タイトル: | 特許公報(B2)_小麦グルテン由来アミラーゼインヒビターの製造方法 |
出願番号: | 1995353476 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07K14/415,C07K1/14,C07K1/30,C07K1/34,A61K38/55,A61P3/04,A61P3/10 |
前田 吉宏 村山 隆二 JP 3711474 特許公報(B2) 20050826 1995353476 19951227 小麦グルテン由来アミラーゼインヒビターの製造方法 長田産業株式会社 391029336 手島 孝美 100071434 石井 久夫 100091465 前田 吉宏 村山 隆二 20051102 7 C07K14/415 C07K1/14 C07K1/30 C07K1/34 A61K38/55 A61P3/04 A61P3/10 JP C07K14/415 C07K1/14 C07K1/30 C07K1/34 A61K37/64 A61P3/04 A61P3/10 7 C07K 14/415 C07K 1/14 C07K 1/30 C07K 1/34 A61K 38/55 A61P 3/04 A61P 3/10 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 米国特許第3944537(US,A) 特開平1−157385(JP,A) 6 1997176191 19970708 12 20021105 坂崎 恵美子 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は小麦グルテン由来アミラーゼインヒビターの製造方法に関し、特に高力価のアミラーゼインヒビターを多大な設備を必要とせずに安価に製造できるようにした方法に関する。【0002】【従来の技術】最近の食生活の向上に伴い、肥満、糖尿病等の代謝性疾患が増加する傾向にある。かかる肥満や代謝性疾患の予防及び治療には澱粉を糖に分解するアミラーゼの活性を阻害し、必要な栄養を摂取しても血糖値の上昇を抑制する作用を有するアミラーゼインヒビター(以下、AIという)が有効であることが報告され、小麦中にもAIが含まれていることが報告されて以来、小麦由来AIの製造方法が種々提案されている。【0003】例えば、▲1▼小麦又は小麦グルテンからAIをアルコールで抽出する方法(特開昭46−1833号公報、特開平4ー66599号公報、等参照)、▲2▼小麦、小麦粉又は小麦グルテンの水、酸又はアルカリによる抽出液、あるいは小麦粉等から澱粉を製造した後の小麦澱粉廃液(以下、抽出液等という)をUF膜で濃縮した後、乾燥させる方法(特開平2ー157296号公報、等参照)、▲3▼上記抽出液等から吸着剤(多糖類)でAIを吸着し、吸着剤を分離除去した後、UF膜で濃縮する方法(特開平5−213550号公報、等参照)等が知られている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし、アルコール抽出法▲1▼は抽出に多量のアルコールを必要とし、抽出後の残物の処理に多大な費用を要し、大量生産には不向きであった。【0005】また、抽出液等の濃縮方法▲2▼はUF膜を単独で用いているので、阻害活性の低いAIしか得られず、又多量の液の処理のためにUF膜装置のコストは多大なものになるという問題があった。【0006】さらに、抽出液より吸着剤を利用して分離、溶出、さら濃縮、精製する方法▲3▼は高力価のAIが得られものの、吸着剤コスト及びUF膜装置等の設備コストが多大であり、しかも処理に長い時間を要して製造中の腐敗等も問題となり、これを防ぐ設備がさらにコスト高を招来していた。【0007】本発明は、かかる状況において、高力価のAIを多大な設備を必要とせずに安価に製造できるようにした小麦グルテン由来AIの製造方法を提供することを課題とする。【0008】【課題を解決するための手段】本件発明者は上述の課題を解決すべく種々研究を重ねたところ、小麦グルテンが中性で水に溶けないことから、アルコール、酸、アルカリによる抽出を採用していたが、小麦グルテンにアルカリ水を加えて可溶化し、塩類を加えるとグルテンを不溶化してAI含有液から分離でき、かかるAI含有液のpHを中性又は酸性に調整すると、AI混合物を沈澱物として回収できること知見し、本発明を完成するに至った。