タイトル: | 特許公報(B2)_ピロガロールの製造方法 |
出願番号: | 1996107641 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 39/10,C07C 37/055 |
曽我 真一 吉光 満明 石川 真一 江口 久雄 JP 3831975 特許公報(B2) 20060728 1996107641 19960426 ピロガロールの製造方法 東ソー株式会社 000003300 曽我 真一 吉光 満明 石川 真一 江口 久雄 20061011 C07C 39/10 20060101AFI20060921BHJP C07C 37/055 20060101ALI20060921BHJP JPC07C39/10C07C37/055 C07C 37/055 C07C 39/10 C07C 37/02 C07C 39/27 CAplus(STN) 特開平07−118190(JP,A) 特開平02−072135(JP,A) 東独国特許出願公開第220596号明細書 Ernst SCHMITZ, Ingeborg PAGENKOPF,Ortho-Specific Bromination of Phenols,Journal fuer Parktische Chemie,ドイツ,1985年,Vol.327, N0.6,p.998-1006 2 1997291053 19971111 8 20021205 藤原 浩子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は写真の現像薬、分析用試薬、医農薬の中間原料等として有用なピロガロ−ルの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、ピロガロ−ルは天然物より抽出される没食子酸の脱カルボキシル化反応により製造される。しかしながら、天然物を原料とするため高価であり、かつ供給が不安定等の問題を有する。そのため、より安価な工業原料からピロガロ−ルを製造する方法の開発が強く望まれている。【0003】例えば、特公昭60−39057号公報では、4−t−ブチルフェノ−ルの臭素化で得られる2,6−ジブロモ−4−t−ブチルフェノ−ルをナトリウムメトキシドと反応させて2,6−ジメトキシ−4−t−ブチルフェノ−ルとした後、これを臭化水素酸と反応させて2,6位の脱メチル化と同時に4位の脱t−ブチル化を行い、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、すなわちピロガロ−ルを製造する方法が開示されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭60−39057号公報に記載の製造方法は、以下に示す問題点を有することからピロガロ−ルの製造方法としては満足できるものではない。【0005】▲1▼高価な4−t−ブチルフェノ−ルを原料とする。【0006】▲2▼最終工程で4位の脱t−ブチル化を進行させるため多量の臭化水素酸を必要とする。【0007】▲3▼最終工程で毒性の強いメチルブロマイドが副生する。【0008】本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の方法では満足できなかったピロガロ−ルの製造方法を提出することにある。すなわち、従来の問題点を解決し、安価で安全かつ効率的なピロガロ−ルの製造方法を提出することにある。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ピロガロ−ルの製造方法について鋭意検討した結果、特定の工程によってピロガロ−ルを製造することにより、前記した問題点を解決でき、ピロガロ−ルを安価で安全かつ効率的に製造できることを見出し本発明を完成させるに至った。【0010】すなわち本発明は、以下の三工程よりなるピロガロ−ルの製造方法である。【0011】[工程1]フェノ−ルを、少なくとも1組のN−Br結合を有する臭素化剤と反応させて2,6−ジブロモフェノ−ルを製造する臭素化工程。【0012】[工程2]2,6−ジブロモフェノ−ルを、一般式ROM(式中、Rは低級アルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)で示される金属アルコキシドと反応させて2,6−ジアルコキシフェノ−ルを製造するアルコキシ化工程。