タイトル: | 特許公報(B2)_銅製錬用回転鋳造機および銅アノード成形方法 |
出願番号: | 1995346190 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | B22D 25/04,C25C 7/02,G01N 33/20 |
家守 伸正 松本 康弘 森田 耕成 伊藤 隆 JP 3769798 特許公報(B2) 20060217 1995346190 19951212 銅製錬用回転鋳造機および銅アノード成形方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 鴨田 哲彰 100108877 家守 伸正 松本 康弘 森田 耕成 伊藤 隆 20060426 B22D 25/04 20060101AFI20060406BHJP C25C 7/02 20060101ALI20060406BHJP G01N 33/20 20060101ALI20060406BHJP JPB22D25/04 BC25C7/02 305G01N33/20 G B22D 25/04 C25C 7/02 G01N 33/20 特開2003−205354(JP,A) 2 1997164468 19970624 9 20020402 小柳 健悟 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、銅製錬工程で産出される粗銅を鋳込み、アノードとして次工程の電解精製工程へ供給する銅アノード回転鋳造に関し、具体的には、銅アノードの膨れを表面温度分布の測定により検出するようにした銅アノード回転鋳造に関する。【0002】【従来の技術】銅アノード回転鋳造機は、典型的には、図1に示すように、ターンテーブル1と、該ターンテーブル1の上に載置された複数の鋳型2と、計量樋4と、冷却フード8と、冷却水散布配管9と、異形アノード剥取装置10と、正常アノード剥取装置13と、粘土水散布装置14とからなり、計量樋4から鋳型2に鋳込まれたアノード3を矢印Aの方向に移動させつつ、冷却、剥取りを順次行うように構成されている。銅アノード回転鋳造機の運転に際しては、転炉から産出される粗銅を精製炉7で還元等の精製処理を行った溶融粗銅を、流し樋6および溜樋5を介して、一定量ずつ計量樋4に供給し、計量樋4から、一定量の溶融精製粗銅を鋳型2の中に傾注する。【0003】冷却フード8は、その中に冷却水散布配管9を有し、これにより冷却水が散布され、鋳込後のアノード3および鋳型2の冷却が行われる。異形アノード剥取装置10では、外観上の不良品、すなわちショルダー部に良好に溶湯が行き渡らなかった等により生ずる不良アノードや、通常とは形状の異なる鋳型に鋳込まれた異形アノードを剥取る。正常アノード剥取装置13では、残りのアノード3が鋳型2から剥取られる。粘土水散布装置14では、鋳型2の表面に、次の鋳込みを行うための離型剤として粘土水が散布される。以上のように構成される銅アノード回転鋳造機は、その中央部あるいは近傍に配置された運転室(図示せず)内のオペレーターにより、運転、制御、監視を行う。【0004】上記したように、銅アノードの鋳造においては、アノード3と鋳型2の剥離性を良くするために粘土水の散布を行っているが、この粘土水散布には、鋳型2の冷却、保護といった機能もある。鋳型2の冷却のためには、粘土水の散布量が多い方が好ましく、また鋳型2の保護のためには、粘土水の粘土濃度の高い方が好ましい。しかしながら、粘土水の散布量が多すぎる場合、鋳型の過冷却によって鋳型冷却水や粘土水の水分の蒸発がうまく行われず、溶融粗銅注湯時に鋳型上に残留した水分が蒸発して、図2、図3において示すようにアノード内部に空隙部分あるいは膨れ部分3aが形成され、表面が膨れている不良アノードが発生する(以下、これらの不良アノードを膨れアノードと称す)。【0005】一方、粘土水の濃度が高すぎる場合、つまり散布された粘土量が過剰の場合には、鋳型表面の水分の蒸発はうまく行われるが、粘土中には多量の結晶水が存在し、溶融粗銅注湯時にこれらの結晶水の蒸発によって、図2、図3のような膨れアノードが同様に発生する。