タイトル: | 特許公報(B2)_分配剤としてカプリル酸ナトリウムを用いる低温アルブミン分画 |
出願番号: | 1995218235 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 38/16,A61K 35/14,A61K 38/55,C07K 14/76 |
ロバート・エイ・テノルド JP 3874029 特許公報(B2) 20061102 1995218235 19950804 分配剤としてカプリル酸ナトリウムを用いる低温アルブミン分画 バイエル・コーポレーシヨン 591097333 MILES INCORPORATED 小田島 平吉 100060782 ロバート・エイ・テノルド US 288180 19940810 20070131 A61K 38/16 20060101AFI20070111BHJP A61K 35/14 20060101ALI20070111BHJP A61K 38/55 20060101ALI20070111BHJP C07K 14/76 20060101ALN20070111BHJP JPA61K37/04A61K35/14 BA61K37/64C07K14/76 A61K 38/16 欧州特許出願公開第0452753(EP,A1) 9 1996176010 19960709 11 20020731 齋藤 恵 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、一般に、血漿より得られる治療用タンパク質溶液を製造すること、そして、より具体的には、選択的に安定化された血清または血漿からの動物もしくはヒト血清アルブミン(HSA)、α−1プロテアーゼ・インヒビター(α−1 PI)、および抗トロンビンIII(AT III)を製造することを伴う。【0002】【従来の技術】アルブミン製造中に、不必要なタンパク質を不溶化するために、エタノール、温度、pH、タンパク質濃度、イオン強度、および時間を利用するコーン(Cohn)分画法は、1946年に最初に公表され、血漿処理に関する米国における主要な方法として残っている。Cohn et al., J. Am. Chem. Soc. 68, 459 (1946)。その後、T. Gereloughによるコーン分画法での95%エタノールの使用は、必要な工程の容量を大きく減少させ、それによって、対応する製造コストを低下させた。また、Gereloughの方法は、血漿分画に関して米国で承認された基準法である。米国特許第2,710,294号;第2,710,293号(1955)。欧州においては、H. Nitschamann およびP. Kistler が、アルブミン処理のより短い方法を記述している。しかしながら、得られる生産物は、その処理時間の間に、米国政府機関によって課せられた規制ガイドラインを満足することができなかった。Vox Sang.,5, 272 (1960)。【0003】米国における血漿分画法は、Cohnらによる1946年発表以来、コーン技術を使用してきた。その結果、20年以上もの間、製造者らに、そのほかのアルブミン分画技術を検証する興味も必要性も持たせなかった。M. Steinbuch, Vox Sang., 23, 92 (1972)。さらに、慣用的分画技術により、成功裏に、低温殺菌して(60℃で10時間加熱することによって)ウイルスを不活化し得たアルブミンが製造されたので、アルブミン製造者らの間では、そのほかの、改良された分画法を探求する動機も注力もなかった。【0004】次いで、1972年に、M. Steinbuchは、沈殿を通して血漿タンパク質を分離するために、エタノール以外の数種の試薬の性能を検査した。出発物質としてコーン画分IIIを用いて、Steinbuchは、従来、アルブミンの安定化(M. Steinbuch, Vox Sang. 23: 92-106, 1972, Yu L. Hao,米国特許第4,222,934号, 1980)、ならびにその後、脂質包膜ウイルスの不活化に使用されてきたカプリル酸の沈殿能を研究した。Seng et al.,米国特許第4,939,176号 , 1990。これらの研究の結果、科学者らは、後に、IgG,IgA、α−1酸性糖タンパク質およびプレアルブミンを精製するための数種の技術を開発し、近年、沈殿反応が、温度とpHに高く依存することを発見した。