生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_プラスミドDNAの抽出精製方法
出願番号:1996149127
年次:2007
IPC分類:C12N 15/09,C07H 1/06,C07H 21/04


特許情報キャッシュ

石田 由和 池田 勝徳 上村 秀喜 川上 文清 川村 良久 JP 3940935 特許公報(B2) 20070413 1996149127 19960611 プラスミドDNAの抽出精製方法 東洋紡績株式会社 000003160 石田 由和 池田 勝徳 上村 秀喜 川上 文清 川村 良久 20070704 C12N 15/09 20060101AFI20070614BHJP C07H 1/06 20060101ALN20070614BHJP C07H 21/04 20060101ALN20070614BHJP JPC12N15/00 AC07H1/06C07H21/04 B C12N 15/00-15/90 特開平02−289596(JP,A) 特開平03−010686(JP,A) 特表平04−501956(JP,A) 特開平07−059572(JP,A) 特開昭60−001564(JP,A) 特表平02−501753(JP,A) 8 1997327290 19971222 9 20030326 光本 美奈子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、プラスミドDNAを保持する微生物または細胞から、核酸結合性固相担体を用いてプラスミドDNAを簡便かつ純度よく抽出する方法ならびに該方法に用いるためのプラスミドDNA抽出精製試薬キットに関する。該試薬キットは自動核酸抽出装置にも応用しうる。【0002】【従来の技術】核酸を含有する細胞等の生物材料からの核酸の抽出精製は、遺伝子工学や臨床診断の分野では重要なステップである。例えば、ある遺伝子について解析しようとする場合、まず、その遺伝子を保持する細胞等の生物材料からDNAやRNAといった核酸を抽出することが必要である。また、細菌やウイルスといった感染体の検出のためのDNA/RNA診断においても、血液等の生物材料から細菌やウイルスの核酸を抽出した後、検出することが必要である。一般に、生物材料に含まれるDNAやRNAといった核酸は、遊離した状態で存在するわけでなく、タンパク質、脂質、糖から構成される細胞膜や細胞壁等の殻の中に存在し、ほとんどの場合、核酸自身もタンパク質との複合体を形成している。したがって、生物材料から核酸を抽出精製する場合には、まず超音波や熱による物理的破砕処理やプロテアーゼによる酵素処理、界面活性剤や変性剤による処理等を施すことにより核酸を遊離させ、さらに、フェノール等の有機溶媒による抽出操作や超遠心分離、イオン交換体等の担体を使用したカラムクロマトグラフィー等により、破砕物中から核酸を精製する必要がある。これらの手法は、核酸や出発材料、さらには抽出した核酸の用途に応じて組み合わされ、それぞれ最適化されて用いられている。【0003】プラスミドDNAを保持するバクテリア、特に大腸菌からプラスミドDNAを抽出する方法としては、アルカリ溶菌法、ボイル法[Molecular cloning: A Laboratory manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989) ]などが従来より行われてきた。しかし、これらの方法は遠心分離など煩雑な工程を含むため非常に手間がかかる作業である。さらに、これらの方法により抽出されたDNAサンプル中には、その後の解析にとって弊害となるRNAやタンパク質などが多く含まれている。そのため、純度よくプラスミドDNAを得るためには、これらの抽出操作を行った後に、塩化セシウムによる密度勾配を利用した超遠心分離操作や、リボヌクレアーゼ消化およびフェノール/クロロホルム抽出に代表されるような煩雑で、かつ長時間を要するRNAおよびタンパク質除去操作を行う必要がある。【0004】また、ゲノムDNAおよびタンパク質除去操作を特に行う必要がなく、簡便にプラスミドDNAを抽出しうる方法として、ヒドロキシアパタイトを核酸結合性固相として使用する方法[Beland, F. A. ら, J. Chromatografy, 174, 177-186 (1979)]が知られている。