タイトル: | 特許公報(B2)_イソチオシアネート化合物の製造法 |
出願番号: | 1996009975 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C331/20,C07C331/22,C07C331/26,C07C331/28,C07C331/30 |
李 革 田嶋 宏邦 大谷 丘士 JP 3688785 特許公報(B2) 20050617 1996009975 19960124 イソチオシアネート化合物の製造法 レンゴー株式会社 000115980 鎌田 文二 100074206 東尾 正博 100084858 鳥居 和久 100087538 李 革 田嶋 宏邦 大谷 丘士 20050831 7 C07C331/20 C07C331/22 C07C331/26 C07C331/28 C07C331/30 JP C07C331/20 C07C331/22 C07C331/26 C07C331/28 C07C331/30 7 C07C331/00 CA(STN) REGISTRY(STN) 特公昭52−039012(JP,B1) 米国特許第3111536(US,A) 2 1997202767 19970805 15 20021113 前田 憲彦 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、イソチオシアネート化合物の製造法に関する。【0002】【従来の技術】イソチオシアネート基を有する化合物の製造方法は、各種が知られている。例えば、(1)オレフィン、エポキシ化合物、ハロゲン化物とチオシアン酸の反応(Chem.Pharm.Bull.(Tokyo),8,486(1960) 、Chem.Pharm.Bull.,17,2110(1969)、米国特許3,111,536 号公報等)、(2)ジチオカルバミン酸塩とクロルギ酸エステルによる反応(Acta.Chem.Scand.,10,432(1956) 、Z.Naturforsch.,Teil B,28,530(1973))、(3)アミノ化合物とチオホスゲンの反応(米国特許2,824,887 号公報、GB 999,221号公報)が知られている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記(1)では、異性体であるチオシアン酸の生成を制御することが容易でなく、(2)では、クロルギ酸エステルが比較的高価であり、また有毒な硫化カルボニルが反応で生成し、(3)では、高価かつ有毒のチオホスゲンを使用するという問題点を有する。また、(1)〜(3)のいずれも、収率が満足できるものではないという問題点も有している。【0004】また、ジチオカルバメートを過酸化水素を用いてイソチオシアネートに転換する方法も知られている(Indian J.Chem.,8,759(1970)、ドイツ国特許 2,105,473号公報)が、この反応は副反応等により収率が低かった。【0005】そこで、この発明の課題は、安全にかつ収率よくイソチオシアネート化合物を製造することにある。【0006】【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明においては、化学式〔3〕R1 −NCS 〔3〕(式中、R1 は、鎖状パラフィン、オレフィン、アルキン、シクロパラフィン、シクロオレフィン、シクロアルキン、芳香環、ヘテロ化合物、又はこれらの置換体を表す。)で表されるイソチオシアネート化合物の製造法として、化学式〔1〕R1 −NH2 〔1〕(式中、R1 は、化学式〔3〕中のR1 と同様である。)で表されるアミノ化合物を塩基の存在下で二硫化炭素と反応させて化学式〔2〕【0007】【化3】【0008】(式中、R1 は、化学式〔3〕におけるR1 と同様であり、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、無置換又は置換されたアンモニウムを表す。)で表されるジチオカルバミン酸又はその塩を生成し、次いで、水溶性有機溶媒の存在下で過酸化水素と反応させることを見いだしたのである。【0009】また、化学式〔6〕SCN−R2 −NCS 〔6〕(式中、R2 は、鎖状パラフィン、オレフィン、アルキン、シクロパラフィン、シクロオレフィン、シクロアルキン、芳香環、ヘテロ化合物、又はこれらの置換体を表す。)で表されるジイソチイオシアネート化合物の製造法として、化学式〔4〕H2 N−R2 −NH2 〔4〕(式中、R2 は、化学式〔6〕におけるR2 と同様である。)で表されるジアミノ化合物を塩基の存在下で二硫化炭素と反応させて化学式〔5〕【0010】【化4】【0011】(式中、R2は、化学式〔6〕におけるR2と同様であり、M1及びM2は、水素原子、アルカリ金属原子、無置換又は置換されたアンモニウムを表す。)