タイトル: | 特許公報(B2)_連鎖球菌および腸球菌による感染症の診断および治療 |
出願番号: | 1995519953 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 15/09,A61K 39/02,A61K 39/09,A61K 39/395,C07H 21/04,C07K 14/315,C07K 16/12,C12P 21/00,C12P 21/08,C12Q 1/68,G01N 33/569,C12R 1/46,C12R 1/01 |
バーニー ジェイムズ ピーター マシューズ ラス クリスティン JP 3744937 特許公報(B2) 20051202 1995519953 19950130 連鎖球菌および腸球菌による感染症の診断および治療 ニュウテック ファーマ パブリック リミテッド カンパニー 鈴木 弘男 バーニー ジェイムズ ピーター マシューズ ラス クリスティン GB 9401689.6 19940128 20060215 C12N 15/09 20060101AFI20060126BHJP A61K 39/02 20060101ALI20060126BHJP A61K 39/09 20060101ALI20060126BHJP A61K 39/395 20060101ALI20060126BHJP C07H 21/04 20060101ALI20060126BHJP C07K 14/315 20060101ALI20060126BHJP C07K 16/12 20060101ALI20060126BHJP C12P 21/00 20060101ALI20060126BHJP C12P 21/08 20060101ALI20060126BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20060126BHJP G01N 33/569 20060101ALI20060126BHJP C12R 1/46 20060101ALN20060126BHJP C12R 1/01 20060101ALN20060126BHJP JPC12N15/00 AA61K39/02A61K39/09A61K39/395 DA61K39/395 RC07H21/04 BC07K14/315C07K16/12C12P21/00 BC12P21/08C12Q1/68 AG01N33/569 FC12N15/00 AC12R1:46C12P21/00 BC12R1:01C12P21/00 BC12R1:46 C12N 15/09 ZNA A61K 39/02 A61K 39/09 ADZ A61K 39/395 A61K 39/395 C07H 21/04 C07K 14/315 C07K 16/12 C12P 21/00 C12P 21/08 C12Q 1/68 G01N 33/569 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) MEDLINE(STN) BIOTECHABS(STN) WPIDS(STN) EMBASE(STN) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/GeneSeq 特表昭60−500684(JP,A) Infection and Immunity (1991), 59(9), 3309-12 25 GB1995000186 19950130 WO1995020658 19950803 1997509569 19970930 58 20011210 内藤 伸一 この発明は、連鎖球菌(Storeptococci)および腸球菌(Enterococci)による感染症、特に心内膜炎(endocarditis)および敗血症(septicaemia)の診断、予防および治療に関する。心内膜炎は、一般に、連鎖球菌および腸球菌の感染によって引き起こされる。これらは、感染患者の心臓弁内で生育し、それに障害を与える細菌種である。心内膜炎は、現在、臨床的特徴、心エコー図および心雑音の存在によって診断されている。原因微生物は、血液培養によって同定される(培養陽性心内膜炎)のが一般的である。しかしながら、心内膜炎の感染患者のおよそ10%において培養血液が陰性である。このことが診断を誤らせ、および/または治療を遅らせることになりかねない。培養血液が陰性となる活性で感染性の心内膜炎が存在することは、今世紀の初頭から臨床学的にも認識されていた。そのような培養陰性心内膜炎の原因因子としては、(1)以前に抗生物質治療を受けたこと、(2)選好性で遅延生育性の細菌、および(3)非細菌性微生物などが挙げられる。リウマチ熱、心臓弁障害または人工心臓を有する患者は、通常の歯科処置や胃腸処置を受けただけで二次的な連鎖球菌感染を受けて心内膜炎になる危険性がある。さらに、近年大きくなっている問題は、バンコマイシン抵抗性腸球菌(vancomycin−resistent enterococci:VRE)の蔓延である。許可されている抗生物質の多くまたは全てに対して抵抗性のある腸球菌の出現は治療の選択の幅を少なくしており、最近の研究によれば、血液中にVREが存在した患者の36.6%が死亡しており、バンコマイシンに感受性の腸球菌における16.4%と対照的である。したがって、あらゆる種類の腸球菌、特にVREに対する治療が切望されている。心内膜炎(特に培養陰性の心内膜炎)の診断法の一つは、患者の血清をイミノブロッティングして、原因微生物に対する抗生物質の増加レベル、および種特異性と考えられるイミノブトットのパターンを調べることである(Clark & Burnie, J. Clin. Pathol. 1991, 44, 152-156;Burnie et., J. Clin. Pathol, 1987, 40:1149-1158;Burnie & Clark, J. Immunol. Methods, 1989, 123:217-225)。しかしながら、連鎖球菌および腸球菌の個々の種(species)を同定することはできるが、種の間で幾つかの交差反応があり絶対的な診断を困難にすることがある。また、イムノブロッティングは、煩雑であるとともに高価である。培養陽性心内膜炎および培養陰性の心内膜炎の両者に対する現行の治療に必要な抗生物質の中には高毒性のものがあり、例えば、バンコマイシンやゲンタマイシンは腎毒性や聴器毒性を有する場合がある。さらに、微生物がもはや存在しないと考えられる場合であっても熱がしつこく残存するために、抗生物質に対する患者の応答性を評価することは困難である。本発明は、培養陽性心内膜炎および培養陰性心内膜炎の両者に特異的な連鎖球菌および腸球菌に起因する感染症の診断および治療(本明細書における「治療」とは予防を含むと解すべきものとする)する方法であって、これにより上述の問題を少なくともかなりの程度克服する方法を提供するものである。実験により連鎖球菌抗原のクローニング、配列決定および特性分析を行った結果、連鎖球菌および腸球菌による感染中に発現されるタンパク質を決定することができ、それとともに、該蛋白質の免疫原性フラグメント(断片)であって、連鎖球菌および腸球菌による感染症の予防および治療に有用なフラグメントを得ることができた。本発明に従えば、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現され、且つ、少なくとも以下の配列式(1)を有するヒト血清から分離された精製細菌タンパク質、または、その免疫原生フラグメント、または、その類縁体(アナログ)が提供される:式(1)における各アルファベット文字は独立したアミノ酸を表すと理解すべきであり、それぞれは、アミノ酸について慣用的に使用されている単一アルファベット文字である。本発明に従い連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現される細菌タンパク質は、該タンパク質の全体的な機能が保持されている限り、配列式(1)における1個またはそれ以上のアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されたタンパク質を包含する。本発明に従う細菌タンパク質は、さらに、次の性質の一方または両方を特徴とする。(1)免疫主体保存(immunodominant conserved)抗原であること。(2)敗血症感染に対して防御された動物モデル(マウス)における組換えヒト抗体であること。本発明に従う細菌タンパク質は、さらに、心臓弁への結合にも関与していることも特徴とすることができる。該細菌タンパク質は、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptoccocus sanguis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・ミチオー(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・パラサンギス(Streptococcus parasanguis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)から成る群の1つより得ることができる。さらに、この細菌タンパク質は、バンコマイシン抵抗性のエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)から成る群の1つより得ることもできる。