タイトル: | 特許公報(B2)_ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステル |
出願番号: | 1995305586 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C69/54,C08F20/20 |
妙中 敦 平嶺 正 増田 透 谷津 忠男 JP 3583843 特許公報(B2) 20040806 1995305586 19951124 ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステル 本州化学工業株式会社 000243272 牧野 逸郎 100079120 妙中 敦 平嶺 正 増田 透 谷津 忠男 20041104 7 C07C69/54 C08F20/20 JP C07C69/54 B C08F20/20 7 C07C 69/54 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開昭61−221210(JP,A) 特公昭47−050106(JP,B1) 特開平06−256427(JP,A) 特開平06−160801(JP,A) 3 1997143125 19970603 8 20010129 穴吹 智子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルに関する。このようなビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルは、光重合性の不飽和結合を有するところから、光硬化性樹脂の基材や基材成分として特に有用である。その具体的な用途の例としては、例えば、印刷用インキ用の基材成分、ガラス・無機材料用塗料、金属用塗料、プラスチック用塗料、紙・木工用塗料等の各種塗料の基材成分、各種接着剤の基材成分、プリント配線基板のレジストインキ、ドライフィルムレジストや液状レジストの基材成分、樹脂凸版やフレキソ版の感光性印刷版の基材成分等を挙げることができる。また、生体適合性材料として、人工歯、義歯床用材料、虫歯充填用材料等、メタクリル系材料の代替や組合わせ材料としても用いることができる。更に、不飽和ポリエステルの耐熱・耐候性向上剤や、メタクリル樹脂の靱性向上のための改質成分等としても、有用に用いることができる。【0002】【従来の技術】従来、多価アルコールの不飽和カルボン酸エステルとしては、フタル酸/1,6−ヘキサンジオール/アクリル酸からなる所謂エステルアクリレート、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させた所謂エポキシアクリレート等がよく知られており、広い分野において用いられている。しかしながら、これらの多くは、常温で固体であるか、又は粘稠な液体であって、取扱い性に問題があるために、多くの場合、主として、脂肪族アルコールのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルが反応性希釈剤として組み合わせて用いられている。【0003】このような脂肪族アルコールのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルとしては、単官能性のものとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロペンテニルアクリレート等が用いられている。また、二官能性のものとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が、更に、多官能性のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が用いられている。【0004】しかしながら、従来、脂環式アルコールの不飽和カルボン酸エステルは、極めて限られたものしか、知られていない。例えば、単官能脂環族アルコールのアクリレートとしては、シクロヘキシルアクリレートとシクロヘキシルメタアクリレートが特開昭58−213733号公報に記載されている。また、二官能以上の脂環族アルコールのアクリレートとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアクリレートが特開昭61−221210号公報に、また、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジメタクリレートが特公昭47−50106号公報及び特開昭61−221210号公報にそれぞれ記載されている。しかし、従来、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルは、知られていない。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、新規なビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルを提供することを目的とする。【0006】【発明を解決するための手段】本発明によるビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルは、一般式(I)【0007】【化2】【0008】(式中、Rは、水素又は炭素原子数が1〜4のアルキル基を示す。)で表わされる。【0009】【発明の実施の形態】前記一般式(I)で表わされるビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルにおいて、Rは水素又はアルキル基であり、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を挙げることができる。本発明において、Rは、好ましくは、水素又はメチル基である。