生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_パラジクロロベンゼンの分離方法
出願番号:1996186686
年次:2006
IPC分類:C07C 25/08,C07C 17/389


特許情報キャッシュ

横田 善一 若松 周平 志村 光則 JP 3816584 特許公報(B2) 20060616 1996186686 19960627 パラジクロロベンゼンの分離方法 千代田化工建設株式会社 000003285 成瀬 勝夫 100082739 中村 智廣 100087343 佐野 英一 100088203 青谷 一雄 100108925 鳥野 正司 100110733 横田 善一 若松 周平 志村 光則 20060830 C07C 25/08 20060101AFI20060810BHJP C07C 17/389 20060101ALI20060810BHJP JPC07C25/08C07C17/389 C07C 25/08 C07C 17/389 特開昭53−105434(JP,A) 米国特許第4571441(US,A) 特開平02−049740(JP,A) 特開昭61−268636(JP,A) 特開昭58−150524(JP,A) 特開昭58−131924(JP,A) 特開平07−069946(JP,A) 2 1998017504 19980120 10 20030314 滝口 尚良 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はジクロロベンゼン異性体混合物を吸着分離処理して、その異性体混合物中に含まれるパラジクロロベンゼンを分離する方法に関する。【0002】【従来の技術】パラジクロロベンゼンは、ポリフェニレンサルファイドやアラミド繊維の原料として使用される他、農薬や染料の中間体、衣料用殺虫剤、防臭剤等として使用されている重要な化合物である。パラジクロロベンゼンは、ベンゼン又はモノクロロベンゼンを塩素化することによって得られるが、この場合の塩素化によって得られるジクロロベンゼンは、パラジクロロベンゼンと他のジクロロベンゼンを含む異性体混合物となっている。従って、高純度パラジクロロベンゼンを得るには、その異性体混合物からパラジクロロベンゼンを高純度で分離することが必要になる。このようなジクロロベンゼン異性体混合物からパラジクロロベンゼンを分離するために、その異性体混合物を吸着分離処理する方法は知られている。特開平7−69946号公報には、吸着剤としてMg−ZSM5型ゼオライトを用いるとともに、脱着剤として、1,2,4−トリクロロベンゼンとP−クロロトルエンとの混合物や、3,4−ジクロロトルエンとクロロベンゼンとの混合物等を用いて、ジクロロベンゼン異性体混合物を吸着分離処理する方法が示されている。しかしながら、この方法の場合、使用する吸着剤がZSM5型ゼオライトであるため、吸着剤コストが高くつくという問題がある上、使用する脱着剤もポリクロロベンゼンを主体とする混合物であるため、コスト高になるという問題もある。一方、特開昭53−105434号公報には、Y型ゼオライトを吸着剤として用いるとともに、脱着剤としてノルマルオクタンを用いる方法が示されている。しかし、この方法の場合、吸着処理時に被処理原料であるジクロロベンゼンに混合して用いるノルマルオクタンの使用割合がジクロロベンゼン100重量部に対して約500重量部程度と多量用いることから、工業的プロセスとしては不満足のものである。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明はジクロロベンゼン異性体からパラジクロロベンゼンを吸着分離法により効率よく分離する工業的に有利な方法を提供することをその課題とする。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、パラジクロロベンゼンとその少なくとも1種の異性体とを含むジクロロベンゼン異性体混合物を吸着分離処理してパラジクロロベンゼンを分離する方法において、該異性体混合物を、低級アルキル基を2個有するジアルキルベンゼンからなる脱着剤の存在下、バリウム含有Y型ゼオライトからなる吸着剤に接触させ、該混合物中のパラジクロロベンゼンを該吸着剤に選択的に吸着させることを特徴とするパラジクロロベンゼンの分離方法が提供される。