タイトル: | 特許公報(B2)_三級カルボン酸エステル化合物及び該化合物を含有する潤滑油組成物 |
出願番号: | 1996117427 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 69/28,C07C 69/30,C07C 69/33,C10M 105/40,C10N 20/02,C10N 30/00,C10N 30/02,C10N 30/10,C10N 40/02,C10N 40/04,C10N 40/06,C10N 40/25 |
柳澤 吉則 坪内 俊之 橋本 勝美 奥田 亮一 JP 3894983 特許公報(B2) 20061222 1996117427 19960513 三級カルボン酸エステル化合物及び該化合物を含有する潤滑油組成物 出光興産株式会社 000183646 大谷 保 100078732 柳澤 吉則 坪内 俊之 橋本 勝美 奥田 亮一 20070322 C07C 69/28 20060101AFI20070301BHJP C07C 69/30 20060101ALI20070301BHJP C07C 69/33 20060101ALI20070301BHJP C10M 105/40 20060101ALI20070301BHJP C10N 20/02 20060101ALN20070301BHJP C10N 30/00 20060101ALN20070301BHJP C10N 30/02 20060101ALN20070301BHJP C10N 30/10 20060101ALN20070301BHJP C10N 40/02 20060101ALN20070301BHJP C10N 40/04 20060101ALN20070301BHJP C10N 40/06 20060101ALN20070301BHJP C10N 40/25 20060101ALN20070301BHJP JPC07C69/28C07C69/30C07C69/33C10M105/40C10N20:02C10N30:00 CC10N30:02C10N30:10C10N40:02C10N40:04C10N40:06C10N40:25 C07C 69/22 C10M105/32-105/40 特開平05−017787(JP,A) 特開平05−001291(JP,A) 堀口博,潤滑油とグリース,日本,三共出版(株),1968年 4月25日,54−64 4 1997301919 19971125 9 20020826 柿澤 恵子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、空気雰囲気下で低温から高温までの広い範囲の温度で使用される潤滑油、例えば、タービン油,圧縮機油,エンジン油,ギヤ油,軸受油などとして好適に用いられる潤滑油、及び上記潤滑油に好適に用いられる新規なエステル化合物に関する。【0002】【従来の技術】近年、省エネルギー化やロングドレン化の傾向に伴い、潤滑特性ならびに安定性においてより優れた潤滑油が要望され、これらの特性を満足するため各種の合成潤滑油が開発されている。とりわけ、エステル類は潤滑特性ならびに耐熱性に優れていることから、タービン油,エンジン油,耐熱性作動油,冷凍機油等の潤滑油として広く用いられている。しかし、エステル類を上記のような潤滑油に用いた場合、通常、加水分解を起こしやすく、全酸化が上昇するという問題を生じていた。また、特に、ヒンダードエステル類は、タービン油,エンジン油等の高い熱安定性が要求される潤滑油の基油または添加剤として用いられてきたが、近年の高性能化,長寿命化の要求に対してはその安定性が不充分となってきた。従来、このようなエステル類の例としては、例えば、米国特許第3,115,519号明細書には、多価アルコールとピバリン酸のエステルが開示されている。しかしながら、ここに開示されるエステルは三級脂肪酸以外の脂肪酸から得られるヒンダードエステルに比べ、耐熱性,耐加水分解性には優れているが、粘度指数が低いという問題がある。また、特開平4−164993号公報には、炭素数12以下の三級一価脂肪酸及び二価脂肪酸とヒンダードアルコールのエステルが開示されている。このエステルではα分岐カルボン酸による粘度指数低下を改善するために二価脂肪酸を用いているものの、粘度指数が不充分であり、酸化安定性も劣る。更に、特開平4−314793号公報には三級一価脂肪酸,二級一価脂肪酸及び二価脂肪酸とヒンダードアルコールのエステルが開示されている。