【0005】ヒト免疫グロブリンの調製に際して、カプリル酸は、温度やイオン強度のようなパラメーターが最適化される限り、pH4.8におけるほとんどの血漿タンパク質の効果的な沈殿剤であると、一般に認識されている。Steinbuch et al., Preparative Biochemistry, 3(4), 363-373 (1973)。したがって、Steinbuchらは、カプリル酸を用いる哺乳動物血清からのIgG分離法を発表し、広範囲の非免疫グロブリン沈殿が、やや酸性側ではあるがpH4.5以下ではないpHで、最も良好に得られることを見出だした。Steinbuch et al., Arch. Biochem. Biophys., 134, 279-294 (1969)。Habeeb らは、カプリル酸沈殿を用いて、凝集体、プラスミンおよびプラスミノーゲンを含まず;抗補体活性の低い;そして貯蔵中安定な血漿より得られるIgGを得た。Preparative Biochemistry, 14(1), 1-17 (1984)。また、IgAは、pH4.8で存在するカプリル酸によるIgA溶解度に基づき、コーン画分IIIからの決められた手順の分画副産物として調製された。Pejaudier et al., Vox Sang. 23, 165-175 (1972)。その上、画分IIIは、IgMに富む血漿画分を得るための出発材料を提供する。【0006】また、カプリル酸ナトリウムは、アルブミンを精製するために使用されてきた。これらの方法によれば、カプリル酸ナトリウムは、血漿処理のために添加され、その処理工程が高温にさらされる時にアルブミンを保護する。極端な温度は、処理工程のグロブリンを変性するだけでなく、しばしば、不純物 ネオ抗原を生じる。Schneider et al., 米国特許第4,156,681号(1979); Institute Merieux, 米国特許第3,992,367号。【0007】また、コーン画分IIIは、カプリル酸で処理されて、セルロプラスミン、すなわち血漿の銅輸送を促進するα−グロブリンを沈殿させる。セルロプラスミンを得るために、この技術を用いることは、エタノールもしくはアセトンを必要とする変性段階を避けられたが、この方法によっては、ウマ、ラバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジおよびヒヒ血漿からのみ得られてきた。M. Steinbuch, Vox Sang. 23, 92-106 (1972)。【0008】近年、技術および特許文献は、安定化剤としてカプリル酸ナトリウムを組み込む種々のアルブミン製造法、およびカプリル酸沈殿を伴って、血漿のコーン画分IIIから免疫グロブリンを得る精製技術を含んでいる。しかしながら、本発明者らは、不必要なグロブリンと製造デブリからアルブミンを分離するために、アルブミン製造中に分配剤(partition agent)としてカプリル酸ナトリウムを用いることの開示については知らない。【0009】【発明が解決しようとする課題】予期しないことに、また、本発明者らは、エタノール沈殿剤を用いる代わりに、カプリル酸ナトリウムを用いて不要物質からアルブミンを分配するアルブミン製造に、大きな優位性を見出だした。第1に、カプリル酸ナトリウム分配法は、慣用的アルブミン製造方法を短縮し、生産物の取扱を減少し、それによって、アルブミン回収量を25%またはそれ以上改善する。得られるアルブミン収量は、本質的にアルミニウムを含まず、97%またはそれ以上のモノマーレベルを示す。第2に、カプリル酸分配法は、アルブミン製造の完了に必要な時間を著しく減少し、かくして、装置関連の製造コストを、少なくとも65%低下する。第3に、カプリル酸分配法は、コーン画分II+IIIからのα−1PTおよびAT−III収量を改善し、血漿生産物の慣用的製造方法よりも、一般に、よりエネルギー効率が高い。最後に、そして多分最も重要なことは、カプリル酸分配法は、エタノール使用量を著しく減少し、アルブミン製造でのアセトンの使用を完全に排除し、その結果、有毒な、そして環境的に有害な残留溶剤によって、われわれの環境が汚染されるのを大きく回避することになる。本発明者らの発見は、以下において詳細に議論され、例証される。【0010】【課題を解決するための手段】本発明は、分配剤としてカプリル酸ナトリウムを用いて、実質的に単量体で、アルミニウム不含のアルブミンを製造する方法を提供する。【0011】カプリル酸ナトリウムの使用は、コーン画分II+IIIまたは画分IV−1のいずれかの流出液(effluent)段階における慣用的な血漿分画法を不要にする。