この方法によれば、溶菌液中のプラスミドDNAのみを抽出してくることが可能であり、RNAやタンパク質はヒドロキシアパタイトにほとんど吸着しないため、これらの混入をほとんど防ぐことができる。しかし、この方法では、溶出液として制限酵素消化等の酵素反応を阻害する0.3Mリン酸緩衝液などの比較的高濃度の緩衝液を使用する。そのため、抽出したプラスミドDNAを制限酵素消化やシーケンシングなどの解析に使用する場合には、透析やゲルろ過等を施すことにより緩衝剤を除去することが必要となり、長時間を要するという問題がある。【0005】一方、簡便な核酸抽出法としてシリカを核酸結合性固相担体として使用する方法がある [特開平2-289596号公報] 。この方法は、バクテリアなどの生物材料から核酸を一段階で抽出することが可能なうえ、溶出液として水またはTEバッファーなど低濃度の緩衝液を使用するため、特別な脱塩濃縮操作が不要で、抽出した核酸を直ちに後の解析に使用することができるという利点がある。しかし、この方法によりプラスミドDNAを保持するバクテリアからプラスミドDNAの抽出を試みた場合、ゲノムDNAもプラスミドDNAと同様にシリカへ吸着する。そのため、プラスミドDNAのみを純度よく抽出するためには、さらに超遠心分離やカラムクロマトグラフィー等の精製操作をおこなうことが必須である。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来から存在する技術の上記問題点を解決することであり、プラスミドDNAを保持する微生物または細胞からプラスミドDNAを煩雑な操作を必要とすることなく、短時間かつ高純度で抽出し、精製する方法を提供することである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、適当な細胞溶解液、有機溶媒および核酸結合性固相担体により、プラスミドDNAを保持する微生物または細胞からプラスミドDNAを簡便に抽出精製しうることを見い出し、本発明に達した。【0008】すなわち、本発明は下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とするプラスミドDNAの抽出精製方法である。(a)プラスミドDNAを保持する微生物または細胞に、カオトロピック物質を含むpH3〜6の細胞溶解液、有機溶媒からなる抽出液および核酸結合性固相担体を添加し、混合あるいは接触させることにより、該プラスミドDNAを固相担体上に吸着させ、(b)上記(a)工程にてプラスミドDNAを吸着させた固相担体を洗浄液により洗浄し、かつ、(c)上記(b)工程にて洗浄した固相担体から、溶出液によりプラスミドDNAを溶出させる。【0009】また、本発明はカオトロピックス物質を含むpH3〜6の溶解液、有機溶媒からなる抽出液、核酸結合用固相担体、洗浄液および溶出液を含むプラスミドDNA抽出精製試薬キットである。【0010】【発明の実施態様】本発明によるプラスミドDNAの抽出精製方法は、(a)溶解・吸着工程、(b)洗浄工程、(c)溶出工程の3段階に大きく分けられる。【0011】(a)溶解・吸着工程では、プラスミドDNAを保持する微生物または細胞に細胞溶解液、有機溶媒、核酸結合性固相担体を添加、混合あるいは接触させることにより、微生物または細胞を溶解し、プラスミドDNAを核酸結合性固相へ吸着させる。【0012】本発明において用いられるプラスミドDNAを保持する微生物または細胞としては、例えば大腸菌の形質転換体が代表的なものである。この大腸菌の形質転換体の場合、通常は、公知の常法にしたがって適当な選択培地を使用して終夜培養され、遠心分離などの操作により集菌されたものが出発材料として使用される。また、ここで抽出対象となるプラスミドDNAは、周知のとおり、ベクターとして利用されるものである。したがって、ここでいうプラスミドDNAにはコスミドDNAも当然含まれる。【0013】本発明において用いられる細胞溶解液には、緩衝剤を含有させ、pH3〜6とする。これは、あらかじめ細胞溶解液に含まれていても、また細胞を溶解した後に緩衝液として添加してもよい。この緩衝剤としては、一般に使用されるものであれば特に限定されないが、pH3〜6の範囲のいずれかのpHにおいて緩衝能を有するものがより好ましい。例えば、酢酸ナトリウム‐酢酸、酢酸ナトリウム‐塩酸等が挙げられ、その使用濃度としては1〜500nm、pHは3〜6の範囲が好適である。