生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_脂肪酸乳酸エステル塩の製造方法
出願番号:1995324402
年次:2007
IPC分類:C07C 69/02,B01J 27/232,C07C 67/10,C11C 3/08,C07B 61/00


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加曽利 行雄 山▲崎▼ 徹郎 柏 啓太 JP 3981987 特許公報(B2) 20070713 1995324402 19951213 脂肪酸乳酸エステル塩の製造方法 三菱化学株式会社 000005968 長谷川 曉司 100103997 加曽利 行雄 山▲崎▼ 徹郎 柏 啓太 20070926 C07C 69/02 20060101AFI20070906BHJP B01J 27/232 20060101ALI20070906BHJP C07C 67/10 20060101ALI20070906BHJP C11C 3/08 20060101ALI20070906BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070906BHJP JPC07C69/02B01J27/232 XC07C67/10C11C3/08C07B61/00 300 C07C 67/00-62 C07C 69/00-96 特開昭64−006237(JP,A) 特開昭57−179245(JP,A) 特開昭59−005142(JP,A) 9 1997157216 19970617 7 20020121 小柳 正之 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は脂肪酸乳酸エステル塩の製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】脂肪酸乳酸エステル塩はアニオン性界面活性剤として、食品、化粧品、洗浄剤などの用途に有用である事が知られている(特開昭64−6237号公報、特開平4−23900号公報)。当該化合物の主な製造方法としては、アルカリ触媒存在下、乳酸と脂肪酸とを100〜250℃で直接エステル化する方法(米国特許第2733252号)、或いは乳酸を脂肪酸の酸クロライドと反応させる方法(米国特許第2789992号)などが報告されている。これらの反応で得られた脂肪酸乳酸エステルは通常反応混合物のままアルカリ中和により塩とするのが一般的である。【0003】しかしながら、上述の方法により製造される反応生成物中には目的とする脂肪酸乳酸エステル以外に原料に由来する未反応の乳酸や脂肪酸が相当量残存している他、ポリ乳酸やその脂肪酸エステル等の副生物も多い。また、当該混合物はアルカリ中和により脂肪酸乳酸エステルの一部が加水分解を受けるため、最終的な製品は極めて純度の低いものとなる。また、酸クロライド法では目的物の反応収率はある程度向上するが、腐食の問題から設備コストが高くなるので工業的製法としては必ずしも好ましくない。【0004】【発明が解決しようとする課題】これに対し、乳酸塩と脂肪酸低級アルコールエステルとを有機溶媒中でエステル交換させて対応する脂肪酸乳酸エステル塩を得る方法は過去に報告例が殆どなかった。これは本発明者らの検討によれば、系が不均一で反応が殆ど進行しないためである事が明らかである。しかしながら、エステル交換法により脂肪酸乳酸エステル塩が製造可能になれば、上述の製造方法に比べて反応生成物中の副生物が低減化され、高純度な製品を得る事が出来る。また、アルカリ中和も不要となるため、加水分解による純度低下が解消される等の利点が考えられる。当該製品は安全性が強く求められる食品や化粧品分野で使用される頻度が高いが、エステル交換法による脂肪酸乳酸エステル塩の製造は原料の安全性からみても好適である。【0005】従って、本発明の目的は、乳酸塩と脂肪酸低級アルコールエステルを有機溶媒中でエステル交換させ対応する脂肪酸乳酸エステル塩を収率良く得る製造方法を提供するものである。【0006】【発明を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者は乳酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩(以下、「乳酸塩」と記載)と脂肪酸低級アルコールエステルをアルカリ触媒存在下、有機溶媒中でエステル交換させ対応する脂肪酸乳酸エステル塩を製造する際、ノニオン又はアニオン性界面活性剤を存在させると反応が容易に進行し、本発明の目的が達成される事を見い出した。【0007】すなわち本発明の要旨は、炭素数8〜24の脂肪酸低級アルコールエステルと乳酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩をノニオン又はアニオン性界面活性剤及びアルカリ触媒の存在下、有機溶媒中でエステル交換させる事を特徴とする脂肪酸乳酸エステル塩の製造方法であって、上記従来技術の欠点を解決するものである。【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明についてより詳細に説明する。本発明で用いる脂肪酸低級アルコールエステルの脂肪酸成分としては通常、炭素数8〜24、好ましくは10〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸(例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エルカ酸、エライジン酸、リシノレイン酸など)が挙げられる。また、必要に応じて分岐鎖状の脂肪酸や、水酸基を有するヒドロキシ脂肪酸を用いる事も出来る。一方、低級アルコール成分としては、炭素数1〜4の一級アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)が、副生アルコールの除去及び原料入手の容易さの面から好ましい。