タイトル: | 特許公報(B2)_噴霧コーティング方法 |
出願番号: | 1995251959 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A23P1/08,A23L1/00,A61K9/36,B05D1/02 |
小川 正紀 伊藤 雄彦 石貝 千佳子 前田 裕一 古田 均 服部 光男 JP 3663494 特許公報(B2) 20050408 1995251959 19950905 噴霧コーティング方法 フロイント産業株式会社 000112912 不二製油株式会社 000236768 池浦 敏明 100074505 小川 正紀 伊藤 雄彦 石貝 千佳子 前田 裕一 古田 均 服部 光男 20050622 7 A23P1/08 A23L1/00 A61K9/36 B05D1/02 JP A23P1/08 A23L1/00 F A61K9/36 B05D1/02 Z 7 A23P1/00-1/12 特開平07−163853(JP,A) 特開平04−325058(JP,A) 7 1997070285 19970318 12 20001115 2002023970 20021212 寺本 光生 市野 要助 中西 一友 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はヘミセルロース水溶液を用いた食品又は医薬品に対する噴霧コーティング方法に関する。【0002】【従来の技術】いわゆる健康食品、機能性食品等と称される食品は、日常的に飲食される通常の食品と異なり、摂取量の管理、流通・保管の便宜のため、錠剤、顆粒、カプセル等の形状に形成することが多い。そして、これらの食品類は、有用成分が濃縮された状態で含有されているので、該有用成分の安定状態下での保存と異味・異臭の遮蔽、摂取時の取扱いの容易化等の目的で、前記食品類の成形品にコーティングを施すことが必要となることが多い。しかしながら、現状ではこれら食品のコーティング剤として天然物由来の適切なものが存在せず、コーティング剤の開発が望まれている。【0003】食品に対してコーティングをほどこそうとする場合に、従来から存在するコーティング剤として利用できると考えられる物質としては以下のようなものがあるが、試みてみるといずれも適当でないことがわかった。【0004】グアーガム、トラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、タマリンドガム、ローカストビーンガム等の天然ガムやカンテンなどは、その水溶液が高粘度であるため、噴霧に適当な粘度の希薄溶液にまで稀釈する必要があり、所望のコーティング膜の厚さにするコーティング操作に極めて長時間を必要とするので実用的でない。【0005】又、アラビアガム、プルラン、ゼラチン等はその粘着性のために、スプレーコーティングを行うと、被処理物同士が付着して塊状になり、良好な製品を得ることができない。【0006】カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどは水溶液とした場合に粘度が高いので、噴霧適性がよくないことに加えて、酸性で不溶性になり、多価金属と不溶性の塩を作るので処方が制限されるなどの欠点を有している。さらにこれらのカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルデンプンナトリウムは2%以下に使用量が制限されている。【0007】非水溶性のコーティング剤としてはシェラックおよびゼインがあり、食品のコーティングに利用されることがあるが、これらはコーティング時にアルコールまたは含水アルコールを用いる必要があること、又、胃では不溶であり、コーティング量によっては腸でも十分溶解しない場合があることなどの問題点が指摘されている。キトサンは酸に溶解するが、水不溶性であり、コーティングに酸を使用すると、コーティング膜に酸が残存するなど好ましくない問題があり、実用化に到っていない。【0008】これらのポリマー以外のコーティング剤としては、ショ糖による糖衣が医薬品では一般的であるが、コーティング層を厚くしないと強度的に不十分であり、一般に医薬品に比して多量に摂取することが多い食品にあっては、かさが大きくなる不都合があり、又コーティングに長時間を要する欠点がある。