【0014】本発明において用いられる細胞溶解液には、カオトロピック物質が含まれる。カオトロピック物質としては、一般にカオロピッス物質として知られているような、疎水性分子の水溶性を増加させる作用を有しており、さらにプラスミドDNAの固相への結合に寄与するものであれば特に限定されない。具体的には、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、よう化ナトリウム、よう化カリウム、過塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、グアニジンチオシアン酸塩が好ましく用いられる。これらのカオトロピック物質の使用濃度は、用いられるカオトロピック物質により異なり、例えば、グアニジンチオシアン酸塩を使用する場合には、3〜5.5Mの範囲となるように使用するのが好ましい。【0015】また、細胞溶解液には、細胞膜の破壊あるいは細胞中に含まれるタンパク質を変性させる目的で界面活性剤を含有させてもよい。この界面活性剤としては、一般に細胞等からの核酸抽出に使用されるものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等の陽イオン界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、N‐ラウロイルサルコシンナトリウム、コール酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ホスファチジルエタノールアミン等の両性界面活性剤が挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の非イオン界面活性剤が好ましく用いられる。これらの界面活性剤の使用濃度は、用いられる界面活性剤により異なり、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを使用する場合には、0.1〜3%の範囲となるように使用するのが好ましい。【0016】本発明において用いられる有機溶媒としては、プラスミドDNAの固相への結合を妨げるものでなく、かつゲノムDNAの固相への結合を妨げるものであれば特に限定されない。この原理についての詳細は不明であるが、有機溶媒を液相に添加することにより液相の極性を適度に下げ、そのことによって、分子表面の極性が異なるプラスミドDNAとゲノムDNAに固相との結合の選択性を付与しているものと考える。本発明において用いられる有機溶媒の具体例としては、水飽和フェノール、緩衝液飽和フェノール、クロロホルム、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、3-メチル-1- プロパノール、アセトン等が挙げられる。これらのうち、水飽和フェノールまたは緩衝液飽和フェノール、あるいはこれら飽和フェノールとクロロホルムを適当な割合で混合したものが好ましい。【0017】本発明において用いられる核酸結合性固相担体としては、カオトロピックイオンの存在下で核酸を吸着、すなわち可逆的な結合により保持することができる親水性表面を有する固体であれば特に限定されない。具体的には、二酸化ケイ素、すなわちシリカが好ましく用いられる。また、前記のような核酸との可逆的な結合を妨げるようなものでなければ、シリカから構成される他の物質、例えばガラス、ケイソウ土、あるいはこれらを化学的修飾により表面処理を施したものや、超常磁性金属酸化物等の他の物質との複合体も含まれる。また、この核酸結合性固相担体の形態としては、粒子、フィルター、反応容器等が具体的に挙げられるが特に限定されない。これらのうち、吸着と溶出の効率を考慮すると粒子の形態がより好ましく、このとき粒径は0.05〜500μmがより好適である。【0018】本発明においては、上記細胞溶解液、有機溶媒、核酸結合性固相を別々に添加しても、あるいは同時に添加しても良い。【0019】(b)洗浄工程は、細胞破砕物、細胞溶解液、有機溶媒、核酸結合性固相担体の混合物から、プラスミドDNAが吸着した核酸結合性固相担体のみを可能な限り分離する工程である。このとき、洗浄液を使用して1〜3回程度、繰り返し洗浄するのが好ましい。【0020】本発明における核酸結合性固相担体の分離のための具体的な手段としては、使用する固相担体の形態により異なる。