本発明によれば、カプリル酸ナトリウムは、目的のアルブミン、および不要な非アルブミンタンパク質と不純物を含むコロイド状流出液材料に添加される。【0012】温度およびpHを上昇した後、次に、混合液を、約6時間インキュベートし、カプリル酸ナトリウムを分配剤として作用させて、コロイド溶液を破壊することによって、アルブミンを含む上澄液、および不要な非アルブミンタンパク質(例えば、グロブリン)と製造デブリを含む分散相にする。次いで、カプリル酸ナトリウム処理された懸濁液を遠心し、濾過を助けるためにDEAEセファデックスを添加する。次に、その懸濁液を濾過し、12%タンパク質まで限外濾過し、0.02Mカプリル酸ナトリウムによってダイアフィルトレーションし、回収し、そして滅菌濾過用のバルクとする。滅菌バルクが無菌試験を通過した場合には、そのアルブミンを、最終容器に注入する。【0013】用語の定義1. 分配剤(Partitioning Agent)は、本明細書で用いる場合には、アルブミン製造中に血漿タンパク質混合液に添加される場合に、2つの分離相:アルブミンを含む上澄液およびα−とβ−グロブリンを含む凝集したタンパク質粒子を含む乳光を呈する分散相:からなる懸濁コロイドを生じる物質を意味する。【0014】2. 沈殿剤(Precipitating Agent)は、本明細書で用いる場合には、アルブミン製造中に血漿タンパク質混合液に添加される場合に、溶液のpHが特定の範囲にある時に 溶液物質を可逆的に不溶化することができる物質を意味する。【0015】3. 非アルブミンタンパク質は、本明細書で用いる場合には、全ての非アルブミンタンパク質、主として、α−、β−およびγ−グロブリン、ならびに酸性糖タンパク質を意味する。【0016】4. 製造デブリ(Manufacturing Debris)は,本明細書で用いる場合には、非タンパク質性不純物を意味し、主として、アルミニウムのような多価金属イオン、およびエタノールのような製造溶媒を含む。【0017】5. アルブミン含有液は、本明細書で用いる場合には、コーン画分II+III流出液、またはコーン画分IV−1流出液のいずれかを意味する。【0018】【発明の実施の形態】材料および方法材料:1.本発明の出発材料、コーン画分IV−1流出液は、慣用的コーン血漿分画法にしたがって生産され、そしてMiles Inc. in Clayton, North Carolinaによって分画された給源血漿から得られた。【0019】2.給源血漿は、Milesの現在のスクリーニング法により完全にスクリーニングされた血漿から生産されたが、Miles のライセンスを受けたClayton, North Carolina施設内で行われた。【0020】3.最終的に加熱されたサンプルのみが、この方法を支持するために評価された。当業者は、低温殺菌の最終処理中のタンパク質シフトが、今日の試験方法論を用いても予想され得ないことを理解する。【0021】4.CBERおよび外国政府の規制によって要求される試験は、最終容器試験基準を提供する。【0022】方法:1.純度決定A.酢酸セルロース電気泳動(CAE)法が、アルブミン以外のタンパク質の存在に対して用いられた。【0023】B.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が、凝集体の存在、および他のタンパク質の分子量を決定するために使用された。【0024】C.アルブミン濾液濁度は、Hach比濁計を用いてNational Turbidity Unitsで測定された。【0025】【実施例】(実施例1)改良アルブミン製造法は、4つの基本的コーン分画段階により開始する。第1には、ヒト血漿を、貯蔵し、融解し、遠心する。形成された低温沈殿物が集められ、因子VIII濃厚液を生産するために処理されるが、その間、酢酸バッファーpH4.0(バッファーA)を含む95%エタノールを添加しながら、流出液(effluent)の温度を約−2℃に下げる。【0026】アルコール添加が完了すると、得られる懸濁液、コーン分画Iは、エタノール約8容量%であり、食塩水または蒸留水で1:5に希釈されてpH7.3になる。血漿フィブリノーゲンの大部分が、2時間の反応時間内に沈殿される。【0027】画分I 8%が、遠心されて形成された固形物を除かれる。次いで、流出画分Iを、バッファーAを含むエタノールを徐々に添加して、画分II+III 20%にし、そしてその材料の温度を、約−5℃に低下する。