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タイトル:特許公報(B2)_ラクチドの精製法および重合法
出願番号:1996183709
年次:2007
IPC分類:C07D 319/12,C07B 63/00,C08G 63/08


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大垣内 誠 JP 3988195 特許公報(B2) 20070727 1996183709 19960712 ラクチドの精製法および重合法 トヨタ自動車株式会社 000003207 平木 祐輔 100091096 大垣内 誠 20071010 C07D 319/12 20060101AFI20070920BHJP C07B 63/00 20060101ALI20070920BHJP C08G 63/08 20060101ALI20070920BHJP JPC07D319/12C07B63/00 BC07B63/00 EC08G63/08 C07D 319/12 REGISTRY(STN) CAplus(STN) 特開平07−165753(JP,A) 特開平07−118259(JP,A) 特開平07−206851(JP,A) 特開平03−017077(JP,A) 特開昭63−101378(JP,A) 4 1998025288 19980127 5 20030327 大野 晃 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はラクチドの精製法およびその重合法に関するものである。ラクチドは特にポリ乳酸の製造原料として有用である。【0002】【従来の技術】乳酸の二分子環状エステルであるラクチドには、L−乳酸二分子からなるL−ラクチド分子、D−乳酸二分子からなるD−ラクチド分子、L−乳酸とD−乳酸からなるメソ−ラクチド分子が存在する。ラクチドは、近年、生分解性プラスチックとして注目されているポリ乳酸の中間体として重要な化合物である。しかしながら、重合度の高いポリ乳酸を得るには純度の高いラクチドが必要であり、特に、重合の阻害物質となる水、遊離酸等の含有量はきわめて低いものでなくてはならない。【0003】ラクチドの精製法としては溶剤を用いた再結晶法が知られている。たとえば、特開63−101378号には炭素数1〜6個のアルコール、好ましくはイソプロピルアルコールからの再結晶、あるいは溶液から非溶媒を用いて沈殿させることが記載されている。また、特開平 5−50666 号、特開平 7−165753号には、水、アセトンを用いてラクチドを析出させる方法が記載れている。しかしながら、このような方法で精製されたラクチドを用いて重合すると、水分含有率が多い等の問題があり、得られるポリ乳酸の分子量は1000〜5000程度であり、分子量10万以上の高分子量のポリ乳酸を得ることは困難である。【0004】【発明が解決しようとする課題】粗ラクチドの原料として、L−体の光学活性乳酸を用いた場合には、通常、反応を進めるのに充分な高い反応温度と、滞留時間をとらなければならないために乳酸のラセミ化が起こり、L−ラクチド以外にもメソ−ラクチドと、少量のD−ラクチドが生成する。粗ラクチドの原料として、DL−乳酸を用いた場合には、D−ラクチドとL−ラクチドの等量混合物であるDL−ラクチドのほかにメソ−ラクチドが生成することはいうまでもない。【0005】一方、光学純度の高い高分子量のポリ乳酸を合成するためには、その原料であるラクチドを構成する乳酸の光学純度、すなわちラクチドの光学純度が高いことが要求される。また、DL−ポリ乳酸を合成する場合には、原料として好ましいのはL−ラクチドとD−ラクチドの等量混合物であるDL−ラクチドであるとされている。組成的にはメソ−ラクチドでも何ら問題はないが、メソ−ラクチドは吸湿性が高いため、原料中の水分含有率が高くなってしまい、重合を行う際の原料としては不向きである。【0006】以上の点から、ラクチドの製造においては、メソ−ラクチドを含まず、さらに高純度で水分含有率の低いラクチドを得ることが望まれている。しかしながら、粗ラクチドから水と接触させてメソ−ラクチドを分離しただけでは、L−ラクチドおよび/または、D−ラクチド結晶中に水分が残留し、水分含有率の低いラクチドを得ることは非常に困難である。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、以下の方法を提供するものである。【0008】(1)L−ラクチドおよび/またはD−ラクチド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物と水とを接触させることにより、L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドとメソ−ラクチドを分離し、さらに、水溶性の溶媒で洗浄した後、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶媒と相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析することを特徴とするラクチドの精製法を提供するものである。