連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現される細菌タンパク質の特定フラグメントには、任意のペプチドエピトープ(「免疫原性フラグメント(immunogenic fragments)」、例えば、数個のアミノ酸またはその類縁体が含まれる。そのようなエピトープとしては、YEVEKPLEPAPVAPS、SYENEPTPPVKTPD、KTPDQPEPSKPEEPT、EPAPVAPSYENEPTP、YEVEKELVDLPVEPS、KTPDQNIPDKPVEPT、TMYPNRQPGSGWDSSおよびWYSLNGKIRAVDVPKが挙げられる。このようなペプチドは、従来から存する液相または固相のペプチド合成技術を用いて合成することができる。別の視点として本発明は特に、少なくとも配列式(1)もしくはその免疫原性フラグメント、またはその類縁体を含むアミノ酸配列を有し連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現される組換え細菌タンパク質を提供する。前述したように、心内膜炎に対する現行の治療は抗生物質によるものであり、他の症候が緩和された後でも熱が残存するために評価するのが困難になることが多い。抗生物質による治療の効率、例えば、最低阻害濃度、最低細菌濃度およびバック滴定を測るのに現在可能なテストは、単に微生物の感受性を測定するものであり、患者内の実際の微生物の死亡を検知するものではない。後に詳述するように、本発明者は初めて、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(S.gordonii)、ストレプトコッカス・サンギス(S.sanguis)およびストレプトコッカス・ミチス(S.mitis)による心内膜炎に罹り抗生物質治療を受けている患者においては、疾病の消退に伴い2週間以内にIgM力価が少なくとも50%降下することを示した。このことによって抗生物質治療を成功させる直接的なマーカーが得られ、病原体の死亡に対する直接的なマーカーを示すことが初めて可能となった。このIgM抗体は心内膜炎に特異的であるので、培養陽性心内膜炎および培養陰性心内膜炎の双方、特に培養陰性心内膜炎の診断に用いることができる。かくして、本発明は、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現する細菌タンパク質に対するIgM抗体を用いる培養陽性心内膜炎および培養陰性心内膜炎の診断方法も提供するものであり、ここで、該細菌タンパク質、したがって、該タンパク質に対して引き起こされるIgM抗体は、抗生物質治療の開始後の2週間以内に50%降下するものであり、これにより病原体死亡のマーカーとして機能する。その他の用途として、従来から存する技術を用い、連鎖球菌または腸球菌による感染、特に、培養陽性および培養陰性の心内膜炎を引き起こす細菌感染症の予防および治療に用いる活性阻害剤を得るためのスクリーニング法に本発明に従う細菌タンパク質を利用することができる。そのようなスクリーニング法も本発明の別の視点を形成するものである。さらに別の用途において、本発明に従う細菌タンパク質は、抗体の産生に特に好適である。かくして、本発明のさらに別の観点に従えば、連鎖球菌または腸内菌による感染中に発現され、少なくとも配列式(1)もしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体を含むアミノ酸配列を有し、免疫原として使用される細菌タンパク質が提供される。当該細菌タンパク質に標準的な免疫学的手法を用いて免疫原として使用できるようにすることができる。かくして、例えば、このタンパク質を任意の好適な宿主(ホスト)に注入し、精製および/または濃縮後に血清を集めて所望の抗細菌タンパク質ポリクローナル抗体を得ることができる。宿主注入の前に適当な媒体(ベヒクル)中で該細菌タンパク質を調製することもでき、したがって、本発明のさらに別の観点に従えば、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現され少なくとも配列式(1)もしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体を含むアミノ酸配列を有する細菌タンパク質とともに、薬剤的に許容できるキャリヤ(担体)、稀釈剤または賦形剤から成る組成物が提供される。抗細菌タンパク質抗体を生成するためには、アフィニティクロマトグラフィを用い、アフィニティ媒体として本発明の細菌タンパク質を固定化したものを利用することができる。かくして、本発明の他の観点に従えば、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現され少なくとも配列式(1)もしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体を含むアミノ酸を有する細菌タンパク質であって、不溶性支持体(担体)に共有結合された細菌タンパク質が提供される。細菌タンパク質もしくはそのフラグメントまたはその類縁体の各種の誘導体を用いて該タンパク質、もしくはフラグメントまたは類縁体を阻害(抑制)することができる。感染中に発現される本発明の細菌タンパク質を免疫原として用いて抗体を産生させることにより、タンパク質の作用に対する阻害物(抑制剤)の1種が得られる。一般に該細菌タンパク質の阻害剤は連鎖球菌または腸菌による感染、特に、培養陽性心内膜炎および培養陰性心内膜炎の両者の診断、そして特に予防と治療に有用であると期待され、したがって、本発明の別の特徴を形成する。阻害剤としては、感染中に発現される細菌タンパク質に対する拮抗物質、またはその産生を抑止する物質が含まれる。好適な阻害剤の例としては、当該細菌タンパク質の作用を拮抗する薬剤(抗体を含む)および感染発現される細菌タンパク質の化学的類縁体、および当該細菌タンパク質の産生を抑止する抗センスRNAおよびDNAが挙げられる。好適な阻害剤は適当なスクリーニング法で決定することができ、例えば、試験モデル、例えば動物モデル(マウスモデル)で、阻害剤候補の能力、すなわち、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現されるような本発明に従う細菌タンパク質もしくはその免疫原性フラグメントまたは、その類縁体の作用を拮抗し、またはその産生を特視する能力を測定することによって行われる。さらに、従来から存する手法を用いる適当なエピトープマッピングにより[Geysen他、J. Immunol. Methods, 102:259-274(1987);Hopp and Woods, PNAS USA, 78(6):3824-3828(1981);Novotny他、PNAS USA, 83:226-230(1986)]、感染中に発現される細菌タンパク質のペプチドフラグメントを同定して、化学的に合成することもできる。このタイプの合成ペプチド抗原は、前述したように、阻害剤を産生、例えば、診断および治療に用いられる抗体を産生させるのに用いられ、または、抗血清、例えばワクチンに用いられる非特異性ポリクローナル抗血清を産生させるのに用いられることができ、前述のように本発明のさらに別の特徴を形成するものである。本発明の別の視点に従えば、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現される細菌タンパク質であって、少なくとも配列式(1)もしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体を含むアミノ酸配列を有するタンパク質の誘導体であり、当該タンパク質もしくはそのフラグメントまたはその類縁体を阻害する誘導体が提供される。そのような阻害剤は、単独で、または、適当な場合には他の薬剤、例えば、他の抗生物質と組合わせることにより有用である。本発明のこの視点に従う特に有用な阻害剤の群は、当該細菌タンパク質を認識しそれに結合する能力を有する抗体である。かくして、本発明のさらに別の視点に従えば、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現され少なくとも配列式(1)もしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体を含むアミノ酸配列を有する細菌タンパク質の1つまたはそれ以上のエピトープに対して特異的な単離、精製された抗体が提供される。この抗体は、全体が抗体であるものでもよいし、または、その抗原結合性フラグメントであってもよく、また、一般にどのイムノグロブリンクラスに属するものでもよい。かくして、例えば、この抗体は、イムノグロブリンM抗体であり、そして、特に、イムノグロブリンG抗体である。この抗体またはそのフラグメントは、動物由来のもの、例えば、哺乳動物由来のものであり、例えば、ネズミ、ラット、またはヒト由来のものである。この抗体は、天然の抗体またはそのフラグメントであってもよいし、所望される場合には、組換え抗体フラグメント、すなわち、組換えDNA技術を用いて調製された抗体または抗体フラグメントであってもよい。特別の組換え抗体または抗体フラグメントとしてはヒト組換え抗体が挙げられ、特に以下のものが挙げられる。(1)抗原結合部位を有する抗体またはフラグメントであって、少なくともその一部が別の抗体から誘導されたもの。