【0009】即ち、本発明の特徴は、小麦グルテンに加水するとともにアルカリ剤を加えてpHを8〜11に調整することにより小麦グルテンを可溶化した後、塩類を加えることによりグルテンを不溶化してAI含有液から分離する第1の工程;第1の工程で得られたAI含有液のpHを中性又は酸性に調整することよりAI混合物を沈澱物として回収する第2の工程;を含むAIの回収方法にある。【0010】第1の工程は小麦グルテンを可溶化させた後、AIとグルテンとを分離する処理である。小麦グルテンの可溶化は小麦グルテンに水とアルカリ剤とを加え、分散機を用いて行うのがよい。小麦グルテンへの加水は生グルテン(水分を67%含む)において0.5〜10容量倍、粉末グルテン(バイグル)では2.5〜30容量倍が適当である。【0011】AIとグルテンの分離は小麦グルテン溶液に塩類を加え、グルテンを不溶化し、遠心分離又はフィルタープレス等の濾過にて除去する。アルカリ剤はNaOH、NH4OH等を用い、pHを8〜11に調整する。その時の液の温度は25〜50℃が好ましい。塩類はNaCl、( NH4)2SO4 等を用いることができ、0.1〜10重量%、好ましくは1〜6重量%を加える。【0012】第2の工程はグルテンの分離されたAI含有液からAI混合物を回収する処理である。これはAI含有液を中性又は酸性、具体的にはpH2〜8、好ましくは3.5〜5.5に調整することにより沈澱させてAI混合物を回収できる。その際、必要に応じてさらに塩類を0.1〜10重量%加えてもよい。【0013】グルテンの分離されたAI含有液はそのまま第2の工程で処理してもよいが、例えば(実施例1での)遠心分離後のAI含有液には約1.5%の蛋白質がまだ含まれている。そこで、AI含有液を中性又は酸性、具体的にはpH4.5〜7.5に調整した後、45〜90℃に加熱すると、不要な蛋白質がゲル化し、これを遠心分離や濾過で除去すると、AI含有液中の蛋白質が約0.6%になり、かなりの不純物を除去できる。【0014】グルテンを分離した後の液、即ちAI含有液はそのpHを2〜8、好ましくは3.5〜5.5に調整し、5〜15℃に冷却して放置すると、AI混合物の沈澱物を得ることができる。【0015】これに代え、グルテンの分離されたAI含有液をpH4.5〜7.5に調整した後、45〜90℃に加熱し、加熱変成物を除去した後、5〜15℃に冷却して放置してもAI混合物の沈澱物を得ることができる。【0016】さらに、45〜90℃に加熱し、加熱変成物を除去した後のAI含有液をpH5.0に調整した後、30〜50℃に保温した状態にてUF膜で濃縮を行い、pHを調整した後、濾過して不溶物を回収し、又は5〜15℃に冷却して放置し、AI混合物の沈澱物を回収してもよい。【0017】また、グルテンの分離されたAI含有液、又は加熱し、加熱変成物を除去した後のAI含有液のpHを2〜8、好ましくは3.5〜5.5に調整した後、珪藻土等の濾過材を添加して液温を5〜25℃に冷却した後、AI混合物の沈澱を待たずに遠心分離又は濾過にてAI混合物を不溶物として回収することができる。【0018】即ち、本発明によれば、小麦グルテンに加水するとともにアルカリ剤を加えてpHを8〜11に調整することにより小麦グルテンを可溶化した後、塩類を加えることによりグルテンを不溶化してAI含有液から分離する第1の工程;グルテン分離後のAI含有液のpHを中性又は酸性に調整し、或いは中性、弱酸性にして加熱処理して加熱変成物を除去した液のpHを中性又は酸性に調整し、珪藻土等の濾過材を添加して遠心分離又は濾過にてAI混合物を不溶物として回収する第2’の工程;を含むAIの回収方法を提供できる。【0019】得られたAI混合物の沈澱物又は不溶物は不純物を含むので、精製するのがよい。即ち、本発明によれば、沈澱物又は不溶物として回収されたAI混合物に蛋白分解酵素(プロテアーゼ)を作用させ、AI混合物を可溶化させて不溶物を除去する第3の工程;を含むAIの精製方法を提供できる。