最終血漿pHは、約6.8である。約2時間の反応後、画分II+III 20%を遠心し、γ−グロブリン画分を含む粗II+IIIペーストが単離される。このペーストは、その後IGIVおよびISGを製造するために処理される。【0028】得られるコーン画分II+III流出液は、次に冷酢酸バッファーにより処理されて、蒸留水で1:10に希釈された時に約pH5.2の懸濁液になる。流出液は、約6時間の反応時間インキュベートされ、沈殿と変性を組み込む。次いで、α−グロブリンと他の不溶性タンパク質を回収し、得られる沈殿物を、α−IPIとAT IIIの製造に使用する。【0029】慣用的分画法によれば、さらに、画分IV−1流出液を処理して、主として、熱に不安定なα−およびβ−グロブリンを除いて、コーン画分IV−4にし、次いで、アセトン乾燥、凍結乾燥、薄膜蒸発、または限外およびダイアフィルトレーションの前に、4回の続くエタノール沈殿をへる。【0030】本発明によれば、カプリル酸ナトリウムは、次に、コーン画分IV−1流出液に添加され、それが、湿潤性を変え、α−およびβ−グロブリンを不溶化するか、これらの不要なタンパク質からアルブミンを分配する。また、カプリル酸ナトリウムは、抗ウイルス剤としても作用し、その上、アルブミンの機械的分離を可能にする。【0031】カプリル酸ナトリウムをリットル当たり約10g、画分IV−1流出液に添加し、同時に溶液pHを約5.4〜5.8に上昇しつつ、約25〜35℃に加温する。反応は、6時間以上で完了するが、その間pHを、5.3〜5.6、好ましくは5.4に維持する。【0032】溶液の温度を上げることは、カプリル酸ナトリウムの溶解を助け、反応を完結させる。約5.4より低いpHレベルは、好適なpH未満のアルブミンの等電点範囲に近づき、その結果、アルブミンの損失を生じるので、pHを高めることは、アルブミンの回収を改善する。しかしながら、約5.8を超える高いpHレベルは、熱に不安定なグロブリンを可溶化するであろうし、そのために、それらが最終産物へ逃げるのを許すことになる。カプリル酸ナトリウム添加に続く全インキュベーション時間は、約6時間である。【0033】次いで、カプリル酸ナトリウム処理溶液を、細菌の増殖を阻止するために、約18℃か、それ以下に低く冷却し、遠心する。その後、DEAEセファデックス約1gを、濾過を助けるために流出液に添加する。次いで、カプリル酸流出液を、深さ0.2ミクロン・メンブランフィルターを通して清澄化し、DEAE濾液を調製する。(図1、参照)。次いで、得られる濾液pHを、炭酸ナトリウムで中性(pH6.8〜7.2)まで上げる。【0034】慣用的方法によれば、酸性濾液pHを中性に上げると、溶液の濁度は改善される。濁度レベル12NTUおよびそれ以上は、通常pH5.5で起き、pHを5.5以上に上げる場合には、約8NTUまで減少する。この減少は、混入するグロブリンの等電点から離れることによって起きる。【0035】しかしながら、本発明によれば、DEAE濾液濁度は、約3NTUまたはそれ以下であり、pHが、6.8まで上昇されると、60℃で10時間以上の後でも顕著な濁度レベルの変化はない。【0036】したがって、カプリル酸ナトリウム処理濾液のpHを中性まで上げることは、濁度レベルには影響を与えない。むしろ、カプリル酸ナトリウム処理IV−1流出液から得られる濾液は、カプリル酸ナトリウムによるインキュベーション後の混入物グロブリンは実質的に不含であるので、高いpHにおいてさえも、濁度レベル5NTUまたはそれ以下を維持する。【0037】次に、DEAEセファデックス清澄化濾液は、Rhomicon型限外濾過器で限外濾過され、金属混入物、エタノールおよび塩類を除去するために、カプリル酸ナトリウム ダイアフィルトレーションバッファーの少なくとも7容の交換量に対してダイアフィルトレーションされる。ダイアフィルトレーションバッファーは、最終容器のアルブミン濃度に従って調製される。例えば、目的の最終アルブミン濃度が25%である場合には、0.02Mカプリル酸ナトリウムのダイアフィルトレーションバッファーが使用される。もし最終アルブミン濃度が5%である場合には、0.004Mカプリル酸ナトリウムのダイアフィルトレーションバッファーが必要である。分子量30,000(MWCO)限外濾過媒体を用いると、優れたフラックス速度を与える。【0038】次いで、アルブミンを、慣用の技術を用いて限外濾過して、目的の最終容器アルブミン濃度を達成する。