また、本発明は前記の精製法により得られたラクチドを重合することを特徴とするラクチドの重合法を提供するものである。【0009】(2)L−ラクチドおよび/またはD−ラクチド、並びにメソ−ラクチドを含み少なくとも1部が溶融状態にある混合物と水とを接触させることにより、L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドとメソ−ラクチドを分離すると同時に、L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドを結晶として析出させ、さらに、水溶性の溶媒で洗浄した後、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶媒と相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析することを特徴とするラクチドの精製法を提供するものである。また、本発明は前記の精製法により得られたラクチドを重合することを特徴とするラクチドの重合法を提供するものである。【0010】(3)L−ラクチドおよび/またはD−ラクチド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物が、乳酸、水、その他の不純物を含むことを特徴とする(1)〜(2)のいずれか1項に記載のラクチドの精製法を提供するものである。また、本発明は前記の精製法により得られたラクチドを重合することを特徴とするラクチドの重合法を提供するものである。【0011】以下に本発明の方法を詳細に説明する。本発明の方法は従来公知の方法によって得られたラクチドに適用できる。得られた粗ラクチドを約90℃に保持し、溶融状態にしておく。この溶融状態にある粗ラクチドにそれとほぼ等重量の水を加え、よく混合する。ラクチドが加水分解するのを防ぐために直ちに30℃以下に冷却すると、目的物質であるラクチドは析出し、スラリー状になる。その後、1時間前後攪拌した後、濾過、あるいは遠心分離等で固相と液相を分離して、ラクチドを得る。この後水溶性の溶媒(有機溶媒)で洗浄する。このような溶媒としては、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチルなどがあげられるが、収率、価格等の面から、イソプロピルアルコールが好ましい。この時点でのラクチドの水分含有率は最低でも100ppm程度で、このまま重合を行っても、充分な分子量は得られない。【0012】このため、この後さらに、前記有機溶媒と相溶性があり、かつ疎水性の有機溶媒で再結晶する。このような有機溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、等があげられるが、特にトルエンが好ましい。この場合の再結晶は以下の要領で行う。まず、ラクチドに対して1〜4倍(重量比)以上の溶媒を用いて、60〜70℃程度まで昇温して結晶をすべて溶解させた後、30℃以下まで冷却して結晶を得る。ついで、得られたラクチドの結晶を前出の溶媒(トルエン等)で洗浄する。洗浄は等量以上の溶媒を用い、20〜40℃にて行う。その後、減圧下にてラクチドを乾燥し、純度の高いラクチドを得る。この時点でのラクチドの水分含有率は約10ppm で、かつ、メソ−ラクチドの組成比率(重量)は検出限界以下で、充分重合可能である。なお、ラクチドの水分含有率はカールフィッシャー法(電量法)で測定した。【0013】水で精製した後すぐにトルエンで再晶析しない理由は以下のとおりである。つまり、水とトルエンは相溶性がないので、すぐにトルエンで再晶析すると十分に水が除去できない。そこで、その前にアルコール等で洗浄すれば水分含有率も減り、トルエンとも相溶性があるため、再晶析できるようになる。アルコール等で洗浄しただけではまだ不十分で、さらに、トルエンで再晶析する必要がある。すなわち、トルエンで再晶析しないと、ラクチド中に残留したアルコール等が重合を阻害したり、また他の溶媒でも水溶性であるため、溶媒中の水分がラクチド中にも残るため、結局はラクチド中の水分含有率を高めることになる。このため、トルエン等の溶媒で再晶析する必要がある。【0014】本発明の精製法にて得られたラクチドは従来と同様にして重合することができる。例えば混練機など攪拌および送り機能を有する装置を用い、攪拌、混合、移動、脱気を行いつつ反応させた後、連続的にポリマーを取り出す。重合触媒としては錫末、ハロゲン化錫、または炭素数20以下のカルボン酸から誘導された有機錫化合物、あるいは亜鉛末、ハロゲン化亜鉛または炭素数20以下のカルボン酸から誘導された有機亜鉛化合物が用いられ、特にオクチル酸錫が好ましい。触媒の使用量は10ppm 〜10000ppm程度であり、温度130 〜230 ℃、好ましは160 〜200 ℃にて混練機に連続的に供給しながら重合を行う。【0015】このようにして得られたポリ乳酸は分子量が10万以上ときわめて分子量が高い。