タイトル: | 特許公報(B2)_低融点高強度チタン合金及び鋳造物 |
出願番号: | 1995239208 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C22C 14/00,A61K 6/04 |
藤根 道彦 JP 3760488 特許公報(B2) 20060120 1995239208 19950823 低融点高強度チタン合金及び鋳造物 大同特殊鋼株式会社 000003713 吉田 和夫 100089440 藤根 道彦 20060329 C22C 14/00 20060101AFI20060309BHJP A61K 6/04 20060101ALI20060309BHJP JPC22C14/00 ZA61K6/04 C22C 14/00 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開昭64−052036(JP,A) 2 1997059732 19970304 8 20020530 青木 千歌子 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は歯科用鋳造品等として好適な低融点高強度チタン合金及び鋳造物に関する。【0002】【従来の技術】歯科用の義歯床,クラウン,ブリッジ等の金属材料として、従来コバルト−クロム合金が用いられている。これに対し近時チタンが、機械的性質に優れ、軽量であり、生体との馴染みが良く、また耐食性が良いなどの特長を有していることから歯科用の材料として注目されている。【0003】しかしながらチタンは一方で融点が1670℃と高融点であり、義歯床等を鋳造する際の鋳造温度が高くなる問題がある。しかもチタンは高温度での活性が高く、従って鋳造時にチタンが鋳造型となる耐火材の酸素と反応してチタンの酸化物を形成し、硬く、脆く、また伸びが少なくなって、歯科用材料としての適正が損なわれてしまうといった固有の問題がある。【0004】図1はTiO2や各種酸化物の標準生成自由エネルギー、つまり酸化物の安定度を比較して示したものであって、図示のようにチタンは酸化物を生成し易い。而してチタンは図2に示しているように酸化物形成によって、即ち酸素を含有することによって且つその酸素含有量が多くなるにつれて硬度が硬く、強度が強くなる一方、伸びが低下し、歯科用の義歯床やクラウン,インレー等の鋳造品の加工性を低下させる。【0005】【課題を解決するための手段】 本願の発明はこのような課題を解決するためになされたものである。 而して本願の発明は、チタン合金組成を重量%でCr:16〜40%を含有するとともに、Cu,Fe,Mn,Pd,Si,Snの1種又は2種以上を、Cu:1〜(36.8−1.05[Cr])%,Fe:1〜7%,Mn:1〜9%,Pd:0.2〜15%,Si:0.6〜1.5%,Sn:1〜8%の範囲で含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなる組成とすることを特徴とする。【0006】【作用】以上のように本発明は、TiにCrを16〜40重量%の範囲で含有させ、更にCu,Fe,Mn,Pd,Si,Sn等を第三成分として適正量で含有させたものである。【0007】而してTiにCrを含有させた場合、その含有量とともに物理的性質が変化し、とりわけその融点がCrの含有量の増加とともに効果的に低下する。図3はCr含有による物理的性質の変化を示したもので、この図からCrの含有量の増加とともに融点が連続的に低下すること、とりわけCrを16%以上含有させることによって融点が1550℃以下に低下することが分かる。【0008】尚、Crを40%を超えて含有させた場合、融点はCr含有量の増加ほどには低下せず、逆に含有量が一定以上多くなると却って融点が上昇傾向に転ずる。【0009】而してチタン合金の融点が低下した場合、これを耐火材製の鋳造型を用いて鋳造したとき、低い温度での鋳造が可能となって、その鋳造の際にチタン中に酸素が取り込まれるのを抑制することができる。【0010】図4はチタン合金の融点と酸素含有量との関係を表わしたもので、図示のように融点が下がるにつれて酸素含有量は効果的に減少している。【0011】即ち、チタン合金の融点が低下することによって、これを歯科用の材料として用いたとき加工性が良く、また良好な表面肌が得られるようになる(酸素含有量が多いと表面肌が荒れるようになる)。【0012】本発明は、上記のように第三成分としてCu,Fe,Mn,Pd,Si,Snを含有させることを特徴としている。これら一群の元素はαTi,βTi相に固溶してマトリックス相を固溶強化する元素であり、これら元素を第三成分として合金化することにより、チタン合金の強度を効果的に高め得ることが確認された。