【0009】又、味醂干しの調味液に対する添加剤、鮮魚のグレーズ処理、卵の保存のための処理剤、焼肉のたれや煎餅の調味液に対する添加剤、米飯炊飯時のつや出しなどの添加剤等として、水に可溶の植物由来のヘミセルロースが知られている(特開平4−325058号)。ここに開示されているヘミセルロース処理は、機能性食品及び医薬品などとは異なる形状・大きさの生鮮食品などを対象とするものである。コーティングの手段ももっぱら浸漬及びはけによる塗布等を行うものである。したがって、機能性食品及び医薬品を対象とし均一な膜を能率よく形成するためのコーティング処理などは意図していないものである。【0010】医薬品の場合においても、コーティング剤は現状においては合成によるものが用いられており、コーティング剤の材料を天然物とすることへの要望があり、新しいコーティング剤が求められている現状にある。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明は食品及び医薬品を能率よく大量に噴霧コーティングする方法を提供することをその課題とする。【0012】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために種々研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す噴霧コーティング方法が提供される。(1)運動状態に保持した粉末、顆粒、錠剤、丸剤、カプセルまたはこれらに類似の小片状物体の形状の食品からなる被処理対象物に通気状態下で、10%水溶液としたときの25℃の粘度が50mPa・s以上、かつ1000mPa・s以下の水溶性ヘミセルロースを3〜15重量%の濃度で含む非粘着性の水溶液を噴霧し付着させて乾燥する噴霧コーティング方法であって、該水溶性ヘミセルロースが、Somogui−Nelson法による還元糖の含有量が5重量%以下で、かつTNBS法によるアミノ酸含有量が0.96重量%以下であることを特徴とする該被処理対象物に対して粘着性のないコーティングを形成するための噴霧コーティング方法。(2)運動状態に保持した粉末、顆粒、錠剤、丸剤、カプセルまたはこれらに類似の小片状物体の形状の医薬品からなる被処理対象物に通気状態下で、10%水溶液としたときの25℃の粘度が50mPa・s以上、かつ1000mPa・s以下の水溶性ヘミセルロースを3〜15重量%の濃度で含む非粘着性の水溶液を噴霧し付着させて乾燥する噴霧コーティング方法であって、該水溶性ヘミセルロースが、Somogui−Nelson法による還元糖の含有量が5重量%以下で、かつTNBS法によるアミノ酸含有量が0.96重量%以下であることを特徴とする該被処理対象物に対して粘着性のないコーティングを形成するための噴霧コーティング方法。(3)該水溶性ヘミセルロースが大豆由来の水溶性ヘミセルロースである前記(1)〜(2)のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。(4)水平な軸のまわりを回転する容器内に被処理対象物を充填し、容器を回転させ、被処理対象物を容器内で運動状態に保持し、容器内より容器壁に設けられた孔を通して通気しつつ被処理対象物に該水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。(5)流動状態に保持した被処理対象物に該水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。(6)ローターディスクの作用により遠心転動状態で旋回する被処理対象物層に空気を吹込み、流動させつつ該水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。(7)容器内の被処理物をのせた円板を回転させることにより被処理対象物を遊星運動させ、容器内を通気しつつ、被処理対象物に水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。【0013】【発明の実施の態様】本発明に用いられるコーティング剤は、植物体中にセルロース等と結合して存在する多糖類からなる水不溶性の植物繊維を弱酸性下に加水分解し、水溶性となった生成物を分離して得られる水溶性ヘミセルロースを用いるものである。水不溶性の植物繊維としては、大豆及びパームやしなどの油糧種子の水不溶性の植物繊維、及び米、麦、コーン等の穀類の水不溶性の植物繊維が用いられ、特に大豆から油脂および蛋白質の大部分を除去した後に得られるおからを用いることができる。