タイトル: | 特許公報(B2)_ジシクロヘキシルカルボジイミドの製造方法 |
出願番号: | 1996084505 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C267/00 |
今城 靖雄 山根 武 JP 3618890 特許公報(B2) 20041119 1996084505 19960314 ジシクロヘキシルカルボジイミドの製造方法 日清紡績株式会社 000004374 今城 靖雄 山根 武 20050209 7 C07C267/00 JP C07C267/00 7 C07C267/00 米国特許第3426025(US,A) 2 1997249634 19970922 10 20010806 爾見 武志 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はシクロヘキシルイソシアネート(CHI)を原料に、触媒としてTi(OR)4で表せる化合物の1種類または2種類以上の混合物を使用し、高純度のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を合成する方法に関する。【0002】【従来の技術】DCCは脱水剤、反応試剤などとして近年重要性を増しつつあり、その合成には色々な方法が提案されている。【0003】例えばジシクロヘキシルチオ尿素を塩化シアヌルとアルカリで処理する方法(特公昭50―13248号公報)、ジシクロヘキシル尿素をオキシ塩化リンとピリジン塩基で処理する方法(特開昭60―166652号公報)、ジシクロヘキシル尿素をp―トルエンスルホニルクロライドとピリジンで処理する方法(米国特許第2,797,240号)が報告されているが、これらの方法はいずれもチオ尿素あるいは尿素を脱水もしくは脱硫してDCCを得るため、反応が数段階必要であり、収率も低くなり、副生成物も数多くできるため、大量にDCCを合成する場合、不適当である。【0004】また従来よりCHIの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりDCCを得る方法の縮合触媒としてタングステンおよびバナジュウムの酸化物、塩化物の使用が知られているが(特開昭54―66656)、この触媒は、活性が非常に低く、縮合反応に時間を要し、効率的でない。【0005】また、米国特許第3,345,407および3,502,722記載のナトリウム、リチウム、カリウム等の金属触媒も活性が不十分なため、DCCの合成には不向きである。【0006】イソシアネートの縮合反応のための高活性な触媒として、特開平7―17990記載の3―メチル―1―フェニルフォスフォレン―1―オキシドのようなフォスフォレンオキシド類をあげる事ができるが、このような有機燐系触媒を使用し縮合反応した場合、縮合反応後、DCCを蒸留により単離する際、沸点がDCCと近いため、触媒がppmオーダーで不純物としてDCCに混入してしまい、高純度のDCCを得る事ができない。【0007】Ti(OR)4触媒を用いイソシアネートをカルボジイミド化させることは知られている(USP3,426,025)。しかしこの方法では、DCCの精製として単に蒸留手段を用いているため、Rが10以下の触媒は沸点がDCCに比較的近いため、触媒が蒸留の際DCCの留分に混入してきてしまい、得られたDCC中の触媒を1ppm以下にする事は困難で、高純度DCCを得る方法は示されていない。また、Rが11以上のものは一般的に入手が困難で、また、分子量(チタン当量:分子量をチタンで割った値)が大きくなるため、単位重量あたりの活性が低くなり、さらに立体障害も大きくなるためイソシアネートをカルボジイミド化させる反応に非常に時間がかかり不利である(活性(カルボジイミド化反応)に関与するのはTi―O結合である)。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、CHIを出発原料として、DCC中の触媒残量が1ppm以下である高純度のDCCを製造するための方法を提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、下記反応式(1)に示すように、CHIの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりDCCを製造する場合、【0010】【化1】【0011】触媒として、Ti(OR)4(Rは炭素数10以下の脂肪族、脂環族、芳香族のいずれでもよい。)を用いることにより高純度のDCCを得る事を見出した。