【0020】また、本発明によれば、沈澱物又は不溶物として回収されたAI混合物に含水アルコールを加えてアルコール濃度を5〜80%に調整し、AI混合物を可溶化させて不溶物を除去する第3’の工程;を含むAIの精製方法を提供できる。不溶物は遠心分離又は濾過にて除去でき、水溶性のAIが得られる。【0021】精製されたAI混合物は乾燥工程で乾燥する。乾燥作業には凍結乾燥、真空乾燥、スプレー乾燥等が採用できる。【0022】【作用及び発明の効果】小麦グルテンをアルカリ分散(必ずしも水に溶けているとは言えない)させた後、塩類を添加することにより、小麦グルテンとAIとが分離可能となり、グルテンは浮上又は沈澱して回収でき、そのまま又は中和し、水洗後、公知のグルテン加工工程へ供される。【0023】グルテンの分離されたAI含有液はpHが中性又は酸性領域でその活性値の30〜90%が容易に沈澱物(固形物40〜50%)として、又は簡単な遠心分離や濾過で回収でき、しかも高阻害活性である。この工程には、吸着に高価な薬品を要せず、分離濃縮に複雑な処理工程、従って高価な設備を必要としない点で従来の方法よりも優れ、しかも抽出に用いた小麦グルテンも利用可能である。【0024】従って、本発明によれば、高力価のAIを多大な設備を必要とせずに安価に製造できることとなる。【0025】【発明の実施の形態】〔実施例1〕小麦粉(日清製粉社製:銀杏)10kgに水6リットルを加え、ドウを形成した後、60リットルの水で水洗し、澱粉乳液55リットル、グルテン5kgに分離した。ミキサー(特殊機化工業社製:T.K.ユニミクサー)付きの30リットル容器へ15リットル水を入れ、ミートチョッパーでグルテンを小さく刻んで出しながら、適宜NaOHを添加し、最終pHを10.0に調整した。1時間の攪拌の後、15%食塩水を1リットル添加し、10分間攪拌した後、停止した。3時間経過した後、グルテンは浮上して固まりとして容易に回収でき、5kgのグルテンと、16リットルの溶液を得た。【0026】16リットルの液中の澱粉を遠心分離(ラボ用2リットル/日 1000G)で除去した後、pHを5.5に調整し、20リットルのアルミ鍋で80℃で10分間加熱処理し、生じた不溶物を上記遠心分離機で除去した。かかる後に、15.5リットルのグルテンAI抽出液を得た。【0027】この抽出液のヒトすい液(H.P)及びヒト唾液(H.S)のα−アミラーゼに対する阻害活性は320U/ml、450U/mlであった。【0028】この溶液にNaClを150g入れて溶解した後、HClにてpH4.0に調整し、20リットルバケツにて3〜5℃で一昼夜放置した。バケツ上澄液を除去し、底部に付着する粘着物32gを得た。上澄液の残存AI活性はH.Pが32U/ml、H.Sが60U/mlであった。【0029】回収固形物の固形分は42%、AI活性はH.Pが139U/mg、H.Sが123U/mgであった。この固形物を研究用凍結乾燥機で乾燥し、約14gの乾燥AIを得た。最終品はH.Pが320U/mg、H.Sが290U/mgの高力値の阻害活性を有していた。【0030】〔実施例2〕オーストリア産バイタルグルテン(乾燥グルテン)10kgを、200リットル容器中のアンモニア水を混合した液100リットルに、少しづつ分散溶解して、pHを9.0に調整し、3時間の間攪拌した後、20%NaCl溶液5リットルを加えてグルテンを沈澱させた。30kgのグルテンと85リットルの液を得た。【0031】この液に珪藻土1kgを添加して小型フィルタープレスで澱粉を除去し、続いてpHを6.0に調整した後、蒸気を入れて80℃まで加熱した。加熱変性物は冷却後に珪藻土1kgを添加して小型フィルタープレスで除去し、清澄な80リットルの液を得た。この液のAI活性はH.Pが300U/ml、H.Sが390U/mlであった。この液を2万分画UF膜(日本電工社製)を用いて5倍濃縮を行い、16リットルの濃縮液を得た。濃縮液のAI活性はH.Pが1400U/ml、H.Sが1900U/mlであった。【0032】この濃縮液にNaClを160g溶解し、pHを3.5に調整して20リットルポリバケツにて5℃で一昼夜放置した後、バケツ底部に粘着物190gを得た。そのAI活性はH.Pが106U/mg、H.Sが92U/mgで、水分は55%であった。