【0013】[工程3]2,6−ジアルコキシフェノ−ルを塩化水素酸及び/又は臭化水素酸と反応させてピロガロ−ルを製造する脱アルキル化工程。【0014】以下、本発明の各工程について詳細に説明する。【0015】[工程1]本発明において工程1は、フェノ−ルを少なくとも1組のN−Br結合を有する臭素化剤と反応させることにより実施される。【0016】本発明の方法において用いられる臭素化剤は、少なくとも1組のN−Br結合を有する臭素化剤であり、これらのうち下記一般式(I)又は(II)【0017】【化3】【0018】(式中、R1はアルキル基、R2は水素原子又はアルキル基を表す)【0019】【化4】【0020】(式中、R3はアルキル基を表す)で示されるアミン誘導体が好ましく、臭素化剤の安定性及び収率を考慮すると、N−ブロモ−t−ブチルアミンが特に好ましい。【0021】臭素化剤の使用量は、特に限定するものではないが、通常、N−Br結合を1組有する臭素化剤の場合、フェノ−ルに対して1.6〜2.5モル比が選ばれ、またN−Br結合を2組有する臭素化剤の場合、0.8〜1.5モル比が選ばれる。【0022】本発明の方法は溶媒中で実施される。使用される溶媒に格別の限定はないが、通常、クロロベンゼン,塩化メチレン,ヘキサン,ヘプタン等のハロゲン化炭化水素や炭化水素等の反応に不活性な溶媒が用いられ、収率の面からクロロベンゼンの使用が好ましい。【0023】本発明の方法は通常−80℃〜50℃の反応温度で実施され、好ましくは−20〜30℃の反応温度が選ばれる。【0024】反応終了後、再生したアミン誘導体は硫酸又は、塩酸等の酸性水溶液で抽出することにより、臭素化剤の原料として再使用することが可能である。更に、反応混合物を蒸留することにより2,6−ジブロモフェノ−ルを得ることができる。[工程2]本発明において工程2は、2,6−ジブロモフェノ−ルを金属アルコキシドと反応させることにより実施される。【0025】本発明の方法において用いられる金属アルコキシドは、一般式ROM(式中、Rは低級アルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)で示される金属アルコキシドであり、入手の容易さから通常、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等が選ばれる。金属アルコキシドは、アルカリ金属を過剰のアルコ−ルに溶解させることにより得ることができ、該溶液を本発明に直接用いることができる。金属アルコキシドの使用量は、特に限定するものではないが、通常、2,6−ジブロモフェノ−ルに対して2.0〜10.0モル比が選ばれる。【0026】本発明の方法は触媒として銅化合物及び/又はニッケル化合物等の存在下に実施される。具体的には酸化銅、水酸化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル等が用いられ、収率面からヨウ化銅の使用が好ましい。触媒の使用量は特に限定するものではないが、通常、2,6−ジブロモフェノ−ルに対して1〜30モル%が選ばれる。【0027】本発明の方法において用いられる溶媒に格別の限定はないが、触媒の効果をより向上させるためには、クロロベンゼンが特に好ましい。また、工程1にも同じ溶媒を用いる場合、経済的に有利である。【0028】本発明の反応温度に格別の限定はないが、好ましくは溶媒の還流温度が選ばれる。【0029】反応終了後、通常の後処理操作、例えば、抽出、蒸留等によって2,6−ジアルコキシフェノ−ルを得ることができる。【0030】[工程3]本発明において工程3は、2,6−ジアルコキシフェノ−ルを塩化水素酸及び/又は臭化水素酸と反応させることにより実施されるが、毒性のあるメチルブロマイドの副生を考慮すると塩化水素酸の使用が好ましい。【0031】本発明の方法において用いられる塩化水素酸及び/又は臭化水素酸の濃度は特に限定するものではないが、通常、10〜47%の水溶液が選ばれる。塩化水素酸及び/又は臭化水素酸の使用量は、2,6−ジアルコキシフェノ−ルに対して2〜30モル比、好ましくは5〜25モル比が選ばれる。【0032】本発明の方法は、30℃〜200℃の反応温度で実施可能であり、好ましくは50℃〜150℃が選ばれる。【0033】本発明の反応圧力について、格別の限定はないが、通常、大気圧以上の圧力で実施される。【0034】反応終了後、通常の後処理操作、例えば、抽出、濃縮、再結晶等によってピロガロ−ルを得ることができる。