なお、これらの脂肪酸低級アルコールエステルは混合物として用いる事も出来る。【0009】本発明で用いる乳酸塩は発酵又は合成法で製造された乳酸をアルカリで中和して得られるが、通常は純度の高い合成法により製造されたものが好ましい。金属塩は目的用途に応じて選択されるが、アルカリ金属ではナトリウム、カリウム、またアルカリ土類金属としてはカルシウムが用いられる。通常、カリウムが好ましい。乳酸塩は原料として用いる場合、通常、予め脱水処理し含水量0.1重量%以下、好ましくは0.07重量%以下としておくのが好ましい。【0010】乳酸塩と脂肪酸低級アルコールエステルとの反応仕込モル比率は1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3とする。多価アルコール型など水酸基を有する界面活性剤を用いる場合は脂肪酸低級アルコールエステルの一部が界面活性剤と反応するので、脂肪酸低級アルコールエステルを過剰に仕込むのが好ましい。本発明に使用する有機溶媒は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルピペリジン等の第3級アミン類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシドなどが挙げられる。特にジメチルスルホキシドが好ましい。溶媒の使用量は、乳酸塩と脂肪酸低級アルコールエステルを含めた仕込合計量に対し、通常20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。【0011】アルカリ触媒としてはアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩が用いられる。特に炭酸塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等)が好ましい。触媒量は、脂肪酸低級アルコールエステルに対し、0.5〜5モル%、好ましくは1〜3モル%加える。界面活性剤はノニオン性又はアニオン性のものを存在させる。ノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びその有機酸エステル誘導体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールエステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン系のエーテル又はエーテルエステル型、その他脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の含窒素型、アルキルグルコシド等が挙げられる。またアニオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルアミノ酸塩等のカルボン酸塩、アルキル及びアルキルアリルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、アルキル及びアルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。より好ましいのはノニオン性界面活性剤であり、中でも蔗糖脂肪酸エステルが特に好ましい。【0012】本発明で用いる蔗糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては通常、炭素数8〜24、好ましくは10〜22の飽和又は不飽和のものが挙げられるが、通常は反応に供する脂肪酸成分と同じものとする。HLBは通常3〜16の範囲から選択されるが、特に好ましいのはHLB10〜15のものである。平均置換度で言えば1〜3、中でも1〜2のものが好適である。蔗糖脂肪酸エステルは反応系の均一性を高め反応を促進させるが、HLBや平均置換度が上記範囲から外れるとその効果が低下する。【0013】蔗糖脂肪酸エステルの添加量は通常、乳酸のアルカリ金属塩に対して5〜50モル%、好ましくは15〜35モル%である。上記範囲より少ないと反応が十分進行しない。一方、多過ぎると本来乳酸塩と反応すべき脂肪酸低級アルコールエステルが蔗糖脂肪酸エステルと反応するため、反応の進行が妨げられ、目的物の収率も低下する。なお、本発明では蔗糖脂肪酸エステルを加える代わりに、上記の蔗糖脂肪酸エステル量に相当する蔗糖を添加して反応系内で蔗糖脂肪酸エステルを直接生成させても良い。【0014】反応は通常60〜150℃、好ましくは80〜120℃で行われる。また圧力は通常0.1〜50Torr、好ましくは1〜20Torrである。特に溶媒の沸騰条件下で、副生するアルコールを反応系外に留去しながら行うのが好ましい。反応器の上部にコンデンサー又は蒸留搭を連結して溶媒と副生アルコールを分離し、溶媒を反応器に戻しながら反応させる。【0015】反応方式としては、反応器に原料、触媒、溶媒及び本発明の界面活性剤を一括で仕込み、所定の反応温度、圧力で一定時間反応させる方法が一般的であるが、場合により反応原料の一方又は両方を逐次的に供給する方法でも良い。反応終了後は通常、酸でアルカリ触媒を中和した後、溶媒を留去して目的生成物を回収する事が出来る。この際中和に用いる酸としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸が用いられる。中でも乳酸が特に好ましい。もし中和をせず、アルカリ触媒が活性な状態で溶媒留去を行うと、加水分解により目的とする脂肪酸乳酸エステル塩の収率が低下する。【0016】本発明で得られた脂肪酸乳酸エステル塩は、必要に応じて洗浄、再結晶、更に液液抽出等の方法により精製し、より高純度のものを得る事が出来る。特に精製された脂肪酸乳酸エステル塩は中性付近のpH領域で既存の市販品と比較して著しく優れた界面活性能を示す。