これらの膨れアノードが、次工程の電解精製工程で処理された場合、次のような問題点が生ずる。すなわち、電解精製工程においてアノードに膨れがある場合、電気分解中にアノード3が溶解されていく過程において、図4のように膨れ部分3aの表面の脱落あるいは剥れによって、アノード3とカソード20が短絡し、電圧低下による品質悪化等、操業への悪影響が発生する。また、溶解が進んで内部の空隙が露出されると、アノード3の表面が不均一になるため、カソード20の電着も均一化されずに、表面性状の悪い電気銅が発生する。従って、銅アノードの鋳造工程においては、冷却フード8の出口から出てきたところで、オペレーターの目視によって膨れアノードを判定し、膨れアノードは電解精製工程へ送られる前に異形アノード剥取装置10で不良品として抜き出される。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかし、アノードの膨れは、その度合いが様々で、オペレーターの判定基準には差があることや、鋳造工程において次々に移動してくるアノードの1枚1枚について目視によってチェックすることは事実上不可能であることなどから、膨れアノードの発生量について定量的に把握することが困難である。このため、正常アノード剥取装置13から搬出されてくるアノード3の中に膨れアノードが混入してしまう。正常アノード剥取装置13から搬出されたアノードから不良品を取り除くことは、製品の運搬・貯蔵の効率から不可能である。また、膨れアノードが速やかに検出されなければ、粘土水の散布量および濃度を変更する等のフィードバック対応策が遅れることによって、多量の膨れアノードが不良アノードとして抜き出されずに、電解工程へ送られてしまうという問題点がある。【0007】従って、本発明は、膨れアノードの検出を自動化することによって、オペレーターの目視チェックの省力化、膨れアノードの判定基準の規格化、および膨れアノード量の定量的な把握を可能にし、アノードの膨れに対し、迅速な対応が取れる銅精錬用鋳造機あるいは銅アノード成形方法を提供することを課題とする。【0008】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明者は、散水冷却直後のアノードの温度分布を調べた結果、膨れアノードについて空隙部分あるいは膨れ部分の表面温度が周りのアノード表面温度よりも低い分布になっていることを発見し、これに着目した。すなわち、本発明の銅アノード成形方法は、銅アノード回転鋳造機の冷却装置から出たアノードが一定温度にまで冷却されたとき、その表面温度分布を測定し、温度差によってアノードの膨れ部分を検出することに特徴がある。このために、本発明の銅製練回転鋳造機では、銅アノード回転鋳造機の冷却装置とアノード剥取装置の間に存在するアノードの表面温度分布を測定する温度計を設置したことに特徴がある。この温度計は、非接触式が好ましい。さらに、前記表面温度分布によりアノード内における空隙部分の有無を判定する装置を設けたことに特徴がある。【0009】空隙部分の有無の判定は、次のように行われる。図6は、膨れ部分のない表面性状の良好なアノード3を示し、図7および図8は、このアノード3の表面温度分布を示したものであり、中央部が最も高く、縁に行くほど温度が下がっていく分布となる。図9は、アノード3に図2に示すような膨れ部分3aがある場合の表面温度分布を示したものであり、膨れ部分の温度が周囲に比べて低下していることがわかる。膨れ部分の中心にはあまり温度変化は見られないが、膨れ部分の縁は膨れ部分の中心に向かって急激に温度が低下しており、この温度変化の大きな部分を膨れ部分として検出することができる。【0010】なお、鋳込屑等の異物がアノード上に載っている場合は、やはり、温度分布が中央部で凹む領域がある。しかし、異物の場合、この領域の中心部の温度が膨れの中心部に比べて大きく低下しているので、この中心部の絶対温度の差から、膨れ部分3aと異物の識別は可能であり、アノード3の膨れ部分3aの検出率、正解率とも高くできる。