水不溶性の植物繊維の加水分解反応は、水不溶性の植物繊維に含まれる蛋白質の等電点近くの酸性下に行うことが必要である。原料がおからである場合の加水分解反応は、大豆蛋白質の等電点がpH4.5付近にあるので、pH3〜7、好ましくは4〜7で行う。このように、蛋白質の等電点付近で加水分解を行うのは、蛋白質の等電点よりかなり低い酸性下、例えば上記のような大豆蛋白を含有するおからをpH2以下の強酸性下で加水分解を行った場合、植物繊維が分解されすぎて、又植物繊維と一緒に蛋白質も分解されて溶出し、蛋白質を含有する水不溶性の植物繊維を蛋白質の等電点よりかなり高い中性又はアルカリ性において加水分解を行った場合、蛋白質が可溶化されて植物繊維と一緒に溶出してしまうためである。この反応については特開平4−325058、特開平3−236759などに記載されているとおりである。蛋白質を含有する水不溶性の植物繊維の加水分解反応の温度は、常温以上、好ましくは80℃以上で130℃以下である。【0014】加水分解反応生成物を濾過あるいは遠心分離により水溶性ヘミセルロースを含む水溶液と分解されなかったセルロースなどの固形物に分離し、水溶性ヘミセルロース水溶液を取出すことができる。【0015】この水溶性ヘミセルロース水溶液は、ガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、キシロース、フコース、グルコース、ラムノース等よりなる多糖類を含むもので、その中の主な成分はガラクトース、アラビノース及びガラクツロン酸等より成る多糖類である。なお、加水分解で得られる水溶性ヘミセルロースの構成成分の分析結果の詳細は前記特開平4−325058に記載されている。この水溶性ヘミセルロース水溶液を濃縮乾燥させて水溶性ヘミセルロースを得る。【0016】水溶性ヘミセルロースを被処理対象物に噴霧し、付着乾燥させるコーティング方法に用いるコーティング剤としては、水不溶性の植物繊維を穏和な条件の温度及びpH値の条件下に加水分解した分子量の比較的大きな水溶性ヘミセルロースを含むものが特に有効であり、単糖類、二糖類及びそれ以上の少糖類を含むオリゴ糖の含有量ができるだけ少ないものが有効であることがわかった。【0017】分子量の大きな多糖類を多く含む水溶性ヘミセルロースはその分子量と粘度が相関関係にあるところから、粘度を指標にして分子量の大きな多糖類を含む水溶性ヘミセルロースの適切な範囲を限定することができる。すなわち、本発明のコーティングに用いられる水溶性ヘミセルロースは水溶性ヘミセルロースを10%水溶液としたときの25℃の粘度が50mPa・s以上(10%水溶液、25℃でB型回転粘度計により測定)好ましくは80mPa・s以上であることが要求される。粘度が50mPa・s未満では噴霧時に水溶性ヘミセルロースの粘着性が大きくなり、被処理対象物が粘着するので適当でない。水溶性ヘミセルロースの粘度は上記測定条件では1000mPa・s未満であれば、利用することができる。また、単糖類、二糖類及びそれ以上の少糖類を含むオリゴ糖は吸湿性を有することから、その含有量は5重量%以下、好ましくは3重量%以下であることが好ましい。単糖類、二糖類及びそれ以上の少糖類を含むオリゴ糖の含有量の測定は還元糖の含有量を測定するSomogui−Nelson法により行った。これは構成する糖に遊離又はヘミアセタール結合したアルデヒド基、あるいはケトン基を有する還元糖の含有量を標準物質としてガラクトースを用いてガラクトース含有量として換算して算出するものである。この結果には、多糖類の還元糖の含有量を加算する結果となるが、多糖類の分子量が大きくなればなるほど、多糖類の還元糖の影響は少なくなり、二糖類及び少糖類を含む還元糖の含有量を示す値に近くなる結果となる。又、二糖類及び少糖類の中には還元性を示さない糖も存在するが、二糖類及び少糖類の還元糖の含有量が少ない場合には還元性を示さない二糖類及び少糖類の含有量も少ないものと考えられる。したがって、本発明の分子量の大きな多糖類を多く含む水溶性ヘミセルロースに含まれる単糖類、二糖類及びそれ以上の少糖類を含むオリゴ糖の含有量を表わす手段として、還元糖の含有量で表わすことができるものと考えられる。本発明の場合には水溶性ヘミセルロースを対象として、還元糖の含有量を測定しており、この結果は、単糖類、二糖類及びそれ以上の少糖類を含むオリゴ糖の含有量を表わすものと考えられる。