例えば、1つの抗体の超可変または相補性決定領域が第2の別の抗体の可変構造領域に結合されたもの(ヨーロッパ特許明細書第239400号の記載されているようなもの)、(2)非Fv配列が他の別の抗体の非Fv配列によって置換された組換え抗体またはそのフラグメント(ヨーロッパ特許明細書第171469号、173494号および194276号に記載されているようなもの)、または(3)実質的に天然のイムノグロブリン構造を保有する組換え抗体またはフラグメントであるが、ヒンジ領域のシステイン残基の数が天然のイムノグロブリンに見出されるものとは相違しており、該組換え抗体またはフラグメントの表面ポケット中の1つまたはそれ以上のシステイン残基が該天然イムノグロブリンに存在する他のアミノ酸残基に代わっているようになったもの(国際特許出願PCT/GB88/00730およびPCT/GB88/00729に記載されているようなもの)。この抗体または抗体フラグメントは、ポリクローナルであってもよいが、モノクロナール源のものが好ましい。それらは、当該細菌タンパク質の単一のエピトープまたは複数のエピトープに対して特異的なものである。抗原結合性抗体フラグメントとしては、例えば、F(ab')2、Fab'またはFabフラグメントのように、全抗体のタンパク質加水分解切断によって得られたフラグメント、または、Fvフラグメントのように、組換えDNA技術によって得られたフラグメント(国際特許出願PCT/GB88/0747に記載されているようなもの)が挙げられる。本発明に従う抗体は、感染中に発現される当該細菌タンパク質を抗原として用い、周知の免疫学的技術により調製することができる。かくして、例えば、好適な宿主(ホスト)に細菌タンパク質を注入し、適当な精製および/または濃縮(例えば、固定化した細菌タンパク質をアフィニティ媒体としたアフィニティクロマトグラフィによる)の後に血清を集めて所望のポリクローナル抗体が得られる。別の方法として、例えば、Kohler等によるEur. J. Inmunol. 6:511, 1976の方法を用いて、細菌タンパク質を注入した宿主から脾細胞またはリンパ球を回収して不死化し、得られた細胞を分離して、抗連鎖球菌または腸球菌細菌タンパク質モノクローナル抗体を産生する遺伝学的に単一のセルラインを得ることもできる。抗体フラグメントは、従来から存する技術、例えば、ペプシンまたはパパインを用いる酵素分解により製造することができる。本発明に従う組換え抗体を製造することが所望される場合には、例えば、ヨーロッパ特許出願第171469号、第173494号、第194276号および第239400号に記載されているような方法を用いて製造することができる。本発明に従う抗体は、従来から存する手法を用いて、検出可能なラベルで標識化することができ、また、エフェクター分子、例えば、抗菌剤またはトキシンまたは酵素のような薬剤と複合化することもでき、そのような標識化抗体または抗体複合体も本発明に包含される。本発明に従う抗体は、診断および/または予防および/または治療に利用される。すなわち、診断用には、この抗体を使用して、宿主(ホスト)生物中に細菌タンパク質が存在するかを検知し、宿主に特別の連鎖球菌または腸球菌の感染があったかを確認し、とりわけ、培養陰性の心内膜炎においてそのような生物の存在を調べ、および/または、そのような感染症の治療の進行を監視することができる。このような診断法は、本発明の別の特徴を形成するものであり、一般的には、標準的な技術、例えば、酵素結合免疫吸着法、ラジオイムノ法、ラテックス凝集法またはイムノブロッティング法のような免疫学的方法を利用する。本発明に従う抗体は、さらに、上述したように、連鎖球菌または腸球菌による細菌感染症の治療に用いることもでき、単独で用いられてもよく、またはエフェクター分子と複合化することもでき、後者の場合は、感染微生物をエフェクター分子、例えば抗菌剤で攻撃するのに用いられる。治療用途においては該抗体は従来の手法に従って製剤化され、例えば、薬剤として許容されるキャリヤまたは賦形剤(例えば等張塩溶液)とともに製剤化され、治療すべき感染症の特徴や患者の年齢に応じた適当な用量で投与されるようにする。所望ならば、抗体の混合物を用いて診断および/または予防および/治療を行うこともでき、例えば、本発明に従う細菌タンパク質の異なるエピトープを認識するような2種類の抗体から成る混合物、および/または、本発明の細菌タンパク質の同じまたは異なるエピトープを認識する異なるクラスの抗体から成る混合物、例えば、IgG抗体とIgM抗体の混合物を用いることもできる。本発明に従うタンパク質またはそのフラグメント、類縁体、阻害剤、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒトまたは動物の身体の治療法または診断法に用いることができる。診断テスト法は、酵素結合免疫吸着法、ラジオイムノアッセイ、ラテックス凝集アッセイおよびイムノブロットアッセイより成る群の1つから選ぶことができる。そのようなタンパク質、フラグメント、類縁体、阻害剤、抗体または抗原結合性フラグメントは、薬剤として許容できるキャリヤ(担体)、稀釈剤または賦形剤と組み合わせて、ヒトまたは動物の身体の診断法または治療法に使用される組成物の一部を形成することができる。本発明に従う細菌タンパク質は、各種の方法により調製することができ、例えば、イオン交換やゲルクロマトグラフィおよび電気泳動法のような従来から存する分離技術を用いて適当な細菌細胞抽出物からタンパク質分画することにより、または、後述の「実験」の項で詳述するように、組換えDNA技術を利用することにより調製される。組換えDNA技術を用いることは、本発明に従う実質的に純粋な細菌タンパク質を調製するために特に好適である。かくして、本発明のさらに別の視点に従えば、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現され少なくとも配列式(1)もしくはそのフラグメントまたはその類縁体を含むアミノ酸配列を有する細菌タンパク質を製造するための方法であって、(1)該タンパク質の前駆体(プリカーサー)をコードする遺伝子を含むベクターにより形質転換された宿主生物を培養する工程、および(2)該タンパク質を回収する工程から成る方法が提供される。本発明のこの視点において切断される前駆体は、好ましくは、形質転換された宿主生物において産生されるタンパク質の少なくとも一部と少なくともアミノ酸配列式(1)とから成る融合タンパク質である。そのような融合タンパク質も本発明の別の特徴を形成する。この融合タンパク質は、形質転換された宿主生物により高レベルで産生されるタンパク質を含むことが望ましい。そのようなタンパク質として好適なものとしては、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)タンパク質の少なくとも一部、または、β−ガラクトシダーゼタンパク質の少なくとも一部が挙げられる。本発明のさらに別の視点に従えば、連鎖球菌または腸球菌による感染中に発現される細菌タンパク質もしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体をコードし、実質的に以下のヌクレオチド配列式(2)を有するDNA配列およびその相同体(homologues)が提供される。本発明に従うDNA配列の別の特徴は、該配列がコードする細菌タンパク質が、次の特性の一方または両方を有しているということである。(1)免疫主体保存抗原であること、および(2)敗血症感染に対して防御された動物モデル(マウス)における組換えヒト抗体であること。さらに、DNA配列は、それがコードするタンパク質は心臓弁への結合に関与しているということも特徴である。この配列を有するDNAは、後の「実験」の項で記述するように細菌ゲノムDNAから得ることができる。本発明のDNA配列は、従来からの技術を用いて発現ベクターに導入することができる。したがって、本発明の別の視点として、実質的にDNA配列式(2)またはその相同体を含有する発現ベクターが提供される。このベクターは、適当な選択マーカー、プロモーター、その他の必要なコントロール領域が付与されることにより、所定の宿主細胞中で使用され得るようになる。そのようなベクターにより形質転換された宿主細胞も本発明の別の特徴を形成するものである。好適な宿主細胞としては、細菌(例えば大腸菌)および組織培養の哺乳動物細胞が挙げられる。DNA配列式(2)は、また、感染状態における連鎖球菌および腸球菌の存在を確認するのに用いるDNAプローブを構築するのに用いることもでき、そのようなプローブも発明に包含される。さらに、そのようなプローブは、例えばポリメラーゼチェイン反応を用いて、循環している細菌の核酸を検知して、そのような細菌感染の診断法として用いることもできる。プローブは、従来から存する技術を用いて合成することができ、固相上で固定化したり、あるいは、検出可能なラベルで標識化することもできる。本発明に従うDNA配列、ベクター、プローブまたは阻害剤は、ヒトや動物の身体の治療法または診断法において利用される。連鎖球菌および腸球菌は、心臓弁に結合してそれに障害を引き起こすことにより心内膜炎を引き起こすことは知られている。連鎖球菌が心臓弁組織にまたは人工弁に結合するときの可能な作用機構として提示されているのは、フィブロネクチンのような細胞外のマトリックスタンパク質に連鎖球菌が予め結合し、これによって、障害を受けた弁表面への細菌の固着とコロニー形成が起こるということである(Lowrance他、J. Clin. Invest., 1990, 86:7-13)。これは、フィブロネクチンが該細菌に対する組織レセプターとして作用することを示唆している。しかしながら、我々が初めて明らかにしたところによれば、心内膜炎におけるフィブロネクチンの役割に関する従来の学説は正しくない。