【0035】【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の方法によれば、従来の問題点を解決して、ピロガロ−ルを安価で安全かつ効率的に製造することが可能となる。【0036】【実施例】以下に、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。【0037】実施例1(2,6−ジブロモフェノ−ルの製造)温度計及び攪拌翼を有するフラスコにフェノ−ル(18.8g,0.2mol)、クロロベンゼン(300ml)を仕込み溶解した。その後、液温を10℃に保持し、N−ブロモ−t−ブチルアミン(63.8g,0.42mol)のクロロベンゼン(100ml)溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で30分間熟成した。反応終了後、5%硫酸水溶液(450.8g)を添加し再生したt−ブチルアミンを回収した。続いて、有機相をガスクロマトグラフィ−で分析した結果、2,6−ジブロモフェノ−ルが91.4%の収率で生成していた。【0038】(2,6−ジメトキシフェノ−ルの製造)温度計及び攪拌翼を有するフラスコに2,6−ジブロモフェノ−ル(50.4g,0.2mol)、クロロベンゼン(300ml)を仕込み溶解した。その後、ヨウ化銅(1.0g,5mmol)、28%ナトリウムメトキシド(227.2g,1.2mol)を添加し、反応液を24時間還流させた。反応終了後、水洗、分液を行い、得られた有機相をガスクロマトグラフィ−で分析した結果、2,6−ジメトキシフェノ−ルが93%の収率で生成していた。【0039】(ピロガロ−ルの製造)温度計及び攪拌翼を有する耐圧反応容器に2.6−ジメトキシフェノ−ル(30.8g,0.2mol)、20%塩酸水溶液(730.0g,4.0mol)を仕込み溶解した。その後、液温を130℃に保持し、同温度で24時間反応させた。反応終了後、エ−テルにより抽出し、ガスクロマトグラフィ−で分析した結果、ピロガロ−ルが99%の収率で生成していた。【0040】 実施例2〜実施例4、参考例1〜参考例3 2,6−ジブロモフェノ−ルの製造 実施例1の2,6−ジブロモフェノ−ルの製造に準じ、表1に示す条件下で反応を行った。同表に結果を示す。【0041】【表1】【0042】 実施例5、参考例4〜参考例7 2,6−ジメトキシフェノ−ルの製造 実施例1の2,6−ジメトキシフェノ−ルの製造に準じ、表2に示す条件下で反応を行った。同表に結果を示す。【0043】【表2】【0044】 実施例6 ピロガロ−ルの製造 実施例1のピロガロ−ルの製造に準じ、表3に示す条件下で反応を行った。同表に結果を示す。【0045】【表3】【0046】比較例1 ピロガロ−ルの製造温度計及び攪拌翼を有するフラスコに2.6−ジメトキシ−4−t−ブチルフェノ−ル(42.0g,0.2mol)、20%塩酸水溶液(730.0g,4.0mol)を仕込み溶解した。その後、反応液を還流させ、還流温度で24時間反応させた。反応終了後、エ−テルにより抽出し、ガスクロマトグラフィ−で分析した結果、ピロガロ−ルが1%の収率で生成していた。【0047】比較例2比較例1に準じ、表3に示す条件下で反応を行った。同表に結果をあわせて示す。 以下の三工程よりなるピロガロールの製造方法であって、[工程1]フェノ−ルを、少なくとも1組のN−Br結合を有する臭素化剤と反応させて2,6−ジブロモフェノ−ルを製造する臭素化工程、[工程2]2,6−ジブロモフェノ−ルを、一般式ROM(式中、Rは低級アルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。)で示される金属アルコキシドと反応させて2,6−ジアルコキシフェノ−ルを製造するアルコキシ化工程、[工程3]2,6−ジアルコキシフェノ−ルを塩化水素酸及び/又は臭化水素酸と反応させてピロガロ−ルを製造する脱アルキル化工程、 反応溶媒としてクロロベンゼンを用いて工程1及び工程2を実施することを特徴とするピロガロールの製造方法。 工程1で使用する臭素化剤が、下記一般式(I)(式中、R1はアルキル基、R2は水素原子又はアルキル基を表す)又は下記一般式(II)(式中、R3はアルキル基を表す)で示されるアミン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。