しかし、ここに開示されるエステルは二級一価脂肪酸及び二価脂肪酸を用いているので、α分岐カルボン酸による粘度指数低下については改善されているが、酸化安定性は三級脂肪酸のみによるエステルよりも劣るため、非空気雰囲気下での用途を除いて用いることはできず、実際には、冷凍機油への用途に限定されている。特開平7−224289号公報にはペンタエリスリトールと直鎖脂肪酸ならびに二級脂肪酸のエステルが開示されている。しかしながら、このエステルは直鎖脂肪酸のみに比べ耐加水分解性には優れているが、二級脂肪酸を用いているため酸化安定性に劣るものとなっている。【0003】【発明が解決しようとする課題】このように、従来においては、高い酸化安定性,耐加水分解性及び高い粘度指数のすべてを兼ね備えたエステル系潤滑油は得られていなかった。本発明は、このような状況下でなされたものである。すなわち、本発明の目的は、酸化安定性,耐加水分解性を高水準に維持しつつ粘度指数を向上せしめたエステル系潤滑油組成物及び該エステル系潤滑油組成物に用いられる新規なエステル化合物を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の長鎖アルキル基を導入した三級カルボン酸エステル化合物を開発し、このエステル化合物からなる潤滑油が酸化安定性,耐加水分解性を高水準に維持したまま、粘度指数を向上させることができることを見出したものである。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、炭素数13以上の三級カルボン酸とヒンダードアルコールから得られる炭素数13以上の三級カルボン酸エステル化合物であって、粘度指数が100以上であることを特徴とする三級カルボン酸エステル化合物を提供するものであり、また、炭素数13以上の三級カルボン酸エステル化合物を含有し、空気雰囲気下で使用することを特徴とする潤滑油組成物を提供するものである。【0005】【発明の実施の形態】以下に、本発明を更に詳細に説明する。本発明の炭素数13以上の三級カルボン酸エステル化合物(以下、本発明のエステル化合物ということがある)は、炭素数13以上の三級カルボン酸化合物とアルコール類とをエステル化反応させて得ることができるが、ここで使用する炭素数13以上の三級カルボン酸化合物としては、例えば、2,2−ジメチルトリデカン酸,2−メチル−2−エチルドデカン酸,2,2−ジメチルペンタデカン酸,2−メチル−2−エチルテトラデカン酸,2,2−ジエチルトリデカン酸,2,2−ジメチルヘプタデカン酸,2−メチル−2−エチルヘキサデカン酸,2,2−ジエチルペンタデカン酸,2,2−ジメチルノナデカン酸,2−メチル−2−エチルオクタデカン酸,2,2−ジエチルヘプタデカン酸,2,2−ジメチルヘンエイコサン酸,2−メチル−2−エチルエイコサン酸,2,2−ジエチルノナデカン酸,ネオペンタデカン酸,ネオヘプタデカン酸,ネオノナデカン酸,ネオヘンエイコサン酸,ネオトリコサン酸,ネオペンタコサン酸,ネオヘプタコサン酸,ネオノナコサン酸等を使用することができる。上記三級カルボン酸化合物は、その炭素数が13以上であるが、好ましくは15〜30、更に好ましくは17〜25である。炭素数が上記範囲より少ない場合は粘度指数が低くなり、上記範囲より大きい場合は流動点が高くなる。本発明においては、上記三級カルボン酸化合物は単独で使用することもできるが、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。また、酸化安定性,耐加水分解性を損なわない範囲で2級カルボン酸化合物あるいは1級カルボン酸化合物を混合使用することもできる。【0006】また、エステル化反応に使用しうるアルコール類としては、特に限定はされないが、耐熱性の点から、ヒンダードアルコール、特に、β位が4級となるアルコールが好ましく挙げられる。このような化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコール,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3’−ヒドロキシプロピオネートあるいはこれらの二量体(例えば、ジトリメチロールプロパン,ジペンタエリスリトール)などが挙げられる。これらのアルコールは、単独で使用することもできるが、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。