【0010】従って、本発明によるかかるビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルの好ましい具体例として、例えば、(1) ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールのジアクリレート、(2) ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールのジメタクリレート、(3) ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールのジ(α−エチルアクリレート)、(4) ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールのジ(α−プロピルアクリレート)、(5) ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールのジ(α−ブチルアクリレート)等を挙げることができる。【0011】これらのなかでは、不飽和カルボン酸原料が容易に入手できるところから、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールジアクリレートとビシクロヘキシル−4,4’−ジオールジメタクリレートが特に好ましい。【0012】本発明によるビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルは、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールを酸触媒及び重合禁止剤の存在下に、一般式(II)【0013】【化3】【0014】(式中、Rは、水素又は炭素原子数が1〜4のアルキル基を示す。)で表わされる不飽和カルボン酸と反応させることによって得ることができる。【0015】以下に、本発明によるビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルの製造方法について詳細に説明する。上記一般式(II)で表わされる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、α−プロピルアクリル酸、α−ブチルアクリル酸等を挙げることができる。これらのなかでは、工業的に製造されており、経済的に容易に入手することができるアクリル酸又はメタクリル酸が特に好ましい。【0016】ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールと不飽和カルボン酸とのエステル化反応において、不飽和カルボン酸は、特に限定されるものではないが、エステル化反応の効率やエステル化反応によって得られた目的物の精製の容易性を考慮して、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール1モル部に対して、2.0〜6.0モル部、好ましくは2.4〜3.6モル部の範囲で用いられる。【0017】本発明によれば、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールと不飽和カルボン酸とのエステル化反応は、酸触媒及び重合禁止剤の存在下に行なわれる。上記酸触媒としては、特に、限定されるものではないが、好ましい酸触媒として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、ギ酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂等の固体酸、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅、硫酸第二銅等のルイス酸、活性白土等を挙げることができる。【0018】ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールと不飽和カルボン酸とのエステル化反応において、用いる酸触媒と反応温度によっては、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの分子内脱水反応が引き起こされることがある。しかし、用いる酸触媒の量と反応温度を適正に選択することによって、分子内脱水反応を抑制することができる。特に、硫酸、リン酸及びp−トルエンスルホン酸は、このようなビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの分子内脱水反応を起こし難いので、本発明においては、特に、硫酸、リン酸又はp−トルエンスルホン酸が酸触媒として好ましく用いられる。【0019】このような酸触媒の使用量は、一般のエステル化反応における量と同じでよく、従って、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの1モル部に対して、通常、0.0001〜0.1モル部、好ましくは、0.001〜0.05モル部の範囲である。【0020】重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノエチルエーテル、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、t−ブチルクレゾール等、従来より知られている通常の重合禁止剤が用いられる。その使用量は、不飽和カルボン酸に対して、通常、10〜10000ppm、好ましくは、100〜5000ppmの範囲である。【0021】本発明においては、反応は、好ましくは、有機溶媒の存在下で行なわれる。有機溶媒としては、例えば、不飽和カルボン酸と反応するアルコール類やアミン類等を除けば、特に、限定されるものではないが、水に不溶性で、且つ、水と共沸し得る有機溶媒が好ましく、そのような有機溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロエタン等を挙げることができる。これらのなかでは、特に、トルエンが好ましく用いられる。【0022】このような有機溶媒の使用量は、特に、限定されるものではないが、通常、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの10重量倍以下であり、好ましくは、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの1〜6重量倍の範囲である。【0023】本発明において、エステル化反応は、通常、80〜200℃、好ましくは、90℃〜130℃の範囲で行なわれる。エステル化反応は、通常、常圧下で行なわれるが、用いる有機溶媒の沸点によっては、反応温度が前記範囲内になるように、加圧下又は減圧下に行なってもよい。このような条件下にエステル化反応を行なえば、反応は、通常、1〜20時間で終了する。