例えば核酸結合性固相が粒子の形態である場合には、遠心分離、ろ過、カラム操作等が好ましい。さらには、粒子内に超常磁性金属酸化物を含ませておいたものを固相担体として使用すれば、磁石等を用いた簡便な磁気分離法が可能となり、より好適である。【0021】本発明において用いられる洗浄液としては、固相からのプラスミドDNAの溶離を促進するものでなく、かつゲノムDNAやタンパク質の固相への結合を妨げるものであれば特に限定されない。具体的には、3〜5.5Mグアニジンチオシアン酸溶液あるいは40%〜100%エタノールが好ましく、これらの洗浄液を併用するとより好適である。つまり、まず、グアニジンチオシアン酸溶液で洗浄した後、さらに40%〜100%エタノールで洗浄するのが好ましい。また、初めに溶解・吸着工程にて使用した細胞溶解液および有機溶媒を洗浄液として使用すると、ゲノムDNAとタンパク質の除去により有効である。このとき、続いて40%〜100%エタノールで洗浄するのが好ましい。【0022】(c)溶出工程は、プラスミドDNAが吸着した核酸結合性固相担体から該DNAを溶離させる工程である。従って、本発明において用いられる溶出液としては、固相からのプラスミドDNAの溶離を促進するものであれば、特に限定されない。具体的には、水あるいはTEバッファー[10mMトリス塩酸緩衝液、1mM EDTA、pH8.0]が好ましい。このとき回収したプラスミドDNAは、透析やエタノール沈殿法等の脱塩、濃縮操作を施すことなく、制限酵素やDNAポリメラーゼ等を使用した酵素反応に直接使用することができる。【0023】上記のように、本発明によるプラスミドDNAの抽出精製方法は、単純な工程から構成されるため、プラスミドDNA抽出精製キットや、固相の分離操作や試薬分注操作を自動化した核酸抽出装置へ容易に応用しうることは明らかである。【0024】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1 大腸菌pBR322/HB101からのプラスミドDNAの抽出(1)大腸菌pBR322/HB101の調製プラスミドpBR322(東洋紡績社製)で形質転換された大腸菌HB101形質転換体(pBR322/HB101)を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地[10g/l トリプトン、5g/l酵母エキス、5g/l塩化ナトリウム(pH7.5)]100mlに植菌し、培養温度37℃、振とう速度180rmpで15時間培養した。培養後、培養液を1.5mlずつ1.5ml容マイクロチューブに分注し、高速微量冷却遠心分離機(MR-150:トミー精工社製)にて 12,000rpm、1分間遠心分離し、上清を除去することにより得られた菌体を抽出材料とした。【0025】(2)プラスミドDNAの抽出精製上記(1)にて調製した菌体に500μlの細胞溶解液[4.7Mグアニジンチオシアン酸、92mM酢酸ナトリウム−塩酸(pH4.0)、1.2%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、20mM EDTA]を加えて溶菌させ、続いて500μlのTEバッファー飽和フェノール/クロロホルム(1:1)を加え、激しく混合した。これに、40μlの0.5g/ml磁性シリカ(粒径 1〜10μm 、四三酸化鉄粒子30% 含有、比表面積 280m2/g、細孔容積 0.025ml/g、表面細孔直径 2〜6nm :鈴木油脂製)懸濁液を添加し、室温で10分間混合した。次に、マイクロチューブを磁気スタンド(MPC-M :ダイナル社製)に設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を除去した。さらに、マイクロチューブを磁気スタンドからはずし、1mlの洗浄液[5.3Mグアニジンチオシアン酸、52mMトリス−塩酸(pH6.4)]を加えて十分に混合した後、同様に磁気スタンドに設置して上清を除去することにより、粒子を洗浄した。同様にして、1mlの洗浄液にて再度、粒子を洗浄し、続いて1mlの70%エタノールで2回、100%エタノールで1回粒子を洗浄した。上清を除去した後、マイクロチューブを55℃に設定したヒートブロック上に設置し、20分間放置することによりチューブ内のエタノールを蒸発除去し、粒子を乾燥させた。