目標の濃度は、ダイアフィルトレーションバッファーによる装置の洗浄を可能とし、その後、最終アルブミン濃度25%、20%、7%または5%を得るのに十分であらねばならない。最後に、その濃縮液を無菌濾過し、放出テスト(release testing)のためにバルクにされ、最終容器に注入される。【0039】本発明に影響を与える多くの条件には、温度、pH、カプリル酸ナトリウム濃度および反応時間がある。コーン画分流出液IV−1について、一定時間における1つのパラメーターを変化させて1つの実験が行われ、カプリル酸反応の理想温度を確立した。温度範囲20℃が試みられ、濁った最終容器を生産することを発見した。また、大きなアルブミン容量を処理するには、反応を完了するために要する時間を変化する必要があるので、反応時間6時間は任意に決定された。【0040】本発明は、前述の試験、およびアルブミンに対する熱の影響に依存された。【0041】(実施例2)ベンチロットは、コーン画分IV−1流出液の100〜200リットルからなった。数回のベンチロットを処理して、望ましいパラメーターを得た。最終受入試験は、アルブミンを60℃で10時間加熱後の濁度に基づいた。【0042】アルブミンのスケールアップロットは、コーン画分IV−1から処理された。このロットにおいては、コーン画分IV−1流出液1100リットルが、実施例1記載の方法を用いて処理されて、25%アルブミンの最終容器を得た。【0043】結果本明細書記載の方法は、スケールアップにより次のデータを得た:タンパク質濃度: 24,03%タンパク質CAE: 100%アルブミンpH: 6.78熱安定性 並列(50時間 @57): パスアルブミン: 7.53ppbPKA: 対照の1%クエン酸: 5ppm未満濁度: 2.6NTUナトリウム: 152Meq/LHPLC:モノマー: 97.58%ダイマー: 2.42%粘度: 7.98CPS密度: 1.0699発熱物質(ウサギ3匹):0.2 全部の総計カプリル酸: 0.086M 選択的に結合** 2容のCWFIダイアフィルトレーションは、このレベルを約0.07モルに低下するであろう。【0044】【発明の効果】本発明者らは、ヒト血清アルブミン、広く使用される治療剤は、カプリル酸ナトリウムを使用して、アルブミンを不要なタンパク質や製造デブリから分配することによって、より速やかに、より効率的にそしてより安価に製造することができることを例証した。さらに、本明細書に記載のカプリル酸ナトリウムアルブミン分画法は、アセトンのような溶剤の使用を避け、そのために、化学溶剤による環境汚染を回避し;製造と装置のコストを低減し;アルブミン最終容器の製造時間を短縮し;そしてアルブミン、ならびにα−1 PIおよびAT IIIのようなその他の血漿由来の生産物の収量を増大する。【0045】さらに、本発明者らは、アルブミンが、最終アルブミン溶液に保持されるカプリル酸ナトリウムの量を、分子誘引を通して自然に選択し、結合することを発見した。カプリル酸ナトリウムの添加に続いて、アルブミン溶液の濁度レベルは、その後の濾過、限外濾過、ダイアフィルトレーション、および60℃10時間の低温殺菌の後でさえも、5NTU以下に留まる。その結果、カプリル酸ナトリウムは、カプリル酸ナトリウム添加後の低い濁度レベルによって証明されるように、製造工程中の生産物の安定性を高め;そして最後の高熱の低温殺菌(pasteurization)中の熱分解からアルブミンを保護して、長期間の貯蔵中の濁度上昇を防ぐ。【0046】慣用的アルブミン製造法は、アルブミンを安定化するために、通常は、アセチル−dl−トリプトファン、疑似発がん物質、または塩化ナトリウムを用いる。しかしながら、トリプトファンのみならず、塩化ナトリウムも、短くも、また長期にもアルブミン安定性を高めることはできない。アルブミンは、トリプトファンに結合しないが、それにもかかわらず、トリプトファンは、高温に晒される間、アルブミンの元のままの構造を保護する。反対に、アルブミンは、塩化ナトリウムに強固に結合するが、塩化ナトリウムは、高温に晒される間、アルブミンを保護することはできない。したがって、不必要な物質からアルブミンを分配することに加えて、カプリル酸ナトリウムは、製造工程の間も、その後も、アルブミンの安定性を改善し、維持する両面の機能に役立つている。【0047】前記の実施例と議論に照らして、当事者には、本発明のいくつかの有力な修飾と改変を生じるであろう。したがって、本実施例は、本発明の単なる例示を提供するに過ぎず、次の請求範囲によってのみ限定されるべきである。