【0024】このようにして、エステル化反応を行なった後、得られた反応混合物にアルカリ水溶液を加えて、反応系を中和した後、油層と水層とを分離し、得られた油層から有機溶媒を減圧留去するか、得られた油層をそのまま、又は得られた油層から有機溶媒を留去して濃縮した後、得られた不飽和カルボン酸ジエステルに対する貧溶媒を加えて、晶析する方法によって、目的とする不飽和カルボン酸ジエステルを回収することができる。【0025】この晶析のために用いる上記貧溶媒としては、例えば、アセトンやメチルエチルケトン等のような低級アルキルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等の脂肪族低級アルコールが好ましく用いられるが、しかし、これらに限定されるものではない。【0026】また、経済性の観点からと収率を高めるために、反応の終了後、反応混合物をアルカリ水溶液で中和し、油層と水層とを分離し、得られた油層を水洗し、有機溶媒を留去することによって、目的とする不飽和カルボン酸ジエステルを回収することもできる。【0027】ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルの製造において、用いる不飽和カルボン酸の量が前記範囲よりも少ない場合や、反応が完結しない場合には、目的とするジエステルのほかに、モノエステルを含む混合物を得る。しかしながら、このようなモノエステルの不飽和結合の反応性も、ジエステルのそれと同じであるので、モノエステルを含む混合物も、ジエステルと同様に有用であり、用途や必要に応じて、混合物のまま、用いることができる。【0028】【発明の効果】本発明によれば、前記一般式(I)で表わされる新規なビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステルが提供される。このような不飽和カルボン酸ジエステルは、分子中に光重合性の不飽和結合を2つ有する多官能性光重合性化合物であって、例えば、光硬化性樹脂の基材や基材成分として有用である。【0029】【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。【0030】実施例1エステル化水分離装置、温度計及び攪拌棒を備えた500mL容量四つ口フラスコにトルエン60g、p−トルエンスルホン酸0.55g(0.0029mol)、ハイドロキノンモノエチルエーテル0.05g及びビシクロヘキシル−4,4’−ジオール11.4g(0.058mol)を仕込み、攪拌しながら、110℃まで昇温し、同じ温度で1時間加熱処理を行なった。引き続いて、アクリル酸10.0g(0.139mol)を滴下し、更に昇温を続けると、内温が115℃に達して、還流が始まり、反応と共に生成する水の留出が始まった。そのまま、還流を続け、水の生成量が理論量の2.1gに達するまで、10時間反応を行なった。【0031】反応の終了後、得られた反応混合物を冷却し、16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、析出していた結晶を濾別した。この結晶をトルエンに加熱下に溶解させ、得られた溶液を洗浄液が中性になるまで水洗した後、冷却し、析出した結晶を濾別した。この結晶をエバポレータにて乾燥して、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールジアクリレート3.76g(純度99.1%)を白色結晶として得た。収率は、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールに対して21.2%であった。【0032】融点:172.6℃元素分析(%):計算値 C: 70.56; H: 8.55; O: 20.89実験値 C: 71.50; H: 8.88; O: 19.63プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CDCl3 ):【0033】【表1】【0034】【0035】実施例2エステル化水分離装置、温度計及び攪拌棒を備えた500mL容量四つ口フラスコにトルエン60g、p−トルエンスルホン酸0.46g(0.0024mol)、ハイドロキノンモノエチルエーテル0.05g及びビシクロヘキシル−4,4’−ジオール9.58g(0.048mol)を仕込み、攪拌しながら、110℃まで昇温し、同じ温度で1時間加熱処理を行なった。引き続いて、メタクリル酸10.0g(0.116mol)を滴下し、更に昇温を続けると、内温が115℃に達して、還流が始まり、反応と共に生成する水の留出が始まった。そのまま、還流を続け、水の生成量が理論量の1.7gに達するまで、18時間反応を行なった。【0036】反応の終了後、得られた反応混合物を冷却し、16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、析出していた結晶を濾別した。この結晶をトルエンに加熱下に溶解させ、得られた溶液を洗浄液が中性になるまで水洗した後、冷却し、析出した結晶を濾別した。この結晶をエバポレータにて乾燥して、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールジメタクリレート0.65g(純度94.3%)を白色結晶として得た。収率は、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールに対して4.1%であった。【0037】融点:113.5℃元素分析(%):計算値 C: 71.82; H: 9.04; O: 19.13実験値 C: 71.36; H: 9.13; O: 19.50プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz、溶媒CDCl3 ):【0038】【表2】【0039】 一般式(I)(式中、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表わされるビシクロヘキシル−4,4’−ジオールの不飽和カルボン酸ジエステル。 ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールジアクリレート。 ビシクロヘキシル−4,4’−ジオールジメタクリレート。