵素アリイナーゼとからなるアリイナーゼ含有ニンニクエキス末と、カキガラ末とを含有し、胃の中においてアリシンを発生させることができ、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobactor pylori)に対する抗菌作用を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品。 酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末が、生ニンニクを加熱処理して得られたニンニクエキス末である請求項1記載のニンニク臭の低減されたニンニク食品。 酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末に酵素アリイナーゼを添加してアリイナーゼ含有ニンニクエキス末を製造し、このアリイナーゼ含有ニンニクエキス末に、カキガラ末を含有させることを特徴とする、酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末と酵素アリイナーゼとからなるアリイナーゼ含有ニンニクエキス末と、カキガラ末とを含有し、胃の中においてアリシンを発生させることができ、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobactor pylori)に対する抗菌作用を有するニンニク臭の低減されたニンニク食品の製造方法。 酵素アリイナーゼの失活されたニンニクエキス末が、生ニンニクを酵素アリイナーゼが失活する温度で加熱処理して得られたニンニクエキス末である請求項3記載のニンニク臭の低減されたニンニク食品の製造方法。