タイトル: | 特許公報(B2)_水易溶性ヤマモモ科植物抽出物 |
出願番号: | 1995252684 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C09K15/34,A23L3/3472,A61K7/00,A61K47/46,C11B5/00,C12P19/44 |
鷲野 乾 田中 久志 JP 3710854 特許公報(B2) 20050819 1995252684 19950929 水易溶性ヤマモモ科植物抽出物 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 000175283 鷲野 乾 田中 久志 20051026 7 C09K15/34 A23L3/3472 A61K7/00 A61K47/46 C11B5/00 C12P19/44 JP C09K15/34 A23L3/3472 A61K7/00 K A61K47/46 C11B5/00 C12P19/44 7 C09K 15/34 A23L 3/3472 A61K 7/00 A61K 47/46 C11B 5/00 C12P 19/44 CA(STN) BIOSIS(DIALOG) WPIDS(STN) 特開平07−132072(JP,A) 特開平04−066099(JP,A) 2 1997095672 19970408 15 20020611 内藤 伸一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、酸化防止効果を有する水易溶性ヤマモモ科植物抽出物に関する。本発明で得られる水易溶性ヤマモモ科植物抽出物は食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料の製造に使用することができる。【0002】【従来の技術】油脂または油脂類を含有する食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料などの製品が酸化され、樹脂化、異臭、着色、変色、毒性物質の生成または栄養価の低下を引き起こし、品質の劣化を招くことはよく知られている。従来から酸化防止剤としてブチルヒドロキシアニソール(以下、BHAという)やブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTという)などの合成酸化防止剤が、また、天然物を起源とする酸化防止剤としてトコフェロール類、L−アスコルビン酸、ゴマ油中のセザモリン、コーヒー酸誘導体、メラノイジン、アミノ酸、フィチン酸、茶葉抽出物、ローズマリーやセージなどの香辛料抽出物、その他などの単独物またはそれらの混合物が用いられている。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、ヤマモモ科植物抽出物について詳細な検討を加えた結果、ヤマモモ科植物抽出物中に酸化防止効果の強い物質が含まれていることを知り、中でも水難溶性画分に熱安定性の優れた業界の要望に合致する酸化防止効果を示す物質が得られることを見出した。この優れた機能を、産業上で有効に利用するにあたっては、水難溶性で取扱いにくいヤマモモ科植物抽出物の改質を図り、水及び含水有機溶媒系に溶け、かつ安定化させて、業界が要望する酸化防止剤を提供すると共に、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料の酸化による品質劣化の防止法を提供することが重要な課題である。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点を鑑みてヤマモモ科植物抽出物の持つ優れた酸化防止効果を保持させつつ、水系又は含水有機溶媒系での溶解性と安定性の改善方法について鋭意検討した。その結果、ヤマモモ科植物抽出物とガラクトース残基転移源の共存下で、ガラクトース残基転移活性を有する酵素を作用させることによって、ヤマモモ科植物抽出物にガラクトース残基を転移させた水易溶性ヤマモモ科植物抽出物を発明し、これを食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料などに使用することにより、品質劣化の防止方法として提供するに至ったものである。以下、詳細に説明する。【0005】本発明に使用する原料の酸化防止物質である水難溶性のヤマモモ科植物抽出物は、ヤマモモ科ヤマモモ属のヤマモモ(Myrica rubra SIEB. et ZUCC.)及び/またはヤチヤナギ(Myrica gale L.)から抽出する。これらのヤマモモ科植物から酸化防止物質を抽出するに先立って、樹皮、根茎、枝または葉などを粉砕機を用いて粉砕する。