我々の研究によれば、後述するように、フィブロネクチンに対する抗体は、PAcに結合し、フィブロネクチンとの事前交差吸収により、中和され、PAcはフィブロネクチンと同様に、障害を受けた心臓弁に直接(フィブロネクチンを介するのではなく)結合することを示している。この分子仮説は、PAcの立証できる作用機構である。かくして、本発明は、連鎖球菌または腸球菌による感染に対するヒトまたは動物の身体の治療法または診断法において用いられるフィブロネクチンもしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体、またはフィブロネクチンに対する抗体またはその抗原結合性フラグメントも提供するものである。さらに、「実験」の項で、後述するように、本発明者が初めて明らかにしたところによれば、ストレプトコッカス・オラリス(S. oralis)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(S. gordonii)およびストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)感染による心内膜炎の患者からの血清は、約85kDaの抗原であり、熱ショック90分子に特異的なマウスモノクローナル抗体と反応する抗原を有する。我々は、さらに、終点で死亡するマウスのS. oralisモデルにおいては、HSP90に特異的な抗体は統計学的に有意の生存率の増加を示すことも明らかにした。このことは、該抗原はHSP90グループに属することを示している。かくして、HSP90に対する抗体は、ストレプトコッカス・オラリス(S. oralis)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(S. gordonii)およびストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)によって引き起こされた感染症の診断および治療に用いることができる。かくして、本発明は、ストレプトコッカス・オラリス(S. oralis)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(S. gordonii)およびストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)による感染症のヒトまたは動物の診断法または治療法において用いられる、HSP90に特異的な抗体もしくはその免疫原性フラグメントまたはその類縁体を提供する。本発明の実施例を示す以下の「実験」の項から本発明はさらに明らかになるであろう。実 験1.抗体応答特性次の症例から血清を入手した。ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)による敗血症12例、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)による心内膜炎14例、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)による心内膜炎2例、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)による心内膜炎2例、心内膜炎の臨床的症状を有さず、好中球減少のない患者からのコントロール血清20、および心内膜炎の臨床的症状を有さず、好中球減少のある患者からのコントロール血清20。2.種の同定上述の血清を用いて、可能なときには、Beighton他によるJ. Med. Microbiol., 1991, 35 :367-372に記載の方法に従って原因微生物の同定を行った。すなわち、ストレプトコッカス・オラリス(S. oralis)の6例については単離物が入手できたので、JM Hardie(個人的な依頼)によりストレプトコッカス・オラリス(S. oralis)と同定された。その他は、アエスクリン(aesculin)陰性でラフィノース(raffinose)陰性なビリダンス(viridans)連鎖球菌であり、ストレプトコッカス・ゴルドニー(S. gordonii)(これは100%アエスクリン陽性であり)やストレプトコッカス・ミチス(S. mitis)(これは100%ラフィノース陽性)ではないと決定され、また、おそらくストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)(これは75%アエスクリン陽性で75%ラフィノース陽性)でもないと判断された。ストレプトコッカス・ゴルドニー(S. goudonii)の14例およびストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)の2例については、そのうちの3例の単離物について、ストレプトコッカス・ゴルドニー(S. gordonii)と断定された。その他については単離物が得られなかったが、当初のAPIプロフィルがアエスクリン陽性であることを示していた。このことからストレプトコッカス・ミチス(S. mitis)でないと判断され、また、おそらくストレプトコッカス・オラリス(S. oralis)(18%アエスクリン陽性)でもないと判断された。次いで、これらをストレプトコッカス・ゴルドニー(S. gordonii)およびストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)に対するIgM応答の強さに従ってストレプトコッカス・ゴルドニー(S. gordonii)またはストレプトコッカス・サンギス(S. sanguis)のいずれかに分けた。ストレプトコッカスス・オラリス(S. oralis)の心内膜炎の例は、Beighton他による方法(1991)に従って同定された。3.イムノブロティング用菌株源Burnie他によるJ. Clin. Pathol., 1987, 40:1149-1158に概説されたプロトコールに従い、S. sanguis NCTC 7863, S. oralis NCTC 7864および S. goudonii NCTC 7868から抗原抽出液を調製した。4.イムノブロティング次いで、上述した菌株を用い、Burnie他(1987)に記載されているようにイムノブロッティングを実施した。前述した患者血清のイムノブロットの結果は、表1(S. oralis)、表2(S. gordonii)および表3(S. sanguis)ならびに図1〜図5(Figure 1〜Figure 5)にまとめられている。図1は、S. oralisによる敗血症についてのイムノブロットを示す。3症例からの前血清および後血清のそれぞれについてIgMおよびIgGの抗体変化が示されている。図2は、S. gordoniiによる心内膜炎のイムノブロットを示す。トラック1はS. gordonii NCTC 7868に対する抗フィブロネクチン抗体、また、トラック2はフィブロネクチンに対する交差吸収を示す。トラック3〜8は、S. gordonii心内膜炎の3症例におけるそれぞれIgMおよびIgGを示す。図3は、S. gordonii心内膜炎のさらに5症例についてS. gordonii抗原に対する結果をトラック1/2,3/4,5/6,9/10および11/12に示している。トラック7/8はトラック9/10と同じ症例について抗体レベルを前処理したものについて示したものであり、IgMは約85KDaにおけるバンド、またIgGは約180、58、56および52KDaにおけるバンドに対して上昇していることが示されている。図4は、S. oralis心内膜炎のイムノブロットを示し、トラック3/4はIgMとIgGを示し、S. oralisの180KDaバンドと交差反応する抗フィブロネクチン抗体がトラック1、そして、フィブロネクチンとの交差吸収の効果がトラック2に示されている。図5は、S. sanguis心内膜炎についてのイムノブロットを示すものであり、2症例の両方についてのIgM(トラック3および5)およびIgG(トラック4および6)、S. sanguisの120KDaバンドと交差反応する抗フィブロネクチン抗体をトラック1、また、フィブロネクチンとの交差吸収の効果をトラック2に示す。注解(a)S. oralis敗血症感染からの回復時に約180KDaのバンドに対するIgMおよび/またはIgG。(b)S. gordonii心内膜炎以下のバンドに対するIgGがさらに検出された。すなわち、約185KDa(1例)、165KDa(2例)、155KDa(1例)、140KDa(1例)、132(1例)、110(1例)、94(1例)、61KDa(1例)、50KDa(1例)および45KDa(1例)。45KDaバンドに対する追加のIgMが検出された(1例)。S. gordonii NCTC 7868由来の85KDaおよび180KDaのバンドに対して大部分の症例がIgM、そしてすべて症例がIgGを有している。他の免疫主体バンドは約65KDaおよび47KDaにおけるものを含んでいた。(c)S. oralis心内膜炎1つの症例が以下のような追加の抗体を有していた。すなわち、約180、140および65KDaにおけるバンドに対するIgM、ならびに、約180、140、120、58、51、46および35KDaにおけるバンドに対するIgG。いずれの症例も、S. oralis NCTC 7864由来の85および180KDaのバンドに対するIgMおよびIgGを有していた。(d)S. sanguis心内膜炎患者は両方とも、S. sanguis NCTC 7863由来の約120および85KDaにおけるバンドに対する抗体(IgMおよびIgG)を産生していた。