真空乾燥で乾燥し、90gの乾燥物を得た。そのAI活性はH.Pが220U/mg、H.Sが200U/mgであった。【0033】〔実施例3〕実施例1と同様にして回収粘着物32gを得た。これに対して3容量倍の含水エチルアルコールを入れて混合物中アルコール濃度を50%とし、1時間攪拌した後、遠心分離機(1000G、30分)で不溶物を分離し、上澄液110mlを回収した。【0034】この上澄液を凍結乾燥機で乾燥して12gの乾燥物を得た。この乾燥物のAI活性はH.Sが360U/mg、H.Pが320U/mgであり、中性の水に可溶なものとなった。【0035】〔実施例4〕実施例2と同様の操作を用いて190gの粘着物を得た。この粘着物を0.1NのNaOHを用いてpH6.5に中和した後、プロテアーゼ(阪急共栄物産社製:90N)を40mg添加混合し、37℃で1時間放置した。その後、プロテアーゼの失活を行うため、0.1NのHClでpH3.0に調整した後、50℃で30分の処理を行った。その後、水を添加して総量を400gとし、0.1NのNaOHでpHを6.5に調整した。【0036】この液を遠心分離機(1000G、30分間)で分離した後、真空乾燥機で乾燥を行い、76gの乾燥物を得た。そのAI活性はH.S264U/mg、H.Pが290U/mgであった。この乾燥物は中性の液に可溶であった。【0037】〔実施例5〕実施例2と同様にして得られた加熱処理液80リットルに1.6kgのNaClを溶解した後、25℃に冷却し、0.1NのHClでpH4.0に調整し、珪藻土700gを混合して小型フィルタープレスにて濁り(放置にて沈澱する物)を回収した。濾過液のAI活性はH.Sが110U/ml、H.Pが60U/mlで、回収ゲル量1400g、水分32%、ゲル当りのAI活性はH.Sが16800U/g、H.Pが14400U/gであった。【0038】このゲルに水2600mlを混合し、0.1NのNaOHでpH8.0に調整しながら3時間撹拌した後、ブフナーで吸収濾過し、珪藻土を除去した。その液はH.S8900U/ml、H.P7800U/ml、容量2700mlであった。この液1リットルを凍結乾燥後、約42gの乾燥物を得た。この物の活性はH.Sが210U/mg、H.Pが180U/mgであった。【0039】ここで、AI活性の測定は下記のブルースターチ法(Blue Starch method)を採用した。4mlの水にα・アミラーゼ50μlを添加し、37℃に5分間加熱した後、これにAIサンプルを50μlを加え、全液中のα・アミラーゼ濃度を0.01U/mlとした。その後、30分間インキュベートを行い、ネオアミラーゼテスト(第一製薬社製)を一錠加えて攪拌し、さらに30分間インキュベートを行い、0.5NのNaOHを1ml添加して反応停止後、No.6の濾紙で濾過し、620mmの吸光度を測定した。【0040】A.I.サンプルなしの吸光度が0.670、A.I.サンプルを入れた吸光度が0.335となるA.Iサンプルの希釈倍率を求め、以下計算を行った。AI活性値=0.01(U/ml)×1/2(半値)×4100μl/50μl(全体/サンプル)×希釈倍率=0.41U×希釈倍率【0041】(実験例1)本発明の特徴の1つは小麦グルテンをアルカリ剤にてpHを8〜11に調整して可溶化した後、塩類にてグルテンを不溶化してAI含有液から分離する点にある。そこで、小麦グルテンの溶出時におけるpHのAI活性に対する影響を調べた。実験は、50gのバイグル(粉末グルテン)に500mlの水を加え、NaOHを添加してpH7〜11に調整し、バイグルを可溶化した時のAI活性(U/ml)を測定した。その結果を図1に示す。また、バイグルを可溶化した後、1%NaClを加えてグルテンを不溶化した時のAI活性(U/ml)を測定し、その結果を図2に示す。また、それらのAI活性値は表1に示す。【0042】【表1】【0043】図1及び図2によれば、pH10前後で最も高いAI活性が得られていることが分かる。また、7〜11の各pHにおいて、バイグル可溶化後、及びグルテン不溶化時のAI活性は多少のバラツキは見られるが、測定作業上の誤差と考えられ、1%NaCl添加による影響はないものと考えられる。