酸化防止物質を抽出する方法には本出願人が既に特許出願した方法(特開平5−156249、特願平7−250902)を用いることができる。すなわち該植物体を有機溶媒で浸漬などの一般的な手段により酸化防止物質等を抽出し、次いで該抽出物からタンニン、縮合型タンニン、カテキン類、糖質その他等の水溶性物質を除去する方法や、また該植物体からこれらの水溶性物質をあらかじめ除去した後、有機溶媒で酸化防止物質を抽出する方法である。【0006】いずれの方法で得た抽出物も、水難溶性のヤマモモ科植物抽出物からなり、本発明に使用する原料となりうる。この抽出に用いる有機溶媒には、炭素数1から5までの脂肪族アルコール系有機溶媒としてメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、グリセリンその他などが挙げられ、その他の有機溶媒としては、炭素数3から5までのカルボニル化合物であるアセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノンなど、水溶性酸アミドであるホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなど、水溶性アミンとしてピリジン、ブチルアミンなど、その他にジメチルスルホキシドなどが挙げられ、その中から単独でまたは適宜組合せて使用することができる。また必要に応じて上記有機溶媒に適宜水を併用してもよい。【0007】該植物体を有機溶媒で抽出し、次いで該抽出物から水溶性物質を除去して酸化防止物質を得る方法にあっては、該植物体を上記溶媒で浸漬など一般的な方法で処理して得られる抽出液から、溶媒を蒸発または他の一般的な手段により除去する。この操作により得た濃縮液および濃縮乾固物に水を添加、混合して、カテキン、タンニン、縮合型タンニンや糖質などの水溶性の物質を水相側に移行させて除去し、水難溶性の酸化防止物質を固形物として得る。得られたものが本発明に使用する水難溶性のヤマモモ科植物抽出物である。もう一つの該植物体から水溶性物質を除去後有機溶媒で酸化防止物質を抽出する方法では、樹皮、根茎、枝または葉などの粉砕物を水に浸漬などの一般的な手段により、水溶性物質を抽出して除去する。【0008】この際、必要に応じて、粉砕物に蒸煮処理を施したのち抽出してもよい。また、水溶性物質をより容易に抽出除去させるために水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニアガス、アンモニア水、炭酸水素アンモニウムから選ばれる1種または2種以上を用いて抽出時の液のpHを4から8までの範囲に収るように調整してもよい。有機溶媒での抽出に当り、溶媒の使用量を削減させたり、また溶媒の回収精製作業を容易にする等の目的で、得られた粉砕物を冷風乾燥、温風乾燥、凍結乾燥又はその他の方法等で乾燥してもよい。また、抽出効率の向上を図ったり、作業性の改善を図るためにこの粉砕物をペレット状や顆粒状等に成型加工してもよい。このような処理を施した物が水溶性物質除去ヤマモモ科植物粉砕物である。次いで、上記記載の有機溶媒で浸漬又はその他の一般的な方法での抽出により、水難溶性の酸化防止物質を得ることができる。必要に応じて、さらに水または熱水で洗浄精製してもよいし、クロマトグラフィーまたは液液向流抽出法による精製、あるいは有機溶媒または含水有機溶媒からの再結晶法などにより精製してもよい。【0009】このような操作により得たヤマモモ科植物抽出物は有効成分としてフラボノール配糖体であるミリシトリン(ミリセチン3−O−3ラムノシド)やその他の化合物を含有しており、強い酸化防止効果を示すが、水及び含水有機溶媒に難溶性であり、この優れた効能を発揮させるためには取扱いにくい物質である。この溶解度が低く取り扱いにくいという問題点は、ヤマモモ科植物抽出物を構成する難溶性のミリシトリンその他のフラボノール配糖体などの物質に、ガラクトース残基を転移させた本発明品の水易溶性ヤマモモ科植物抽出物を使用することによって解決された。【0010】本発明の水易溶性ヤマモモ科植物抽出物、本発明に用いるガラクトース残基転移源は、ガラクトース残基転移活性を有する酵素の基質となり、ガラクトース残基の1分子以上がヤマモモ科植物抽出物に転移され得るものであればよく、例えば、乳糖単独、乳糖に公知の方法(Agric. Biol. Chem., 48巻3053〜3061頁(1984年))でガラクトース残基を転移させて得られるガラクトオリゴ糖あるいは乳糖を起源とする市販のガラクトオリゴ糖、または大豆などの豆を起源とするガラクトオリゴ糖、その他が挙げられ、この中から1種または2種以上が採用される。