(e)S. sobrinus / S. mutans心内膜炎イムノブロッティングにより、心内膜炎患者は約185、200および220KDaにおける3つのバンドに対して抗体(IgMおよびIgG)を有していたことが示された。さらに、85KDaにおけるバンド(S. oralis NCTC 7864, S. gordonii NCTC 7868およびS. sanguis NCTC 7863)は、いずれも、熱ショック90分子に特異的なマウスモノクローナル抗体(LKVIRKに対する。本出願人による先行特許出願WO92/01717、WO91/00351およびGB2270076参照)と反応し、この分子がHSP90グループに属することが示された(図6参照)。同図において、トラック1はS. oralis NCTC 7864、トラック2はS. goudonii NCTC 7868、トラック3はS. sanguis NCTC 7863、トラック4はS. oralisの臨床単離物である。5.S. sobrinusおよびS. oralisの免疫主体抗原のクローニング5−1 S. sobrinusクローニング(i)DNA単離とラムダZAPIIライブラリー作成Manchester大学バクテリアコレクションNo.263(MUCOB263)のS. sobrinus株をストレプトコッカス・ソブリヌス(S. sobrinus)源として用いた。当初、このMUCOB263微生物は、上記刊行物に示されたところによればストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)と判断された。しかしながら、この菌株を詳細にテストしたところ、MUCOB263は、生化学的にはS. sobrinusにより近いものであることが示された(D. Brattal教授との個人的交信による)。今後の混乱を避けるため、この微生物をS. sobrinus MUCOB263と命名し直すことにする。0.2%グルコースおよび40mMのD,L−スレオニン(シグマ社製)を含有する脳−心臓浸出培養液中、37℃において振動させながら一晩、細菌細胞を培養した。この細菌を5,000rpmで10分間遠心分離してハーベストした後、洗浄し、12.5mlの0.02Mトリス(pH8.2)に再懸濁させた。次いで蒸留水に溶かした20Mポリエチレングリコール(PEG)24%の25mlを添加し混合した。リソチームを34.6mg/ml(100μg/ユニットに相当)で添加し、OD600を測定し、細菌培養液の10倍稀釈液を得た。37℃で1時間保持した後、生成したスフェロブラストを5,000rpmで10分間遠心分離し、10mMのトリス−Cl(pH8.0)、および1mMのEDTA(TE)の50mlに完全に再懸濁させた。このスフェロブラストを10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の50mlを用いて60℃で15分間、溶解した。標準的手法(Maniatis他、Molecular Cloning - A laboratory manual, 2nd edn. Cold Spring Harbour, New Youk, 1989)を用い、RNAase−A(シグマ社製)で処理し(このRNAaseを100℃で15分間、予め沸騰しておく)、プロテアーゼKで処理し、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、さらにエタノールで沈殿させた。0.3Mの酢酸アンモニウム(pH5.2)の存在下におけるエタノール沈殿によりプラスミドDNAを除去した。4℃において36時間、TEで透析することによりさらに精製を行った。このDNAを機械的に剪断し、EcoRIリンカーを添加し、分画し、ラムダZAPIIベクターアームにインサートを結合させた。当該ライブラリーは2kb〜7kbの範囲のインサートサイズを有した。(ii)抗体スクリーニング心内膜炎患者から血清を採取し、抗体スクリーニングに用いた。Escherichia coli XL1 - Blue細胞を、L寒天培養液(バクトートリプトン10g/l,酵母抽出物5g/l,塩化ナトリウム10g/l,マルトース2g/l,バクト-寒天15g/l)に、約3,000pfu/85mmで感染させた。プラークをニトロセルロース(ポアサイズ0.45μm,ドイツGottingennのSartorius AG製)に移し、42℃で3時間培養した後、37℃で2時間、10mMのイソプロピルB-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を含浸させた。これらのフィルターを、緩衝塩溶液(150mMのNaCl、10mMのトリス)中の3%ウシ血清アルブミン(BSA,シグマ社製)を用いて一晩ブロックした。フィルターに3%BSAで100倍に稀釈した患者血清を添加し、室温で2時間培養し、次いで、フィルターを洗浄液(150mMのNaCl、Tween20、0.05%)で30分間洗浄した後、第2の抗体、すなわち、BSA3%に溶かした抗ヒトIgGアルカリホスファターゼコンジュゲート(シグマ社製)を添加した。室温で1時間保持した後、フィルターを再び洗浄し、等体積のナフトールASMXホスフェート(シグマ社製、蒸留水に溶かした0.4mg/ml溶液)とFast Red TR塩[シグマ社製,0.2Mのトリス(pH8.2)中の6mg/ml溶液](Fast Red染色剤)で染色した。陽性プラークを、200μlのSM(100mMの塩化ナトリウム、50mMのトリス−ClpH7.5、10mMの硫酸マグネシウム、ゼラチン0.0001%)および2〜3滴のクロロホルムを含有する1.5mlの試験管に移した。上述の方法によりプラークの精製を行った。(iii)抗原を指標とする抗体の選択再懸濁したE. coli XL1 - Blue細胞の100μlアリコート2つに、精製した陽性ファージの高力価ストックの稀釈物を感染させて5,000pfu/85mmLブロス寒天プレートとなるようにした。ファージ吸着は37℃、30分間行われた。吸着ミックスをLアガロース培養液0.8%の2.5mlアリコートに添加し、混合し、Lブロス寒天プレートに注入した。これらのプレートを42℃で2.5時間培養した後、10mMのIPTG中に予備浸漬し、室温で少なくとも1時間乾燥させたニトロセルロースフィルター(ポアサイズ0.45μm、Sartorius社製)を添加し、37℃で一晩培養した。次いで、各フィルターをトリス緩衝塩溶液[150mMの塩化ナトリウム、10mMのトリス−Cl(pH7.2)]で30分間にわたり3回洗浄し、3%BSA中、4℃において一晩ブロックした。BSA3%に溶かした患者血清の10倍稀釈液をフィルターに加え、振動しながら室温で3時間培養した。この血清を取出し、涸渇血清(depleted serum)と呼び、4℃で保存した。フィルターを、Tween20−トリス緩衝塩溶液[150mMの塩化ナトリウム、10mMのトリス−Cl(pH7.2)、Tween20,0.05%]を用いて100分間にわたり5回洗浄し、さらに塩−Tween20溶液(150mMの塩化ナトリウム、Tween20、0.05%)で一回洗浄した。5mlのグリシン/塩緩衝液[150mMの塩化ナトリウム、200mMのグリシン−Cl(pH2.8)]を加え室温下に30分間振動させることにより、結合した抗体を溶出させた。100μl当たり0.04gのトリスを含有する容器内に緩衝液を吸引し、溶出抗体(eluted antibody)と呼び、4℃で保存した。当初の血清、涸渇血清および溶出抗体を一次抗体として用い、上述したイムノブロット法にほぼ従って、S. sobrinus MUCOB263のウエスタンブロットを実施した。抗原は、Xプレス中で粉砕した後の当該菌株の上清とした。二次抗体は、3%BSAに溶かした抗ヒトIgMおよびIgGアルカリホスファターゼコンジュゲートの1000倍稀釈液とした。結果培養陽性の心内膜炎患者血清から当初に選択された60,000pfuから抗体陽性の6クローンが単離、精製された。このような抗原を指標とする抗体選択(antigen-directed antibody selection)によれば、溶出抗体が約185KDa抗原に結合していることから、クローニングされ発現された配列はS. sobrinusと共通のエピトープを含むことが示された。(iv)DNAインサートのインビボ切除テトラサイクリン125μg/μlを含有するLブロスで37℃において培養した。E. coli XL1 - Blue細胞の一夜培養物10mlを2,000rpmで10分間、遠心分離し、10mMの硫酸マグネシウム4ml中に再懸濁させ、4℃ににおいて培養した。E. coli XL1 - Blue細胞200μl、高力価抗体陽性ファージ(1.78×108/85mmプレート)180μlおよびR408ヘルパーファージ1μlを50mlのプラスチック製円錐管内で混合し、37℃で15分間培養した(ヘルパーファージおよびE. coli XL1 - Blue細胞はCLONTECHから入手)。次いで、この二重感染細菌に2×YT培地[塩化ナトリウム5g/l、酵母抽出物10g/l、バクト−トリプトン16g/l(pH7.0)]5mlを添加し、振動下に37℃において3時間培養した。細胞を70℃で20分間加熱することにより細胞を殺し、次に5分間激しくかきまぜることにより破砕した。該細胞を4,000rpmで5分間遠心分離し、pBluescriptSK(−)ファージミドを含有する上清をデカンテーション採取して、4℃において保存した。ファージミド溶液10μlを再懸濁E. coli XL1 - Blue細胞200μlに添加し、培地を37℃で15分間培養し、さらに、Lブロス寒天プレート(アンピシリン50μg/ml含有)に1μl、25μl、75μlおよび100μlアリコートでまくことにより、ファージミドを増殖させた。