で表されるジチオカルバミン酸又はその塩を生成し、次いで、水溶性有機溶媒の存在下で過酸化水素と反応させることを見出したのである。【0012】上記反応において、アミノ化合物と二硫化炭素を反応させることにより、ジチオカルバミン酸又はその塩を生成させ、この反応液をそのまま、又は、ジチオカルバミン酸又はその塩を単離して、過酸化水素との反応に供与するので、チオホスゲン等の有毒物質を用いることなく、また、硫化カルボニル等の有毒ガスを発生することなく、安全にイソチオシアネート化合物を生成することができ、また、収率も向上させることができる。【0013】これらの化合物は、医農薬の合成原料として用いることができ、また、抗菌作用や抗かび作用を有するので、抗菌剤や抗かび剤としても用いることもできる。特に、上記の製造方法を用いることにより、同一分子内に水酸基等の官能基を有するイソチオシアネート化合物も製造することが可能となり、新規化合物を供与することが可能となった。【0014】【発明の実施の形態】この発明について、更に詳しく説明する。【0015】この発明のかかる製造法に用いられる原料として用いられるアミノ化合物は、一般的に化学式〔1〕で表される。【0016】R1 −NH2 〔1〕ここでR1 は、鎖状パラフィン、オレフィン、アルキン、シクロパラフィン、シクロオレフィン、シクロアルキン、芳香環、ヘテロ化合物、又はこれらの置換体としては、特に限定されるものではない。このようなR1 を有する上記化学式〔1〕で表されるアミノ化合物の具体例としては、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−アミルアミン、t−アミルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、1−エチルプロピルアミン、イソアミルアミン、1−メチルブチルアミン、2−メチルブチルアミン、ジイソプロピルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン、2−ヘプチルアミン、3−ヘプチルアミン、n−ヘプチルアミン、1,5−ジメチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−メチルヘプチルアミン、n−オクチルアミン、t−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、アリルアミン、プロパルギルアミン、1,1−ジメチルプロパルギルアミン、(アミノメチル)シクロプロパン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロヘキサンメチルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、1−シクロヘキシルエチルアミン、シクロオクチルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、2−(1−シクロヘキシル)エチルアミン、アリルシクロヘキシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、アニリン、トルイジン、エチルアニリン、アニシジン、フェネチジン、2−(アミノメチル)−1−エチルピロリジン、2−(アミノエチル)−1−メチルピロリジン、3−(アミノメチル)ピリジン、4−(アミノメチル)ピリジン、2−(2−アミノエチル)−1−メチルピロール等をあげることができる。【0017】また、上記置換基としては、パラフィン、オレフィン等以外の水酸基、カルボキシル基等の官能基であってもよい。【0018】R1 の置換基として水酸基を有するものは、特に限定されるものではない。このようなR1 を有する上記化学式〔1〕で表されるアミノ化合物の具体例としては、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、3−アミノ−2,2−ジメチルプロパノール、6−アミノ−1−ヘキサノール、6−アミノ−2−メチル−2−ヘプタノール、4−アミノ−シクロヘキサノール、trans−2−アミノシクロヘキサノール、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノール、4−(2−アミノエチル)フェノール、4−アミノフェノール、4−アミノクレゾール、4−アミノベンジルアルコール、4−アミノフェネチルアルコール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等をあげることができる。