【0007】本発明のエステル化合物は、上記三級カルボン酸化合物と上記アルコール類とをエステル化反応させることにより得られるが、その反応は、例えば、三級カルボン酸化合物とアルコール類とを、モル比1:1〜3:1の割合で混合し、これをオルトチタン酸イソプロピル,p−トルエンスルホン酸などの触媒の存在下、100〜300℃の温度下、加熱攪拌あるいは上記三級カルボン酸を塩化チオニル,オキシ塩化リン,三塩化リン,五塩化リンなどで酸クロライドとし、これにアルコールを加えることにより行うことができる。得られる本発明のエステル化合物は、高性能油としての使用のため高い粘度指数が要求されるため、100以上、好ましくは110以上、更に好ましくは120以上の粘度指数を有する。また、その流動点は低温始動性の点から、0℃以下であることが好ましい。【0008】本発明の潤滑油組成物は、上記本発明のエステル化合物を主成分として含有するものであるが、該エステル化合物は、潤滑油組成物中に少なくとも5重量%,好ましくは少なくとも10重量%含有することが本発明の効果を有効に奏する点から好ましい。また、本発明においては、これと組み合わせて他の潤滑油成分、例えば、鉱油,ポリ−α−オレフィン類,ポリエーテル類,他のエステル類,アルキルベンゼン類,アルキルナフタレン類,フッ素化炭化水素化合物等を適宜含有することができる。本発明の潤滑油組成物の粘度は特に限定はされないが、高温での潤滑油油膜保持などの点から、100℃における動粘度が2.0〜20cStであることが好ましい。また、本発明の潤滑油組成物には、通常、潤滑油に使用しうる各種添加剤、例えば、アミン系などの酸化防止剤,防錆剤,清浄分散剤,流動点降下剤,粘度指数向上剤,極圧剤,消泡剤,耐摩耗添加剤,油性向上剤等を適宜配合することも可能である。【0009】本発明の潤滑油組成物は、高い酸化安定性,耐加水分解性を有することから、空気雰囲気下、低温から高温までの広い温度範囲で使用可能な潤滑油として有用であり、例えば、タービン油,エンジン油,圧縮機油,ギヤ油,軸受油等の潤滑油として好適に使用することができる。【0010】【実施例】以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。実施例1カルボン酸の合成オレフィンとして1−オクタデセンを用い、特公昭49−3511号公報の実施例1に記載の方法によりネオノナデカン酸を得た。エステル化反応2リットルの4首丸底フラスコに冷却管,ディーンシュタック管,温度計を各々取付け、ここに上記得られたネオノナデカン酸1116g(3モル)とネオペンチルグリコール120g(1.36モル)を入れ、更に、触媒としてオルトチタン酸テトライソプロピル20gを加え、水分が留出しはじめるまで徐々に温度を上げた。留出が始まった時点で更に温度を10℃上げ、この温度で水分の留出が終わるまで反応させ、本発明のエステル化合物を得た。得られたエステル化合物を 1H−NMR,IRにより分析したところ、添付図1及び2に示す結果が得られ、この化合物が本発明の炭素数19の三級カルボン酸エステルであることがわかった。【0011】実施例21−オクタデセンに代えて1−ドコセンを用いて得られるネオトリコサン酸をカルボン酸として用いた以外は実施例1と同様にしてエステル化合物を得た。得られたエステル化合物を実施例1と同様に分析したところ、添付図3及び4に示す結果が得られ、この化合物が本発明の炭素数23の三級カルボン酸エステルであることがわかった。【0012】実施例31−オクタデセンに代えて1−テトラデカンを用いて得られるネオペンタデカン酸をカルボン酸として用い、またネオペンチルグリコールに代えてトリメチロールプロパンをアルコールとして用いた以外は実施例1と同様にしてエステル化合物を得た。得られたエステル化合物を実施例1と同様に分析したところ、添付図5及び6に示す結果が得られ、この化合物が本発明の炭素数15の三級カルボン酸エステルであることがわかった。比較例1〜5下記第1表に示すようなカルボン酸及びアルコールを使用した以外は、実施例1と同様にしてエステル化合物を得た。【0013】【表1】【0014】比較例62リットルの4首丸底フラスコに冷却管,温度計を各々取付け、ここに塩化チオニル999g(8.4モル)を入れ、これに室温にて2,2,6−トリメチルヘプタン酸(ネオ酸、エッソ化学社製)1204g(7.0モル)を滴下し反応させ、酸クロライドを得た。次いで、トリメチロールプロパン220g(1.64モル)とN,N−ジメチルアニリン590g(4.92モル)をエチルエーテル500ミリリットルに溶解し、2リットルの4首丸底フラスコに入れ、ここに得られた酸クロライドを滴下し反応させ、エステル化合物を得た。