生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_急性肝不全治療剤
出願番号:1995322254
年次:2007
IPC分類:A61K 38/27,A61P 1/16


特許情報キャッシュ

宮際 幹 市田文弘 JP 3869874 特許公報(B2) 20061020 1995322254 19951115 急性肝不全治療剤 大日本住友製薬株式会社 000002912 五十部 穣 100121588 宮際 幹 市田文弘 20070117 A61K 38/27 20060101AFI20061221BHJP A61P 1/16 20060101ALI20061221BHJP JPA61K37/36A61P1/16 A61K 38/27 特表平06−510292(JP,A) 特表平06−503320(JP,A) 宮際幹ら,成長ホルモンが奏功した急性肝炎重症型の一例,肝臓,1995年10月10日,Vol.36, suppl.(3),p78 ASAKAWA,K. et al,Human growth hormone stimulates liver regeneration in rats, J Endocrinol Invest,1989年,Vol.12, No.5,p.343-7 最近の新薬(第40集),株式会社 薬事日報社,1989年 4月 2日,p197-199 4 1997136840 19970527 7 20020724 特許法第30条第1項適用 平成7年10月10日 社団法人日本肝臓学会発行の「肝臓 1995年第36巻 Supplement(3)」に発表 川口 裕美子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は急性肝不全治療剤に関する。【0002】【従来の技術】急性肝不全の代表的疾患である劇症肝炎(急性および亜急性)は、肝炎ウィルスや薬物が原因となって発症する重篤な肝臓障害である。肝細胞の広汎な壊死と脱落を伴い、致命率は極めて高い。臨床治療上、急性型と亜急性型に分類されるが、最先端医療現場での救命率は、急性で約50%、亜急性では10%にも満たない。類似疾患として、自己免疫性肝炎、ウィルソン病(abdominaltype)などが知られている〔今日の治療指針1995、医学書院、日野原重明ほか監修、37巻、378頁(1995年)〕。【0003】劇症肝炎の治療方法としては、従来より、グルカゴン─インスリン療法や血漿交換療法が実施されており、ある程度の効果が認められてはいるが、上述のようにその効果は十分ではない。また、試験的には、免疫抑制剤を用いた免疫抑制療法やプロスタグランジンを用いた肝細胞保護療法が検討されているが、現段階では劇症肝炎に対する極めて有効な療法とは認知されていない。また、肝癌の治療のため行う肝切除手術によって急性肝不全が生じるため、現状では、70%以上の広汎な肝切除は危険とされている。【0004】一方、ヒト成長ホルモン(以下hGHと略)は、1980年代から、下垂体性小人症児童の成長促進に用いられてきた蛋白性ホルモンである。hGHは同化促進作用を有するため、栄養不良状態の改善や創傷治癒促進などの医薬用途が検討されており、動物実験では肝切除ラットの肝細胞再生をhGHが刺激したという報告があるが〔日本内分泌学会雑誌、第63巻、第9号、1123頁、1989年〕、劇症肝炎等の急性肝不全の治療に有効であるとは、従来全く予想されておらず、治験されたことも無い(94/95日経バイオ年鑑)。また、脳下垂体除去ラットにおける肝細胞増殖促進作用は従来より知られているところであるが、これらの報告は、hGH欠乏に起因する肝萎縮を外因hGH投与で回復し得ることを示唆するに止まり、通常hGH増加状態にある急性肝不全に対するhGH投与の有用性を示すものではない。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、新規な急性肝不全の治療剤を提供し、その効果的使用法を明らかにすることである。【0006】【課題を解決するための手段】前述の状況下、本発明者は、グルカゴン─インスリン療法等の従来療法では救命しえない急性肝不全の患者を救うべく、肝再生作用を有する薬剤の投与を検討した。急性肝不全の患者は血中hGH濃度が高値を示しており、既に生来の肝再生系は最大に機能していると考えられた。ところが、hGH注射により生理的濃度より極めて高い血中hGH濃度を与えたところ、驚くべきことに肝機能パラメーターが改善され、腹水の減少など著しい全身症状の改善が認められた。すなわち、本発明者は、急性肝不全患者にhGHを投与することによって良好な治療結果を得、本発明を完成した。【0007】この治療剤の適用によって、プロスタグランジン投与やグルカゴン─インスリン療法等、従来療法で回復の認められなかった症例でも、顕著な肝細胞保護/増殖および肝機能回復が期待でき、患者を救命する事ができる。また、広汎な肝切除に伴う急性肝不全の危険を防止し、充分な肝癌除去手術を可能にする。【0008】すなわち、本発明は、下記の治療剤に関するものである。(1)ヒト成長ホルモンを有効成分とする急性肝不全の治療剤。(2)急性肝不全が劇症肝炎である(1)記載の治療剤。(3)急性肝不全が急性肝炎または慢性肝炎の急性増悪である請求項1の治療剤。(4)急性肝不全が急性アルコール性肝炎である(1)記載の治療剤。(5)急性肝不全が広汎肝切除による肝障害である請求項1の治療剤。(6)急性肝不全がウィルソン病である請求項1の治療剤。(7)ヒト成長ホルモンが組換ヒト成長ホルモンであることを特徴とする(1)ないし(6)記載の治療剤。【0009】以下、詳細に本発明を説明する。hGHは現在下垂体性小人症の治療に用いられており、種々の遺伝子組換製剤が市販されている(ソマトトロピン/商品名:ジェノトロピン等)。本発明においては、hGH活性を有する医薬製剤であれば、どのような物でも用いることが出来る。抗原性等の問題で、マチュアhGHが好ましい。しかし、天然下垂体由来精製品(商品名:クレスコルモン等)やN末端にメチオニン残基の有るMet−hGH(商品名:ソマトノルム等)、更には組換hGH改変体も、hGH活性を有する医薬製剤である限り、本発明の技術範囲内である。【0010】製剤としては、液剤、凍結乾燥品いずれも用いることが出来るが、特に皮下投与用製剤が好ましい。これら非経口投与製剤には、当該分野にて公知の安定化剤、担体を用いることができ、使用時に等張溶液として用いるのが好ましい。医薬担体としては、例えば、アルブミン等の血漿由来蛋白、グリシン等のアミノ酸、マンニトール等の糖を用いることができる。好適な例として、特表平3−503764参照のこと。【0011】本発明治療剤の適用対象である急性肝不全とは、肝細胞の広汎な壊死と脱落による肝機能障害または広汎な肝切除手術による肝機能障害を意味する。特に、脳下垂体機能が正常で、肝細胞破壊に対応して血中hGH濃度が正常値以上に増加している症例においても、一般的に適用できる。下記に急性肝不全に含まれる疾患を例示し、1995年現在一般的に日本で用いられている定義を記載するが、本発明における急性肝不全は、下記の定義に限定されるものではない〔今日の治療指針1995、医学書院、日野原重明ほか監修、37巻、376−393頁(1995年)および南山堂/医学大辞典、第17版を参照〕。【0012】(1)劇症肝炎(fluminant hepatitis):肝炎発症8週間以内に肝性昏睡度II度以上〔犬山シンポジウムで定めた尺度、失見当識の出現〕の精神神経症状合併、プロトロンビン時間40%以下、という条件を満たす肝炎ウィルスまたは薬剤惹起性の肝炎。【0013】(2)急性肝炎または慢性肝炎の急性増悪:急性肝炎とは、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウィルス(HAV、HBV、HCV、HDVおよびHEV)などの肝炎ウィルスが初感染した場合に惹起される病態をさす。それぞれのウィルスの特異的抗体の検出(特にIgM抗体)により診断する。トランスアミナーゼの異常高値、GOT優位、高度の黄疸、プロトロンビン時間の延長、およびヘパプラスチンテストの低下が顕著な場合、劇症化の懸念がある。慢性肝炎とは、6か月以上GOT、GPTを主体とする肝マーカー異常が持続する症例であり、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎が代表的である。【0014】(3)自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis):肝臓における持続的な自己免疫反応が、進行性の肝細胞破壊を引き起こす慢性、びまん性、炎症性の肝疾患。厚生省自己免疫性肝炎分科会の診断基準では、慢性の活動性肝炎であって、自己免疫現象(血中γグロブリン2.5g/dl以上、LE細胞現象、抗核抗体またはLEテスト陽性、自己免疫疾患の合併など)を呈するものである。【0015】(4)急性アルコール性肝炎(acute alcoholic hepatitis):一般的に、大酒家が、急激かつ連続的に飲酒量を増やした場合に発生する肝炎で、発熱、白血球増加、腹水、黄疸、時には意識障害を呈する。重症型の急性肝不全状態では、死亡率は35−75%に及ぶ。【0016】(5)広汎肝切除手術による肝障害:原発性肝癌および転移性肝癌の治療のため施術される肝切除(特に非癌肝の温存率40%以下)の後に生じる肝機能不全状態。【0017】(6)ウィルソン病(abdominal type):肝硬変、進行性錐体外路症状およびカイザー・フライシャー角膜輪を3主徴とする先天性銅代謝異常症。肝型(abdominal type)は、肝障害や溶血を伴って、小児期に発病する。【0018】【発明の実施の形態】hGHの投与方法は、皮下投与、静脈投与、筋肉内投与、いずれも可能であるが、皮下投与が通常用いられる。hGHの投与量は、患者の状態や年令性別等により、適宜増減すべきものではあるが、一般的には、5〜50単位/週を1日〜最大3か月間、特に10〜30単位/週を1日〜最大2か月間断続的に投与するのが、好ましい。【0019】【作用】前述のとおり、本発明の治療剤は急性肝不全患者に於いて、顕著な肝細胞保護/増殖作用および肝機能回復作用を示す。その結果、従来、不良であった急性肝不全患者の予後を著しく改善する事ができる。【0020】【実施例】以下、本発明を実施例にて説明する。実施例症例1。患者は44才、女性。平成7年2月20日より感冒症状。2月27日に腹部膨満感が持続したため、受診。GOT:1407U/L、GPT:1064U/L、T−Bil:3.4mg/mlを指摘され、3月1日入院。【0021】〔入院時の所見〕身長150cm、体重49kg、体温36.5度、血圧120/64、脈拍75/min整、意識清明、眼球粘膜黄染なし、眼瞼結膜貧血なし、肝濁音界右第6肋間、肝臓は正中で5横指、右鎖骨中線上で3横指触知、弾性やや硬。脾臓は触知せず。腹水、浮腫無し。〔入院時検査成績〕GOT:1109U/L、GPT:1180U/L、T−Bil:5.5mg/ml。胆道系酵素中等度上昇、軽度低蛋白血症。プロトロンビンテスト(PT):76%、ヘパプラスチンテスト(HPT):53%。凝固能、軽度低下。白血球数:5,400/mm2 、好酸球:1%。増加無し。ウィルスマーカー:IgM型HA抗体(−)、HA抗体(−)、HBs抗原(−)、HBs抗体(−)、HBc抗体(+)、HBe抗原(−)、HBe抗体(+)、DNA−P(−)、HCV抗体(++)。入院後8日目に測定したHCV−RNA(C−PCR法)(−)。自己抗体:(−)【0022】〔入院後治療及び経過〕C型慢性肝炎の急性増悪と診断し、肝庇護のためプロスタグランジンE1を、C型肝炎治療のためIFN−βをそれぞれ投与し、更に肝再生の目的でグルカゴン−インスリン(GI)療法およびラエンネック大量投与を行った。 その結果、血清トランスアミナーゼ値は第13病日をピークとする一峰性の経過を示して低下したが、HPT値は20%前後の低いレベルが続き、血清T−Bil値増加は一時的に軽快したものの再度増加し、病勢の悪化を認めた。その他、図1に示すように、ステロイド投与、血漿交換療法も施行したが、病状回復には至らなかった。【0023】〔hGH投与及び経過〕第48病日、HPT値が20%以下となった状態で、肝再生を目的にhGHの投与を開始した。hGHは、皮下投与製剤〔ジェノトロピン10IU、ファルマシア社製〕を用いて、一回10IU、週3回(計30IU)投与した。その結果、腹水貯留が軽減、続いて、表1に示すように、血清T−Bil値低下、さらに遅れて、HPT値の回復が認められた。【0024】【表1】症例1におけるhGH投与前後の生化学的パラメーターの推移。〔略号〕T−Bil:血清総ビリルビン値。HPT:ヘパプラスチンテスト。血液凝固能の指標。【0025】hGH投与以後、生化学的パラメーターの改善だけでなく、病状の回復が認められたため、GI療法、肝保護剤(アルプロスタジル、ウルソデオキシコール酸)を中止したが、病状は安定しており、退院に至った。【0026】【発明の効果】本発明の治療剤は急性肝不全患者に於いて、顕著な肝細胞保護/増殖作用および肝機能回復作用を示す。その結果、従来、不良であった急性肝不全患者の予後を著しく改善する事ができる。【0027】【図面の簡単な説明】【図1】症例1におけるhGH投与前後の治療記録。〔略号〕PG−E1:アルプロスタジル(プロスタンディン・小野薬品工業)PS:プレドニゾロン(プレドニン・塩野義製薬)G−I Tx:グルカゴン─インスリン療法LNC:胎盤加水分解物(ラエンネック・日本ソアリング)IFN−β:インターフェロンβ(フェロン・第一製薬)Growth Hormone:hGH(ジェノトロピン・住友製薬)Plasma Exchange:血漿交換療法UDCA:ウルソデオキシコール酸(ウルソ・東京田辺製薬)縦軸は一日あたりの投与量または施行回数を表し、横軸は発病以降の日数を表す。 ヒト成長ホルモンを有効成分とするC型慢性肝炎の急性増悪治療剤。 ヒト成長ホルモンが組換ヒト成長ホルモンであることを特徴とする請求項1に記載の治療剤。 ヒト成長ホルモンを有効成分とするC型慢性肝炎の急性増悪した患者の肝機能パラメーター改善剤。 肝機能パラメーターが、血清総ビリルビン値及びヘパプラスチンテストである請求項3に記載の改善剤。


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