すなわち、従来の精製法で得られたラクチド中には微量の水分が存在し、これが重合を阻害していると考えられるが、本発明にて得られたラクチドは水分含有率が10ppm と非常に低く、重合が容易に進むと考えられる。【0016】【実施例】<実施例>光学純度99.5%のL−乳酸を原料として得られた粗ラクチド5kgを溶融状態しておき、約25℃の水5kgと攪拌しつつ混合し、直ちに氷浴につけて冷却し、氷浴中で約1時間攪拌を続けた。その後、濾過することにより析出したL−ラクチドを分離した後、5kgのイソプロピルアルコールで洗浄した。【0017】このようにして得られたラクチドをさらに精製した。すなわち、トルエン約5kgを加え、70℃まで加熱してラクチドを完全に溶解した。ついで、このトルエン溶液を30℃まで冷却し、結晶を析出させ、濾過した。さらに、約5kgのトルエンで洗浄した。得られたラクチドの結晶を減圧下にて乾燥したところ、収量は約3kgであった。精製ラクチド中のメソ−ラクチドは検出限界以下で、水分含有率は8.7ppmであった。【0018】得られたラクチドに、オクチル酸錫を0.24%加え、190 ℃で二軸混練押出機で連続的に重合したところ、重量平均分子量約15万のポリ乳酸が得られた。【0019】<比較例>光学純度99.5%のL−乳酸を原料として得られた粗ラクチド5kgを溶融状態しておき、約25℃の水5kgと攪拌しつつ混合し、直ちに氷浴につけて冷却し、氷浴中で約1時間攪拌を続けた。その後、濾過することにより析出したL−ラクチドを分離した。得られたラクチドの結晶を減圧下にて乾燥したところ、収量は約4kgであった。【0020】このようにして得られたラクチドをさらに精製した。すなわち、アセトン約4kgを加え、50℃まで加熱してラクチドを完全に溶解した。ついで、このトルエン溶液を20℃まで冷却し、結晶を析出させ、濾過した。得られたラクチドの結晶を減圧下にて乾燥したところ、収量は約2kgであった。精製ラクチド中のメソ−ラクチドは検出限界以下だったが、水分含有率は300ppmであった。【0021】得られたラクチドに、オクチル酸錫を0.24%加え、190 ℃で二軸混練押出機で連続的に重合したところ、重合はほとんど進まなかった。【0022】【発明の効果】本発明の方法で得られたラクチドは純度が高い上、水分含有率も低いため、重合が進みやすい。このため、分子量の非常に大きなポリ乳酸が容易に得られる。 L−ラクチドおよび/またはD−ラクチド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物と水とを接触させることにより、L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドとメソ−ラクチドを分離し、さらに、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコールおよび酢酸エチルから選ばれる少なくとも1種の水溶性の溶媒で洗浄した後、ベンゼン、トルエンおよびキシレンから選ばれる少なくとも1種の、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶媒と相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析し、減圧下で乾燥することを特徴とするラクチドの精製法。 L−ラクチドおよび/またはD−ラクチド、並びにメソ−ラクチドを含み少なくとも1部が溶融状態にある混合物と水とを接触させることにより、L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドとメソ−ラクチドを分離すると同時に、L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドを結晶として析出させ、さらに、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコールおよび酢酸エチルから選ばれる少なくとも1種の水溶性の溶媒で洗浄した後、ベンゼン、トルエンおよびキシレンから選ばれる少なくとも1種の、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶媒と相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析し、減圧下で乾燥することを特徴とするラクチドの精製法。 L−ラクチドおよび/またはD−ラクチド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物が、乳酸、水を含むことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のラクチドの精製法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載された方法で得られたラクチドを重合することを特徴するラクチドの重合法。


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