【0015】実施例4〜6及び比較例7〜12上記実施例1〜3及び比較例1〜6で得られたカルボン酸エステル化合物の各々に、アミン系酸化防止剤(N−フェニルナフチルアミン)を2重量%配合してなる潤滑油を調製し、各々について以下の方法で評価を行った。結果を第2表に示す。評価方法(1)加水分解試験エステル化合物75gに水25gを加え、更に触媒として鉄板ならびに銅板を入れ、100℃で168時間攪拌し、油層の全酸化をJIS K−2501「石油製品及び潤滑油中和価試験方法(電位差滴定法)」により測定し、加水分解のしやすさの指標として評価した。(2)酸化試験JIS K−2242に規定された「熱処理油」の酸化安定性試験に従って、評価した。但し、触媒としては銅板ならびに鉄板を用い、試験温度,時間をそれぞれ190℃,168時間として測定した。(3)粘度ならびに粘度指数JIS K−2283に規定された「原油および石油製品の動粘度試験法並びに石油製品粘度指数算出法」に従って評価した。(4)流動点JIS K−2269に規定された「原油および石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験法」に従って評価した。【0016】【表2】【0017】【表3】【0018】第2表に示すように、実施例1及び2の各々で使用したカルボン酸エステル化合物はいずれも耐加水分解性、酸化安定性,粘度指数すべてにおいて良好なものであった。【0019】【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明のカルボン酸エステル化合物からなる潤滑油組成物によれば、空気雰囲気下で使用した場合においても、高温での潤滑性に優れ、熱分解,全酸化の上昇も少ないなど、酸化安定性,耐加水分解性を高水準に維持したまま粘度指数を向上させることが可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1で得られたエステル化合物の 1H−NMR分析の結果を示す図である。【図2】実施例1で得られたエステル化合物のIR分析の結果を示す図である。【図3】実施例2で得られたエステル化合物の 1H−NMR分析の結果を示す図である。【図4】実施例2で得られたエステル化合物のIR分析の結果を示す図である。【図5】実施例3で得られたエステル化合物の 1H−NMR分析の結果を示す図である。【図6】実施例3で得られたエステル化合物のIR分析の結果を示す図である。 2,2−ジメチルトリデカン酸、2−メチル−2−エチルドデカン酸、2,2−ジメチルペンタデカン酸、2−メチル−2−エチルテトラデカン酸、2,2−ジエチルトリデカン酸、2,2−ジメチルヘプタデカン酸、2−メチル−2−エチルヘキサデカン酸、2,2−ジエチルペンタデカン酸、2,2−ジメチルノナデカン酸、2−メチル−2−エチルオクタデカン酸、2,2−ジエチルヘプタデカン酸、2,2−ジメチルヘンエイコサン酸、2−メチル−2−エチルエイコサン酸、2,2−ジエチルノナデカン酸、ネオペンタデカン酸、ネオヘプタデカン酸、ネオノナデカン酸、ネオヘンエイコサン酸、ネオトリコサン酸、ネオペンタコサン酸、ネオヘプタコサン酸及びネオノナコサン酸から選ばれる1種の三級カルボン酸とネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトールから選ばれる1種のヒンダードアルコールから得られる三級カルボン酸エステル化合物であって、粘度指数が100以上であることを特徴とする三級カルボン酸エステル化合物。 三級カルボン酸が2,2−ジメチルトリデカン酸、2−メチル−2−エチルドデカン酸、2,2−ジメチルペンタデカン酸、2−メチル−2−エチルテトラデカン酸、2,2−ジエチルトリデカン酸、2,2−ジメチルヘプタデカン酸、2−メチル−2−エチルヘキサデカン酸、2,2−ジエチルペンタデカン酸、2,2−ジメチルノナデカン酸、2−メチル−2−エチルオクタデカン酸、2,2−ジエチルヘプタデカン酸、2,2−ジメチルヘンエイコサン酸、2−メチル−2−エチルエイコサン酸及び2,2−ジエチルノナデカン酸から選ばれる1種の三級カルボン酸である請求項1記載の三級カルボン酸エステル化合物。 請求項1又は2に記載の三級カルボン酸エステル化合物を含有し、空気雰囲気下で使用することを特徴とする潤滑油組成物。 タービン油、圧縮機油、エンジン油、ギヤ油及び軸受油から選ばれる請求項3に記載の潤滑油組成物。