単糖類及び二糖類を分離する方法としては(1)活性炭により吸着分離する方法、(2)エチルアルコール又はアセトン等により単糖類及び二糖類を溶解させ、分子量の大きな多糖類を含むヘミセルロースを沈殿物として分離させる方法などがある。【0018】この水溶性ヘミセルロースには不純物として蛋白質、灰分、及びウロン酸などを含んでいる。これらの不純物を含有した状態でコーティング剤として使用すると、コーティングに際し粘着性を示すので、本発明者らは不純物と粘着性の関係を調べることとした。そこで、粘着性に関係するファクターとして、含まれている蛋白質の加水分解物であるペプチド及びアミノ酸が考えられることから、ペプチド及びアミノ酸の含有量と粘着性の関係を実験により確かめた。その結果は次の通りである。なお、単糖類、二糖類及びそれ以上の少糖類を含むオリゴ糖の含有量は、含まれている還元糖の含有量をSomogyi−Nelson法により測定した結果を標準物質としてガラクトースを用いてガラクトース含有量として換算した結果である。アミノ酸含有量はTNBS法により測定したものである。TNBS法とは奥山らが報告している2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩法(蛋白質 核酸 酵素、18,1154(1973))であり、グルタミン酸を標準物質として使い、アミノ酸及びペプチドの含有量をグルタミン酸含有量として換算して算出するものである。【表1】表1において、粘着性に対する評価は◎及び○は粘着性がなく、コーティング剤として使用できるものであることを示している。×は粘着性があり、使用に適しないものであることを示している。TNBS法によるアミノ酸含量測定法によるアミノ酸含有量には、アミノ酸以外に、ペプチド成分や高分子量の蛋白質が含まれていると、その含有量がアミノ酸含有量に加算され、これらの物質を含む結果となるが、ペプチド成分や高分子量の蛋白質の分子量が大きくなればなるほどこれら蛋白物質の影響は少なくなるり、アミノ酸含有量を示す値に近くなる。本発明では、水溶性ヘミセルロースのアミノ酸含有量を水溶性ヘミセルロースに対してTNBS法により測定した結果をアミノ酸換算量として表わし、アミノ酸含有量の一つの指標として使用しようとするものである。表1の結果からアミノ酸含有量が1.0重量%を越えると粘着性が生じ、0.96重量%以下にすると粘着性について問題がないことが判る。そして、不純物を完全に除去することは技術上困難ではないが、高価となり、コーティング剤が粘着性を示すことがない程度に除去することにより目的を達成するもので、必要以上に除去することは要求されない。加水分解生成物から得られる水溶性ヘミセルロース水溶液に含まれるアミノ酸などの不純物を前記した含有量にまで減少させたり、さらに場合によっては除去する方法としては(1)活性炭により吸着除去による方法(2)イオン交換樹脂などの機能性樹脂と接触させて除去する方法(3)電気透析による方法(4)エタノール又はアセトン等の溶剤によりアミノ酸などを溶解させ、分子量の大きな多糖類を含むヘミセルロースを沈殿物として分離する方法などがある。【0019】単糖類、二糖類及びそれ以上の少糖類を含むオリゴ糖の含有量並びにアミノ酸含有量を特定量以下に調製された水溶性ヘミセルロース水溶液を加圧下例えば2kg/cm2程度に加熱し、ヘミセルロース含有量を15重量%程度に濃縮する。この濃縮液をスプレードライヤーに供給し、乾燥させる。得られた粉体は粒径が50〜60μm程度である。【0020】コーティング剤は水溶性ヘミセルロースを乾燥させて、粉体としたものを水溶液に溶かして使用する。コーティング剤を噴霧するときの粘度は一般に20〜200mPa・sの範囲のものが好ましいとされている。この粘度範囲のものとするためには水溶性ヘミセルロースの濃度は3〜15重量%とするのがよい。この範囲の濃度範囲でコーティングを行うことは、スプレー液の霧化状態を良好に保ち、コーティング膜の乾燥速度を適当な範囲とすることができるので、極めて有利である。そして、前記特定の粘度及び純度の水溶性ヘミセルロースによりコーティングを行うと、全く曳糸性がなく、噴霧適性が良好であることがわかった。なお、曳糸性については各コーティング剤を用いてコーティングすることを試みてはじめて結果が判るもので、始めからその特性を予測できるものではない。