【0048】本発明の特徴および態様は以下のとおりである。【0049】1. 血漿タンパク質の混合液から血漿由来の治療用溶液を調製する方法であって、非アルブミンタンパク質および不純物製造デブリからアルブミンを分離するために、分配剤としてカプリル酸ナトリウムを使用する段階を含む改良法。【0050】2. 血漿由来の治療用溶液が、アルブミン溶液、α−1プロテアーゼ・インヒビター、および抗トロンビンIIIを含む、第1項記載の方法。【0051】3. 非アルブミンタンパク質が、γ−、α−およびβ−グロブリン、ならびに酸性糖タンパク質を含む溶液から選ばれる、第1項記載の方法。【0052】4. 製造デブリが、多価金属イオンおよび溶剤を含む、第1項記載の方法。5. カプリル酸ナトリウムが、温度範囲約20〜30℃でアルブミン含有溶液に添加される、第1項記載の方法。【0053】6. アルブミン含有溶液のpHが、約5.25〜5.6である第1項記載の方法。【0054】7. カプリル酸ナトリウムが、約0.04M〜0.08Mの範囲の量で、アルブミン含有溶液に添加される、第1項記載の方法。【0055】8. カプリル酸ナトリウム処理された溶液において、約2〜8時間の間インキュベートされる、第1項記載の方法。【0056】9. pHレベル約5.4〜5.6にもたらされたアルブミン含有溶液が、温度約20〜30℃に上げられ、そしてカプリル酸ナトリウムが、約0.04M〜0.08Mの濃度になるまで添加され、そして約2〜8時間の間インキュベートされる、第1項記載の方法。【0057】10.血漿タンパク質の混合液が、コーン画分II+III流出液か、コーン画分IV−1流出液のいずれかを含む、第1項記載の方法。【0058】11.血漿タンパク質混合液が、コーン画分IV−1流出液を含む、第1項記載の方法。【0059】12.血漿タンパク質の混合液が、コーン画分II+III流出液を含む、第1項記載の方法。【0060】13.アルブミン含有溶液が、pH約5.4にもたらされ、約30℃に加熱され、約0.06Mカプリル酸ナトリウムにより処理され、そして約6時間インキュベートされる、第9項の方法。【0061】14.第1項の方法に従って作製されるアルブミン生産物。【0062】15.医薬的に受容できる担体中の第14項の生産物。【0063】16.静脈投与に好適な第15項の生産物。【0064】17.アルブミンの濃度範囲0〜20ppbをもつ第16項の生産物。【0065】18.アルブミンを、約1〜40重量%含む、第17項の生産物。【0066】19.pH5.4〜5.6をもつ第18項の生産物。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の方法と従来技術の方法の流れ図をそれぞれ示す。(A)が従来技術で、(B)が本発明の方法である。 血漿タンパク質の混合液からアルブミン溶液を調製する方法であって、(a)該混合物と、分配剤として用いるカプリル酸ナトリウムをpH5.25〜5.6において接触させてα−、β−およびγ−グロブリンならびに酸性糖タンパク質からアルブミンを分離する工程、(b)工程(a)のアルブミンを非アルブミン相から分離する工程、および(c)工程(b)で得られた分離されたアルブミンについてバッファー交換を行って製造デブリを除去する工程、を含んでなる上記方法。 製造デブリが、多価金属イオンおよび溶媒を含んでなる、請求項1記載の方法。 カプリル酸ナトリウムが、温度範囲20〜30℃でアルブミン含有溶液に添加される、請求項1記載の方法。 カプリル酸ナトリウムが、0.04M〜0.08Mの量で、アルブミン含有溶液に添加される、請求項1記載の方法。 カプリル酸ナトリウムで処理された溶液において、2〜8時間の間インキュベートされる、請求項1記載の方法。 アルブミン含有溶液をpHレベル5.4〜5.6にし、温度20〜30℃に上げ、そしてカプリル酸ナトリウムが、0.04M〜0.08Mの濃度になるまで添加し、そして2〜8時間の間インキュベートすることを特徴とする請求項1記載の方法。 血漿タンパク質の混合液が、コーン画分II+III流出液か、あるいはコーン画分IV−1流出液のいずれかを含む、請求項1記載の方法。 アルブミン含有溶液を、pH5.4にし、30℃に加熱し、0.06Mのカプリル酸ナトリウムにより処理し、次いで6時間インキュベートすることを特徴とする、請求項6記載の方法。 バッファー交換が、カプリル酸ナトリウムバッファー溶液を用いるダイアフィルトレーションにより実施される請求項1記載の方法。