【0005】【発明の実施の形態】本発明において被処理原料として用いるジクロロベンゼン異性体混合物は、パラジクロロベンゼンを含有するものである。このような混合物は、オルトジクロロベンゼン(o−ジクロロベンゼン)及びメタジクロロベンゼン(m−ジクロロベンゼン)の中から選ばれる少なくとも1種と、パラジクロロベンゼン(p−ジクロロベンゼン)とからなる混合物が包含される。この原料混合物において、パラジクロロベンゼンの含有率は、通常、30重量%以上、好ましくは40〜90重量%である。【0006】本発明において用いる吸着剤は、バリウムを含有するY型ゼオライトである。このゼオライトにおいて、そのシリカ/アルミナモル比は5以上、好ましくは5.0〜6.0の範囲である。シリカ/アルミナモル比がこの範囲より小さくなると、吸着剤の単位重量当りの被吸着物量が低下するので好ましくない。また、本発明で用いる吸着剤は、そのBaイオン交換率が30%以上、好ましくは60%以上であることが好ましい。吸着剤の粒径は、10〜150メッシュ、好ましくは20〜80メッシュであり、吸着床の形式に応じて適当に選定すればよい。また、吸着剤はその水分含有量を調節して、その吸着選択率の向上を図ることも可能である。吸着剤に存在する水は、Baイオン又は塩基交換位に部分的に含有させるか、あるいは吸着剤の空所内に含有される。1000℃での灼熱下における重量損失によって測定される水分含有量が、吸着剤重量基準で0〜10wt%の範囲であることが望ましい。水分の調節は、原料混合物に適量の水を添加することによって行うことができる。【0007】本発明で用いる脱着剤は、低級アルキル基を2個有するジアルキルベンゼンである。低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、好ましくはメチル基を示すことができる。また、吸着分離処理後における脱着剤とジクロロベンゼンとの混合物からのジクロロベンゼンの分離を蒸留により行う場合、脱着剤とジクロロベンゼンとの沸点差は、10℃以上、好ましくは20℃以上あることが望ましい。前記脱着剤の使用割合は特に制約されないが、擬似移動床方式で分離を行う場合、原料混合物1重量部に対して、通常、1〜5重量部、好ましくは1〜3重量部の割合で用いられる。【0008】本発明では、前記脱着剤を、前記特定のゼオライト吸着剤と組合せて用いることにより、吸着剤の単位重量当りの被吸着物(p−ジクロロベンゼン)の量を向上させ、装置効率の高いp−ジクロロベンゼンの吸着分離プロセスを得ることができる。【0009】本発明の吸着分離方法は、吸着工程と脱着工程を含むものであるが、この吸脱着工程における温度は50〜300℃、好ましくは100〜200℃であり、その圧力は系内が液相状態に保持されるに十分な圧力であればよい。本発明の吸着分離方法は、クロマトグラフィー法により実施され、固定床、流動床、移動床など、どのような方式でも実施可能であるが、工業的には擬似移動床方式で実施するのが好ましい。擬似移動床方式による吸着分離は、既に確立された技術である。【0010】擬似移動床方式による吸着分離についてさらに詳述すると、この吸着分離技術は、基本的操作として次に示す吸着操作、濃縮操作、脱着操作及び脱着剤回収操作を連続的に循環して実施される。(1) 吸着操作:被処理原料がゼオライト吸着剤と接触し、強吸着成分としての目的吸着成分が選択的に吸着され、弱吸着成分である他の成分が、ラフィネート流れとして脱着剤とともに回収される。(2) 濃縮操作:吸着目的成分を選択的に吸着した吸着剤は後で述べるエクストラクトの一部と接触させられ、吸着剤上に残存している弱吸着成分が追い出され目的成分が濃縮される。(3) 脱着操作:濃縮された吸着目的成分を含む吸着剤は、脱着剤と接触させられ吸着目的成分が吸着剤から追い出され、脱着剤を伴なってエクストラクト流れとして回収される。(4) 脱着剤回収操作:実質的に脱着剤のみを吸着した吸着剤は、ラフィネート流れの一部と接触し、吸着剤に含まれる脱着剤の一部が脱着剤回収流れとして回収される。【0011】図1に擬似移動床による吸着分離操作の模式図を示す。この図において、1〜16はゼオライト吸着剤の入った吸着室であり、相互に連結されている。17は脱着剤供給ライン、18はエクストラクト抜出ライン、19は原料供給ライン、20はラフィネート抜出ライン、21はリサイクルラインを示す。図1に示した吸着室1〜16と各ライン17〜20の配置状態では、吸着室1〜3で脱着操作、吸着室4〜8で濃縮操作、吸着室9〜13で吸着操作、吸着室14〜16で脱着剤回収操作がそれぞれ行われている。このような擬似移動床では、一定時間間隔ごとに、バルブ操作により、各供給及び抜出ラインを液流れ方向に吸着室1室分だけそれぞれ移動させる。従って、次の吸着室の配置状態では、吸着室2〜4で脱着操作、吸着室5〜9で濃縮操作、吸着室10〜14で吸着操作、吸着室15、16、1で脱着剤回収操作がそれぞれ行われるようになる。このような操作を順次行うことによって、擬似移動床による吸着分離処理が達成される。なお、図面においては、吸着室は16個に特定されているが、この吸着室の数は限定されるものではないことに留意すべきである。【0012】図2に本発明の吸着分離方法を実施する場合のフロシートの1例を示す。図2において、Aは吸着分離塔、B及びCは蒸留塔である。原料のジクロロベンゼン異性体混合物はライン25から吸着分離塔Aに供給され、また、循環脱着剤はライン32から吸着分離塔Aに導入される。この吸着分離塔Aでは、パラジクロロベンゼンが選択的吸着分離され、このパラジクロロベンゼンを主成分として含むエクストラクトは、ライン26を通って抜出される。一方、パラジクロロベンゼン以外のジクロロベンゼンを含むラフィネートはライン27を通って抜出される。ライン27を通って抜出されたラフィネートは蒸留塔Cに導入され、ここで蒸留処理を受け、そのラフィネート中に含まれる脱着剤は、蒸留塔の塔頂からライン31を通って抜出され、脱着剤の分離された後のラフィネートは、蒸留塔の塔底物としてライン30を通って抜出される。このラフィネートは、パラジクロロベンゼン以外のジクロロベンゼンを主成分として含むものである。【0013】一方、吸着分離塔Aからライン26を通って抜出されたエクストラクトは蒸留塔Bに導入され、ここで蒸留処理を受け、エクストラクト中に含まれる脱着剤が蒸留塔の塔頂からライン29を通って抜出される。蒸留塔Bの塔底からは、ライン28を通ってパラジクロロベンゼンが回収される。蒸留塔B及び蒸留塔Cの塔頂からそれぞれライン29及び31を通って抜出された脱着剤は、ライン32を通って吸着分離塔Aに循環される。【0014】【実施例】次に本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。なお、以下において示される相対分離係数β値は、P−ジクロロベンゼンを含む原料混合物をゼオライト吸着剤を用いて吸着処理した時に、P−ジクロロベンゼンを基準とした混合成分の相対的な吸着力の強さの指標を与えるもので、以下に示す破過応答試験方法により求められるものである。この場合の被過応答試験方法は、分離対象成分の吸・脱着に関する動的因子についての情報が得られ、連続吸着分離への適用性を評価する方法として好適のものである。【0015】(破過応答試験方法)吸着剤30ccを、内径9.8mm、長さ400mmのカラムに充填して形成した吸着カラムに、温度180℃、圧力20kg/cm2Gの条件下で、基準物質としての実質的に吸着剤に吸着されない1,3,5−トリイソプロピルベンゼン(TIPB)2重量%と、脱着剤58重量%とパラジクロロベンゼンを含む原料混合物40重量%からなる混合油をあらかじめ6.3cc/分の流速で約30分間通油した後、混合油の通油を止め、脱着剤を通油する。次に、脱着剤の通油開始後、カラムから流出する油中のTIPB濃度、パラジクロロベンゼン濃度及び他のジクロロベンゼン異性体濃度を経時的に測定する。図3にカラム流出油中の各成分濃度の経時変化についての説明図を示す。この図において、横軸は脱着剤の通油時間を示し、縦軸は各成分の規格化濃度を示す。この場合、規格化濃度は、流出油中の各成分nの濃度Cn(T)と原料混合油中の各成分の濃度Cn(0)との比Cn(T)/Cn(0)を示す。図3において、Tt(0.5)は脱着剤の通油開始後、TIPBの規格化濃度〔Ct(T)/Ct(0)〕が0.5になるまでの脱着時間、Ti(0.5)は、脱着剤の通油開始後、パラジクロロベンゼン以外のジクロロベンゼン異性体の規格化濃度〔Ci(T)/Ci(0)〕が0.5になるまでの脱着時間、Tp(0.5)は、脱着剤の通油開始後、パラジクロロベンゼンの規格化濃度〔Cp(T)/Cp(0)〕が0.5になるまでの脱着時間を示す。本明細書における相対分離係数βは、次の式で定義される。β=A/B=〔Tp(0.5)−Tt(0.5)〕/〔Ti(0.5)−Tt(0.5)〕前記式において、Aはパラジクロロベンゼンの平衡定数、Bはジクロロベンゼン異性体の平衡定数を示す。前記のようにして求められる相対分離係数βは、その値が小さくなる程、パラジクロロベンゼンと他のジクロロベンゼン異性体との分離が効率的に行なわれることとなる。このβ値は0.6以下であることが好ましい。また、脱着剤としては、図3において、規格化濃度がゼロになるまでの脱着時間が短くなる程、高純度のパラジクロロベンゼンを得るための脱着処理時間が短くなり、高純度パラジクロロベンゼンを効率よく得ることができる。前記した破過応答試験方法により求められる相対分離係数βは、パラジクロロベンゼンとその異性体の吸着速度と脱着速度の因子を含むため、パラジクロロベンゼンの分離を工業的規模で行なう場合のプロゼス効率の指標を与えるもので、β値が小さい程、得られるプロセスは吸着時間及び脱着時間の短縮された効率のよいものとなる。【0016】【実施例】次に本発明を実施例によりさらに詳述する。【0017】実施例1吸着剤としてバリウムを含有するY型ゼオライトを用い、原料混合物としてパラジクロロベンゼン:30wt%、メタジクロロベンゼン:10wt%及びオルソジクロロベンゼン:60wt%からなる混合油を用い、脱着剤としてp−キシレンを用いて前記破過応答試験を行なった。この試験により求められた規格化濃度と、規格化脱着時間との関係を図4に示す。前記試験データによりβ値を求めると、メタジクロロベンゼン:0.44及びオルソジクロロベンゼン:0.44の結果が得られた。【0018】実施例2実施例1において、脱着剤としてm−キシレンを用いた以外は実施例1と同様にして試験を行なった。この試験により求められた規格化濃度と、規格化脱着時間との関係を図5に示す。前記試験データによりβ値を求めると、メタジクロロベンゼン:0.53及びオルソジクロロベンゼン:0.47の結果が得られた。【0019】比較例1実施例1において、吸着剤としてバリウムを含有するX型ゼオライトを用いた以外は実施例1と同様にして試験を行なった。【0020】前記試験データにより求めたβ値を表1に示した。【表1】【0021】比較例2実施例1において、吸着剤として各種カチオンを含有するY型ゼオライトを用いた以外は実施例1と同様にして試験を行なった。前記試験データにより求めたβ値を表2に示した。【表2】【0022】比較例3実施例1において、脱着剤としてトルエンを用いた以外は実施例1と同様にして試験を行なった。前記試験データにより求めたβ値を表3に示した。【表3】【0023】【発明の効果】本発明によれば、特定の吸着剤と特定の脱着剤との組合せを用いたことにより、ジクロロベンゼン異性体混合物からそれに含まれるパラジクロロベンゼンを高純度でかつ効率よく分離することができる。【図面の簡単な説明】【図1】疑似移動度による吸着分離操作の模式図である。【図2】本発明によってジクロロベンゼン異性体混合物から高純度パラジクロロベンゼンを取得するフローシートの一例である。【図3】規格化濃度と通油時間との関係を示す図である。【図4】脱着剤としてp−キシレンを用いた場合の規格化濃度と規格化脱着時間との関係を示す図である。【図5】脱着剤としてm−キシレンを用いた場合の規格化脱着時間との関係を示す図である。 パラジクロロベンゼンとその少なくとも1種の異性体とを含むジクロロベンゼン異性体混合物を吸着分離処理してパラジクロロベンゼンを分離する方法において、該異性体混合物を、低級アルキル基を2個有するジアルキルベンゼンからなる脱着剤の存在下、バリウム含有Y型ゼオライトからなる吸着剤に接触させ、該混合物中のパラジクロロベンゼンを該吸着剤に選択的に吸着させることを特徴とするパラジクロロベンゼンの分離方法。 該吸着分離処理を擬似移動床方式で行う請求項1の方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る