これに100μlの滅菌水を添加し、室温で10分間混合した後、磁気スタンドに設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を回収した。回収液量はおよそ80μlであった。【0026】回収液のうちの10μlをアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロミド染色後、写真撮影した結果を図1(レーン3)に示す。図1(レーン3)から明らかなように、大腸菌ゲノム由来DNAやRNAの混入はほとんど見られず、高い純度でプラスミドDNAが抽出精製されたことが確認できる。図1中、レーン1は、ラムダファージDNAの PstI 消化物からなるサイズマーカー、レーン2は市販のpBR322DNAの泳動パターン、レーン3は実施例1に示す方法により抽出精製されたpBR322DNAの泳動パターン、レーン4は市販のpBR322DNAの EcoRI消化物の泳動パターン、レーン5は実施例1に示す方法により抽出精製されたpBR322DNAの EcoRI消化物の泳動パターンを示す。【0027】(3)プラスミドDNAの制限酵素消化上記(2)にて得られた回収液のうち8μlに1μlの10×Hバッファー[500mM トリス−塩酸(pH7.5)、1M塩化ナトリウム、100mM 塩化マグネシウム、10mMジチオスレイトール]、および1μlの1U/μlの EcoRI(東洋紡績社製)を添加混合し、37℃、3時間放置した。【0028】反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロミド染色後、写真撮影した結果を図1(レーン5)に示す。図1(レーン5)から明らかなように、本発明による方法にて抽出精製されたプラスミドDNAは、制限酵素 EcoRIによって完全に切断されており、直ちに、制限酵素消化に使用できることが確認できる。【0029】実施例2 大腸菌pUC19/JM109からのプラスミドDNAの抽出(1)大腸菌pUC19/JM109の調製プラスミドpUC19(東洋紡績社製)で形質転換された大腸菌JM109の形質転換体(pUC19/JM109)を100μg/mlのアンピシリンを含むSB培地[32g/l トリプトン、20g/l 酵母エキス、5g/l塩化ナトリウム、5ml 1N NaOH]100mlに植菌し、培養温度37℃、振とう速度180rpmで15時間培養した。培養後、培養液を1.5mlずつ1.5ml容マイクロチューブに分注し、高速微量冷却遠心分離機(MR-150:トミー精工社製)にて12,000rpm 、1分間遠心分離し、上清を除去することにより得られた菌体を抽出材料とした。【0030】(2)プラスミドDNAの抽出精製実施例1と同様な方法にして、上記(1)にて調製した菌体からプラスミドpUC19 DNAを抽出精製した。菌体に600μlの細胞溶解液[5Mグアニジンチオシアン酸、100mM 酢酸ナトリウム−塩酸(pH4.0)]を加えて溶菌させ、続いて300μlのTEバッファー飽和フェノールを加え、激しく混合した。これに、40μlの0.5g/ml磁性シリカ(粒径 1〜10μm 、四三酸化鉄粒子 30%含有、比表面積 280m2/g、細孔容積 0.025ml/g、表面細孔直径 2〜6nm :鈴木油脂社製)懸濁液を添加し、室温で10分間混合した。次に、マイクロチューブを磁気スタンド(MPC-M :ダイナル社製)に設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を除去した。さらに、マイクロチューブを磁気スタンドからはずし、洗浄液として750μlの細胞溶解液[5Mグアニジンチオシアン酸、100mM 酢酸ナトリウム−塩酸(pH4.0)]と150μlのTEバッファー飽和フェノールを加えて十分に混合した後、同様に磁気スタンドに設置して上清を除去することにより、粒子を洗浄した。同様にして、再度、粒子を洗浄し、続いて1mlの70%エタノールで2回粒子を洗浄した。上清を除去した後、これに100μlの滅菌水を添加し、室温で10分間混合した後、磁気スタンドに設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を回収した。回収液量はおよそ100μlであった。【0031】回収液のうちの3μlをアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロミド染色後、写真撮影した結果を図2(レーン3)に示す。