【0017】【実施例】以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、反応生成物中の脂肪酸乳酸エステル塩の分析は下記の方法に従い行った。《試料の調整》反応液を濃縮して得られた反応生成物を精秤し、テトラヒドロフラン/水=20/1(体積)溶液に溶解する。希硫酸でpH3.0に調整した後、9−anthryl diazomethane(ADAM)(フナコシ(株)社製)のメタノール/アセトン=1/1(体積)溶液を加える。室温で1時間暗所に保存し反応させる。これにより脂肪酸乳酸エステル塩をはじめとする反応液中のカルボン酸化合物はADAMエステル誘導体となる。【0018】【0019】上記の条件で分析すると、ADAMエステル誘導体は、脂肪酸乳酸エステル、脂肪酸の順に検出され、予め作成した検量線から分析試料中の脂肪酸乳酸エステル塩量を定量出来る。実施例1.加熱ジャケット付き攪拌型反応容器に、乳酸カリウム640gとノニオン性界面活性剤としてHLB15の蔗糖ラウリン酸エステル(三菱化学(株)製、リョートーシュガーエステルLWA−1570、平均置換度1.3の凍結乾燥品)438g(対乳酸カリ15モル%)及びDMSO3029gを仕込み80℃、15Torrの条件下で溶媒を15分間全還流した後、DMSO1000gを留出させて反応系内の水分を除去した。この時点で系内の液の水分量は0.05%であった。次いでラウリン酸メチル1091gと炭酸カリウム21gを加え、90℃、20Torrの条件下、回転数500rpmで攪拌しながらDMSOを沸騰させて10時間反応した。乳酸カリウムの転化率は75%であった。反応液に50%乳酸水溶液を55g(触媒に対して1倍当量)添加して触媒を中和した後、更に減圧度を上げて溶媒のDMSOを留出した。反応生成物中のラウロイル乳酸エステルカリウム量を前述の高速液体クロマトにより定量したところ、59重量%(収率75%:乳酸カリウム換算)であった。【0020】実施例2.実施例1において蔗糖ラウリン酸エステルの代わりに、アニオン性界面活性剤としてラウリン酸カリウム179g(対乳酸カリウム15モル%)を存在させ、全く同じ条件下で反応を行った結果、乳酸カリウムの転化率は50%であった。反応生成物中のラウロイル乳酸エステルカリウム量を前述の高速液体クロマトにより定量したところ、43重量%(収率50%:乳酸カリウム換算)であった。【0021】実施例3.加熱ジャケット付き攪拌型反応容器に乳酸カリウム640gとノニオン性界面活性剤としてHLB15の蔗糖ステアリン酸エステル(三菱化学(株)社製リョートーシュガーエステルS−1570、平均置換度1.3)845g(対乳酸カリウム25モル%)及びDMSO5375gを仕込み、80℃/15Torrの条件下で溶媒を15分間全還流した後、DMSO1000gを留出させて反応系内の水分を除去した。この時点で系内の液の水分量は0.05%であった。次いで、反応容器にステアリン酸メチル2890gと炭酸カリウム42gを加え、90℃/20Torrの条件下、回転数500rpmで攪拌しながらDMSOを沸騰させて7時間反応した。ステアリン酸メチルの転化率が80%に到達した後、更に減圧度を上げてDMSOを留出させながら反応を3時間継続し、溶媒のDMSOを留去した。乳酸カリウムの最終転化率は98%であった。反応終了後、50%乳酸水溶液を110g(触媒に対して1倍当量)添加して触媒を中和した。得られた反応生成物中のステアロイル乳酸エステルカリウム量を前述の高速液体クロマトにより定量したところ、46重量%(収率98%:乳酸カリウム換算)であった。【0022】比較例1実施例1において、蔗糖脂肪酸エステルなしで全く同じ反応を行ったが、反応系は分液状態のままであった。反応液を上下層に分けてラウロイル乳酸エステルカリウム量を前述の高速液体クロマトで定量したが検出されなかった。なお攪拌回転数を800rpmに上げても反応の進行は殆ど認められなかった。【0023】【表1】【0024】【発明の効果】本発明によれば、乳酸のアルカリ又はアルカリ金属塩と脂肪酸低級アルコールエステルとをノニオン又はアニオン性界面活性剤存在下でエステル交換反応する事により対応する脂肪酸乳酸エステル塩が製造可能となる。この反応生成物から分離精製して得られる高純度の脂肪酸乳酸エステル塩は、既存の市販品に比較して著しく優れた界面活性能を示す。 炭素数8〜24の脂肪酸低級アルコールエステルと乳酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩をノニオン又はアニオン性界面活性剤及びアルカリ触媒の存在下、有機溶媒中でエステル交換させる事を特徴とする脂肪酸乳酸エステル塩の製造方法。 界面活性剤がノニオン性界面活性剤である事を特徴とする請求項1記載の方法。 ノニオン性界面活性剤が炭素数8〜24の蔗糖脂肪酸エステルである事を特徴とする請求項2記載の方法。 界面活性剤の存在量が乳酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩に対して5〜50モル%である請求項1記載の方法。 アルカリ触媒が炭酸アルカリ又は苛性アルカリである請求項1記載の方法。 アルカリ触媒の使用量が脂肪酸低級アルコールエステルに対して0.5〜5モル%である請求項1記載の方法。 有機溶媒が第3級アミン類、アミド類、又はジアルキルスルホキシドである請求項1記載の方法。 乳酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が乳酸カリウムである請求項1記載の方法。 乳酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩に対する脂肪酸低級アルコールエステルの使用量が1〜5モル倍である請求項1記載の方法。


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