【0021】以上の結果をまとめると、本願発明で用いる水溶性ヘミセルロースは、水溶性ヘミセルロース10%水溶液の25℃の粘度が50mPa・s以上で1000mPa・s以下であり、還元糖の含有量が5重量%以下でありTNBS法によるアミノ酸含有量が0.96重量%以下のものである場合が有効であるということができる。【0022】本発明のコーティング法により処理しようとする対象物の大きさは一般的に0.1mm〜30mm程度のものであれば、通常の汎用装置で十分に処理できる。そして、本発明のコーティング剤は食品及び医薬品に対して直接コーティングすることもできるし、予め処理をほどこした上にさらに積層状態でコーティングすることもできる。又、場合によってはサンドイッチ状にあるいは積層状態に薬品を積み重ねた状態のものにコーティングすることも可能である。コーティングはその機能をはたすかぎりにおいて、均一で薄い層とすることが理想であり、本発明ではコーティング膜の厚さを10μm〜50μm程度とすることができる。【0023】コーティング剤の水溶性ヘミセルロースには必要に応じて可塑剤、造膜助剤、顔料、着色剤、分散剤、溶剤、呈味料、着色料、防腐剤、消泡剤等を添加してもよく、また、他のコーティング剤を配合してもよい。【0024】被処理対象物の形状としては、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、カプセルまたはこれらに類似の小片状物の形状のものはコーティングすることができる。コーティングを行う被処理対象物としては、機能性食品及び医薬品以外にも、医療用食品、菓子、嗜好品、ペット用食品、飼料、医薬部外品、化粧品等広範囲のものに適用可能である。本発明で用いられる水溶性ヘミセルロースによりコーティングを行うと、被処理対象物に防湿性が付与され、また酸素などの気体がコーティング膜を透過することを防止できるガスバリア特性をコーティング膜に付与することができ、コーティング処理した物質の酸化防止が可能となり、長期保存が可能となり、又この水溶性ヘミセルロースが長期にわたり安定であることから、安定した皮膜状態を長期にわたり維持することができるものである。本発明に用いる水溶性ヘミセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロースエーテルと比較して、分子量が大きいにもかかわらず水溶液粘度が低いため、良好な皮膜特性を有し、コーティング時に粘着性がないような高分子量のものでも、皮膜形成に有利な高濃度のものとすることができると共に、曳糸性がなく噴霧適性の良好なものとすることができるという両条件を同時に満たすコーティング剤であることがわかった。本発明コーティング物のコーティング膜は強度が大で、防湿性、外観とも良好であり、水に対して容易に溶解するものであり、コーティング膜として優れたものである。【0025】本発明の強制的に空気を送り込むことにより運動状態に保持した被処理対象物に水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し、付着乾燥させるコーティング方法に用いられる装置は、ノズルを介して特定の粘度の水溶性ヘミセルロース水溶液を装置内に供給噴霧するものを含むものであり、装置によってはその際にノズルの周囲から圧縮空気などの気体の媒体が導入されるようになっている。このノズルでのヘミセルロース水溶液の噴霧には本発明で用いられる水溶性ヘミセルロースの優れた噴霧特性が利用される。本発明は、コーティング剤としてアミノ酸含有量が特定量以下の水溶性ヘミセルロース水溶液として粘度を調整することにより噴霧に際し、粘着性を示さないものであることは前記のとおりである。又、噴霧に際し水溶性ヘミセルロース水溶液が曳糸性を示さないことも噴霧を好条件に行うことができる利点の一つである。コーティング処理温度は被処理対象物及び水溶性ヘミセルロース水溶液の安定性を考慮して適宜決定できるが、一般的には50〜100℃、好ましくは60〜90℃の範囲の値が用いられる。噴霧には、市販の二流体ノズルを有するスプレーガン、エアレススプレーガン等を利用することができる。特定のコーティング装置を用いる本発明の方法は、以下に述べる四つのものを挙げることができる。【0026】水平な軸のまわりを回転する容器内に被処理対象物を充填し容器を回転させ、被処理対象物を容器内で運動状態に保持し、容器壁に設けた通気孔を通し対象物集積層に通気状態下で被処理対象物に水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し、付着させて乾燥することを特徴とする方法。