ガラクトース残基源の添加量は、反応混合物全体に対して1〜80重量%(以下、%で示す)の量でよく、望ましくは10〜70%、より望ましくは20〜60%程度の量が有利である。【0011】この発明に使用するガラクトース残基転移活性を有する酵素は、β−D−ガラクトシド ガラクトヒドラーゼ(EC 3.2.1.23、以下β−ガラクトシダーゼという)がよく、例えば、バチルス サーキュランス (Bacillus circulans)、バチルス マセランス (B. macerans)などのバチルス属、ラクトバチルスブルガリカス (Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス ラクチス (L. lactis)、ラクトバチルス プランタルム (L. plantarum) 等のラクトバチルス属、エシェリヒア コリ (Escherichia coli) 等のエシェリヒア属、アスペルギルス オリーゼ (Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ニガー (A. niger)等のアスペルギルス属、クリベロミセス ラクチス (Kluyveromyces lactis)、クリベロミセス フラギリス (K. fragilis) 等のクリベロミセス属、ストレプトコッカス サーモフィルス (Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属、ヘリクス ポマチア (Helix pomatia) 等のヘリクス属、ペニシリウムクリソゲナム (Penicillium crysogenum)、ペニシリウム ムルチカラー (P. multicolor)等のペニシリウム属、サッカロミセス フラギリス(Saccharomyces fragilis)等のサッカロミセス属、その他等の微生物を起源とするもの、ホラ貝(Chalonia lampas)等の貝類を起源とするもの、ジャック ビーン(和名:タチナタマメ、Canavalia ensiformis)などの植物を起源とするもの、あるいは牛の肝臓や哺乳動物の小腸を起源とするものなどが挙げることができ、この発明に自由に使用することができる。【0012】これらの酵素は、必ずしも精製して使う必要はなく、通常は粗酵素で目的を達成しうる。また、市販の酵素製剤(例えば、大和化成株式会社製、商品名BIOLACTA G10その他等)も使用することができる。また、ヤマモモ科植物抽出物とガラクトース源を添加した培養液に、β−ガラクトシダーゼを添加する代りに、ガラクトース残基転移活性を有するβ−ガラクトシダーゼ生産菌を植菌し、発酵法により糖転移反応を行うこともできる。さらに、β−ガラクトシダーゼあるいはβ−ガラクトシダーゼを生産する微生物を常法に従って固定化したものを使用して反応を進めてもよい。これらのβ−ガラクトシダーゼは、単一種の微生物、植物又は動物を起源とするものを用いても、起源の異なる2種以上の酵素を併用することができるし、また、β−ガラクトシダーゼ生産菌を2種以上植菌して発酵法により糖転移反応を行ってもよい。【0013】β−ガラクトシダーゼの使用量は、特に限定されるものではない。この酵素の使用量は、起源および酵素の剤形によって大きく変動する。例えば、同一酵素を用いる場合でも、酵素溶液として使用するか、あるいは固定化して用いるかによってもその使用量は大きく異なる。そのため、一義的には決められないので一例を挙げて示すと、BIOLACTA G−10を使用するときは通常10〜2000単位/g基質程度の量が有利である。尚、酵素単位については実施例において詳述される。また、酵素の活性化剤として、必要に応じてMn2+、Mg2+、Ca2+等の金属イオンを酵素と併用してもよい。その添加量は通常微量でよく、反応混合系に対して1〜500ppmの範囲から選択される。この転移反応における反応系のpHは、使用する酵素の至適pH付近が望ましく、通常約2〜9の範囲から選択するのがよい。また、この転移反応の温度は、使用する酵素の至適温度付近が望ましく、通常20〜70℃の範囲から選択するのがよい。【0014】このようにして、本発明のガラクトース残基転移ヤマモモ科植物抽出物が簡単な操作により、収率よく製造することができ、本発明の水溶性ヤマモモ科植物抽出物の製造の目的は達せられる。さらに、所望により反応系をイオン交換樹脂又はイオン交換膜等による処理、ポーラスポリマー構造を有する樹脂、シリカゲル、アルミニウムオキシド、セルロース、その他等を吸着剤とする吸着クロマトグラフ処理、活性炭、アルキルシリル化シリカゲル又はアリールシリル化シリカゲル等を吸着剤とする逆相分配クロマトグラフ処理その他の方法によって精製してもよい。【0015】上記方法で製造した改質されたヤマモモ科植物抽出物であるガラクトース残基転移ヤマモモ科植物抽出物(水易溶性ヤマモモ科植物抽出物)は、水難溶性ヤマモモ科植物抽出物を構成するフラボノール配糖体の糖鎖構造部にガラクトオリゴ糖残基が転移することにより、水及び含水有機溶媒に対する溶解度が改善されたものであって、酸化防止剤としての効果を発揮するだけではなく、水溶性の消臭剤としても利用でき、またオリゴ糖鎖部を含有することにより、ビフィズス菌の成育促進剤としての効果も期待される。【0016】本発明の水易溶性ヤマモモ科植物抽出物は、酸化防止剤として、コーン油、ナタネ油、綿実油、大豆油、サフラワ油、ヒマワリ油、ゴマ油、小麦胚芽油、オリーブ油、月見草油、椿油、茶実油、アボガド油、ひまし油、コーヒー油、カシューナッツ油、カカオビーンズ油、落花生油、魚油、パーム油、パーム核油、豚脂、牛脂、鶏脂などの動植物油脂やこれらの動植物油脂の部分水素添加油脂又は完全水素添加油脂、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エイコペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸及びそのエステルあるいはその不飽和アルコールに対して使用できるばかりか、バター、マーガリン、ショートニング、ドレッシングなどの油脂加工食品に使用することができる。【0017】また、油脂を高含量含む食品、例えば、ドーナツ、油揚げ、油揚げ菓子、チョコレート、即席ラーメンなどに添加使用することができる。さらに、おかき、センベイ、おこし、まんじゅう、飴などの和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ドーナツ、ワッフル、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、チューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パンなどの各種洋菓子、ポテトチップスなどのスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベットなどの冷菓、乳酸菌飲料、乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料などの清涼飲料、緑茶、紅茶、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク、業務用コーヒーなどの嗜好飲料、発酵乳、加工乳、チーズなどの乳製品、豆腐、豆乳などの大豆加工食品、ママレード、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペーストなどのペースト類、漬物類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキーなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、チクワ、ハンペン、てんぷらなどの魚介類練り製品、魚類、イカ、タコ、貝類などの各種干物類およびそれらの珍味類、鰹、鯖、鰺などの各種節、煮干、ウニ、イカの塩辛、魚のみりん干、鮭などの燻製品、のり、小魚、貝類、するめ、山菜、茸、昆布などで作られる佃煮類、即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレーなどのカレー類、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、固形ブイヨン、蠣油、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、ダシの素などの各種調味料類に使用することができるし、さらに、油脂及びそれらの誘導体を含有する各種レンジ食品及び冷凍食品などの各種飲食物、嗜好品にも使用することができる。【0018】その他、医薬品、医薬部外品及び化粧料としてはドリンク剤、トローチ、肝油ドロップ、うがい薬、口中清涼剤、口中香錠剤、歯磨き、日焼け止めスキンローション、紫外線防止クリーム、口紅などに自由に使うことができるし、また飼料としては、各種キャットフード、ドッグフード、観賞魚の餌、養殖魚の餌などに添加して使うことができる。【0019】本発明の水易溶性ヤマモモ科植物抽出物は、対象とする製品の形状に応じて、粉末として使用しても、水や適当な溶媒、例えばエタノール、プロピレングリコール、グリセリンなどに溶解して、あるいは乳化液として使用することができる。また、本発明品は他の酸化防止剤など、例えばトコフェロール、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、BHA、BHTなどと併用して使用することもできる。本発明の水易溶性ヤマモモ科植物抽出物を、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料などに使用する場合の添加量としては、通常0.0002〜5%(重量、以下同じ)であり、好ましくは0.002〜2%である。以下に本発明の実施例を示す。【0020】【実施例】抽出例1ヤマモモ樹皮乾燥物の粉砕物1kgにメタノール10kgを加え、約60℃で5時間抽出したのち、濾過し、残滓をメタノール3kgで洗浄し、メタノール抽出液約10kgを得た。この抽出液を濃縮後別の容器に移し替え、真空度5mmHg、浴温60℃で減圧乾燥して黄色の粉末0.25kgを得た。得られた固形物を粉砕後、室温で水5Lと懸濁したのち濾過し、残った固形物を水5Lで洗浄した。次いで固形分を真空度5mmHg、浴温80℃で減圧乾燥して黄白色の固形物からなるヤマモモ科植物抽出物(抽出物1という)0.13kgを得た。【0021】抽出例2ヤマモモ樹皮乾燥物の粉砕物1kgに水10kgを加えて室温で6時間60℃で攪〓混合後、遠心分離機を用いて水溶性物質を除去し、得られた固形物を65℃の温風で乾燥して水溶性物質が除去された樹皮粉砕物を780gを得た。この乾燥物にエタノール8kgを加え、約80℃で5時間攪拌混合したのち濾過し、残滓をエタノール3kgで洗浄し、エタノール抽出液約9kgを得た。この抽出液を濃縮後別の容器に移し替え、真空度5mmHg、浴温60℃で減圧乾燥して黄色の粉末からなるヤマモモ科植物抽出物(抽出物2という)0.21kgを得た。【0022】抽出例3ヤチヤナギ樹皮乾燥物の粉砕物100gにエタノール800gを加え、約80℃で5時間抽出したのち濾過し、残滓をエタノール200gで洗浄し、エタノール抽出液800gを得た。この抽出液を濃縮後別の容器に移し替え、真空度5mmHg、浴温60℃で減圧乾燥して黄褐色の粉末20gを得た。得られた固形物を粉砕後、室温で水200mlと懸濁したのち濾過し、残った固形物を水100mlで洗浄した。次いで固形分を真空度5mmHg、浴温80℃で減圧乾燥して黄褐色の固形物からなるヤマモモ科植物抽出物(抽出物3という)8.5gを得た。【0023】β−ガラクトシダーゼ活性の測定法0.1%p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトグリコシドを含有する0.05Mリン酸緩衝液(pHは酵素の至適pHに調整する)0.2mlに、0.05Mリン酸緩衝液に適度に希釈した酵素溶液(2〜5ミリ単位)0.1mlを加えて40℃で15分反応させた後、反応液に1M炭酸ナトリウム液2mlを加えて反応を止め、分光光度計を用いて1M炭酸ナトリウム液を対照として420nmでの吸光度を測定し、次式により酵素単位を求める。酵素単位=吸光度×0.01×1/酵素濃度(g/ml)尚、これらの条件下でのp−ニトロフェノールの分子吸光係数は15,000であって、上記式より求めた1酵素単位は1分間当りp−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシドからp−ニトロフェノールの1μMを遊離させる量に相当する。【0024】(ガラクトース残基転移ヤマモモ科植物抽出物の分析法)高速液体クロマトグラフィーにより、下記の条件で測定した。カラム:マイクロボンダパック C18、カラム径 4.6mm、カラム長250mm溶媒:メタノール/アセトニトリル/酢酸/水=7/1/1/12流速:1ml/分検出器:紫外・可視分光検出器測定波長:350nm尚、この測定条件では、原料のヤマモモ科植物抽出物のピークと反応生成物のピークは完全に分離した。【0025】実施例10.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)100mlに乳糖250gを加えて60℃に加熱・溶解させ、この溶液に抽出物1を20g含有するジメチルスルフォキシド液100mlと大和化成株式会社製バチルス サーキュランス由来のβ−ガラクトシダーゼ(酵素力価20,000)1gを加えて60℃で4時間攪拌した。反応終了後混合物を水1Lで希釈し、スチレン−ジビニールベンゼン共重合体からなるポーラスポリマー700mlを充填したカラムに1時間で通液し、次いでイオン交換水5Lを1.5時間で通液した。次いで、40V/V%メタノール2Lを1時間で通液して吸着物を溶出した。このメタノール液を濃縮して、黄色の固形物である水易溶性ヤマモモ科植物抽出物(本発明品1という)25gを得た。得られた固形物から1mgを取りだし、これにイオン交換水10mlを加えて溶かし、水易溶性ヤマモモ科植物抽出物の分析に供した。その結果、水易溶性ヤマモモ科植物抽出物は、原料の抽出物1の高速液体クロマトグラムとは異なり、数多くのガラクトース残基が転移したフラボノール配糖体で構成されていた。【0026】本発明品1の100mgを5%塩酸15mlに溶かして3時間100℃で加熱し、加水分解した。20℃まで冷却後5%水酸化ナトリウム液でpH5まで中和し、冷蔵庫で一夜静置した後析出物と濾過液に分割した。析出物は、アグリコンの分析試料に、濾過液は糖の分析に供した。析出物と糖の分析は高速液体クロマトグラフを用いて下記の条件で行った。【0027】▲1▼ 析出物の分析カラム:マイクロボンダパック C18、カラム径 4.6mm、カラム長250mm溶媒:メタノール/5%酢酸水溶液=2/3流速:1ml/分検出器:紫外・可視分光検出器測定波長:350nm分析の結果、水易溶性ヤマモモ科植物抽出物に相当するピークは消失し、アグリコンとしてミリセチンなどのフラボノイドのピークを検出した。また、この濾過液の分析を同一の条件で行ったが、水易溶性ヤマモモ科植物抽出物に相当するピークは消失していた。【0028】▲2▼濾過液の分析カラム:化学修飾型アミノプロピルシリカ(東京化成工業株式会社製;Kaseisorb LC NH2 Super) カラム径4.6mm、カラム長250mm溶媒:アセトニトリル/水=4/1流速:1ml/分検出器:示差屈折計分析の結果、濾過液からガラクトースに該当するピークを主成分として、ラムノースと少量のグルコースに相当する3本のピークを検出した。別途調整した標準液とのピーク面積の比較から、ガラクトース、ラムノースとグルコースの組成比を求めるとその比は2.4:1:0.2であった。【0029】高速液体クロマトグラフィー分析結果から明らかなように、本発明品1はヤマモモ科植物抽出物にガラクトース残基が1モル以上転移したヤマモモ科植物抽出物であることは明らかである。【0030】実施例2抽出物2 10gを熱水100mlに懸濁させ、50%水酸化ナトリウム液を少しずつ加えて抽出物2を溶解させ、次いで酢酸を添加してpH7.0に調整後乳糖250gを加えて65℃に調整sした。この溶液にバチルス サーキュランス由来のβ−ガラクトシダーゼ(酵素力価20,000)0.5gを加えて均質とし、65℃で8時間攪拌した。得られた反応液0.02mlを純水2mlに希釈し、水易溶性ヤマモモ科植物抽出物の分析に供した。実施例1と同一条件での分析の結果、反応液は数多くのガラクトース残基が転移したヤマモモ科植物抽出物からなっていた。次いで、スチレン−ジビニールベンゼン共重合体からなるポーラスポリマー700mlを充填したカラムを用いて実施例1と同一の方法で精製し、淡黄色の固形物である水易溶性ヤマモモ科植物抽出物(本発明品2という)15gを得た。【0031】この固形物100mgを実施例1と同一の方法で加水分解を行い、析出物と濾過液を高速液体クロマトグラフ分析を行った。その結果、析出物はミリセチン等のフラボノイドからなり、また濾過液から配糖化されたヤマモモ科植物抽出物に相当するピークは消失していた。濾過液中の糖分析の結果、ガラクトース、ラムノースとグルコースが検出され、その組成比は、2.5:1:0.2であった。高速液体クロマト分析の結果から、本発明品はヤマモモ科植物抽出物にガラクトース残基が1モル以上転移したものであることが明らかである。【0032】実施例30.05Mリン酸緩衝液(pH6.8)5mlに乳糖5.0gを加えて、この溶液に抽出物3 50mg含有ジメチルスルフォキシド液0.25mlとバチルス サーキュランス由来のβ−ガラクトシダーゼ(酵素力価20,000)5mgを加えて60℃で5時間反応させた。得られた反応液0.02mlを純水2mlで希釈し、実施例1と同一の条件で高速液体クロマトグラフィーによる糖転移反応の分析に供した。その結果、実施例1と同様に多数のガラクトース残基が転移したヤマモモ科植物抽出物を検出した。水1lを加えて希釈し、オクタデシルシリル化シリカゲル100mlを充填した分取カラムを用いて下記の条件で反応生成物と未反応物を分画し、淡黄褐色粉末からなる水易溶性ヤマモモ科植物抽出物(本発明品3という)15mgを得た。【0033】溶媒:15%テトラヒドロフラン水溶液流速:50ml/分検出器:紫外・可視分光検出器測定波長:350nm反応生成物5mgを実施例1と同一の方法で加水分解物し、析出物と溶液に分離し、それぞれを高速液体クロマト分析に供した。その結果、析出物からフラボノイド配糖体のアグリコンであるミリセチンなどのフラボノイドを検出した。糖分析の結果、ガラクトース、ラムノースとグルコースを検出し、その組成は2.6:1:0.2であった。これらの事実は、本発明品がヤマモモ科植物抽出物にガラクトース残基が転移したものであることを証明している。【0034】実施例40.05Mリン酸緩衝液(pH6.8)1mlに大豆オリゴ糖1.5gを加えて、この溶液に抽出物2を25mg含有するジメチルスルフォキシド液0.05mlとバチルス サーキュランス由来のβ−ガラクトシダーゼ(酵素力価20,000)1mgを加えて60℃で5時間反応させた。得られた反応液0.02mlを純水2mlで希釈し、ガラクトース残基転移ヤマモモ科植物抽出物の分析に供した。その結果、反応生成物は4成分のガラクトース残基の転移したヤマモモ科植物抽出物で構成されていた。【0035】本発明の効果を明らかにするため、純水中での溶解度の比較と酸化防止効果の試験を実施した。試験例1 純水中での溶解度の比較純水に実施例1による本発明品1及び実施例2による本発明品2の水溶液と原料である抽出物1を加熱溶解した水溶液を、4℃で1週間放置したときの沈殿の有無及びその量を観察した。その結果を表1に示す。【0036】【表1】【0037】試験例2 酸化防止効果の比較実施例1、実施例2、実施例3で調製された水易溶性ヤマモモ科植物抽出物と、一般に広く用いられているBHTと天然ビタミンEを比較実験のために用意した。尚、天然ビタミンEは高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、α、β、γ、δ型の異性体の混合物で構成されており、総トコフェロール含量は70%であった。【0038】パーム油を使用して各々、本発明品1、本発明品2、本発明品3と、他の酸化防止剤を添加して酸化防止効果の比較試験を行った。この方法は、メトローム社製のランシマット(自動油脂安定性試験装置)を使用した。この原理は加熱した油脂に空気を吹込み、この空気を次いで純水中に吹込む。油脂の酸化に伴って揮発性二次生成物質が生じてくる。油脂層に吹込んだ空気により二次生成物質が運ばれ、水層に移行する。それに伴って水の導電率が変化する。時間に対して導電率をプロットして、得られた曲線の変曲点を求め、この時間を誘導時間とするものである。油脂の安定性の判定は、油脂の安定性の増加に伴って誘導時間が伸びることにより誘導時間の長短の比較によりおこなうものである。測定条件として加熱温度100℃、空気流量20L/時、試料量3.5gで行った。尚、被試験酸化防止剤である本発明品1、本発明品2と本発明品3は含水エタノールに、BHTはエタノールに溶かして油脂に添加した。その結果を表1に示した。【0039】【表2】【0040】本発明品は、パーム油に対して少量の添加量で、他の酸化防止剤と比較してより強力な酸敗を遅延させる効果を発揮した。【0041】試験例3コーン油を使用して酸化防止剤の添加量を変化させた以外は試験例1と同様の条件で実験を行った。その結果を表2に示した。【0042】【表3】【0043】本発明品はコーン油に対して、他の酸化防止剤と比較してより強力な酸敗誘導時間の遅延効果を発揮した。【0044】試験例4純ラードを使用して、測定条件として加熱温度を110℃に変化させた以外は試験例2と同様の条件で実験を行った。その結果を表4に示す。【0045】【表4】【0046】本発明品は、純ラードに対して、他の酸化防止剤と比較してより強力な酸敗誘導時間の遅延効果を発揮した。以上の結果から、本発明の改質されたヤマモモ科植物抽出物は、ビタミンE及び合成酸化防止剤BHTに比べてより優れた酸化防止力があることがわかった。【0047】試験例5アジを腹開きし、内臓を除去した後水洗してから真水に浸漬して血抜きした。本発明品1を0.01%添加した10%食塩水を準備し、血抜きしたアジをこの食塩水に1時間浸浸後冷風乾燥してアジの干物を調製した。対照品として本発明品の無添加品を同様にして調製した。それぞれのアジの干物をポリエチレンフィルムで包み、3℃で1ヵ月保存した。両面に平均的に焼き色が着くように焼き上げた後官能評価したところ、本発明品を添加した物は油の酸化臭がしなかったが、無添加の物では油の酸化臭がして変質していた。調製直後と2週間保存後のアジの干物を細かく刻み、ソックスレー抽出器を用いてエチルエーテルで抽出し、粗脂肪を得た。得られた粗脂肪の過酸化物の量をR. B. Koch, B. Stern と C. G. Ferrariが提案しているロダン鉄法(Archives of Biochemistry and Biophysics. 78, 165-179 (1958))により測定した。その結果を表5に示す。【0048】【表5】【0049】尚、吸光度が0.3以上になると酸化が始るとされている。この結果から明らかなように、本発明品1を添加した食塩水に浸漬したアジの干物は、無添加の食塩水に浸漬しものと比較して、明らかに酸化を抑制していた。【0050】試験例6本発明品1を0.01%添加した市販サラダ油で生麺を170±5℃で約1分間フライして揚げ麺を調製した。同様に無添加の市販サラダ油でフライした揚げ麺を対照品として調製した。フライ麺をポリエチレン袋に入れて50℃の孵卵器のなかで1ヵ月保存したのち取りだして官能比較を行ったところ、本発明品1を添加したものは製造直後のものと殆ど変りがなかったが、無添加のものは油の酸化臭がして、また味も変わっていた。【0051】試験例7牛、豚の合挽肉670g、牛脂30g、パン粉50g、全卵50g、玉葱170g、食塩7g、ビーフエキス3g、ホワイトペパー末1.5g、ナツメグ0.5gと本発明品2を0.01%添加して十分に混合し、成型した。対照品として本発明品2の無添加のものを同様に調製した。両面に平均的に焼き色が着くように焼き上げたのち、ポリエチレン袋に入れて-20℃の冷凍庫で6ヵ月間保存したのち取りだし、解凍後官能評価を行ったところ本発明品2を。添加したものは製造直後と殆ど変わっていなかったが、無添加のものは油やけの臭いがして、また味も少し変わっていた。【0052】試験例8クリームチーズ50gと粉糖29gをクリーム状に練り、上白糖5gと50%クエン酸水溶液2gを加えてさらに滑らかになるまで混和した。この中に、本発明品1の10%エタノール溶液0.1g、着香料1gと着色料0.2gを添加後薄力粉100g、ベーキングパウダー2g、キサンタンガム0.5gと植物油脂40gからなる混合物を加え、軽く混合し、冷蔵庫で1時間寝かせた後成型し、170℃で10分間焼き上げてクッキーを調製した。対照品として本発明品1を添加していないものを同様に調製し、焼き上げた。ポリエチレン袋にそれぞれを入れ、35℃で3ヵ月保存したところ、本発明品1を添加していないものは過酸化物に由来する異臭がするが、添加したクッキーでは焼き上げた直後のものと変わらなかった。【0053】試験例9下記処方の薬用バニシングクリーム用原料を用意した。A,Bそれぞれを80℃に加熱して溶解した。Aを攪拌しながらBをAに加え、乳化した。混合物の内温が40℃になるまで攪拌を続け、次いで広口瓶に移し替えた。同様にして本発明品3を添加していない対照品を調製した。それぞれを12ヵ月35℃で保存したところ、本発明品を添加した物は調製直後の物と全く変らなかったが、対照品である無添加の物は油の酸化に由来する異臭が生じていた。【0054】【0055】試験例10下記の処方のコールドクリーム用原料を用意した。A,Bそれぞれを82℃まで加熱し、均一に溶解した。Aをよく攪拌しながらBをAに加え、乳化した。対照品として本発明品1を添加していないものを同様にして調製した。それぞれを広口瓶に移し替え、35℃で6ヵ月保存したところ、本発明品1を添加したものは調製直後のものと変りがなかったが、無添加のものは、油脂の酸化による異臭を生じていた。【0056】【0057】試験例11北洋漁粉600g、魚肝末50g、カゼイン100g、α−デンプン150g、ビタミンミネラル混合物100g、コーン油50gからなる混合物に、本発明品1の10%エタノール液3gを加えてよく混合し、顆粒化後乾燥して養殖魚用飼料を調製した。対照品として本発明品1を添加していない飼料を同様にして調製した。ビニール袋にそれぞれを入れて35℃で2ヵ月保存したところ、本発明品1を添加したものは調製直後のものと殆ど変化がなかったが、対照品の無添加物は、変色して油脂の酸化臭が強くした。【0058】【発明の効果】本発明の水易溶性ヤマモモ科植物抽出物は、原料のヤマモモ科植物抽出物と比較して以下の特徴を有している。(1) 水に対する溶解性が極めてよい。(2) 酸化防止効果が強い。(3) 水に対する溶解性が改善されたため、水を含有する食品、医薬品、医薬部外品、化粧品中で高濃度で使用しても析出物の生成の問題がなく、任意の濃度で使用することができる。これらの特徴は、ヤマモモ科植物抽出物にガラクトース残基を転移させた結果、水に対する溶解度が極めて高く改善されたことによるもので、水溶性の酸化防止剤として、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料などに利用することができる。 酸化防止効果を有するヤマモモ科植物抽出物とガラクトース残基転移源の共存下で、ガラクトース残基転移活性を有する酵素を作用させてヤマモモ科植物抽出物にガラクトース残基を転移させることを特徴とする水易溶性ヤマモモ科植物抽出物。 ヤマモモ科植物抽出物がヤマモモ科ヤマモモ属植物から有機溶媒を用いて抽出したものであることを特徴とする請求項1記載の水易溶性ヤマモモ科植物抽出物。