【0044】(実験例2)また、本発明の第2の特徴はグルテンの分離されたAI含有液のpHを中性又は酸性にしてAI混合物を沈澱物として回収する点にある。そこで、実験例1で得られたpH10のAI含有液を中性に調整し、45〜90℃に加熱処理して不要な蛋白質を不溶化して除去したAI含有液(AS)、及びそれに1%、3%のNaClを添加し、これらを5℃に冷却保存した3種類のAI含有液を用い、pHを2.5〜7に調整して各pHにおける上澄液の残存AI活性を測定し、pHのAI混合物の沈澱量に対する影響を求めた。その結果を図3、図4、図5に、又求めたAI活性値は表2に示す。なお、AI含有液の阻害活性はH.S622U/ml、H.P473U/mlであり、基準値として示してある。【0045】【表2】【0046】図3、図4、図5によれば、pHが6.0又は5.5から沈澱量が急増し、4.5以下のpHで多い沈澱量が得られることが分かる。また、NaClの影響については加熱処理したAI含有液(AS)、1%NaCl添加AI含有液、3%NaCl添加AI含有液に顕著な差異は認められなかった。【0047】次に、本発明方法及び各種製法で得られたAIのアミラーゼ阻害効果について調べた。本発明方法は実施例2によって得られたAIを使用した。比較AIは下記の比較製法1〜3によって得られたAIを使用した。試験は0.9%NaCl溶液にAIを所定量加えた溶液を十二指腸液、唾液200μlに加え、37℃で30分間イキュベートし、希釈後、ブルースターチ法で残存アミラーゼ活性を測定した。但し、H.P測定用の酵素にはコスモ社のものを、H.S測定用の酵素にはシグマ社のものを用いた。その結果を図6及び図7に、それらの活性値を表3(H.P)及び表4(H/S)に示す。コントロールアミラーゼ活性(AI添加前の活性)はH.Pが54.6U/ml、H.Sが120U/mlである。【0048】(比較製法1)小麦グルテン1部から、エチルアルコール(濃度65%)10部を使用して室温でAIを抽出した後、0.9%NaCl溶液で透析して不溶物を除去し、UF膜で5倍に濃縮し、凍結乾燥した(特開平4ー66599号参照)。【0049】(比較製法2)小麦粉130Kgに水70リットルを加えて混練した生地を、1200リットルの水を用いて洗浄して65Kgのグルテンと80Kgの小麦澱粉を回収し、1000リットルの水洗廃液を得た。この水洗廃液に塩酸を加えてpH3に調整して30分放置した後、アンモニアでpHを6.5に調整すると、不溶物が沈澱したので、沈澱物を除去して上澄液850リットルを回収した。この回収した上澄み液にアルギン酸ナトリウム300ppmを加えた後、pHを4.2に調整して30分間撹拌した。その結果、水不溶物を生成したので、この水不溶物をドラバル型遠心分離機を使用して回収した。この回収物をその10倍量の水に分散させた後、塩化カルシウム0.76kgを加えてよく撹拌し、アンモニアでpHを8.5に調整して1時間静置した。次いで、ドラバル型遠心分離機を使用して固形物を分離除去して上澄み液100リットルを回収した。【0050】上記回収した上澄み液を塩酸で中和し、中和液を80℃に30分間加熱した後、生成した不溶性物質をドラバル型遠心分離機で分離して上澄み液を回収し、この上澄み液を限外濾過膜〔日東電工株式会社製;NTUー3250CIR(MW:2万)〕を用いて濃縮し、23リットルの濃縮液を得た。この濃縮液における蛋白質濃度は25mg/mlであった。得られた液に対して同時に余剰のカルシウム塩の脱塩を行った。上記で得られた濃縮液23リットルをアンモニアでpH7.5に調整し、陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンHPKー55:三菱化成株式会社製)28リットルを充填したカラム(長さ900mm、内径200mm)に1リットル/分の流速で通液し、陽イオン交換樹脂に吸着せずに溶出した画分を採取した。上記溶出画分をセラミックフィルターを使用して除菌濾過した後、凍結乾燥してAI物質を含有する乾燥粉末230gを得た(特開平5ー213550号公報参照)。【0051】(比較製法3)小麦粉からグルテン及び澱粉を除いた廃液を原料として用いた。この廃液のヒト唾液AI活性(U/mg蛋白)は3.41、ヒトすい液AI活性(U/mg蛋白)は3.55であった。この廃液800リットル内に水蒸気を15分間導入して90℃まで加熱し、得られた液900リットルを連続遠心分離し(3000G)、加熱変成物を除去した。得られた透明な上澄液を直に径3μm及び1μmのフィルタで濾過し、透明な液850リットルを得、次いで0.2μmの精密濾過筒を通過せしめて除菌した。その後、限外濾過膜ロミコンPM・100(膜面積2.5m2 ,2本)を用いて上記溶液を10倍に濃縮した。濃縮時の温度は70℃、濃縮膜入口圧は約2Kg/m2 であり、約3時間循環させた。次いで、濃縮液を噴霧乾燥し、4.1Kgの粉末を得た。生成物のヒト唾液AI活性(U/mg蛋白)は11.8、ヒトすい液AI活性(U/mg蛋白)は5.02であった(特開平2ー157237号公報参照)。【0052】【表3】【0053】【表4】【0054】図6及び図7によれば、本発明法によって得られたAIは同一添加量であっても比較製法1〜3によって得られたAIに比し、残存アミラーゼ活性が低く、高阻害活性を呈していることが分かる。また、AI活性(U/mg)を求めると、本発明法はH.Pが255、H.Sが230であり、比較法1はH.Pが72、H.Sが100、比較法2はH.Pが26、H.Sが108、比較法3はH.Pが3.6、H.Sが10であった。【図面の簡単な説明】【図1】 小麦グルテンの溶出時におけるpHとAI活性との関係を示す図である。【図2】 1%NaCl添加によるグルテン不溶化時におけるpHとAI活性との関係を示す図である。【図3】 図2のpH10の抽出条件でのAI含有液を用いて、液温5℃、各pHにおける液中残存AI活性(即ち、AI混合物の沈澱効果)を示す図である。【図4】 図3のAI含有液にさらに1%NaClを添加し、図3と同様の効果を示す図である。【図5】 図3のAI含有液にさらに3%NaClを添加し、図3と同様の効果を示す図である。【図6】 本発明法及び比較法1〜3によって得られたAIのH.Pに対する効果を示す図である。【図7】 本発明法及び比較法1〜3によって得られたAIのH.Sに対する効果を示す図である。 小麦グルテンに加水するとともにアルカリ剤を加えてpHを8〜11に調整することにより小麦グルテンを可溶化した後、塩類を加えることによりグルテンを不溶化してアミラーゼインヒビター含有液から分離する第1の工程;第1の工程で得られたアミラーゼインヒビター含有液のpHを中性又は酸性に調整することによりアミラーゼインヒビター混合物を沈澱物として回収する第2の工程;を含むアミラーゼインヒビターの回収方法。 小麦グルテンに加水するとともにアルカリ剤を加えてpHを8〜11に調整することにより小麦グルテンを可溶化した後、塩類を加えることよりグルテンを不溶化してアミラーゼインヒビター含有液から分離する第1の工程;第1の工程で得られたアミラーゼインヒビター含有液のpHを中性又は酸性に調整し、アミラーゼインヒビター混合物を遠心分離又は濾過にて不溶物として回収する第2’の工程;を含むアミラーゼインヒビターの回収方法。 第1の工程で得られたアミラーゼインヒビター含有液のpHを中性又は酸性に調整して加熱することにより不要な蛋白質をゲル化させ、遠心分離又は濾過にて除去した後、第2又は第2’の工程を行ってアミラーゼインヒビター混合物を沈澱物又は不溶物として回収するようにした請求項1又は2記載のアミラーゼインヒビターの回収方法。 請求項1ないし3のいずれかに記載の方法によって沈澱物又は不溶物として回収されたアミラーゼインヒビター混合物に蛋白分解酵素を作用させることよりアミラーゼインヒビター混合物を可溶化させ、不溶物を除去する第3の工程;を含むアミラーゼインヒビターの精製方法。 請求項1ないし3のいずれかに記載の方法によって沈澱物又は不溶物として回収されたアミラーゼインヒビター混合物に含水アルコールを加えてアルコール濃度を5〜80%に調整することよりアミラーゼインヒビター混合物を可溶化させ、不溶物を除去する第3’の工程;を含むアミラーゼインヒビターの精製方法。 請求項1ないし5のいずれかに記載の方法で得られたものを、凍結乾燥、真空乾燥又はスプレー乾燥にて乾燥する第4の工程を;含むアミラーゼインヒビターの製造方法。