この方法に用いられる装置は、周囲に通気用多孔部を備えた容器において、容器は略水平な軸のまわりを回転できるように取付けられており、処理操作中は容器が回転することにより被処理対象物は容器内で運動状態を保持し、容器内より容器の周囲壁の孔を通して通気し、中心部よりスプレーガンを介してコーティング剤を噴霧し、被処理対象物に付着させて乾燥するコーティング操作を行うものである。この装置によると、錠剤等の被処理対象物集積層を乾燥空気が通るため、コーティング時間が短かくてすみ上記被処理対象物を大量に能率よくコーティングすることができる。この装置で用いられる容器の大きさは一般的に直径が20cm〜170cmである。コーティング剤のスプレー速度は、一般的には3ml/分〜500ml/分で、送風量0.3m3/分〜50m3/分、被処理対象物の仕込量0.3kg〜400kg、処理時間35分〜240分である。容器の回転速度は5r.p.m〜30r.p.mである。これらの具体的な装置としては、商品名「ハイコーター」、及び「アクアコーター」(フロイント産業株式会社製)等のコーティング装置が使用できる。【0027】流動状態に保持した被処理対象物に水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥する方法。この方法に用いられる装置は、流動層中に処理対象物を仕込み、同じく流動層にコーティング剤を噴霧ノズルより供給し、流動層下部より流動用空気を供給するようにした、被処理対象物を流動状態に保持した流動化装置を用いるものである。流動層装置は処理量に応じて実験室レベルのものから大規模な設備のものまでとすることができるが、一般的には塔径はおよそ13cm〜160cm、対象物の大きさ0.5mm〜3mm、対象物の仕込量0.3g〜300kg、コーティング剤のスプレー速度3ml/分〜600ml/分、乾燥空気供給量0.5m3/分〜100m3/分程度の条件が採用されている。この装置は粉末、顆粒等のコーティングに適しており、乾燥能力が大きいので極めて能率よく処理することができる。これらの具体的な装置としては、商品名「フローコーター」(フロイント産業株式会社製)等のコーティング装置が使用できる。【0028】ローターディスクの作用により遠心転動状態で旋回する被処理対象物に空気を吹込み、流動させつつ被処理対象物に水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥する方法。この方法に用いられる装置は、流動層の底部にローターディスクを設置し、ローターディスクの回転により遠心転動状態に保たれ、旋回する被処理対象物を流動させた状態でコーティング剤を供給し、コーティングする装置である。この装置が有する機能は通常の流動層装置が有する機能とほぼ同様で、より広範囲の適用性がある。塔径は13cm〜130cmであり、処理対象物の大きさは0.5mm〜3mm程度で、対象物の仕込量0.3kg〜300kgである。コーティング剤のスプレー速度は3ml/分〜500ml/分であり、乾燥空気供給量は0.5m3/分〜120m3/分である。具体的な装置としては、商品名「スパイラフロー」、「ローターコンテナー付の流動層装置」(フロイント産業株式会社製)等のコーティング装置が使用できる。【0029】容器内の回転する円板上で被処理対象物を遊星運動させ、容器内を通気した状態下で、被処理対象物に水溶性ヘミセルロースを噴霧し付着させて乾燥する方法。この方法に用いられる装置は容器内で円板を回転させるものであり、その円板上の被処理対象物を遊星運動させるもので、通気状態で水溶性ヘミセルロースを供給噴霧する手段を有しているものである。この装置は球形顆粒の製造コーティングに適しており、徐放性の医薬や装飾性の球状粒子のコーティングに用いられる。【0030】【実施例】実施例1大豆蛋白製造工程から得られた生おから5kgに2倍量の水10 l を加え、塩酸によりpHを4.5に調整し、120℃で1.5時間加水分解した。その後得られた生成物を遠心分離し(10,000G×30分)、上澄と沈殿に分離した。こうして分離した上澄液を活性炭カラム処理を通して、単糖類、二糖類及び少糖類を含むオリゴ糖並びにアミノ酸を吸着処理した。得られた水溶液を濃縮乾燥させて水溶性ヘミセルロース260gを得た。このセルロースの分析値は以下のとおりである。