図2(レーン3)から明らかなように、大腸菌ゲノム由来DNAやRNAの混入はほとんど見られず、高い純度でプラスミドDNAが抽出精製されたことが確認できる。【0032】(3)プラスミドDNAの制限酵素消化実施例1と同様にして、上記(2)にて得られた回収液のうち、8μlに1μlの10×Lバッファー[100mM トリス−塩酸(pH7.5)、100mM 塩化マグネシウム、10mMジチオスレイトール]、および1μlの1U/μlのKpnI(東洋紡績社製)を添加混合し、37℃、3時間放置した。反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロミド染色後、写真撮影した結果を図2(レーン5)に示す。図2(レーン5)から明らかなように、本発明による方法にて抽出精製されたプラスミドDNAは、制限酵素 KpnI によって完全に切断されており、直ちに制限酵素消化に使用できることが確認できる。図2中、レーン1は、ラムダファージDNAの PstI 消化物からなる分子量マーカー、レーン2は市販のpUC19DNAの泳動パターン、レーン3は実施例2に示す方法により抽出精製されたpUC19DNAの泳動パターン、レーン4は市販のpUC19DNAの KpnI 消化物の泳動パターン、レーン5は実施例2に示す方法により抽出精製されたpUC19DNAの KpnI 消化物の泳動パターンを示す。【0033】【発明の効果】本発明によれば、カオトロピック物質を含むpHが3〜6である溶解液と核酸結合用固相担体を使用することにより、プラスミドDNAを保持する微生物または細胞から、高純度なプラスミドDNAを特異的に吸着させ、さらに適当な溶出液を使用することにより、煩雑な後処理操作を必要とすることなく短時間かつ簡便にプラスミドDNAを抽出精製することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の方法により抽出精製されたプラスミドpBR322DNAとその制限酵素消化物のアガロースゲル電気泳動パターンを示す図面に代える写真である。【図2】本発明の方法により抽出精製されたプラスミドpUC19DNAとその制限酵素消化物のアガロースゲル電気泳動パターンを示す図面に代える写真である。 下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とするプラスミドDNAの抽出精製方法。(a)プラスミドDNAを保持する微生物または細胞に、カオトロピック物質を含むpH3〜6の細胞溶解液、細胞溶解液と等量のTEバッファー飽和フェノール/クロロホルム(1:1)、または、細胞溶解液の半量のTEバッファー飽和フェノールからなる抽出液およびシリカを含む核酸結合性固相担体を添加、混合あるいは接触させることにより、該プラスミドDNAを固相担体上に吸着させ、(b)上記(a)工程にてプラスミドDNAを吸着させた固相担体を洗浄液により洗浄し、かつ、(c)上記(b)工程にて洗浄した固相担体から、溶出液によりプラスミドDNAを溶出させる。 プラスミドDNAを保持する微生物または細胞がバクテリアである請求項1記載のプラスミドDNA抽出精製法。 カオトロピック物質を含むpH3〜6の細胞溶解液が、グアニジンチオシアン酸塩および酢酸ナトリウム−塩酸(pH4.0)を含む請求項1記載のプラスミドDNA抽出精製法。 核酸結合性固相担体が粒子である請求項1記載のプラスミドDNA抽出精製法。 核酸結合性固相担体が超常磁性金属酸化物を含む粒子である請求項1記載のプラスミドDNA抽出精製法。 溶出液が水あるいはTEバッファーである請求項1記載のプラスミドDNA抽出精製法。 核酸結合性固相担体が超常磁性金属酸化物を含む担体であって、さらに磁力を利用して核酸結合性固相担体と液相を分離する工程を含む請求項1記載のプラスミドDNA抽出精製法。 カオトロピックス物質を含むpH3〜6の溶解液、細胞溶解液と等量のTEバッファー飽和フェノール/クロロホルム(1:1)、または、細胞溶解液の半量のTEバッファー飽和フェノールからなる抽出液、シリカを含む核酸結合用固相担体、洗浄液および溶出液を含むプラスミドDNA抽出精製試薬キット。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る