(v)プラスミドDNAの調製と変性Magic(RTM)MinipresDNA精製システム(Promega製)を用いて細菌コロニーからpBluescriptSK(−)プラスミドDNAを精製し、Maniatis他による方法(1989)によってアルカリ変性した。すなわち、DNA1.5から200μgを含有する溶液8μlを2M水酸化ナトリウムの2μlに加え、軽く攪拌、遠心した後、10分間室温下に放置した。次いで、3M酢酸ナトリウム(pH4.8)3μl、蒸留水7μlおよび−20℃の無水エタノール60μlを添加し、−70℃で30分間DNAを沈殿させた。沈殿物を13,000rpmで1分間、ペレットにし、−20℃のエタノール70%で洗浄し、そして、真空乾燥した。乾燥後のペレットを−20℃で保存した。(vi)DNA配列決定Sequenase(R)Version 2.0(Cambridge Bioscience製)を用い2段階連鎖停止法に従ってDNA配列決定を行った。アニーリング工程は66℃で2分間行い、ラベル化は、22℃で4分間行い、そして停止反応は38℃で5分間行った。二次構造を含む領域は、dGTGをdITPで置換することにより分解した。46〜51℃において11、8、5および2時間、配列決定反応を行った。(vii)TAクローニング(RTM)によるサブクローニングファージミドクローンは、クローニングされた遺伝子の5′末端を有してはいないので、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりTAクローニング(RTM)に従い5′末端をサブクローニングすることにした。0.0μg、0.7μgのS. sobrinus MUCOB263ゲノムDNAを含有する2つの試験管のそれぞれに以下に示すPCR試薬を添加し蒸留水を加えて全量が64.3μlとなるようにした;0.1μg/μlのプライマー1(CAGTCTCCGTCCCAACGACTGCG)5.3μl、0.1μg/μlのプライマー2(GCTCCTCTTGTGACATGGTC)4.4μl、10×Taq緩衝剤(Northumbria Biochemicals社製、Northumberland)(nb1)10μl、およびdNTP[dATP、dGTP、dCTP、dTTP(Promega製)の各12.5μlが950μlの脱イオン水に添加されたもの]16μl。次いで、PCR反応系の上にミネラルオイルの層を注意深く設け、95℃において10分間DNAを変性し、2.5WeissユニットのTaq(nb1)を添加した。PCRの条件は、94℃で1.5分間、50℃で1.5分間、および72℃で3分間で30サイクルとした後、72℃において10分間で最終的な伸長を行った。EcoRI−Hind■切断ラムダDNAマーカーと並べて、50ボルトで2時間、PCR生成物(30μl)をTBEゲル0.8%の上を流した。TAクローニング(RTM)システムVersion 1.3(InVitrogen Corporation, British Biotechnologies社製、Oxon)を用い、メーカープロトコールに従い、インサートDNAのサブクローニングを行った。12℃において一晩、0.7μgのPCR反応系を蒸留水で4倍に稀釈したもの3.0μl、0.7μgのPCR反応系を2倍に稀釈したもの4.7μl、および陰性コントロールを含有する連結反応を行った。形質転換に際しては、37℃で一晩培養の後に白色の組換え体コロニーを選び出し、カナマイシン(50μg/ml)/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトイラノシド(X−Gal−25μl、40mg/ml溶液/プレート)に2回まき、純粋で安定なサブクローンを得た。S. sobrinusからクローニングされたDNAの起源をサザンブロティングにより確認した。得られた全配列を表4に示す。5.2 S. oralisクローニングこれは記述した方法と本質的に同じ方法で行った。違いは、ベクターがラムダgtl1であったということ、およびDNA源がストレプトコッカス・オラリス(Streptcoccus oralis)の臨床単離物であったということである。ライブラリーは、EcoRIで部分的に分解したゲノムDNAライブラリーであった。陽性な10クローンが同定され、そのうちの1つについてTAクローニング(RTM)システムによりサブクローニングを行った。S. oralisからのクローンの起源の確認はサザンブロティングによって行った。抗原を指標とする抗体選択により、S. oralisの180KDa抗原と交差反応するエピトープを有することが示された(図7参照)。この図において、トラック1および3は、S. oralisに対する抗体を有する2人の患者からの当初の血清を示し、トラック2および4は、180KDaのバンドに結合する溶出後のサブ成分を示す。クローンの配列は表5に示されている。配列の比較S. sobrinusから得られた配列は、S. sobrinusのSpaA抗原に対して99.2%の相同性、また、S. mutansのPAc抗原に対して68.4%の相同性を有していた。S. oralisは、S. mutans PAcタンパク質前駆体に対し、605個のアミノ酸において76.2%の相同性、また、S. sobrinus SpaAタンパク質前駆体およびS. mutans表面抗原■/■前駆体の両方に対し606個のアミノ酸において73.8%の相同性を有していた。両配列は、39個のアミノ酸から成る3ケのタンデム反復モチーフを有していた。これから6種類のペプチドを得て、この共有血清のエピトープマッピングを行うのに用いた。エピトープマッピングGeysen他によるJ. Immunol. Methods, 102:259 - 274(1987)に概説されているプロトコールおよびその中の参照文献に従って、S. oralisからのクローニングされた抗原のエピトープマッピングを行った。このエピトープマッピングにおいては、クローニングされたS. oralis抗原についてオーバーラップする完全な1組のノナペプチドを合成した。ペプチド1は1〜9の残基をカバーし、ペプチド2は2〜10の残基をカバーし、そしてペプチド3は3〜11の残基をカバーし、以下同様にという具合である。すべての血清について200倍稀釈において1でIgGを調べ、30分後に記録を停止した。調べた血清は次のとおりである。(1)ビリダンス心内膜炎(n=8)(S. sanguis n=2、S. oralis n=2、S. gordonii n=4)(2)S. oralis敗血症(n=5)(3)S. mutans心内膜炎(n=2)(4)E. faecalis心内膜炎(n=2)(5)陰性コントロール(n=5)以下のようなペプチドについてエピトープを決定した。(1)少なくとも3ケのウエルにおいて陽性であったもの。(2)光学密度が各ウエルにおいて陰性コントロールの2倍であり、大部分のウエルにおいて0.8より大きかったもの。このエピトープマッピングにより合計で9ヶのエピトープが明らかにされた(表10参照)−NFKQGQG、RQPG、SWYGAG、GKIRAV、RLFAQPQ、AGRPK、PTGYQFD、YPTVV、およびLLKKA。最初のエピトープマッピングの後に、各血清について各ウエルに対する陽性を再検査した(表11参照)。6.クローニングされたS. oralisからの免疫主体エピトープの調製合成ペプチド(5.2の「配列の比較」参照)のうち、ペプチド1〜5は、15個のアミノ酸長から成る短ペプチドとしてS. oralisの配列をカバーしている。ペプチド5とペプチド6は、異なるS. sobrinus領域をカバーしている。これらの配列は、表6および表8に示している。この6種類のペプチドはCambridge Biochemicals社(Nantwich)によって製造され、二回蒸留水に溶解し最終濃度2mg/mlとした。0.5mlのアリコートとして−70℃で保存し、1回の凍結−解凍操作の後、−20℃で保存した。各ペプチドについて1ヶずつ、6ヶのプラスチック製マイクロタイタープレート[Falcon(R)3912, Microtest(RTM) Flexible Assay Plate,平底の96ウエル付−Liverool, Fred BakerのBecton Dickinson & Co社製]のウエルを、リン酸緩衝液(100mlの蒸留水にタブレット1ヶを溶解したもの、Oxoid、BasingstokeのUnipath社製;PBS)に溶かした10μg/ml合成ペプチド溶液の200μlで被覆した。ペプチドを添加し、4℃で一晩放置してウエルを被覆した。次いで、Nunc-Immuno Wash (RTM)(DenmarkのInterMed製)を用いてPBS中で5回、マイクロタイタープレートを洗浄することにより、過剰のペプチドを除去した。一次抗体、すなわち、血清の3%BSA溶液を1/10稀釈したもの200μlを添加し、室温下に1時間放置して抗原−抗体結合を行わせた。PBSで5回洗浄した後、以下のいずれか200μlをウエルに満たした。(i)ヤギ抗ヒトIgMペルオキシダーゼコンジュゲートの3%BSA(Sigma製)を1/1000に稀釈したもの、(ii)ヤギ抗ヒトIgGペルオキシダーゼコンジュゲートの3%BSA(Sigma製)を1/1000に稀釈したもの、または(iii)PBS。コンジュゲートは、室温で1時間反応させた。次いで前と同じようにプレートを洗浄し、各ウエルにABTS染色剤200μlを添加した[2、2′−アミノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)の3タブレット;ジアンモニウム塩;および30%w/w過酸化水素溶液の160μl(Sigma)が、1Mクエン酸でpH4.0に調製された125mMジナトリウム水素オルソホスフェート緩衝液60mlに溶かされたもの]。このABTC染色剤は、使用直前に調製した。次いで反応開始後5分、10分および15分において405nmにおける各ウエルのシグナル強度を、インパクトドットマトリックスプリンター(Panasonic KX−P1081、日本の大阪のPanasonic Matsushita Electric Industrial Co製)に付属したマイクロタイタープレートリーダー[Titertek Muliskan (10)PLUS MKH、FinlandのLabsystems製]で読みとった。6種類のペプチドのうちどれが最も特異的で強力な陽性シグナルを発生するS. sobrinus/S. oralis抗原領域を表すものであるかを決定するために、それらのペプチドのそれぞれを間接ELISAに用いた。5種類の血清から成るパネル(S. mutans心内膜炎、S. oralis心内膜炎、S. oralis敗血症、S. lactis心内膜炎およびS. aureus心内膜炎の各症例からの単一血清)を用いてすべてのペプチドについてスクリーニングを行った。6種類のペプチドはすべて、S. mutansおよびS. oralisによる心内膜炎の症例由来の血清により認識された。それらのペプチドの光学密度は、S. oralisによる敗血症由来の血清、およびS. lactisおよびS. aureusによる心内膜炎由来のコントロール(対照)用血清に対してはきわめて低かった。ペプチド1が、S. mutans心内膜炎において最も高いOD(光学密度)(IgG)を示したので、さらなる研究に選択した(表7)。間接ELISAエピトープマッピングおよびクローニングされたS. oralisからの免疫主体エピトープの調製の結果から(上記参照)、3種類のペプチドについて間接ELISAテストによりさらに調べた。3種類のペプチドとは、YEVEKPLEPAPVAPS(ペプチド1)、TMYPNRQPGSGWDSS(エピトープRQPGを含有する−エピトープ番号74から79;ペプチド7)およびWYSLNGKIRAVDVPK(エピトープGKIRAVを含有する−エピトープ番号144から147;ペプチド8)である。テストした血清以下の症例からの血清:S. mutans(2)、S. oralis(3)、S. gordonii(10)、S. sanguis(2)、E. faecalis(11)、S. bovis(8)、S. agalactiae(1)、S. pneunoniae(4)、グループG連鎖球菌(2)、S. aureus(2)、コアグラーゼ陰性ぶどう球菌(6)、Candida albicans(1)、Candida parapsilosis(2)およびE. coli(1)による心内膜炎、S. oralis(8)、E. fa alis(7)、E. faecium(2)による敗血症、およびS. milleriによる脳腫瘍。コントロールとしてさらに、SLE患者(3)および連鎖球菌感染の証拠のない好中球減少性白血症患者(20)からの血清をテストした。光学密度は、ペプチド1については表8、また、ペプチド1、2および3については表8aに示されている。結果まとめると、産生IgGは連鎖球菌による心内膜炎患者に特異的であり、また、産生IgMはStreptococcus oralis / gordonii / sanguis / mitisによる心内膜炎に特異的であった。IgGについて光学密度のカットオフ(区切り点)を0.6とし、また、IgMについてのそれを0.4とすれば、S. mutans心内膜炎(患者1)、S. oralis心内膜炎(患者4)、S. gordonii心内膜炎(患者6〜14)およびS. sanguis心内膜炎(患者16および17)の症例のすべてがこれの基準のどれかを満たす。コントロールは、E. faecalis、S. bovisおよびグループG連鎖球菌による心内膜炎の症例における産生IgGを除いては、すべて陰性であった(表9)。このデータは、培養性心内膜炎のテストにおいて有用であることを証明している。そして、培養陰性の症例にも適用し得る。症例6、13および15において治療中にIgMが降下していたことから、IgMの降下は、治療成功のマーカーであることを示している。結果を総合的に分析すると(下記の表12および13参照)、ペプチド1を用いて行ったテストは最も正確で特異性の高かった(100%特異性)が、感度は最も低かった(50%感度)。他の2種類のペプチドによるテストは感度は高かったが、特異性はより低く且つ偽陽性がより多くなっていた。このことは、各ペプチドは単独で用いても有用ではあるが、1種以上のペプチドを用いた組合わせテストを行うことによって感度および特異性のいずれもが高い総合的なテストが可能であることを示している。7.フィブロネクチン結合性の検討クローニングされたタンパク質におけるフィブロネクチン結合活性を調べるために、ペプチド1〜6の各々について前述のプロトコールに従って、間接ELISA反応を行わせた。サンドイッチにフィブロネクチンを添加したか否かにかかわらず、6種類のペプチドの全てにおいて、間接ELISAによるOD値は2より大きくなっていた。このことは、ポリクローナル血清(抗フィブロネクチン0.5mg/ml、シグマ製[F1509])がペプチドに直接反応したことを示唆した。次にこの血清を1:40の稀釈率でイムノブロットし、そして、交差吸収後、1mg/ml抗体の100μlを1mg/mlフィブロネクチン(F2006シグマ製)の100μlとともに、37℃において30分間反応させた。これによって、抗血清は、S. oralisの180KDa抗原、S. gordoniiの180KDa抗原およびS. sanguisの120KDa抗原と特異的に反応することが明らかにされた。これは、図1のトラック1と2(S. gordonii)、図4のトラック1と2(S. oralis)および図5のトラック1と2(S. sanguis)に示されている。図9は、抗体がS. sobrinusの185KDa抗原(トラック1)およびS. oralis(臨床単離物)の180KDa抗原(トラック3)と交差反応すること、および事前吸収によりフィブロネクチンとの交差反応性を排除することを示している。これは、それら微生物について以前に明らかにした免疫主体抗原であり、フィブロネクチンの模倣体(mimic)として作用することを示唆している。これが、それらの連鎖球菌が心臓弁に結合するメカニズムと思われる。当該ペプチドの配列をヒトのフィブロネクチンと比較すると本質的な相同性が示された(GCGプログラムGap;フィブロネクチンの配列、Kornblitt他、EMBO J., 4:1755−1759、1985)。フィブロネクチン分子のうち最も相同性の高い領域は、フィブロネクチンタンパク質の750残基から始まる69個の残基配列である。類似率および同一率はそれぞれ48.7%および35.9%であった(図10)。8.ヒト組換え抗体ビリダンス連鎖球菌に感染し(培養血液陽性)食道切開を受け、アモキシリンおよびゲンタマイシンにより回復した患者の抹梢血リンパ球から、イムノグロブリンH鎖およびL鎖の可変域(V)遺伝子のライブラリーを作成した。このライブラリーについてS. oralis NCTC7814に対するイムノブロットによりスクリーニングを行うと、180KDaのバンドに対する組換え抗体が確認された(第11図、トラック5および6)。同図には比較のために、S. oralisによる敗血症のから回復中の患者の前IgMおよび後IgM(トラック1および2)ならびに前IgGおよび後IgG(トラック3および4)を示している。ライブラリーを作成は、Marks他(J. Mol. Biol., 1991, 222:581 - 597)の記載に従いpCANTAB5ベクターを用いて行った。該ベクターは、Pharmacia社(英国のMilton Keyens)からキットの一部として市販されているものである。ビリダンス連鎖球菌(培養血液陽性)敗血症から回復中の患者の末梢血リンパ球のmRNAから調製されたcDNAから得られたH鎖およびL鎖のV遺伝子を、Not I/Sfi Iにより分解されたpCANTAB5にランダムに結合させサブクローニングした。その結果得られるファージ表面に発現した単鎖Fvフラグメント(ScFv)を、特定の合成ペプチドエピトープ、すなわち、YEVEKPLEPAPVAPS、TMYPNRQPGSGWDSS、およびWYSLNGKIRAVDVRK(ペプチド1、7および8)に対して4回パンニングすることにより増殖した。4回のパンニングの後、20クローン(それぞれ最後のパンニングから得られたもの)について次の処理を行った。1.Bst1フィンガープリントしてパンニング処理の集中度を確認した。さらに2.当初のペプチド(上で詳述したもの)に対して間接ELISAで調べた。その条件は、以下のとおりである。組換え抗体:ニート。ファージ特異的モノクローナル:2000分の1。抗マウスセイヨウワサビペルオキシダーゼ:1000分の1。PBS中、10μg/mlでウエルにペプチド100mlを入れて4℃で一晩培養。結果ペプチド1Bst1フィンガープリントを行うと選択した20クローンは同一であった。間接ELISAは0.25〜0.30の範囲で変化した(コントロールは0.17)。2つのクローン(PAC1およびPAC)を動物実験用に選択した。ペプチド716クローンから6つのタイプが得られた。