【0012】【発明の実施の形態】以下本発明をさらに詳しく説明すると、本発明のDCCの製造方法は、CHIを触媒の存在下で縮合させるもので、これによりCHIの脱二酸化炭素によりDCCが得られ、得られたDCCに水又は高級アルコール等を加え触媒とDCCの系を処理してから蒸留し、高純度のDCCが得られるものである。【0013】上記CHIの縮合反応は反応時間を短縮できるので通常無溶媒で行う事が好ましいが、必要によっては沸点が縮合反応以上であり、イソシアネート基又はカルボジイミド基又は触媒と反応することのない溶媒、例えば3―メチル3―メトキシブチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、N―メチル―2―ピロリドン、メトキシブチルアセテート等の溶媒を用いることができる。【0014】縮合反応条件は適宜選択されるが、触媒の存在下、100℃〜170℃が好ましく、特に好ましくは150〜170℃である。また、反応時間は通常3〜15時間である。【0015】触媒の使用量は、原料のCHIに対して0.1〜50重量%、特に0.3〜20重量%である事が望ましい。【0016】触媒として用いるTi(OR)4のRは脂肪族、脂環族、芳香族のいずれでもよいが、炭素数が10以下のものが、好適に用いられる。【0017】しかし、Rの炭素数が5を越えるのものは沸点がDCCよりかなり高いため、蒸留によりある程度DCCが単離できるが、炭素数が5以下の触媒は沸点がDCCと近いため蒸留によってDCCは高純度に単離できない。【0018】本発明において、DCC中に残存する触媒を1ppm以下とするよう高純度化するために、後処理として、不活性な親水性の低沸点溶媒、例えばTHF、アセトン等に合成したDCCを溶解させ、さらに水を加え、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃で1〜3時間ほど反応させる事により触媒は下記の反応(2)により無機の酸化物と低沸点のアルコールに加水分解され、それを蒸留すれば、触媒の無機の酸化物は系内に残留物として、アルコールは使用した溶媒と共に初留分として得られ、高純度のDCCは、次の留分として得る事ができる。【0019】低沸点溶媒の使用は必須ではないが、DCCは水不溶性なので、DCCを溶かす溶媒を混合して処理の効率を向上させることは好ましいことである。【0020】使用できる低沸点溶媒はDCCに不活性で、DCCから蒸留により分離できる低沸点溶媒で、親水性の溶媒であればよくたとえばTHFのようなエーテル、アセトンの様なケトン、メタノール、エタノール、IPAの様なアルコール、及びDMF(ジメチルホルムアミド)、DMAC(ジメチルアセトアミド)などでも良い。【0021】【化2】Ti(OR)4+2H2O→TiO2+4ROH (2)【0022】使用する低沸点溶媒量は何ら制限するものではないが、経済的理由から好ましくはDCCの0.1〜20倍重量で使用出来る。また使用する水の量は上記反応式(2)のような触媒とのモル比すなわち触媒の2倍モル以上であれば可能である。【0023】また上限は特に制限するものではないが、過剰な水は後に蒸留により分離しなければならないので、その点から触媒の100倍モル程度を上限にするのが好ましい。【0024】また、水の替わりに触媒と反応する高沸点アルコール類を0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃で1〜3時間ほど反応させ触媒の炭素数の低いRは反応させた高沸点アルコールのXと全部、または一部を下記の反応式(3)に従い反応置換させ、Rは低沸点のR―OHとして容易にDCCより単離する事ができる。また、触媒のTiはRがXに置換されたため沸点が上昇し、DCCと蒸留により簡単に分離できる。【0025】【化3】Ti(OR)4+4XOH→Ti(OX)4+4ROH (3)【0026】使用するアルコール量は何ら制限するものではないが、経済的理由から好ましくは触媒の4〜100倍重量で、更に好ましくは10〜50倍重量で使用出来る。【0027】また、高沸点アルコールとして多官能アルコールを使用すると下記反応式(4)のように触媒のTiは互いに架橋しあい、沸点が上昇し、また触媒のRはROHとして、DCCと簡単に分離することができる。【0028】【化4】Ti(OR)4+HOYOH→―Ti―OY―Ti―+ROH (4)【0029】チタン触媒を処理するための高沸点アルコールとしては、炭素数6以上の単官能のものたとえばヘキサノール、2―エチレンヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)ペンタメチレングリコール、(ポリ)ヘキサメチレングリコール、1、2―プロパンジオール、1、3―プロパンジオール、1、3―ブタンジオール、1、4―ブタンジオール、1、5―ペンタンジオール、3―メチル―1、5―ペンタンジオール、1、8―オクタンジオール、1、10―デカンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1、4―ブチンジオール、ビスフェノールA、AFおよびS、およびそのハロゲン誘導体、フェノール、ジヒドロキシルベンゼン、グレゾール、ニトロフェノール、等のフェノール誘導体、ビス(2―ヒドロキシルエチル)ハイドロキノン、多官能のアルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1、2、6―ヘキサントリオール、1、2、4―ブタントリオール、トリス(2―ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリス(2―ヒドロキシルメチル)イソシアヌレート、テトラメチロールシクロヘキサン、マンニトール、ズルシトール、スークロース、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、および上記グリコールと二塩基酸とから得られる高分子ポリオールおよび環状エステルおよびエーテル化合物を開環重合して得られるポリオール、そのたポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレン、または酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類、フェノール樹脂、フラン重合体、などが使用できる。【0030】DCCが得られた後、触媒を回収する場合は、一旦蒸留するが、これは本発明において必須の工程ではない。【0031】以下実施例により説明する。【0032】【実施例1】200mlのなす型フラスコに100gのシクロヘキシルイソシアネートとチタン酸テトラn―ブチル2gを加え、170℃で6時間反応させた。【0033】触媒を回収するために得られた黄色の液体を減圧蒸留し、130℃〜135℃/4〜5mmHgの留分で得られたものに低沸点溶媒としてアセトン100gと水4gを加え、40℃で2時間撹拌し触媒を処理し、得られた溶液から減圧蒸留により溶媒と、残存する水を除去し、130℃〜135℃/4〜5mmHgの留分としてDCCを収率98%で得た。ここで得られたDCC中のチタン原子をICP発光分析により測定した結果、チタン触媒は0.1ppm以下で検出されなかった。【0034】【実施例2〜16】実施例1の触媒、処理溶媒を変え、同様に反応を行なった。反応条件と残存チタン触媒の分析結果を表1に示す。【0035】【表1】【0036】【実施例17】200mlのなす型フラスコに100gのシクロヘキシルイソシアネートとチタン酸テトラn―ブチル2gを加え、170℃で6時間反応させた。【0037】触媒を回収するために、得られた黄色の液体を減圧蒸留し、130℃〜135℃/4〜5mmHgの留分として得られた物に高沸点アルコールとしてポリエチレングリコール平均分子量1000を10g加え、60℃で2時間撹拌し触媒を処理し、再び減圧蒸留により溶液を除去し、130℃〜135℃/4〜5mmHgでDCCを収率96%で得た。ここで得られたDCC中のチタン原子をICP発光分析により測定した結果、チタン触媒は0.1ppm以下で検出されなかった。【0038】【実施例20〜31】実施例19の触媒、高沸点アルコールを変え、同様に反応を行なった。反応条件と残存チタン触媒の分析結果を表2に示す。【0039】【表2】【0040】【比較例1〜3】DCC反応混合物を処理溶媒で処理することなく、DCCの蒸留を試みたが、留分のDCC中にはチタン触媒が高濃度に含有されていた。結果を表3に示す。【0041】【表3】【0042】【発明の効果】本発明により残存触媒量を1ppm以下に出来た。 シクロヘキシルイソシアネート(CHI)を、CHIに対して0.1〜10重量%のTi(OR)4(但し、Rは炭素数10以下の脂肪族、脂環族、芳香族のいずれでもよい。)の存在下、100〜170℃で3〜15時間、脱CO2反応を行い、得られるTi(OR)4を残存するジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)に、水又は高沸点のアルコールを加え、0〜100℃で1〜3時間反応させることによってTi(OR)4を分解させ、次いで蒸留によってDCCを単離精製することを特徴とするDCCの製造方法。 10〜60℃で1〜3時間反応させることによってTi(OR)4を分解させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。