尚、添加すべき第三成分を選択する場合においてその望ましい順位はCu,Pd,Sn,Fe,Mn,Siの順である。【0013】次に本発明における各成分の限定理由を以下に具体的に説明する。Cr:16〜40%Cr含有量が低いと、延性は良いが融点が高くなってしまい、低融点チタン合金としてのメリットがなくなってしまう。そこでTi−Cr合金の融点が1550℃である16%を下限とした。一方、Cr含有量を増大していくと硬さが増大し、高強度化が図れるが、延性も低減してしまう。特に40%を超えると著しい脆化が認められたので、上限を40%とした。望ましくは20〜30%である。【0014】Cu:1〜(36.8−1.05[Cr])%Cuが1%未満では高強度化は期待できない。Cu添加量を増していくと硬さが大きくなり、強度も向上する。図5に示すように延性のあるCu含有量の範囲はCr含有量に依存していることが分かった。そこでCuの上限値は36.8−1.05[Cr wt%]から計算される値とした。【0015】Fe:1〜7%Feの含有量1%未満では高強度化の効果がほとんどなくなり、また7%を超えると硬さが著しく大きくなり、延性がほとんどなくなってしまう。望ましくは2〜5%である。【0016】Mn:1〜9%Mnの含有量1%未満では高強度の効果がほとんどなくなり、また9%を超えると硬さが著しく大きくなり、延性がなくなってしまう。望ましくは2〜7%である。【0017】Pd:0.2〜15%Pdはチタンの耐食性を向上させる合金として知られているが、0.2%未満では高強度化は期待できない。一方、15%を超えると合金の延性がなくなるという問題がある。望ましくは1〜10%である。【0018】Si:0.6〜1.5%Siは0.6%以上の添加で強度が向上する。但し多量に添加すると延性が低下するため、1.5%以下とした。【0019】Sn:1〜8%Snの含有量1%未満では高強度の効果がほとんどなくなり、また8%を超えると硬さが著しく大きくなり、延性がなくなってしまう。望ましくは2〜6.5%である。【0020】【実施例】次に本発明の実施例を以下に詳述する。表1に示す各種組成のチタン合金を純チタン,金属クロム及びCu,Fe,Mn等の材料を適量に配合した約150gの原料を用いてアルゴン雰囲気中,水冷銅ルツボ中でアーク溶解した。尚、組成の均一化を図るためにボタンインゴットを裏返して溶解する操作を4回繰り返して実施した。この条件及び手順でインゴットを製造し、これより試験片を作成してビッカース硬さ測定及び常温圧縮試験を行なった。ここでビッカース硬さ測定は、樹脂に埋め込んだ試験片の一面を鏡面研磨して荷重300gで微小硬度計を用いて測定した。また常温圧縮試験は4mmφ(直径)×7mm(高さHo)の試験片を用いて油圧式万能試験機を用いて歪速度[数1]の条件で行なった。結果が表1に併せて示してある。【0021】【数1】【0022】【表1】【0023】この結果から、Crを本発明の範囲内で含有させ、また第三成分としてのCu,Fe,Mn,Pd,Si,Snを含有させることによってチタン合金の融点を効果的に低下させ、また強度を高め得ることが分かる。【0024】以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において、種々変更を加えた態様で実施可能である。【0025】【発明の効果】上記のように本発明によれば、チタン合金の融点を低下させて鋳造時における酸化反応を抑制でき、以て加工性の良好なチタン鋳造品を得ることができるとともに、強度においても優れたチタン鋳造品を得ることができる。【図面の簡単な説明】【図1】TiO2を含む各種酸化物の標準生成自由エネルギーを比較して示す図である。【図2】チタンにおける酸素含有量と物理的性質の関係を表す図である。【図3】チタンにクロムを合金化した場合のクロム含有量と合金融点を含む物理的性質の変化の関係を表す図である。【図4】チタン合金の融点と酸素含有量との関係を示す図である。【図5】チタン−クロム合金に銅を添加した場合の延性の評価を示す図である。 重量%でCr:16〜40%を含有するとともに、Cu,Fe,Mn,Pd,Si,Snの1種又は2種以上を Cu:1〜(36.8−1.05[Cr])% Fe:1〜7% Mn:1〜9% Pd:0.2〜15% Si:0.6〜1.5% Sn:1〜8%の範囲で含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなることを特徴とする低融点高強度チタン合金。 請求項1記載のチタン合金を用いた歯科用の義歯床,クラウン,ブリッジ,インレー等の鋳造物。