そのうち1つのタイプ(タイプA)が、16クローンのうち7クローンをしめ、このタイプのみが間接ELISAにおいて陽性の記録を示した(0.276〜0.318)(コントロールは0.17)。1つのクローン(クローン3)を動物実験用に選択した(PAC3)。ペプチド816のクローンから10のタイプが得られた。そのうちの2つのタイプ(AおよびB)は、それぞれ3クローンおよび4クローンをしめた。これらのクローンはいずれもELISAで陽性の結果を示さなかった。8つのクローンのうち5つが陽性のELISA結果を示し(範囲0.235〜0.304、コントロールは0.138)、独特のBst1フィンガープリントを示した。このうちの1クローン(クローン7)を動物実験用に選択した。ペプチド1〜3に特異的な選択クローンに関し、S. oralisおよびバンコマイシン抵抗性E. faecium感染症治療における効能を調べるために、PAC1〜4およびコントロールを用いて一連の実験を行った。実験1この実験は、Balb/cマウスを用い死亡時を終点とする急性連鎖球菌感染モデルとして行ったものである。条件は以下の通りである。S. oralis用量:5.7×109ファージ用量:5×108pfu/ml先ず抗体を、次いで2時間後にS. oralisを投与。DEPAGE:ガンジダ特異的カルボキシ末端HSP90抗原(配列DEPAGE)に対する抗体であり、無関係ファージ、すなわち、コントロールとして作用するものである。フィッシャーの完全2−テールP値は、B3.7については48時間で(P0.03)、PAC1については2時間(P0.0095)、さらにPAC2については48時間(P0.02)で統計学的有意性を示した。B3.7は、HSP90ストレスタンパク質に特異的な組換え抗体であり、HSP90タンパク質に特異的な抗体が、S. oralis、そしておそらくその他の連鎖球菌および腸球菌による感染症の診断および治療に有用であることを示唆している。実験2これは、CD1マウスを用いる慢性連鎖球菌感染モデルであり、脾臓および腎臓のコロニー係数をいろいろな終点で実施した。条件は以下のとおりである。S. oralis用量:2.5×109。ファージ用量:5×1010pfu/ml。先ずS. oralisを、次いで24時間後に抗体を投与。陽性カウント>104/g/ml。S=脾臓、K=腎臓。S+K=脾臓の結果および腎臓の結果を合わせたもの。4日目、7日目および12日目に5匹のマウスを殺した。10日目に抗体を再注入。24時間後の注入の後はファージは回収されず、すべてのマウス血液培養物は陰性。脾臓および腎臓の結果を合わせると、フィッシャーの完全2−テールP値はPAC2について統計学的有意性を示した。実験3これは、CD1マウスによる高レベルのバンコマイシン抵抗性E. faeciumを用いる感染モデルとして行った。条件は以下の通りである。E. faecium用量:3×1010/ml。ファージ用量:5×1010pfu/ml。先ずE. faeciumを、次いで24時間後に抗体を投与。陽性>104g/ml。S=脾臓、K=腎臓。S+K=脾臓+腎臓。2日目に自然死亡したものを培養。4日目に5匹のマウスを殺した。M13K07における生存マウス3匹、およびPAC2抗体における生存マウス5匹を7日目に殺した。全陽性数 コントロール:19/22PAC :13/18これは、当該微生物が>104/g/mlである場合を陽性であるとして、自然死亡(2日目)から得られた脾臓と腎臓の結果と殺した5匹のマウス(4日目)の結果を組み合わせることによって得られたものである。この結果から、PAC2は、バンコマイシン抵抗性E. faeciumに対してある程度の活性を有しているものと思われる。実験4これは、バイコマイシン抵抗性のE. faeciumを感染させたBalb/cマウスを用いる急性連鎖球菌感染モデルとして行った。終点は死亡時とした。条件は以下の通りであった。微生物:高レベル(>256mg/l)のバンコマイシン抵抗性E. faecium。E. faecium用量:5×1010/ml。ファージ用量:5×1010pfu/ml。先ず抗体を与え、次に2時間後にE. faeciumを投与した。フィッシャーの完全2−テールP値は、PAC2について48時間において統計学的有意性を示した(P0.02)。 連鎖球菌による感染中に発現され、且つヒトの血清から単離され少なくとも次の配列式(1)を有することを特徴とする精製された細菌タンパク質もしくはその免疫原性フラグメント。 次の性質の一方または両方を有することを特徴とする請求項1に記載の細菌タンパク質もしくはその免疫原性フラグメント。(1)免疫主体保存抗原であること、および(2)動物モデル(マウス)を敗血症感染から防御するヒト抗体と反応すること。 心臓弁への結合に関与していることを特徴とする、請求項1または2に記載の細菌タンパク質。 該タンパク質が、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus. oralis)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptoccocus sanguis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・ミチオー(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・パラサンギス(Streptococcus parasanguis)およびストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)から成る群の1つより得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細菌タンパク質もしくはその免疫原性フラグメント。 配列YEVEKELVDLPVEPSおよびKTPDQNIPDKPVEPTのいずれか1つからなる免疫原性フラグメント。 配列SYENEPTPPVKTPD、EPAPVAPSYENEPTPおよびWYSLNGKIRAVDVPKのいずれか1つからなる免疫原性フラグメント。 配列YEVEKPLEPAPVAPSからなる免疫原性フラグメント。 配列KTPDQPEPSKPEEPTからなる免疫原性フラグメント。 配列TMYPNRQPGSGWDSSからなる免疫原性フラグメント。 請求項1〜4のいずれかに記載の細菌タンパク質の断片である、免疫原性フラグメント。 連鎖球菌による感染中に発現されるタンパク質から得られる、請求項5〜9のいずれかに記載の免疫原性フラグメント。 さらに、タンパク質が心臓弁への結合に関与するものであることを特徴とする、請求項5〜9のいずれかに記載の免疫原性フラグメント。 連鎖球菌による感染を治療する医薬の製造に用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の細菌タンパク質に対する阻害剤の使用方法であって、阻害剤が請求項1〜12の何れかに記載のタンパク質またはその免疫原性フラグメントに特異的な抗体からなる使用方法。 連鎖球菌による感染の診断薬の製造に用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の細菌タンパク質に対する阻害剤の使用方法であって、阻害剤が請求項1〜12の何れかに記載のタンパク質またはその免疫原性フラグメントに特異的な抗体からなる使用方法。 連鎖球菌による感染のインビトロ検出法に用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の細菌タンパク質に対する阻害剤の使用方法であって、阻害剤が請求項1〜12のいずれかに記載のタンパク質またはその免疫原性フラグメントに特異的な抗体からなる使用方法。 検出法が、酵素結合免疫吸着法、ラジオイムノ法、ラテックス凝集法およびイムノブロット法から成る群の1つより選ばれることを特徴とする、請求項14または15に記載の使用方法。 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、ヒト組換え抗体またはその抗原結合性フラグメントである、請求項13〜16のいずれかに記載の使用方法。 連鎖球菌による感染のインビトロ検出法に用いられる、請求項1〜12の何れかに記載のタンパク質またはその免疫原性フラグメントの使用方法。 連鎖球菌に対する診断薬の製造に用いられる、配列YEVEKPLEPAPVAPS、TMYPNRQPGSGWDSSおよびWYSLNGKIRAVDVPKから選択される少なくとも2つの免疫原性フラグメントの使用方法。 検出法または診断薬における検出法が、酵素結合免疫吸着法、ラジオイムノ法、ラテックス凝集法およびイムノブロット法から成る群の1つより選ばれることを特徴とする、請求項18または19に記載の使用方法。 連鎖球菌による感染を治療する医薬の製造に用いられる、請求項1〜12の何れかに記載のタンパク質またはその免疫原性フラグメントの使用方法。 連鎖球菌による感染中に発現される細菌タンパク質もしくはその免疫原性フラグメントをコードし、次の配列式(2)のヌクレオチド配列を有するDNA分子。 DNA分子がコードするタンパク質が、次の性質の一方または両方を有することを特徴とする請求項22に記載のDNA分子。(1)免疫主体保存抗原であること、および(2)動物モデル(マウス)を敗血症感染から防御するヒト抗体と反応すること。 さらに、DNA分子がコードするタンパク質が、心臓弁への結合に関与するものであることを特徴とする請求項22または23に記載のDNA分子。 請求項22〜24の何れかに記載のDNA分子を包含する発現ベクター。