従って、表面温度分布を示す曲線を読み取り、その形状を識別することで、空隙部分の有無を判定できる。【0011】【発明の実施の形態】本発明の実施例を図によって説明する。図1に示すように、本実施例の銅アノード回転鋳造機は、ターンテーブル1と、該ターンテーブル1の上に載置された複数の鋳型2と、計量樋4と、冷却フード8と、冷却水散布配管9と、異形アノード剥取装置10と、非接触式温度計11と、正常アノード剥取装置13と、粘土水散布装置14とからなり、計量樋4から鋳込まれたアノード3を矢印Aの方向に移動させつつ、冷却、剥取りを順次行うように構成されている。銅アノード回転鋳造機の運転に際しては、転炉から産出される粗銅を精製炉7で還元等の精製処理を行った溶融粗銅を、流し樋6および溜樋5を介して、一定量ずつ計量樋4に供給し、ここから、一定量の溶融精製粗銅を鋳型2の中に傾注する。冷却フード8は、その中に冷却水散布配管9を有し、これより冷却水が散布され、鋳込後のアノードおよび鋳型の冷却が行われる。【0012】異形アノード剥取装置10では、外観上の不良品、すなわちショルダー部に良好に溶湯が行き渡らなかった等により生ずる不良アノードを目視により判定し、剥取機に指令を出して剥取る。また、通常とは形状の異なる鋳型に鋳込まれた異形アノードは、検出器によって検出して自動的に剥取機を動作させる。正常アノード剥取装置13では、リフト(図示せず)により、移動してくる全てのアノード3のショルダー部が引っかけられて、鋳型2から自動的に剥取られる。粘土水散布装置14では、鋳型2の表面に、次の鋳込みを行うための離型剤として粘土水が散布される。粘土水の濃度を調整する装置が、粘土水散布装置14の中に設けられている。【0013】非接触式温度計11(例えば日本電気三栄(株)製赤外放射温度計)が、異形アノード剥取装置10と正常アノード剥取装置13の間の位置に設置されている。そして、図5に示すように、非接触式温度計11は、運転室15内の演算処理装置12に接続されている。非接触式温度計11は、内部のモータによってアノード3をx軸、y軸の座標に従って走査可能なように、固定の架台に固定されており、アノード3の移動に伴い、その全表面を走査する。この走査により感知された温度データが演算処理装置12(横河電気(株)製YEWMAC)に送られ、コンピュータ16により処理される。図10に、演算処理装置12で空隙部分(膨れ)を検出する処理のフローチャートを示す。【0014】(1)フィルタリング非接触式温度計11からの生データでは、表面状態などの影響が処理的にはノイズとなってしまう。そこで、表面温度についてフィルタリングすることで、表面温度が平滑化され、温度変化の大きい点が集まっている部分のみ取り出すことができる。【0015】(2)温度変化量大部分取り出し(抽出)フィルタリング後、二値化処理により温度変化量が多い部分を取り出す。【0016】(3)温度変化量大部分グループ化(グルーピング)温度変化量が大きい部分について近接しているものをグループ化する。各グループについて基準点を定め、基準点より解析方向に変化量大の点を発見し、その点が近接していれば同じグループとみなし、グループのドットとしてカウントする。【0017】(4)膨れの判定についてグループ化した各グループのドット数について、ドット数が基準値より多い場合は異常であると判断する。異常であるグループについては、中心座標を求め、その中心座標の温度を読み、温度が極端に低いものについては鋳屑と判断し、それ以外を膨れと判断する。演算処理装置12では、コンピュータ16の処理により、表面温度分布のグラフを画くと共にこのグラフの形状変化に基づいて空隙部分の有無を判定する。なお、画かれたチャートを基に目視で判断することもできる。【0018】空隙部分(膨れ)の存在が判定されると、粘土水散布装置14に修正信号を送る。これに基づいて、粘土水散水装置14内の調整装置で粘土水の量や濃度を修正する。後続のアノードにおいて、空隙部分(膨れ)の発生を防止するためである。なお、正常アノード剥取装置13に除去信号を送り、当該アノード剥取装置13内で正常アノードの列から除去するのが望ましい。冷却フード8から出たアノード3の温度は、650〜750℃で、正常アノード剥取装置13では、600〜700℃である。このアノード3は、その後、当該鋳造機から取り出して、搬出されるまでに室温にまで空冷される。【0019】本実施例の過程で、非接触式温度計11で表面温度を測定するのであるが、異形アノード剥取装置10より冷却フード8の側では、冷却フード8からの蒸気によって表面温度が正確に測定できないので、異形アノード剥取装置10と正常アノード剥取装置13の間にあるアノード3の表面温度を測定する。しかし、冷却フード8の蒸気対策がきちんと行われれば、表面温度の測定への影響が無いので、異形アノード剥取装置10より冷却フード8の側から、非接触式温度計11から運転室15を介して異形アノード剥取装置10に指令を送って、異形アノード剥取装置10で、膨れアノードを取り除くようにすることが好ましい。この例を図11に示す。【0020】【発明の効果】本発明によって、膨れアノードの自動検出が可能になり、これによってオペレーターの目視チェックの省力化、膨れアノードの判定基準の規格化および膨れアノードの定量的な評価が可能になり、鋳造工程における迅速な対応が取れるようになった。さらに、非接触式温度計を冷却フード出口に配設し、異形アノード剥取装置および粘土水散布装置のシステムとリンクさせることによって、粘土水の散布量や濃度をアノードの膨れの検出度合により自動的に調整することが可能になる。また、調整段階のタイムラグ中に発生する膨れアノードについては、異形アノード剥取装置で自動的に剥取ることも可能になり、鋳造工程および電解精製工程の操業効率の向上につながる。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明を実施した銅アノード回転鋳造機を示す平面配置図。【図2】 膨れが発生したアノードを示す正面図。【図3】 膨れが発生したアノードを示す側面図。【図4】 電解精製工程においてアノードの膨れ部が剥れてアノードとカソードが短絡している様子を表した側面図。【図5】 非接触式温度計と演算処理装置との関係を示す線図。【図6】 正常な状態のアノードを示す正面図。【図7】 アノードの表面温度分布を表した図。【図8】 アノードの表面温度分布を表した図。【図9】 アノードの表面温度分布を表した図。【図10】 空隙部分(膨れ)判定のための処理を示すフローチャート。【図11】 本発明の他の実施例を示す図1に同様な配置図。【符号の説明】1 ターンテーブル2 鋳型3 アノード4 計量樋6 流し樋7 精製炉8 冷却フード10 異形アノード剥取装置11 非接触式温度計12 演算処理装置13 アノード剥取装置16 コンピュータ19 粘土水散布装置 銅精製炉から排出される溶融精製粗銅を銅電解用アノードに形成するための鋳型と、該鋳型に溶融精製粗銅を注入するための注湯設備と、該鋳型を移動させる装置と、鋳型内で成形されたアノードを冷却するための装置と、アノードを鋳型から剥取るための剥取装置とから構成され、該冷却装置とアノード剥取装置の間に存在するアノードの表面温度分布を測定するための温度計と、該表面温度分布によりアノード内空隙を検出する判定装置とを有する銅製錬用回転鋳造機よりアノードを成形する方法において、該冷却装置から出たアノードの表面温度分布を測定して、周囲に比べて温度の低下している部分を認識し、アノード内の空隙部分を検出することを特徴とした銅アノード成形方法。 銅精製炉から排出される溶融精製粗銅を銅電解用アノードに形成するための鋳型と、該鋳型に溶融精製粗銅を注入するための注湯設備と、該鋳型を移動させる装置と、鋳型内で成形されたアノードを冷却するための装置と、アノードを鋳型から剥取るための剥取装置とから構成された銅製錬用回転鋳造機において、該冷却装置とアノード剥取装置の間に存在するアノードの表面温度分布を測定するための温度計と、該表面温度分布によりアノード内空隙を検出する判定装置とを有することを特徴とした銅製錬用回転鋳造機。