【0019】また、R1 の置換基としてカルボキシル基を有するものは、特に限定されるものではない。このようなR1 を有する上記化学式〔1〕で表されるアミノ化合物の具体例としては、3−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、3−アミノイソ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノ−3−メチル吉草酸、2−アミノ−4−メチル吉草酸、7−アミノ−ヘプタン酸、2−アミノカプリル酸、8−アミノカプリル酸、2−アミノ−4−ペンテン酸、trans−4−(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、4−アミノメチル安息香酸、6−アミノニコチン酸、4−アミノフェニル酢酸、4−アミノフェニルプロピオン酸、4−アミノフェニル酪酸等をあげることができる。【0020】さらに、この発明に係る製造法の原料として用いられるアミノ化合物としては、一分子中に1級アミノ基を2つ含有するジアミノ化合物であってもよい。これは、化学式〔4〕H2 N−R2 −NH2 〔4〕で表され、これを用いると、一分子中にイソチオシアネート基を2つ含有するジイソチオシアネート化合物を製造することができる。【0021】上記化学式〔4〕のR2 は、鎖状パラフィン、オレフィン、アルキン、シクロパラフィン、シクロオレフィン、シクロアルキン、芳香環、ヘテロ化合物、又はこれらの置換体を表す。【0022】上記R2 としては、特に限定されるものではない。このようなR2 を有する上記化学式〔4〕で表されるジアミノ化合物の具体的としては、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、1,8−p−メンタンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−メチレンジアニリン等が挙げられる。【0023】上記化学式〔1〕で表されるアミノ化合物を、塩基の存在下で二硫化炭素と反応させることにより、下記化学式〔2〕で表されるジチオカルバミン酸又はその塩が生成される(以下、この反応を「第1反応」と称する)。【0024】【化5】【0025】なお、化学式〔2〕中、R1 は化学式〔1〕におけるR1 と同様である。また、Mは、水素原子、Na、K等のアルカリ金属原子、無置換又は置換されたアンモニウムを表す。【0026】但し、第1反応に供与するアミノ化合物が化学式〔4〕で表されるジアミノ化合物であるときは、両方のアミノ基が反応するので、化学式〔5〕で表されるジチオカルバミン酸又はその塩が生成される。【0027】【化6】【0028】なお、化学式〔5〕中、R2 は化学式〔4〕におけるR2 と同様であり、M1 及びM2 は、水素原子、Na、K等のアルカリ金属原子、無置換又は置換されたアンモニウムを表す。【0029】上記第1反応における上記アミノ化合物と二硫化炭素の使用割合は、特に限定されるものではないが、反応効率の面から、上記アミノ化合物中のアミノ基1当量当たり1.0〜10.0倍当量がよく、1.5〜5.0倍当量が好ましい。1.0倍当量未満だと、チオ尿素誘導体が生成し収率が低下する。【0030】上記第1反応に使用される塩基は、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、2級、3級又は4級アミン、複素環式アミン等があげられ、好ましくは、水酸化アルカリ金属として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、3級アミンとしてトリエチルアミンが用いられる。塩基を添加しない場合は、反応が極めて遅くなるので好ましくない。【0031】また、上記塩基が反応溶液に溶解しないときは、両者を相溶させるため、水を少量用いることができる。水の使用量は特に限定されないが、反応効率の面から、上記塩基が反応溶液と均一状態になり得る量を用いればよい。【0032】塩基の使用量は、上記アミノ化合物の有する官能基の種類によって異なる。すなわち、上記アミノ化合物が、反応生成物であるイソチオシアネート化合物中のイソチオシアネート基と反応し、副反応物を容易に生じさせる官能基を有していない場合は、上記アミノ化合物中のアミノ基1当量に対し、0.2〜2倍当量用いるのがよく、0.6〜1.2倍当量が好ましい。0.2倍当量未満だと、反応の進行が遅くなり、2倍当量を越えると副反応が生じやすい。【0033】また、上記アミノ化合物の有する官能基が水酸基等のイソチオシアネート基と反応性を有する官能基の場合は、上記反応に使用される塩基の量は、触媒量で充分である。塩基の量が多すぎる場合は、上記水酸基等の反応性を有する官能基が反応生成物であるイソチオシアネート化合物中のイソチオシアネート基と反応し、環化、二量化等の副反応が促進される。【0034】さらに、上記アミノ化合物の官能基がカルボキシル基等の酸性基の場合は、上記アミノ化合物の酸性基の当量分の塩基を加え、その上に上記の量を添加する必要がある。【0035】次に、第1反応で得られたジチオカルバミン酸又はその塩を水溶性有機溶媒の存在下、過酸化水素を徐々に添加することにより、イソチオシアネート化合物が製造される(以下、この反応を「第2反応」と称する)。【0036】第2反応に供与するジチオカルバミン酸又はその塩は、第1反応で得られたものを単離して用いることができるが、この場合、アミノ化合物への逆反応を防ぐため、再度、二硫化炭素を添加することが好ましい。また、特に単離することなく、第1反応の反応液をそのまま第2反応に供与した場合は、単離するためのロス、時間を節約することができ、効率をあげることができる。【0037】第2反応で生成されるイソチオシアネート化合物は下記化学式〔3〕で表される。【0038】R1 −NCS 〔3〕なお、式中、R1 は、化学式〔1〕におけるR1 と同様である。【0039】また、化学式〔5〕で表されるジジチオカルバミン酸又はその塩を用いた場合は、下記化学式〔6〕で表されるジイソチオシアネート化合物を製造できる。【0040】SCN−R2 −NCS 〔6〕なお、式中、R2 は、化学式〔4〕におけるR2 と同様である。【0041】上記第2反応に用いられる過酸化水素の使用量は、反応に供与されたジチオカルバミン酸又はその塩1当量に対して、1.0倍当量以上、好ましくは、2〜4倍当量である。更なる過酸化水素の添加は、収率に対しては特に影響を与えないが、反応効率の点から好ましくない。【0042】上記水溶性有機溶媒としては、水と均一に混合する有機溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ピリジン等の塩基性溶媒をあげることができ、その中でも、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が好ましい。なお、この水溶性有機溶媒は、第1反応において添加することもできる。【0043】第2反応の原料として、化学式〔2〕や化学式〔5〕で表される単離されたジチオカルバミン酸又はその塩を用いる場合、又は第1反応の反応液をそのまま第2反応に用いる場合であって、第1反応で上記水溶性有機溶媒を添加していない場合は、第2反応において、上記水溶性有機溶媒を添加する必要があるが、第2反応の原料として第1反応の反応液をそのまま第2反応に用いる場合であって、第1反応で上記水溶性有機溶媒を添加している場合は、第2反応において、特に上記水溶性有機溶媒を添加する必要はない。【0044】上記第2反応は、特に限定されるものではないが、副反応を抑えるために0〜40℃に維持するのが好ましく、特に、生成物であるイソチオシアネート化合物の有する官能基がイソチオシアネート基と反応性を有する場合は、副反応を抑えるため、0〜15℃に維持するのが好ましい。また、反応時間は、第2反応自体が非常に速やかに進行することから、過酸化水素添加後、1時間以内で充分である。このようにして生成した第2反応液中のイソチオシネート化合物は、一般的な方法によって回収することができる。例えば、第2反応液を、必要に応じて塩酸等の酸処理をした後、生成物を酢酸エチル等の抽出溶媒で抽出した後、溶媒を留去することにより回収することができる。更に、精製が必要な場合は、蒸留、再結晶及びカラムクロマトグラフィーによって精製を行うことができる。【0045】【実施例】〔実施例1〕 n−ブチルイソチオシアネートの合成n−ブチルアミン0.10mol、水酸化ナトリウム0.10mol、10/1のテトラヒドロフラン/水混合液100mlの溶液に、二硫化炭素0.50molを反応温度0〜5℃に制御しながら攪拌添加した。次いで、30%過酸化水素0.27molを上記温度を維持しながら滴下した後、塩酸を用いて溶液をわずかに酸性にした。過剰の二硫化炭素及びテトラヒドロフランを留去し、ヘキサンで抽出した。ヘキサンを減圧留去して得られた残渣を、蒸留して精製し、n−ブチルイソチオシアネート10.7g(収率93%)を得た。【0046】〔実施例2〕 3−メトキシプロピルイソチオシアネートの合成3−メトキシプロピルアミン0.081mol、水酸化ナトリウム0.081mol、10/1のテトラヒドロフラン/水混合液100mlの溶液に、二硫化炭素0.12molを反応温度0〜5℃に制御しながら攪拌添加した。次いで、30%過酸化水素0.22molを40℃下で滴下した後、塩酸を用いて溶液をわずかに酸性にした。過剰の二硫化炭素及びテトラヒドロフランを留去し、ヘキサンで抽出した。ヘキサンを減圧留去して得られた残渣を、蒸留して精製し、3−メトキシプロピルイソチオシアネート9.83g(収率92%)を得た。【0047】〔実施例3〕 5−イソチオシアネート−1−ペンタノールの合成5−アミノ−1−ペンタノール0.075mol、触媒量のトリエチルアミン、テトラヒドロフラン75mlの溶液に二硫化炭素0.36molを反応温度30〜35℃に制御しながら添加し、更に1時間攪拌した。次いで、30%過酸化水素0.21molを0〜10℃で滴下した後、塩酸を用いて溶液をわずかに酸性にした。過剰の二硫化炭素及びテトラヒドロフランを留去した後、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを減圧留去して得られた残渣を、酢酸エチル−クロロホルムを展開剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、5−イソチオシアネート−1−ペンタノール10.3g(収率95%)を得た。【0048】〔実施例4〕 2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノールの合成2−(2−アミノエトキシ)エタノール0.075mol、及び溶媒にジオキサン75mlを用いた以外は実施例3と同様に行い、2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノール9.8g(収率92%)を得た。この赤外吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)元素分析値を表1に示す。【0049】【表1】【0050】〔実施例5〕 4−イソチオシアネート−1−ブタノールの合成4−アミノ−1−ブタノール0.075mol、及び溶媒にジオキサン75mlを用いた以外は実施例3と同様に行い、4−イソチオシアネート−1−ブタノールを得た(収率78%)。【0051】〔実施例6〕 4−イソチオシアネートエチルフェノールの合成チラミン0.075molを用いた以外は実施例3と同様に行い、4−イソチオシアネートエチルフェノール12.6g(収率93%)を得た。【0052】〔実施例7〕 6−イソチオシアネートカプロン酸の合成6−アミノカプロン酸0.075mol、トリエチルアミン0.083mol、メタノール100mlの懸濁液に二硫化炭素0.36molを添加し、室温で一晩攪拌反応した。次いで、30%過酸化水素0.21molを10℃以下で滴下した後、塩酸を用いて溶液をわずかに酸性にした。過剰の二硫化炭素及びメタノールを留去し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを減圧留去して得られた残渣を、クロロホルム−メタノール−ヘキサンを展開剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、6−イソチオシアネートカプロン酸8.8g(収率67%)を得た。【0053】〔実施例8〕 1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの合成1,6−ヘキサメチレンジアミン0.057mol、水酸化ナトリウム0.114mol、テトラヒドロフラン90ml,蒸留水10mlの溶液に二硫化炭素0.17molを10〜20℃に制御しながら添加し、更に10分間攪拌した。次いで、30%過酸化水素0.34molを20〜30℃で滴下した後、塩酸を用いて溶液をわずかに酸性にした。過剰の二硫化炭素及びテトラヒドロフランを留去し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを減圧留去して得られた油状物を、ベンゼン−ヘキサンを展開剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート10.5g(収率92%)を得た。【0054】〔実施例9〕 1,6−ヘキサメチレンジアミン0.057mol、トリエチルアミン0.114mol、テトラヒドロフラン100mlの溶液に二硫化炭素0.17molを10〜20℃に制御しながら添加し、更に10分間攪拌した。次いで、30%過酸化水素0.34molを20〜30℃で滴下した後、実施例8と同様に処理して、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート10.0g(収率88%)を得た。【0055】〔実施例10〕 1,4−シクロヘキシルジイソチオシアネートの合成1,4−シクロヘキシルジアミン(cis−,trans−混合物)0.057molを用いた以外は、実施例8と同様に行い、trans−1,4−シクロヘキシルジイソチオシアネート7.2g(mp.145.8〜147.1℃)と、cis−1,4−シクロヘキシルジイソチオシアネート1.6g(mp.57.9〜58.6℃)を得た(収率78%)。【0056】〔実施例11〕 1,3−ビス(イソチオシアネートメチル)シクロヘキサンの合成法1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン0.057mol、水酸化カリウム0.114mol、ジオキサン90ml、蒸留水10mlの溶液に二硫化炭素0.17molを10〜20℃に制御しながら添加し、更に10分間攪拌した。次いで、30%過酸化水素0.34molを20〜30℃で滴下した後、実施例8と同様に処理して、1,3−ビス(イソチオシアネートメチル)シクロヘキサン12.0g(収率93%)を得た。【0057】〔実施例12〕 p−キシレンジイソチオシアネートの合成p−キシレンジアミン0.057molを用いた以外は、実施例8と同様に行い、p−キシレンジイソチオシアネート9.8g(mp.63.8〜64.5℃、収率78%)を得た。【0058】〔実施例13〕 フェニルイソチオシアネートの合成アニリン0.054mol、水酸化ナトリウム0.054mol、蒸留水50ml、テトラヒドロフラン100mlの溶液に二硫化炭素0.054molを添加し、室温で30分間攪拌した。次いで、30%過酸化水素0.060molを反応温度が10℃を越えないように徐々に添加し、添加終了後室温で10分攪拌した。塩酸を加えて溶液をわずかに酸性にした後、過剰の二硫化炭素及びテトラヒドロフランを留去し、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタンを減圧留去して得られた残渣を、蒸留して精製し、フェニルイソチオシアネート4.64g(収率64%)を得た。【0059】〔実施例14〕 p−ヒドロキシフェニルイソチオシアネートの合成p−アミノフェノール0.10mol、トリエチルアミン0.10mol、テトラヒドロフラン50mlの溶液に二硫化炭素0.10molを添加し、室温で30分間攪拌した。次いで、30%過酸化水素0.10molを反応温度が10℃を越えないように徐々に添加し、添加終了後室温で10分攪拌した。塩酸を加えて溶液をわずかに酸性にした後、過剰の二硫化炭素及びテトラヒドロフランを留去し、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタンを減圧留去して得られた残渣を、蒸留して精製し、p−ヒドロキシフェニルイソチオシアネート12.70g(収率84%)を得た。【0060】〔実施例15〕 n−ブチルイソチオシアネートの合成n−ブチルアミン0.10mol、水酸化ナトリウム0.10mol、蒸留水20mlの溶液に、二硫化炭素0.50molを添加し、TLCの原料アミンのスポットが完全に消失するまで、攪拌反応した。そのようにして得られるジチオカルバメート溶液に、テトラヒドロフラン100mlを添加した後、30%過酸化水素0.27mlを滴下し、イソチオシアネートに転換した。後の処理は、実施例1と同様に行い、n−ブチルイソチオシアネート10.1g(収率88%)を得た。【0061】〔実施例16〕 n−ブチルイソチオシアネートの合成n−ブチルアミン0.10mol、トリエチルアミン0.10mol、ベンゼン100mlの溶液に、二硫化炭素0.15molを添加し、TLCの原料アミンのスポットが完全に消失するまで、攪拌反応した。それから、減圧下で溶媒を完全に留去し、ほぼ定量的にn−ブチルジチオカルバメートを単離した。それに、テトラヒドロフラン90mlを添加した後、30%過酸化水素0.27mlを滴下し、イソチオシアネートに転換した。後の処理は、実施例1と同様に行い、n−ブチルイソチオシアネート9.2g(収率80%)を得た。【0062】〔比較例1〕 水溶性有機溶媒を用いない場合二硫化炭素0.10mol、水酸化ナトリウム0.10mol、蒸留水20mlに、n−ブチルアミン0.10molを添加し、40〜45℃で2時間攪拌した。続いてpHを6〜8に調整しながら90〜100℃で30%過酸化水素0.22molを滴下した。それからヘキサンを用いて抽出後、ヘキサンを留去した後、n−ブチルイソチオシアネート7.3g(収率63%)を得た。【0063】〔比較例2〕 水溶性有機溶媒を用いない場合二硫化炭素0.10mol、水酸化ナトリウム0.10mol、蒸留水16mlに、3−メトキシプロピルアミン0.10molを徐々に添加し、約35℃で2時間攪拌した。続いてpHを6〜8に調整しながら90〜100℃で30%過酸化水素0.22molを滴下した。それからヘキサンを用いて抽出後、ヘキサンを留去した後、3−メトキシプロピルイソチオシアネート5.96g(収率45%)を得た。【0064】〔比較例3〕 水と均一に混合しない溶媒を用いた場合実施例4において、テトラヒドロフランの代わりにベンゼンを用いた以外は同様に反応を行った。反応の結果、2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノールの収率は14%であった。【0065】〔比較例4〕 水溶性有機溶媒を用いない場合2−(2−アミノエトキシ)エタノール0.075mol、ジエチルアミン0.08molに、二硫化炭素0.133molを2〜24℃で添加した後、過酸化水素0.073molを添加した。反応液を分析した結果、2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノールの生成率は0%であった。【0066】〔比較例5〕 水溶性有機溶媒を用いない場合2−(2−アミノエトキシ)エタノール0.075mol、蒸留水12ml、水酸化ナトリウム0.075molに二硫化炭素0.0767molを添加し、更に40〜45℃で2時間攪拌した。その後、過酸化水素0.209molを87〜100℃で添加した。反応液を分析した結果、2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノールの生成率は0%であった。【0067】〔比較例6〕 他の反応方法2−(2−アミノエトキシ)エタノール0.075mol、5%NaHCO3 275mlにチオホスゲン0.075molとクロロホルム180mlの溶液を添加し、チオホスゲンの色が消失するまで激しく攪拌した。そのクロロホルム相を希塩酸で洗浄し、クロロホルムを減圧留去して黄色油状物である2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノール2.8g(収率59%)を得た。【0068】〔比較例7〕 他の反応方法二硫化炭素40mlに、2−(2−アミノエトキシ)エタノール6.1gとトリエチルアミン8.3mlを添加し、更に氷水浴中で1時間攪拌した後、二硫化炭素を留去し、その残渣をエーテルを用いて洗浄した。そのようにして得られたジチオカルバメートにクロロホルム20mlとトリエチルアミン8.3mlを添加した溶液に、クロロ蟻酸エチル5.4mlを10分間で滴下した後、氷水浴中で15分、更に室温で1時間攪拌した。それから反応液を1N塩酸及び蒸留水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、クロロホルムを減圧留去して2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノール6.0g(収率49%)を得た。【0069】〔比較例8〕 水溶性有機溶媒を用いない場合1,6−ヘキサメチレンジアミン0.052mol、水酸化ナトリウム0.10mol及び蒸留水40mlに二硫化炭素0.16molを添加し、更に30℃で3時間反応させた。その後、30%過酸化水素0.26molを反応温度80℃に制御しながら添加し、冷却後、塩酸を用いて酸性化した。そして、酢酸エチルにより油状物を抽出後、溶媒を減圧留去して、粗生成物を得た。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの収率を高速液体クロマトグラフィーを用いて定量した結果、56%であった。【0070】〔比較例9〕 水溶性有機溶媒を用いない場合アニリン0.054mol、水酸化ナトリウム0.054mol、蒸留水50mlの溶液に二硫化炭素0.054molを添加し、室温で30分間攪拌した。次いで、30%過酸化水素0.060molを反応温度が10℃を越えないように徐々に添加し、添加終了後室温で10分攪拌した。塩酸を加えて溶液をわずかに酸性にした後、生じた沈殿を濾過し、この沈殿をメタノールで抽出した後乾固した。これを分析したところ、フェニルイソチオシアネートの生成率は0%であり、副生成物であるN,N’−ジフェニルチオ尿素が5.86g生成していた。【0071】抗菌試験上記実施例3〜6で得られたヒドロキシイソチオシアネート化合物について、下記の方法により、抗菌試験を行った。【0072】復水液(ポリペプトン 10g/l,酵母エキス 2g/l,MgSO4 ・7H2 O 1g/l,pH7.0)10mlの入った試験管に、スタヒロコッカス・アウレウス(IFO 12732)を植菌し、37℃、150spmで5時間前培養を行ったあと、1〜2×107 cell/mlに希釈した懸濁溶液0.3mlと所定量の検体を溶解したエタノール溶液0.3mlを、表2に示すチオグリコレート培地Iに上記実施例3〜6で得られたヒドロキシイソチオシアネート化合物の所定量が添加された培地30mlに添加、30℃、220rpmで培養した。上記ヒドロキシイソチオシアネート化合物の添加量をいろいろ変え、2日目と4日目において、肉眼観察により上記菌の発育の有無を調べ、上記菌が生育しない最小の上記ヒドロキシイソチオシアネート化合物の添加濃度、すなわち最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。その結果を表3に示す。【0073】抗かび試験上記実施例3〜6で得られたヒドロキシイソチオシアネート化合物について、下記の方法により、抗かび試験を行った。【0074】アスペルギルス・ニガー(ATCC 38857)、又はペニシリウム・シトリナム(ATCC 9849)をポテトデキストロース寒天培地(ポテト浸出液0.4%、グルコース2%、寒天1.5%、pH6.0±0.1)に植菌し、28℃で7日間前培養した。次いで、界面活性剤を含むリン酸緩衝生理食塩水(NaCl 0.85%、ジチオスルホコハク酸ナトリウム0.005%、KH2 PO4 0.0085%)に上記の培養した胞子を十分に分散させた。その胞子懸濁液を殺菌した脱脂綿を用いて濾過し、菌糸及び胞子の塊を除いた。さらに上記界面活性剤を含むリン酸緩衝生理食塩水を用いて、胞子数が1〜5×105 個/mlとなるように調製し、胞子懸濁溶液とした。【0075】また、70%エタノール溶液に上記実施例3〜6で得られたヒドロキシイソチオシアネート化合物を加えて上記化合物濃度が20,000μg/mlとなるように調製した。この調製エタノール溶液を上記70%エタノール溶液で希釈し、種々の上記ヒドロキシイソチオシアネート化合物濃度を有するエタノール溶液を調製し、サンプル試験溶液とした。【0076】上記サンプル試験溶液50μl及び上記胞子懸濁溶液100μlをグルコース・ペプトン液体培地(ブドウ糖2%、酵母エキス0.2%、MgSO4 ・7H2 O、ポリペプトン0.5%、KH2 PO4 0.1%、pH5.7±0.1)に添加し、全量を10mlとした。これを25℃で7時間振とう培養し、4日目と7日目において、肉眼観察により上記かびの発育の有無を調べ、上記かびが生育しない最小の上記ヒドロキシイソチオシアネート化合物の添加濃度、すなわち最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。その結果を表3に示す。【0077】【表2】【0078】【表3】【0079】【発明の効果】この発明は、アミン化合物と二硫化炭素を反応させることにより、ジチオカルバミン酸化合物を生成させ、これらを水溶性有機溶媒の存在下、過酸化水素と反応させるので、チオホスゲン等の有毒物質を用いることなく、また、硫化カルボニル等の有毒ガスを発生することなく、安全にイソチオシアネート化合物を生成することができ、また、収率も向上させることができる。【0080】これらの化合物は、医農薬や化学品の合成原料として用いることができ、また、抗菌作用や抗かび作用を有するので、抗菌剤や抗かび剤としても用いることもできる。特に、上記の製造方法を用いることにより、同一分子内に水酸基等の官能基を有するイソチオシアネート化合物も製造することが可能となり、新規化合物である2−(2−イソチオシアネートエトキシ)エタノール等を供与することが可能となった。 化学式〔1〕R1−NH2 〔1〕(式中、R1は、鎖状パラフィン、オレフィン、アルキン、シクロパラフィン、シクロオレフィン、シクロアルキン、芳香環、ヘテロ化合物の水酸基置換体又はカルボキシル基置換体を表す。)で表されるアミノ化合物を塩基の存在下で二硫化炭素と反応させて化学式〔2〕(式中、R1は、化学式〔1〕におけるR1と同様であり、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、無置換又は置換されたアンモニウムを表す。)で表されるジチオカルバミン酸又はその塩を生成し、次いで、水溶性有機溶媒及び二硫化炭素の存在下、0〜40℃で過酸化水素と反応させることによる、化学式〔3〕R1−NCS 〔3〕(式中、R1は、化学式〔1〕におけるR1と同様である。)で表されるイソチオシアネート化合物の製造法。 化学式〔4〕H2N−R2−NH2 〔4〕(式中、R2は、鎖状パラフィン、オレフィン、アルキン、シクロパラフィン、シクロオレフィン、シクロアルキン、芳香環、ヘテロ化合物、又はこれらの置換体を表す。)で表されるジアミノ化合物を塩基の存在下で二硫化炭素と反応させて化学式〔5〕(式中、R2は、化学式〔4〕におけるR2と同様であり、M1及びM2は、水素原子、アルカリ金属原子、無置換又は置換されたアンモニウムを表す。)で表されるジジチオカルバミン酸又はその塩を生成し、次いで、水溶性有機溶媒及び二硫化炭素の存在下、0〜40℃で過酸化水素と反応させることによる、化学式〔6〕SCN−R2−NCS 〔6〕で表されるジイソチオシアネート化合物の製造法。