水分6.0重量%、粗蛋白3.1重量%(乾燥状態)粗灰分1.4重量%(乾燥状態)還元糖類1.69重量%(Somogyi−Nelson法による)アミノ酸類0.77重量%(TNBS法により測定した結果であり、蛋白物質のN末端数をグルタミン酸含量として数値化したもの)水溶性ヘミセルロース10%水溶液の25℃における粘度はB型回転粘度計により測定したところ95.7mPa・sであった。周囲に通気用多孔部を備えた容器において、容器は略水平な軸のまわりを回転できるように取付けられており、その容器内に対象物を仕込み、処理操作中は容器の中心より周囲壁の通気用多孔部を通して通気し、中心部よりスプレーガンを介してコーティング剤を供給し、容器を回転させつつコーティング操作を行った。コーティング装置は、錠剤コーティング装置ハイコーターHC−48N型(フロイント産業株式会社製)を用いた。上記95.7mPa・sの水溶性ヘミセルロース(ソヤファイブ−S(不二製油株式会社製))9.0%水溶液によって、8mmφの乳糖錠3.5kgをコーティングした。給気温度は65℃で、スプレー圧力は3.0kg/cm2であった。容器の直径は48cmで、スプレーガンからのコーティング剤の噴出速度は20ml/分、送風気量2.8m3/分で、容器の回転速度15r.p.mであった。コーティング量は6.0重量%(対錠剤)であった。コーティング操作は順調で、美麗なコーティング皮膜を形成することができ、ベタつきや曳糸性もなかった。日本薬局方による第1液崩壊試験を行ったところ、素錠が2分15秒、コーティング錠が5分17秒であった。【0031】比較例1水溶性ヘミセルロースに替えて、アラビアガムの12%水溶液、およびゼインの8%含水エタノール(エタノール80容量%)溶液を用いた以外は実施例1と同様に操作した。アラビアガムを用いたものは粘着性が大きく、コーティング操作をすることができなかった。ゼインを用いたものは、良好にコーティングできたが、第1液による崩壊試験では60分後も崩壊せず、胃溶性コーティング膜として不適当であるとわかった。【0032】比較例2水溶性ヘミセルロースとして粘度56.4mPa・s、アミノ酸含有量1.3%のものを用いた以外は、実施例1と同様に操作した。コーティングの際、被処理対象物は粘着性を示し、実施例1の結果と比較するとベタつきが認められた。崩壊時間は4分26秒であった。【0033】実施例2コーティング装置として流動層造粒コーティング装置(フローコーターFL−mini型(フロイント産業株式会社製、流動層化装置の塔径は13.5cm))を用い、流動層下部より流動空気供給量を0.5m3〜0.8m3/分の割合で供給し、被処理対象物を流動状態に保って、粘度88.7mPa・s、アミノ酸含量0.9%の水溶性ヘミセルロース(ソヤファイブーS(不二製油株式会社製))5%及びグリセリン2%からなる水溶液をコーティング剤として供給量2.5ml/分の割合で圧縮空気と共に噴霧ノズルより供給し、ショ糖球顆粒(ノンパレル−103(フロイント産業株式会社製))(粒径590〜710μm品)200gをコーティングした。給気温度は90℃、スプレー圧力は1.5kg/cm2で、コーティング量は2.4%(対顆粒)であった。コーティングは順調で、ベタつきや曳糸性もなく、40分でコーティングを完了した。日本薬局方による第1液崩壊試験を行ったところ、未コーティング顆粒が7秒、コーティング顆粒が12秒であった。【0034】実施例3通気乾燥装置を有するコーティング装置として流動層造粒コーティング装置(フローコーターFLO−5型(フロイント産業株式会社製))を用い、粘度88.7mPa・s、アミノ酸含有量0.9%の水溶性ヘミセルロース(ソヤファイブ−S(不二製油株式会社製))9%及びグリセリン1%からなる水溶液によってショ糖球顆粒(ノンパレル−103(フロイント産業株式会社製))(粒径590〜710μm品)5kgをコーティングした。給気温度は80℃、スプレー圧力は3.0kg/cm2であった。コーティング量は2.9重量%(対顆粒)であった。コーティングは順調で、ベタつきや曳糸性もなく、40分でコーティングを完了した。日本薬局方による第1液崩壊試験を行ったところ、未コーティング顆粒が7秒、コーティング顆粒が12秒であった。【0035】実施例4コーティング装置として、底部に回転円板(ローター)を備え、その円板の回転作用により被処理物を遠心転動及び混合させる流動層装置(スパイラフローSFC−mini型(フロイント産業株式会社製)、流動層の塔径は15.5cm、ローター回転数400rpm、給気温度70℃、乾燥空気供給量0.8m3/分〜1.0m3/分)を用いて、粘度88.7mPa・s、アミノ酸含有量0.9%の水溶性ヘミセルロース(ソヤファイブーS(不二製油株式会社製))9%及びグリセリン1%からなる水溶液を供給速度2ml/分の割合でスプレー圧力3.0kg/cm2の条件下に供給し、ショ糖球顆粒(ノンパレル−103(フロイント産業株式会社製))(粒径590〜710μm)600gをコーティングした。コーティング量は2.3%(対顆粒)であった。コーティングは順調で、ベタつきや曳糸性もなく、80分でコーティングを完了した。日本薬局方による第1液崩壊試験を行ったところ、未コーティング顆粒が7秒であった。コーティング顆粒が12秒であった。【0036】比較例3水溶性ヘミセルロースに替えて、プルランを用いた以外は実施例3と同様に操作したところ、粘着性が甚だしく、顆粒が相互に付着して団塊状となった。スプレー速度を下げて粘着性が出ないようにしてコーティングを行ったところ、同一のコーティング量(2.4重量%)とするのに210分を要し、極めて非能率的であった。【0037】【発明の効果】本発明は、運動状態に保持した被処理対象物に通気状態下で特定の水溶性ヘミセルロースを噴霧し、付着乾燥させることにより、大量かつ連続的にコーティングを行うものであり、従来のコーティング方法と比較して、付着性、曳糸性のない良好な噴霧適性によるコーティング剤によるコーティング操作を可能とし、強固で美麗なガスバリア性のある安定したコーティング膜を形成することを可能としたものである。その結果、得られるコーティング物は、被処理対象物の食品及び薬品を長期にわたり安定して保存することを可能とし、又、コーティング膜は第1液(ヒトの胃液に相当)に対して良好な崩壊性を示した。 運動状態に保持した粉末、顆粒、錠剤、丸剤、カプセルまたはこれらに類似の小片状物体の形状の食品からなる被処理対象物に通気状態下で、10%水溶液としたときの25℃の粘度が50mPa・s以上、かつ1000mPa・s以下の水溶性ヘミセルロースを3〜15重量%の濃度で含む非粘着性の水溶液を噴霧し付着させて乾燥する噴霧コーティング方法であって、該水溶性ヘミセルロースが、Somogui−Nelson法による還元糖の含有量が5重量%以下で、かつTNBS法によるアミノ酸含有量が0.96重量%以下であることを特徴とする該被処理対象物に対して粘着性のないコーティングを形成するための噴霧コーティング方法。 運動状態に保持した粉末、顆粒、錠剤、丸剤、カプセルまたはこれらに類似の小片状物体の形状の医薬品からなる被処理対象物に通気状態下で、10%水溶液としたときの25℃の粘度が50mPa・s以上、かつ1000mPa・s以下の水溶性ヘミセルロースを3〜15重量%の濃度で含む非粘着性の水溶液を噴霧し付着させて乾燥する噴霧コーティング方法であって、該水溶性ヘミセルロースが、Somogui−Nelson法による還元糖の含有量が5重量%以下で、かつTNBS法によるアミノ酸含有量が0.96重量%以下であることを特徴とする該被処理対象物に対して粘着性のないコーティングを形成するための噴霧コーティング方法。 該水溶性ヘミセルロースが大豆由来の水溶性ヘミセルロースである請求項1〜2のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。 水平な軸のまわりを回転する容器内に被処理対象物を充填し、容器を回転させ、被処理対象物を容器内で運動状態に保持し、容器内より容器壁に設けられた孔を通して通気しつつ被処理対象物に該水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。 流動状態に保持した被処理対象物に該水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。 ローターディスクの作用により遠心転動状態で旋回する被処理対象物層に空気を吹込み、流動させつつ該水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。 容器内の被処理物をのせた円板を回転させることにより被処理対象物を遊星運動させ、容器内を通気しつつ、被処理対象物に水溶性ヘミセルロース水溶液を噴霧し付着させて乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧コーティング方法。